JP2011137631A - 蒸気発生システム - Google Patents

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Abstract

【課題】エネルギー効率の高い蒸気発生システムを提供する。
【解決手段】本発明の蒸気発生システムは、被加熱媒体が流れる供給経路20と、ヒートポンプ10とを備えている。ヒートポンプ10は、作動媒体の流れ方向に並ぶ吸熱部11と、圧縮部12と、第1放熱部13Aと、第2放熱部13Bと、膨張部14とを有している。ヒートポンプ10における第2放熱部13B及び第1放熱部13Aがその順に、供給経路20内の被加熱媒体を加熱する。
【選択図】図1

Description

本発明は、蒸気発生システムに関する。
蒸気発生システムとしては、ボイラで燃料を燃焼させて被加熱媒体を加熱する構成が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−249450号公報
ボイラのエネルギー効率は一般に約0.8(80%)である。環境問題に対する意識の高まりとともに、蒸気発生システムに関して、より一層のエネルギー効率の向上が望まれている。
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー効率の高い蒸気発生システムを提供することにある。
本発明の蒸気発生システムは、被加熱媒体の供給経路と、ヒートポンプと、を備え、前記ヒートポンプは、作動媒体の流れ方向に並ぶ吸熱部、圧縮部、第1放熱部、第2放熱部、及び膨張部を有し、前記第2放熱部及び前記第1放熱部がその順に、前記供給経路内の前記被加熱媒体を加熱する、ことを特徴とする。
本発明の蒸気発生システムによれば、ヒートポンプを用いることにより、ボイラに比べて高いエネルギー効率が得られる。また、この蒸気発生システムでは、段階的に前記被加熱媒体を加熱する複数の加熱部(第1放熱部及び第2放熱部)をヒートポンプが有するから、被加熱媒体の加熱プロセス及びヒートポンプの構成の最適化が図られる。
本発明の蒸気発生システムにおいて、前記供給経路内の前記被加熱媒体が、前記第2放熱部からの熱によって沸点近くまで温度上昇し、前記第1放熱部からの熱によって相変化して蒸気になる、構成にできる。
本発明の蒸気発生システムにおいて、前記ヒートポンプは、前記第1放熱部からの前記作動媒体の一部が前記第2放熱部を迂回するバイパス経路をさらに有する、構成にできる。
この構成において、前記バイパス経路は、入口端が前記ヒートポンプの主経路における前記第1放熱部と前記第2放熱部との間に接続され、出口端が前記ヒートポンプの主経路における前記第2放熱部と前記膨張部との間に接続される、ようにできる。
また、前記ヒートポンプは、前記バイパス経路内の前記作動媒体によって、前記吸熱部からの前記作動媒体を加熱する再生器をさらに有する、ようにできる。
また、前記再生器は、前記ヒートポンプにおける前記吸熱部と前記圧縮部との間に配される、ようにできる。
本発明の蒸気発生システムにおいて、前記圧縮部が、前記作動媒体を多段に圧縮する構造を有し、前記第2放熱部、前記第1放熱部、及び前記圧縮部の段間放熱部がその順に、前記供給経路内の前記被加熱媒体を加熱する、構成にできる。
本発明の蒸気発生システムにおいて、前記被加熱媒体が水であり、前記作動媒体がアンモニアまたはフロン系媒体である、構成にできる。
本発明の蒸気発生システムにおいて、前記供給経路上に配置され、前記ヒートポンプで加熱された前記被加熱媒体を圧縮する圧縮機をさらに備える、構成にできる。
この構成において、前記供給経路内の前記被加熱媒体が、前記ヒートポンプによる加熱で比較的低圧力かつ低温度の蒸気となり、前記圧縮機による圧縮で比較的高圧力かつ高温度の蒸気となる、ようにできる。
また、前記供給経路における前記ヒートポンプによる加熱部位での内部圧力が大気圧に比べて低い、ようにできる。
また、前記供給経路内の前記被加熱媒体が、前記ヒートポンプによる加熱で大気圧に比べて低い負圧での飽和蒸気となり、前記圧縮機による圧縮で大気圧または大気圧よりも高い圧力での蒸気になる、ようにできる。
