JP2011127030A - 水性分散体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材に対する密着性、耐チッピング性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、耐水性、耐溶剤性に優れ、かつ塗膜外観が良好な塗膜を形成できる水性分散体を提供する。
【解決手段】本発明の水性分散体は、質量平均分子量が70,000〜130,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該共重合体(A)100質量部に対して3.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.5〜20.0質量部のα−オレフィンスルホン酸塩(C)とを含有し、水分含有率が3〜90質量%であり、前記共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散している。
【選択図】なし

Description

本発明は、オレフィン系樹脂の水性分散体およびその製造方法に関する。
オレフィン系樹脂の水性分散体は、物品に、密着性、耐チッピング性、耐ブラックヒールマーク性、耐食性、ガスバリヤ性等の特性を付与するため、接着剤、塗料等として好適に用いられる。具体的な用途としては、防湿剤、皮膜形成剤、コーティング剤、繊維処理剤、ヒートシール剤、バインダー、プライマー等が挙げられる。また、水性分散体によって上述した特性が付与された物品としては、塗装物品、被覆物品、積層体、インク、化粧品、粘着製品等が挙げられる。
このような、オレフィン系樹脂の水性分散体としては、架橋またはグラフト重合によって水性分散体中のオレフィン系樹脂を改質したものが用いられている。
例えば特許文献1には、オレフィン系樹脂と、酸変性ポリオレフィン化合物と、オレイン酸カリウムとからなり、体積平均粒子径が0.1〜0.5μmである水性分散体が開示されている。
また、特許文献2には、オレフィン系熱可塑性樹脂と、酸変性ポリオレフィンと、α−オレフィンスルホン酸塩とを溶融混練し、得られた溶融混練物に水の飽和蒸気圧よりも高い圧力下で水を注入して固形分が水に分散した水性分散体を調製し、該水性分散体を水で希釈して水性分散液を製造する方法が開示されている。
特開2008−133479号公報 特開2008−38055号公報
しかしながら、特許文献1に記載の水性分散体では、水性樹脂等に添加して塗料とすることで、密着性や耐衝撃摩耗性等の特性を物品に付与することが可能であるものの、塗膜外観の低下を招くといった問題があった。さらに、オレフィン系樹脂の分散剤として、オレイン酸カリウムを用いているため、塗膜の耐水性が低下しやすかった。
また、特許文献2に記載の水性分散体や水性分散液は、分散剤としてα−オレフィンスルホン酸塩を用いているので、形成される塗膜に十分な耐水性を付与することはできるものの、基材に対する密着性や、耐チッピング性、耐衝撃摩耗性等を塗膜に付与する効果が不十分であった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、基材に対する密着性、耐チッピング性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、耐水性、耐溶剤性に優れ、かつ塗膜外観が良好な塗膜を形成できる水性分散体を提供することにある。また、そのような水性分散体を容易に製造できる水性分散体の製造方法を提供することにある。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 質量平均分子量が70,000〜130,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して3.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.5〜20.0質量部のα−オレフィンスルホン酸塩(C)とを含有し、水分含有率が3〜90質量%であり、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散していることを特徴とする水性分散体。
[2] 前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の結晶化度が、20〜40%であることを特徴とする[1]に記載の水性分散体。
[3] 前記微細分散粒子の体積平均粒子径が、0.2〜0.6μmであることを特徴とする[1]または[2]に記載の水性分散体。
[4] −50〜23℃における温度分散測定において、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の損失正接の最大値が、0.10〜0.30であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の水性分散体。
[5] 質量平均分子量が70,000〜130,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して3.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.5〜20.0質量部のα−オレフィンスルホン酸塩(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、該溶融混練物に水および塩基性物質を添加して、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散するように転相させる転相工程と、水分含有率が3〜90質量%になるように水分を調整する水分調整工程とを有することを特徴とする水性分散体の製造方法。
本発明の水性分散体は、基材に対する密着性、耐チッピング性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、耐水性、耐溶剤性に優れ、かつ塗膜外観が良好な塗膜を形成できる。
また、本発明の水性分散体の製造方法によれば、上述した水性分散体を容易に製造できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[水性分散体]
本発明の水性分散体は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、酸変性ポリエチレン(B)と、α−オレフィンスルホン酸塩(C)と、水とを含有する。
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、エチレンと1−オクテンをランダムに共重合して得られる共重合体である。エチレンと1−オクテンをランダムに共重合させることで、本発明の水性分散体より形成される塗膜に耐チッピング性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、耐溶剤性等を付与することができる。
なお、エチレンと1−オクテンをランダム共重合以外の方法(例えばブロック共重合、グラフト共重合など)で共重合した場合、各ポリマー鎖が独立して凝集し、ミクロ相分離構造を形成するため、上述したような複数の特性を同時に発現することが困難となる。その結果、塗膜の耐チッピング性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、重ね塗り性、耐溶剤性が低下しやすくなる。
また、1−オクテン以外のα−オレフィンとエチレンをランダムに共重合させて得られる共重合体(例えばエチレン−1−ブテンランダム共重合体など)は、反応工程において、ポリマーの結晶化度や損失正接の最大値を任意に調整することが困難となる。その結果、塗膜の耐チッピング性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、重ね塗り性、耐溶剤性が低下しやすくなる。
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、エチレン単位を75〜95質量%含有することが好ましい。エチレン単位が75質量%以上であれば、塗膜の耐水性がより向上する。一方、エチレン単位が95質量%以下であれば、基材に対する塗膜の密着性がより向上する。
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の製造方法は特に制限はないが、例えば、可溶性バナジウム化合物とアルキルアルミニウムハライド化合物とからなるバナジウム系触媒、またはメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物等の助触媒とからなるメタロセン系触媒の存在下で、エチレンと1−オクテンとをランダムに共重合させることが好ましい。
