JP2011137089A - 潤滑油基油 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温流動性に優れると共に、高い粘度指数を特長とする潤滑油基油を提供する。
【解決手段】一分子中に2種類以上の異なるアシル基をもつ分子(ヘテロエステル)のモル分率が40%以上であることを特徴とする多価アルコールの脂肪酸エステルからなる潤滑油基油。多価アルコールは特にネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの少なくともいずれかであることが好ましく、脂肪酸としては、アシル基が、(1)炭素数が6から10の飽和直鎖アシル基と、(2)炭素数が12の飽和直鎖アシル基または/および炭素数18の不飽和直鎖アシル基であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、多価アルコールと脂肪酸または脂肪酸メチルエステルから合成した多価アルコールの脂肪酸エステルから成る潤滑油基油に関する。
近年、環境意識の高まりに伴い、万が一、土壌や河川に流出しても環境への負荷が小さい生分解性の潤滑油が使われるようになってきた。
ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のヒンダード型多価アルコールの脂肪酸エステルは、石油を原料とする鉱油と比べて生分解性に優れ、また、引火点が高いため、環境適合性や防災性に優れた潤滑油基油として使用されている。しかし、多価アルコールエステルは鉱油と比べて流動点が高く、低温における流動性が悪い課題がある。
低温流動性を改善するためには、多価アルコールエステルを炭素数10以下の脂肪酸で合成する方法がある(特許文献1)。しかし、アシル基の炭素数が10以下の多価アルコールエステルは粘度指数が低く、高温で潤滑性能が低下する傾向がある。
また、多価アルコールエステルの低温流動性を改善するために、原料として分岐構造の脂肪酸を用いる方法も知られている(特許文献2)。しかし、分岐のアシル基は直鎖アシル基と比べて生分解性が劣る傾向があり、また、植物原料由来の直鎖脂肪酸と比べると、環境適合性が高いとはいえない。
その他の方法として、多価アルコールにアルキレンオキサイド基を付加した後、脂肪酸類でエステル化して得られるポリエーテル多価アルコール脂肪酸を基材とした潤滑油が提案されている(特許文献3)。しかし、当該の潤滑油基材は、通常の多価アルコールエステルと比較して熱安定性や酸化安定性が劣る傾向がある。
特開2008−013546号公報 特開平6−228584号公報 特開平7−305079号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、低温流動性に優れると共に、高い粘度指数を特長とする潤滑油基材を提供する。
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 一分子中に2種類以上の異なるアシル基をもつ分子(ヘテロエステル)のモル分率が40%以上であることを特徴とする多価アルコールの脂肪酸エステルからなる潤滑油基油である。
<2> 前記多価アルコールが、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの少なくともいずれかである前記<1>記載の潤滑油基油である。
<3> 前記脂肪酸のアシル基が、(1)炭素数が6から10の飽和直鎖アシル基と、(2)炭素数が12の飽和直鎖アシル基または/および炭素数18の不飽和直鎖アシル基である前記<1>、<2>のいずれかに記載の潤滑油基油である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の潤滑油基油を含有する潤滑油である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができる潤滑油基油と、その製造方法を提供することができる。
本発明の多価アルコールとしては、具体的には、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−イソプロピル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジ(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル)エーテル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のヒンダードアルコール、あるいは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール等の多価アルコールである。これらの多価アルコールの炭素数は、好ましくは2〜12、好ましくは2〜7である。ヒドロキシ基は2〜6個が好ましく、6個より多いと粘度が高くなりすぎ、また耐熱性の面から、ヒンダードアルコールが特に優れている。特に、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。多価アルコールは、2種以上を併用することもできる。
本発明において多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、炭素数が8から22の飽和または不飽和の脂肪酸から選ばれる。
前記脂肪酸の例としては、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、及びこれらのメチルエステルを挙げることができる。
好ましくは、生分解性がよく、植物原料に由来する直鎖構造の脂肪酸類として、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられる。
