JP2011140531A - 光学用易接着性ポリエステルフィルム - Google Patents

光学用易接着性ポリエステルフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】製膜工程で発生する微小キズを抑制し、透明性が高く、耐ブロッキング性を有し、密着性と耐湿熱性に優れたポリエステルフィルムを得る。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に塗布層を有してなるポリエステルフィルムであって、前記塗布層はポリカーボネート系ウレタン樹脂とオキサゾリン基を有する樹脂を主成分とし、塗布層中にオキサゾリン基が0.5〜4.0mmol/g含有し、前記基材フィルムは、最外層と少なくとも1層の中心層からなる3層以上の積層構成を有するポリエステルフィルムであり、最外層は平均粒径2.1〜2.5μmの不活性粒子を含有し、最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上11倍未満であり、最外層表面における、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である表面突起の数の割合が30%以下であることを特徴とする光学用易接着性ポリエステルフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、製膜工程で発生する微小キズや光学欠点が少なく、透明性が高く、耐ブロッキングが高く、密着性と耐湿熱性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
一般に、液晶ディスプレイ(LCD)の部材として用いられる光学機能性フィルムの基材には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィン等からなる透明な熱可塑性樹脂フィルムが用いられている。
前記の熱可塑性樹脂フィルムを各種光学機能性フィルムの基材として用いる場合には、各種用途に応じた機能層が積層される。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)では、表面の傷つきを防止する保護膜(ハードコート層)、外光の映り込みを防止する反射防止層(AR層)、光の集光や拡散に用いられるプリズム層、輝度を向上する光拡散層等の機能層が挙げられる。このような基材の中でも、特に、ポリエステルフィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性に優れ、比較的安価であるため各種光学機能性フィルムの基材として広く使用されている。
一般に、二軸配向ポリエステルフィルムや二軸配向ポリアミドフィルムのような二軸配向熱可塑性フィルムの場合、フィルム表面は高度に結晶配向しているため、各種塗料、接着剤、インキなどとの密着性が乏しいという欠点がある。このため、従来から二軸配向熱可塑性樹脂フィルム表面に種々の方法で易接着性を付与する方法が提案されてきた。
例えば、基材の熱可塑性樹脂フィルムの表面に、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルグラフトポリエステルなどの各種樹脂を被覆層の主たる構成成分とする塗布層を設けることにより、基材フィルムに易接着性を付与する方法が一般的に知られている。この塗布法の中でも、結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムに、前記樹脂の溶液または樹脂を分散媒で分散させた分散体を含有する水性塗布液を基材フィルムに塗工し、乾燥後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、熱可塑性樹脂フィルムの配向を完了させる方法(いわゆる、インラインコート法)や、熱可塑性樹脂フィルムの製造後、該フィルムに水系または溶剤系の塗布液を塗布後、乾燥する方法(いわゆる、オフラインコート法)が工業的に実施されている。
LCD、PDP等のディスプレイや、ハードコートフィルムを部材とする携帯用機器などは、屋内、屋外を問わず種々の環境で用いられる。特に、携帯用機器では、高い透明性以外にも、浴室、高温多湿地域などにも耐えうる耐湿熱性が要求される場合がある。すなわち、このような用途に使用される二軸配向ポリエステルフィルムでは、高温高湿下でも高い密着性が求められるのである。そのため以下に例示されるように、塗布液に架橋剤を添加することで、インラインコート法による塗布層積層時に塗布層中に架橋構造を形成させることで、耐湿熱性を付与した易接着性熱可塑性樹脂フィルムが開示されている。
例えば、特許文献1では積層膜中にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂から選ばれた1種類の樹脂、及び、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、あるいはエポキシ系架橋剤の少なくとも1種から選ばれた架橋剤を含有し、アミドエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合の少なくとも1種を含有してなる積層膜が設けられてなるレンズシート用フィルムが開示されており、具体的にウレタン樹脂とメラミン系架橋剤、ポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤、アクリル樹脂とポリエステル樹脂とオキサゾリン系架橋剤等が例示されている。
特許文献2ではポリエステル樹脂とオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を含む塗布層が設けられている光学用易接着性ポリエステルフィルムが例示されている。
特許文献3ではポリエステル系ポリウレタンとオキサゾリン含有ポリマーを塗布した易接着フィルムが例示されている。
特許文献4ではアニオン性基を有するポリカーボネート系ポリウレタンとメラミン系架橋剤、またはエポキシ系架橋剤が例示されている。
一方、光学用途のフィルムは透明性が高く、高い品位が求められる。例えば、製膜工程中、搬送ロール上にある異物によりフィルムに微小なキズが発生することがある。これらの異物は、製膜工程中で発生するオリゴマー等が主な原因であり、高品位のフィルムを得るために、定期的なロール掃除や、特許文献6のように低オリゴマー原料の使用等の対策が提案されている。
また、フィルム表面へ突起を付与することで、微小キズを低減させることが検討されている。キズに対する効果は、一般的に表面粗さの指標であるSRa(中心面平均粗さ)と対応していて、SRaが高いほどキズに対する効果が高いことが知られている。フィルム表面へ突起を付与する方策としては、フィルムを3層構造にし、不活性粒子をフィルム表層部に付与する方法がある。しかし不活性粒子をフィルム中に付与すると、不活性粒子と樹脂との屈折率に差があることから、フィルムの透明性の指標となるヘイズが高くなり透明性を損なう。
これらの問題に対して特許文献7、特許文献8では、粒径が異なる不活性粒子を使用して、透明性と耐スクラッチ性を両立させることが提案されている。また、特許文献9では、3層構造の表層部を非常に薄くすることにより、突起に寄与しない粒子の数を少なくし、透明性を向上させることが提案されている。
特開2000−141574号公報 特許第3737738号公報 特開2000−355086号公報 特許第2544792号公報 特許第3900191号公報 特開2007−130984号公報 特許第3311591号公報 特許第3235759号公報 特開2003−231229号公報
地球環境負荷の低減のためディスプレイを有する家電製品などで、従来以上の長寿命化が期待されている。そのため、当初における密着性だけでなく、高温、高湿環境下でも長期間、密着性を保持することが必要であることが要求されつつある。しかしながら、上記特許文献に開示されるような易接着フィルムでは、接着当初においては湿熱環境下でも良好な密着性を示すものの、長期間の使用においては密着強度の低下は避けられない。そのため、種々の使用環境への展開を考慮すると、高温、高湿下での密着性の低下のため、初期性能が長期間維持しないという問題が今後さらに顕在化するものと予想される。
また、光学欠点となるキズ、異物の低減については、特許文献6などの開示の提案により、従来、問題なく利用されていた。ところが、ディスプレイの高精細化は飛躍的に進展しており、従来問題とされない程度の微小なキズ、異物が光学欠点として認識されるようになると考えられた。
加えて、生産性の向上から、加工工程や製膜工程におけるライン速度が飛躍的に向上しており、高速加工条件下においても光学欠点の低減が必要となった。そのため、特許文献7〜9のようにフィルム表面に突起をもたせることで、微小キズによる光学欠点の低減を図ることが検討された。しかしながら、特許文献7、8のように平均粒径1μm以下の微小粒子を用いると、微小粒子の凝集により、樹脂中に均一に分散することができず、凝集粒子によりフィッシュアイ状の欠点が発生し、上記課題を解決するレベルにまで光学欠点の抑制することができなかった。
さらに、ライン速度の高速化とロール径の大型化により、ロール巻芯部では高い圧力で圧着される。このため、易接着性を付与するために設けられた塗布層により、ブロッキングが生じやすくなっていた。
すなわち、将来きたるべき高精細化および生産性の向上に対応し得るような、光学欠点が少なく、ブロッキングし難い、高品位なポリエステルフィルムを安定的に得るための方策は確立されていなかった。
なお、本発明で言う高温、高湿下での密着性(耐湿熱性)とは光硬化型アクリル層を積層した後、80℃、95%RH、48時間の環境下に置き、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、光硬化型アクリル樹脂層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷を光硬化型アクリル層面につけ次いで、セロハン粘着テープをマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させ、同一箇所を、勢いよく5回引きはがした時の密着性を意味し、一般に用いられるJIS K5600−5−6記載の評価方法より厳しい判定基準における密着性評価によるものである。本発明は、当初における密着性(初期密着性)だけでなく、このような高温、高湿下であっても優れた密着性を保持するポリエステルフィルムを提供することが課題である。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、不活性粒子含有層の厚みと不活性粒子の粒子径を特定の範囲とし、さらに特定の突起の直径と突起の高さの比を有する表面突起を制御し、加えて、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を主成分とし、さらにオキサゾリン基を含む塗布層を設けることで、粉落ちなどによる光学欠点も少なく、耐ブロッキング性が向上し、初期密着性だけでなく耐湿熱性が向上することを見出した。