エチレンと1−オクテンの共重合条件は、重合温度が40〜200℃であると好ましく、50〜150℃であるとより好ましい。更にこのとき、圧力が、大気圧〜100kg/cmであると好ましく、大気圧〜50kg/cmであるとより好ましい。
以上の重合温度および圧力下での共重合反応は、様々な重合方法により実施することが可能であるが、反応安定性の点から溶液重合により行うことが特に好ましい。
共重合形式としては、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができるが、連続式で行うことが好ましい。さらに反応条件を変えて、共重合反応を2段以上にわけて行うこともできる。
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、質量平均分子量が70,000〜130,000であり、80,000〜120,000であることが好ましく、90,000〜110,000であることがより好ましい。質量平均分子量が70,000以上であれば、塗膜の耐チッピング性、耐衝撃摩耗性、剥離強度、耐沸水性、耐溶剤性が向上する。一方、質量平均分子量が130,000以下であれば、塗膜のブラックヒールマーク性、剥離強度が向上すると共に、塗膜平滑性を良好に維持できる。
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により、ポリスチレン換算で求めた値である。
なお、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の質量平均分子量は、重合温度などの重合条件を変更することで制御できる。また、重合中に添加する水素(分子量調節剤)の使用量(供給量)を調整することでも制御できる。
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、結晶化度が20〜40%であることが好ましく、25〜35%であることがより好ましい。結晶化度が上記範囲内であれば、塗膜の耐チッピング性、密着性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、剥離強度が向上すると共に、塗膜平滑性を良好に維持できる。
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の結晶化度は、X線回折法により測定される値である。
なお、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の結晶化度は、重合時のエチレンと1−オクテンの混合ガスの比率を調整することで制御することができる。
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、−50〜23℃における温度分散測定において、損失正接の最大値が0.10〜0.30の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.25である。損失正接の最大値が上記範囲内であれば、塗膜の耐チッピング性、密着性、耐衝撃摩耗性、重ね塗り性、剥離強度が向上すると共に、塗膜平滑性を良好に維持できる。
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の損失正接は、温度を変化させながら動的粘弾性を測定することで得られる値である。具体的には、測定温度−50〜23℃の範囲で温度を変化させながら、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を測定(温度分散測定)し、損失正接(tanδ=G”/G’)を計算して求める。
なお、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の損失正接は、重合時の反応時間を調整することで制御できる。
<酸変性ポリエチレン(B)>
酸変性ポリエチレン(B)は、常法に従ってポリエチレンと不飽和ジカルボン酸類とを反応させることによって、ポリエチレンが不飽和ジカルボン酸によって酸変性されたものである。変性基は塩の形態をなしていても構わない。
不飽和ジカルボン酸類としては特に制限はなく、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸メチル等の不飽和ジカルボン酸のエステル誘導体などが挙げられる。これらの不飽和ジカルボン酸類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリエチレン(B)としては特に制限されるものではないが、特に無水マレイン酸変性ポリエチレンが好ましい。
酸変性ポリエチレン(B)は、質量平均分子量が1,000〜35,000であることが好ましく、2,000〜20,000であることがより好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であれば、得られる水性分散体の分散安定性が向上する。
酸変性ポリエチレン(B)の質量平均分子量は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と同様にして求めることができる。
また、酸変性ポリエチレン(B)の質量平均分子量は、ポリエチレンと不飽和ジカルボン酸類との反応における反応温度などの反応条件を調整することで制御できる。
酸変性ポリエチレン(B)は、酸価が10〜60mg/gであることが好ましく、20〜50mg/gであることがより好ましい。酸価が上記範囲内であれば、水性分散体の分散安定性が向上する。
なお、ここでいう「酸価」とは、酸変性ポリエチレン1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数のことであり、JIS K5902に準拠して測定される。
また、酸変性ポリエチレン(B)の酸価は、ポリエチレンに対する不飽和ジカルボン酸の反応量(率)を調整することで制御できる。
酸変性ポリエチレン(B)の含有量は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して3.0〜30.0質量部であり、10.0〜20.0質量部であることが好ましい。酸変性ポリエチレン(B)の含有量が3.0質量部以上であれば、未乳化物量が増加するのを抑制し、安定して水性分散体を得ることができる。一方、酸変性ポリエチレン(B)の含有量が30.0質量部以下であれば、塗膜の耐チッピング性、密着性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、重ね塗り性、耐沸水性、剥離強度等の特性や、塗膜平滑性、研磨ムラ、光沢等の塗膜外観が低下するのを抑制できる。
<α−オレフィンスルホン酸塩(C)>
α−オレフィンスルホン酸塩(C)は、分散剤の役割を果たす。水性分散体がα−オレフィンスルホン酸塩(C)を含むことにより、見掛け上、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散した状態の水性分散体となる。
なお、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の分散剤として、α−オレフィンスルホン酸塩(C)以外の分散剤、例えばカルボン酸塩の分散剤を用いると、必要に応じてその他の成分を加えて塗料として使用する際の、水性分散体の安定性が損なわれやすくなるため、塗膜の密着性、耐ブラックヒールマーク性、重ね塗り性、耐沸水性等の特性や、塗膜平滑性、研磨ムラ、光沢等の塗膜外観が低下しやすくなる。
また、α−オレフィンスルホン酸塩(C)以外のスルホン酸塩型の分散剤を用いると、ポリマー構造に由来するぬれ性の違いから塗膜の重ね塗り性、耐沸水性等の特性や、塗膜平滑性、研磨ムラ、光沢等の塗膜外観が低下しやすくなる。
α−オレフィンスルホン酸塩(C)は、炭素数が12〜20のα−オレフィン混合物(例えば1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等、各々の異性体の混合物)に、無水硫酸を反応させた後、加水分解することにより得られるものであり、具体的には各種アルケニルスルホン酸塩、2−ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、3−ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、ジスルホネート等の混合物である。
α−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して0.5〜20.0質量部であり、1.0〜5.0質量部であることが好ましい。α−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量が0.5質量部以上であれば、未乳化物量が増加するのを抑制し、安定して水性分散体を得ることができる。一方、α−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量が20.0質量部以下であれば、塗膜の密着性、耐ブラックヒールマーク性、重ね塗り性、剥離強度、耐沸水性等の特性や、研磨ムラ等の塗膜外観が低下するのを抑制できる。
