JP2011127992A - 構造物の歪・応力計測方法、歪・応力センサ、及びその製造方法 - Google Patents

構造物の歪・応力計測方法、歪・応力センサ、及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2011127992A
JP2011127992A JP2009286357A JP2009286357A JP2011127992A JP 2011127992 A JP2011127992 A JP 2011127992A JP 2009286357 A JP2009286357 A JP 2009286357A JP 2009286357 A JP2009286357 A JP 2009286357A JP 2011127992 A JP2011127992 A JP 2011127992A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strain
stress
emission wavelength
emission
wavelength
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009286357A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5627882B2 (ja
Inventor
Yoshiki Okuhara
芳樹 奥原
Yasutoshi Mizuta
安俊 水田
Tatsuya Yamada
達也 山田
Noriyoshi Shibata
柴田  典義
Masaki Matsuzaki
正貴 松崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Fine Ceramics Center
Chubu Electric Power Co Inc
Original Assignee
Japan Fine Ceramics Center
Chubu Electric Power Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Fine Ceramics Center, Chubu Electric Power Co Inc filed Critical Japan Fine Ceramics Center
Priority to JP2009286357A priority Critical patent/JP5627882B2/ja
Publication of JP2011127992A publication Critical patent/JP2011127992A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5627882B2 publication Critical patent/JP5627882B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Length Measuring Devices By Optical Means (AREA)