また、前記供給経路における前記ヒートポンプによる加熱部位での内部空間が、前記圧縮機によって減圧される、ようにできる。
また、前記被加熱媒体の蒸気に対して液状の前記被加熱媒体を供給するノズルを、さらに備えるようにできる。
本発明に係る蒸気発生システムの第1実施形態を示す概略図である。 蒸気発生システムによる水の状態変化の一例を示す T-s 線図である。 本発明に係る蒸気発生システムの第2実施形態を示す概略図である。 熱交換に伴う、被加熱媒体とヒートポンプの作動媒体との温度変化の一例を模式的に示すグラフ図である。 熱交換に伴う、被加熱媒体とヒートポンプの作動媒体との温度変化の一例を模式的に示すグラフ図である。 ヒートポンプの作動媒体の状態変化の一例を示す T-s 線図である。 ヒートポンプの作動媒体の状態変化の一例を示す H-s 線図である。 本発明に係る蒸気発生システムの第3実施形態であり、図3の蒸気発生システムの変形例である。 本発明に係る蒸気発生システムの第4実施形態であり、図3の蒸気発生システムの別の変形例である。 本発明に係る蒸気発生システムの第5実施形態であり、図3の蒸気発生システムの別の変形例である。
以下、本発明に係る蒸気発生システムについて図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る蒸気発生システムの第1実施形態を示す概略図である。
図1において、蒸気発生システムS1は、ヒートポンプ10と、被加熱媒体(本例では水)の供給経路20と、圧縮機30とを備えている。
ヒートポンプ10は、蒸発、圧縮、凝縮、及び膨張の各工程からなるサイクルにより、低温の物体から熱を汲み上げ、高温の物体に熱を与える装置である。ヒートポンプは一般に、エネルギー効率が比較的高く、結果として、二酸化炭素等の排出量が比較的少なく、環境に優しいという利点を有する。
具体的に、ヒートポンプ10は、吸熱部11、圧縮部12、放熱部(第1放熱部13A、第2放熱部13B)、及び膨張部14を有し、これらは配管を介して順次接続されている。吸熱部11では、主経路15内を流れる作動媒体がサイクル外の熱源(例えば大気)の熱を吸収する。圧縮部12は、圧縮機等によって作動媒体を圧縮する。この際、通常、作動媒体の温度が上がる。圧縮部12には動力が供給される。放熱部13A,13Bは、圧縮部12からの高温の作動媒体が流れる配管を含む。また、放熱部13A,13Bはその順に、作動媒体の流れ方向に直列に並んでおり、主経路15内を流れる作動媒体の熱をサイクル外の熱源に与える。膨張部14は、減圧弁またはタービン等によって作動媒体を膨張させる。この際、通常、作動媒体の温度が下がる。タービンを使用した場合には膨張部14から動力を取り出すことができ、その動力を例えば圧縮部12に供給してもよい。ヒートポンプ10に使用される作動媒体としては、アンモニア、フロン系媒体、水、二酸化炭素、空気などの公知の様々な熱媒体が適用される。
供給経路20は、加温部21と、蒸発部22と、蒸発部22と圧縮機30とを接続するダクト23とを有する。
加温部21は、供給源からの水が流れる配管を含み、ヒートポンプ10の第2放熱部13Bに隣接して配置される。加温部21と第2放熱部13Bとを含んで第1熱交換器40が構成される。第1熱交換器40は、本例では、低温の流体(供給経路20内の水)と高温の流体(ヒートポンプ10内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有するが、第1熱交換器40は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有してもよい。加温部21では、ヒートポンプ10の第2放熱部13Bからの熱によって、供給経路20内の水が温度上昇する。
蒸発部22は、液状の被加熱媒体(水)を貯溜するタンク47と、循環配管48とを含む。