<その他の成分>
本発明の水性分散体には、必要に応じて通常水性分散体に使用することができる各種副資材、例えば乳化剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、老化防止剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等が含まれていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲内において、後述する塗料樹脂が含まれていてもよい。
<水性分散体の性状>
本発明の水性分散体は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)に由来する樹脂固形分が乳化して、微細分散粒子として水中に分散している。
微細分散粒子の体積平均粒子径は、0.2〜0.6μmであることが好ましく、0.3〜0.5μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が上記範囲内であれば、塗膜の耐チッピング性、耐衝撃摩耗性、剥離強度等の特性や、塗膜平滑性、光沢等の塗膜外観がより向上する。
微細分散粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折法により測定される値である。
なお、微細分散粒子の体積平均粒子径は、例えば酸変性ポリエチレン(B)やα−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量を調整することで制御できる。具体的には、酸変性ポリエチレン(B)やα−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量を増やすと、微細分散粒子の体積平均粒子径は小さくなる傾向にあり、逆に含有量を減らすと体積平均粒子径は大きくなる傾向にある。
本発明の水性分散体は、水分含有率が3〜90質量%であり、40〜80質量であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましい。水分含有率が3質量%以上であれば、良好な塗膜外観が得られやすくなる。一方、水分含有率が90質量%以下であれば、水性分散体の安定性を十分に確保できる。
水性分散体は、水分含有率3〜35質量%の範囲内において、通常、固形またはペースト状となる。従って、既存の塗装方法を適用して水性分散体を塗装して塗膜を形成したり、他の薬剤(樹脂など)と混合したりするには、水を添加して所望の水分含有率(好ましくは40〜80質量%)になるように希釈するのが望ましい。
水性分散体の水分含有率は、以下のようにして測定できる。
すなわち、水性分散体を1g採取し、120℃のオーブンで20分間乾燥させる。乾燥後の水性分散体の質量を測定し、下記式(H)を用いて水分含有率を求める。
水分含有率[%]={1[g]−(乾燥後の水性分散体質量[g]/1[g] )}×100 ・・・(H)
<水性分散体の製造方法>
本発明の水性分散体の製造方法の一例について説明する。
本発明の水性分散体の製造方法は、上述したエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、酸変性ポリエチレン(B)と、α−オレフィンスルホン酸塩(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る工程(溶融混練工程)と、該溶融混練物に水および塩基性物質を添加し、さらに溶融混練して樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散するように転相させる工程(転相工程)と、水性分散体の水分含有率が3〜90質量%の範囲内になるように水分を調整する工程(水分調整工程)とを有する。
なお、溶融混練工程と転相工程とは、逐次的に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
溶融混練工程で用いる溶融混練手段としては公知のいかなるものでもよいが、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などが好適である。
溶融混練工程における酸変性ポリエチレン(B)の配合量は、水性分散体中の酸変性ポリエチレン(B)の含有量と同様に、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して3.0〜30.0質量部であり、10.0〜20.0質量部であることが好ましい。
一方、α−オレフィンスルホン酸塩(C)の配合量は、水性分散体中のα−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量と同様に、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して0.5〜20.0質量部であり、1.0〜5.0質量部であることが好ましい。
溶融混練工程では、溶融混練と同時に加熱することが好ましく、加熱温度としては140〜250℃であることが好ましい。加熱温度が140℃以上であれば、溶融粘度が十分に低くなるので容易に混練できる。一方、加熱温度が250℃以下であれば、必要以上に加熱しないので、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の劣化や加熱分解を抑制し、かつエネルギー使用量を削減できる。
転相工程では、溶融混練工程で得た溶融混練物に水および塩基性物質を添加し、エチレン−1−オクテンランダム共重合体および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分に水を含有させる。
転相工程では、水を溶融混練物に直接添加してもよいし、塩基性物質が溶解した水溶液の形態で添加してもよい。水を直接添加する場合、その添加量は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体100質量部に対して0.5〜20.0質量部が好ましい。水の添加量が0.5質量部以上であれば、水性分散体が容易に得られやすくなる。一方、水の添加量が20.0質量部以下であれば、塗膜の密着性および耐水性がより向上する。
転相工程で用いられる塩基性物質は、樹脂固形分を微細分散粒子として転相させる際に、未中和の酸変性ポリエチレン(B)をケン化するため使用される。
塩基性物質としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、およびアミン等の水中で塩基として作用する物質、アルカリ金属の酸化物、水酸化物、弱塩基、水素化物、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、弱塩基、水素化物等の水中で塩基として作用する物質、これらの金属のアルコキシド等を挙げることができる。
塩基性物質は、溶融混練物に直接添加してもよいが、5〜40質量%程度の水溶液の形態で添加するのが好ましい。
塩基性物質の添加量は、通常、エチレン−1−オクテンランダム共重合体100質量部に対して固形分換算で0.2〜8.0質量部である。塩基性物質の添加量が0.2質量部以上であれば、水性分散体が容易に得られやすくなる。一方、塩基性物質の添加量が8.0質量部以下であれば、塗膜の密着性および耐水性がより向上する。
転相工程では、樹脂固形分に水が含まれる状態から、水に樹脂固形分が分散する状態に転相させる。
転相工程においても、溶融混練工程と同様にニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などの溶融混練手段を用いて溶融混練する。その際、溶融混練工程と同様に140〜250℃に加熱しながら溶融混練するのが好ましい。その後、自然冷却または強制冷却により室温程度まで冷却される。このとき、微細分散粒子が固化し、安定な水性分散体となる。
水分調整工程では、水性分散体の水分含有率が3〜90質量%になるように微細分散粒子を水中に投入して分散させたり、水を添加して希釈したりして水分を調整する。
上述した溶融混練工程と転相工程と水分調整工程とを有する製造方法によれば、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が水中に乳化分散した水性分散体を容易に製造できる。しかも、この製造方法によれば、安定性に優れた水性分散体が得られる。
なお、水性分散体に上述した副資材や塗料樹脂等のその他の成分を含有させる場合、溶融混練工程においてエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、酸変性ポリエチレン(B)と、α−オレフィンスルホン酸塩(C)と共に、その他の成分を溶融混練して水性分散体を製造してもよい。また、その他の成分が水に溶解または分散した水溶液を予め調製しておき、水分調整工程においてこの水溶液中に微細分散粒子を投入し、分散させて水性分散体を製造してもよい。