具体的には、基材フィルムの少なくとも片面に塗布層を有してなるポリエステルフィルムであって、前記塗布層はポリカーボネート系ウレタン樹脂とオキサゾリン基を有する樹脂を主成分とし、塗布層中にオキサゾリン基が0.5〜4.0mmol/g含有し、前記基材フィルムは、最外層と少なくとも1層の中心層からなる3層以上の積層構成を有するポリエステルフィルムであり、最外層は平均粒径2.1〜2.5μmの不活性粒子を含有し、最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上11倍未満であり、最外層表面における、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である表面突起の数の割合が30%以下であることを特徴とすることにより、透明性に優れ光学欠点が少なく、ブロッキングし難い、易着性と耐湿熱性を有するポリエステルフィルムを得ることが可能となった。
前記特許文献にもあるように、これまでの技術常識では密着性を向上させるために、架橋剤とそれに反応しうる官能基を有する樹脂と混合し、塗布層積層時に高度に架橋構造を形成させることが望ましいと考えられてきた。しかしながら、本発明は、鋭意研究の結果、オキサゾリン基と高い反応性を示す官能基であるカルボキシル基またはその塩が少ない、または、実質的に有さないポリカーボネート系ウレタン樹脂とオキサゾリン系架橋剤を用い、未架橋のオキサゾリン基を特定範囲で残存する塗布層を形成することで、初期密着性と湿熱下での密着性が向上するという、従来技術に反する新しい技術思想に基づく積層フィルムを得るに至ったものである。
すなわち、本発明では塗布層中にオキサゾリン基が特定範囲で残存していることを必須とする。カルボキシル基と高い反応性を有するオキサゾリン系架橋剤は、技術常識からはカルボキシル基などの官能基を有する樹脂と組み併せて塗布されるものであり、実質的にカルボキシル基を有さない樹脂と組み合わせて用いる動機付けは無く、従来技術と明確に区別できるものである。尚、塗布層中のオキサゾリン基の含有量は全反射吸収赤外分光法によって求めることができる。
本発明により得られるフィルムは透明性に優れ、加工工程や製膜工程での微小キズの発生が少なく、耐ブロッキングが良く、密着性と耐湿熱性に優れる。本発明のフィルムをレンズシート用の基材フィルムとして使用することで、光学的な欠点が少なく高性能、高密着性、高耐久性なレンズシートを、安定的に得ることが可能となる。
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであっても良い。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを縮重合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1.4−ブタンジオール、1.4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。かかるポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等が例示される。中でも、物理的強度、耐熱性、耐薬品性の点からポリエチレンテレフタレートが好適に利用できる。
一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシルカルボン酸等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピオングリコール、1.4−ブタンジオール、1.4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常60モル%以上、好ましくは80%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート等であるポリエステルを指す。
ポリエステルはジカルボン酸とグリコールをエステル化反応させ、次いで重縮合反応を行う重縮合法、あるいはジカルボン酸塩とグリコールをエステル交換反応させ、次いで重縮合反応を行うエステル交換法など、従来公知の方法によって製造される。
ポリエステルの代表的な重縮合触媒としては、三酸化アンチモン、アンチモングリコラート等のSb系触媒、Ge系触媒、Ti系触媒等があり、これらの内、透明性、熱安定性、価格の観点から、フィルム用ポリエステル樹脂の重合触媒としては、一般に三酸化アンチモン(Sb)が使用されている。
また、上記ポリエステルフィルムには各種の添加剤が含有されていてもよく、該添加剤としては、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤等が挙げられる。
本発明のフィルムは、最外層と少なくとも1層の中心層からなる3層以上の積層構成を有する二軸配向ポリエステルフィルムである。3層以上の積層構成のフィルムは共押出法による好適に作製される。また、本発明の基材フィルムの両最外層には不活性粒子が含有される。例えば、最外層をB層、他の層をA層、C層とすると、フィルム厚み方向の層構成は、B/A/B、B/A/C/B、あるいはB/A/C/A/B等の構成が考えられる。A〜C層の各層は、それぞれ、ポリエステル樹脂の構成は同じであっても良いし、異なっていても良いが、バイメタル構成によるカールの発生を抑制すためには、各層のポリエステル樹脂を同構成にする、および/もしくは、B/A/B構成(2種3層構成)とすることが好ましい。
本発明では、最外層以外の中心層(例えば、B/A/B構成ではA層)を構成するポリエステル樹脂は、粒子を含有してもよいが、高い透明性を得るためには、中心層を構成するポリエステル樹脂は実質的に粒子を含有しないことが好ましい。最外層にのみ不活性粒子を含有させることで、より好適に高い透明性を得ることができる。最外層以外の中心層に粒子を添加する場合、50ppm以下、好ましくは10ppm以下であることが好ましい。
最外層に含まれる不活性粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、不定形シリカ、球状シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子や、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子微粒子が挙げられる。なかでも、シリカはポリエステルと屈折率が比較的近いため、より透明性に優れたフィルムを確保し得る点で最も好適である。
本発明のフィルムの最外層に含まれる不活性粒子の平均粒径は2.1〜2.5μmであり、更に好ましくは2.2〜2.4μmである。不活性粒子の平均粒径が2.1μm以下だと粒子の凝集力が非常に大きく、粒子の凝集による粗大な異常粒子が発生しやすくなり好ましくない。さらに、後述するような表面形状を構成するためには、不活性粒子の平均粒径は2.1μm以上であることが望ましい。また、平均粒径が2.5μm以上だと、粒子単体としての粗大粒子の含有量が多くなり好ましくない。本発明では、光学欠点の要因となる粗大粒子を極限まで低減させるため、このように特定の非常に狭い範囲の粒子を用いる。
ここでいう不活性粒子の平均粒径の範囲は、後述する測定方法により測定したものである。なお、例えば後述するような、一次粒子が凝集した二次粒子の場合は、当該二次粒子の平均粒径をいう。つまり、ここでの不活性粒子の平均粒径とは、フィルム内において実際に不活性粒子として存在しうる態様での平均粒径である。
最外層中の不活性粒子の含有量は、0.015〜0.03質量%であることが望ましく、更に好ましくは0.02〜0.025質量%である。不活性粒子の含有量が0.015質量%以上の場合は、微小キズを低減する程度の有効な滑り性を奏する上で好ましい。不活性粒子の含有量が0.03質量%以下の場合は、高透明性を保持する上で好ましい。
本発明者は、表面凹凸の付与による光学欠点の減少と、高速加工により生じる粉落ちとの如何に両立すべきかを検討した結果、特定の表面構造を有する場合に、これら両特性が顕著に両立することを見出した。すなわち、本発明は、最外層表面における、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である突起の数の割合が30%以下であることを特徴とする。
光学欠点を抑制する程度の、滑り性を奏するには、不活性粒子による2nm以上の突起高さを有する表面突起を有することが重要である。表面突起の高さが2nm未満では、マクロの表面形状がほぼ平坦となり、滑り性に有効に寄与することが困難である。しかしながら、表面突起が高くなると、超高速度の加工において、ロールやフィルム同士の擦れにより、突起を形成する粒子が脱落する。このような工程中の僅かな粉落ちが長期の操業により工程を汚し、微小キズが生じる要因となる。また、係るフィルムに後述の塗布層を設ける場合もまた同様である。そこで、本発明者は、粉落ちの要因となる表面形状を検討した結果、表面突起の高さによって粒子の脱落のし易さが決まるのではなく、表面突起の山の形状が不活性粒子の脱落のし易さに影響するという新たな知見を見出し、本発明に至った。すなわち、高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50を越える、なだらか裾野を有する表面突起は、粒子の脱落が生じにくい。一方、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である、比較的裾野の小さい表面突起が粒子の脱落が顕著に生じやすい。
本発明のフィルムは、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である突起の数の割合が30%以下であり、好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。直径Lと高さhの比L/hが50以下である表面突起の割合が、30%を超えると、粉落ちによる光学欠点が生じやすくなる。当該形状を有する表面突起の割合は、少ない方が好ましいが、生産性の点から1%程度が下限であると考える。
上記特定の表面構成を形成するには、なだらかな山裾を有する表面突起を多くすることが望ましい。そのため、最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上にすることが必要である。表面突起は、最外層中に存在する不活性粒子により形成される。なだらかな表面突起を形成するためには、不活性粒子が表面直下にあるのではなく、ある程度以上の大きさを有する粒子が、適当な深さをもって存在することが望ましい。最外層の厚みが不活性粒子の平均粒径の5倍未満であると、不活性粒子による表面突起の形状が比較的鋭利になるため、粉落ちが生じやすくなる。最外層の厚みの上限は、粉落ち発生の観点からは特に設けないが、厚みが厚くなりすぎるとフィルム内部にある不活性粒子の量が多くなりすぎ、フィルム内部で発生する光の散乱が多くなり透明性が低下するため好ましくない。最外層の厚みの上限はヘイズ上昇を許容できる範囲から、11倍未満とした。尚、ここで最外層の厚みとはフィルム両面に積層されている最外層の、片側の厚みのことである。
