JP2011137483A - ディスクブレーキ - Google Patents

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Shinji Suzuki
伸二 鈴木
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和裕 長井
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Abstract

【課題】大型化を抑制できるディスクブレーキの提供。
【解決手段】シリンダ部35が、二つの開口を有する筒状部93と、該筒状部93とは別体の有底筒状の蓋部材92とからなり、筒状部93の開口のうちブレーキパッドが対面しない側の開口を形成する環状周縁端94に蓋部材92の開口を形成する環状周縁端99を当接させた状態でシリンダ部35の外周面から摩擦攪拌接合することにより筒状部93に蓋部材92を一体に接合することで形成され、摩擦攪拌接合の接合部115が、筒状部93におけるピストン33の摺動範囲外で、該摺動範囲よりも内径が小さい位置に配置されている。
【選択図】図5

Description

本発明は、ディスクブレーキに関する。
シリンダ部のボアの底部の開口に底蓋部材を嵌合し、これらを摩擦攪拌接合により一体に接合するキャリパを有するディスクブレーキがある(例えば、特許文献1参照)。このディスクブレーキにおいては、摩擦攪拌接合の接合工具を、シリンダ部の中心軸と平行な軸回りに回転させながら、シリンダ部の底部の開口の内周部と底蓋部材の外周部との境界に沿って移動させるようになっている。
特開2007−10136号公報
上記のキャリパにおいては、キャリパのシリンダサイズ(シリンダボア内径)が大きくなったり、耐圧強度が高くなると、それに応じてキャリパの底部となる底蓋部材の肉厚を大きくする必要がある。しかし、底蓋部材の肉厚を大きくすると摩擦攪拌接合の接合工具をも大きくする必要があり、接合工具が大きくなる結果、シリンダ部を径方向にも大型化しなければならない。
そこで、本発明は、大型化を抑制できるディスクブレーキの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のディスクブレーキは、シリンダ部が、二つの開口を有する筒状部と、該筒状部とは別体の有底筒状の蓋部材とからなり、前記筒状部の開口のうちブレーキパッドが対面しない側の開口を形成する環状周縁端に前記蓋部材の開口を形成する環状周縁端を当接させた状態で前記シリンダ部の外周面から摩擦攪拌接合することにより前記筒状部に前記蓋部材を一体に接合することで形成され、前記摩擦攪拌接合の接合部は、前記筒状部におけるピストンの摺動範囲外で、該摺動範囲よりも内径が小さい位置に配置されている。
本発明によれば、大型化を抑制できる。
本発明に係る一実施形態のディスクブレーキを示す平面図である。 本発明に係る一実施形態のディスクブレーキを示す正面図である。 本発明に係る一実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す背面図である。 本発明に係る一実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す正面図である。 本発明に係る一実施形態のディスクブレーキのキャリパボディおよびピストンを示す断面図である。 本発明に係る一実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す摩擦攪拌接合直前の断面図である。 本発明に係る一実施形態のディスクブレーキのキャリパボディおよび摩擦攪拌接合用接合工具を示す摩擦攪拌接合時の断面図である。
本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態のディスクブレーキは、四輪自動車用あるいは二輪車等の車両に配設されるディスクブレーキである。図面では、車両の左右方向一側に配置されるものを図示しており、これに対し車両の左右方向逆側に配置されるものは鏡面対称形状をなすことになる。
