JP2011137777A - 角速度センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】位相調整を自動で行う事により、高い検出感度を常時安定して保つ角速度センサを提供する。
【解決手段】角速度センサにおいて、検出部により出力される検出信号から漏れ振動による変位量を抽出する第2同期検波部と、第2同期検波部により検出された振動子の変位量を平滑化する第2平滑手段と、入力した信号の位相を変化させて第1同期検波部へ出力する位相調整部とを有し、位相調整部は、位相調整部に入力した信号の位相を第2平滑手段の出力を角速度に依存させない様に調整して第2同期検波部に出力する事を特徴とする角速度センサを構成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、振動型角速度センサに関するものであり、特に、コリオリ力に応じた変位量に基づいて角速度の大きさを計測する角速度センサに関する。
従来の角速度センサにおいては、互いに直行する駆動軸及び検出軸に変位可能な振動子を、駆動軸方向に一定の周波数(駆動周波数)および一定振幅で駆動振動させ、この状態において、駆動軸及び検出軸に垂直な軸まわりに角速度が印加されると、角速度に比例したコリオリ力が検出軸方向に働き、振動子は検出軸方向に振動(コリオリ振動)する。このコリオリ振動を同期検波することによってコリオリ力による変位(コリオリ変位)を求めることができ、角速度の大きさを計測することが可能となる。
しかし、同期検波回路では文字通りコリオリ振動と正確に同期した基準信号を用いて検波しなければ、正確なコリオリ変位を求めることができない。位相ずれがある状態で同期検波を行うと、例えば、同期検波出力にオフセットが生じる場合や、検出感度が著しく低下する場合がある。また製造時のばらつき等により、個々の角速度センサ毎に位相の調整量は異なっており、同期検波での位相管理には、大変な労力と精密さが要求される。
この問題を解決するために、昨今複数の発明がなされてきた。特許文献1によれば、角速度が印加されていない状態における同期検波出力、即ちオフセット出力値を記憶し、オフセット出力値を零にする様に基準信号の位相を調整している。これにより、角速度検出感度の低下を抑制しつつ、角速度信号のオフセットを低減するものである。
まず、特許文献1に記載された発明に関して簡単に解説する。
特許文献1に記載された発明において、振動子は、角速度センサ内部で弾性的に支持されているので、振動子に働く力に応じて変位する。実際の角速度センサにおいては、コリオリ力以外にクアドラチャエラー(Quadrature Error)と呼ばれるコリオリ力と位相が90°ずれた力が働く。
クアドラチャエラーの発生メカニズムについて概説すると、駆動振動する際の振動子には、駆動軸方向の変位に応じた弾性力が働く。理想的な構造においては、弾性力は駆動軸方向のみに働くが、実際は振動子の支持構造の歪みにより弾性力が検出軸方向に漏れ込むため、検出軸方向にも振動子が振動する場合がある。以降では、この現象をもれ振動と呼称する。もれ振動の大きさは駆動振幅と振動子の支持構造の歪みに依存し、角速度には依存しない。尚、漏れ振動は、コリオリ振動と位相が90°ずれている。
次に、特許文献1に記載された発明の論理を、図6を用いて解説する。尚、図6は特許文献1に記載された発明における、同期検波回路への入力信号と基準信号の関係を表す。
特許文献1に記載された発明においては、角速度が発生していない状態で位相調整を行うためコリオリ振動は発生しない。したがって、この時の同期検波回路への入力はもれ振動のみであると考えることができる。同期検波回路は、例えば乗算器により構成されており、もれ振動と基準信号の乗算を行っている。この乗算結果を零にするには、両者の位相差を90°にすれば良い。即ち、乗算結果が零である時の基準信号の位相は、もれ振動と90°ずれている。その結果、基準信号の位相はコリオリ振動に対して同位相となる。
特許文献1に記載された発明は、以上の論理を用いて、基準信号とコリオリ振動の位相を調整し、両者を同期するものである。
特開2006−329634号公報
