JP2011130748A - 育苗用培土 - Google Patents

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Abstract

【課題】 容積が小さな植物育成用容器に対しても良好な充填性を有しつつ、より強力の高い根鉢を形成し、移植機や人手によって苗を根鉢ごと田畑などに植え付ける際に根鉢の崩壊が生じず、円滑に植え付けることができ、しかも苗を健全に育てることのできる育苗用培土を提供すること。
【解決手段】 熱可塑性の樹脂組成物からなる嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を、培土基材に配合した事を特徴とする育苗用培土。
【選択図】 なし

Description

本発明は、育苗用培土に関する。より詳細には、本発明は、強力の高い根鉢や苗床を形成することのできる育苗用培土に関する。
我が国では、就農人口の減少、就農人員の高齢化などに伴って、農作業の省力化、機械化が進められている。その1つとして、小さな容器で育てた苗を移植機で根鉢ごと容器からから抜き取って、田畑に自動的に植え付ける方法が広く採用されるようになっている。
この方法による場合は、通常“セル”、“ポット”などと称されるプラスチック等からなる小さな容器または該小容器を連結して設けたトレーに培土を自動的に土詰めした後に野菜、草花、果樹、樹木などの植物の種子を播いて所定期間育苗するか、或いは種子を加えた培土を前記小さな容器またはそれを連結してなるトレーに自動的に土詰めした後に所定期間育苗し、それを根鉢ごと小容器から抜き取って移植機で田畑に植え付けることが一般に行われている。
根鉢は、培土の自己接着力と植物の根の絡みによる強力でその形を維持しているが、根鉢強力が低いと、わずかな衝撃で根鉢の形が崩れてしまい、移植機による苗の植え付けが困難であった。
そこで、移植機による植え付けを可能にすることを目的として、育苗用培土の根鉢強力を向上させる方法が従来から提案されており、そのような従来技術としては、酢酸ビニル−アクリル酸メチル共重合体ケン化物、ポリアクリル酸ナトリウム架橋物、ビニルアルコール−アクリル酸共重合体などのようなイオン性吸水性樹脂を培土に混合したもの(特許文献1)、培土に寒天ゲル、ベントナイト、澱粉等の結合剤を添加したもの(特許文献2)、培土に長さ2〜20mmのセルロース繊維を添加したもの(特許文献3)などが知られている。これらの従来技術による場合は、ある程度の根鉢強力の向上は認められるものの、未だその効果は十分ではなく、根鉢強力をより向上させるためには前記した結合剤を多量に使用する必要があり、多量の結合剤の使用は培土の水捌け性の低下、植物の育成能の低下、コストの上昇などを招き易いものであった。
また、培土基材に熱融着性の芯鞘型繊維を配合し、芯鞘型繊維の鞘部を軟化させて接着・固化した育苗用培土が提案されている(特許文献4、特許文献5など)。しかしながら、この従来技術による場合にも、移植機で苗を根鉢ごと田畑などに植え付ける際に、根鉢の割れや崩壊を生ずることがあり、根鉢の強力が必ずしも十分ではない。
特許文献6、7では、容積の小さな植物育成用容器に用いることを目的として充填性と培土の接着性とを両立することを目的として熱融着性蜷縮繊維を培土基材に配合し、熱融着させる育苗用培土も提案されているが、繊維の分散性向上のためにカット長を短くすると培土機材との接着点が少なくなって強度が保てなくなり、根鉢の強度向上のためにカット長を長くすると分散性が低下して根鉢の強度も低下するため、いずれも十分な強度を保つためには添加量を多くする必要があった。これらの問題を解決するものとしてカット長の違う繊維を混合して用いる方法も提案されている(特許文献8)。
すなわち、育苗用培土、特に容積が小さな植物育成用容器に用いる育苗用培土では、充填操作の妨げになる繊維塊などが育苗用培土中に形成されないこと、育苗用培土が均一な組成を保ちながら容器に良好な操作性で充填されること、充填後は容器内で強力の高い根鉢が形成されることが求められているが、これらの従来技術の育苗用培土は、それらの点について十分に満足するものではない。
特開昭58−31919号公報 特開平5−7427号公報 特開平8−130976号公報 特開平11−113388号公報 特開2000−23561号公報 特開2002−58339号公報 特開2002−58340号公報 特開2003−339226号公報
