JP2011133518A - 電子写真用トナー - Google Patents

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一興 不破
Takuya Kadota
拓也 門田
Yoshitaka Sekiguchi
良隆 関口
Yoshihiro Mikuriya
義博 御厨
Takeshi Nozaki
剛 野▲崎▼
Junji Yamamoto
淳史 山本
Yoshimichi Ishikawa
義通 石川
Tomohiro Fukao
朋寛 深尾
Tomoharu Miki
智晴 三木
Masahiro Seki
匡宏 関
Hiroaki Kato
博秋 加藤
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Abstract

【課題】ワックスをトナー表面に露出させることで良好な定着性を有し、かつ表面近傍のワックス存在量を減らすことによりメダカの発生を抑制することができるトナーを提供する。
【解決手段】少なくともバインダー樹脂、ワックス及び着色剤を含有し、表面に樹脂微粒子を付着させてなるトナーであって、ガラス転移温度Tgが50〜80℃であり、ヘキサンによる抽出で求められるトナー表面のワックス露出量が18〜30mg/gであり、FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)測定値が0.1以下であるトナー、このトナーを使用するプロセスカートリッジ及び画像形成装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、所望量のワックスが表面に露出している電子写真用トナーに関する。
電子写真方式の画像形成装置では、像担持体である感光体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写し、定着工程において、上記トナー像に熱と圧力を加えて、上記トナー像を記録媒体に定着させる方法が広く用いられている。定着の際、定着ローラへの巻き付きが発生するという問題があったが、この問題は、トナー中にワックスを添加することで解決されてきた。
しかし、トナー表面にワックスが多く存在すると定着性は良好となるものの、ワックスが感光体へ移行することによる部材汚染(メダカとよばれている)が発生したり、凝集性が増すことによりトナーの流動性が低下する等の問題があった。
このような問題に対して、ワックスをトナー表面近傍に存在させながらも、トナー表面には露出させないという方法が提案されており、定着性をある程度維持しつつ、ワックスの露出による悪影響を低減させる方法が知られているが、定着性を向上させることはできていない。
特許文献1では、トナーを圧縮成型して鏡面ペレットを作製し、加熱前後のFTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)測定値を特定の範囲とすることで、耐固着と定着の両立を試みている。しかし、ワックスはトナー表面には存在しているものの、その多くが結着樹脂に内包されており、定着時の離型性は十分ではなく、更なる改善が必要である。
また、特許文献2では、トナーの表面近傍のワックスを存在させて、定着性と帯電性を両立させているが、トナー表面にワックスか露出しておらず、定着性の改善が必要である。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ワックスをトナー表面に露出させることで良好な定着性を有し、かつ表面近傍のワックス存在量を減らすことによりメダカの発生を抑制することができるトナーを提供することを目的とする。
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
1.本発明のトナーは、少なくともバインダー樹脂、ワックス及び着色剤を含有し、表面に樹脂微粒子を付着させてなるトナーであって、ガラス転移温度(Tg)が50〜80℃であり、ヘキサンによる抽出で求められるトナー表面のワックス露出量が18〜30mg/gであり、FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)測定値が0.1以下であることを特徴とする。
2.本発明のトナーは、さらに、前記トナーの軟化点が100〜140℃であることを特徴とする。
3.本発明のトナーは、さらに、前記ワックスの融点が40〜90℃であることを特徴とする。
4.本発明のトナーは、さらに、前記樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)が60〜100℃であることを特徴とする。
5.本発明のトナーは、さらに、コアシェル構造を有することを特徴とする。
6.本発明のトナーは、さらに、前記シェルは、長辺の長さの平均が200nm以上であることを特徴とする。
7.本発明のプロセスカートリッジは、像担持体と、帯電装置、現像装置及びクリーニング装置のうち少なくとも一つを備え、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記現像装置が、上述のトナーを用いることを特徴とする。
8.本発明の画像形成装置は、潜像を形成する像担持体と、像担持体表面に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した像担持体表面に露光し潜像を書き込む露光装置と、像担持体表面に形成された潜像にトナーを供給し可視像化する現像装置と、像担持体表面の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置と、像担持体表面の可視像を直接又は中間転写体に転写した後に記録媒体に転写する転写装置と、記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置とを備える画像形成装置において、前記現像装置が、上述のトナーを用いることを特徴とする。
9.本発明の画像形成方法は、潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、像担持体表面に均一に帯電を施す帯電工程と、帯電した像担持体表面に露光し潜像を書き込む露光工程と、像担持体表面に形成された潜像にトナーを供給し可視像化する現像工程と、像担持体表面の残留トナーをクリーニングするクリーニング工程と、像担持体表面の可視像を直接又は中間転写体に転写した後に記録媒体に転写する転写工程置と、記録媒体上のトナー像を定着させる定着工程とを含む画像形成方法において、前記現像工程において、請求項1ないし6のいずれかに記載のトナーを用いることを特徴とする。
本発明によれば、ワックスをトナー表面に露出させることで良好な定着性を有し、かつ表面近傍のワックス存在量を減らすことによりメダカの発生を抑制することができるトナーを提供することができる。
本発明に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。 4つの作像ユニットのうち1つを拡大して示す断面図である。 トナー表面のシェルの長辺の長さの測定方法を説明するSEM写真である。
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における実施の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
本発明のトナーは、少なくともバインダー樹脂、ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子母体の表面に樹脂微粒子を付着させてなるトナーであって、ガラス転移温度(Tg)が50〜80℃であり、ヘキサンによる抽出で求められるトナー表面のワックス露出量が18〜30mg/gであり、FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)測定値が0.1以下であるトナーである。
トナー表面のワックス露出量は定着時のワックス染み出し量と関係があり、このワックス露出量が多くなるほど離型性が良好になる。ワックスの露出量が18mg/gより少ないと定着時のワックス染み出しが不十分となるため、定着ローラとの離型性が低下する。ワックスの露出量が30mg/gより多いとワックスの離脱が発生してしまい、感光体表面にメダカが発生してしまう。
FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)測定値は、トナー表面から深さ0.3μmの箇所のワックス存在量を示しており、この値が小さいと、感光体等の部材へのトナーの付着力が高くなりすぎず、良好な画像が得られる。実験によると、FTIR−ATR測定値が0.1より大きい場合にメダカが発生した。
トナーのガラス転移温度(Tg)が50℃未満であるとトナーの変形が発生し、ワックスと部材との接触が多くなるため、メダカが発生する。また、トナーのTgが80℃を超えると、定着時に溶けにくくなり、定着ローラとの分離が困難になる。
トナーの軟化点は、100〜140℃であることが好ましい。トナーの軟化点が100℃未満であると、定着時の粘度が低くなり過ぎるため、高温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーの軟化点が140℃を超えると、定着時にトナーが溶けにくくなるため、定着強度が悪化するおそれがある。
また、上記ワックスの融点は50〜90℃であることが好ましい。ワックスの融点が50℃未満では、定着前のプロセスにおいてワックスが染み出すことがあり、メダカが発生しやすくなる。また、ワックスの融点が90℃を超えると、定着時のワックス染み出しが不十分となり、定着ローラとの離型性が悪化する。
上記樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は60〜100℃であることが好ましい。このTgが60℃より低いと耐熱保管性が悪化し、100℃より高いと定着性が定着強度が悪化するおそれがある。
本発明のトナーは、少なくともバインダー樹脂、ワックス、着色剤及び樹脂微粒子を含有しており、荷電制御剤、外添剤等を添加してもよい。トナー粒子母体は、例えば溶解懸濁法で製造することができる。
(溶解懸濁法)
溶解懸濁法を用いてトナー粒子母体を製造する方法としては、少なくとも、樹脂及び着色剤からなるトナー組成物を、有機溶媒に溶解又は分散させることにより得られる溶解液又は分散液を、分散剤の存在する水性溶媒中で、通常の撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて、所望の粒度分布を有するトナーが得られるように分散させた後、有機溶媒を除去することによりトナースラリーを得る方法が挙げられる。トナー粒子母体は、公知の方法に従い、洗浄・濾過により回収し、乾燥させることにより単離することができる。
(溶解懸濁法で使用する樹脂)
溶解懸濁法では、溶媒に溶解させることができる樹脂であれば製造上利用することができる。具体的には、従来よりトナーに用いられている樹脂が挙げられ、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。定着性の観点から、ポリエステル樹脂が好適に用いられる。
また、粘弾性特性を有するトナーを得るためには、ポリエステル樹脂の末端にイソシアネート基を有するイソシアネート変性ポリエステル樹脂を用い、トナーの製造過程でイソシアネート基同士を反応させて伸長させてトナー中に適度な架橋構造を持たせることが好ましい。
(イソシアネート変性ポリエステル)
イソシアネート変性ポリエステルとしては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
(ポリオール)
上記ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)及び3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。
ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
(ポリカルボン酸)
上記ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)と3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、または(2−1)と少量の(2−2)との混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。
なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
(ポリオールとポリカルボン酸の比)
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
(ポリイソシアネート)
上記ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;及びこれら2種以上の併用などが挙げられる。
(イソシアネート基と水酸基の比)
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると残留するポリイソシアネート化合物がトナーの帯電性に悪影響を及ぼすおそれがある。
(伸長剤)
イソシアネート変性ポリエステルを伸長させるために、伸長剤としてアミン類(B)を用いてもよい。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4′ジアミノジフェニルメタン、テトラフルオロ−p−キシリレンジアミン、テトラフルオロ−p−フェニレンジアミンなど)、脂環式ジアミン(4,4′−ジアミノ−3,3′ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど)及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカフルオロヘキシレンジアミン、テトラコサフルオロドデシレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
(B1)〜(B5)のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、上記(B1)〜(B5)のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、(B1)及び(B1)と少量の(B2)との混合物である。
(アミノ基とイソシアネート基の比率)
アミン類(B)の比率は、イソシアネート変性ポリエステル中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満では、イソシアネート変性ポリエステルの伸長反応が十分に進行せず、粘弾性特性が得られないおそれがある。
(イソシアネート変性ポリエステルの併用)
イソシアネート変性ポリエステルは、1種類のみ用いてもよいが、例えば1種類以上の直鎖上のイソシアネート変性ポリエステルと、1種類以上の分岐構造を有するイソシアネート変性ポリエステルを組み合わせて使用することにより、トナーの粘弾性設計を好ましく行うことができる。特にトナー中に架橋点間距離を広く取った架橋構造を均一に存在させるためには、分岐構造を有するイソシアネート変性ポリエステルは比較的低分子量に設計し、それとともに直鎖上のイソシアネート変性ポリエステルを併用するのが好ましい。イソシアネート変性ポリエステルの分子鎖を長く設計すると、トナーの熱特性が悪化することがあるからである。その原因としては、トナー製造過程の油相中において分子鎖がランダムコイル状に収縮し、局所的に架橋構造を形成するか、分子内でイソシアネート基が反応を完結してしまい、トナー全体にわたって架橋構造を持たせることができないためであると考えられる。
(未変性ポリエステル)
本発明においては、イソシアネート変性ポリエステルとともに、イソシアネート変性されていないポリエステル(未変性ポリエステル)を用いてもよい。未変性ポリエステルを用いることにより、トナーの粘弾性の設計がより行いやすくなる。未変性ポリエステルとしては、上記ポリオール(1)と上記ポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられる。
(有機溶媒)
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の溶媒除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
(水性溶媒)
水性溶媒としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶媒を併用することもできる。混和可能な溶媒としては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール;ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類などが挙げられる。トナー材料100質量部に対する水性溶媒の使用量は、通常、50〜2000質量部であり、100〜1000質量部が好ましい。水性溶媒の使用量が50質量部未満では、トナー材料の分散状態が悪くなるおそれがある。また、2000質量部を超えると経済的でない。