特許文献1に記載された発明においては、位相調整を行うための前提として、角速度が発生していない状態における同期検波回路への入力が、もれ振動のみで構成されていることが挙げられる。即ち、従来技術の課題は、角速度が発生していない状態において、もれ振動以外に同期検波回路への入力信号を構成する信号成分が生じている場合、位相調整を行うことができないことである。また、位相調整の方法について入念に検討を重ねた結果、もれ振動以外の振動成分が発生し得る事象を見出した。
その事象とは、振動子の検出軸方向の変位を容量変化により検出する電極の構造が不均一な場合、駆動振動に応じて電極の静電容量が変化してしまい、あたかも振動子が検出軸方向に変位している様な電気信号を生じる場合である。この疑似的な変位を、以降では疑似振動と呼称する。
次に、疑似信号が生じている場合において、特許文献1に記載された発明を適用した場合の位相調整結果について、図7および図9を用いて解説する。尚、図7は特許文献1に記載された発明における、擬似振動が生じている場合における同期検波回路への入力と基準信号の関係を表す。図9は前述した振動子にはたらく力および振動成分の位相の相関関係を表す。
特許文献1に記載された実施例の状態、即ち角速度が発生していない状態で位相調整を行う場合、コリオリ振動は発生しない。この時の同期検波回路への入力信号は、もれ振動および疑似振動の合成信号であると考えることができる。同期検波回路は、例えば乗算器により構成されており、入力信号と基準信号の乗算を行っている。この乗算結果を零にするには、両者の位相差を90°にすれば良い。即ち、乗算結果が零である時の基準信号の位相は、合成信号に対し90°ずれた位相となる。しかし、この時の合成信号の位相は、もれ振動および疑似振動の合成位相となる。図9に示す様に、もれ振動と疑似振動は位相が90°異なるため、これらの合成信号の位相はもれ振動および疑似振動の双方の位相に対して一致しない。即ち、基準信号の位相はコリオリ振動に対して同位相となることはない。つまり、従来の論理では、基準信号とコリオリ振動の位相を正確に同期させることができない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、もれ振動および疑似振動の影響を受けない手法を用いて位相調整を自動で行うことにより、高い検出感度を常時安定して保つ角速度センサを提供することにある。
前述した目的を達成するため、本発明は同期検波回路の入力信号を構成する各振動成分の角速度依存性に着目した。
コリオリ振動は角速度依存性を持つ。また、もれ振動は前述した様に、駆動振幅と振動子の支持構造の歪みに依存し、角速度には依存しない。また、疑似振動は前述した様に駆動振幅と電極構造の不均一性に依存しており、角速度依存性には依存しない。
従って、角速度依存性を有する信号成分はコリオリ振動のみである。即ち、角速度の変化(ΔΩ)に対して、同期検波出力の変化(ΔOUT)が最も大きい時の基準信号は、コリオリ振動に同期しているということである。逆に、ΔΩに対して、ΔOUTが零の時の基準信号は、もれ振動に同期しているということである。何故ならば、前述した様に、もれ振動とコリオリ振動の間には、常に90°の位相差があるからである。
本発明を用いた場合の位相調整結果について、図8を用いて解説する。尚、図8は本発明における、同期検波回路への入力と基準信号の関係を表す。
本発明においては検出精度確保の容易性から、ΔΩに対するΔOUTが零となる様に位相を調整する。まず、ΔOUT/ΔΩ=0となる様に、基準信号の位相を調整すると、基準信号ともれ振動を同期させることができる。次に、位相調整後の基準信号の位相を90°ずらした信号を生成する。この基準信号はコリオリ振動に同期しているため、振動子のコリオリ変位量を正確に検出することが可能である。