Abstract

【課題】静的及び動的な引張・圧縮方向の歪ないし応力をより高精度に計測でき、且つその方向性を判定できる非接触式の歪・応力測定方法などを提供する。
【解決手段】歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動し、且つ歪・応力の方向性に応じて発光波長の変動方向が異なる、MAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとしてEu等の希土類元素を添加した酸化物系セラミックス焼結体からなる歪・応力センサ10を、構造物1に設置する。歪・応力センサ10に励起光11を照射して蛍光発光12させ、これの発光波長を波長計測手段によって計測し、構造物1に歪が生じていない状態における基準発光波長に対する発光波長変化とその方向を計測することで、構造物1に生じた歪ないし応力の計測とその方向性の判定を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、光を利用して構造物に生じた歪ないし応力を計測検知できる非接触式の歪・応力計測技術に関する。具体的には、与えられた歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動する酸化物系セラミックスからなる蛍光材料を使用した歪・応力計測技術に関する。
構造物の安全利用には当該構造物に作用する物理量の把握が重要であり、従来から多岐にわたるモニタリング技術の開発が進められている。この構造物に作用する物理量を計測するセンサとして、変位、歪、力、加速度、又はトルクなど、様々な物理量を対象としたセンサが利用されている。これらのセンサの原理として、上記種々の物理量を歪に変換し、それを歪センサにより計測しているケースが多い。すなわち、歪・応力場を計測できる歪センサは、様々な物理量のモニタリングに応用できる基本的なデバイスとなり得る。
歪・応力場を計測する歪センサとしては、歪ゲージや圧電フィルムなどの電気的な方式を採用したセンサや、光学的な手法として光ファイバセンサなどが開発されている。しかし、これら従来の歪センサに共通する課題として、歪センサと計測者との間には電気的・光学的な信号ライン(ケーブルや導線)が必要であり、いわゆる接触式(有線)の計測というのが前提となる。これでは、信号ラインの配設にコストを要するばかりか、計測場所や計測対象も制約されてしまう。そこで、動的な応力が作用することで発光する特性を有する応力発光材料を使用した、いわゆる非接触式(無線)の歪センサとして、特許文献1ないし特許文献3がある。特許文献1ないし特許文献3では、応力発光材料が応力の大きさに比例して発光の「強度」が増大するという特性を利用している。具体的には、応力発光材料を構造物に貼着するなどして付与し、当該応力発光材料からの発光強度を計測することで、歪・応力の発生、大きさ、分布などを計測できるとしている。応力発光材料は、応力の動的変化をエネルギー源として発光し、動的な歪・応力に応答して発光強度を変えるため、外部からの電気的・光学的エネルギー供給を必要としない、という点が長所として挙げられる。
一方、発光「強度」ではなく、発光「波長」を計測することで構造物の変位を計測する非接触型の歪センサとして、特許文献4がある。特許文献4の歪センサは、計測対象物の形状変化に伴って伸縮する基板と、基板の表面上に形成され、基板の伸縮に伴ってピッチが変化するグレーティングと、グレーティングの表面上に形成され、励起光が照射されるとレーザー光を発光する発光層とを備えて成る。構造物に応力が作用して変位が生じると、グレーティングのピッチも変化する。この状態において励起光を歪センサに照射すると、変位が生じていない状態の基準波長とは異なる波長で発光することになる。この波長変化量を計測することで、構造物の変位を計測検知している。
また、非特許文献1には、与えられた応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光(フォトルミネッセンスPhotoluminescence)の波長が変動する酸化物系セラミックスからなる蛍光材料が開示されている。ここでの酸化物系セラミックスは、Al23中に発光中心イオンとしてCr3+が添加されている。この現象を応用した応力分布の解析技術として、非特許文献2がある。当該非特許文献2では、遮熱コーティングと金属基材の界面に生成するCr3+添加Al23の発光波長の変化により、応力を検出する方法が提案されている。
また、非特許文献3には、与えられた静水圧(等方的な圧縮応力)の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動する酸化物系セラミックスからなる蛍光材料が開示されている。ここでの酸化物系セラミックスは、SrAl24やCaAl24中に発光中心イオンとしてEu2+が1%添加されている。
特開2004-85483号公報 特開2005-307998号公報 再表2006-85424号公報 特開2003-194525号公報
J. He, and D. R. Clarke, "Determination of the Piezospectroscopic Coefficients for Chromium-Doped Sapphire", J. Am, Ceram, Soc., 78 (5), 1347-1353 (1995) 川崎重工業株式会社, 「航空機エンジンのメンテナンスにおける蛍光分光による損傷測定技術の先導調査研究」独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 平成18年度成果報告書 C. E. Tyner and H. G. Drickamer, "Studies of Luminescence Efficiency of Eu2+ Activated Phosphors as a function of Temperature and High Pressure", J. Chem, Phys., 67 (9), 4116-4122 (1977)
特許文献1ないし特許文献3は、信号ラインが不要な非接触での歪・応力場のモニタリングを可能とする応力発光材料を使用した歪センサである。しかし、特許文献1ないし特許文献3では、応力発光材料の発光強度を計測することで動的な歪・応力の分布等を計測しているので、次のような問題がある。すなわち、応力発光材料における発光強度は、単純に応力や歪の大きさに依存するだけでなく、応力や歪の変化する速度にも大きく依存する。したがって、ある構造体に応力発光材料を付与して発光強度の分布が得られたとしても、それが歪・応力の大きさを反映した情報であるのか、それらの変化速度を反映したものであるのかの判定は不可能であり、対象物の何を診断しているのかを明らかとするのは難しい。また、応力発光材料によっては繰り返し応力によって発光強度が低下し、安定した特性を得るのが難しいものもある。さらに、応力や歪が変化しない場合には発光現象は止まってしまうため、そのままでは静的な歪・応力のセンシングは不可能である。これらの静的な歪・応力を診断するためには、初期の無応力状態から連続的なモニタリングを絶えず継続してその変化のデータを蓄積する必要があることから、コストの増大を招くなど大きな課題を抱える。
これに対し特許文献4は、励起光を照射して発光させ、当該発光波長の変化を計測することで構造物の変位を計測しているので、上記のような問題はない。しかし、特許文献4のセンサはグレーティングを必要とするので製造が煩雑であり、製造コストも嵩む。また、実際に発光波長が変化するのはグレーティング全体のピッチが変化したときなので、グレーティングのピッチ分の長さ以下に空間分解能を向上させることは難しい。さらに、構造物表面の歪を計測するためにはグレーティングのピッチが並ぶ面をその表面に合致させる必要があり、発光する光の方向もその表面と平行方向となるため、その発光の検出には光ファイバー等を表面と平行に設置するなど計測上の制約を伴う。
非特許文献1および非特許文献2の技術は、蛍光材料そのものの発光波長が応力に応じて変化することを利用するため、上記のような問題点はない。すなわち、動的な歪・応力だけでなく静的な歪・応力に対しても発光波長の変化を検出可能であって、蛍光材料面全体が発光するため計測対象である構造物の表面からの発光を捉えればよい。しかしながら、このCr3+添加Al23における波長シフト量は、1GPaの圧縮応力に対して14429cm-3(波長693.19nm)から14426cm-3(波長693.05nm)への変化であり、応力感度(単位応力1GPaあたりの波長シフト量)は0.14nm/GPaとなる。Al23のヤング率を335GPaとすると1GPaに対する圧縮歪は0.3%となり、単位歪(1%)当たりの波長シフト量を歪感度と定義すると、Cr3+添加Al23における歪感度は0.47nm/%となる。このように、非特許文献1および非特許文献2に記載のCr3+添加Al23では、動的な歪・応力だけでなく静的な歪・応力に対する発光波長変化を検出可能という点で有意義であるが、その歪感度や応力感度が低いという課題を有する。これら歪感度や応力感度をより向上できれば、検出精度の向上、計測時間の短縮、さらには低コスト化など、様々なメリットが期待できる。
非特許文献3の技術も、蛍光材料そのものの発光波長が静水圧(等方的な応力)に応じて変化することを利用するため、上記のような問題点はない。すなわち、静的な応力に対して発光波長の変化を検出可能である。しかしながら、この文献中では、静水圧下という等方的な圧縮応力に対する発光波長の応答性について記述されているのみである。一般的な構造物などの変形において、このような応力場が想定されることは少なく、1次元もしくは2次元方向の変形がほとんどであり、さらに、圧縮方向だけではなく引張方向に対する応答性も必須である。したがって、この文献に記載された材料系(SrAl24やCaAl24中に発光中心イオンとしてEu2+を添加)が、現実的に構造物の歪・応力センサとして利用できるとは判断できない。