本発明の目的は、容積が小さな植物育成用容器に対しても良好な充填性を有しつつ、より強力の高い根鉢を形成し、移植機や人手によって苗を根鉢ごと田畑などに植え付ける際に根鉢の崩壊が生じず、円滑に植え付けることができ、しかも苗を健全に育てることのできる育苗用培土を提供することである。
本研究者らは、上述の課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、培土基材に、熱可塑性の樹脂組成物からなる嵩密度0.025cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を培土基材に配合することによって、上記課題を解決することを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
〔1〕 熱可塑性樹脂からなる嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を、培土基材に配合した事を特徴とする育苗用培土。
〔2〕 熱可塑性樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂である〔1〕記載の育苗用培土。
〔3〕 熱可塑性樹脂が、ポリ乳酸系樹脂である〔1〕または〔2〕に記載の育苗用培土。
〔4〕 不定形粉末が、熱可塑性樹脂からなる発泡体を破砕したものであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の育苗用培土。
〔5〕 熱可塑性樹脂からなる嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を、培土基材に配合した後、熱可塑性樹脂の軟化温度以上で加熱処理することを特徴とする育苗用培土の製造方法。
本発明の育苗用培土は、熱可塑性の樹脂組成物からなる嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を、培土基材に配合することにより、複数の点あるいは面で接着し得、培土基材を効率的かつ強く固定することが可能である。その結果、本発明の育苗用培土は、移植機や手作業によって根鉢ごと苗を植え付ける際に、根鉢の崩壊を生ずることなく、植え付け作業を円滑に行うことができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の育苗用培土は、熱可塑性樹脂からなる嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を培土基材に配合したことを特徴とする。セルトレイなどの植物育成用容器に充填したあと、所定温度で加熱することによって育苗用培土自体が充填形状のまま固化することが可能なものである。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、一般的に用いられる植物育成用容器がポリプロピレンを基材とするものであることが多いため、融点あるいは軟化点がポリプロピレンの融点以下のものが好ましく、より好ましくは融点あるいは軟化点が150℃以下の温度ものであって、易水溶性でないものであればよい。
具体的にはポリスチレン、ポリエチレンなどの汎用低融点樹脂に加え、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートなどに代表される脂肪族ポリエステル系樹脂などが挙げられ、特に脂肪族ポリエステル系樹脂は根鉢を植替えしたあとに土中で分解し、残留しない傾向があるため好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ポリエステルを少なくとも35モル%以上含んでなるものであり、例えば、ポリ乳酸を主たる成分とするポリ乳酸系樹脂;ヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物;ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物などが例示でき、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
中でも、ポリ乳酸系樹脂が、生分解性を有しているため好適に用いられる。
ポリ乳酸系樹脂は、生分解性を大きく阻害しない限りは、一部モノマーが乳酸と交換可能な脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族多価アルコール等で置き換わってもよく、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油などで一部架橋されていてもよい。