上記の論理を実際の角速度センサの位相調整方法に用いるため、本発明の一つとして、振動可能な振動子と、前記振動子を駆動軸方向に所定周波数で振動させる駆動信号を生成する駆動部と、前記振動子の駆動軸に垂直な検出軸方向の変位を検出する検出部と、前記検出部により出力される検出信号からコリオリ力による変位量を示す変位量を抽出する第1同期検波部と、前記第1同期検波部により検出された前記振動子の変位量を平滑化する第1平滑手段と、を備えた角速度センサにおいて、前記検出部により出力される検出信号から、前記振動子の駆動軸方向への振動が検出軸方向に漏れ込むことで生じる漏れ振動による変位量を抽出する第2同期検波部と、前記第2同期検波部により検出された前記振動子の変位量を平滑化する第2平滑手段と、入力した信号の位相を変化させて前記第1同期検波部へ出力する位相調整部を有し、前記位相調整部は、前記位相調整部に入力した信号の位相を、前記第2平滑手段の出力が角速度に依存しないように調整して前記第2同期検波部に出力する手段を有することを特徴とする角速度センサを構成する。
また、本発明の他の一つとして、振動可能な振動子と、前記振動子を駆動軸方向に所定周波数で振動させる駆動信号を生成する駆動部と、前記振動子の駆動軸に垂直な検出軸方向の変位を検出する検出部と、前記検出部により出力される検出信号からコリオリ力による変位量を抽出する第1同期検波部と、前記第1同期検波部により検出される変位量を零にする様なサーボ制御量を算出する第1サーボ制御部と、前記第1サーボ制御部により算出される制御量を、変調して振動子に帰還する第1変調手段と、入力した信号の位相を変化させて前記第1変調手段へ出力する位相調整部とを備えた角速度センサにおいて、前記検出部により出力される検出信号から、前記振動子の駆動軸方向への振動が検出軸方向に漏れ込むことで生じる漏れ振動による変位量を抽出する第2同期検波部と、前記第2同期検波部により検出される変位量を零にする様にサーボ制御量を算出する第2サーボ制御部と、前記第2サーボ制御部により算出される制御量を、変調して振動子に帰還する第2変調手段を有し、前記位相調整部は、前記位相調整部に入力した信号の位相を、前記第2サーボ制御部の出力を角速度に依存しないように調整して前記第2変調手段に出力する手段を有することを特徴とする角速度センサを構成する。
角速度センサにおいて、もれ振動および疑似振動の影響を受けない手法を用いて位相調整を自動で行うことにより、高い検出感度を常時安定して保つことができる。
第1の実施例における角速度センサの構成。 第1の実施例における位相ずれが同期検波出力に与える影響。 第1の実施例における位相調整時のタイミングチャート。 第2の実施例における角速度センサの構成。 第3の実施例における角速度センサの構成。 同期検波回路への入力信号と基準信号の関係。 同期検波回路への入力信号と基準信号の関係。 同期検波回路への入力信号と基準信号の関係。 振動子にはたらく力および振動成分の位相の相関関係。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の第1の実施例である角速度センサを図1および図2および図3により説明する。
尚、図1は本発明が提供する角速度センサの第1の実施例における構成を表す。図2は本発明が提供する角速度センサの第1の実施例における位相ずれが同期検波出力に与える影響を表す。図3は本発明が提供する角速度センサの第1の実施例における制御回路のタイミングチャートである。
第1の実施例における角速度センサは、振動子1と、振動子1に固定された固定電極及び対向する可動電極により構成された電極2,4,6と、駆動制御回路3と、搬送波発生器5と、CV変換器7及びAD変換器8により構成される検出部と、同期検波回路9,13と、ローパスフィルター(以下、LPF)10,14と、遅延素子15と、比較器16と、移相器11と、位相調整器12により構成する。
次に、第1の実施例における角速度センサの動作について述べる。
駆動制御回路3は、振動子1の駆動振動を電極2の容量変化Cxにより監視しており、駆動振動の周波数及び振幅が一定となる様に駆動力Vdrvを生成し、電極4を用いて振動子1に駆動力Vdrvを伝達し駆動振動を維持する。
また、搬送波発生器5は搬送波を生成し、振動子1に印加する。
次に、振動子1が駆動振動している状態において角速度が発生すると、角速度に比例したコリオリ力が生じ、このコリオリ力により振動子1が検出軸方向に変位(コリオリ変位)する。このコリオリ変位は搬送波で変調され、電極6の容量変化Cyとして検出する。