そこで本発明者らは、動的のみならず静的な歪・応力分布を任意のタイミングで計測できる高精度な歪・応力センサを得られないかと鋭意検討の結果、歪・応力作用下において発光波長が変動(シフト)するのみならず、歪・応力の方向性(引張方向又は圧縮方向)に応じて変動方向が異なることを初めて知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は上記課題を解決するものであって、動的のみならず静的な歪ないし応力とその方向性(引張方向又は圧縮方向)とを任意のタイミングでより高精度に計測できる非接触式の歪・応力計測に関する技術を提供することを目的とする。
まず、構造物に、与えられた歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動し、且つ歪・応力の方向性(引張歪・応力か圧縮歪・応力か)に応じて発光波長の変動方向が異なる蛍光材料、すなわちMAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとして希土類元素を添加した酸化物系セラミックスからなる歪・応力センサを設置し、任意のタイミングで前記歪・応力センサに励起光を照射して蛍光発光させ、このときの発光波長を波長計測手段によって計測し、予め計測しておいた前記構造物に歪・応力が作用していない状態における基準発光波長に対する発光波長変化量とその変化の方向(短波長側への変化か長波長側への変化か)を計測することで、構造物に生じた静的および動的な歪ないし応力の計測とその方向性(引張方向か圧縮方向か)の判定とを行う、構造物の歪・応力計測方法を提案できる。
このMAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとして希土類元素を添加した酸化物系セラミックス(蛍光材料)においては、発光中心イオンにおいて励起された電子が遷移する際に発光現象を引き起こす。この発光現象において、MAl24の結晶構造に歪・応力が作用することで配位子場が変化することで発光中心イオンのエネルギー状態が変化し、これによって発光特性が変化するという原理を応用している。そして、蛍光材料に引張もしくは圧縮方向の歪・応力を与えた状態で、フォトルミネッセンス(励起光照射)によって電子の励起−再結合過程における発光現象である蛍光発光させることで、動的のみならず静止した歪・応力場においても歪・応力の分布に応じた発光波長が得られるというコンセプトである。
このとき、前記歪・応力センサは、薄片状に成形して前記構造物の表面に貼着することもできるし、前記歪・応力センサをバルク状に成形して前記構造物によって挟まれるように設置することもできる。なお、バルク状とは、例えば板状や塊状など、一定の厚みを有する立体形状を意味し、具体的な形状が特定されるものではない。薄片状の歪・応力センサを構造物の表面に貼着した場合は、歪及び応力の双方の計測に適しており、バルク状の歪・応力センサを構造物によって挟まれるように設置した場合は、特に圧縮応力の計測に適している。構造物に作用した応力は、歪・応力センサによって求めた歪量から、計測対象物である構造物のヤング率をもとに計測することができる。
また、構造物に設置して該構造物に生じた歪ないし応力を計測するための歪・応力センサであって、歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動し、且つ歪・応力の方向性に応じて発光波長の変動方向が異なる、MAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとして希土類元素を添加した酸化物系セラミックスからなる、歪・応力センサを提案できる。
当該歪・応力センサにおける前記希土類元素の添加割合は、0.1〜3.0at%が好ましい。また、前記希土類元素はEuが好ましい。
さらに、歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動し、且つ歪・応力の方向性に応じて発光波長の変動方向が異なる、MAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとして希土類元素を添加した酸化物系セラミックスの焼結体からなる、歪・応力センサの製造方法であって、原料を還元雰囲気にて焼成する、歪・応力センサの製造方法を提案できる。
本発明の歪・応力センサは、MAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとして希土類元素を添加した、蛍光材料である酸化物系セラミックスからなり、与えられた歪・応力の大きさに応じた基準発光波長に対する発光波長のシフト量が、従来のCr3+添加Al23よりも大きい。したがって、この蛍光材料を使用した歪・応力センサによれば、従来のCr3+添加Al23に比べて歪感度及び応力感度が高く、構造物における高精度な歪ないし応力の計測が可能となる。また、計測時間の短縮や低コスト化にも有利である。また、本発明の歪・応力センサでは、引張・圧縮という歪・応力の印加方向によって発光波長シフトの方向を変えること、さらに等方的な応力でなくても1次元もしくは2次元的な歪・応力場に対しても応答性を示すこと、が初めて見出されており、実際の構造体における変形診断を可能としている。すなわち、構造物に生じた引張方向のみならず圧縮方向における静的および動的な歪ないし応力の計測を確実に計測できる。しかも、その方向性の判定、すなわち引張方向の歪・応力か圧縮方向の歪・応力かを判定することができる。
本発明の構造物の歪・応力計測方法は、蛍光材料の発光現象を利用した非接触式の計測方法なので、診断対象が広範囲にわたる大型構造体における多点計測、高所や立入り管理区域などの危険箇所における計測、真空中での計測、高速回転体における計測など、接触式のセンサでは困難もしくは不可能な診断対象に対しても高精度な計測が可能となる。また、集光・発散できるという光の性質により、計測点のサイズを微小なミクロ領域から任意のセンシング領域を選定でき、2次元的な走査によって平面内における歪・応力分布診断の高精度化・高速化にも有効となる。
そのうえで、励起光を照射した際の蛍光発光波長の変化(シフト)量によって歪ないし応力を計測するので、従来技術のような動的な歪・応力場だけではなく、静的な歪・応力場における歪ないし応力も計測できる。すなわち、応力が作用している瞬間のみならず、応力が作用した後においても歪ないし応力を計測できる。静的な歪・応力場における歪・応力による波長変化を計測するので、動的な歪・応力場のように歪・応力の変化速度の影響はなく、的確に歪ないし応力を計測できる。また、励起光を照射すればいつでも発光するので、動的な歪・応力のように常時観測している必要は無く、任意のタイミングで歪ないし応力を計測できる。また、本発明では蛍光材料の構造変化に基づく発光波長変化を検出するので、グレーティングを使用する場合に比べて、集光などによって空間分解能を狭くすることもでき、発光の検出方向にも制約を受けない。
本発明の歪・応力センサを、予め薄片状に形成して構造物表面へ貼着する形態とすることで、製造も容易であって対象物の制約が小さく施工性がよい。構造物に貼着する場合には、その接着界面における耐熱性などを考慮する必要があるが、歪・応力センサを薄片状にすることでこれを解決でき、また、歪の追従性や限界値の拡大にも有利である。また、主として応力を計測するためにバルク形状として構造物に挟持させる形態とする場合も、製造が容易であって対象物の制約が小さく施工性がよい。
酸化物系セラミックスの焼結体からなる歪・応力センサを製造する際に還元雰囲気で焼成することで、発光強度が強く、歪・応力に対する応答性の高いフォトルミネッセンス現象を発現させることができる。この歪・応力センサでは発光波長を検出対象とするため発光強度そのものは重要な計測項目ではないが、例えば動的な歪・応力場に対して連続的に蛍光発光スペクトルを計測する場合、発光強度が弱い場合にはS/N比を高めるために各スペクトルの計測に要する時間を長くする必要があり、動的な追従性の低下を招く。また静的な歪・応力場に対しても、高い発光強度が得られればピーク波長の計測精度も向上する。したがって、還元雰囲気での焼成による発光強度の増強は重要となる。
歪・応力計測方法の機構を示す模式図である。 歪・応力を与えていない状態における試験片2の基準蛍光スペクトルである。 試験Iにおける単純引張変形によって引張歪を与える機構の模式図である。 試験Iにおいて試験片2に引張歪を与えた際の歪の増加に伴う蛍光スペクトルのシフトの様子を示すグラフである。 試験Iにおいて試験片1〜3に作用させた引張歪とこれに伴う波長シフト量との関係を示すグラフである。 試験Iにおいて試験片4,5に作用させた引張歪とこれに伴う波長シフト量との関係を示すグラフである。 試験IIにおける曲げ変形によって圧縮歪や引張歪を与える機構の模式図である。 試験IIにおいて試験片2に作用させた圧縮歪・引張歪とこれに伴う波長シフト量との関係を示すグラフである。 試験IIIにおける圧縮変形によって圧縮応力を与える機構の模式図である。 試験IIIにおいて試験片3に作用させた圧縮歪・圧縮応力とこれに伴う波長シフト量との関係を示すグラフである。