上述のように不活性粒子と不活性粒子含有層の厚みを制御することにより、好適にフィルム表面の突起形状をコントロールし、個々の突起の傾斜角度を極力小さくすることが出来、透明性の低下を極力抑えながら光学欠点低減効果を高めることが可能となる。
さらに、より好適に上記の特定の表面形状を形成するためには、例えば(1)ポリエステル樹脂の固有粘度を高めることで表面形状をなだらかにする方法、(2)熱固定温度を高温で処理することで表面形状をなだらかにする方法、などを組み合わせることによっても可能である。また、後述するように、(3)フィルムの延伸で追従的な変形が生じやすい不活性粒子を用いることも好適である。
フィルムの延伸で追従的な変形が生じやすい不活性粒子としては、数nmから数百nmの一次粒子が凝集した二次粒子であって、その細孔容積を1.5ml/g以上であるものが好ましい。特に透明性や取り扱い性、価格の観点から、不定形塊状シリカが好適である。不活性粒子の細孔容積を1.5ml/g以上とすることで、延伸による粒子の変形が発生しやすくなり、本発明の範囲に突起形状をコントロールしやすくなる。なお、不活性粒子の細孔容量はBJH法など公知の窒素脱吸着により算出することができる。不活性粒子がフィルム中にある場合は、例えばフェノール/テトラクロロエタン混合溶液などにより溶解し、残渣である不活性粒子を回収し、十分乾燥した後、BJH法など公知の窒素脱吸着により算出することができる。
る。
ポリエステルに上記不活性粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
中でも、本発明ではポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中、又はエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度のため、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。
特に、前記不定形塊状シリカを用いる場合は、スラリーの添加、混合により、粒子が凝集し、凝集粗大粒子が生じる場合がある。シリカの凝集は高温で生じやすいため、光学欠点の要因となる凝集粗大粒子を低減するために、前記不定形塊状シリカを含有するエチレングリコール溶液を添加する場合は、エステル化反応もしくはエステル交換反応を行ってオリゴマーを生成する前の工程において、好ましくは10〜50℃、より好ましくは10〜30℃の範囲に保持しながら、ポリエステル原料とブレンドすることが好ましい。このタイミングでスラリーを添加することで、スラリー温度を低温に保ったまま添加することが可能となり、新たな凝集体の生成を抑制することができる。
一般的に不活性粒子の粒径はある程度の幅を有する分布を示すが、本発明で用いる不活性粒子は、好ましくは10μm以上の粒径を有する不活性粒子が全体の1%以下であることが好ましい。10μm以上の粒径を有する不活性粒子が1%を超える場合は、光学欠点の要因となる粗大粒子の数が多くなるため好ましくない。不活性粒子の分布を上記範囲にする方法としては、(1)不活性粒子を分散させたエチレングリコールもしくはポリエステルを精密濾過する方法、(2)不活性粒子を分散させたエチレングリコールもしくはポリエステルをバッチ式または間欠式の遠心分離機で処理する方法、(3)所定の粒度分布を有する不活性粒子を選定する方法、などを用いることができる。
本発明における基材フィルムのヘイズは、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムの三次元中心面平均粗さ(SRa)は0.008〜0.015μmであることが好ましい。また、十点平均粗さ(SRz)が0.5〜1.5μmであることが好ましく、0.6〜1.0μmであることがより好ましい。三次元中心面平均粗さ(SRa)もしくは十点平均粗さ(SRz)が上記範囲内であると、微小キズを有効に抑制しながら、光透明性を維持できるため好ましい。
本発明は、上記特定の表面構造を有し、また好ましくは上記特定の表面粗さを有するため、加工工程、製膜工程で生じる微小キズを抑制しうる程度の、良好な滑り性を奏することができる。そのため、後述の測定方法により測定する本発明のフィルムの動摩擦係数(μd)は1.5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。動摩擦係数が上記範囲内であれば、耐スクラッチ性が保持され、工程中でのキズが生じにくい。
本発明のフィルムの厚みは特に限定されないが、好ましくは75〜350μm、より好ましくは100〜300μmである。フィルムの厚みが75μm以上であると、ベースフィルムとしての強度が保持しやすい。また、フィルム厚みが350μm以下であると、レンズシートの軽量化の点で好ましい。
本発明のフィルムは上記特定の表面構造を有するため、光透明でありながら製膜中に生じる光学欠点を抑制することができる。本発明のフィルムは、後述する方法により測定した場合、高低差が0.3μmの微小キズが1m当り好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下、さらに好ましくは0個にすることができる。高低差が0.3μmの非常に浅い深さを有する微小キズは、製膜工程中または加工工程中にフィルム同士やガイドロールと擦れることにより生じるものである。このような顕微レベルの微小なキズは、従来あまり問題となされていなかったが、今後進展するであろう高精細化に対応するためには課題とされるべき光学欠点となりうるものである。このため、本発明のフィルムは特に高精細が要求されるようなレンズシートに好適である。
また、本発明のフィルムは上記特定の粒子構成を有するため、フィルムに粒子を含有しながら、光学欠点の要因となる凝集異物を極限まで抑制することが可能となる。本発明のフィルムは、後述する方法により測定した場合、長径20μm以上の異物が1m当り好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下、さらに好ましくは0個にすることができる。長径20μm以上の異物は、微小粒子の凝集により形成される粗大粒子に起因するものである。このため、本発明のフィルムは特に高精細が要求されるようなレンズシートに好適である
本発明のポリエステルフィルムの塗布層には、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を主成分として、オキサゾリン基を特定範囲で残存させることが重要である。ここで、「主成分」とは、塗布層に含まれる全固形成分中として30質量%以上含有することを意味する。本発明の積層フィルムでは、前記ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂と、オキサゾリン基を有する化合物とが実質的に架橋構造を有しない又は架橋度が低いことが好ましい。オキサゾリン基と高い反応性を示す官能基であるカルボキシル基またはその塩を含まないか、または、極めて少ないため、塗布層中には未反応のオキサゾリン基が多く存在する。一方、積層される機能層に用いられる樹脂にはカルボキシル基などの官能基が存在する。さらに基材フィルムである熱可塑性樹脂にも官能基が存在する。高温高湿の環境下ではこれらの機能性層および/もしくは基材フィルムに存在する官能基とオキサゾリン基の相互作用が進行し、強固な密着性が得られるものと推察している。つまり、塗布層形成時には未反応のオキサゾリン基が残存する場合は、高温高湿の環境下の保管により、基材を構成するポリエステル樹脂が加水分解を起し、エステル結合が分断され、カルボン酸基末端が発生する。ここで、塗布層中に残存した未反応のオキサゾリン基が、発生したカルボン酸末端と反応し、架橋を形成する。いわば、加水分解による密着性の低下を自己修復により防止し、架橋することで塗布層を硬くすることができると考えている。
本発明における塗布層中のオキサゾリン基の濃度の下限は0.5mmol/g、好ましくは0.7mmol/g、さらに好ましくは1.0mmol/gであり、上限は4.0mmol/g、好ましくは3.8mmol/g、さらに好ましくは3.5mmol/gである。上記下限未満では十分な高温、高湿下での密着性が得られない場合がある。上記上限を越えると相対的にポリカーボネート系ウレタン樹脂の比率が小さくなり、密着性、特に初期密着性が低下する場合がある。
本発明は、上記態様により、レンズ層、ハードコート層、光拡散層、電磁波吸収層、近赤外線遮断層、透明導電層などの光学機能層との高温高湿下での密着性(耐湿熱性)を著しく向上させることができる。さらに、本発明の構成を以下に詳述する。
本発明の塗布層は、水系の塗布液を用い後述のインラインコート法により設けることが好ましい。そのため、本発明のウレタン樹脂は水溶性であることが望ましい。水溶性ウレタン樹脂を用いると、オキサゾリン基を有する樹脂との相溶性が増し、透明性が向上することができる。なお、前記の「水溶性」とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解することを意味する。
ウレタン樹脂に水溶性を付与させるためには、ウレタン分子骨格中にスルホン酸(塩)基又はカルボン酸(塩)基を導入(共重合)することにより可能となる。ここでスルホン酸(塩)基は強酸性であり、その吸湿性能により耐湿熱性を維持するのが困難な場合があるので、弱酸性であるカルボン酸(塩)基を導入するのが一般的である。
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのN−アルキルモルホリン類、N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミンなどのN−ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。
水溶性を付与するために、カルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物を共重合成分として用いる場合は、ウレタン樹脂中のカルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%としたときに、3〜60モル%であることが好ましく、10〜40モル%であることが好ましい。前記組成モル比が3モル%未満の場合は、水分散性が困難になる場合がある。また、前記組成モル比が60モル%を超える場合は、塗布層形成時の残存オキサゾリン基が減少するため耐湿熱性が低下する場合がある。
しかしながら、上記のようにウレタン樹脂としてカルボキシル基を導入したいわゆるアニオンタイプのウレタン樹脂を用いる場合、塗布液中でオキサゾリン基と反応し、塗布層形成時の未反応のオキサゾリン基が低下する場合がある。そのため、塗布層中にカルボキシル基が実質的に有さないことが望ましい。そこで、ウレタン樹脂に水溶性を付与するため、カルボキシル基の代わりに、ポリオキシアルキレン基を導入するのが本発明の好ましい実施態様である。ウレタン樹脂としてポリオキシアルキレン基を導入したウレタン樹脂を用いる場合、塗布層中には実質的にカルボキシル基を導入せず水溶性化が可能なため、未反応のオキサゾリン基が安定的に残存し、より優れた耐湿熱性を発揮することができる。