次に、電極6により検出した容量変化CyをCV変換器7を用いて電圧信号Vyに変換し、AD変換器8を用いてデジタル変換しSADを生成する。尚、この時搬送波成分の復調も同時に行う。
次に、同期検波回路13を用いてSADを同期検波する。この同期検波回路13は、例えば、乗算器により構成される。また、同期検波回路13には、位相調整器12の出力SINADJを入力する。このSINADJは駆動力Vdrvと同位相の基準信号SINを位相調整器12により位相を変化させた基準信号である。同期検波回路13では、このSINADJとSADとを乗算し、同期検波出力SS2を生成する。
次に、LPF14を用いてSS2を平滑化しSLPFを生成する。次に、遅延素子15を用いて、SLPFを遅延した信号SLPFDを生成する。この遅延素子15は、例えば、レジスタやメモリ素子等により構成される。次に、SLPFとSLPFDを比較器16に入力して比較を行い、比較器出力SCMPを生成する。この比較器16は、例えば、減算器により構成される。
ここで、同期検波回路13において、SADが含むもれ振動成分とSINADJが正確に同期していれば、図2に示す様に同期検波出力SS2はコリオリ変位の大きさによらず一定となり、比較器13の出力SCMPは常に零となる。一方、SADとSINADJが正確に同期していなければ、同期検波出力SS2にはコリオリ変位の大きさが反映され、角速度の大きさに応じてSS2が変化する様になる。すると、SLPFも経時的に角速度の大きさを反映して変化し、SLPFとSLPFDの間に差が生じ、比較器16の出力SCMPは零以外の値をとる。
次に、SCMPを位相調整器12に入力する。位相調整器12はSCMPの値に応じて位相調整量を変化する。そして、SCMPが零になる様にSINADJを調整し同期検波回路13に出力する。この位相調整ループにより、図3に示す様に、SADに含まれるもれ振動成分とSINADJの位相誤差が小さくなるに従ってSCMPの値も零に近づき、SLPFの値も一定値に収束する様に位相を調整することが可能となる。
ここで、もれ振動とコリオリ振動は位相が90°ずれていることが既知である。つまり、SCMPが零の状態でSINADJと90°位相がずれた信号COSADJを用いて、同期検波回路9によりSADを同期検波すると、同期検波出力SS1に正確なコリオリ変位を検出することが実現できる。本実施例においては、LPF10を用いてSS1の平滑化信号SOUTを角速度情報として外部に出力する。
次に、第1の実施例における角速度センサにより得られる利点について説明する。
第1の利点は、LPF14の出力が角速度の大きさによらず一定となる様に位相を調整することにより、SADが含むもれ振動成分とSINADJとを正確に同期させることができ、即ち、SADが含むコリオリ振動成分とSINADJを90°ずらしたCOSADJとを正確に同期させることが可能となる点である。その結果、高い角速度検出感度を実現する。
第2の利点は、LPF14の出力が角速度の大きさによらず一定となる様に位相調整するフィードバックループを形成することにより、位相調整の自動化を実現する点である。
第3の利点は、遅延素子15及び比較器16を用いてLPF14の出力の経時的変化を監視することにより、LPF14の出力の角速度による変化を常時監視することにより、位相ずれの常時調整を実現する点である。
第4の利点は、同期検波回路13及びLPF14及び遅延素子15及び比較器16を追加するだけの簡素な構成で、前記第1〜第3の利点を実現している点である。さらに、前記の構成追加はデジタル信号処理ソフト内部でのソフト追加で対応できるため、生産コストの増加を微小に抑えることが可能となる。
次に、本発明の第2の実施例である角速度センサを図4により説明する。
尚、図4は本発明が提供する角速度センサの第2の実施例における構成を表す。
第2の実施例における角速度センサは、第1の実施例における角速度センサにおける位相調整器12を、AD変換器8に後続し、且つ、同期検波回路9及び同期検波回路13の前段となる位置に配置を変更することにより構成する。
次に、第2の実施例における角速度センサの動作について述べる。
第2の実施例における角速度センサの動作は、第1の実施例における角速度センサにおいて、基準信号SIN及び移相器11を用いてSINの位相を90°ずらした信号COSの位相を調整する代わりに、AD変換器8の出力SADの位相を調整することにより、第1の実施例における角速度センサと同等の機能を実現する。