タンク47または循環配管48には、加温部21からの水の供給口と、蒸気の排出口とが設けられる。循環配管48の入口端と出口端とはそれぞれタンク47に接続される。循環配管48の少なくとも一部が、ヒートポンプ10の第1放熱部13Aに隣接して配置される。循環配管48と第1放熱部13Aとを含んで第2熱交換器41が構成される。第2熱交換器41は、低温の流体(循環配管48内の水)と高温の流体(ヒートポンプ10内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造、あるいは、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造などを有する。ヒートポンプ10の第1放熱部13Aが、循環配管48の外周面や内部に配設された構成を採用してもよい。タンク47内には、循環配管48の出口端に隣接して、必要に応じて気液分離器49が配設される。
蒸発部22では、加温部21で温度上昇した水が供給口を介してタンク47に供給される。タンク47内の液面が所定範囲内になるように、タンク47への水の供給量が制御される。例えば、タンク47内の液面を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて、水の供給量が制御される。タンク47及び循環配管48内に水が貯溜され、また、ヒートポンプ10の第1放熱部13Aによって循環配管48内の水が加熱される。この加熱に伴い、循環配管48内を水(及び蒸気)が流れる。タンク47の内部空間は、タンク47の排出口及びダクト23を介して圧縮機30によって吸引される。タンク47内で発生した蒸気は、ダクト23内を圧縮機30に向けて流れる。
圧縮機30は、供給経路20上に配設され、その配設位置はタンク47に対して下流である。圧縮機30としては、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機が適用され、蒸気圧縮に適するものが用いられる。圧縮機30は、タンク47からの蒸気を圧縮し、昇圧した蒸気を下流に流す。
圧縮機30(または供給経路20)には、蒸気に対して水を供給するノズル35が、必要に応じて配設される。ノズル35の配設位置は、例えば、圧縮機30の入口及び出口の少なくとも一方である。圧縮機30が多段式である場合には、ノズル35を圧縮機30の段間に配設することができる。ノズル35とタンク47の液相位置とが配管36を介して接続された配管構成にすることもでき、この配管構成では、比較的高温であるタンク47内の液体がノズル35への供給に有効利用される。ノズル35からの液体の排出には、ポンプなどの動力源を用いてもよく、配管の入口と出口との圧力差を利用してもよい。
圧縮機30による吸引作用により、供給経路20におけるヒートポンプ10による加熱部位での内部空間、すなわちタンク47の内部空間が減圧される。タンク47の内部圧力が大気圧に比べて低い負圧(陰圧)となるように、供給経路20上の制御弁(流量制御弁など。不図示)や圧縮機30が制御される。この制御は、例えば、タンク47の内部圧力を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて行われる。
また、タンク47及びヒートポンプ10は、タンク47の内部空間が負圧状態において、水が蒸発するように設計(容量設計、能力設計など)されている。ヒートポンプ10の成績係数は、被加熱媒体(水)の入力温度と出力温度との差に応じて変化し、その温度差が過度に大きいと成績係数(COP)が低下する場合がある。タンク47の内部空間が負圧状態であるという条件により、加熱温度領域(入出力温度差)を比較的狭く設定し、高いCOPでのヒートポンプ10の使用が可能である。本例において、例えば、水の入力温度は約20℃であり、蒸発部22からの水の出力温度は約90℃である。
このような蒸気発生システムS1においては、供給経路20内の水が、ヒートポンプ10による加熱で蒸気になる。具体的には、供給経路20内の水が、第1熱交換器40においてヒートポンプ10の第2放熱部13Bからの熱によって沸点近くまで温度上昇し、その後、第2熱交換器41において第1放熱部13Aからの熱によってその水が相変化して蒸発する。つまり、水の顕熱加熱及び潜熱加熱がそれぞれ別々の熱交換器40,41(放熱部13A,13B)によって段階的に行われる。
そのため、この蒸気発生システムS1によれば、第2放熱部13Bを含む第1熱交換器40が顕熱交換に適した形態であり、第1放熱部13Aを含む第2熱交換器41が潜熱交換に適した形態であるといった、装置構成の最適化が図られ、これに応じて、好ましい加熱プロセスを経て蒸気が発生する。