図1に示すように、このディスクブレーキ11は、キャリア13と、一対のブレーキパッド14と、キャリパ15とを備えている。キャリア13は、制動対象となる図示略の車輪(回転体)とともに回転するディスク12の外径側を跨ぐように配置されて車両の非回転部に固定される。一対のブレーキパッド14は、ディスク12の両面に対向配置された状態でディスク12の軸線方向に摺動可能となるようにキャリア13に支持される。キャリパ15は、ディスク12の外径側を跨いだ状態でディスク12の軸線方向に摺動可能となるようにキャリア13に支持されてブレーキパッド14をディスク12に押圧することによりディスク12に摩擦抵抗を付与する。なお、以下においては、ディスク12の半径方向をディスク半径方向と称し、ディスク12の軸線方向をディスク軸線方向と称し、ディスク12の回転方向をディスク回転方向と称す。
キャリア13は、図2に示す基板部22および一対のインナ側パッド支持部23と、図1に示す一対の連結部24と、図2に示す一対のアウタ側パッド支持部25およびビーム部26とを有して一体的に構成されている。基板部22は、ディスク回転方向に延在する姿勢でディスク12よりも車両内側(インナ側)に配置されるとともにそのディスク回転方向の両端側に車両への取付穴21が形成されている。一対のインナ側パッド支持部23は、基板部22のディスク回転方向両端からディスク半径方向外側に延出して設けられている。一対の連結部24は、図1に示すように、インナ側パッド支持部23のディスク半径方向外端からディスク12の半径方向外側を越えるようにディスク軸線方向に沿って車両外側(アウタ側)に突出して形成されている。一対のアウタ側パッド支持部25は、一対の連結部24のインナ側パッド支持部23とは反対側から図2に示すようにディスク半径方向内方にそれぞれ延出して形成されている。ビーム部26は、アウタ側パッド支持部25のディスク半径方向内側同士を連結するように形成されている。そして、一対のインナ側パッド支持部23が図1に示すインナ側のブレーキパッド14を摺動可能に支持し、図2に示す一対のアウタ側パッド支持部25がアウタ側のブレーキパッド14を摺動可能に支持する。
図1に示すように、キャリア13には、ディスク回転方向の両端におけるディスク半径方向外側となる一対の連結部24の位置に、ディスク軸線方向に摺動可能となるように支持ピン28がそれぞれインナ側から嵌合されている。これら支持ピン28を介してキャリパ15がキャリア13に取り付けられる。なお、一対の支持ピン28のキャリパ15とキャリア13との間部分は伸縮可能な一対のブーツ29で被覆されている。
キャリパ15は、ディスク12を跨いだ状態でキャリア13に支持ピン28を介して支持されるキャリパボディ32と、キャリパボディ32に保持されてディスク12の一面側に対向するように配置される図2に示すピストン33とを有している。
キャリパボディ32は、図1に示すように、シリンダ部35と、ブリッジ部36と、爪部37とを有して一体的に構成されている。シリンダ部35は、ディスク12の一方の面側であるインナ側に対向配置されている。ブリッジ部36は、ディスク12を跨ぐためにシリンダ部35の径方向外方でディスク12の軸方向へ延びて形成されている。爪部37は、ブリッジ部36のシリンダ部35とは反対側からディスク半径方向内方に延出してディスク12の他方の面側であるアウタ側に対向するようになっている。つまり、キャリパ15は、そのキャリパボディ32が、ディスク12の一方の面側にシリンダ部35が設けられ、ディスク12の他方の面側に爪部37が設けられ、爪部37とシリンダ部35とを接続するブリッジ部36がディスク12を跨いで設けられるフィスト型となっている。
シリンダ部35は、ディスク12側に開口するようにディスク軸線方向に沿う図2に示すボア40が内部に形成された、図1に示す筒部42と底部41とを有する有底筒状をなしており、図2に示すボア40内にピストン33が挿入されている。そして、キャリパ15は、ボア40内に導入される液圧によりピストン33をディスク12側に前進させ、ピストン33でインナ側のブレーキパッド14を押圧してディスク12に接触させる。そして、ピストン33の押圧反力でキャリア13に対して支持ピン28を摺動させてシリンダ部35をディスク12から離す方向に移動して、爪部37でアウタ側のブレーキパッド14を押圧してディスク12に接触させる。このようにして、ピストン33と爪部37とで両側のブレーキパッド14を挟持してディスク12に押圧して摩擦抵抗を発生させ、制動力を発生させる。