本発明の塗布液に用いるポリカーボネート系ウレタン樹脂についてさらに詳細に説明する。本発明では、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、すなわちウレタン樹脂の構成成分としてポリカーボネートポリオールを有することを特徴とする。
ウレタン樹脂には大きくポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂に分類されるがポリエステル系ウレタン樹脂は高温高湿下で加水分解しやすく、ポリエーテル系ウレタン樹脂は吸湿性が高いため塗布層の膜強度が低下しやすく密着性が不足する。一方、ポリカーボネート系ウレタン樹脂は優れた耐湿熱性を有する。本発明でポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いるのはこの理由による。
すなわち、本発明の塗布層にポリカーボネートを構成成分とするウレタン樹脂を含有させることで、耐湿熱性を向上させることができる。本発明のポリカーボネート系ウレタン樹脂は、構成成分として、少なくともポリオール成分、ポリイソシアネート成分を含み、さらに必要に応じて鎖延長剤を含む。本発明のポリカーボネート系ウレタン樹脂は、これら構成成分が主としてウレタン結合により共重合された高分子化合物である。なお、これらポリカーボネート系ウレタン樹脂の構成成分は、核磁気共鳴分析(NMR)などにより特定することが可能である。
本発明のウレタン樹脂の構成成分であるポリカーボネートポリオールとしては、ポリカーボネートジオール、ポリカーボネートトリオールなどが挙げられるが、好適にはポリカーボネートジオールを用いることができる。本発明のウレタン樹脂の構成成分であるポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール−Aなどのジオール類の1種または2種以上と、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲンなどのカーボネート類とを反応させることにより得られるポリカーボネートジオールなどが挙げられる。ポリカーボネートジオールの数平均分子量としては、好ましくは300〜5000であり、より好ましくは500〜3000である。
本発明において、ウレタン樹脂の構成成分であるポリカーボネートポリオールの組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%とした場合、3〜100モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることがより好ましく、6〜20モル%であることがさらに好ましい。前記組成モル比が低い場合は、ポリカーボネートポリオールによる耐久性の効果が得られない場合がある。また、前記組成モル比が高い場合は、初期密着性が低下する場合がある。
ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンビスメチルイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
効果的にオキサゾリン基を残存するために、本発明に用いるポリカーボネート系ポリウレタンはウレタン樹脂の側鎖にポリオキシエチレン鎖を有する構造が好ましい。
ウレタン樹脂に導入するポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリテトラメチレングリコール鎖などが挙げられ、これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。中でも、ポリオキシエチレン基が好適に用いることができる。
ウレタン樹脂にポリオキシエチレン基を導入するには、例えば、ポリイソシアネートと片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(炭素数1〜20のアルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールのヒドロキシル基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により未反応のポリイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得て、次いで、得られたポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートとジイソシアネートをアロファネート化反応させることにより、得ることができる。
水溶性を付与するために、ウレタン樹脂にポリオキシエチレン基を導入する場合は、ウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%とした場合、3モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。前記組成モル比が3モル%未満の場合は、水分散性が困難になる場合がある。
前記の方法によって得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂はオキサゾリン基との官能基であるカルボキシル基またはその塩を実質的に有さないか、または少ないものである。
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂は塗布層中に30質量%以上90質量%以下含有することが好ましい。特に、レンズ層のように高い密着性が求められる場合、より好ましくは40%質量%以上80質量%以下である。ウレタン樹脂の含有量が多い場合には、相対的にオキサゾリン基を有する化合物の含有量が少なくなるため、高温高湿下での密着性が低下し、逆に、ウレタン樹脂の含有量が少ない場合には、初期密着性が低下するばかりでなく、塗布工程中で塗布層が剥がれ、欠点となる場合がある。
本発明では、ポリカーボネート系ウレタン樹脂以外の樹脂を密着性向上のために含有させても良い。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。好ましくは、カルボキシル基またはその塩の含有量が少ないものが好ましく、より好ましくは、カルボンキシル基またはその塩を含有していないものである。カルボキシル基またはその塩が多い場合は、オキサゾリン基と反応してしまい、高温高湿下で基材フィルムや光学機能層に含まれるカルボキシル基などの官能基と反応するオキサゾリン基が減少してしまうため好ましくない。
本発明では、塗布層中にオキサゾリン基を有する化合物を含む。オキサゾリン基を有する化合物は、塗布液が水系塗布液の場合、他の水溶性樹脂との相溶性がよく、塗布層の透明性を向上させることから、水溶性が好ましい。
オキサゾリン基を有する化合物を水溶性にするために、組成中に親水性単量体を含有させるのが好ましい。親水性単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物等のポリエチレングリコール鎖を有する単量体、(メタ)アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、水への溶解性の高い(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物等のポリエチレングリコール鎖を有する単量体を含有していることが好ましい。
また、本発明に用いるオキサゾリン基を有する化合物のオキサゾリン価は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、1000g−solid/eq.以下であることが好ましく、より好ましくは500g−solid/eq.以下、さらにより好ましくは300g−solid/eq.以下である。上記オキサゾリン価が上限を超える場合は、十分な基材フィルムや光学機能層に含まれるカルボキシル基などとの相互作用が発現されず、耐久性、耐水性が満足に得られない場合がある。なお、上記オキサゾリン価(g−solid/eq.)は、オキサゾリン基1mol当たりの重合体重量であるとする。よって、該オキサゾリン価の値が小さいほど重合体中のオキサゾリン基の量は多く、値が大きいほど重合体中のオキサゾリン基の量は少ないということを表す。
尚、本発明に用いるオキサゾリン基を有する化合物は上市されているものでもよい。上市されている水溶性または水分散性のオキサゾリン基を有する化合物としては例えば、日本触媒社製のエポクロスWS―300、エポクロスWS―500、エポクロスWS―700、エポクロスK―2010E等が挙げられる。
前記オキサゾリン基を有する化合物は塗布層中に10質量%以上70質量%以下含有することが好ましい。特に、レンズ層のように高い密着性が求められる場合、より好ましくは30%質量%以上70質量%以下である。オキサゾリン基を有する化合物の含有量が多い場合には、光学機能層との特に初期密着性が低下し、逆に、含有量が少ない場合には、高温高湿下での密着性が低下してしまう。
塗布層中のオキサゾリン基の有無、及び含有量は公知の方法によって求めることができる。例えば後述するような赤外分光法で検出する方法や、塗布層を削り取り、その削り物をメチルエチルケトン、クロロホルムまたはジメチルホルムアミドに溶解し、核磁気共鳴分析計(NMR)を用いて、その積分比より各組成のモル%比を決定する等の方法が挙げられる。
本発明においては、ハンドリング性の点から塗布層中に粒子を含有させることが好ましい。粒子は、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。
前記粒子は、平均粒径が1〜500nmのものが好適である。平均粒子径は特に限定されないが、フィルムの透明性を維持する点から1〜100nmであれば好ましい。
前記粒子は、平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有させても良い。
粒子の含有量としては、0.5質量%以上20質量%以下が好ましい。少ない場合は、十分な耐ブロッキング性を得ることができない。また、対スクラッチ性が悪化してしまう。多い場合は、塗布層の透明性が悪くなるだけでなく、塗膜強度が低下する。
塗布層表面の粗さ(Ra)は2〜25nmにするのが好ましい態様である。より好ましくは5〜20nmである。2nm未満では耐ブロッキング性が低下し、25nmを越えると透明性が低下する。
塗布層には、塗布時のレベリング性の向上、塗布液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、光学機能層との密着性を損なわない程度の範囲、例えば、塗布液中に0.005〜0.5質量%の範囲で含有させることも好ましい。
塗布層に他の機能性を付与するために、光学機能層との密着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤等が挙げられる。
