JP2018146300A - 超高圧領域における圧力感知材料及び圧力測定法 - Google Patents

超高圧領域における圧力感知材料及び圧力測定法 Download PDF

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【課題】超高圧領域において系内の圧力を感知できる、ルビー蛍光法に代わる新たな圧力感知材料を提供すること。【解決手段】1GPa以上の超高圧領域において、負荷圧力値に依存する発光スペクトルの波長変化により負荷圧力を感知する材料であって、前記材料が、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体からなる圧力感知材料、及び前記包接体を利用する圧力測定法。【選択図】図5

Description

本発明は、1GPa以上の超高圧領域における圧力感知材料に関し、詳細には、負荷圧力値に依存する発光スペクトルの波長変化により負荷圧力を感知する材料及び圧力測定法に関する。
高圧技術は、ダイヤモンド合成などをはじめ様々な産業分野に用いられ、また学術研究分野においてもその重要性は極めて高く、従来より種々の高圧発生装置に関する提案がなされている。こうした高圧発生装置において、高圧領域、特に1GPaを超える“超高圧”領域を実現するにあたり、装置の圧力制御に係る構成は勿論のこと、加圧室内の圧力を正確に計測できることも重要である。
現在、1GPa超の超高圧力を測定する手段として、最も利用され信頼性が高いとされる測定方法はルビー蛍光シフト法である。ルビー蛍光シフト法とは、ルビーが圧力によってその蛍光スペクトルをシフトさせるという性質を利用し、ルビーの蛍光スペクトルを測定することで、加圧室内の圧力を把握する方法である。具体的には、高圧発生装置の加圧室内へ試料とともに充填される圧力媒体内にルビー片を入れ、そのルビー片に外部から光を照射し、その蛍光スペクトルを外部で検出して、その検出結果から加圧室内の圧力を算出する。
上述のルビー蛍光シフト法は、測定のたびに高価なルビーを消費することになるため、1回の測定単価が高コストである。
本発明は、超高圧領域において系内の圧力を感知できる、ルビー蛍光シフト法に代わる新たな圧力感知材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体に関して、種々の圧力下における発光特性を検討したところ、驚くべきことに負荷圧力に応じて発光スペクトルの極大波長がシフトすることを見出した。さらに本発明者らは、圧力負荷に関して、昇圧過程と降圧過程で可逆的な発光スペクトルのシフトが観察されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、第1観点として、1GPa以上の超高圧領域において、負荷圧力値に依存する発光スペクトルの波長変化により負荷圧力を感知する材料であって、
前記材料が、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体からなる、
圧力感知材料に関する。
第2観点として、前記包接体において、ホスト化合物は、三級ホウ素化合物からなるルイス酸と芳香族ジイミド化合物又は芳香族イミド化合物からなるルイス塩基とのB−N配位結合により形成される複合ホストであって、
前記芳香族ジイミド化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
前記芳香族イミド化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であり、
前記三級ホウ素化合物は、下記一般式(3)で表される化合物である、複合ホストであり、
(上記式(1)中、
は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基を表し、
及びLは、互いに独立して、単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、
及びRは、互いに独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基及びインドリル基からなる群から選ばれる含窒素芳香族基;炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいシアノフェニル基;炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のハロアルキル基でアミノ基の水素原子の少なくとも一つが置換されていてもよいアミノフェニル基;アミノ基;又はシアノ基を表し、
上記式(2)中、
は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の2価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される2価の炭化水素基を表し、
は、単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、
は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基及びインドリル基からなる群から選ばれる含窒素芳香族基;炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいシアノフェニル基;炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のハロアルキル基でアミノ基の水素原子の少なくとも一つが置換されていてもよいアミノフェニル基;アミノ基;又はシアノ基を表す。)
(式(3)中、
、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数3乃至10のアルキル基、フェニル基、フルオロフェニル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、フェノキシ基又はフルオロフェノキシ基を表す。)
ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子である、
第1観点に記載の圧力感知材料に関する。
第3観点として、前記包接体において、ホスト化合物は下記一般式(4)で表される芳香族ジイミド化合物であり、
(式(4)中、
Aは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基を表し、
Ar及びArは、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニレン基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフタレンジイル基を表し、
及びXは、それぞれ独立して、−CR−(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)、−C(=O)−、−NR−(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)、−O−、−SiR1011−(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)及び−SO−からなる群から選択される2価の基を表し、
Ar及びArは、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフチル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいアントラセニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいピレニル基を表す。)
ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、
炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子である、
第1観点に記載の圧力感知材料に関する。
第4観点として、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体を用い、前記包接体への負荷圧力値に依存する発光スペクトルの波長変化を計測することを特徴とする、
1GPa以上の超高圧領域における、圧力測定法に関する。
本発明によれば、1GPa以上の超高圧領域において、負荷圧力を感知する材料を提供できる。
特に本発明の圧力感知材料は、該材料を構成する包接体が超高圧環境下においても破壊されず、繰り返し使用が可能であり、従来のルビー蛍光シフト法におけるルビーの消費によるコスト増の問題を回避できる。
さらに本発明の圧力感知材料は、該材料を構成するホスト化合物とゲスト分子の組合せを種々変更することにより、圧力の感知範囲などの感知特性を調整することが可能である。
図1は、製造例1−1の包接体A1(A・mXy)の単結晶X線構造解析結果を示す図である。 図2は、製造例1−2の包接体A2(A・3FT)の単結晶X線構造解析結果を示す図である。 図3は、製造例2−1の包接体B1(B・pXy)の単結晶X線構造解析結果を示す図である。 図4は、製造例2−2の包接体B2(B・Tol)の単結晶X線構造解析結果を示す図である。 図5は、包接体A1(A・mXy)に圧力を印加した際の発光スペクトル(励起波長:365nm)変化を示す図であり、(a)昇圧過程における発光スペクトル、(b)降圧過程における発光スペクトル、(c)圧力に対する発光極大波長の変化、(d)圧力に対する極大発光エネルギーの変化をそれぞれ示す。 図6は、包接体A2(A・3FT)に圧力を印加した際の発光スペクトル(励起波長:365nm)変化を示す図であり、(a)昇圧過程における発光スペクトル、(b)降圧過程における発光スペクトル、(c)圧力に対する発光極大波長の変化、(d)圧力に対する極大発光エネルギーの変化をそれぞれ示す。 図7は、包接体B1(B・pXy)に圧力を印加した際の発光スペクトル(励起波長:365nm)変化を示す図であり、(a)昇圧過程における発光スペクトル、(b)降圧過程における発光スペクトル、(c)圧力に対する発光極大波長の変化、(d)圧力に対する極大発光エネルギーの変化をそれぞれ示す。 図8は、包接体B2(B・Tol)に圧力を印加した際の発光スペクトル(励起波長:365nm)変化を示す図であり、(a)昇圧過程における発光スペクトル、(b)降圧過程における発光スペクトル、(c)圧力に対する発光極大波長の変化、(d)圧力に対する極大発光エネルギーの変化をそれぞれ示す。 図9は、包接体A1(A・mXy)における圧力の印加に伴う発光スペクトル変化について、化合物AとTPFBで構成される複合ホストと2つのm−キシレン(ゲスト分子)の構造変化を示す概念図であり、(a)静水圧0GPa下、(b)静水圧3GPa下における包接体A1の概念図をそれぞれ示す。 図10は、包接体B1(B・pXy)における圧力の印加に伴う発光スペクトル変化について、化合物B(ホスト化合物)とp−キシレン(ゲスト分子)の構造変化を示す概略図であり、(a)静水圧0GPa下、(b)静水圧3GPa下における包接体B1の概念図をそれぞれ示す。
《圧力感知材料及び圧力測定法》
本発明は、1GPa以上の超高圧領域において、負荷圧力値に依存する発光スペクトルの波長変化により負荷圧力を感知する材料(圧力感知材料)を対象とする。上記圧力感知材料は、詳細には、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体からなる。
上記包接体は、大気圧下や低圧下(例えば静水圧:0GPa)で観測される発光スペクトルと、静水圧0.1GPa以上、例えば1GPa以上の超高圧領域において観測される発光スペクトルの極大波長が異なるという特徴を有する。すなわち、該包接体は、外部圧力に応じて発光特性が変わる(発光スペクトルのシフトが観測される)という特徴により、負荷圧力を感知する材料として利用できる。
そして本発明は、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体を用い、前記包接体への負荷圧力値に依存する発光スペクトルの波長変化を計測する圧力測定法も対象とするものである。
以下、本発明の圧力感知材料、及び圧力測定法に使用する包接体について詳述する。
[ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体]
本発明で使用する上記包接体としては、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体であれば特に限定されないが、例えば、三級ホウ素化合物からなるルイス酸と、特定の芳香族ジイミド化合物又は芳香族イミド化合物からなるルイス塩基とのB−N配位結合により形成される複合ホストと、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のゲスト分子とから構成される包接体(以下、包接体(1)と称する)が挙げられる。
前記複合ホストは、例えばルイス塩基として芳香族ジイミド化合物を使用した場合、前記ルイス酸(三級ホウ素化合物)と前記ルイス塩基(芳香族ジイミド化合物)がモル比でルイス酸:ルイス塩基=2:1の割合で構成され、この場合の包接体は、前記ルイス酸と前記ルイス塩基と前記ゲスト分子(総量)がモル比でルイス酸:ルイス塩基:ゲスト分子=2:1:2の割合で構成される。
また本発明で使用し得る上記包接体として、上述の複合ホストに用いた化合物とは異なる特定の芳香族ジイミド化合物をホスト化合物とし、そしてベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のゲスト分子とから構成される包接体(以下、包接体(2)と称する)が挙げられる。
この場合の包接体は、前記ホスト化合物と前記ゲスト分子とがモル比で実質的に1:1の割合で構成される。
以下、包接体(1)及び包接体(2)を構成するホスト化合物及びゲスト分子について詳述する。
<包接体(1)>
包接体(1)は、三級ホウ素化合物からなるルイス酸と、特定の芳香族ジイミド化合物又は芳香族イミド化合物からなるルイス塩基とのB−N配位結合により形成される複合ホストと、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のゲスト分子とから構成される。
前記芳香族ジイミド化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であり、前記芳香族イミド化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であり、そして前記三級ホウ素化合物は、下記一般式(3)で表される化合物である。
そして前記ゲスト分子は、後述する特定の置換基で置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子である。
[複合ホスト:芳香族ジイミド化合物又は芳香族イミド化合物からなるルイス塩基]
包接体(1)を構成する複合ホストに含まれる芳香族ジイミド化合物及び芳香族イミド化合物は、それぞれ、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物であり、特に複合ホストを構成するルイス塩基としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
上記式(1)中、Aは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基を表す。
ここで、上記置換基としての炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
上記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記式(1)中、Aが表す炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基における、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ピレン、ペリレン等の芳香環から4つの水素原子を取り除いた置換基が挙げられる。具体的には例えば以下に示す式(A−1)乃至式(A−14)で表される4価の基が挙げられる。なお下記式中、*はそれぞれ結合手であることを示す。
また、上記式(1)中、Aが表す炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基における、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基としては、例えば以下に示す式(A−15)乃至式(A−17)で表される4価の基が挙げられる。なお下記式中、*はそれぞれ結合手であることを示す。
好ましいAとしては、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−5)、式(A−15)、式(A−16)及び式(A−17)で表される4価の基が挙げられ、より好ましくは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、式(A−1)及び式(A−2)で表される4価の基が挙げられる。
上記L及び/又はLが表す炭素原子数1乃至6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、1−メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、1,1−ジメチルトリメチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、1,2−ジメチルトリメチレン基、1−エチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチルペンタメチレン基、2−メチルペンタメチレン
基、3−メチルペンタメチレン基、1,1−ジメチルテトラメチレン基、1,2−ジメチルテトラメチレン基、2,2−ジメチルテトラメチレン基、1−エチルテトラメチレン基、1,1,2−トリメチルトリメチレン基、1,2,2−トリメチルトリメチレン基、1−エチル−2−メチルトリメチレン基、1−エチル−1−メチルトリメチレン基等が挙げられる。
上記R及び/又はRが表す含窒素芳香族基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基及びインドリル基からなる群から選ばれる基を挙げることができる。
具体的には、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基;2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基;2−ピラジニル基;3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基;1,2,3−トリアジン−4−イル基、1,2,3−トリアジン−5−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、1,2,4−トリアジン−6−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基;1−ピロリル基、2−ピロリル基;2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基;3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、5−ピラゾリル基;3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基;3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基;3−フラザニル基;2−チアジアゾリル基;1,2,3−トリアゾール−4−イル基、1,2,3−トリアゾール−5−イル基、1,2,4−トリアゾール−3−イル基、1,2,4−トリアゾール−5−イル基;5−テトラゾリル基;2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基などが挙げられる。
上記含窒素芳香族基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる置換基で少なくとも一つが置換されていてもよい。
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基などが挙げられる。
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のハロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基、フルオロエチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、ヨードエチル基などが挙げられる。
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基としては、上記炭素原子数1乃至6のハロアルキル基として挙げた基が酸素原子を介して結合する基が挙げられる。
上記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記含窒素芳香族基のうち、置換基を有していてもよいピリジル基及びピリミジニル基の具体例としては、それぞれ以下に示す基が挙げられる。なお下記式中、芳香環に結合する波線はそれぞれ結合手であることを示し、Meはメチル基を表す。
上記R及び/又はRが表すシアノフェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。これらの置換基の具体例は、前述の含窒素芳香族基の置換基として挙げた基をそれぞれ挙げることができる。
上記シアノフェニル基の具体例としては以下に示す基が挙げられる。なお下記式中、ベンゼン環に結合する波線はそれぞれ結合手であることを示す。
上記R及び/又はRが表す、アミノフェニル基は、フェニル基に結合するアミノ基の水素原子の少なくとも一つが、炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のハロアルキル基で置換されていてもよい。これらのアルキル基及びハロアルキル基の具体例は、前述の含窒素芳香族基の置換基として挙げた基を挙げることができる。
上記アミノフェニル基の具体例としては以下に示す基が挙げられる。なお下記式中、ベンゼン環に結合する波線はそれぞれ結合手であることを示す。
上記一般式(1)で表される芳香族ジイミド化合物の具体例としては、置換基を有していてもよいピリジル基及びピリミジニル基を含む、ピロメリット酸ジイミド化合物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド化合物等を挙げることができ、例えば以下に示す化合物を挙げることができる。
これら芳香族ジイミド化合物の中でも、取り扱いの容易さからピリジル基で置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを用いることが好ましい。
上記一般式(2)で表される芳香族イミド化合物において、Aは炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の2価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される2価の炭化水素基を表
す。
式(2)中、Aにおける炭素原子数6乃至20の2価の芳香族炭化水素基、並びに、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される2価の炭化水素基としては、例えば、前述の式(1)中のAの定義において(A−1)乃至(A−14)として例示した芳香環:フェナントレン、クリセン等の芳香環、並びに、(A−15)乃至(A−17)として例示した芳香環から、任意の2つの水素原子を取り除いた置換基が挙げられる。
また式(2)中、L具体例としては前述の式(1)中のL及び/又はLに定義された基を、Rの具体例としては前述の式(1)中のR及び/又はRの定義された基を、それぞれ挙げることができる。
[複合ホスト:三級ホウ素化合物からなるルイス酸]
包接体(1)を構成する複合ホストに含まれる三級ホウ素化合物は、下記一般式(3)で表される化合物である。
上記式(3)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数3乃至10のアルキル基、フェニル基、フルオロフェニル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、フェノキシ基又はフルオロフェノキシ基を表す。
上記R、R及び/又はRが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
また上記R、R及び/又はRが表す炭素原子数3乃至10のアルキル基としては、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などが挙げられる。
上記R、R及び/又はRが表す炭素原子数1乃至6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基などが挙げられる。
上記一般式(3)で表される三級ホウ素化合物の具体例としては、例えば以下に示す化合物を挙げることができる。
これら三級ホウ素化合物の中でも、後述する複合ホストの構造内部に形成されるキャビティを確保する点から、該三級ホウ素化合物が嵩高い化合物であることが好ましく、例えばトリフルオロボラン、トリイソプロピルボラン、トリフェニルボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリイソプロポキシボランが好ましく、中でもトリフェニルボラン及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが好適である。
[複合ホスト]
包接体(1)を構成する複合ホストは、前記芳香族ジイミド化合物又は芳香族イミド化合物(ルイス塩基)と前記三級ホウ素化合物(ルイス酸)とのB−N配位結合によって形成される。
該複合ホストは、溶媒中で前記芳香族ジイミド化合物(ルイス塩基)と前記三級ホウ素化合物(ルイス酸)とをモル比1:2の割合で加熱し、室温まで冷却・静置させることにより形成される。またルイス塩基として芳香族イミド化合物を用いた場合、前記芳香族イミド化合物(ルイス塩基)と前記三級ホウ素化合物(ルイス酸)とをモル比1:1の割合で加熱し、冷却・静置すればよい。この時、溶媒として後述するゲスト分子でもあるベンゼンやナフタレンを用いることにより、複合ホストの形成とともに、該複合ホストの構造内部に生じるキャビティに、ベンゼンやナフタレン等のゲスト分子が包接され、本発明の超分子の包接体が形成されることとなる。
[ゲスト分子]
包接体(1)を構成するゲスト分子は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子であり、これらは、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基から
なる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。これらの置換基の具体例は、前述の芳香族ジイミド化合物における含窒素芳香族基の置換基として挙げた基をそれぞれ挙げることができる。
上記ゲスト分子の具体例としては、ベンゼン;トルエン、o−フルオロトルエン、m−フルオロトルエン、p−フルオロトルエン等のトルエン類;o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等のキシレン類;アニソール、o−メチルアニソール、m−メチルアニソール、p−メチルアニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン等のアニソール類;1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン等のトリアルキルベンゼン類;ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン、2−フルオロナフタレン等のナフタレン類などが挙げられる。
包接体(1)を構成するゲスト分子として、好ましくは、トルエン類(特にトルエン、m−フルオロトルエン)、キシレン類(特にm−キシレン)及びナフタレン類(特にナフタレン、1−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン)を用いることが望ましい。
[包接体(1)の調製]
包接体(1)は、前記三級ホウ素化合物と特定の芳香族ジイミド化合物又は芳香族イミド化合物とのB−N配位結合により形成される複合ホストと、該複合ホストの構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成され、ルイス塩基として特定の芳香族ジイミド化合物を用いた場合、前記芳香族ジイミド化合物(ルイス塩基)と前記三級ホウ素化合物(ルイス酸)とゲスト分子(総量)のモル比が1:2:2の組成で構成される包接結晶体の構造を有するものである。
上記包接体(1)は、前述したように、前記芳香族ジイミド化合物又は芳香族イミド化合物(ルイス塩基)と前記三級ホウ素化合物(ルイス酸)と前記ゲスト分子とを混合し、該混合物をゲスト分子の沸点付近まで或いは100℃程度にまで加熱後、室温(およそ23℃)付近で冷却・静置させることにより、粉末状の結晶の形態にて得られる。ここで、加熱後の冷却方法により、得られる包接体(結晶)の大きさを適宜調整し得、例えば加熱後、超音波水浴下で急速に冷却し、そのまま室温(およそ23℃)にて数分間、例えば3〜10分間程度静置すると、最大径10μm程度の比較的小さい包接体(結晶)を形成できることを確認している。あるいは加熱後、室温まで徐冷することにより、最大径200μm程度の比較的大きい包接体(結晶)を形成できることを確認している。
<包接体(2)>
包接体(2)は、下記一般式(4)で表されるジイミド化合物であるホスト化合物と、後述する特定の置換基で置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のゲスト分子とから構成される。
[ホスト化合物]
包接体(2)を構成するホスト化合物は、下記一般式(4)で表される化合物である。
上記式(4)中、Aは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の
4価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基を表す。
上記Aの具体例としては、前記包接体(1)の複合ホストにおける一般式(1)で表される芳香族ジイミド化合物におけるAにおいて定義された基が挙げられ、具体的には、上記式(A−1)乃至(A−17)で表される4価の基を挙げることができる。
好ましいAとしては、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−5)、式(A−15)、式(A−16)及び式(A−17)で表される4価の基が挙げられ、より好ましくは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、式(A−1)及び式(A−2)で表される4価の基が挙げられる。
上記式(4)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニレン基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフタレンジイル基を表す。
好ましいAr及びArとしては、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、o−フェニレン基、1,2−ナフタレンジイル基及び2,3−ナフタレンジイル基が挙げられ、より好ましくは、o−フェニレン基が挙げられる。
上記式(4)中、X及びXは、それぞれ独立して、−CR−(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)、−C(=O)−、−NR−(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)、−O−、−SiR1011−(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)及び−SO−からなる群から選択される2価の基を表す。
好ましいX及びXとしては、−C(=O)−が挙げられる。
上記式(4)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフチル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいアントラセニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいピレニル基を表す。
好ましいAr及びArとしては、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、フェニル基及びナフチル基が挙げられ、より好ましくは、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
上記各基の定義において、置換基としての炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
上記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる
[ゲスト分子]
包接体(2)を構成するゲスト分子は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子であり、これらは、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。
これらゲスト分子の具体例や具体的な置換基としては、包接体(1)を構成するゲスト分子において挙げた化合物や置換基を挙げることができる。
包接体(2)を構成するゲスト分子として、好ましくは、トルエン類(特にトルエン、p−フルオロトルエン)、キシレン類(特にp−キシレン)及びナフタレン類(特にナフタレン、1−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン)を用いることが望ましく、特に、トルエン類(特にトルエン、p−フルオロトルエン)、キシレン類(特にp−キシレン)を用いることが望ましい。
[包接体(2)の調製]
包接体(2)は、ホスト化合物(式(4)で表される芳香族ジイミド化合物)と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体であり、前記ホスト化合物と前記ゲスト分子とがモル比で実質的に1:1の割合で構成される包接結晶体の構造を有するものである。
包接体(2)は、前述の包接体(1)の調製と同様の方法にて、調製可能である。すなわち、前記の式(4)で表される、共有結合のみで形成される通常の有機分子であるホスト化合物と前記ゲスト分子とを混合し、該混合物をゲスト分子の沸点付近まで或いは100℃程度にまで加熱後、室温(およそ23℃)付近で冷却・静置させることにより、粉末状の結晶の形態にて得られる。ここで、加熱後の冷却方法により、得られる包接体(結晶)の大きさを適宜調整し得、例えば加熱後、超音波水浴下で急速に冷却し、そのまま室温(およそ23℃)にて数分間、例えば3〜10分間程度静置すると、最大径10μm程度の比較的小さい包接体(結晶)を形成できることを確認している。あるいは加熱後、室温まで徐冷することにより、最大径200μm程度の比較的大きい包接体(結晶)を形成できることを確認している。
前述したように、本発明の圧力感知材料は、外部圧力に応じて発光特性が変化することを利用し、具体的には、圧力感知材料に圧力がかかることにより、該材料からの発光スペクトルの発光極大波長が長波長側にシフトすることを利用し、負荷圧力を感知することができる。
本発明の圧力感知材料における包接体が、圧力の印加に伴い、発光スペクトル変化を生じるメカニズムの一要因としては、圧力負荷によって静水圧下における結晶格子が圧縮し、これにより、ホスト化合物とゲスト分子との分子間距離の近接が生じ、発光特性の長波長側へのシフトにつながったと考えられる。
また本発明の圧力感知材料は、包接体を構成するホスト化合物とゲスト分子の組合せによって常圧(大気圧)下での発光特性が変化し、それに伴い、加圧下における発光スペクトルのシフト挙動も変化することから、上記ホスト化合物とゲスト分子の組合せにより、圧力の感知範囲や感度といった感知特性を調整することが期待できる。そのため、様々な高圧環境下において、所望の感知特性に応じた圧力感知材料の提供が可能となることが期待できる。
そして特に、本発明の圧力感知材料は、高圧力の測定手段として従来利用されているルビー蛍光シフト法に代わる圧力測定方法として、ルビーの代替材料としての利用が期待できる。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
(1)マイクロ波合成装置
装置:Anton Paar社製 Monowave 400
(2)定温乾燥器
装置:アズワン(株)製 ETTAS ONW−300S
(3)元素分析
装置:(株)ヤナコ機器開発研究所製 炭素・水素・窒素同時定量装置 CHNコーダーMT−6
(4)H NMRスペクトル
装置:BRUKER社製 AVANCE(登録商標)500
基準:テトラメチルシラン(δ0.00ppm)
(5)単結晶X線構造解析
装置:Bruker AXS社製 CCD搭載単結晶自動X線構造解析装置 SMART APEX
(6)ダイヤモンドアンビルセル
装置:(株)シンテック製 50mm角セル BT5055M32U + SH−アンビル
(7)発光スペクトル
励起光源:パナソニック(株)製 LED方式SPOT型UV照射器 Aicure UJ20
ズーム鏡筒:(株)清和光学製作所製 MS−505
分光器:浜松ホトニクス(株)製 PMA−11 マルチチャンネル分光器
(8)ルビー蛍光法
分光器:CVIメレスグリオ社製 CVI Digikrom 1/4m モノクロメーター
CCDカメラ:SBIG社製 SBIG ST−6V
また、略記号は以下の意味を表す。
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
3FT:3−フルオロトルエン
mXy:m−キシレン
pXy:p−キシレン
Tol:トルエン
[製造例1]化合物Aの合成
還流管付き50mL丸底フラスコに、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物2.50g(9.32mmol)、3−アミノピリジン1.95g(20.7m
mol)、及びDMF19gを加え、150℃で6時間加熱還流を行った。室温(およそ23℃)まで冷却後、沈殿している粗物をろ別した。この粗物を、DMFで再結晶し、50℃のバキュームオーブンで真空下12時間乾燥させることで、化合物A3.01gを黄土色の粉末として得た(7.16mmol、収率77%)。
元素分析 計算値:C,68.57;H,2.88;N,13.33%.(C2412
実測値:C,68.16;H,2.88;N,13.30%.
[製造例2]化合物Bの製造
30mL耐圧ガラスチューブに、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物1.00g(3.73mmol)、2−アミノベンゾフェノン1.50g(7.60mmol)、及びDMF14gを仕込み密封した。この混合物を、マイクロ波合成装置を用い、80℃で10分間、さらに140℃で40分間加熱した。反応溶液を室温(およそ23℃)まで冷却後、沈殿している粗物をろ別した。この粗物を、DMFで再結晶し、140℃のバキュームオーブンで真空下10時間乾燥させることで、化合物B0.79gを淡黄色の粉末として得た(収率33.8%)。
H NMR(500MHz,CDCl):8.71(s,2H),7.66−7.79(m,4H),7.58−7.63(t,1H),7.47−7.52(m,2H),7.35−7.41(m,2H).
元素分析 計算値:C,76.67;H,3.54;N,4.47%.(C4022
実測値:C,76.84;H,3.55;N,4.48%.
[製造例1−1]包接体A1(A・mXy)
化合物A 50mg、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPFB)125mg、及びm−キシレン10gをサンプル管に仕込み、ホットプレートでm−キシレンの沸点付近まで加熱し均一溶液とした。この溶液を、60℃に設定した定温乾燥器内に3日間静置し、生じた結晶をろ取することで、包接体A1(A・mXy)の結晶120mgを得た。
得られた結晶の単結晶X線構造解析結果を図1に示す。図1に示すように、包接体A1は、化合物A:TPFB:mXy=1:2:2のモル比で構成されていることが示唆された。すなわち、化合物A 1分子とTPFB 2分子が形成する複合ホストに、m−キシレン(ゲスト分子)2分子が包接された結晶構造であることが確認された。
[製造例1−2]包接体A2(A・3FT)
化合物A 50mg、TPFB125mg、及び3−フルオロトルエン10gをサンプル管に仕込み、ホットプレートで3−フルオロトルエンの沸点付近まで加熱し均一溶液とした。この溶液を、60℃に設定した定温乾燥器内に3日間静置し、生じた結晶をろ取することで、包接体A2(A・3FT)の結晶120mgを得た。
得られた結晶の単結晶X線構造解析結果を図2に示す。図2に示すように、包接体A2は、化合物A:TPFB:3FT=1:2:2のモル比で構成されていることが示唆された。すなわち、化合物A 1分子とTPFB 2分子が形成する複合ホストに、3−フルオロトルエン(ゲスト分子)2分子が包接された結晶構造であることが確認された。
[製造例2−1]包接体B1(B・pXy)
化合物B 150mg及びp−キシレン120gをサンプル管に仕込み、ホットプレートでp−キシレンの沸点付近まで加熱し均一溶液とした。この溶液を、60℃に設定した定温乾燥器内に4日間静置し、生じた結晶をろ取することで、包接体B1(B・pXy)の結晶127mgを得た。
得られた結晶の単結晶X線構造解析結果を図3に示す。図3に示すように、包接体B1は、化合物B:pXy=1:1のモル比で構成されていることが示唆された。すなわち、化合物B(ホスト化合物)1分子に、p−キシレン(ゲスト分子)1分子が包接された結晶構造であることが確認された。
[製造例2−2]包接体B2(B・Tol)
化合物B 50mg及びトルエン40gをサンプル管に仕込み、ホットプレートでトルエンの沸点付近まで加熱し均一溶液とした。この溶液を、60℃に設定した定温乾燥器内に4日間静置し、生じた結晶をろ取することで、包接体B2(B・Tol)の結晶26mgを得た。
得られた結晶の単結晶X線構造解析結果を図4に示す。図4に示すように、包接体B2は、化合物B:Tol=1:1のモル比で構成されていることが示唆された。すなわち、化合物B(ホスト化合物)1分子に、トルエン(ゲスト分子)1分子が包接された結晶構造であることが確認された。
[実施例1]高圧下での包接体A1の発光挙動
ダイヤモンドアンビルセル中に、包接体A1(A・mXy)結晶の粉末、基準物質としてルビーボール、及び圧力媒体としてケロシンを封入し、静水圧0〜10GPaの範囲で圧力を変化(昇圧又は降圧)させながら、各包接体に圧力を印加した際の発光スペクトル(励起波長:365nm)を測定した。昇圧過程における発光スペクトルを図5(a)に、降圧過程における発光スペクトルを図5(b)に、圧力に対する発光極大波長の変化を図5(c)に、圧力に対する極大発光エネルギーの変化を図5(d)に、それぞれ示す。なお、セル内部の圧力(静水圧)は、ルビー蛍光法により測定した。
図5に示すように、包接体A1(A・mXy)は、大気圧下や低圧下では、青緑色(およそ500nm)の発光を示す包接結晶であった。これは、結晶構造中で形成する化合物Aとm−キシレンとの電荷移動相互作用に由来する発光である。
この結晶は、圧力の印加に伴って、青緑色(およそ500nm)から橙色(およそ590nm)まで発光波長が変化することが観測された。例えば、3GPaの圧力印加では、およそ50nmもの大きな発光波長のシフトを示した。また、昇圧過程と降圧過程で可逆的な発光スペクトルのシフトが観測された。このことより、発光スペクトルの変化は結晶構造の破壊に伴うものではなく、結晶構造の歪みに由来するものと強く推察される。すなわち、静水圧0GPa下(図9(a))と比べ、静水圧3GPa下(図9(b))では、化合物Aとm−キシレンとの分子間距離が近くなることにより、より安定な電荷移動錯体を形成し、発光スペクトルの長波長シフト(低エネルギー発光)が観測されたと考えられる(図9参照)。
[実施例2]高圧下での包接体A2(A・3FT)の発光挙動
包接体A2(A・3FT)について、実施例1と同様にして高圧下での発光挙動を測定した。結果を図6[(a)昇圧過程における発光スペクトル、(b)降圧過程における発
光スペクトル、(c)圧力に対する発光極大波長の変化、(d)圧力に対する極大発光エネルギーの変化]にそれぞれ示す。
図6に示すように、包接体A2(A・3FT)は、大気圧下や低圧下では、水色(およそ480nm)の発光を示す包接結晶であった。これは、結晶構造中で形成する化合物Aと3−フルオロトルエンとの電荷移動相互作用に由来する発光である。
この結晶は、圧力の印加に伴って、水色(およそ480nm)から橙色(およそ580nm)まで発光波長が変化することが観測された。例えば、3GPaの圧力印加では、およそ60nmもの大きな発光波長のシフトを示した。また、実施例1と同様に、昇圧過程と降圧過程で可逆的な発光スペクトルのシフトが観測された。
[実施例3]高圧下での包接体B1(B・pXy)の発光挙動
包接体B1(B・pXy)について、実施例1と同様にして高圧下での発光挙動を測定した。結果を図7[(a)昇圧過程における発光スペクトル、(b)降圧過程における発光スペクトル、(c)圧力に対する発光極大波長の変化、(d)圧力に対する極大発光エネルギーの変化]にそれぞれ示す。
図7に示すように、包接体B1(B・pXy)は、大気圧下や低圧下では、緑色(およそ510nm)の発光を示す包接結晶であった。これは、結晶構造中で形成する化合物Bとp−キシレンとの電荷移動相互作用に由来する発光である。
この結晶は、圧力の印加に伴って、緑色(およそ510nm)から橙色(およそ590nm)まで発光波長が変化することが観測された。例えば、3GPaの圧力印加では、およそ50nmもの大きな発光波長のシフトを示した。また、実施例1と同様に、昇圧過程と降圧過程で可逆的な発光スペクトルのシフトが観測された。すなわち、静水圧0GPa下(図10(a))と比べ、静水圧3GPa下(図10(b))では、化合物Bとp−キシレンとの分子間距離が近くなることにより、より安定な電荷移動錯体を形成し、発光スペクトルの長波長シフト(低エネルギー発光)が観測されたと考えられる(図10参照)。
[実施例4]高圧下での包接体B2(B・Tol)の発光挙動
包接体B2(B・Tol)について、実施例1と同様にして高圧下での発光挙動を測定した。結果を図8[(a)昇圧過程における発光スペクトル、(b)降圧過程における発光スペクトル、(c)圧力に対する発光極大波長の変化、(d)圧力に対する極大発光エネルギーの変化]にそれぞれ示す。
図8に示すように、包接体B2(B・Tol)は、大気圧下や低圧下では、水色(およそ475nm)の発光を示す包接結晶であった。これは、結晶構造中で形成する化合物Bとトルエンとの電荷移動相互作用に由来する発光である。
この結晶は、圧力の印加に伴って、水色(およそ475nm)から橙色(およそ580nm)まで発光波長が変化することが観測された。例えば、3GPaの圧力印加では、およそ40nmもの大きな発光波長のシフトを示した。また、実施例1と同様に、昇圧過程と降圧過程で可逆的な発光スペクトルのシフトが観測された。
以上のように、本発明によれば包接結晶の発光現象を利用して、外部圧力(静水圧)のセンシングが可能である。また、包接結晶を構成する分子の組合せを変更することにより、その応答性を調整することも可能である。

Claims (4)

  1. 1GPa以上の超高圧領域において、負荷圧力値に依存する発光スペクトルの波長変化により負荷圧力を感知する材料であって、
    前記材料が、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体からなる、
    圧力感知材料。
  2. 前記包接体において、ホスト化合物は、三級ホウ素化合物からなるルイス酸と芳香族ジイミド化合物又は芳香族イミド化合物からなるルイス塩基とのB−N配位結合により形成される複合ホストであって、
    前記芳香族ジイミド化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
    前記芳香族イミド化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であり、
    前記三級ホウ素化合物は、下記一般式(3)で表される化合物である、複合ホストであり、
    (上記式(1)中、
    は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基を表し、
    及びLは、互いに独立して、単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、
    及びRは、互いに独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基及びインドリル基からなる群から選ばれる含窒素芳香族基;炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいシアノフェニル基;炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のハロアルキル基でアミノ基の水素原子の少なくとも一つが置換されていてもよいアミノフェニル基;アミノ基;又はシアノ基を表し、
    上記式(2)中、
    は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の2価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される2価の炭化水素基を表し、
    は、単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、
    は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基及びインドリル基からなる群から選ばれる含窒素芳香族基;炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいシアノフェニル基;炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のハロアルキル基でアミノ基の水素原子の少なくとも一つが置換されていてもよいアミノフェニル基;アミノ基;又はシアノ基を表す。)
    (式(3)中、
    、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数3乃至10のアルキル基、フェニル基、フルオロフェニル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、フェノキシ基又はフルオロフェノキシ基を表す。)
    ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子である、
    請求項1に記載の圧力感知材料。
  3. 前記包接体において、ホスト化合物は下記一般式(4)で表される芳香族ジイミド化合物であり、
    (式(4)中、
    Aは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基を表し、
    Ar及びArは、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニレン基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフタレンジイル基を表し、
    及びXは、それぞれ独立して、−CR−(式中、R及びRは、それぞれ
    独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)、−C(=O)−、−NR−(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)、−O−、−SiR1011−(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)及び−SO−からなる群から選択される2価の基を表し、
    Ar及びArは、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフチル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいアントラセニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいピレニル基を表す。)
    ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子である、
    請求項1に記載の圧力感知材料。
  4. ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体を用い、前記包接体への負荷圧力値に依存する発光スペクトルの波長変化を計測することを特徴とする、
    1GPa以上の超高圧領域における、圧力測定法。
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