第2の実施例における角速度センサにより得られる利点は、第1の実施例で述べた利点と同様のため省略する。
次に、本発明の第3の実施例である角速度センサを図5により説明する。
尚、図5は本発明が提供する角速度センサの第3の実施例における構成を表す。
第3の実施例における角速度センサは、振動子1と、振動子1に固定された固定電極及び対向する可動電極により構成された電極2,4,6,17と、駆動制御回路3と、搬送波発生器5と、CV変換器7及びAD変換器8により構成される検出部と、同期検波回路9,13と、サーボ制御回路18,20と、変調回路19,21と、DA変換器22と、LPF10,14と、遅延素子15と、比較器16と、移相器11と、位相調整器12により構成する。
次に、第3の実施例における角速度センサの動作について述べる。
駆動制御回路3は、振動子1の駆動振動を電極2の容量変化Cxにより監視しており、駆動振動の周波数及び振幅が一定となる様に駆動力Vdrvを生成し、電極4を用いて振動子1に駆動力Vdrvを伝達し駆動振動を維持する。
また、搬送波発生器5は搬送波を生成し、振動子1に印加する。
次に、振動子1が駆動振動している状態において角速度が発生すると、角速度に比例したコリオリ力が生じ、このコリオリ力により振動子1が検出軸方向に変位(コリオリ変位)する。このコリオリ変位は搬送波で変調され、電極6の容量変化Cyとして検出する。
次に、電極6により検出した容量変化CyをCV変換器7を用いて電圧信号Vyに変換し、AD変換器8を用いてデジタル変換しSADを生成する。尚、この時搬送波成分の復調も同時に行う。
次に、同期検波回路9を用いてSADを同期検波する。この同期検波回路9は、例えば、乗算器により構成され、コリオリ変位量を検出することを目的とする。次に、同期検波回路9の出力SS1をサーボ制御回路18に入力する。サーボ制御回路18は振動子1の検出軸方向の変位が零を維持する様に、即ち、SS1が常に零になる様な制御量SSCを生成する。
また、同期検波回路13を用いてSADを同期検波する。この同期検波回路13は、例えば、乗算器により構成され、もれ振動による変位を検出することを目的とする。次に、同期検波回路13の出力SS2をサーボ制御回路20に入力する。サーボ制御回路20は振動子1の検出軸方向の変位が零を維持する様に、即ち、SS2が常に零になる様な制御量SSEを生成する。
次に、制御量SSCを変調回路19に入力する。また変調回路19には、位相調整器12の出力SINADJを入力する。このSINADJは駆動力Vdrvと同位相の基準信号SINを、位相調整器12により位相を変化させた基準信号である。変調回路19は、例えば乗算器により構成され、このSINADJとSADとを乗算し、コリオリ力と位相が180°ずれた信号SCを生成する。
また、制御量SSEを変調回路21に入力する。また変調回路21には、位相調整器12の出力COSADJを入力する。このCOSADJは駆動力Vdrvと同位相の基準信号SINを、移相器11を用いて位相を90°変化させ、さらに位相調整器12により位相を変化させた基準信号である。変調回路21は、例えば乗算器により構成され、このCOSADJとSSEとを乗算し、もれ振動を生じる力と位相が180°ずれた信号SEを生成する。
次に、変調回路19及び21により生成された信号SC及びSEをDA変換器22に入力する。DA変換器22は、SCとSEを電圧信号VSVOに変換し、電極17を用いて振動子1の検出軸方向にサーボ力FSVOを加える。このサーボ力FSVOにより振動子1の検出軸方向への変位が抑制され、振動子1の検出軸方向に対するサーボ制御を実現している。
次に、LPF14を用いてSSEを平滑化しSLPFを生成する。次に、SLPFを遅延素子15を用いて遅延した信号SLPFDを生成する。この遅延素子15は、例えば、レジスタやRAM等の記憶手段により構成する。次に、SLPFとSLPFDを比較器16に入力して比較を行い、比較器出力SCMPを生成する。この比較器16は、例えば、減算器により構成される。