(無機分散剤)
無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ及びヒドロキシアパタイト等を用いることができる。
(ワックス)
本発明で用いられるワックスはn−ヘキサンに溶解するものであれば特に限定されない。ワックスは、極性が低い方が定着部材ローラとの離型性に優れているため、極性の低い炭化水素系ワックスが好ましく、さらに好ましくはポリエチレンワックス、パラフィンワックスである。
(ワックスの融点)
本発明におけるワックスの融点は、示差走査型熱量計(DSC)にて測定される昇温時のワックスの吸熱ピークであり、50〜90℃の範囲にあることが好ましい。90℃よりも高いと、定着プロセスにおけるワックスの溶融が不十分になり、定着部材との分離性が確保できなくなる。また50℃よりも低いと、高温高湿環境においてトナー粒子同士が融着するなど、保存安定性に問題が生じる。低温での定着分離性に余裕を持たせるためには、ワックスの融点は70〜85℃がより好ましく、さらに好ましくは70〜80℃の範囲である。
(ワックス分散剤)
ワックス分散剤としては、公知のものを使用することができる。ワックスとの相溶性の高いユニットと樹脂との相溶性の高いユニットがブロック体として存在するポリマーやオリゴマー、ワックスとの相溶性の高いユニットと樹脂との相溶性の高いユニットのうち一方に他方がグラフトしているポリマーもしくはオリゴマー、エチレン、プロピレン、ブテン、スチレン、α−スチレン等の不飽和炭化水素と、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルもしくはその無水物との共重合体、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂とのブロック又はグラフト体などが挙げられる。
上記ワックスとの相溶性の高いユニットとしては、炭素数が12以上の長鎖アルキル基や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエンとそれらの共重合体などが挙げられる。前記樹脂との相溶性の高いユニットとしては、ポリエステル、ビニル系樹脂などが挙げられる。
(着色剤)
本発明においては着色剤として公知の着色剤を使用することができる。例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などを挙げることができる。
トナー粒子中における着色剤の含有量としては全バインダー樹100質量部に対し2〜15質量部の範囲が好ましい。着色剤は、使用されるバインダー樹脂中に分散されたマスターバッチの形態で使用されることが分散性の観点から好ましい。マスターバッチの添加量は含有される着色剤の量が上記範囲内となるような量であればよい。マスターバッチ中の着色剤含有率は20〜40質量%が好適である。
(荷電制御剤)
本発明のトナーにおいて、従来からフルカラートナーで使用されている公知の荷電制御剤を使用することができる。例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及びサリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部の範囲で用いられ、より好ましくは、0.2〜5質量部の範囲である。この使用量が10質量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎることとなるため、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くおそれがある。
(無機微粒子)
本発明のトナーにおいて、流動性や現像性を補助するために無機微粒子が用いることができる。無機微粒子の具体例としては、例えば酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、酸化チタン、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
(樹脂微粒子)
本発明に用いられる樹脂微粒子は、少なくともスチレン系モノマーからなるモノマー混合物を重合させて得られるビニル系樹脂を含む。
本発明で得られる着色樹脂粒子を、静電潜像現像用トナーなどの帯電することにより機能する粒子として用いるためには、着色樹脂粒子表面は帯電しやすい構造を有しているのが好ましく、そのためには、ビニル系樹脂を構成するモノマーとして、芳香環構造のように電子を安定に存在できるような電子軌道を持つスチレン系モノマーが、モノマー混合物のうち50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%用いられるのがよい。スチレン系モノマーが50質量%未満であると、得られた着色樹脂粒子の帯電性が乏しくなり、着色樹脂粒子のアプリケーションが限定される。
ここで、スチレン系モノマーとは、ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物のことを指す。この化合物における重合可能な官能基としては、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
具体的なスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、4−カルボキシスチレンもしくはその金属塩、4−スチレンスルホン酸もしくはその金属塩、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、アリルベンゼン、フェノキシアルキレングリコールアクリレート、フェノキシアルキレングリコールメタクリレート、フェノキシポリアルキレングリコールアクリレート、フェノキシポリアルキレングリコールメタクリレートなどが挙げられる。
この中では、入手が容易で反応性に優れ帯電性の高いスチレンを主に用いるのが好ましい。
また、本発明に用いられるビニル系樹脂には、酸モノマーがモノマー混合物のうち0〜7質量%、好ましくは0〜4質量%を占めることが好ましく、酸モノマーを使用しないことがより好ましい。酸モノマーが7質量%を超えて使用されると、得られるビニル系樹脂微粒子はそれ自身の分散安定性が高いため、油滴が水相中に分散された分散液中にこのようなビニル系樹脂微粒子を添加しても、常温では付着しにくいか、付着をしても脱離しやすい状態にあり、溶媒除去、洗浄、乾燥、外添処理を行う過程で容易に剥がれてしまう。さらに、酸モノマーの使用量が4質量%以下にすることで、得られる着色樹脂粒子が使用される環境によって帯電性の変化が少なくすることができる。
ここで、酸モノマーとは、ビニル重合性官能基と酸基を有する化合物のことをいい、酸基としては、カルボキシル酸基、スルホニル酸基、ホスフォニル酸基などが挙げられる。
酸モノマーとしては、例えばカルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその塩((メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸、フマル酸モノアルキル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキル、桂皮酸など)、スルホン酸基含有ビニル系モノマー、ビニル系硫酸モノエステル及びこれらの塩、リン酸基含有ビニル系モノマー及びその塩などが挙げられる。
この中では、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸、フマル酸モノアルキルが好ましい。
ビニル系樹脂微粒子を得る方法としては特に限定されないが、以下の(a)〜(f)が挙げられる。
(a)モノマー混合物を懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法または分散重合法等の重合反応により反応させ、ビニル系樹脂微粒子の分散液を製造する。
(b)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を製造する。
(c)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液を、霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を製造する。