その他の成分である塗料樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
アクリル樹脂は、公知の乳化重合技術により製造することができる。
アクリル系樹脂の製造に用いられる単量体としては、例えばスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、および上記単量体と共重合可能な単量体などが挙げられる。
ウレタン樹脂は、公知の方法により製造することができる。具体的には、多官能イソシアネート化合物と、活性水素基を1分子中に2個以上有する活性水素化合物とを反応させることで得られる。
多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、含硫脂肪族イソシアネート、芳香族スルフィド系イソシアネート、脂肪族ジスルフィド系イソシアネート、芳香族スルホン系イソシアネート、スルホン酸エステル系イソシアネート、芳香族スルホン酸アミド系イソシアネート、含硫複素環化合物などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばエチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω,ω’−ジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、メシチレントリイソシアネート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナト−n−ブチリデン)ペンタエリスリトール、ダイマ酸ジイソシアネート、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.1.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.1.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2,5−ビスイソシアナートメチルノルボルナン、2,6−ビスイソシアナートメチルノルボルナン等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピレンフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチルナフタレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビベンジル−4,4’−ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメリックMDI、ナフタレントリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4−メチル−ジフェニルメタン−3,5,2’,4’,6’−ペンタイソシアネート、フェニルイソシアナトメチルイソシアネート、フェニルイソシアナトエチルエチルイソシアネート、テトラヒドロナフチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアネート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、エチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−プロピレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、ベンゾフェノンジイソシアネート、ジエチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、ジベンゾフランジイソシアネート、カルバゾールジイソシアネート、エチルカルバゾールジイソシアネート、ジクロロカルバゾールジイソシアネート等が挙げられる。
含硫脂肪族イソシアネートとしては、例えばチオジエチルジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ジメチルスルフォンジイソシアネート、ジチオジメチルジイソシアネート、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオプロピルジイソシアネート、ジシクロヘキシルスルフィド−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族スルフィド系イソシアネートとしては、例えばジフェニルスルフィド−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、3,3’ ,4,4’−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、4、4’−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3’−ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジスルフィド系イソシアネートとしては、例えばジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6’−ジイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3’−ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族スルホン系イソシアネートとしては、例えばジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、ベンジディンスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタンスルホン−4,4’−ジイソシアネート、4−メチルジフェニルメタンスルホン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートジベンジルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシベンゼンエチレンジスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート等が挙げられる。
スルホン酸エステル系イソシアネートとしては、例えば4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル、4−メトキシ−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル等が挙げられる。
芳香族スルホン酸アミド系イソシアネートとしては、例えば4,4’−ジメチルベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3’−ジイソシアネート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−4−メチル−3’−イソシアネート等が挙げられる。
含硫複素環化合物としては、例えばチオフェン−2,5−ジイソシアネート、チオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアネート、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナトメチル等が挙げられる。
多官能イソシアネート化合物としては、上述した各化合物のアルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。また、上述した化合物以外の多官能イソシアネート化合物を使用してもかまわない。
これらの多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、活性水素化合物としては、例えば以下に例示するものが挙げられる。
ポリオール化合物:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグリコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロース、ジグリペロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−ジメタノール、ビシクロ[4.3.0]−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジオール、ビシクロ[4.3.0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5.3.1.1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール;ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールS等の芳香族ポリオール;ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール;ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、シリコンポリオール、フランジメタノール。