ボイラのエネルギー効率が一般に約0.8(80%)であるのに対して、ヒートポンプのエネルギー効率としての成績係数(COP:coefficient of performance)は一般に2.5〜5.0である。前述したように、ヒートポンプの成績係数は、被加熱媒体(水)の入出力温度差に応じて変化し、比較的高い入出力温度差においてその成績係数が低下する傾向がある。蒸気発生システムS1では、顕熱交換及び潜熱交換に対応してヒートポンプが個別の加熱部(放熱部13A,13B)を有することにより、ボイラに比べて高いエネルギー効率で蒸気を発生させることができる。
さらに、蒸気発生システムS1では、供給経路20内の水が、ヒートポンプ10(放熱部13A,13B)による加熱で比較的低圧力かつ低温度の蒸気となり、圧縮機30による圧縮で比較的高圧力かつ高温度の蒸気となる。すなわち、ヒートポンプ10で加熱された水が、圧縮機30による圧縮によってさらに加熱され、これにより、100℃以上の高温蒸気が発生する。蒸気発生システムS1からの蒸気は、外部の所定施設、例えば製造プラント、調理施設、空調設備、発電プラントなどに供給される。
図2は、蒸気発生システムS1による水の状態変化の一例を示す T-s 線図である。
図2に示すように、水は、第1熱交換器40(図1参照)において沸点近くまで温度上昇した後、温度一定のまま第2熱交換器41において相変化する。このとき、大気圧(P1=1atm=約0.1MPa)に比べて低い負圧P0の状態において、飽和蒸気d0が発生する。飽和蒸気d0の温度は標準沸点よりも低い、例えば約90℃である。
次に、その飽和蒸気d0は、圧縮機30(図1参照)による圧縮で比較的高圧力かつ高温の蒸気(過熱蒸気e2)になる。すなわち、上記圧縮に伴って、蒸気が温度上昇する。過熱蒸気e2の圧力P2は大気圧よりも高い、例えば0.8MPaである。
0.8MPaの過熱蒸気e2を定圧下で冷却することにより、約160℃の飽和蒸気を得ることができる(図2の破線a)。同様に、大気圧(約0.1MPa)の過熱蒸気を定圧下で冷却することにより、約100℃の飽和蒸気d1を得ることができる。
過熱蒸気から飽和蒸気への冷却に、液状の水または温水を直接混入することにより、蒸気のボリュームが増加する。この場合、例えば、圧縮機30の出口において蒸気に対して水または温水が供給される。
さらに、水または温水の供給量及びタイミングの最適化により、比較的低圧力かつ低温度の飽和蒸気d0から比較的高圧力かつ高温度の飽和蒸気d2への変化を、より直接的にできる。例えば、圧縮機30の入口及び/又は中間で適量の水または温水が蒸気に供給されることにより、圧縮機30の入口での飽和蒸気d0が、圧縮機30の出口で飽和蒸気d2に変化する(図2の破線b)。すなわち、圧縮機30による圧縮と水または温水による冷却との組み合わせの最適化により、圧縮機30から飽和状態に近い蒸気を排出することができる。
このように、蒸気発生システムS1では、ヒートポンプ10による2段加熱と圧縮機30による加熱とを含む3段順次加熱により、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれも容易に発生させることができる。すなわち、ヒートポンプ10による加熱で大気圧に比べて低い負圧での飽和蒸気を発生させた後、圧縮機30による圧縮で大気圧または大気圧よりも高い圧力での過熱蒸気または飽和蒸気を発生させることができる。つまり、蒸気発生システムS1は、蒸気仕様に対する柔軟性が高い。
さらに、蒸気発生システムS1は、蒸気発生のための加熱過程の一部を圧縮機30が補うから、高いCOPでヒートポンプ10が使用され、したがって、蒸気発生システムS1は、全体としての一次エネルギーの節減が期待される。すなわち、蒸気発生システムS1によれば、被加熱媒体(水)に対する比較的高温域の加熱のために圧縮機30が利用されるから、熱伝達による加熱と比較して、温度上昇の短時間化及び熱損失の抑制に有利である。
図3は、本発明に係る蒸気発生システムの第2実施形態を示す概略図である。
図3において、蒸気発生システムS2は、ヒートポンプ50と、被加熱媒体(本例では水)の供給経路20と、多段式の圧縮部60とを備えている。