ここで、SSEに応じたサーボ力ともれ振動を生じる力が正確に釣り合っていれば、もれ振動には角速度依存性がないため、SSEはコリオリ力の大きさによらず一定となり、比較器13の出力SCMPは常に零となる。一方、釣り合っていなければ、SSEにはコリオリ力の大きさの影響を受け、角速度の大きさに応じて変化する様になる。すると、SLPFも経時的に角速度の大きさを反映して変化し、SLPFとSLPFDの間に差が生じ、比較器16の出力SCMPは零以外の値をとる。
次に、SCMPを位相調整器12に入力する。位相調整器12はSCMPの値に応じて位相調整量を変化する。そして、SCMPが零になる様にCOSの位相を調整したCOSADJを変調回路21に出力する。この位相調整ループにより、VSVOに含まれるSEの電圧変換成分ともれ振動を生じる力の位相誤差が小さくなるに従ってSCMPの値も零に近づき、SLPFの値も一定値に収束する様に位相を調整することが可能となる。
ここで、もれ振動を生じる力とコリオリ力は位相が90°ずれていることが既知である。つまり、SCMPが零の状態でCOSADJと90°位相がずれた信号SINADJを用いて変調回路19によりSSCを変調すると、変調回路19の出力SCとコリオリ力とを正確に釣り合わせることが可能となる。本実施例においては、LPF10を用いてSSCの平滑化信号SOUTを角速度情報として外部に出力する。
次に、第3の実施例における角速度センサにより得られる利点について説明する。
第1の利点は、LPF14の出力が角速度の大きさによらず一定となる様に位相を調整することにより、SEに応じたサーボ力ともれ振動を生じる力とを正確に釣り合せることができ、即ち、SCに応じたサーボ力とコリオリ力とを正確に釣り合せることが可能となる点である。その結果、高い角速度検出感度を実現する。
第2の利点は、LPF14の出力が角速度の大きさによらず一定となる様に位相調整するフィードバックループを形成することにより、位相調整の自動化を実現する点である。
第3の利点は、遅延素子15及び比較器16を用いてLPF14の出力の経時的変化を監視することにより、LPF14の出力の角速度による変化を常時監視することにより、位相ずれの常時調整を実現する点である。
1 振動子
2,4,6,17 電極
3 駆動制御回路
5 搬送波発生器
7 CV変換器
8 AD変換器
9,13 同期検波回路
10,14 LPF
11 移相器
12 位相調整器
15 遅延素子
16 比較器
18,20 サーボ制御回路
19,21 変調回路
22 DA変換器

Claims (9)

  1. コリオリ力に応じた変位量を検出することにより、角速度の大きさを検出する角速度センサであって、
    振動可能な振動子と、
    前記振動子を駆動軸方向に所定周波数で振動させる駆動信号を生成する駆動部と、
    前記振動子の駆動軸に垂直な検出軸方向の変位を検出する検出部と、
    前記検出部により出力される検出信号からコリオリ力による変位量を示す変位量を抽出する第1同期検波部と、
    前記第1同期検波部により検出された前記振動子の変位量を平滑化する第1平滑手段と、
    を備えた角速度センサにおいて、
    前記検出部により出力される検出信号から、前記振動子の駆動軸方向への振動が検出軸方向に漏れ込むことで生じる漏れ振動による変位量を抽出する第2同期検波部と、
    前記第2同期検波部により検出された前記振動子の変位量を平滑化する第2平滑手段と、
    入力した信号の位相を変化させて前記第1同期検波部へ出力する位相調整部を有し、
    前記位相調整部は、前記位相調整部に入力した信号の位相を、前記第2平滑手段の出力が角速度に依存しないように調整して前記第2同期検波部に出力する手段を有することを特徴とする角速度センサ。
  2. 請求項1において、
    前記位相調整部は、前記駆動信号に同期した基準信号及び前記基準信号から1/4周期ずれた信号を入力とし、
    前記第1同期検波部及び第2同期検波部は、前記検出部の出力及び前記位相調整部の出力を入力とし、
    前記第1同期検波部は、検出部の出力および前記位相調整部によって位相調整された基準信号を入力とし、