また、活性水素化合物としては、シュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、ピロメリット酸等の有機酸と、前記ポリオール化合物との縮合反応生成物;前記ポリオール化合物と、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとの付加反応生成物;アルキレンポリアミンとアルキレンオキシドとの付加反応生成物;2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、およびこれらのカプロラクトン変性品;2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4’−メルカプトジフェニルスルフォン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチル−トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等が挙げられる。
さらに、活性水素化合物としては、上述した以外にも、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、2ーメチルピペラジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、α,α’−メチレンビス(2−クロルアニリン)3,3’−ジクロル−α,α’−ビフェニルアミン、m−キシレンジアミン、イソフォロンジアミン、N−メチル−3,3’−ジアミノプロピルアミン、ノルボルネンジアミン等のポリアミノ化合物、セリン、リジン、ヒスチジン等のα−アミノ酸も使用することができる。
以上説明した本発明の水性分散体は、特定のエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、特定量の酸変性ポリエチレン(B)およびα−オレフィンスルホン酸塩(C)を含有し、かつ、エチレン−1−オクテンランダム共重合体および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散している。このような水性分散体は、基材に対する密着性、耐チッピング性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、耐水性、耐溶剤性に優れ、かつ塗膜外観が良好な塗膜を形成できる。
本発明の水性分散体は、各種基材を接着または塗装する際に使用するバインダー、プライマーなどの用途に好適である。
水性分散体は、そのまま接着剤や塗料として使用することもできるが、必要に応じて副資材や塗料樹脂などと混合して、接着剤組成物や塗料組成物として使用してもよい。特に、水性分散体中にその他の成分(副資材や塗料樹脂など)が含まれていない場合は、水性分散体とその他の成分とを混合して塗料組成物として使用するのが好ましい。
副資材としては、その他の成分の説明において例示した副資材を用いることができる。一方、塗料樹脂としては、その他の成分の説明において例示したアクリル樹脂やウレタン樹脂を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の記載において特に限定のない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
また、以下の製造例、実施例及び比較例における物性の特性は、下記のようにして測定した。
(質量平均分子量の測定)
エチレン−1−オクテンランダム共重合体の質量平均分子量は、ウォーターズ社製「アライアンスGPC V2000型」を用いて、標準物質;ポリスチレン換算、溶媒;オルトジクロロベンゼン、測定温度;140℃の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定した。
(結晶化度の測定)
エチレン−1−オクテンランダム共重合体の結晶化度は、理学電機(株)製の広角X線回折装置「RAD−RX型」を用い、X線回折法により測定した。
(損失正接の測定)
エチレン−1−オクテンランダム共重合体の損失正接は、以下のようにして測定した。
まず、エチレン−1−オクテンランダム共重合体を、(株)日本製鋼所製「J75EPII」を用いて、シリンダ温度:230℃、射出速度:20mm/s、射出圧力:54kgf、冷却条件:30℃、冷却時間:50s、スクリュー回転数:100rpm、背圧10kgfの条件下で射出成形し、50mm×10mm×厚さ3mmの試験片を成形した。
次に、自動動的粘弾性装置(日本シーベルヘグナー社(製)「MCR301」)に得られた試験片を設置し、固体ねじりモード、試験温度−50〜23℃、周波数11Hz、歪み0.01%、昇温速度1℃/minの条件で、温度分散測定を行い、エチレン−1−オクテンランダム共重合体の損失正接の最大値を読み取った。
(酸価の測定)
酸変性ポリエチレンの酸価は、JIS K5902に準拠し測定した。
(体積平均粒子径の測定)
微細分散粒子の体積平均粒子径は、Microtrac UPA(Mountech Co.Ltd)を用い、レーザー回折法により測定した。
(水分含有率の測定)
水性分散体の水分含有率は、以下のようにして測定した。
まず、水性分散体を1g採取し、120℃のオーブンで20分間乾燥させた。乾燥後の水性分散体の質量を測定し、下記式(H)を用いて水分含有率を求めた。
水分含有率[%]={1[g]−(乾燥後の水性分散体質量[g]/1[g] )}×100 ・・・(H)
[共重合体(A)]
以下の実施例および比較例において、下記のエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)〜(A−13)、およびエチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−14)を用いた。
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)の調製>
重合器に投入したヘキサン(重合溶媒)中に、エチレンと1−オクテンの混合ガスおよび水素ガスを供給し、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリドとメチルアルミノキサンのトルエン溶液を重合触媒として用いて、70℃、4kg/cm、滞留時間1時間の条件下で連続的にエチレンと1−オクテンとをランダムに共重合した。
次いで、得られた反応溶液から触媒を分離し、質量平均分子量100,000、結晶化度30%、損失正接0.20のエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)を得た。
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−2)〜(A−5)の調製>
水素ガスの供給量を調整した以外は(A−1)の製法と同様にして、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−2)〜(A−5)を調製した。水素ガスの供給量を調整することで、共重合体(A)の質量平均分子量を制御できた。
各共重合体の質量平均分子量、結晶化度、および損失正接を表1に示す。
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−6)〜(A−9)の調製>
チレンと1−オクテンの混合ガスの供給量を調整した以外は(A−1)の製法と同様にして、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−6)〜(A−9)を調製した。混合ガスの供給量を調整することで、共重合体(A)の結晶化度を制御できた。
各共重合体の質量平均分子量、結晶化度、および損失正接を表1に示す。
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−10)〜(A−13)の調製>
チレンと1−オクテンの反応時間を変更した以外は(A−1)の製法と同様にして、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−10)〜(A−13)調製した。反応ガスを変更することで、共重合体(A)の損失正接を制御できた。
各共重合体の質量平均分子量、結晶化度、および損失正接を表1に示す。
<エチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−14)の調製>
重合器に投入したヘキサン(重合溶媒)中に、エチレンと1−ブテンの混合ガスおよび水素ガスを供給し、オオキシ三塩化バナジウムとエチルアルミニウムセスキクロリドを重合触媒として用いて、40℃、5kg/cm、滞留時間1時間の条件下で連続的にエチレンと1−ブテンとを重合した。
次いで、得られた反応溶液から触媒を分離し、質量平均分子量100,000、結晶化度30%、損失正接0.20のエチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−14)を得た。
Figure 2011127030
[水性分散体]
<水性分散体(E−1)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部と、酸変性ポリエチレン(B)として無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)(三井化学(株)製「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量:2,700、酸価:30mg/g)15.0部と、α−オレフィンスルホン酸塩(C)としてα−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C−1)(第一工業製薬(株)製「ネオゲン AO−90」)3.0部とを混合した。
次いで、この混合物を二軸スクリュー押出機(池貝鉄鋼(株)製「PCM−30型」L/D=40)のホッパーより4kg/時間で供給し、水酸化カリウム14%水溶液を240g/時間で連続的に供給しながら、200℃に加熱して溶融混練し、得られた溶融混練物を押出した。
引き続き、溶融混練物を同押出機先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。取り出した見掛け上固体の微細分散粒子を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、表2に示す性質(水分含有率および微細分散粒子の体積平均粒子径)を有する水性分散体(E−1)を得た。
<水性分散体(E−2)〜(E−3)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部の代わりに、表2に示す種類の共重合体(A)を100部用いた以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−2)〜(E−3)を得た。
<水性分散体(E−4)〜(E−7)の製造>
無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)とα−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C−1)の添加量を、それぞれ表2に示す量に変更した以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−4)〜(E−7)を得た。
<水性分散体(E−8)〜(E−11)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部の代わりに、表2に示す種類の共重合体(A)を100部用いた以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−8)〜(E−11)を得た。
<水性分散体(E−12)〜(E−15)の製造>
無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)とα−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C−1)の添加量を、それぞれ表2に示す量に変更した以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−12)〜(E−15)を得た。
<水性分散体(E−16)〜(E−19)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部の代わりに、表2に示す種類の共重合体(A)を100部用いた以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−16)〜(E−19)を得た。
<水性分散体(E−20)〜(E−22)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部の代わりに、表2に示す種類の共重合体(A)を100部用いた以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−20)〜(E−22)を得た。
<水性分散体(E−23)の製造>
無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)の添加量を、表2に示す量に変更した以外は水性分散体(E−1)と同様にして、取り出した微細分散粒子を80℃の温水中に投入したが、水性分散体(E−23)は得られなかった。
<水性分散体(E−24)の製造>
無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)の添加量を、表2に示す量に変更した以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−24)を得た。
<水性分散体(E−25)の製造>
α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C−1)の添加量を、表2に示す量に変更した以外は水性分散体(E−1)と同様にして、取り出した微細分散粒子を80℃の温水中に投入したが、水性分散体(E−25)は得られなかった。
<水性分散体(E−26)の製造>
α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C−1)の添加量を、表2に示す量に変更した以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−26)を得た。
<水性分散体(E−27)の製造>
α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C−1)の代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−2)(花王(株)製「ネオペレックスNo.6」)を使用した以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−27)を得た。
<水性分散体(E−28)の製造>
α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C−1)の代わりにオレイン酸カリウム(C−3)(花王(株)製「KSソープ」)使用した以外は水性分散体(E−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(E−28)を得た。
<水性分散体(E−29)の製造>
攪拌機を備えた内容積2Lのオートクレーブ内に、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−14)100部と無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)15.0部とトルエン500部を仕込み、125℃で1時間攪拌して溶解した後、90℃に冷却した。
また、これとは別に、攪拌機を備えた内容積2Lのオートクレーブ内で、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C−1)3.0部と水600部を含む水溶液を90℃に加熱し、その中に、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部と無水マレイン酸変性ポリエチレン15.0部のトルエン溶液を攪拌継続下で添加した。2時間攪拌して分散した後、高速ホモジナイザー(エスエムテー社(製)「HG−92型」)を用いて、10000rpmで10分間分散した。
次いで、攪拌翼による攪拌を継続したまま、凝縮水を還流させながら、2時間水蒸気蒸留してトルエンを留去したが、トルエンを留去するにつれて凝集物が発生し、トルエンの全量を留去する前に凝集物が99部に達し、水性分散体(E−29)を得ることができなかった。
Figure 2011127030
表2中、「(A)成分」はエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)、「(B)成分」は酸変性ポリエチレン(B)、「(C)成分」はα−オレフィンスルホン酸塩である。
[試験1:耐チッピング性付与剤としての評価]