供給経路20の構成は、図1の蒸気発生システムS1のそれと同様である。ヒートポンプ50は、図1のヒートポンプ10と同様の構成に加え、バイパス経路51と、再生器52とを有する。以下の説明では、蒸気発生システムS2について、図1の蒸気発生システムS1と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
バイパス経路51の入口端がヒートポンプ50の主経路15における第1放熱部13Aと第2放熱部13Bとの間の配管に接続され、出口端が主経路15における第2放熱部13Bと膨張部14との間の配管に接続される。バイパス経路51の入口に、作動媒体のバイパス流量を制御する流量制御弁が配設されてもよい。バイパス経路51において、第1放熱部13Aからの作動媒体の一部が、第2放熱部13Bを迂回し、膨張部14の手前で第1放熱部13Aからの作動媒体と合流する。第1放熱部13Aからの残りの作動媒体は、第2放熱部13Bを流れ、第1熱交換器40においてその作動媒体と供給経路20内の水とが熱交換する。
再生器52は、バイパス経路51の配管と、ヒートポンプ50の主経路15の配管(吸熱部11と圧縮部60との間の配管)とが、互いに隣接して配置された構成を有する。ヒートポンプ50において、吸熱部11からの作動媒体に比べて、第1放熱部13Aからの作動媒体は高温である。再生器52において、バイパス経路51を流れる第1放熱部13Aからの作動媒体と、ヒートポンプ50の主経路15を流れる吸熱部11からの作動媒体とが熱交換する。この熱交換により、バイパス経路51内の作動媒体の温度が降下し、主経路15内の作動媒体の温度が上昇する。なお、再生器52は、低温の流体(主経路15内の作動媒体)と高温の流体(バイパス経路51内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造、あるいは、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造などを有する。
圧縮部60は、作動媒体を多段に圧縮する構造を有する。その段数は、2段でもよく、3段以上でもよい。水の供給経路20における蒸発部22の循環配管48と、多段式の圧縮部60の段間放熱部61とが互いに隣接して配置される。循環配管48、圧縮部60の段間放熱部61、及び第1放熱部13A、を含んで第2熱交換器65が構成される。第2熱交換器65は、低温の流体(循環配管48内の水)と高温の流体(ヒートポンプ50内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造、あるいは、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造などを有する。
このような蒸気発生システムS2においては、第2放熱部13B、第1放熱部13A、及び圧縮部60の段間放熱部61がその順に、供給経路20内の水を加熱する。具体的には、供給経路20内の水が、第1熱交換器40においてヒートポンプ50の第2放熱部13Bからの熱によって沸点近くまで温度上昇し、その後、第2熱交換器65において第1放熱部13Aからの熱及び圧縮部60の段間放熱部61からの熱によってその水が相変化して蒸発する。つまり、水の顕熱加熱及び潜熱加熱がそれぞれ別々の熱交換器40,65によって段階的に行われる。一方、作動媒体は、水との熱交換により、温度一定のまま蒸気から液体へ相変化し、その後に、温度降下する。
バイパス経路51を介して作動媒体の一部が第1熱交換器40を迂回するから、第1熱交換器40に入る作動媒体の流量の最適化が図られる。これは、次に説明するように、作動媒体の保有熱を有効に使う上で有利である。
図4及び図5は、熱交換に伴う、被加熱媒体とヒートポンプの作動媒体との温度変化の一例を模式的に示すグラフ図であり、図4は先の蒸気発生システムS1(図1)に対応し、図5は蒸気発生システムS2(図3)に対応する。本例では、被加熱媒体は水(HO)であり、作動媒体はアンモニア(NH)である。