ここで、キャリパボディ32は、車両への左右の取付勝手の違いに対して、共通の鋳物素材が用いられる場合がある。このため、この場合の鋳物素材は、キャリパボディ32のディスク回転方向の中央を基準として対称の形状をなしている。そして、図1および図3に示すように、シリンダ部35の底部41には、そのディスク半径方向外側からディスク軸線方向に沿って爪部37とは反対に突出するブリーダボス部44がディスク回転方向に離間して一対形成されている。そして、車両の左右方向一側に配置されるキャリパボディ32には、これら一対のブリーダボス部44のうちの一方のみに、エア抜き用のブリーダプラグ43を取り付けるためのネジ穴からなるプラグ取付穴45が形成されており、他方にはプラグ取付穴は形成されていない。なお、図1および図3に示すキャリパボディ32と取付勝手が違う、車両の左右方向他側に配置されるキャリパボディ32には、一対のブリーダボス部44のうち上記した他方のみにプラグ取付穴45が形成されることになる。
図1に示すように、キャリパボディ32のシリンダ部35におけるディスク軸線方向の中間部には、ディスク回転方向両側に突出する一対のピン取付部48が、筒部42の中心よりもディスク半径方向のやや外側に形成されている。これらピン取付部48にはディスク軸線方向に沿ってピン取付穴49が形成されている。これらのピン取付穴49に図1に示す上記した支持ピン28が挿入状態で固定されることになる。
図1に示すように、キャリパボディ32には、これらピン取付部48よりも爪部37側に、上記したブリッジ部36が、ディスク12の外周面に沿って湾曲する板状をなしてディスク回転方向に略一定幅で形成されている。このブリッジ部36の爪部37とは反対側の一部はシリンダ部35とディスク軸線方向にラップしている。ブリッジ部36には、主にこのラップ部分に、ディスク半径方向外側に突出しディスク軸線方向に延在するリブ51がディスク回転方向に並べられて複数形成されている。また、ブリッジ部36には、リブ51よりも爪部37側に、ディスク軸線方向に貫通する矩形状の窓部52がディスク回転方向の中央位置に形成されており、爪部37側の端部のディスク回転方向の中央位置にはディスク半径方向内方に凹む矩形状の段差部53が形成されている。この段差部53は、ブリッジ部36を加工する際の支持面として使用されるようになっている。
また、キャリパボディ32には、ブリッジ部36のシリンダ部35とは反対側に、上記した爪部37が、図4に示すように板状をなしてディスク回転方向に略一定幅をなすように形成されている。なお、爪部37は、そのディスク半径方向内側の内端縁部54が、キャリパボディ32のディスク回転方向における中央を通るディスク半径線に対して直交する直線状をなしており、この直線状の内端縁部54が、正面視でボア40の中心つまりシリンダ部35の中心よりもディスク半径方向内側をシリンダ部35の全体にわたって横断するように延在している。これにより、爪部37におけるシリンダ部35のボア40が対向する部分は、シリンダ部35の中心を覆うように形成されている。そして、爪部37には、シリンダ部35のボア40を切削加工する工具を通過させるための、ディスク半径方向の内端縁部54からディスク半径方向外方に向けて凹むディスク軸線方向に貫通するリセスが設けられていない。これにより、爪部37の内端縁部54が、ディスク回転方向においてボア40を全体にわたって連続する直線状に横断する。
また、図1に示すキャリパボディ32のシリンダ部35は、ピン取付部48よりも爪部37とは反対側の部分、つまり、図3に示すボア40の底部41を含む部分が、全体として略円形状をなしており、略円形状をなすボア40の底部41には、上記した一対のブリーダボス部44が、ディスク軸線方向に沿って爪部37とは反対に突設されている。ここで、上記したように、左右の取付勝手に応じたディスク回転方向一側のブリーダボス部44には、その中心上に、ブリーダプラグ43が取り付けられる外側のプラグ取付穴45とプラグ取付穴45をボア40に連通させる図示略のブリーダ連通穴とが形成されている。他方、ディスク回転方向他側のブリーダボス部44には、プラグ取付穴45およびブリーダ連通穴は形成されていない。
そして、キャリパボディ32のシリンダ部35には、図1および図3に示すように、一対のブリーダボス部44のうち、プラグ取付穴45が形成されていない(つまりブリーダプラグ43が配設されない)上記した他方のブリーダボス部44の突出方向中間位置に、後述する摩擦攪拌接合(FSW)によりキャリパボディ32の底部41側を形成する際に生じる残存穴部(最終端)56が、シリンダ部35の径方向の外側に残存形成されている。
シリンダ部35の底部41には、図2に示すボア40の径方向内側に、ボア40に液圧を供給するための図3に示す流入孔58がディスク軸線方向に沿って貫通形成されている。この流入孔58は、キャリパボディ32のディスク回転方向における中央を通るディスク半径線上に形成されている。この流入孔58は、ネジ孔となっており、図示略のブレーキ配管の端部に設けられたユニオンボルトを螺合させるようになっている。なお、底部41の外面63側には流入孔58と同軸で深さの浅い座ぐり64が形成されている。また、シリンダ部35の底部41には、回止穴65がディスク軸線方向に沿って外側から途中位置まで形成されている。この回止穴65は、キャリパボディ32のディスク回転方向における中央を通るディスク半径線上であって、流入孔58よりもディスク半径方向内側に形成されている。この回止穴65には、ブレーキ配管の先端に固定された回止フックが係合されることになり、これにより、ユニオンボルトの流入孔58への螺合時にブレーキ配管の連れ回りを規制する。
図5に示すように、シリンダ部35の底部41には、ボア40内に突出するストッパ部68が形成されている。このストッパ部68の周囲は、ボア40の中で最も深さが深くボア40の中心線に対して直交する平面からなりボア40の中心線と同軸の円環状をなす底面69となっている。ストッパ部68は、この底面69の内端縁部からボア40の中心線と同軸のテーパ状をなしてボア40の軸線方向に突出する円錐外面70と、円錐外面70の底面69とは反対側にあって底面69と平行をなす、ボア40の中心線と同軸の円形状の平面からなる頂面71とを有する切頭円錐状をなしている。そして、上記した流入孔58は、ボア40の軸線方向に沿って底部41の外面63からストッパ部68の頂面71に連通しており、ストッパ部68の範囲内、より具体的にはストッパ部68の頂面71の範囲内に形成されている。
ボア40は、ピストン33を摺動可能に嵌合させる一定径の嵌合内径部74と、嵌合内径部74よりも底部41側にある、嵌合内径部74と同軸かつ嵌合内径部74よりも小径の一定径の小径内径部75と、嵌合内径部74と小径内径部75との境界に形成される段部73とを有している。段部73は、ボア40の中心線に対して直交する平面であって、ボア40の中心線と同軸の円環状をなしており、ボア40の中心線方向において、底部41のストッパ部68の頂面71よりも底面69側に配置されている。なお、小径内径部75はボア40の内周面において最も底面69側に配置されている。
また、嵌合内径部74の軸線方向における開口側の中間位置には、嵌合内径部74よりも大径で図示略のピストンシールを保持するための円環状のシール周溝76が形成されている。さらに、嵌合内径部74の軸線方向における最も底部41とは反対側には、ピストン33との間に介装される図示略のブーツの一端側を嵌合保持するための円環状のブーツ周溝77およびブーツを収容するための収容段差部78が形成されている。
ピストン33は、略円筒状の円筒状部80と、円筒状部80の軸線方向の端部に円筒状部80の内側を閉塞するように形成された略円板状の円板状部81とを有する有底円筒状(カップ状)に形成されており、円板状部81が底部41と対面する向きで、円筒状部80の外周面においてボア40の嵌合内径部74に摺動可能に嵌合する。このようにボア40に嵌合した状態でピストン33はボア40と同軸状をなす。ピストン33の外底部82とは反対側の外周面には、シリンダ部35の上記した図示略のブーツの他端側を嵌合保持するブーツ周溝84が形成されている。
ピストン33の円板状部81側の端面85は、ピストン33の中心線に対して直交する円形の平面からなっている。ここで、ピストン33は、ボア40に嵌合した状態で、この端面85にてシリンダ部35の底部41におけるストッパ部68の頂面71に面接触で当接可能となっている。よって、底部41のストッパ部68は、ピストン33の後退端位置を規定することになる。なお、ストッパ部68への当接状態で、ピストン33は、シリンダ部35のボア40の段部73および小径内径部75からボア40の中心線方向において離間する。
そして、本実施形態においては、キャリパボディ32が、図6に示すように、別体の二つのキャリパボディ本体91と蓋部材92とを摩擦攪拌接合することにより形成される。
キャリパボディ本体91は、キャリパボディ32において、爪部37と、ブリッジ部36と、シリンダ部35の筒部42の底部41側の一部を除いた筒状部93とを形成する。よって、筒状部93は、ボア40の中心線方向両端に二つの開口を有し、一方の開口はブレーキパッド14に対面し、他方の開口はブレーキパッド14には対面しない。筒状部93の爪部37とは反対側(言い換えれば筒状部93の二つの開口のうちブレーキパッド14が対面しない側)の開口を形成する環状周縁端94の端面95は、ボア40の中心線と同軸の円環状をなし、この中心軸に対し直交する平面からなっている。
蓋部材92は、シリンダ部35の筒部40の底部41側の残りの一部である円筒部98と底部41とを形成する有底円筒状(カップ状)をなす。なお、キャリパボディ本体91および蓋部材92は、それぞれアルミニウム合金で個別に鋳造で一体成形されることになり、よって、これらを接合したキャリパボディ32もアルミニウム合金で形成されることになる。そして、図3に示す上記した一対のブリーダボス部44も鋳造による一体成形時に蓋部材92に形成されることになる。蓋部材92の円筒部98の底部41とは反対側(言い換えれば蓋部材92の開口を形成する側)の環状周縁端99の端面100は、ボア40の中心線に対し直交する平面からなっており、キャリパボディ本体91の環状周縁端94の端面95と同形状となっている。
ここで、キャリパボディ本体91の筒状部93には、嵌合内径部74の全部と、段部73の全部と、小径内径部75の嵌合内径部74側の一部とが形成されることになり、蓋部材92の円筒部98には、小径内径部75の嵌合内径部74とは反対側の残りの一部が形成されることになる。
キャリパボディ32を形成するに当たって、アルミニウム合金で図6に示すキャリパボディ本体91を形成するための鋳物素材を一体成形する。このキャリパボディ本体91の鋳物素材には、鋳造段階で、爪部37と、ブリッジ部36と、内側に嵌合内径部74の下穴および小径内径部75の嵌合内径部74側の一部を有する無底筒状の筒状部93とが形成されている。そして、筒状部93内の嵌合内径部74の下穴内を、爪部37とは反対側から挿入される切削工具により切削加工して、ボア40の内部の嵌合内径部74、シール周溝76、ブーツ周溝77および収容段差部78を切削する。これにより、キャリパボディ本体91には、筒状に形成され両端が開口となっている筒状部93が形成されることになる。このようにして、アルミニウム合金の一体成形された鋳物素材を切削加工することにより形成される、筒状部93と、ディスク12を跨ぐために筒状部93の径方向外方でその軸方向へ延びるブリッジ部36と、ブリッジ部36の筒状部93とは反対側の爪部37とを有するキャリパボディ本体91を準備する。なお、段部73、小径内径部75および環状周縁端94の端面95は、鋳造により形成されることになるが、これらのうちの少なくとも一部を切削加工により形成しても良い。
また、他方で、アルミニウムで一体成形された鋳物素材からなる有底円筒状の蓋部材92を準備する。なお、蓋部材92の小径内径部75、底面69、円錐外面70、頂面71および環状周縁端99の端面100は、鋳造により形成されることになるが、これらのうちの少なくとも一部を切削加工により形成しても良い。そして、単体の状態の蓋部材92に、上記したボア40に液圧を供給するための流入孔58と、座ぐり64と、回止穴65とを外側から切削加工により形成する。加えて、図3に示すように、一対のブリーダボス部44のうち取付方向に応じて決まるブリーダプラグ43の取付側のブリーダボス部44に、その突出方向に沿ってプラグ取付穴45および図示略のブリーダ連通穴を切削加工により形成する。なお、蓋部材92を、その小径内径部75、底面69、円錐外面70、頂面71および環状周縁端99の端面100を含めて鍛造により形成し、この鍛造品に流入孔58と、座ぐり64と、回止穴65とを切削しても良い。また、蓋部材92は、鋳造素材品や鍛造品に限らず、切削加工により形成される展伸材を用いてもよい。
そして、上記のキャリパボディ本体91の筒状部93に、図6に示すように、中子治具J1を挿入し、この中子治具J1の筒状部93から爪部37側に突出する部分を中子治具J2で保持する。ここで、中子治具J1には、嵌合内径部74に嵌合する円柱状の大径保持部102と、小径内径部75に嵌合する円柱状の小径保持部103と、小径保持部103の大径保持部102とは反対側から軸方向に凹む凹部104とが形成されており、大径保持部102および小径保持部103でキャリパボディ本体91を保持する。
次に、キャリパボディ本体91の筒状部93から突出する中子治具J1の小径保持部103に、凹部104でストッパ部68との干渉を避けながら、蓋部材92の円筒部98の範囲の小径内径部75を嵌合させて、キャリパボディ本体91の環状周縁端94の端面95に、蓋部材92の環状周縁端99の端面100を当接させる。そして、外側治具J3を蓋部材92の外面63に当接させて蓋部材92をキャリパボディ本体91への当接状態に保持する。なお、このとき、中子治具J1がキャリパボディ本体91の筒状部93と蓋部材92との径方向の位置決めを行い、外側治具J3が、キャリパボディ本体91に対して蓋部材92のブリーダボス部44の位相を規定の位相に合わせ、この状態を維持する。
この状態で、互いに当接する状態にあるキャリパボディ本体91の環状周縁端94と蓋部材92の環状周縁端99とを、これらの径方向の外周面つまりシリンダ部35の外周面から摩擦攪拌接合することで、キャリパボディ本体91の筒状部93と、蓋部材92の円筒部98とを一体に接合する。
ここで、図7に示すように、この摩擦攪拌接合で使用される接合工具110は、円柱状の大径軸部111と、この大径軸部111よりも小径でこの大径軸部111と同軸の切頭円錐状をなす先端軸部112とを有しており、先細の先端軸部112がシリンダ部35の半径方向に沿う姿勢で、シリンダ部35の半径方向に沿う軸を中心に高速で自転しながら、シリンダ部35の半径方向内側に前進し、その後、シリンダ部35の周方向に少なくとも一周公転することで、筒状部93の環状周縁端94および蓋部材92の環状周縁端99を摩擦により溶融させて攪拌し接合する。その際に中子治具J1が接合工具110から筒状部93および蓋部材92に加わる力を受け止める。
そして、シリンダ部35を全周にわたって公転した後、接合工具110は、蓋部材92側にある一対のブリーダボス部44のうちブリーダプラグ43が配設されない側のブリーダボス部44内に移動し、このブリーダボス部44の突出方向の中間位置であってシリンダ部35の径方向の外側位置にて、キャリパボディ32から引き抜かれる。これにより、摩擦攪拌接合の最終端である図1および図3に示す残存穴部56が、ブリーダプラグ43が配設されないブリーダボス部44に、その突出方向中間位置であってシリンダ部35の径方向の外側位置に形成される。なお、接合工具110を位置固定で回転させ、キャリパボディ本体91および蓋部材92を治具J1,J2,J3とともに回転させても摩擦攪拌接合を行っても良い。
上記摩擦攪拌接合で溶融攪拌された後、固化することで形成されるキャリパボディ本体91と蓋部材92との図5に示す接合部115は、シリンダ部35の径方向外側ほどシリンダ部35の軸方向の幅が広くなる形状をなすことになる。
そして、この接合部115が、筒状部93におけるピストン33の摺動範囲外で、この摺動範囲よりも内径が小さい小径内径部75の位置に配置されるように、小径内径部75の長さが設定されている。その結果、摩擦攪拌接合の接合部115は、筒状部93におけるピストン33の摺動範囲外で、この摺動範囲よりも内径が小さい位置に配置される。このように、接合部115を小径内径部75の位置に配置することで、接合部115の内径φAは、摩擦攪拌接合前の小径内径部75の内径とほぼ等しくなることから、ピストン33が摺動する嵌合内径部74の内径φBよりも小さくなる。
ここで、ストッパ部68の頂面71が、嵌合内径部74と小径内径部75との境界位置にある段部73よりもシリンダ部35の開口側(つまり筒状部93の二つの開口のうちブレーキパッド14が対面する側の開口側)に配置されているため、蓋部材92には、ピストン33の後退端位置を規定するストッパ部68が、摩擦攪拌接合の接合部115よりもシリンダ部35の開口側に形成されることになる。なお、キャリパボディ本体91の筒状部93に配置される段部73を、ピストン33の後退端位置を規定するストッパ部としても良く、この場合も、ストッパ部68が、摩擦攪拌接合の接合部115におけるシリンダ部35の内周側部分よりもシリンダ部35の開口側に形成されることになる。
なお、上記した流入孔58と、座ぐり64と、回止穴65と、プラグ取付穴45と、図示略のブリーダ連通穴とは、摩擦攪拌接合でキャリパボディ本体91に接合された状態の蓋部材92に対して、後から形成しても良い。
以上のように形成されたキャリパボディ32に対して、爪部37とシリンダ部35との間から、シール周溝76に図示略のピストンシールを嵌合し、ブーツ周溝77にブーツをの一端側を嵌合して、同じく爪部37とシリンダ部35との間から、ピストン33をボア40内に嵌合し、ブーツの他端側をブーツ周溝84に嵌合する。また、プラグ取付穴45に図1に示すブリーダプラグ43を取り付ける。このようにして、キャリパ15が組み上がる。
以上に述べた本実施形態のディスクブレーキ11によれば、キャリパボディ32のシリンダ部35が、キャリパボディ本体91の二つの開口を有する筒状部93と、この筒状部93とは別体の有底筒状の蓋部材92とからなり、筒状部93の開口のうちブレーキパッド14が対面しない側の開口を形成する環状周縁端94に、蓋部材92の開口を形成する環状周縁端99を当接させた状態でシリンダ部35の外周面から摩擦攪拌接合することにより筒状部93に蓋部材92を一体に接合することで形成されるため、例えキャリパ15の耐圧強度が高くなって、それに応じてキャリパ15の底部41の肉厚を大きくする(例えば肉厚t=12mm以上)必要があっても、摩擦攪拌接合の接合工具110を大きくする必要がなく、シリンダ部35を径方向にも大型化する必要もなくなる。したがって、摩擦攪拌接合の接合工具110への負荷を軽減し、接合工具110の寿命を延長できてコストダウンが図れるとともに、シリンダ部35の径方向の大型化を抑制することができ、軽量化が図れる。具体的には、例えば、肉厚t=8mmであったものを16mmに厚くする必要がある場合、従来構造では接合工具の外径を肉厚t=8mm用のφ13〜23mmの約1.5倍にする必要があり、接合工具外径がシリンダ部の外径からはみ出すことになるため、シリンダ部の外径を大きくする必要があったが、本実施形態によれば、接合工具を大きくする必要がなく、シリンダ部35を径方向にも大型化する必要もなくなる。
また、摩擦攪拌接合の接合部115が、キャリパボディ本体91の筒状部93におけるピストン33の摺動範囲外で、この摺動範囲よりも内径が小さい小径内径部75の位置に配置されているため、接合部115がピストン33の摺動に影響を及ぼすことを防止できる。つまり、キャリパボディ本体91の筒状部93および蓋部材92の円筒部98にわたって嵌合内径部74を形成して、シリンダ部35の外周面から摩擦攪拌接合やレーザ溶接等で接合してしまうと、接合部115が嵌合内径部74に形成されることになって、ピストン33の摺動に影響を及ぼすことになるが、このような影響を排除できる。特に、キャリパボディ本体91を熱強度に弱いアルミニウム合金とした場合に摩擦攪拌接合により接合部115に熱変形を生じ易いが、この熱変形による影響を防止でき、ピストン33がキャリパボディ32に正常に組み付かないことや、ピストン33がキャリパボディ32に組み付いても正常に作動しない等の問題を生じることがなくなる。
また、蓋部材92(キャリパボディ本体91の筒状部93でも可)には、摩擦攪拌接合の接合部115よりも、キャリパボディ本体91の筒状部93のブレーキパッド115が対面する側の開口側に、ピストン33の後退端位置を規定するストッパ部68が形成されているため、特に真空引きによるブレーキ液の充填時に接合部115にピストン33が嵌り込んで作動不可となることを確実に防止できる。
蓋部材92には、車両への左右の取り付け勝手の違いに対して素材の共用化を図るため、一方にブリーダプラグ43が配設される一対のブリーダボス部44が形成されているが、ブリーダプラグ43が配設されない他方のブリーダボス部44に、摩擦攪拌接合の最終端である残存穴部56が配置されているため、ブリーダプラグ43が配設されないブリーダボス部44を有効利用でき、残存穴部56がキャリパ15の内部流路に影響を及ぼすことを防止できる。なお、一対のブリーダボス部44を、シリンダ部35の軸方向に突出させるのではなく、シリンダ部35の径方向に突出させる場合も同様である。
なお、以上の実施形態においては、シリンダ部35がディスク12の一面側のみに配置され、ディスク12の他面側には爪部37が形成され、液圧によりディスク12の一面側のみに設けられた1つのピストン33でブレーキパッド14を押圧するフィスト型のキャリパ15を例にとり説明したが、シリンダ部35がディスク12の両面側に配置される対向型のキャリパにも適用可能である。このように対向型のキャリパに適用する場合には、対向する一対のシリンダ部のうち流入孔が設けられる側のシリンダ部に摩擦攪拌接合を適用すればよく、必要があれば、両側のシリンダ部に摩擦攪拌接合を適用してもよい。また、ディスク12の一面側に2つ以上のピストンを設けたフィスト型のキャリパや対向型のキャリパにも適用可能である。さらに、実施形態においては、ディスク12の両面側に一対のブレーキパッド14を設けるようにしているが、二対又はそれ以上の対のブレーキパッドを設けたディスクブレーキにも適用が可能である。
11 ディスクブレーキ
12 ディスク
14 ブレーキパッド
15 キャリパ
32 キャリパボディ
33 ピストン
35 シリンダ部
36 ブリッジ部
37 爪部
40 ボア
41 底部
43 ブリーダプラグ
44 ブリーダボス部
56 残存穴部(最終端)
68 ストッパ部
92 蓋部材
93 筒状部
94 環状周縁端
99 環状周縁端
115 接合部

Claims (3)

  1. ディスクの両面に配置された一対のブレーキパッドのうち、少なくとも一方側のブレーキパッドを液圧により押圧するピストンが挿入されるボアが内部に形成されるシリンダ部を有するキャリパボディを備え、
    前記シリンダ部は、二つの開口を有する筒状部と、該筒状部とは別体の有底筒状の蓋部材とからなり、前記筒状部の開口のうち前記ブレーキパッドが対面しない側の開口を形成する環状周縁端に前記蓋部材の開口を形成する環状周縁端を当接させた状態で前記シリンダ部の外周面から摩擦攪拌接合することにより前記筒状部に前記蓋部材を一体に接合することで形成され、
    前記摩擦攪拌接合の接合部は、前記筒状部における前記ピストンの摺動範囲外で、該摺動範囲よりも内径が小さい位置に配置されていることを特徴とするディスクブレーキ。
  2. 前記筒状部または前記蓋部材には、前記摩擦攪拌接合の接合部よりも前記ブレーキパッドが対面する側の開口側に配置され、前記ピストンの後退端位置を規定するストッパ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
  3. 前記蓋部材には、一方にブリーダプラグが配設される一対のブリーダボス部が形成され、他方のブリーダボス部に前記摩擦攪拌接合の最終端が配置されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
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