<実施例1>
まず、リン酸亜鉛系化成処理剤(日本ペイント(株)製「サーフダインSD2000」)で化成処理した板厚0.8mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(日本ペイント(株)製「パワートップU−50」)を電着塗装した後、160℃で30分間焼き付け、厚さ25μmの電着塗装板を作成した。
次に、水性アクリル塗料(中央理化工業(株)製「リカボンドES−20」)100部(固形分換算)に対して、水性分散体(E−1)8部(固形分換算)を加え、塗料組成物を作製した。
電着塗装板表面に、得られた塗料組成物をエアースプレーにて、乾燥後の塗膜の厚さが約35μmになるように塗装した後、140℃で30分間加熱硬化させて2層の塗膜からなる塗装板を作製した。
得られた塗装板について以下に示す評価を行った。結果を表3に示す。
(塗膜平滑性の評価)
得られた塗装板の平滑性を、BYK−Gardner社製「ウェーブスキャン」を用いて、320〜800μmの長波長領域の測定値「W3」、および50〜320μmの短波長領域の測定値「W4」と得た。これら測定値W3、W4は、数値が小さい程、塗膜の平滑性が良好であることを示している。
(耐チッピング性の評価)
塗膜の耐チッピング性は、グラベロメータ法により以下のようにして評価した。
ショット材として道路用砕石6号を使用し、このショット材が90°の角度で当たるように、塗装板をグラベロメータ(スガ試験機(株)製「JA400LB」)の所定位置にセットした。
次に、4.0kg/cmのエアー圧に調節したグラベロメータに250gのショット材を入れ、エアバルブを開いてショット材を塗装板表面に吹き付けた。吐出後、塗装板を取り外し、塗面の破壊部位を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価を行った。
×:素地金属の露出が大きい。
△:素地金属の露出が中程度である。
○:素地金属の露出が小さい。
◎:塗膜破壊による素地金属の露出がない。
(研磨ムラの評価)
塗装板をサンドペーパー#600を用いてサンディング処理した。その後、メタリック水性ベース塗料(日本ペイント(株)製)「アクアレックスAR−2000シルバー」)をエアースプレーにて、乾燥後の塗膜の厚さが15μmになるように塗装した後、80℃で3分間プレヒートした。プレヒート後、塗装板を室温まで放冷し、溶剤型クリヤー塗料(日本ペイント(株)製「マックフローO−1810クリヤー」)をエアースプレーにて、乾燥後の塗膜の厚さが35μmになるように塗装し、140℃で20分間加熱硬化させサンディング処理後の塗装板を作成した。
得られたサンディング処理後の塗装板について外観を目視にて観察し、サンディング処理による研ぎ痕の模様(研磨ムラ)を下記評価基準に従って評価した。
×:かなり違和感がある。
△:違和感がある。
○:やや違和感がある。
◎:全く違和感がない。
<実施例2〜19、比較例1〜8>
水性分散体(E−1)の代わりに、表3、4に示す種類の水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様にして塗料組成物および塗装板を作製し、各評価を行った。結果を表3、4に示す。
Figure 2011127030
Figure 2011127030
表3、4から明らかなように、質量平均分子量が70,000〜130,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対し、酸変性ポリエチレン(B)3.0〜30.0質量部、α−オレフィンスルホン酸塩(C)0.5〜20.0質量部を含有する水性分散体(E−1〜E−19)を用いた実施例1〜19では、平滑性、耐チッピング性に優れた塗膜を形成できた。また、従来技術では水性分散体を添加することで問題となっていた研磨ムラを著しく改善することができた。
実施例1〜19で用いた水性分散体(E−1〜E−19)によれば、塗膜平滑性の低下を招くことなく、塗膜に耐チッピング性を付与できるといった特異的な特性を示した。
一方、水性分散体を配合しなかった比較例1では、塗膜の耐チッピング性が低かった。
質量平均分子量が68,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−2)を含有する水性分散体(E−20)用いた比較例2では、塗膜の耐チッピング性が低かった。
質量平均分子量が132,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−5)を含有する水性分散体(E−21)用いた比較例3では、塗膜平滑性が低かった。
エチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−14)を含有する水性分散体(E−22)用いた比較例4では、塗膜の耐チッピング性が低かった。
酸変性ポリエチレン(B)の含有量が32.0部である水性分散体(E−24)を用いた比較例5では、塗膜平滑性、および耐チッピング性が低かった。また、研磨ムラの改善がみられなかった。
α−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量が22.0部である水性分散体(E−26)を用いた比較例6では、研磨ムラの改善がみられなかった。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−2)含有する水性分散体(E−27)を用いた比較例7では、研磨ムラの改善がみられなかった。
オレイン酸カリウム(C−3)を含有する水性分散体(E−28)を用いた比較例8では、塗膜平滑性が低かった。また、研磨ムラの改善がみられなかった。
[試験2:フロアーポリッシュ用添加剤としての評価]
<実施例20>
水性ポリウレタン(第一工業製薬(株)製「スーパーフレックス210」)100部(固形分換算)に対し、水性分散体(E−1)30部(固形分換算)を加え、水性フロアーポリッシュ組成物を調整した。
得られたフロアーポリッシュ組成物について、JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験方法)に準じて、以下に示す評価を行った。結果を表5に示す。
(試験片の作製)
ホモジニアス床タイル(東リ(株)製「マチュS」(10cm×30cm))に、水性フロアーポリッシュ組成物を、1回あたり0.6mLの塗布量で、塗布間隔を30分として3回塗りした。形成されたポリッシュ被膜を48時間常温にて乾燥し、これを試験片とした。
(床材との密着性の評価)
試験片のポリッシュ被膜面にカッターで碁盤目状に100個の傷を付け、その上からセロハンテープ剥離試験を行い、100個の碁盤目のうち残った目の数を数えた。
(耐ブラックヒールマーク性の評価)
スネルカプセルテスター(テスター産業(株)製「AB−701」)を使用して、試験片についてブラックヒールマークテストを行い、下記評価基準に従って評価を行った。
×:汚れが著しい。
△:汚れがある。
○:やや汚れがある。
◎:全く汚れがない。
(耐衝撃摩耗性の評価)
ASTM D 3714−87に準拠し、ラバーテストブロックによる試験片のフロアーポリッシュ被膜面の摩耗性を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価を行った。
×:完全に被膜が削られている。
△:被膜が損傷を受け、削られている。
○:被膜が僅かに損傷を受け、削られている。
◎:被膜が全く損傷を受けていない。
(光沢の評価)
光沢計(村上色彩研究所製「GM−26」)を用いて、試験片のポリッシュ被膜面の60°鏡面光沢値を測定した。
(重ね塗り性の評価)
試験片作製時の重ね塗り後の光沢を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価を行った。
×:1回塗りで光沢が低下する。
△:2回重ね塗りで光沢が低下する。
○:3回重ね塗りで光沢が低下する。
◎:4回重ね塗りでも光沢が低下しない。
<実施例21〜38、比較例9〜16>
水性分散体(E−1)の代わりに、表5、6に示す種類の水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様にして水性フロアーポリッシュ組成物および試験片を作製し、各評価を行った。結果を表5、6に示す。
Figure 2011127030
Figure 2011127030
表5、6から明らかなように、質量平均分子量が70,000〜130,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対し、酸変性ポリエチレン(B)3.0〜30.0質量部、α−オレフィンスルホン酸塩(C)0.5〜20.0質量部を含有する水性分散体(E−1〜E−19)を用いた実施例20〜38では、床材との密着性、耐ブラックヒールマーク性、耐衝撃摩耗性、光沢に優れた塗膜を形成できた。また、複数回重ね塗りしても光沢を有する塗膜を形成でき、重ね塗り性を有していた。