図4及び図5に示すように、水は、アンモニアとの熱交換により、沸点近くまで温度上昇した後、温度一定のまま液体から蒸気に相変化する。例えば、水の入力温度は約20℃であり、出力温度は約90℃である。アンモニアは、水との熱交換により、温度一定のまま蒸気から液体へ相変化し、その後に、温度降下する。
図4に示すように、先の蒸気発生システムS1では、水の温度上昇過程(顕熱)と相変化過程(潜熱)との間で実質的に同量のアンモニアが熱交換に用いられるから、水とアンモニアとの間での温度の逆転(図4の破線)の回避のために、アンモニアの出力温度を一定値以上にする必要がある。これは、アンモニアに比べて、水の蒸発熱が大きいことによる。先の蒸気発生システムS1では、例えば、アンモニアの入口温度は約100℃、出口温度は約80℃に設定される。
一方、図5に示すように、蒸気発生システムS2では、アンモニアの流れ方向に関して後段の熱交換器(第1熱交換器40)を、アンモニアの一部が迂回するから、蒸気発生システムS1に比べて、アンモニアの出力温度を低くできる。すなわち、水の温度上昇(顕熱)及び相変化(潜熱)の各過程に対して、アンモニアの必要量が最適化される。蒸気発生システムS2では、例えば、アンモニアの入口温度は約100℃、出口温度は約30℃に設定される。
図3に戻り、蒸気発生システムS2では、バイパス経路51を介して作動媒体の一部が第1熱交換器40を迂回することにより、第1熱交換器40への作動媒体の流入量が制御され、その結果、第1熱交換器40及び第2熱交換器65のそれぞれに対して、必要に応じた熱量を有する作動媒体が供給される。
バイパス経路51を流れる作動媒体は、再生器52において、ヒートポンプ50の主経路15を流れる吸熱部11からの作動媒体と熱交換する。この熱交換により、バイパス経路51内の作動媒体の温度が降下し(例えば約20℃)、ヒートポンプ50の主経路15内の作動媒体の温度が上昇する(例えば約95℃)。圧縮部60に対する作動媒体の入力温度の上昇により、圧縮部60の動力の低減化が図られる。
作動媒体のバイパス量は、被加熱媒体及び作動媒体の各物性値(比熱など)に応じて定められる。被加熱媒体が水でありかつ、作動媒体がアンモニアである場合には、第2熱交換器65に対する作動媒体の供給量に対して、バイパス量がモル比で50%程度であるのが好ましい。この場合、先の図5に示したように、顕熱及び潜熱のそれぞれにおいて水とアンモニアとの間の熱バランスが良い。さらに、アンモニアの液相の比熱が気相の比熱の約2倍であることから、再生器52におけるアンモニア同士の熱バランスも良い。アンモニアに代えて、フロン系媒体を用いた場合もこれと同様である。
再生器52で温度降下したバイパス経路51内の作動媒体(例えば約20℃)は、膨張部14の手前で、ヒートポンプ50の主経路15を流れる第1熱交換器40(第2放熱部13B)からの作動媒体と合流する。前述したように、第1熱交換器40からの作動媒体の出力温度は比較的低く設定される(例えば約30℃)。膨張部14に対する作動媒体の入力温度の降下により、作動媒体の液ガス比の最適化が図られ、その結果、吸熱部11においてサイクル外の熱源(例えば大気)から有効に熱が吸収される。
このように、蒸気発生システムS2によれば、水の蒸発に用いた後の作動媒体が水の加温と作動媒体の再生とに用いられるから、熱の有効利用が図られ、したがって、蒸気発生システムS2は、蒸気発生システムS1に比べて、高いエネルギー効率を有する。
また、蒸気発生システムS2では、圧縮部60が多段式であり、圧縮部60の段間放熱部61において、作動媒体と水とが熱交換する点からも、エネルギー効率の向上が図られる。すなわち、多段式の圧縮部60の段間放熱部61の熱が奪われることとによって、作動媒体の圧縮過程における作動媒体の温度上昇が抑制され、その結果、圧縮部60の圧縮効率の向上及び圧縮機の動力の低減化が図られる。圧縮に伴う作動媒体の温度上昇と、段間放熱部61における作動媒体の温度降下との繰り返しの数(再熱の段数)は、2段でもよく、3段以上でもよい。再熱の段数が装置構成上の制約の範囲内で多いのが、エネルギー効率の向上に有利である。
図6は、ヒートポンプ50の作動媒体の状態変化の一例を示す T-s 線図である。図7は、ヒートポンプ50の作動媒体の状態変化の一例を示す H-s 線図(モリエ線図)である。図6及び図7は、4段再熱の例である。
