JP2011137261A - 多層抄き板紙 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】天然繊維を主原料とし、少なくとも表層3、熱発泡粒子を含有する中間層2及び裏層4を備える多層抄き板紙1であって、中間層2への上記熱発泡粒子の凝集塊の存在により表層3及び裏層4の外面に凸部5を有しており、この凸部5の平均高さが40μm以上100μm以下であり、熱発泡粒子の凝集塊が予め水溶液中に分散させた熱発泡粒子に、カチオン性凝結剤とカチオン性凝集剤とをその順で添加して形成されることを特徴とする多層抄き板紙1である。上記表層の坪量が25g/m2以上80g/m2以下であり、中間層の坪量が25g/m2以上80g/m2以下であるとよい。また、上記中間層における天然繊維が広葉樹クラフトパルプを70質量%以上含有するとよい。
【選択図】図1
Description
天然繊維を主原料とし、少なくとも表層、熱発泡粒子を含有する中間層及び裏層を備える多層抄き板紙であって、
上記中間層への上記熱発泡粒子の凝集塊の存在により、表層及び裏層のうち少なくとも表層の外面に凸部を有しており、
この凸部の平均高さが40μm以上100μm以下であり、
上記熱発泡粒子の凝集塊が、予め水溶液中に分散させた上記熱発泡粒子に、カチオン性凝結剤とカチオン性凝集剤とを添加して形成されることを特徴とする。
図1の多層抄き板紙1は、中間層2、表層3及び裏層4を備えている。この表層3の外面には、複数の凸部5がランダムに存在する。
中間層2は、表層3及び裏層4に挟着される層状の構造体である。この中間層2は、天然繊維を主原料とするものであり、また、副原料として熱可塑性合成繊維及び/又は非熱可塑性化学繊維を含有することができる。以下、中間層2の構成要素を順に詳説する。
中間層2の主原料として天然繊維を採用することで、多層抄き板紙1に対して圧縮強度及び破裂強度と緩衝性とをバランス良く付与すると共に、産業廃棄物の減量を達成することもできる。
中間層2は、副原料として熱可塑性合成繊維を含有することができる。この熱可塑性合成繊維は、多層抄き板紙1の抄紙工程におけるドライヤーパートにおいて溶融しつつ天然繊維間に浸透し、その後冷却して固化することから、多層抄き板紙1に対して高い圧縮強度及び破裂強度を付与すると共に、層間強度を向上させることができる。
中間層2は、副原料として非熱可塑性化学繊維を含有することができる。この非熱可塑性化学繊維は、熱可塑性樹脂に似た特性を有するが、融点が熱分解温度以下の温度で存在しない化学繊維であり、多層抄き板紙1の抄紙工程のドライヤーパートにおける加熱下でも溶融せず、天然繊維の繊維間の水素結合を部分的に阻害するものである。その結果、非熱可塑性化学繊維を含有することで、多層抄き板紙1に対して高い圧縮強度及び破裂強度を付与すると共に、中間層2の天然繊維の繊維間に連続した空隙を形成させ、その結果、多層抄き板紙1の軽量化を実現しつつ、良好な緩衝性を付与することができる。
中間層2は、熱発泡粒子(図示せず)を含有する。この熱発泡粒子は、熱可塑性の重合体から形成される微小なカプセルに発泡剤を封入したものである。かかる熱発泡粒子は、多層抄き板紙1の抄紙工程のドライヤーパートにおける加熱下において、熱発泡粒子に封入されている発泡剤が気化することで蒸気圧が上昇し、熱可塑性の重合体から形成される微小なカプセルが膨張する。このように、熱発泡粒子がドライヤーパートの加熱下で膨張することで、この膨張した熱発泡粒子が中間層2の天然繊維を押し上げて繊維間隔を拡張させ、次いで、中間層2に挟着する表層3及び裏層4を構成する繊維をも間接的に押し上げ、その結果、表層3の外面に、後述する凸部5を形成させる。
上記熱発泡粒子の凝集塊は、予め水溶液中に分散させた上記熱発泡粒子に、カチオン性凝結剤とカチオン性凝集剤とを添加して形成される。上記熱発泡粒子は、イオン性がアニオン性であることから、中間層2内部に保持され難い傾向を有するが、このようなカチオン性凝結剤及びカチオン性凝集剤を用いて、予め熱発泡粒子を凝集させた熱発泡粒子懸濁液を原料スラリーに混合することで、多層抄き板紙1に凸部5を形成させ易くなると共に凸部5の均一分布性を向上させることができる。また、この熱発泡粒子懸濁液を原料スラリーに混合することにより、熱発泡粒子の中間層2内部において保持され易くなり、その結果、中間層2からの熱発泡粒子の脱落を効果的かつ確実に防止又は低減することができる。