一方、水性分散体を配合しなかった比較例9では、塗膜の密着性、耐衝撃摩耗性が低くかった。
質量平均分子量が68,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−2)を含有する水性分散体(E−20)用いた比較例10では、塗膜の耐衝撃摩耗性が低かった。
質量平均分子量が132,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−5)を含有する水性分散体(E−21)用いた比較例11では、塗膜の耐ブラックヒールマーク性が低かった。
エチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−14)を含有する水性分散体(E−22)用いた比較例12では、重ね塗り性に劣っていた。
酸変性ポリエチレン(B)の含有量が32.0部である水性分散体(E−24)を用いた比較例13では、塗膜の密着性、耐衝撃摩耗性、光沢が低く、重ね塗り性に劣っていた。
α−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量が22.0部である水性分散体(E−26)を用いた比較例14では、塗膜の密着性が低かった。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−2)含有する水性分散体(E−27)を用いた比較例15では、塗膜の光沢が低く、重ね塗り性に劣っていた。
オレイン酸カリウム(C−3)を含有する水性分散体(E−28)を用いた比較例16では、塗膜の密着性、光沢が低く、重ね塗り性に劣っていた。
[試験3:ヒートシール材としての評価]
<実施例39>
水性ポリウレタン(三井武田ケミカル(株)製「タケラックW7004」)100部(固形分換算)に対して、水性分散体(E−1)100部(固形分換算)加え、ヒートシール材組成物を作製した。
得られたヒートシール材組成物について、JIS Z 1707に準じて、以下に示す評価を行った。表7に結果を示す。
(剥離強度の評価1:PE/PE)
ヒートシール材組成物を、乾燥後の塗膜の厚さが3μmとなるようにポリエチレンシート(アコス工業(株)製、厚さ300μm)に塗布、風乾した後、炉温100℃で120秒間加熱し、均一な塗工箔を得た。この塗工箔とポリエチレンシート(アコス工業(株)製 厚さ300μm)をJIS Z1707に準拠した方法により、炉温120℃で2秒間、2kg/cmの圧力をかけて熱接着し、これを試験片1とした。
得られた試験片1について、0℃において、剥離方向180°、剥離速度200mm/分の条件で剥離強度を測定した。
(剥離強度の評価2:PE/AL)
剥離強度の評価1と同様にして塗工箔を得た。この塗工箔とアルミニウムシート(厚さ300μm)をJIS Z1707に準拠した方法により、炉温120℃で2秒間、2kg/cmの圧力をかけて熱接着し、これを試験片2とした。
得られた試験片2について、0℃において、剥離方向180°、剥離速度200mm/分の条件で剥離強度を測定した。
(耐沸水性の評価)
ヒートシール材組成物を、乾燥後の塗膜の厚さが3μmになるように亜鉛メッキ鋼板(メッキ付着量:20g/m)に塗布し、炉温120℃で20分間焼き付けた。その後、1晩放置し、これを試料とした。
得られた試料を沸騰水中に30分間浸漬した後、塗膜の表面外観を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価を行った。
×:白化等の変化がみられる。
○:変化がみられない。
(耐溶剤性の評価)
耐沸水性の評価で作製した試料の表面を、ラビング試験機(井本製作所(株)製「ラビングテスター150E」)を用い、エタノールおよびメチルエチルケトンを染み込ませたガーゼで10往復ラビングし、ラビング部の表面外観を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価を行った。
×:膨潤、溶解等の変化がみられる。
○:変化がみられない。
<実施例40〜57、比較例17〜23>
水性分散体(E−1)の代わりに、表7、8に示す種類の水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様にしてヒートシール材組成物、および試験片と試料を作製し、各評価を行った。結果を表7、8に示す。
Figure 2011127030
Figure 2011127030
表7、8から明らかなように、質量平均分子量が70,000〜130,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対し、酸変性ポリエチレン(B)3.0〜30.0質量部、α−オレフィンスルホン酸塩(C)0.5〜20.0質量部を含有する水性分散体(E−1〜E−19)を用いた実施例39〜57では、剥離強度、耐沸水性、耐溶剤性に優れた塗膜を形成できた。
一方、質量平均分子量が68,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−2)を含有する水性分散体(E−20)用いた比較例17では、塗膜の剥離強度、耐沸水性、耐溶剤性が低かった。
質量平均分子量が132,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−5)を含有する水性分散体(E−21)用いた比較例18では、塗膜の剥離強度(PE/AL)が低かった。
エチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−14)を含有する水性分散体(E−22)用いた比較例19では、塗膜の耐溶剤性が低かった。
酸変性ポリエチレン(B)の含有量が32.0部である水性分散体(E−24)を用いた比較例20では、塗膜の剥離強度(PE/PE)、耐沸水性が低かった。
α−オレフィンスルホン酸塩(C)の含有量が22.0部である水性分散体(E−26)を用いた比較例21では、塗膜の剥離強度(PE/AL)、耐沸水性が低かった。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−2)含有する水性分散体(E−27)を用いた比較例22では、塗膜の耐沸水性が低かった。
オレイン酸カリウム(C−3)を含有する水性分散体(E−28)を用いた比較例23では、塗膜の耐沸水性が低かった。

Claims (5)

  1. 質量平均分子量が70,000〜130,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して3.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.5〜20.0質量部のα−オレフィンスルホン酸塩(C)とを含有し、
    水分含有率が3〜90質量%であり、
    前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散していることを特徴とする水性分散体。
  2. 前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の結晶化度が、20〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の水性分散体。
  3. 前記微細分散粒子の体積平均粒子径が、0.2〜0.6μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の水性分散体。
  4. −50〜23℃における温度分散測定において、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の損失正接の最大値が、0.10〜0.30であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散体。
  5. 質量平均分子量が70,000〜130,000であるエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して3.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.5〜20.0質量部のα−オレフィンスルホン酸塩(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、
    該溶融混練物に水および塩基性物質を添加して、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散するように転相させる転相工程と、
    水分含有率が3〜90質量%になるように水分を調整する水分調整工程とを有することを特徴とする水性分散体の製造方法。
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