本発明は、与えられた歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動し、且つ歪・応力の方向性(引張方向又は圧縮方向)に応じて発光波長の変動方向が異なる酸化物系セラミックスからなる蛍光材料を歪・応力センサとして使用し、構造物に応力が作用した場合の動的又は静的な歪ないし応力を計測するものである。なお、以下の説明では、励起光照射による蛍光発光を、PL発光と称すことがある。
このような蛍光材料である酸化物系セラミックスとしては、MAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとなる希土類元素を添加した材料を使用する。発光中心イオンとしての希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。これらの希土類元素は、1種のみを添加してもよく、2種以上を添加してもよい。MAl24におけるMとしては、Sr、Ba、Caの順で好ましい。これらのうち、SrAl24に希土類元素を添加したものの感度が最も良好な傾向を示し、BaAl24に希土類元素を添加したものの感度が次いで良好な傾向を示すからである。希土類元素としては、Euが好ましい。
当該蛍光材料におけるPL発光は、発光中心イオン内の電子軌道間の励起−再結合過程によって発光現象が発現する。例えばSrAl24にEuを添加したセラミックスは、励起光照射によって緑色にPL発光する。この蛍光材料において発光中心となるのはEuイオン(Eu2+)であり、この発光中心イオンにおいて励起された電子が4f7→4f65dへ遷移する際に発光現象を引き起こす。そして、このような蛍光材料を歪・応力センサとして使用する場合、上記発光現象において、MAl24の結晶構造に歪が作用することによって配位子場が変化することで発光中心イオンのエネルギー状態が変化し、これによって発光特性、すなわちPL発光波長が変動(シフト)する原理を応用している。
希土類元素(発光中心イオン)の添加量は、0.1〜3.0at%(原子%)とする。希土類元素の添加量が多すぎても少なすぎても、PL発光波長のシフト量が小さくなり、延いては歪・応力センサとして使用しても構造物の歪ないし応力を高精度に計測できなくなるからである。希土類元素の添加量が0.1〜3at%程度の範囲であれば、従来のCr3+添加Al23よりもPL発光波長のシフト量を大きくできる。希土類元素の添加量が多くなるほど、PL発光波長シフトの応答性が低下する傾向がある。したがって、希土類元素の添加量は、上記範囲内において比較的少なくすることが好ましい。具体的には、希土類元素の添加量の上限は2.0at%程度が好ましく、1.0at%程度がより好ましく、1.0at%未満がさらに好ましい。例えば希土類元素の添加量が2.0at%以下であれば、従来のCr3+添加Al23に対して少なくとも3.9倍以上の歪感度を達成できる。また、希土類元素である発光中心イオンは高価なため、発光中心イオンの添加量を抑えることは、コスト削減にも有利である。希土類元素の添加量の下限は、0.2at%ないし0.3at%程度が好ましい。
このような酸化物系セラミックスからなる歪・応力センサは、セラミックスの原料(出発原料)を焼成した焼結体(バルク体)とすればよい。代表的には、セラミックスの原料粉末を混合・焼成する公知の固相反応法によって製造できる。具体的には、各種出発原料を混合し、各出発原料の融点未満の温度で焼成して焼結体を得ればよい。このとき、必要に応じて各出発原料を混合した状態で、焼成(本焼)温度より低い温度で仮焼し、該仮焼後の焼結体を粉砕・成型したうえで、焼成(本焼)することが好ましい。組成の均一化や緻密化を図ることができるからである。
上記酸化物系セラミックスでは、母材(MAl24)中の酸素欠損量がPL発光波長のシフト量だけでなく、発光強度にも影響するものがある。例えばSrAl24やCaAl24を母材とする場合は、大気中で焼成するとPL発光強度が弱くなる傾向がある。したがって、焼成や必要に応じて行う仮焼を、酸化を防ぐために無酸素雰囲気で行う。好ましくは、還元雰囲気とする。還元雰囲気であれば、母材構造へ積極的に酸素欠損を導入でき、Euの価数をより配位子場の変化に対して発光エネルギー状態を変えやすいEu2+とできるからである。無酸素雰囲気としては、Arガスなどの不活性ガスや窒素ガス雰囲気とすればよい。より好適な還元雰囲気とする場合は、窒素ガス中に5%程度の水素ガスを混合した雰囲気とすればよい。
酸化物系セラミックスの焼結体からなる歪・応力センサの形状は、構造物に設置できる形状であれば特に限定されないが、薄片状(例えば厚み0.1〜5mm程度)とすることが好ましい。薄片状であれば、構造物に生じた歪への追従性が良好であると共に、施工性も良い。または、一定の厚みを有する立体形状のバルク体とすることもできる。薄片状の歪・応力センサは、直接薄片状に焼結するほか、ある程度の厚みを有するバルク体を切断、切削、又は研削等の後加工によって薄片状とすることもできる。薄片状又はバルク状の歪・応力センサは、構造物の表面に接着等によって貼着したり、構造物の任意の部位に凹みを設けて埋め込むなどによって設置することができる。薄片状の歪・応力センサは、構造物の表面に貼着することが好ましい。一方、バルク状の歪・応力センサは、構造物における二点の間に挟まれるように設置することもできる。この場合は、構造物に生じた圧縮応力の計測に適している。さらに、歪・応力センサは、薄膜として形成することもできる。例えば、構造物の表面にスパッタリングなど各種の成膜方法によって薄膜としたり、酸化物系セラミックス粉体とバインダーとを混合したペーストを構造物の表面へ塗布や噴霧などして、構造物表面でバインダーを融解させることで酸化物系セラミックスを含む膜形成させることもできる。
このようにして設置した歪・応力センサによって、構造物に生じた歪ないし応力の計測方法について説明する。図1に示すように、構造物1に設置した歪・応力センサ10に励起光11を照射すると、当該歪・応力センサ10が蛍光発光するので、その蛍光発光12の発光波長を図外の波長計測手段によって計測する。照射する励起光11には、高エネルギー(短波長)の光を使用する。高エネルギーの励起光によって添加した発光中心イオンの電子軌道間での励起−再結合などが促進され、的確にPL発光するからである。代表的には、波長10〜400nm程度の紫外線(UV)や、これと同程度の波長のレーザー光などが挙げられる。波長計測手段としては、光の波長を計測できるものであれば特に限定されず、公知の機器を使用できる。代表的には、分光器が挙げられる。
これを前提として、先ずは、構造物1に歪が生じていない状態における基準発光波長を予め計測しておく。基準発光波長は、歪・応力センサ10を構造物1に設置した直後、又は構造物1に設置する前に計測しておけばよい。そして、歪・応力センサ10を構造物1へ設置した後、任意のタイミング(任意の時間経過後)で蛍光発光12の波長を計測したとき、構造物1に歪が生じていれば、蛍光発光12の波長は基準発光波長とは異なる波長となっている。そこで、基準発光波長に対する発光波長変化(シフト量)を計測することで、構造物1に生じた歪を計測することができる。このとき、歪の方向性、すなわち引張方歪か圧縮歪かによって、発光波長変化の方向性が逆(短波長側へのシフトか長波長側へのシフトか)になるので、当該発光波長変化の方向性によって引張方向の歪か圧縮方向の歪かを判定することもできる。もちろん、構造物1に歪が生じていなければ、発光波長の変動は無い。また、歪と応力はヤング率を比例定数として比例関係にあるため、計測された歪値から応力を求めることもできる。同時に、引張応力か圧縮応力かも判定できる。基準発光波長は、波長計測手段に連結された情報処理装置に記憶しておき、基準発光波長と発光波長との対比も当該情報処理装置によって行うと効率的である。
計測対象としては、応力が作用し得る構造物であれば特に限定されず、大型の構造物から小型の構造部位まで、種々の構造体が含まれる。特に、本発明の歪・応力計測方法は非接触式の計測方法なので、ダムやトンネルなどの診断範囲が広範囲にわたる大型構造体における多点計測、電波塔や送電塔などの鉄塔、高層ビル、発電所構造物など、高所や立入り管理区域などの危険箇所における計測、タービンやモータなど高速回転体における計測、真空中など密閉空間における計測など、接触式のセンサでは困難もしくは不可能な計測に好適である。
(試験I−i)
まず、酸化物系セラミックスの代表例として、SrAl24にEuを添加した蛍光材料を用いた歪・応力センサについて評価した。Euの添加割合として、0.5at%(試験片1)、1.0at%(試験片2)、2.0at%(試験片3)の3種類とした。
出発原料としてSrCO3(99.9%、高純度化学製)、α−Al23(99.99%>、高純度化学製)、Eu23(99.95%>、関東化学製)の各粉体をそれぞれの化学量論組成に合致するよう秤量し、エタノールを分散媒体としてZrO2ボールとともにPET容器にて24時間混合した。混合後のスラリーに対して、130℃雰囲気中にてエタノールを飛散させて混合粉を抽出し、乳鉢にて粉砕しつつメッシュサイズ250μmのふるいにて整粒した。その後、直径30mmφ×厚み5mmtの形状に350kgf/mm2の圧力にて一軸プレス成形した。この成形体を昇温速度200℃/hにて900℃まで加熱して1時間保持させて仮焼し、炉冷速度にて降温させた。仮焼後の焼結体を再度乳鉢にて粉砕しメッシュサイズ250μmのふるいにて整粒してから、エタノールを分散媒体としてZrO2ボールおよびZrO2ポットミルにて24時間粉砕処理した。この粉砕後のスラリーを同じく130℃雰囲気中にてエタノールを飛散させて混合粉を抽出し、乳鉢にて粉砕しつつメッシュサイズ250μmのふるいにて整粒した。その後、直径30mmφ×厚み5mmtに500kgf/mm2の圧力にて一軸プレス成形した。この成形体の焼成(本焼)は、昇温速度を200℃/hとして1300℃まで加熱し、その温度を4時間保持してから、炉冷速度にて降温させるプロセスとした。焼成雰囲気は5%H2+N2還元雰囲気中とした。最後に、得られた焼結体を厚み0.5mmtの薄片状に加工して、歪・応力センサとした。これら3種類の歪・応力センサを、模擬構造物としてのステンレス板(長さ150mmL×幅25mmW×厚み2mmt)に接着し、試験片1(Eu:0.5at%)、試験片2(Eu:1.0at%)、及び試験片3(Eu:2.0at%)とした。