    前記第2同期検波部は、検出部の出力および前記位相調整部によって位相調整された基準信号を1/4周期ずらした信号を入力とすることを特徴とする角速度センサ。
  3. 請求項1において、
    前記位相調整部は、前記検出部の出力を入力とし、
    前記第1同期検波部は、前記位相調整部の出力及び前記駆動信号に同期した基準信号を入力とし、
    前記第2同期検波部は、前記位相調整部の出力及び前記駆動信号に同期した基準信号を1/4周期ずらした信号を入力とすることを特徴とする角速度センサ。
  4. 請求項1において、
    前記位相調整部に入力した信号の位相を、前記第2平滑手段の出力が角速度に依存しないように調整して前記第2同期検波部に出力する手段は、
    前期第2平滑手段の出力を所定期間遅延する遅延手段と、
    前記第2平滑手段の出力と前記遅延手段の出力との差分を検出する比較手段とを有することを特徴とする角速度センサ。
  5. 請求項1において、
    前記位相調整部に入力した信号の位相を、前記第2平滑手段の出力が角速度に依存しないように調整して前記第2同期検波部に出力する手段は、
    前期第2平滑手段の出力を所定期間記憶する記憶手段と、
    前記第2平滑手段の出力と前記記憶手段により記憶された値との差分を検出する比較手段とを有することを特徴とする角速度センサ。
  6. コリオリ力に応じた変位量を検出することにより、角速度の大きさを検出する角速度センサであって、
    振動可能な振動子と、
    前記振動子を駆動軸方向に所定周波数で振動させる駆動信号を生成する駆動部と、
    前記振動子の駆動軸に垂直な検出軸方向の変位を検出する検出部と、
    前記検出部により出力される検出信号からコリオリ力による変位量を抽出する第1同期検波部と、
    前記第1同期検波部により検出される変位量を零にする様なサーボ制御量を算出する第1サーボ制御部と、
    前記第1サーボ制御部により算出される制御量を、変調して振動子に帰還する第1変調手段と、
    入力した信号の位相を変化させて前記第1変調手段へ出力する位相調整部とを備えた角速度センサにおいて、
    前記検出部により出力される検出信号から、前記振動子の駆動軸方向への振動が検出軸方向に漏れ込むことで生じる漏れ振動による変位量を抽出する第2同期検波部と、
    前記第2同期検波部により検出される変位量を零にする様にサーボ制御量を算出する第2サーボ制御部と、
    前記第2サーボ制御部により算出される制御量を、変調して振動子に帰還する第2変調手段を有し、
    前記位相調整部は、前記位相調整部に入力した信号の位相を、前記第2サーボ制御部の出力を角速度に依存しないように調整して前記第2変調手段に出力する手段を有することを特徴とする角速度センサ。
  7. 請求項6において、
    前記位相調整部は、前記駆動信号に同期した基準信号及び前記基準信号から1/4周期ずれた信号を入力とし、
    前記第1変調手段は、第1サーボ制御部の出力および前記位相調整部によって位相調整された基準信号を入力とし、
    前記第2変調手段は、第2サーボ制御部の出力および前記位相調整部によって位相調整された基準信号から1/4周期ずれた信号を入力とすることを特徴とする角速度センサ。
  8. 請求項6において、
    前記位相調整部に入力した信号の位相を、前記第2サーボ制御部の出力を角速度に依存しない様に調整して前記第2変調手段に出力する手段は、
    前期第2サーボ制御部の出力を所定期間遅延する遅延手段と、
    前記第2サーボ制御部の出力と前記遅延手段の出力との差分を検出する比較手段とを有することを特徴とする角速度センサ。
  9. 請求項6において、
    前記位相調整部に入力した信号の位相を、前記第2サーボ制御部の出力を角速度に依存しない様に調整して前記第2変調手段に出力する手段は、
    前期第2サーボ制御部の出力を所定期間記憶する記憶手段と、
    前記第2サーボ制御部の出力と前記記憶手段により記憶された値との差分を検出する比較手段とを有することを特徴とする角速度センサ。
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