本発明の多価アルコールのエステルは、多価アルコールの水酸基が全て脂肪酸エステルとなった構造であり、ネオペンチルグリコールジ脂肪酸エステル、トリメチロールプロパントリ脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルが挙げられる。この内、特にトリメチロールプロパントリ脂肪酸エステルは、流動点が低いために好ましい。
本発明では、多価アルコールエステルのエステル結合におけるアシル基炭素数がすべて同じものを「ホモエステル」、一分子中に2種類以上の異なる炭素数のアシル基をもつものを「ヘテロエステル」とするとき、ヘテロエステルのモル分率は40%以上で、好ましくは60%以上である。ヘテロエステルのモル分率が40%を下回ると、流動点が低くなる効果が充分に得られない。
本発明の前記へテロエステルを特定量含有する多価アルコール脂肪酸エステルは、その脂肪酸部として2種類以上の脂肪酸を含有する。脂肪酸としては、そのアシル基が、(1)炭素数が6から10の飽和直鎖アシル基を含有しさらに、(2)炭素数が12の飽和直鎖アシル基または/および炭素数18の不飽和直鎖アシル基の少なくともいずれかをさらに含有するものが好ましい。この場合、前記(1)と(2)の合計量に対する(1)の含有量はモル比で50〜80%であることが好ましい。
前記(1)としては、カプリル酸を使用することが好ましい。また、原料の脂肪酸類中のカプリル酸の割合は、モル比で50%から80%の範囲が好ましい。カプリル酸の割合が小さいと、流動点が高くなる問題がある。一方、カプリル酸の割合が大きいと、粘度指数が小さくなる傾向がある。
また、カプリル酸と組み合わせて使用する脂肪酸類は、多価アルコールエステルの粘度指数を大きくする目的から、アシル基の炭素数が12以上の脂肪酸類が好ましい。特に好ましいのは、オレイン酸で、生成物の粘度指数を大きくする効果があり、また、低温流動性を悪くする影響が小さい。
本発明の潤滑油基油は、前記多価アルコールと脂肪酸または脂肪酸エステルなど脂肪酸誘導体を原料としてエステル化若しくはエステル交換反応を行うことにより製造することができるが、脂肪酸よりも脂肪酸メチルエステルを原料とした方が望ましい。エステル化、エステル交換反応は目的に応じて公知の方法を適宜選択して行うことができる。前記へテロエステルの含有割合を所定の値とすることは、エステル化、エステル交換反応に使用する原料脂肪酸あるいは脂肪酸エステル中の異なるアシル基を有する成分組成を制御することで行うことができる。例えば多価アルコールと脂肪酸メチルエステルのエステル交換反応により製造する場合には、例えば脂肪酸メチルエステルとしてカプリル酸メチルとオレイン酸メチルをモル比でカプリン酸メチルの含有量が所定の割合になるように混合することで行うことができる。
本発明の潤滑油基油は、40℃における動粘度が20mm/s以上、40mm/s以下であることが好ましく、さらに30mm/s以上、40mm/s以下であることが好ましい。動粘度が20mm/sを下回ると潤滑性能が低い問題がある。一方、動粘度が40mm/sを上回ると、使用時の動力損失が大きくなる問題がある。
粘度指数は130以上が好ましく、160以上がさらに好ましい。粘度指数が130℃を下回ると、高温で使用したときの潤滑性能の低下が問題となる。
流動点は−30℃以下が好ましい。流動点が−30℃を上回ると、低温で流動性が悪化する問題がある。
本発明の潤滑油基油は目的に応じて必要により他の潤滑油と混合して圧延用潤滑油、金属加工油、エンジン油、ギヤ油、油圧作動油などの各種潤滑油として使用できる。また必要により極圧剤、清浄分散剤、流動点降下剤、酸化安定剤、防錆剤、消泡剤等の各種潤滑油添加剤を配合することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例中、%は特に記載がない限り質量基準である。
本発明の実施例および比較例では下記の原料を使用した。
<原料>
・トリメチロールプロパン:三菱ガス化学株式会社製
・カプリル酸メチル : ライオンケミカル株式会社製 パステルM−08
・カプリン酸メチル : ライオンケミカル株式会社製 パステルM−10
・ラウリン酸メチル : ライオンケミカル株式会社製 パステルM−12
・オレイン酸メチル : ライオンケミカル株式会社製 パステルM−181
・炭酸水素ナトリウム: 関東化学株式会社製 特級試薬
(実施例1)
攪拌機、冷却管、温度計をつけたガラス製反応器に、トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製、分子量134.18)465.8g(3.47モル)、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)988.8g(6.25モル)、オレイン酸メチル(パステルM−181、分子量296.49)1852.7g(6.25モル)、及び触媒の炭酸水素ナトリウム 14.9gを入れ、220℃の温度条件下、常圧で窒素を吹き込み、生成するメタノールを除去しながら、20時間反応させた。残留するカプリル酸メチルとオレイン酸メチルを単蒸留で除去した後、炭酸水素ナトリウムをろ過で除去し、生成物のトリメチロールプロパン脂肪酸エステルを得た。
生成物のトリメチロールプロパントリ脂肪酸エステルについて、下記条件でガスクロマトフィーによる分析を行い、アシル基の異なる多価アルコールエステルについて、モル分率を求めた。以下に示すように、3つのエステル結合でアシル基がすべて同じ「ホモエステル」のモル分率は23.1%、アシル基が異なる「ヘテロエステル」のモル分率は76.9%だった。結果を表1に示した。
[ガスクロマトグラフィーの条件]
カラム:J&W DB−1HT
オーブン温度:80〜390℃、10℃/min
気化室温度:390℃
検出器温度:390℃(FID)
キャリアガス:ヘリウム

Figure 2011137089
以上の方法で調製した潤滑油基油について、JIS K2283の試験方法に従い、40℃および100℃における動粘度を測定し、粘度指数を算出した。40℃における動粘度は35.9mm/sで、目標とする40mm/s以下に適合する良好な価だった。粘度指数は182で、目標の140を上回り、高温における粘度低下が小さい良好な性能であることがわかった。
また、JIS K2269の試験方法に従って測定した流動点は−40℃であり、実施例1の潤滑油基油は低温流動性が良好であることがわかった。
実施例1と同様の方法で、脂肪酸メチルエステルの比率を変更した各種のトリメチロールプロパン脂肪酸エステルを合成し、ヘテロエステルのモル分率の分析と物性値の測定を行い、実施例2〜3とした。結果を表2に示した。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、トリメチロールプロパン 261.7g(1.95モル)とカプリル酸メチル 1110.9g(7.02モル)を原料として、トリメチロールプロパントリカプリル酸エステルを合成した。また、同様にトリメチロールプロパン 144.7g(1.08モル)とオレイン酸メチル 1150.8g(3.88モル)を原料として、トリメチロールプロパントリオレイン酸エステルを合成した。
トリメチロールプロパントリカプリル酸エステル 358.9g(0.7モル)、トリメチロールプロパントリオレイン酸エステル 278.3g(0.3モル)を室温で混合し、アシル基の異なるトリメチロールプロパントリ脂肪酸エステルの混合物を調製した。
調製した試料は、3つのエステル結合でアシル基がすべて同じ「ホモエステル」の混合物であり、アシル基が異なる「ヘテロエステル」は含まれない。
実施例1と同様に、得られた生成物について、40℃および100℃における動粘度を測定し、粘度指数を算出した。結果を表3に示した。
比較例1の潤滑油基油は、動粘度や粘度指数が実施例同様に良好な価であるが、流動点は−27.5℃であり、低温流動性が劣る結果だった。
同様の方法により、比較例2〜6の潤滑油基油を調製し、物性の測定を行った。結果を表3に示した。
比較例2、4、5、6の潤滑油基油はいずれも流動点が−30℃よりも高く、低温における流動性に問題のあることがわかった。一方、比較例3の潤滑油基油は、流動点が低く、定温における流動性は良好だが、40℃における動粘度が低く、また、粘度指数も低いため、潤滑油としての性能が低いことが分かった。

Figure 2011137089

Figure 2011137089
本発明の潤滑油基油は、エンジン油、油圧作動油、ダンパー油などの潤滑油の用途で汎用的に使用することができる。

Claims (4)

  1. 一分子中に2種類以上の異なるアシル基をもつ分子(ヘテロエステル)のモル分率が40%以上であることを特徴とする多価アルコールの脂肪酸エステルからなる潤滑油基油。
  2. 前記多価アルコールが、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの少なくともいずれかである請求項1記載の潤滑油基油。
  3. 前記脂肪酸のアシル基が、(1)炭素数が6から10の飽和直鎖アシル基と、(2)炭素数が12の飽和直鎖アシル基または/および炭素数18の不飽和直鎖アシル基である請求項1、2のいずれかに記載の潤滑油基油。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の潤滑油基油を含有する潤滑油。
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