発光波長を計測する分光器には、CCDリニアイメージセンサにより200〜950nmの波長を一度に分光検出可能な分光器(浜松ホトニクス製、C10027−1)を採用した。各試験片に照射する励起光源としては、365nmに発光波長をもつUV−LED光源(浜松ホトニクス製、L9610)を使用した。まず、試験片に歪を与えていない状態における基準発光波長を計測した。図2に、この励起―PL発光システムにより観測した試験片2のPL発光スペクトルを示す。なお、符号11は励起光であり、符号12はPL発光である。このPL発光スペクトルのピーク波長は約520nmであり、図2の縦軸には、当該ピーク波長での発光強度を1として規格化した発光強度として表記した。また、図示していないが、試験片1及び試験片3においても、同様のPL発光スペクトルが計測された。
次いで、試験片1〜3に引張変形を与えるために、油圧式材料強度試験装置(MTS製、858)の上下動する油圧シリンダーに引張用のグリップアタッチメントを取り付け、その間に各試験片をセットして、図3に示すように引張変形を与えた。なお、符号1は模擬構造物としてのステンレス板、符号10は歪・応力センサ、符号100は試験片である。この油圧シリンダーの上下動を0.01mmステップで稼動させ、各試験片に定量的な引張歪を与えることができる。
図4に、作用させる引張歪の増加に伴う試験片2におけるPL発光スペクトルの変化を示す。図4(a)に示されるように、PL発光はピーク波長の約520nmを中心として約450nmから650nmまでの広がりをもち、発光スペクトル全体からみると波長シフトの確認は難しいが、ピーク波長よりも短波長側(図4(b))および長波長側(図4(c))についてスペクトルを拡大してみると、引張変位に伴う引張歪の増加によってスペクトル全体が短波長側へシフトしている挙動を確認できた。図示していないが、試験片1及び試験片3においても、同様の挙動が確認できた。そして、試験片1〜3におけるPL発光スペクトルのシフトを定量的に評価するために、これらPL発光スペクトルの横軸(波長)をエネルギーに変換してガウス分布を仮定したフィッティングを行い、ガウス分布の中心波長としてピーク位置(波長)を同定した。そのピーク波長と引張歪の関係をまとめた結果が図5である。これにより、引張歪の増加に伴ってPL発光スペクトルのピーク波長がマイナス側(短波長側)へシフトする挙動を定量的に示すことができた。
図5の結果の傾きから、試験片2における単位歪(1%歪)あたりの波長変化を2.6nm/%と見積もることができ、従来技術であるCr3+添加Al23における感度0.47nm/%よりも約5.5倍もの高感度な波長シフトを示すことを見出した。同様に、試験片1及び試験片3における単位歪(1%歪)あたりの波長変化は、それぞれ2.6nm/%、1.8nm/%と見積もることができ、試験片1はCr3+添加Al23の約5.5倍、試験片3はCr3+添加Al23の約3.8倍もの高感度な波長シフトを示すことを見出した。この引張歪の増加に伴うPL発光スペクトルの変化にはヒステリシスのような履歴もなく、このPL発光スペクトルの時間変化を連続計測することで動的な歪に対する応答性を評価することも可能である。
これらの結果により、発光中心イオンの添加割合は、少なくとも0.1〜3at%程度とする必要があることが導き出せた。また、希土類元素の添加割合が増大するに伴い、波長シフト量が低減する傾向が確認された。したがって、希土類元素の添加割合は低く抑えることが高感度化のために有効であり、希土類元素の添加量の上限は2.0at%程度が好ましく、1.0at%程度がより好ましく、1.0at%未満がさらに好ましいことが導き出せた。
(試験I−ii)
次に、母材をCaAl24やBaAl24とした蛍光材料についても合成し、同じく引張歪に対する応答性を評価した。出発原料としてSrCO3(高純度化学製、99.9%)に変えて、CaCO3(高純度化学製、99.95%)、BaCO3(高純度化学製、99.99%)を利用することで組成を制御した。その混合、仮焼、本焼成までの一連の合成プロセスは試験I−iの手法と同様とし、Euの添加割合は1.0at%で共通とした。ただし、BaAl24については1300℃の焼成温度では焼結が十分進行せず、焼結温度を1600℃まで高めるとともに焼成雰囲気を大気中とした。これにより得られた各歪・応力センサを、それぞれ試験I−iと同じステンレス板へ接着して、試験片4(CaAl24)及び試験片5(BaAl24)とした。
そして、試験I−iと同様の条件で引張歪に応答する波長シフトについて評価した。その結果を図6に示す。なお、図6には、比較し易いように上記試験片2の結果も同時に示す。図6の結果から、試験片4及び試験片5における単位歪(1%歪)あたりの波長変化は、それぞれ1.3nm/%、1.8nm/%と見積もることができ、試験片4はCr3+添加Al23の約2.9倍、試験片5はCr3+添加Al23の約3.9倍という高感度な波長シフトを示すことを見出した。また、この結果から、引張歪に対する波長シフト量すなわち歪感度は、SrAl24>BaAl24>CaAl24の順で高いことが確認された。
(試験II)
試験Iでは、単純引張という変形についての応答性について評価しており、より実際に近い変形形態として、曲げ変形による引張歪さらには圧縮歪を加えて、PL発光スペクトルの波長シフトについて検討した。蛍光材料としては試験Iにて最も高い歪感度を示した試験片2(SrAl24にEuを1.0at%添加した酸化物系セラミックス)を選択した。そして、図7に示すように、試験片2に上下方向に応力を与えて曲げ変形を与え、蛍光材料の貼着面を凸状態とするか凹状態とするかで、与える歪を引張(図7(a))もしくは圧縮(図7(b))に選択できる変形方法とした。その結果を図8に示す。
この曲げ変形により引張歪を与えた場合、図8(a)に示されるように、試験Iで得られた結果と同様に、引張歪の増加に伴ってPL発光スペクトルのピーク波長は短波長側へ減少し、曲げ変形においても再現性良く応答することを実証できた。一方、曲げ変形により圧縮歪を増加(マイナス側へ増大)させた場合、図8(b)に示されるように、PL発光スペクトルのピーク波長は長波長側へ増加し、引張歪とは逆の傾向を示した。この結果により、曲げ変形によって与えられる歪が引張であるのか圧縮であるのかという判定を、波長シフトの方向性から的確に検出できることを見出した。その歪感度について定量的に比較してみると、圧縮歪−500με(−0.05%)に対する波長シフト量は約+0.1nmであるのに対して、引張歪+500με(+0.05%)に対する波長シフト量は約−0.1nmであって、その傾きすなわち感度は定量的にも良い一致を示した。実際の構造体においては、診断対象面が平面だけとは限らず局率をもった面も多く存在し、そういった環境では曲げ変形による引張や圧縮歪の作用を想定する必要がある。そういった環境でもこの蛍光材料の波長シフトによる方法では的確な検出が可能であるという点は適用性という観点からも非常に有利である。
(試験III)
上記試験I及び試験IIでは「歪」を診断対象とした。これに対して、この蛍光材料を用いた「応力」の診断も可能であり、その実施例を示す。ここでは、図9のように2枚の金属平板(模擬構造物)1・1間において作用する応力を診断するという例を取り上げ、その平板1・1間に蛍光材料からなる歪・応力センサ10を挟み込む形態とした。この形態によって歪・応力センサ10に作用する「応力」をPL発光スペクトルのシフトから検出するという仕組みである。本試験での蛍光材料としても、試験Iにて最も高い歪感度を示した試験片2と同じSrAl24にEuを1.0at%添加した酸化物系セラミックスを選択した。この蛍光材料からなる歪・応力センサを直径25mm×厚さ3mmの円板状の焼結体として、図9に示すようにその径方向に圧縮応力を与えた。その結果を図10に示す。
まず、この歪・応力センサに作用させた圧縮歪との関係では、図10(a)に示されるように、圧縮歪の増加(マイナス側への増大)に対してピーク波長は増加する傾向を示しており、これは試験IIの曲げ変形において得られた傾向と一致する。その歪感度について定量的に比較してみると、圧縮歪−500με(−0.05%)に対する波長シフト量は約+0.1nmであって試験IIの結果とほぼ一致し、単純圧縮に対しても非常に良い再現性を得ることができた。
図10(b)は、この歪・応力センサのヤング率を102GPaとして、圧縮歪をもとに応力値に換算して横軸とした結果である。図10(b)に示されるように、圧縮応力の増加に対してPL発光スペクトルのピーク波長が増加するという関係が得られた。この結果により、ピーク波長から歪・応力センサに作用する圧縮応力を判定することができる。また、この歪・応力センサ全体に作用する荷重についても同様の関係が得られることから、荷重としての検出も可能となる。したがって、この歪・応力センサをロードセルなどの荷重センサデバイスに組み込むことで非接触での荷重検出にも利用でき、真空中での荷重検出などへの展開も期待できる。
1 構造物
10 歪・応力センサ
11 励起光
12 蛍光発光
100 試験片