(d)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液に溶媒を添加するか、またはあらかじめ溶媒に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次いで、溶媒を除去して樹脂微粒子を製造する。
(e)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱または減圧等によって溶媒を除去する。
(f)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する。
この中で、製造が容易であり、樹脂微粒子を分散液として得られることから次工程への適用がスムーズに行うことができる(a)の方法が好ましい。
(a)の方法において、重合反応を行う際には、水系媒体中に分散安定剤を添加する、もしくは重合反応を行うモノマー中に、重合してできた樹脂微粒子の分散安定性を付与できるようなモノマー(いわゆる反応性乳化剤)を添加する、またはこれら2つの手段を併用し、できあがったビニル系樹脂微粒子の分散安定性を付与するのがよい。分散安定剤や反応性乳化剤を使用しないと、粒子の分散状態を維持できないためにビニル系樹脂を微粒子として得ることができなかったり、得られた樹脂微粒子の分散安定性が低いために保存安定性に乏しく保管中に凝集してしまったり、あるいは後述の樹脂微粒子付着工程での粒子の分散安定性が低下するために、トナー粒子母体同士が凝集・合一しやすくなり最終的に得られる着色樹脂粒子の粒径や形状・表面などの均一性が低下するおそれがある。
分散安定剤としては、界面活性剤、無機分散剤などが挙げられ、界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤;例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトなどが挙げられる。
ビニル系樹脂の重量平均分子量は、通常3,000〜300,000、好ましくは4,000〜100,000、より好ましくは5,000〜50,000の範囲である。重量平均分子量が3,000に満たないと、ビニル系樹脂の力学的強度が弱く脆弱であるため、最終的に得られる着色樹脂粒子のアプリケーションによっては使用状況によって着色樹脂粒子表面が容易に変化してしまい、例えば帯電性の著しい変化や周辺部剤への付着などの汚染、それに伴う品質問題の発生を引き起こすおそれがある。また、300,000を超えるような場合、分子末端が少なくなるためトナー粒子母体との分子鎖の絡み合いが少なくなり、トナー粒子母体への付着性が低下するおそれがある。
また、ビニル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐熱保存性の観点から50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上である。
後述の樹脂微粒子付着工程において、トナー粒子母体に付着した後のビニル系樹脂はそれ同士が膨潤又は合一することによって分散状態の粒径より大きくなる。上記粒径を制御するには、ビニル系樹脂中に極性の高いエステルを添加すればよく、例えばメチルメタクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。トナー粒子母体に付着した後のビニル系樹脂の長辺の長さの平均は、トナー粒子母体中のワックスが部材と接触するのを防ぐため、すなわちFTIR−ATR測定値を下げるために、300nm以上であることが好ましい。ビニル系樹脂の長辺の長さの平均の上限は、600nm程度である。
次に、トナーの製造工程について説明する。
<油相作製工程>
有機溶媒中に樹脂、着色剤などを溶解あるいは分散させた油相を作製する方法としては、有機溶媒中に攪拌をしながら樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解あるいは分散させればよい。ただし、着色剤として顔料を用いる場合や、ワックスや帯電制御剤などのなかで有機溶媒に溶解しにくいようなものを添加する場合、有機溶媒への添加に先立って粒子を小さくしておいてもよい。
さらに別の手段として、有機溶媒の沸点未満で溶融するようなものを分散するのであれば、有機溶媒中で、必要に応じて分散助剤を添加し、分散質とともに攪拌しながら加熱を行い、一旦溶解させた後、攪拌もしくはせん断しながら冷却を行うことによって晶析を行い、分散質の微結晶を生成させる方法をとってもよい。
以上の工程で分散された着色剤、ワックス、帯電制御剤は、有機溶媒中に樹脂とともに溶解あるいは分散された後、さらに分散を行ってもよい。分散に際しては公知のビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
水系媒体に油相やトナー組成物一次粒子を分散させてトナーを造粒する方法においては、水系媒体の極性と、トナー組成物の各材料の極性や油相を形成する溶媒やモノマーにより、その各材料のトナー内部における存在・偏在状態が大きく支配される。
例えば、結着樹脂とワックスを比較した場合、ワックスの方が低い極性傾向を有すことが多い。油相を形成する溶剤(溶媒)種やモノマー種によっても傾向が変わるが、一般的には水系媒体と極性が近い材料が比較的トナー粒子の表面側に偏在しやすい傾向を有す。
このような性質・傾向を有すことが多いため、結着樹脂とワックスを、その性質(極性であったり置換基由来の効果であったり)を適宜選択することで、本発明の規定するワックス存在状態を達成することができる。
なお、結着樹脂の場合、極性を支配する大きな要素としては、酸価や水酸基価があり、これらを選択することで水系媒体とワックスへの親和性の状態等が決定されることになる。
これに対し、ワックスは結着樹脂と比して低極性であることが多い。したがって、ワックスは、極性のみの観点のみならず、結着樹脂に対する分散性・親和性を調整するために配合されるワックス分散剤によっても、分散状態を制御することができ、このワックス分散剤種や量により、結着樹脂に対する分散性も支配される。
また、ワックスの存在状態は油相中の溶媒でも調整することができる。例えば、溶媒として、酢酸エチルやメチルエチルケトンのような極性の高いものを使用し、ワックスに極性の低いものを用いた場合、トナー造粒中にワックスは表面へと露出する傾向にある。
本発明は、ヘキサンによる抽出で求められるトナー表面のワックス露出量が18〜30mg/gであり、FTIR−ATR測定値が0.1以下である。すなわち、表面にはワックスが露出していながら、表面近傍におけるワックスの存在量は少ないトナーである。
このようなトナーを達成する一つの方法としては、トナーがコアシェル構造をとり、コアについては表面にワックスが露出する設計にして、シェルについてはコアを完全に覆うことなく、長辺の長さの平均を200nm以上にすることが考えられる。本発明においては、トナー粒子母体がコアであり、樹脂微粒子がシェルである。
コアでの表面にワックスを露出させる方法としては、極性の高いワックスを使用したり、油相の溶媒に極性の高いものを用いてワックスの極性を低くする、分散剤の量を減らすなどの方法が考えられる。
トナー表面近傍のワックス量を下げるには、上記したようにシェルの長辺の長さが200nm以上となるようにすればよい。
トナー表面のシェルを所望の範囲に大きくするには、シェルに極性を持たせるのがよい。例えばメタクリル酸メチルを含む材料で樹脂微粒子を形成すれば、樹脂微粒子同士が凝集しやすくなりトナー表面のシェルは大きくなる。
コアの直径は、4μm以上であることが好ましく、上限は8μm程度である。
<トナー粒子母体作製工程>
少なくとも界面活性剤を有する水系媒体中に上述の工程で得られた油相を分散させ、油相からなるトナー粒子母体が分散した分散液を作製する方法としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。5分を超えて分散を行うと、望ましくない小径の粒子が残存してしまったり、分散が過分散状態になって系が不安定になり凝集体や粗大粒子が発生したりすることがある。
分散時の温度は、通常0〜40℃、好ましくは10〜30℃である。40℃を超えると分子運動が活発になることから分散安定性が低下し凝集体や粗大粒子が発生しやすくなる。また、0℃未満であると分散体の粘度が高くなり、分散に必要なせん断エネルギーが増大するため製造効率が低下するおそれがある。
界面活性剤としては、上述の樹脂微粒子の製造法に関する説明で記載したものと同じものが使用することができ、溶媒を含む油滴を効率よく分散するためには、HLBが高めのジスルホン酸塩が好ましい。界面活性剤は、水系媒体中での濃度が1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは3〜7質量%の範囲にあるのがよい。10質量%を超えると、油滴が小さくなりすぎたり、逆ミセル構造を形成して逆に分散安定性が低下して油滴の粗大化が発生したりするおそれがある。また、1質量%未満では油滴の分散を安定に行うことができずに油滴が粗大化してしまうおそれがある。
<樹脂微粒子付着工程>
得られたトナー粒子母体分散液は、攪拌を行っている間は安定にトナー粒子母体の液滴を存在させておくことができる。その状態において、上述したビニル系樹脂微粒子の分散液を投入してトナー粒子母体上に付着させる。ビニル系樹脂微粒子分散液の投入は、30秒以上かけて行うのが好ましい。30秒未満で投入を行うと、分散系が急激に変化するために凝集粒子が発生したり、ビニル系樹脂微粒子の付着が不均一になったりする。一方、例えば60分を超えるような長時間をかけてビニル系樹脂微粒子分散液を添加するのは生産効率の面から好ましくはない。
ビニル系樹脂微粒子分散液は、トナー粒子母体分散液に投入する前に、適宜濃度調整のために希釈あるいは濃縮してもよい。ビニル系樹脂微粒子分散液の濃度は、5〜30質量%が好ましく、8〜20質量%がより好ましい。5%未満では、分散液の投入に伴う有機溶媒濃度の変化が大きく、樹脂微粒子の付着が不十分になる。また、30質量%を超えるような場合、樹脂微粒子がトナー粒子母体分散液中に偏在しやすくなり、その結果樹脂微粒子の付着が不均一になるため避けることが好ましい。
本発明の方法によってトナー粒子母体に対してビニル系樹脂微粒子が十分な強度で付着するのは、ビニル系樹脂微粒子がトナー粒子母体の液滴に付着したときに、トナー粒子母体が自由に変形できるためにビニル系樹脂微粒子界面と接触面を十分に形成すること、及び有機溶媒によってビニル系樹脂微粒子が膨潤又は溶解し、ビニル系樹脂微粒子とトナー粒子母体内の樹脂とが接着しやすい状況になることであると思われる。
したがって、この状態において有機溶媒は系内に十分に存在することが必要である。具体的には、トナー粒子母体分散液の状態において、固形分(樹脂、着色剤、及び必要に応じてワックス、帯電制御剤など)100質量部に対して50〜150質量部、好ましくは70〜125質量部の範囲にあるのがよい。有機溶媒の使用量が150質量部を超えると、一度の製造工程で得られる着色樹脂粒子が少なくなり生産効率が低くなり、また分散安定性が低下して安定した製造が難しくなる。
トナー粒子母体にビニル系樹脂微粒子を付着するときの温度としては、10〜60℃、好ましくは20〜45℃である。60℃を超えると、製造に必要なエネルギーが増大するために製造環境負荷が大きくなることに加え、低酸価のビニル系樹脂微粒子が液滴表面に存在することもあり分散が不安定になり粗大粒子が発生するおそれがある。一方、10℃未満では分散体の粘度が高くなり、樹脂微粒子の付着が不十分になる。
このほかにトナー粒子母体と樹脂微粒子を混合攪拌し、機械的に付着、被覆させる方法があり、この方法については後述する。
<脱溶工程>
樹脂微粒子付着工程で得られた着色樹脂分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。
あるいはまた、得られた着色樹脂分散体を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去することも可能である。または、着色樹脂分散体を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去してもよい。後の2つの手段は、最初の手段と併用することも可能である。
着色樹脂分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガスなどを加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
<熟成工程>
着色樹脂粒子の分散液の製造において、末端にイソシアネート基を有する変性樹脂を添加している場合は、イソシアネートの伸長・架橋反応を進めるために熟成工程を行ってもよい。熟成時間は、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常0〜65℃、好ましくは35〜50℃である。
<洗浄工程>
上記の方法で得られた着色樹脂粒子の分散液には、着色樹脂粒子のほか、界面活性剤などの分散剤などの副材料が含まれているため、これから着色樹脂粒子のみを取り出すために洗浄を行う。着色樹脂粒子の洗浄方法としては、遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などの方法があるが、本発明においては特に限定されるものではない。いずれの方法によっても着色樹脂粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法で着色樹脂粒子を取り出す工程を繰り返してもよいし、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させて着色樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採ってもよい。この洗浄に用いる水系溶媒は水あるいは水にメタノール、エタノールなどのアルコールを混合した混合溶媒を用いるが、コストや排水処理などによる環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。
<乾燥工程>
洗浄された着色樹脂粒子は水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥を行い水系媒体を除去することで着色樹脂粒子のみを得ることができる。乾燥方法としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などの乾燥機を使用することができる。乾燥された着色樹脂粒子は最終的に水分が1質量%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。また、乾燥後の着色樹脂粒子は軟凝集をしており、使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサーなどの装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしてもよい。
図1は、本発明に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
画像形成装置1は、その内部の略中央に中間転写ベルト51を備えている。中間転写ベルト51は、ポリイミドやポリアミド等の耐熱性材料からなり、中抵抗に調整された基体からなる無端状ベルトで、4つのローラ531、532、533、534に掛け回して支持され、回転駆動される。中間転写ベルト51の下方にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色トナーに対応した4つの作像ユニットが中間転写ベルト51のベルト面に沿って並んでいる。
図2は、4つの作像ユニットのうち1つを拡大して示す断面図である。いずれの作像ユニットでも同様の構成であるので、この図においては、色の区別を示すY、C、M、Kの表示を省略する。各作像ユニットは感光体3Y、3C、3M、3Kを有し、各感光体3の周りには、感光体3表面に電荷を与える帯電ローラ、感光体3表面に形成された潜像を各色トナーで現像してトナー像とする現像装置(現像スリーブ41、規制部材42を備える)、感光体3表面に潤滑剤32を塗布するブラシローラ31、ブラシローラで塗布された潤滑剤を均す潤滑剤塗布ブレードを備える潤滑剤塗布装置30、トナー像転写後の感光体3表面のクリーニングをするクリーニングブレード21を備えるクリーニング装置20がそれぞれ配置されている。これで、図2では、一つのカートリッジ2を形成している。なお、ここでは、作像ユニットでもあるカートリッジ2は、感光体3と、帯電装置10、現像装置、クリーニング装置20、潤滑剤塗布装置のいずれか1つ以上を一体的に支持されていて、画像形成装置1に着脱可能になっているプロセスカートリッジとして用いている。
また、4つのプロセスカートリッジ2の下方には、帯電した各感光体3の表面に各色の画像データに基づいて露光をし、潜像を形成する露光装置4が備えられている。
中間転写ベルト51を挟んで、各感光体3と対向する位置には、感光体3上に形成されたトナー像を中間転写ベルト51上に一次転写する一次転写ローラ52がそれぞれ配置されている。一次転写ローラ52は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。
中間転写ベルト51の支持ローラ532で支持された部分の外側には、二次転写ローラ54が圧接されている。二次転写ローラ54は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。二次転写ローラ54と中間転写ベルト51との接触部が二次転写部であり、中間転写ベルト51上のトナー像が記録紙に転写される。
中間転写ベルト51の支持ローラ531で支持された部分の外側には、二次転写後の中間転写ベルト51の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置が設けられている。
二次転写部の上方には、記録紙上のトナー像を記録紙に半永久的に定着させる定着装置70が備えられている。定着装置70は、定着ローラ71と、これに対向し、圧接して配置される、内部にハロゲンヒータを有する加圧ローラ72とから構成されている。この他に、定着ローラ71の代わりに、図示しないが、内部にハロゲンヒータを有する加熱ローラ及び定着ローラに巻き掛けられた無端の定着ベルトを用いてもよい。
画像形成装置の下部には、記録紙を載置し、二次転写部に向けて記録紙を送り出す給紙装置60が備えられている。図1において、31Y、31C、31M、31Kはトナー補給装置である。
以下、本発明を実施例及び比較例を示すことにより更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下では、「部」及び「%」は特にことわらない限り質量部及び質量%を示す。
まず、実施例及び比較例において得たトナーについての分析及び評価の方法について述べる。
以下では本件発明のトナーを一成分現像剤として用いた場合についての評価を行ったが、本発明のトナーは、好適な外添処理と好適なキャリアを使用することにより、二成分現像剤としても使用することができる。
<樹脂微粒子の製造>
(樹脂微粒子分散液1の製造)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー185部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸メチル60部、n−オクタンチオール4.2部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して[樹脂微粒子分散液1]を得た。少量の分散液を取り、分散媒を蒸発させて得た白色の[樹脂微粒子1]のTgを測定したところ83℃であった。樹脂微粒子の体積平均粒径は110nmであった。
(樹脂微粒子分散液2の製造)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー185部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸メチル10部、n−オクタンチオール4.2部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後、さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して[樹脂微粒子分散液2]を得た。少量の分散液を取り、分散媒を蒸発させて得た白色の[樹脂微粒子2]のTgを測定したところ80℃であった。樹脂微粒子の体積平均粒径は120nmであった。
(樹脂微粒子分散液3の製造)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー185部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸メチル60部、n−オクタンチオール5.5部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後、さらに60分間70℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して[樹脂微粒子分散液3]を得た。少量の分散液を取り、分散媒を蒸発させて得た白色の[樹脂微粒子3]のTgを測定したところ62℃であった。樹脂微粒子の体積平均粒径は115nmであった。
(樹脂微粒子分散液4の製造)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー185部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸メチル60部、n−オクタンチオール5.7部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後、さらに60分間70℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して[樹脂微粒子分散液4]を得た。少量の分散液を取り、分散媒を蒸発させて得た白色の[樹脂微粒子4]のTgを測定したところ59℃であった。樹脂微粒子の体積平均粒径は115nmであった。
(樹脂微粒子分散液5の製造)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー185部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸メチル60部、n−オクタンチオール1.0部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後、さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して[樹脂微粒子分散液5]を得た。少量の分散液を取り、分散媒を蒸発させて得た白色の[樹脂微粒子5]のTgを測定したところ102℃であった。樹脂微粒子の体積平均粒径は120nmであった。
(樹脂微粒子分散液6の製造)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー185部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸メチル60部、n−オクタンチオール1.3部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後、さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して[樹脂微粒子分散液6]を得た。少量の分散液を取り、分散媒を蒸発させて得た白色の[樹脂微粒子6]のTgを測定したところ97℃であった。樹脂微粒子の体積平均粒径は110nmであった。
<樹脂>
(ポリエステル樹脂1の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物100部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物600部、テレフタル酸230部、アジピン酸20部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で、7時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸20部を添加し、常圧下、180℃で軟化点が110℃になるまで反応させて、[ポリエステル樹脂1]を合成した。得られた[ポリエステル樹脂1]は、Tgが63℃であった。
(ポリエステル樹脂2の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物50部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物640部、テレフタル酸260部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で、7時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸20部を添加し、常圧下、180℃で軟化点が120℃になるまで反応させて、[ポリエステル樹脂2]を合成した。得られた[ポリエステル樹脂2]は、Tgが73℃であった。
(ポリエステル樹脂3の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物150部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物560部、テレフタル酸230部、アジピン酸20部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で、7時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸20部を添加し、常圧下、170℃で軟化点が90℃になるまで反応させて、[ポリエステル樹脂3]を合成した。得られた[ポリエステル樹脂3]は、Tgが63℃であった。
(ポリエステル樹脂4の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で、5時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸44部を添加し、常圧下、180℃で軟化点が110℃になるまで反応させて、[ポリエステル樹脂4]を合成した。得られた[ポリエステル樹脂4]は、Tgが43℃であった。
(ポリエステル樹脂5の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物680部、テレフタル酸260部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で、7時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸40部を添加し、常圧下、200℃で軟化点が110℃になるまで反応させて、[ポリエステル樹脂2]を合成した。得られた[ポリエステル樹脂2]は、Tgが82℃、軟化点(Tm)が110℃であった。
(プレポリマー1の合成)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応させ、さらに1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5、水酸基価49であった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]411部、イソホロンジイソシアネート89部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。
(マスターバッチ1の製造)
PB15−3(銅フタロシアニン)40部、[ポリエステル樹脂1]60部、水30部をヘンシェルミキサーにて混合し、銅フタロシアニン凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ−ル表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行い、パルベライザーで1mmの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
(実施例1)
<水相の調整>
イオン交換水970部、分散安定用の有機樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25%水性分散液40部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液95部、酢酸エチル98部を混合撹拌したところpH6.2となった。これに、10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH9.5に調整し、[水相1]を得た。
<油相作製工程>
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、[ポリエステル樹脂1]545部、パラフィンワックス(融点72℃)181部、酢酸エチル1450部、ワックス分散剤として、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したもの100部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]500部、酢酸エチル100部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1500部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、顔料、ワックスの分散を行った。次いで、[ポリエステル樹脂1]の66%酢酸エチル溶液655部を加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液1]を得た。
[顔料・WAX分散液1]976部をTKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[プレポリマー1]88部を加えTKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合して[油相1]を得た。得られた[油相1]の固形分を測定したところ52.0%であり、固形分に対する酢酸エチルの量は92%であった。
<トナー粒子母体作製工程>
得られた[油相1]500部に[水相1]1200部を加え、ミキサーのせん断熱による温度上昇を抑えるために水浴で冷却をすることにより液中温度を20〜23℃の範囲になるように調整しながら、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用い、回転数8,000〜15,000rpmで調整して2分間混合した、その後、アンカー翼を取り付けたスリーワンモーターで回転数130〜350rpmの間に調整しながら10分間攪拌し、トナー粒子母体となる油相の液滴が水相に分散された[トナー粒子母体スラリー1]を得た。
<樹脂微粒子付着工程>
[トナー粒子母体スラリー1]をアンカー翼を取り付けたスリーワンモーターで回転数130〜350rpmの間に調整して攪拌しながら、液温が22℃の状態で、[樹脂微粒子分散液1]106部とイオン交換水71部を混合したもの(固形分濃度15%)を3分間かけて滴下した。滴下後、回転数を200〜450rpmの間に調整して30分間攪拌を続け、[複合粒子スラリー1]を得た。
<脱溶工程>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[複合粒子スラリー1]を投入し、攪拌を行いながら30℃で8時間脱溶媒を行い、[分散スラリー1]を得た。
<洗浄・乾燥工程>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、以下の操作を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した。
(3):(2)のリスラリー液のpHが4となるように10%塩酸を加え、そのままスリーワンモーターで攪拌30分後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返し、[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥させ、目開き75μmメッシュで篩い、[着色樹脂粒子1](トナー1)を得た。
(実施例2ないし7及び比較例1ないし5)
表1に示すように、処方内容を変更した以外は実施例1と同様にして、トナー2ないし7を得た。
得られたトナーについて、次の評価を行った。
<物性評価>
(微粒子粒径測定方法)
LA−920(堀場製作所社製)を用いて、分散液のまま測定を行った。
(トナー表面のシェルの長辺の長さの平均値)
トナー10個の表面をSEMで観察し、画像処理によって付着している樹脂微粒子の長辺の長さの平均値を算出した。シェルの長辺の計測には画像解析式粒度分布測定ソフトウェア“Mac−View”(マウンテック社製)を用いた。長辺の長さの計測法として特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。図3に示す写真でシェルに接する2つの矢印の頂点を結ぶ直線を長辺と呼んでいる。
(ワックス露出量)
トナー1.0gを秤量し、n−ヘキサン7mlを加え、120rpmで1分間ロールミルで攪拌した後、この溶液を吸引濾過し、真空乾燥でn−ヘキサンを除去して、残った成分の質量(mg)を測定し、ワックス露出量(mg/トナー1g)とした。
(FTIR−ATR測定値)
トナーを6ton、1分間の条件でプレスし、ディスク化したものを用いて測定した。ディスクの表面をPerkinElmer社製FT−IRにて、ATR法(Geクリスタル使用)によりトナー表面から0.3μm程度までの深さに存在するワックス量を測定した。
吸光度において828cm−1のピーク強度(樹脂成分)に対する2850cm−1のピーク強度(ワックス成分)の相対強度比をFTIR−ATR測定値とした。
(軟化点)
フローテスター(CFT−500/島津製作所社製)を用いて測定した。測定試料1.5gを秤量し、H1.0mm×φ1.0mmのダイを用いて、昇温速度3.0℃/分、予熱時間180秒、荷重30kg、測定温度範囲30〜160℃の条件で測定を行い、試料が1/2流出した時の温度をトナーの軟化点とした。
(Tg及びワックス融点)
Tg及びワックスの融点はDSCを用いて測定した。
セイコーインスツル社製のDSC6200を用い、150℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定した。
<品質評価>
(定着分離性)
リコー社製のプリンタipsio CX7500の定着機を取り外した改造機に、トナー5部とシリコーン樹脂コートキャリア95部を混合攪拌して作製した二成分現像剤を入れ、転写紙(リコー社製、タイプ6200Y目紙)に縦方向の先端余白3mmを有するベタ画像で、1.1±0.1mg/cmのトナーが現像されるように調整を行ない、未定着状態の転写紙を6枚出力した。
リコー社製のプリンタipsio CX2500の定着部分のみを取り出し、定着ベルトの温度及びベルト線速度を所望の値になるように改造した定着試験装置を用い、ベルト線速度125mm/secに設定して、定着ベルトの温度を140℃から10℃刻みで190℃まで上げて、先端余白3mmの方から転写紙の定着を行った。転写紙が定着ベルトに巻きついたり、定着機の出口で蛇腹のようになって詰まったりすることなく、正常に定着できた枚数によって、下記基準に基づき評価した。
○:正常に定着できた枚数が5枚以上
△:正常に定着できた枚数が4枚以下3枚以上
×:正常に定着できた枚数が2枚以下
(定着強度)
定着器(面圧:0.7×10Pa.s)をリコー社製の複写機imagio
MF6550に装着し、ヒーター温度を振って(変化させて)コピーを行い、定着画像を得た。定着後の画像にメンデイングテープ(3M社製)を貼り、一定の圧力を掛けた後、ゆっくり引き剥がした。テープを貼る前と引き剥がし後の画像濃度をマクベス濃度計で測定し、次の式により定着率を算出した。定着ローラの温度を段階的に下げて、定着率が80%以下となるときの温度を定着温度とした。
定着率(%)=(テープを引き剥がした後の濃度/テープを貼る前の濃度)×100
評価結果を次の3段階でランク付けした。
○:定着温度130℃未満
△:定着温度130℃以上150℃未満
×:定着温度150℃以上
(高温オフセット)
リコー社製のプリンタipsio SP C220を用いて、A4縦通紙で先端3mmに幅36mmのべた画像を印字した未定着画像を作成した。この未定着画像をリコー社製のプリンタipsio
SP C220の定着器のみを取り出して、温度を調整できるように改造した試験装置を用いて、110℃〜190℃の範囲で10℃刻みの定着温度で定着させ、光沢度計(PG−1M/日本電色社製)で光沢度を測定した。オフセットが発生し光沢度が下がり始めた温度により、以下の評価を行った。
○:光沢低下温度が170℃以上
△:光沢低下温度が140℃以上170℃未満
×:光沢低下温度が140℃未満
(メダカ)
リコー社製のプリンタipsio SP C220を用いて、印字率1%の所定のプリントパターンをN/N環境下(温度23℃、湿度45%)で連続印字した。N/N環境下の5000枚連続印字後に、感光体及びベタ画像を目視で観察評価した。判断基準は以下の通りである。
○:感光体上にメダカの発生がなく、全く問題ない。
△:感光体上にメダカが発生しているが、画像は問題ない。
×:感光体上にメダカが発生しており、画像にも問題がある。
(耐熱保管性)
ホソカワミクロン社製のバウダーテスタ PT−Rを用いて、トナーの加速凝集度を測定した。篩は20μm、45μm、75μmの目開きのものを用いた。温度25℃、湿度50%の環境に24時間放置後と、温度40℃、湿度90%の環境24時間放置後のトナーサンプルの加速凝集度を測定し、その値の差を評価した。
○:差が5.0%未満
△:差が5.0%以上7.5%未満
×:差が7.5%以上
1 画像形成装置
2 プロセスカートリッジ
201 カートリッジ枠体
3 感光体
4 露光装置
10 帯電装置
20 クリーニング装置
21 クリーニングブレード
22 廃トナー回収コイル
30 潤滑剤塗布装置
31 ブラシローラ
32 潤滑剤
33 加圧バネ
41 現像スリーブ
42 規制部材
50 転写装置
51 中間転写ベルト
52 一次転写ローラ
531、532、533、534 支持ローラ
54 二次転写ローラ
60 給紙装置
61 給紙ユニット
62 給紙ローラ
63 レジストローラ
64 排紙ローラ
65 排紙ストック部
70 定着装置
特開2007−249082号公報 特開2004−318043号公報

Claims (9)

  1. 少なくともバインダー樹脂、ワックス及び着色剤を含有し、表面に樹脂微粒子を付着させてなるトナーであって、
    ガラス転移温度Tgが50〜80℃であり、
    ヘキサンによる抽出で求められるトナー表面のワックス露出量が18〜30mg/gであり、
    FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)測定値が0.1以下である
    ことを特徴とするトナー。
  2. 前記トナーの軟化点が100〜140℃である
    ことを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 前記ワックスの融点が40〜90℃である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが60〜100℃である
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のトナー。
  5. 前記トナーがコアシェル構造を有する
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のトナー。
  6. 前記シェルは、長辺の長さの平均が200nm以上である
    ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のトナー。
  7. 像担持体と、帯電装置、現像装置及びクリーニング装置のうち少なくとも一つを備え、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、
    前記現像装置が、請求項1ないし6のいずれかに記載のトナーを用いる
    ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
  8. 潜像を形成する像担持体と、
    像担持体表面に均一に帯電を施す帯電手段と、
    帯電した像担持体表面に露光し潜像を書き込む露光装置と、
    像担持体表面に形成された潜像にトナーを供給し可視像化する現像装置と、
    像担持体表面の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置と、
    像担持体表面の可視像を直接又は中間転写体に転写した後に記録媒体に転写する転写装置と、
    記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置とを備える画像形成装置において、
    前記現像装置が、請求項1ないし6のいずれかに記載のトナーを用いる
    ことを特徴とする画像形成装置。
  9. 潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
    像担持体表面に均一に帯電を施す帯電工程と、
    帯電した像担持体表面に露光し潜像を書き込む露光工程と、
    像担持体表面に形成された潜像にトナーを供給し可視像化する現像工程と、
    像担持体表面の残留トナーをクリーニングするクリーニング工程と、
    像担持体表面の可視像を直接又は中間転写体に転写した後に記録媒体に転写する転写工程置と、
    記録媒体上のトナー像を定着させる定着工程とを含む画像形成方法において、
    前記現像工程において、請求項1ないし6のいずれかに記載のトナーを用いる
    ことを特徴とする画像形成方法。
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