中間層2には、上記天然繊維の他に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、任意成分を適宜使用することができる。この任意成分としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの填料;アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などのサイズ剤;ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、メラミン/ホルマリン樹脂、尿素/ホルマリン樹脂、などの紙力増強剤;アクリルアミド/アミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物などの歩留り向上剤;紙粉脱落防止剤;湿潤紙力材;紙厚向上剤;嵩高剤;着色剤;染料などを、その種類及び含有量を適宜調整して添加することができる。
表層3は、図1に示す通り、中間層2に積層する構造体である。この表層3は、上述の中間層2の場合と同様に天然繊維を主原料とし、副原料として上述の熱可塑性合成繊維及び/又は非熱可塑性化学繊維を含有することもできるが、熱可塑性合成繊維を表層3に含有させると、かかる繊維が抄紙工程のドライヤーパートにおいて溶融し、ドライヤーロールや用具等に付着する不都合が生じる場合がある。なお、表層3には、上述の任意成分を含有させることもできる。
(i)被衝突物体として、表面が平坦で頑丈な試験台を用い、多層抄き板紙1の表層3が表面になるように固定する。
(ii)衝突物体として鉄球(パチンコ玉:直径11mm、5.5g)を約30cmの高さから表層3に対して垂直に落下させる。
(iii)鉄球落下時の跳ね返りをビデオ撮影し、落下方向にセットした物差しにより跳ね返りの高さをmm単位で測定する。
(iv)鉄球の落下の高さ、跳ね返りの高さの測定値を用い、下記数式(1)により反発係数を算出する
e=√(h/ho) ・・・(1)
(e:反発係数、ho:落下の高さ、h:跳ね返りの高さ)
(0≦e≦1)
かかる反発係数を緩衝性の指標とし、反発係数が大きいほど緩衝性が高いと判断する。
多層抄き板紙1の製造方法としては、一般的に製紙用途で使用される方法を用いることができる。具体的には、上記天然繊維、熱可塑性合成繊維、非熱可塑性化学繊維等を含む原料スラリーに対し、予め水溶液中に分散させた熱発泡粒子にカチオン性凝結剤とカチオン性凝集剤とをその順に添加した熱発泡粒子懸濁液を添加したものをワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、リールパートを経て抄紙し、これを巻き取ることで製造することができる。このドライヤーパートでは、上述の通り、熱発泡粒子の発泡開始温度が熱可塑性合成繊維の融点以下となるよう調整して乾燥を行う。
(多層抄き板紙の製造)
多層抄き板紙の中間層を構成する繊維素材として、天然繊維であるLBKP、熱可塑性合成繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(クラレ社、ソフィットN720)、非熱可塑性化学繊維であるビニロン(クラレ社、VPB303)を表1に示す含有量で混合することで中間層の原料スラリーを調整した。一方、水溶液中に、表1に示す含有量(天然繊維を基準とする)の熱発泡粒子(松本油脂製薬、マツモトマイクロスフェア−F48)、カチオン性凝結剤(星光PMC社、AC7304)とカチオン性凝集剤(ハリマ化成社、ハーマイドRB−33)を表1に示す順及び含有量にて添加して得られる熱発泡粒子懸濁液を調整した。この熱発泡粒子懸濁液を、中間層の原料スラリーに混合した。
天然繊維をNBKPとし、表1の配合量に基づき原料スラリーを調整した以外は、実施例1〜30と同様である。
天然繊維をNBKP(表1中では「NB」と表示)及びLBKP(表1中では「LB」と表示)とし、さらにNBKPとLBKPとの配合比を50:50とし、表1の配合量に基づき原料スラリーを調整した以外は、実施例1〜30と同様である。
天然繊維を段ボール古紙とし、表1の配合量に基づき原料スラリーを調整した以外は、実施例1〜30と同様である。
天然繊維を上白古紙とし、表1の配合量に基づき原料スラリーを調整した以外は、実施例1〜30と同様である。
熱可塑性合成繊維をポリエステル(ユニチカ社の「メルティ」)とし、表1の配合量に基づき原料スラリーを調整した以外は、実施例1〜30と同様である。
非熱可塑性化学繊維をアクリル(東洋紡社の「ビィパル」)とし、表1の配合量に基づき原料スラリーを調整した以外は、実施例1〜30と同様である。
熱発泡粒子懸濁液の調整において、カチオン性凝集剤、カチオン性凝結剤の順とした以外は、実施例1〜30と同様にして製造した。
熱発泡粒子、カチオン性凝結剤、カチオン性凝集剤を添加しない以外は、実施例1〜30と同様にして製造した。
カチオン性凝結剤、カチオン性凝集剤を添加しない以外は、実施例1〜30と同様にして製造した。
熱発泡粒子の含有量を表1のように設定した以外は、実施例1〜30と同様にして製造した。
熱発泡粒子懸濁液の調整において、表1のようにカチオン性凝結剤、カチオン性凝結剤の順とした以外は、実施例1〜30と同様にして製造した。
熱発泡粒子懸濁液の調整において、表1のようにカチオン性凝集剤、カチオン性凝集剤の順とした以外は、実施例1〜30と同様にして製造した。
実施例及び比較例の凸部(表層)の平均高さは、JIS−P8118(紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法)に準拠して測定した。その結果を表1に示した。
実施例及び比較例の圧縮強さは、JIS−P8126(紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−リングクラッシュ法)に準拠して測定した。その結果を表2に示した。
実施例及び比較例の破裂強さは、JIS−P8131(板紙−破裂強さ試験方法)に準拠して測定した。その結果を表2に示した。
実施例及び比較例の層間強度は、上述の通り、J.TAPPI−No.18−2に準拠して測定した。その結果を表2に示した。
実施例及び比較例の緩衝性は、上述の式(1)より測定した。かかる結果を表2に示した。
表2に示す通り、実施例1〜37は、比較例1〜5と比較して、同程度の圧縮強さ、破裂強さ及び層間強度を発揮しつつ、優れた緩衝性を発揮することが示唆された。
2 中間層
3 表層
4 裏層
5 凸部
11 多層抄き板紙
12 中間層
13 裏層
14 凸部
Claims (4)
- 天然繊維を主原料とし、少なくとも表層、熱発泡粒子を含有する中間層及び裏層を備える多層抄き板紙であって、
上記中間層への上記熱発泡粒子の凝集塊の存在により、表層及び裏層のうち少なくとも表層の外面に凸部を有しており、
この凸部の平均高さが40μm以上100μm以下であり、
上記熱発泡粒子の凝集塊が、予め水溶液中に分散させた上記熱発泡粒子に、カチオン性凝結剤とカチオン性凝集剤とを添加して形成されることを特徴とする多層抄き板紙。 - 上記表層の坪量が25g/m2以上80g/m2以下であり、
上記中間層の坪量が25g/m2以上80g/m2以下である請求項1に記載の多層抄き板紙。 - 上記中間層における天然繊維が広葉樹クラフトパルプを70質量%以上含有する請求項1又は請求項2に記載の多層抄き板紙。
- 上記中間層における熱発泡粒子の天然繊維に対する含有量が、固形分換算で1質量%以上15質量%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の多層抄き板紙。
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