Claims (7)

  1. 構造物に、歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動し、且つ歪・応力の方向性に応じて発光波長の変動方向が異なる、MAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとして希土類元素を添加した酸化物系セラミックスからなる歪・応力センサを設置し、
    前記歪・応力センサに励起光を照射して蛍光発光させ、該発光波長を波長計測手段によって計測し、前記構造物に歪・応力が作用していない状態における基準発光波長に対する発光波長変化量とその変化の方向を計測することで、構造物に生じた静的および動的な歪ないし応力の計測とその方向性の判定を行う、構造物の歪・応力計測方法。
  2. 前記歪・応力センサを薄片状に成形し、該薄片状の歪・応力センサを前記構造物の表面に貼着する、請求項1に記載の構造物の歪・応力計測方法。
  3. 前記歪・応力センサをバルク状に成形し、該バルク状の歪・応力センサを前記構造物によって挟まれるように設置する、請求項1に記載の構造物の歪・応力計測方法。
  4. 構造物に設置して該構造物に生じた引張及び圧縮方向の歪ないし応力を計測するための歪・応力センサであって、
    歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動し、且つ歪・応力の方向性に応じて発光波長の変動方向が異なる、MAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとして希土類元素を添加した酸化物系セラミックスからなる、歪・応力センサ。
  5. 前記希土類元素の添加割合が0.1〜3.0at%である、請求項4に記載の歪・応力センサ。
  6. 前記希土類元素がEuである、請求項4または請求項5に記載の歪・応力センサ。
  7. 歪・応力の大きさに応じて励起光を照射したときの発光波長が変動し、且つ歪・応力の方向性に応じて発光波長の変動方向が異なる、MAl24(M=Sr、Ca又はBa)に発光中心イオンとして希土類元素を添加した酸化物系セラミックスの焼結体からなる、歪・応力センサの製造方法であって、
    原料を還元雰囲気にて焼成する、歪・応力センサの製造方法。