本発明において、基材フィルム上に塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境負荷の観点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
塗布層を形成するための塗布液を基材フィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
本発明においては、塗布層は未延伸あるいは一軸延伸後のフィルムに前記塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を行って形成させる。
本発明において、最終的に得られる塗布層の乾燥後の塗布量は、0.02〜0.5g/mであることが好ましい。塗布層の塗布量が0.02g/m未満であると、接着性に対する効果が低下する場合がある。一方、塗布量が0.5g/mを越えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。
なお、本発明の塗布層は、基材フィルムの少なくとも片面に設けるが、基材フィルムの両面に設けても構わない。また、基材フィルムの一方の面の塗布層を、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を主成分とし、さらに前記塗布層中にオキサゾリン基が0.5〜4.0mmol/g含ませるとともに、他方の面を他の異なる組成を有する塗布層(例えば、オキサゾリン基を有さない樹脂を含まない塗布層)を設けても構わない。
本発明においてレンズシートは、集光機能が付与された樹脂シートであって、液晶表示装置、スクリーン投影装置、その他のディスプレイ装置の光学部材として用いられるものである。レンズシートとして本発明のフィルムに付与する集光機能層は、集光機能を有するものであればよく、その形状は特定されないが、例えば、プリズムレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズなどが例示される。このような集光機能層を形成するための樹脂としては、例えば、紫外線硬化型または電子線硬化型アクリル系樹脂が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合する範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に包含される。また、得られたフィルムの特性や物性については以下の方法を用いて評価した。
(1)ポリエステル樹脂の固有粘度
ポリエステル0.1gをフェノール/テトラクロロエタン(容積比3/2)の混合溶液25g中に溶解させ、30℃にてオストワルド粘度計を用いて測定した。
(2)最外層(不活性粒子含有層)の厚み
得られたフィルムをフィルムの流れ方向に対して垂直に切り出し、光硬化樹脂で包埋した。包埋した試料をミクロトームにて70〜100nm程度の厚みの極薄切片とし、四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色した。この染色された極薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、TEM2010)を用いて断面観察し、不活性粒子の位置から最外層(不活性粒子含有層)の厚みを求めた。尚、観察倍率は1500倍から10000倍の範囲で適宜設定した。
(3)最外層表面の突起形状の評価
各実施例、比較例において塗布層を設けずに作成したポリエステルフィルムを用意し、ポリエステルフィルムを任意の場所で切り出した後、原子間力顕微鏡(SII社製、SPI3800)を用いて、観察モード=DFMモード、スキャナー=FS−20A、カンチレバー=DF−3、観察視野=5×5μm、分解能1024×512pixelsにて表面形態観察を行い観察像を得た。次いで同一測定視野の断面プロファイル表示モードを表示させた。断面移動画面で、カーソルの両端をつまんで高さ2nm以上の表面突起の長尺方向に沿うように、かつ、カーソルが表面突起の最高高さ位置を通るように移動させた。断面プロファイル曲線と測定範囲内の平均高さ線である高さ0nmの線とが交わった2箇所の交点間の距離を読み取り、表面突起の直径を測定した。さらに、測定範囲内の平均高さ線である高さ0nmとして表面突起の高さを測定下。こうして得られた観察像から、少なくとも100個以上の高さ2nm以上の突起について、突起の直径Lと突起の高さhを計測して直径と高さの比L/hを算出し、L/hが50以下である突起の比率を算出した。
(4)ヘイズ、全光線透過率
各実施例、比較例において塗布層を設けずに作成したポリエステルフィルム、および塗布層付きポリエステルフィルムを用意し、JIS−K7105に準じ、濁度計(NHD2000、日本電色工業製)を使用して、基材フィルムのヘイズ、全光線透過率を測定した。
(5)最外層表面の三次元表面粗さ(SRa、SRz)
各実施例、比較例において塗布層を設けずに作成したポリエステルフィルムを用意し、ポリエステルフィルムの最外層表面を、触針式三次元粗さ計(SE−3AK、株式会社小阪研究所社製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgの条件下に、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたり、針の送り速度0.1mm/秒で測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(SPA−11)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、すなわちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に解析装置を用いて中心面平均粗さ(SRa)、十点平均粗さ(SRz)を求めた。
(6)不活性粒子の平均粒子径、10μm以上の粒子数
不活性粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−51O型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも200個以上の粒子について各粒子の外周をトレースし、画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、これらの平均を平均粒子径とした。またこうして得られた200個以上の粒子の粒子径から、10μm以上の粒子の比率を算出した。
(7)キズ、異物の検出方法
各実施例、比較例におい作成したフィルムを用意し、以下に説明する光学欠点検出装置により、100mm×100mmのフィルム片20枚について検査を行い、1mあたりの欠点数に換算した。
(光学欠点の検出方法)
作製したフィルム片を2枚の偏光板の間に挟みこみ、クロスニコル状態とし、消失位が保たれる状態にセットする。この状態でニコン万能投影機V‐12(投影レンズ50x、透過照明光束切り替えノブ50x、透過光検査)を用い検査を行う。フィルム片にキズ、異物が存在する場合、その部分から光が透過し、光り輝くように見える長径が20μm以上あるものを検出する。
(キズの深さ測定)
前述の光学欠点の検出方法により検出した欠点部分から、キズによる欠点を選出した。さらに適当な大きさに切り取って、三次元非接触形状計測システム Micromap MM500N−M100(菱化システム製、測定条件:waveモード、対物レンズ10倍)を用いてフィルム面に対して垂直方向から観察を行い、キズの断面形状を計測した。この断面形状よりキズの高低差(最も高い所と最も低い所の差)を算出した。このように測定した高低差0.3μm以上のキズの数を測定した。
(異物の大きさ測定)
前述の光学欠点検出方法により検出した欠点部分から、異物による欠点を選出した。さらに適当な大きさに切り取って、光学顕微鏡を用いて透過光により観察し、光学的に異常な範囲として観察される部分の最大径を異物の大きさ(長径)とした。光学的に異常な範囲とは、クロスニコル状態(暗視野)にした際に光が漏れて透過する範囲を言う。異物周辺に存在する空洞(ボイド)が光学的に異常な範囲として観察される場合は、この空洞も含めて異物の大きさとする。このように測定した大きさ20μm以上の異物の数を測定した。
(8)塗布層中のオキサゾリン基濃度の定量
実施例および比較例で得られたフィルムの塗布層面について、全反射吸収赤外分光法で測定し、基材フィルムから特異的に得られる吸光度を対照として塗布層中のオキサゾリン基濃度を求めた。
すなわち、下記に示す条件により全反射吸収赤外分光法で測定し、赤外吸収スペクトルを得、オキサゾリン由来の吸光度と基材フィルムの吸光度(PETフィルムの場合、エチレングリコール)の比(赤外吸光度比A1655/A1340)を求めた。尚、オキサゾリン基由来の吸光度は1655±10cm−1の領域に吸収極大を持つ吸収ピークの高さの値(A1655)とし、PET由来の吸光度は1340±10cm−1の領域に吸収極大を持つ吸収ピークの高さの値(A1340)とした。ベースラインはそれぞれの極大吸収ピークの両側の袖を結ぶ線とした。
また、塗布層の厚みは、透過型電子顕微鏡により求めた。積層フィルムの試料を可視光硬化型樹脂(日本新EM社製、D−800)に包埋し、室温で可視光にさらして硬化させた。得られた包埋ブロックから、ダイアモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて70〜100nm程度の厚みの超薄切片を作製し、四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色した。さらにカーボン蒸着を施した後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、TEM2010)を用いて断面を観察し、写真を撮影し、これより塗布層の厚みを計測した。なお、撮影は、10,000〜100,000倍の範囲で適宜設定した。
得られた赤外吸光度比A1655/A1340および塗布層の厚みより、予めオキサゾリン濃度が既知の塗布液を塗布、風乾した標準サンプルから作成した検量線を用いて塗布層中のオキサゾリン基濃度を求めた。
なお、検量線の作成においては、オキサゾリン基濃度を0.5、1.4、2.7、4.5mmol/gとした塗布液(溶媒:水/イソプロピルアルコール=1/1、アクリル樹脂との混合量を調整し固定分濃度30質量%とした)を、乾燥後の塗布層の厚みが50nm、100nm、200nmとなるように塗布し、風乾した試料について、下記に示す条件で全反射吸収赤外分光法にて赤外吸光度比A1655/A1340を測定し、得られた結果からオキサゾリン基濃度、塗布層厚み、赤外吸光度比A1655/A1340の3つの変量からなる下記一次式をもとめ、これを検量線とした。
(オキサゾリン濃度)=A×(赤外吸光度比A1655/A1340)/(塗布層厚み)+B
(ここで、A、Bは上記検量線作成により得られたデータから求まる定数)
(測定条件)
装置:Varian社製 FTS−60A/896
1回反射ATRアタッチメント:SPECTRA TECH社製 Silver Gate
光学結晶:Ge
入射角:45°
分解能:4cm−1
積算回数:128回
なお、塗布層の厚さが薄く、十分な感度が得られない場合は、使用する1回反射アタッチメントを、より入射角が大きい(65度)アタッチメント(例えばエス・ティ・ジャパン社製 VeeMax)に代えて測定しても良い。
(9)初期密着性
得られたフィルム塗布層面に下記に示す光硬化型アクリル樹脂組成及び硬化条件で3μmの光硬化型アクリル層を積層させた。この光硬化型アクリル層面に、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、光硬化型アクリル層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をつける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハン粘着テープを積層フィルムの光硬化型アクリル層面から引き剥がす作業を1回行った後、積層フィルムの光硬化型アクリル層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式から光硬化型アクリル層とベースフィルムとの密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準でランク分けをした。
密着性(%)=(1−剥がれたマス目の数/100)×100
◎:100%、または、光硬化型アクリル層の材破
○:99〜90%
△:89〜70%
×:69〜0%
(光硬化型アクリル樹脂組成)
清浄に保った厚さ1mmのSUS板上(SUS304)に、下記光硬化型アクリル系塗布液を約5gのせ、フィルム試料の塗布層面と光硬化型アクリル系塗布液が接するように重ね合わせ、フィルム試料の上から幅10cm、直径4cmの手動式荷重ゴムローラーで光硬化型アクリル系塗布液を引き延ばすように圧着した。次いで、フィルム面側から、高圧水銀灯を用いて800mJ/cmの紫外線を照射し、光硬化型アクリル樹脂を硬化させた。厚み20μmの光硬化型アクリル層を有するフィルム試料をSUS板から剥離し、光学機能性フィルムを得た。
(光硬化型アクリル系塗布液)
光硬化型アクリル樹脂 54.00質量%
(荒川化学工業製ビームセット505A−6)
光硬化型アクリル樹脂 36.00質量%
(荒川化学工業製ビームセット550)
光重合開始剤 10.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
(10)耐湿熱性
前記(2)と同様の方法で得られた光硬化型アクリル樹脂が積層された光学機能性フィルムを、高温高湿槽中で80℃、95%RHの環境下48時間放置した。次いで、光学機能性フィルムを取りだし、室温常湿で12時間放置した。その後、垂直にセロハン粘着テープを光学機能性フィルムの光硬化型アクリル層面から引き剥がす作業を5回行う以外は、前記(9)と同様の方法で光硬化型アクリル層とベースフィルムの接密着性を求め、下記の基準でランク分けをした。
◎:100%、または、光硬化型アクリル層の材破
○:99〜90%
△:89〜70%
×:69〜0%
(11)オキサゾリン価
オキサゾリンを含有する樹脂を凍結乾燥し、これをH−NMRにて分析し、オキサゾリン基に由来する吸収ピーク強度、その他のモノマーに由来する吸収ピーク強度から、オキサゾリン価を算出した。
(12)耐ブロッキング
2枚のフィルム試料を塗布層面同士が対向するように重ね合わせ、1kgf/cmの荷重を掛け、これを50℃の雰囲気下で24時間密着させ、放置した。その後、フィルムを剥離し、その剥離状態を下記の基準で判定した。
○:塗布層の転移がなく軽く剥離できる。
△:剥離音は発生し、部分的に塗布層が相手面に転移している。
×:2枚のフィルムが固着し剥離できないもの、あるいは剥離できても基材フィルムが劈開している。
(ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A−1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管および攪拌機を備えた反応器中で、窒素ガスを導入しながら、ヘキサメチレンジイソシアネート627.1質量部、50℃に加温した数平均分子量1000のメトキシポリエチレングリコール372.9質量部を仕込み、80℃で6時間反応させた。所定のイソシアネート基含有量に到達した後、スミス式薄膜蒸留器にて未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートaを得た。
次いで、温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で、室温下、窒素ガスを導入しながら、ジエタノールアミン83.9質量部を仕込んだ。冷却しながら、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートa916.1質量部を添加し、60℃で3時間反応させた。赤外スペクトルにて尿素結合の生成を確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールAを得た。
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、ポリイソシアネートとして、1,3−シクロヘキサンビス(メチルイソシアネート)53.7質量部と、数平均分子量2000のポリヘキサンジオールカーボネート88.6質量部と、ネオペンチルグリコール15.0質量部と、上記ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールAを52.9質量部と、有機溶媒として、アセトニトリル60質量部、N−メチルピロリドン30質量部とを仕込み、窒素雰囲気下で、反応液温度を75〜78℃に調整して、反応触媒としてオクチル酸第1錫(ナカライテスク社製)を0.06質量部加え、7時間で反応率99%以上まで反応させた。次いで、これを30℃まで冷却し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35%のポリカーボネート系ウレタン樹脂の水溶液(A−1)を調製した。
(ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A−2)の合成)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、ポリイソシアネートとして、1,3−シクロヘキサンビス(メチルイソシアネート)73.0質量部と、数平均分子量2000のポリヘキサンジオールカーボネート112.7質量部と、ネオペンチルグリコール11.7質量部と、ジメチロールプロピオン酸12.6質量部と、有機溶媒として、アセトニトリル60質量部、N−メチルピロリドン30質量部とを仕込み、窒素雰囲気下で、反応液温度を75〜78℃に調整して、反応触媒としてオクチル酸第1錫(ナカライテスク社製)を0.06質量部加え、7時間で反応率99%以上まで反応させた。次いで、これを30℃まで冷却し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35%のポリカーボネート系ウレタン樹脂の水溶液(A−2)を調製した。
(ポリエステル系ウレタン樹脂の(A−3)の合成)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン72.96質量部、ジメチロールプロピオン酸12.60質量部、ネオペンチルグリコール11.74質量部、分子量2000のポリエステルジオール(品番プラクセル220EB;ダイセル化学社製)112.70質量部、及び溶剤としてアセトニトリル85.00質量部、N−メチルピロリドン5.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.03質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35%のポリウレタン樹脂の水溶液(A−3)を調製した。
(ポリエーテル系ポリオールを構成成分とするウレタン樹脂(A−4)の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン72.96質量部、ジメチロールプロピオン酸12.60質量部、ネオペンチルグリコール11.74質量部、分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール112.70質量部、及び溶剤としてアセトニトリル85.00質量部、N−メチルピロリドン5.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.03質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35%のポリエーテル系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−4)を調製した。
(オキサゾリン基を有する樹脂(B−1)の合成)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール460.6部を仕込み、緩やかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート84部からなる単量体混合物と、ABN−E(日本ヒドラジン工業株式会社製の重合開始剤:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))21部およびイソプロピルアルコール189部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下ろうとにより2時間かけて滴下した。反応中は窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。滴下終了後も5時間同じ温度に保った後冷却し、オキサゾリン基を有する樹脂(B−1)を得た、得られたオキサゾリン基を有する樹脂(B−1)のオキサゾリン価は220g−solid/eq.であった。
(オキサゾリン基を有する樹脂(B−2)の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、平均分子量500のポリエチレングリコールモノメチルエーテル100部を仕込み、窒素気流下で140℃に昇温した。
次に、ガラス製反応器内の温度を140〜142℃に保持しながら、アクリル酸ブチル50部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン50部およびジ−tert−ブチルパーオキサイド10部それぞれを別々に2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、140〜142℃で2時間保持しながら攪拌して、ジ−tert−ブチルパーオキサイド0.5部を添加し、その後さらに140〜142℃で1.5時間保持しながら攪拌することによりオキサゾリン基を有する樹脂(B−2)、得られたオキサゾリン基を有する樹脂(B−2)のオキサゾリン価は440g−solid/eq.であった。
得られた重合体をイオン交換水に溶解させ固形分濃度25質量%の水溶液(B−2)を得た。

(オキサゾリン基を有する樹脂(B−3)の合成)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール460.6部を仕込み、緩やかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル213部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン58部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート123部からなる単量体混合物と、ABN−E(日本ヒドラジン工業株式会社製の重合開始剤:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))21部およびイソプロピルアルコール189部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下ろうとにより2時間かけて滴下した。反応中は窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。滴下終了後も5時間同じ温度に保った後冷却し、オキサゾリン基を有する樹脂(B−3)を得た、得られたオキサゾリン基を有する樹脂(B−3)のオキサゾリン価は550g−solid/eq.であった。
得られた重合体をイオン交換水に溶解させ固形分濃度25質量%の水溶液(B−3)を得た。
(共重合ポリエステル樹脂(C−1)の合成)
ジメチルテレフタレート(95質量部)、ジメチルイソフタレート(95質量部)、エチレングリコール(35質量部)、ネオペンチルグリコール(145質量部)、酢酸亜鉛(0.1質量部)および三酸化アンチモン(0.1質量部)を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(6.0質量部)を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量が19,500で、ガラス転移温度が62℃である共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂300質量部とブチルセロソルブ140質量部を160℃で3時間撹拌し粘稠な溶融液を得、この溶融液に水を徐々に添加し1時間後に均一な淡白色の固形分濃度35%の水分散液(C−1)を得た。
(実施例1)
(1)塗布液(A)の調合
下記の塗剤を混合し、塗布液(A)を調合した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−1) 13質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 4質量部

粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(PETペレットBの作製)
平均粒径2.3μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカ粒子をエチレングリコールに分散させ、不定形塊状シリカ粒子を濃度15質量%含有するエチレングリコールスラリーを作製した。
テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部、および三酸化アンチモン、酢酸マグネシウム(4水和物)を、生成ポリエチレンテレフタレート(PET)に対してSb原子として250ppm、Mg原子として65ppmを添加した後、攪拌した。その後、30℃以下に保持した状態で上記グリコールスラリーを、生成PETに対して2000ppmとなるよう添加してから、窒素で加圧し昇温を開始した。エステル化反応は、3.5Kg/cmG(ゲージ圧:0.34MPa)の加圧下で、240℃で2時間行った。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットし、不活性粒子を含有する固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットBを作製した。
(光学用易接着性ポリエステルフィルムの作製)
A層用原料として、不活性粒子を含有していない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットAを、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のPETペレットをA層用押出機(1)に供給した。B層用原料として、上述の樹脂ペレットAと、平均粒径2.3μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカ粒子を2000ppm含有した、固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットBを、90:10の比率で混合した後、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のPETペレットをB層用押出機(2)に供給した。押出機に供給したポリマーを、285℃に溶融した後、それぞれ濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が15μmの濾過材でろ過し、B層/A層/B層となるように積層し、積層比率が8/84/8となるように押出機の吐出量を調整した後、285℃でTダイスから層状に押出し、25℃の回転式冷却ロールに密着固化させて未延伸PETフィルムを得た。
得られた未延伸PETフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記の塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmの濾材で精密濾過し、乾燥後の最終(二軸延伸後)塗布量が0.1mg/mになるようにロールコート法で一軸配向PETフィルムの両面に塗布した。
引き続き、この一軸延伸PETフィルムをクリップ方式の横延伸機に導き、130℃で横方向に4.0倍延伸し、次いで230℃で熱固定処理した後、200℃で横方向に3%緩和処理し、厚み188μmの光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。
(実施例2)
実施例1において、フィルム厚みを250μmとした以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
実施例1において、B層/A層/B層の比率を12/76/12とした以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(B)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液(B)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(B)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−1) 10質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 7質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(実施例5)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(C)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液(C)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(C)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−1) 5質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 12質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(実施例6)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(D)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液(D)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(D)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−1) 10質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−2) 7質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(実施例7)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(E)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液(E)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(E)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−2) 10質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 7質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(実施例8)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(F)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液(F)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(F)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−1) 10質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−3) 7質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(比較例1)
実施例1において、樹脂ペレットBの代わりに、平均粒径2.3μmの塊状シリカを篩いに掛けて粗粒を除去して得た、平均粒径1.3μmの不定形塊状シリカを2000ppm含有した、固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットDを使用した以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは透明性には優れるが、製膜工程で発生するキズを低減することが出来なかった。また、シリカによる凝集異物が確認された。
(比較例2)
実施例1において、B層/A層/B層の比率を3/94/3とした以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に優れるが、粒子の脱落による工程汚染が発生しやすく、製膜工程で発生するキズが増加する傾向にあった。
(比較例3)
実施例1において、樹脂ペレットBの代わりに、平均粒径2.0μm、細孔容積1.2ml/gの不定形塊状シリカを2000ppm含有した、固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットEを使用した以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣り、粒子の脱落による工程汚染が発生しやすく、製膜工程で発生するキズが増加する傾向にあった。
(比較例4)
実施例1において、樹脂ペレットBの代わりに、平均粒径3.5μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカを2000ppm含有した、固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットEを使用した以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣り、フィッシュアイ状の異物が多い傾向にあった。
(比較例5)
実施例1において、樹脂ペレットAと樹脂ペレットBの比率を75:25とした以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣る結果となった。
(比較例6)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(G)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは耐湿熱性に劣る結果となった。
(塗布液(G)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(G)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−1) 17質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(比較例7)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(H)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは初期密着性と耐湿熱性に劣る結果となった。
(塗布液(H)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(H)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリエステル系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−3) 10質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 7質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(比較例8)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(I)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは耐湿熱性に劣る結果となった。
(塗布液(I)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(I)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリエーテル系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−4) 10質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 7質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(比較例9)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(J)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは耐湿熱性に劣る結果となった。
(塗布液(J)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(J)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリエステル系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−3) 7質量部
共重合ポリエステル樹脂の水溶液(C−1) 8質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 2質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(比較例10)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(K)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは初期密着性と耐湿熱性に劣る結果となった。
(塗布液(K)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(K)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−2) 13質量部
ヘキサメトキシメチルメラミン系架橋剤
スミマール(登録商標)M−100(住友化学社製:固形分20質量%の水分散液)
4質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(比較例11)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(L)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは耐湿熱性に劣る結果となった。
(塗布液(L)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(L)を作製した。
水 50質量部
イソプロパノール 31質量部
共重合ポリエステル樹脂の水溶液(C−1) 12質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 5質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
(比較例12)
実施例1において、塗布液(A)を塗布液(M)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは初期密着性に劣る結果となった。
(塗布液(M)の調合)
下記の塗剤を混合し、塗布液(M)を作製した。
水 45質量部
イソプロパノール 27質量部
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水溶液(A−1) 1質量部
オキサゾリン基を有する樹脂の水溶液(B−1) 25質量部
粒子 1質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 1質量部
Figure 2011140531
本発明による光学用易接着性ポリエステルフィルムを使用することで、光学欠陥が少なく輝度向上性能に優れ、耐ブロッキング性の有し、密着性と耐湿熱性に優れたレンズシートを容易に得ることが可能となる。

Claims (6)

  1. 基材フィルムの少なくとも片面に塗布層を有してなるポリエステルフィルムであって、
    前記塗布層はポリカーボネート系ウレタン樹脂とオキサゾリン基を有する樹脂を主成分とし、
    さらに前記塗布層中にオキサゾリン基が0.5〜4.0mmol/g含有し、
    前記基材フィルムは、最外層と少なくとも1層の中心層からなる3層以上の積層構成を有するポリエステルフィルムであり、
    前記基材フィルムの最外層は平均粒径2.1〜2.5μmの不活性粒子を含有し、
    前記基材フィルムの最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上11倍未満であり、
    前記基材フィルムの最外層表面における、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である表面突起の数の割合が30%以下であることを特徴とする、
    光学用易接着性ポリエステルフィルム。
  2. 前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂がポリオキシアルキレン基を有する、請求項1に記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。
  3. 前記最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008〜0.015μmであり、
    十点平均粗さ(SRz)が0.5〜1.5μmである、請求項1または2に記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。
  4. 前記最外層中の不活性粒子が細孔容積1.5〜2.0ml/gの不定形塊状シリカであり、
    前記最外層中の不活性粒子含有量が0.015〜0.03質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。
  5. 前記不活性粒子のうち10μm以上の粒径を有する粒子の数が全体の1%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載する光学用易接着性ポリエステルフィルムの前記塗布層にレンズ層を積層してなるレンズシート。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011251511A (ja) * 2010-06-04 2011-12-15 Toyobo Co Ltd レンズシート用ベースフィルム
JP2017217776A (ja) * 2016-06-04 2017-12-14 三菱ケミカル株式会社 積層体およびその製造方法

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