本発明で培土基材に配合する、熱可塑性樹脂からなる不定形粉末は、嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下であり、0.025g/cm3以上0.15g/cm3以下であることが好ましい。嵩密度がこの範囲内よりも低い場合は熱融着時に熱可塑性樹脂層が薄くなりすぎ、接着層としての効果が得られなくなってしまい、この範囲より高くなってしまうと培土全体を固化させるのに必要な配合量が多くなりすぎてしまい、水はけが悪くなってしまう。
また、不定形粉末は目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しないものであり、目開き1mm(18メッシュ;USA)を通過し目開き0.038mm(400メッシュ;USA)を通過しないものであることが好ましい。不定形粉末の大きさがこれよりも大きいと培土基材への分散性が悪くなり、育苗用培土全体を固めるのに必要な粉末量が多くなる。不定形粉末の大きさがこれよりも小さいと本発明の狙う多点接着や面接着による強固な結合が得られなくなってしまい、単なる粉末のブレンドやチョップドストランドのブレンドと変わらなくなってしまう。
これらの嵩密度と形状を有する不定形粉末の製造方法は特に限定されないが、高倍率発泡体を粉砕して篩にかける方法が最も簡便に、本発明の嵩密度と形状を有する不定形粉末が得られる傾向にあるため好ましい。
不定形粉末の培土基材に対する配合量は、培土基材100容積部に対して、20容積部以上60容積部以下であることが、成形後の培土の吸水性、保水性を損なわずに根鉢の強度を確保のために好ましい。
本発明の育苗用培土に用いる培土基材の種類は特に制限されず、育成する植物の種類などに応じて、従来と同様のものを使用することができる。そのうちでも、本発明では、培土基材として、赤玉土、鹿沼土、日向土、山砂、川砂、桐生砂、田土、軽石などのいわゆる土(天然土);人工粒状培土、ピートモス、ココピート、水苔、腐葉土、パーク堆肥、亜炭、モミガラ、薫炭、炭粉、フスマなどの有機質資材の1種または2種以上を用いることが好ましい。なかでも、安価で且つ取り扱い性に優れ、植物育成用容器から取り出し易い、ピートモスを主体とする培土基材が好ましく用いられる。勿論所望により、パーライト、バーミキュライト、ロックウール、ゼオライト、鉱滓などの無機質資材、ポリエチレングリコール系湿潤剤、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥などの肥料などを更に配合してもかまわない。例えば、バーミキュライトや湿潤剤を配合することにより、水捌け性や保温性を適正に調整できる。また、肥料は種子および苗の生育に寄与する。
培土基材の好ましい例としては、前記したような天然土に、ピートモスなどの有機資材、バーミキュライトなどの無機資材、湿潤剤および肥料を配合した培土基材が挙げられる。一般的には、土100重量部に対して、ピートモスなどの天然資材を10重量部以上800重量部以下、バーミキュライトなどの無機資材を10重量部以上500重量部以下、湿潤剤を0.1重量部以上1重量部以下、肥料を0.1重量部以上2重量部以下の割合で配合するのが好ましい。
これとは別に、水捌けの良い土壌を好む植物においては、パーライトを主体とした培土基材が好適に用いられる。勿論、この場合においても、所望により、上記した有機質資材、ポリエチレングリコール系湿潤剤などの湿潤剤、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥などの肥料などを更に配合してもかまわない。
本発明の育苗用培土は、熱可塑性の樹脂組成物からなる嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を、培土基材に配合した後、セルトレイなどの植物育成用容器に充填した後、熱可塑性樹脂の軟化温度以上で加熱処理することによって得る。このようにして得られる本発明の育苗用培土は、播種前にすでに固化している為、発芽後速やかに移植が可能である。加熱処理方法としては特に限定されないが、熱風、電熱、水蒸気など一般的な方法を用い、配合した熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱する。特にポリスチレン、ポリエチレンあるいはポリ乳酸やコポリ(3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸)などの脂肪族ポリエステル系樹脂を用いる場合、120℃以上150℃以下の水蒸気を直接育苗用培土に当てることによって滅菌と育苗用培土の固化を同時に行うことができるので好ましい。
以下、本発明について、ポリ乳酸不定形粉末を配合した実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(不定形粉末の製造)
ポリ乳酸発泡成形体(株式会社カネカ製 カネパールPLAフォーム(登録商標)、37倍発泡、かさ密度0.033g/cm3)を破砕し、10メッシュの篩と500メッシュの篩を重ねたものに通し、10メッシュの篩上に残ったもの(不定形粉末A)、10メッシュと500メッシュの篩の間に残ったもの(不定形粉末B)、500メッシュの篩を通り抜けたもの(不定形粉末C)とした。
また、同様に、18メッシュと400メッシュの篩を重ねて用い、同様に不定形粉末D、E、Fを得た。
(均一性の評価)
育苗用培土を、17.5mmφの硝子試験管に充填し、125℃のオーブンで1時間加熱固化させた後、固化した培土と取り出して縦半分に割ったものの断面を目視で確認し、以下の基準に従って点数評価した。
[評価基準]
1点:明らかに樹脂成分と認められる塊状部分が存在している。
2点:容易に樹脂成分と培土基材が見分けられるが全体としてほぼ均一。
3点:樹脂成分と培土の目視による識別がかなり困難で均一に分散している。
(根鉢強度の評価)
加熱固化させた根鉢(播種前の加熱処理後の根鉢)を2mの高さから落下させて、下記に示す4段階の評価基準にしたがって点数評価した。
[評価基準]
1点:根鉢がバラバラに砕けた。
2点:根鉢が4〜10個に割れた。
3点:根鉢が2〜3個に割れた。
4点:根鉢の割れが生じなかった。
(培土基材)
土(赤玉土)40重量部にピートモス10重量部、パーライト40重量部およびバーミキュライト10重量部を混合して得た混合物100重量部に対して、湿潤剤(ポリエチレングリコール)を0.01重量部および肥料(チッソ旭肥料株式会社製「低度化成肥料アサヒマイクロポーラス」)を0.5重量部の割合で配合して培土基材とした。
(実施例1)
培土基材50容積部、不定形粉末B50容積部をミキサー容器に入れ、撹拌したものを、セルトレー PP128(イワタニアグリグリーン(株)製)に充填し、125℃のオーブンで30分加熱固化させた。
(実施例2)
培土基材50容積部、不定形粉末E50容積量部をミキサー容器に入れ、撹拌したものを、セルトレー PP128に充填し、125℃のオーブンで30分加熱処理した。
(比較例1)
培土基材50容積部、不定形粉末A50容積部をミキサー容器に入れ、撹拌したものを、セルトレー PP128に充填し、125℃のオーブンで30分加熱処理した。
(比較例2)
培土基材50容積部、不定形粉末C50容積部をミキサー容器に入れ、撹拌したものを、セルトレー PP128に充填し、125℃のオーブンで30分加熱処理した。
(比較例3)
培土基材50容積、不定形粉末D50容積をミキサー容器に入れ、撹拌したものを、セルトレー PP128に充填し、125℃のオーブンで30分加熱処理した。
(比較例4)
培土基材50容積部、不定形粉末F50容積をミキサー容器に入れ、撹拌して育苗用培土を調製した。該育苗用培土を、セルトレー PP128に充填し、125℃のオーブンで30分加熱処理した。
これらの実施例および比較例の均一性、根鉢強度の評価結果を表1に示す。
Figure 2011130748

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂からなる嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を、培土基材に配合した事を特徴とする育苗用培土。
  2. 熱可塑性樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂である請求項1記載の育苗用培土。
  3. 熱可塑性樹脂が、ポリ乳酸系樹脂である請求項1または2に記載の育苗用培土。
  4. 不定形粉末が、熱可塑性樹脂からなる発泡体を破砕したものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の育苗用培土。
  5. 熱可塑性樹脂からなる嵩密度0.025g/cm3以上0.25g/cm3以下、かつ目開き2mm(10メッシュ;USA)を通過し目開き0.025mm(500メッシュ;USA)を通過しない不定形粉末を、培土基材に配合した後、熱可塑性樹脂の軟化温度以上で加熱処理することを特徴とする育苗用培土の製造方法。
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