JP2009286357A 2009-12-17 2009-12-17 構造物の歪・応力計測方法、歪・応力センサ、及びその製造方法 Expired - Fee Related JP5627882B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009286357A JP5627882B2 (ja) 2009-12-17 2009-12-17 構造物の歪・応力計測方法、歪・応力センサ、及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009286357A JP5627882B2 (ja) 2009-12-17 2009-12-17 構造物の歪・応力計測方法、歪・応力センサ、及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011127992A true JP2011127992A (ja) 2011-06-30
JP5627882B2 JP5627882B2 (ja) 2014-11-19

Family

ID=44290741

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009286357A Expired - Fee Related JP5627882B2 (ja) 2009-12-17 2009-12-17 構造物の歪・応力計測方法、歪・応力センサ、及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5627882B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014009687A (ja) * 2012-06-27 2014-01-20 General Electric Co <Ge> ターボ機械の監視システムおよび方法
JP2014115219A (ja) * 2012-12-11 2014-06-26 Japan Fine Ceramics Center 構造物の歪・応力計測方法及び歪・応力センサ
JP2014115220A (ja) * 2012-12-11 2014-06-26 Japan Fine Ceramics Center 構造物の歪・応力計測方法及び歪・応力センサ
CN106768512A (zh) * 2017-02-08 2017-05-31 徐州工程学院 一种12点方位12点受力视频显示新传感器装置及方法
JP2018146300A (ja) * 2017-03-02 2018-09-20 国立大学法人九州大学 超高圧領域における圧力感知材料及び圧力測定法
JP2021162525A (ja) * 2020-04-02 2021-10-11 株式会社島津製作所 応力発光測定方法および応力発光測定装置
JP7418310B2 (ja) 2019-10-30 2024-01-19 トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド 光ルミネセンスを用いた熱機械的応力の可視化とモデル化

Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07306101A (ja) * 1994-03-18 1995-11-21 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 応力検出方法
JPH11106685A (ja) * 1997-10-02 1999-04-20 Nemoto Tokushu Kagaku Kk 蓄光性塗料及びこの塗料を用いた表示体
WO2003076888A1 (fr) * 2002-03-14 2003-09-18 Horiba,Ltd. Procede et appareil de mesure de contrainte
JP2003262558A (ja) * 2002-03-11 2003-09-19 Railway Technical Res Inst 構造物外力検知装置、及び構造物の外力検知方法
JP2004043656A (ja) * 2002-07-12 2004-02-12 Japan Science & Technology Corp 高輝度メカノルミネッセンス材料及びその製造方法
JP2004085483A (ja) * 2002-08-28 2004-03-18 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 光ファイバーセンサ及び応力計測装置
JP2005147835A (ja) * 2003-11-14 2005-06-09 Ngk Spark Plug Co Ltd 積層型ガスセンサ素子及びその評価方法
JP2005265571A (ja) * 2004-03-18 2005-09-29 Horiba Ltd 応力測定装置、応力測定方法及び応力測定用プログラム
WO2006109704A1 (ja) * 2005-04-08 2006-10-19 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology 紫外線を発光する高強度応力発光材料とその製造方法、ならびに、その利用
WO2007015532A1 (ja) * 2005-08-03 2007-02-08 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology 応力解析用の被測定物、該被測定物に塗膜層を形成するための塗布液及び応力発光構造体
JP2007101278A (ja) * 2005-09-30 2007-04-19 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 応力−ひずみ検出システム
JP2007127435A (ja) * 2005-11-01 2007-05-24 Taiyo Yuden Co Ltd 応力測定方法および装置ならびに品質管理方法
JP2007297947A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Kawasaki Heavy Ind Ltd 蛍光分光式内部応力検査装置