また、蒸気発生システムS2では、多段式の圧縮部60に対する作動媒体の入力温度が再生器52によって高められている点も、圧縮部60の動力低減に有利である。また、段間放熱部61の冷却を利用して、被加熱媒体である水を加熱する点からも、熱の有効利用が図られる。
また、蒸気発生システムS2では、先の蒸気発生システムS1(図1)と同様に、第2放熱部13Bを含む第1熱交換器40が顕熱交換に適した形態であり、第1放熱部13A及び圧縮部60の段間放熱部61を含む第2熱交換器65が潜熱交換に適した形態であるといった、装置構成の最適化が図られ、これに応じて、好ましい加熱プロセスを経て蒸気が発生する。
また、蒸気発生システムS2では、先の蒸気発生システムS1(図1)と同様に、供給経路20内の水が、ヒートポンプ50による加熱で比較的低圧力かつ低温度の蒸気となり、圧縮機30による圧縮で比較的高圧力かつ高温度の蒸気となる。すなわち、ヒートポンプ50で加熱された水が、圧縮機30による圧縮によってさらに加熱され、これにより、100℃以上の高温蒸気が発生する。蒸気発生システムS2からの蒸気は、外部の所定施設、例えば製造プラント、調理施設、空調設備、発電プラントなどに供給される。
また、蒸気発生システムS2では、先の蒸気発生システムS1(図1)と同様に、ヒートポンプ50による複数段の加熱と圧縮機30による加熱とを含む多段加熱により、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれも容易に発生させることができる。すなわち、ヒートポンプ50による加熱で大気圧に比べて低い負圧での飽和蒸気を発生させた後、圧縮機30による圧縮で大気圧または大気圧よりも高い圧力での過熱蒸気または飽和蒸気を発生させることができる。つまり、蒸気発生システムS2は、蒸気仕様に対する柔軟性が高い。
図8は、本発明に係る蒸気発生システムの第3実施形態であり、図3の蒸気発生システムS2の変形例である。
図8の蒸気発生システムS3は、図3の蒸気発生システムS2のヒートポンプ50から、バイパス経路51及び再生器52を省いたヒートポンプ70を有している。
ここで、試算例を示す。図1の蒸気発生システムS1、図3の蒸気発生システムS2、及び図8の蒸気発生システムS3について、COPを試算した。被加熱媒体は水、作動媒体はアンモニアである。
図1の蒸気発生システムS1のCOPは3.07であった。図3の蒸気発生システムS2のCOPは、再熱2段が3.42、再熱4段で3.52であった。図8の蒸気発生システムS3のCOPは、再熱2段が3.21であった。
図9及び図10はそれぞれ、本発明に係る蒸気発生システムの第4及び第5実施形態であり、蒸気発生システムS2の別の変形例である。
図9の蒸気発生システムS4は、図3の蒸気発生システムS2と比較して被加熱媒体(水)の入力温度が異なる(約60℃)。
図10の蒸気発生システムS5は、図3の蒸気発生システムS2の供給経路20から、圧縮機30を省いた供給経路80を有している。
上記説明において使用した数値及び図面に記載した温度は一例であって、本発明はこれに限定されない。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
S1,S2,S3,S4,S5…蒸気発生システム、10,50,70…ヒートポンプ、11…吸熱部、12,60…圧縮部、13A…第1放熱部、13B…第2放熱部、14…膨張部、15…主経路、20,80…供給経路、21…加温部、22…蒸発部、23…ダクト、30…圧縮機、35…ノズル、36…配管、40…第1熱交換器、41,65…第2熱交換器、47…タンク、48…循環配管、49…気液分離機、51…バイパス経路、52…再生器、61…段間放熱部。

Claims (1)

  1. 被加熱媒体の供給経路と、
    ヒートポンプと、を備え、
    前記ヒートポンプは、作動媒体の流れ方向に並ぶ吸熱部、圧縮部、第1放熱部、第2放熱部、及び膨張部を有し、
    前記第2放熱部及び前記第1放熱部がその順に、前記供給経路内の前記被加熱媒体を加熱する、ことを特徴とする蒸気発生システム。
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