Patent Citations (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07306101A (ja) * 1994-03-18 1995-11-21 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 応力検出方法
JPH11106685A (ja) * 1997-10-02 1999-04-20 Nemoto Tokushu Kagaku Kk 蓄光性塗料及びこの塗料を用いた表示体
JP2003262558A (ja) * 2002-03-11 2003-09-19 Railway Technical Res Inst 構造物外力検知装置、及び構造物の外力検知方法
WO2003076888A1 (fr) * 2002-03-14 2003-09-18 Horiba,Ltd. Procede et appareil de mesure de contrainte
JP2004043656A (ja) * 2002-07-12 2004-02-12 Japan Science & Technology Corp 高輝度メカノルミネッセンス材料及びその製造方法
JP2004085483A (ja) * 2002-08-28 2004-03-18 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 光ファイバーセンサ及び応力計測装置
JP2005147835A (ja) * 2003-11-14 2005-06-09 Ngk Spark Plug Co Ltd 積層型ガスセンサ素子及びその評価方法
JP2005265571A (ja) * 2004-03-18 2005-09-29 Horiba Ltd 応力測定装置、応力測定方法及び応力測定用プログラム
WO2006109704A1 (ja) * 2005-04-08 2006-10-19 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology 紫外線を発光する高強度応力発光材料とその製造方法、ならびに、その利用
JP2006312719A (ja) * 2005-04-08 2006-11-16 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 紫外線を発光する高強度応力発光材料とその製造方法、ならびに、その利用
WO2007015532A1 (ja) * 2005-08-03 2007-02-08 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology 応力解析用の被測定物、該被測定物に塗膜層を形成するための塗布液及び応力発光構造体
JP2007101278A (ja) * 2005-09-30 2007-04-19 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 応力−ひずみ検出システム
JP2007127435A (ja) * 2005-11-01 2007-05-24 Taiyo Yuden Co Ltd 応力測定方法および装置ならびに品質管理方法
JP2007297947A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Kawasaki Heavy Ind Ltd 蛍光分光式内部応力検査装置

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014009687A (ja) * 2012-06-27 2014-01-20 General Electric Co <Ge> ターボ機械の監視システムおよび方法
JP2014115219A (ja) * 2012-12-11 2014-06-26 Japan Fine Ceramics Center 構造物の歪・応力計測方法及び歪・応力センサ
JP2014115220A (ja) * 2012-12-11 2014-06-26 Japan Fine Ceramics Center 構造物の歪・応力計測方法及び歪・応力センサ
CN106768512A (zh) * 2017-02-08 2017-05-31 徐州工程学院 一种12点方位12点受力视频显示新传感器装置及方法
JP2018146300A (ja) * 2017-03-02 2018-09-20 国立大学法人九州大学 超高圧領域における圧力感知材料及び圧力測定法
JP2022000644A (ja) * 2017-03-02 2022-01-04 国立大学法人九州大学 超高圧領域における圧力感知材料及び圧力測定法
JP7078235B2 (ja) 2017-03-02 2022-05-31 国立大学法人九州大学 超高圧領域における圧力感知材料及び圧力測定法
JP7418310B2 (ja) 2019-10-30 2024-01-19 トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド 光ルミネセンスを用いた熱機械的応力の可視化とモデル化
JP2021162525A (ja) * 2020-04-02 2021-10-11 株式会社島津製作所 応力発光測定方法および応力発光測定装置
JP7334664B2 (ja) 2020-04-02 2023-08-29 株式会社島津製作所 応力発光測定方法および応力発光測定装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP5627882B2 (ja) 2014-11-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5627882B2 (ja) 構造物の歪・応力計測方法、歪・応力センサ、及びその製造方法
Tu et al. LiNbO3: Pr3+: a multipiezo material with simultaneous piezoelectricity and sensitive piezoluminescence
JP6029962B2 (ja) 構造物の歪・応力計測方法及び歪・応力センサ
Xu et al. Direct view of stress distribution in solid by mechanoluminescence
Chen et al. Ln 3+-Sensitized Mn 4+ near-infrared upconverting luminescence and dual-modal temperature sensing
Qiu et al. Cr 3+-Doped InTaO 4 phosphor for multi-mode temperature sensing with high sensitivity in a physiological temperature range
CN113292998B (zh) 一种双激活离子掺杂双钙钛矿型荧光温度探针材料及其制备方法和应用
CN105203041B (zh) 一种宽带荧光积分强度比测量应变的方法
Chen et al. Mn4+-activated double-perovskite-type Sr2LuNbO6 multifunctional phosphor for optical probing and lighting
CN110184559A (zh) 含有YAG:Ce的热障涂层及其制备方法和应用
Zheng et al. Eu 2+ and Mn 2+ co-doped Lu 2 Mg 2 Al 2 Si 2 O 12 phosphors for high sensitivity and multi-mode optical pressure sensing
Cai et al. Quantitative stress measurement of elastic deformation using mechanoluminescent sensor: An intensity ratio model
Zhou et al. Optical properties of Nd3+ ions doped GdTaO4 for pressure and temperature sensing
KR20190011283A (ko) 세라믹스 소결체
CN113932962A (zh) 一种多陶瓷热障涂层的残余应力检测方法
JP6000837B2 (ja) 構造物の歪・応力計測方法及び歪・応力センサ
CN109764992A (zh) 一种用于3d打印氧化锆陶瓷结构的残余应力无损检测方法
JP2002194349A (ja) 応力発光材料およびその製造方法
Pieprz et al. Highly Sensitive Lifetime‐Based Luminescent Manometer on Mn4+ Luminescence in Sr4Al14O25 Mn4+
Kim et al. Optical characteristics of the rare-earth-ions-doped calcium chlorapatite phosphors prepared by using the solid–state reaction method
WO2018070072A1 (ja) 応力発光材料、及び応力発光体、並びに応力発光材料の使用
Li et al. Insight into site occupancy of cerium and manganese ions in MgAl2O4 and their energy transfer for dual-mode optical thermometry
CN113403075B (zh) 一种Mn4+-Sm3+共掺杂的锑酸盐荧光温度探针材料及其制备方法和应用
CN115029137A (zh) 一种高灵敏多参数温度探针荧光粉及其制备方法和应用
Szymczak et al. Highly‐Sensitive, Tri‐Modal Luminescent Manometer Utilizing Band‐Shift, Ratiometric and Lifetime‐Based Sensing Parameters

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120926

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130730

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130925

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131210

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140210

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140924

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141001

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5627882

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees