JP2011125285A - 酵母早期凝集因子の迅速測定方法およびその測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子を、高精度で、迅速かつ簡便に測定でき、さらに多検体を迅速に測定できる方法の提供。
【解決手段】醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速測定方法であって、(1)対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッフアー液中で混合して懸濁させ;(2)工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定することを含む。また本発明ではここで、測定は、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を温度範囲内においてより高い温度に設定する。
【選択図】なし
【解決手段】醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速測定方法であって、(1)対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッフアー液中で混合して懸濁させ;(2)工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定することを含む。また本発明ではここで、測定は、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を温度範囲内においてより高い温度に設定する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ビール、発泡酒、およびウィスキーなどの発酵麦芽飲料等の製造に用いられる醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速な測定方法、および、該測定方法を用いた醸造原料の酵母早期凝集性の迅速判定法に関する。本発明はまた、懸濁液中の菌体の沈降を連続的に定量測定するための測定装置に関する。
ビール、発泡酒、およびウィスキーなどの発酵麦芽飲料等の醸造においては、酵母による主発酵の終了時に、酵母が適度に凝集沈降する。この凝集沈降により酵母の回収が可能となる。ところが、主発酵の終了時に、酵母が適度に凝集沈降しないと、酵母の回収量が不足してしまう一方で、逆に凝集沈降しすぎると発酵が進まず問題となる。この酵母の凝集は、発酵の終期になりエキスが少なくなると酵母がお互いに塊となって起こるが、この凝集により酵母は培養液より底に沈降する。この酵母自体の凝集には酵母細胞表層のレクチン様タンパク質と酵母マンナンのマンノース糖鎖の結合の関与等が報告されている(Appl. Microbiol. Biotechno l23: 197-205, 2003)。
このように発酵麦芽飲料等の醸造において、正常な発酵工程においては、酵母の凝集沈降は酵母による主発酵の終了時に、発酵液のエキスが少なくなった時点に適度に起こる。この酵母の凝集沈降について「早期酵母凝集現象」(以下、「早凝現象」と言うことがある)と呼ばれる現象が観察されることが報告されている。
「早期酵母凝集現象」とは、酵母による発酵工程、特に発酵後期に、酵母の資化可能な糖分がまだ発酵液中に残っているにもかかわらず、酵母が凝集して沈降してしまう現象のことをいい、この早期凝集現象により、酵母が凝集・沈降してしまうと発酵の進行が停止してしまう(Proc. Congr. Eur. Brew. Conv.26:53-60, 1997(非特許文献1))。したがって、この現象が見られると、発酵が不十分となり、製造された製品が規格外のものとなり、発酵麦芽飲料等の醸造において、大きな損害を蒙ることにもなる。
この早期凝集現象は、原料麦に由来し、麦芽中に含まれる高分子酸性多糖類によって引き起こされると考えられている(J. Am. Soc. Brew. Chem. 47:29-34, 1989)。そして、早期凝集現象を引き起こす因子は、製麦工程において生成される場合と、原料麦中にもともと存在している場合があることが解っている(J. Inst. Brew., 97, 359-366, 1991;特開平10−179190号公報(特許文献1))。従来より、大麦を原料とする発酵麦芽飲料等の醸造においては、発酵工程における早期凝集現象を避けるために、麦芽、大麦の早期凝集性の有無を確認して、早期凝集現象を引き起こさない大麦麦芽を選別し、用いることが望まれる。
麦芽、大麦等の早期凝集性の有無を確認するためには、従来の方法としては、発酵試験による方法が採用されてきた。このような方法としては、例えば、T. Nakamuraらが開発したKY管発酵試験法(Proc. Congr. Eur. Brew. Conv.26:53-60, 1997(非特許文献1)や、M. Jibikiらが開発したUniversal fermentation test(J. Am. Soc. Brew. Chem. 64(2):79 -85, 2006(非特許文献2))などがある。しかしながら、これらの方法はいずれも、発酵試験は実際の醸造のスケール(発酵試験のスケール)を小規模にした試験であり、麦汁を発酵させる必要がある。さらにこれら方法では、通常、麦汁の調製に1日、発酵の進行状況から麦芽、大麦中の早期凝集因子の有無を確認するのに8日間程度必要とする。更に、製麦前の麦類の場合は、製麦および麦汁の調製に7日程度必要とすることから、早期凝集因子の有無の確認のために長期間が必要とされた。
この早期凝集性の有無を確認するための発酵試験の期間を短縮するために、被検原料麦に酵素を添加して原料麦を酵素処理し、得られた酵素処理物または酵素処理物から分離された高分子画分を合成麦汁に添加して発酵試験原料とし、48時間後の発酵試験原料の濁度を測定することにより原料麦中の早期凝集性因子の有無を判定する方法が開発された(特開平10−179190号公報(特許文献1))。この方法により、早期凝集因子の有無の確認のための期間が大幅に短縮されたが、しかしながら、この方法も発酵試験による方法であり、依然として、48時間もの発酵試験の時間が必要であった。
国際公開WO2005/073394A1(特許文献2)には、キュベット法と呼ばれる方法が開示されており、この方法は、麦芽から抽出した早凝因子と対数増殖後期の酵母をキュベット中で混合し、酵母の凝集・沈降を特定の波長での吸光度により測定する方法であり、発酵試験を必要としないものである。しかしながら、この方法は、手分析によるものであるため、多検体の処理には向いておらず、また、分析を行う者の違いによる処理の正確性や測定誤差の問題を生じる余地があった。
特開2009−171955号公報(特許文献3)には、前記キュベット法の原理を利用しつつ、多検体の分析を迅速に測定することができる方法および装置が提案されている。
酵母は環境的な影響を受けやすいため、酵母を用いた分析には測定値が変化し易いことがあり、測定日、測定時間、または、分析を行うものの違いによっても誤差を生じてしまうことがあった。また、酵母の凝集性の強さは用いる酵母に特有であり、早凝因子に対する感受性をコントロールすることが困難であった。このため、酵母の凝集に影響を与える環境要因を洗い出し、酵母の凝集強度をコントロールしつつ、醸造原料の早期凝集因子の有無を、より簡便かつ迅速に測定でき、さらに、多検体の分析を効率的に行うことができる方法の開発が望まれていた。
Proc. Congr. Eur. Brew. Conv.26:53-60, 1997
J. Am. Soc. Brew. Chem. 64(2):79 -85, 2006
本発明者等は既に、対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、麦や麦芽等の被検原料サンプルの水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させ、得られた懸濁液中に懸濁した酵母の沈降度合いを測定する場合に、懸濁液に可視光を照射して散乱された光を、デジタルビデオカメラで撮影し、得られた画像データを画像解析して、白色度として数値化することによって、製造原料中に含まれる酵母早期凝集因子を極めて短時間に測定でき、さらに多検体を同時に測定することに成功していた(特開2009−171955号公報(特許文献3))。今回、本発明者等は、酵母の凝集に影響を与えうる環境要因について検討をすすめたところ、想定されうる広範な要因・パラメータ群の中から、懸濁液の温度について、温度が特定の値より低くなると、酵母の凝集性が強くなり差が見られなくなることを発見した。すなわち、温度が高いほど浮遊性が高まり、温度が低くなると浮遊性が低くなる傾向にあることを見出した。その結果、前記した測定法において、測定しようとする懸濁液の温度を、特定の温度範囲に設定することで、早期凝集因子の検出を精度よく、かつ迅速に行えることが判明した。さらに、懸濁液の温度を高い温度に設定することで、凝集性の高い早期凝集因子を優先的かつさらに迅速に検出することに成功した。
本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明はこれらの知見に基づくものである。
よって本発明は、醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子を、高精度で、迅速かつ簡便に測定でき、さらに多検体を迅速に測定できる方法の提供をその目的とする。
本発明による測定方法は、醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速測定方法であって、
(1) 対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させ、
(2) 工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定し、
ここで、測定は、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を温度範囲内においてより高い温度に設定する
ことを特徴とするものである。
(1) 対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させ、
(2) 工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定し、
ここで、測定は、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を温度範囲内においてより高い温度に設定する
ことを特徴とするものである。
本発明の一つの好ましい態様によれば、前記の測定において、工程(1)で得られた懸濁液の温度を30〜40℃の範囲内の一定温度に制御する。
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の方法は、工程(2)において、懸濁液の温度を、30〜35℃の範囲の一定温度に制御して測定を行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を35℃より高い一定の温度に制御して測定を行う。
本発明の一つのより好ましい態様によれば、本発明の方法は、工程(2)において、懸濁液の温度を、32〜35℃の範囲の一定温度に制御して測定を行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を37〜39℃の範囲の一定温度に制御して測定を行う。
本発明の一つのさらに好ましい態様によれば、本発明の方法は、工程(2)において、懸濁液の温度を35℃以下の一定温度に制御して行う測定と、懸濁液の温度を35℃より高い一定の温度に制御して行う測定とを同時に行う。
本発明の一つのさらに好ましい態様によれば、本発明の測定方法は、一定温度に制御することは、測定中、懸濁液の温度を±0.5℃の温度範囲内に保つことを意味する。
本発明による測定方法は、好ましくは、工程(2)において、散乱された光をデジタルカメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、数値化された懸濁液の白色度を得ることを含んでなる。
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明の方法は、懸濁液の白色度を、消光時の白色度を0とし、かつ、混合・懸濁直後の酵母が均一分散している懸濁液の白色度を100として、数値化することを含んでなる。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、工程(2)において、懸濁液への可視光の照射を、懸濁液の真下に置かれた光源から行い、かつ、懸濁液において散乱された光を、懸濁液に対し水平方向に設置されたカメラ装置から撮影する。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、工程(1)において、複数の検体を同時に振盪することができる多検体振盪装置を用いて、複数の検体を同時に混合し懸濁させ、複数の懸濁液を得る。このとき、より好ましくは、複数の懸濁液における酵母の沈降度合いを、同時に測定する。
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、工程(1)において使用する酵母が、酵母を培養し、対数増殖後期もしくはそれ以降の酵母を回収したものであるか、または、該回収した酵母を更に凍結保存したものである。このときより好ましくは、回収した酵母はEDTAで洗浄されたものである。
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、工程(1)において使用する高分子画分が、被検原料サンプルの水抽出液をエタノール沈殿することによって調製した高分子画分であるか、または、被検原料サンプルの水抽出液を透析、限外濾過、もしくはゲル濾過により分離した高分子画分である。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、工程(1)において使用する高分子画分が、被検原料サンプルの糖化液から調製された高分子画分である。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、工程(1)において使用する水抽出高分子画分の調製に際して、抽出中に被検原料サンプルを酵素処理する。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、工程(1)において使用する水抽出高分子画分の調製に際して、抽出中に被検原料サンプルを酵素処理する。
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、工程(1)のバッファー液として、酢酸バッファー−CaCl2を用いる。
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、工程(1)のバッファー液として、酢酸バッファー−CaCl2に、グルコース、マルトース、マンノースおよびそれらの混合物からなる群より選択される糖類成分を加えたものを用いる。
本発明の一つの好ましい態様によれば、被検原料サンプルが、大麦、麦芽、または製麦途中の大麦である。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、被検原料サンプルの水抽出高分子画分が、麦芽粉砕物を30秒間以上、水で抽出した抽出液の高分子画分であるか、または、大麦粉砕物もしくは製麦途中の大麦粉砕物を15分間以上水で抽出した抽出液の高分子画分である。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、被検原料サンプルの水抽出高分子画分が、麦芽粉砕物を30秒間以上、水で抽出した抽出液の高分子画分であるか、または、大麦粉砕物もしくは製麦途中の大麦粉砕物を15分間以上水で抽出した抽出液の高分子画分である。
本発明による醸造用原料の酵母早期凝集性の迅速判定法は、本発明による酵母早期凝集因子の迅速測定方法を用いることを特徴とする。この判定法は、典型的には、本発明による酵母早期凝集因子の迅速測定方法を用いて、その結果から、醸造用原料が酵母早期凝集性であるか否かを判定する工程を含んでなる。
本発明による麦芽の製造方法は、本発明による酵母早期凝集因子の迅速測定方法を用いて、麦芽原料、製造途中の麦芽、または製造麦芽の早期凝集性を判定することにより、麦芽製造工程を管理することを特徴とする。
本発明による発酵アルコール飲料の製造方法は、本発明による酵母早期凝集因子の迅速測定方法を用いて、醸造原料の早期凝集性を判定することにより、用いる醸造原料の選択および調整を行うことを特徴とする。
さらに、本発明によれば、懸濁液中の菌体の沈降を連続的に定量測定するための測定装置であって、
検体としての懸濁液を入れるための複数のキュベットもしくはバイアルを、所定の位置で水平方向に一列に保持し、かつ、必要に応じて、該キュベットもしくはバイアルを振盪してその中の懸濁液を懸濁させる、検体振盪手段と、
該キュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御する、温度制御手段と、
一列に配置された該キュベットもしくはバイアルを撮影する、カメラ装置と、
該カメラ装置で撮影された画像データを画像解析して、懸濁液の白色度の数値データを得る、データ処理手段と
から構成されてなる、測定装置が提供される。
検体としての懸濁液を入れるための複数のキュベットもしくはバイアルを、所定の位置で水平方向に一列に保持し、かつ、必要に応じて、該キュベットもしくはバイアルを振盪してその中の懸濁液を懸濁させる、検体振盪手段と、
該キュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御する、温度制御手段と、
一列に配置された該キュベットもしくはバイアルを撮影する、カメラ装置と、
該カメラ装置で撮影された画像データを画像解析して、懸濁液の白色度の数値データを得る、データ処理手段と
から構成されてなる、測定装置が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の測定装置において、温度制御手段は、懸濁液の温度を30〜40℃の範囲内の一定温度に制御するものである。
本発明の好ましい態様によれば、前記検体振盪手段は、前記温度制御手段を備えてなる。
本発明の好ましい態様によれば、前記温度制御手段は、複数のキュベットもしくはバイアルの一部の中の懸濁液の温度を35℃以下の一定温度に制御し、かつ、他のキュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を35℃より高い一定の温度に制御しうるものである。
本発明の好ましい態様によれば、前記検体振盪手段は、キュベットもしくはバイアルの真下に可視光の光源を有してなる。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、該測定装置は、検体振盪手段において、キュベットもしくはバイアルを所定の時間振盪させた後、所定の時間静置させ、カメラ装置による撮影が行われるように、検体振盪手段とカメラ装置とを制御する制御手段をさらに含んでなる。
本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、該測定装置において、カメラ装置は、デジタルビデオカメラである。
本発明の好ましい態様によれば、前記測定装置は、醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速測定に用いられる。
本発明のより好ましい態様によれば、前記測定装置は、本発明による酵母早期凝集因子の迅速測定方法を実施するものである。
本発明の酵母早期凝集因子の迅速測定方法によれば、発酵麦芽飲料等の醸造に際して、醸造に用いる原料の早期凝集因子の有無を、従来法のような発酵法によらず、簡便な手段で、迅速かつ正確に測定することが可能であり、また、従来の吸光度を使用するキュベット法に比べて、多検体を同時にかつ正確に、効率よく測定することが可能となる。キュベット法では、酵母と水抽出高分子画分との混合方法に関しては明確な規定がなく、分析を行う者によって異なる方法で混合される可能性があるため、処理の正確性や測定誤差の問題を生じる余地があった。本発明による方法では、処理が簡便で、多検体を同時に測定可能なため、このような懸念には配慮しなくて良いと言える。
さらに本発明によれば、測定しようとする懸濁液の温度を、特定の温度範囲に設定することで、早期凝集因子の検出を、さらに精度よく、かつ迅速に行うことができる。また、懸濁液の温度を高い温度に設定することで、凝集性の高い早期凝集因子を優先的かつさらに迅速に検出するができる。このため、凝集性の高い早期凝集因子の存在が予想されうる場合には、温度条件を調製することで、より迅速にそのような早期凝集因子の検出することができる。このような凝集性の高い早期凝集因子をより効率的に検出することができると、発酵麦芽飲料等の醸造過程での損害の発生をより早期に見出すことが可能となる。また、本発明によれば、測定する際に、懸濁液の温度を通常の範囲と、より高い範囲とに複数のサンプルついてそれぞれ設定し、それらを同時に測定することで、検体中の早期凝集因子の状態がより適格かつ効率的に測定することができる。すなわち、同じ早期凝集因子であっても、凝集性の高い因子の含まれる割合がより高い場合やそうでない場合などを、簡便に検出することができる。
さらに本発明の方法によれば、多検体の測定を人手を極力かけずに、処理を自動化することも可能である。このため、本発明による方法は、発酵麦芽飲料等の醸造に際して用いる、醸造原料の早期凝集性の実用的な測定・判定方法として極めて有用なものである。特に多検体を迅速かつ効率的に、正確に測定できることは、工業規模での生産への応用に大きく期待される。本発明による測定装置についても同様である。
また、本発明の迅速測定方法は、麦芽、または製麦前の大麦はもとより、収穫直後の大麦、または製麦途中の大麦、または、醸造に用いられるその他の穀類やエキス等における早期凝集因子の測定に適用することができ、簡便、迅速、かつ確実な方法として、広くこれらの醸造原料における早期凝集因子の有無の判定に用いることが可能なものである。更に、本発明の測定方法は、少量のサンプルで測定が可能であることから、発酵麦芽飲料等の醸造に際して、簡便に用いることができると共に、精度の良い実用的な測定・判定方法として提供されるものである。また、本発明の早期凝集因子の測定方法は、各々の原料ごとに早期凝集因子の測定を正確に把握することができるものであるから、各々の原料ごとの早期凝集性の判定が可能である。さらに、極少量の早期凝集因子の活性も測定することが可能であることから、それぞれの醸造原料における分割された画分ごとの早期凝集因子の測定も可能であり、その早期凝集因子の精製や特定に効果的に利用することができる。
酵母早期凝集因子の迅速測定方法
本発明による測定方法は、前記したように、醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速測定方法であって、
(1) 対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させ、
(2) 工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定し、
ここで、測定は、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を温度範囲内においてより高い温度に設定する
ことを特徴とする。
本発明による測定方法は、前記したように、醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速測定方法であって、
(1) 対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させ、
(2) 工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定し、
ここで、測定は、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を温度範囲内においてより高い温度に設定する
ことを特徴とする。
本発明において、醸造原料は、ビール、発泡酒、およびウィスキーなどの発酵麦芽飲料等の製造に用いられるものであって、例えば、麦芽、または製麦前の大麦はもとより、収穫直後の大麦、または製麦途中の大麦、または、醸造に用いられるその他の穀類やエキス等が挙げられる。被検原料サンプルとしても同様のものが挙げられ、好ましくは、被検原料サンプルは、大麦、麦芽、または製麦途中の大麦である。
工程(1):
本発明の測定方法における工程(1)においては、対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させる。
本発明においては、国際公開WO2005/073394A1に記載のキュベット法と同様に、酵母早期凝集因子の測定に、「対数増殖後期またはそれ以降の酵母」を使用する。「対数増殖後期またはそれ以降の酵母」を使用するのは、この時期に酵母が適度な凝集能を獲得し始めるためである。
本発明の測定方法における工程(1)においては、対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させる。
本発明においては、国際公開WO2005/073394A1に記載のキュベット法と同様に、酵母早期凝集因子の測定に、「対数増殖後期またはそれ以降の酵母」を使用する。「対数増殖後期またはそれ以降の酵母」を使用するのは、この時期に酵母が適度な凝集能を獲得し始めるためである。
ここで、「対数増殖後期またはそれ以降の酵母」は、例えば、下記のようにして調製することができる。
醸造に用いられる酵母を、通常用いられる酵母用培地で培養して、酵母の増殖曲線を作成し、対数増殖後期もしくはそれ以降の段階に達した酵母(通常、8℃の培養温度で、培養開始から4〜5日目のもの)を、遠心分離等により分離、回収する。回収した酵母は、例えば、0.1M EDTAのようなキレート化合物溶液で洗浄しておくのが望ましい。
回収した酵母は、そのまま使用しても良いが、例えば、15%グリセロール溶液により、−80℃で凍結保存するなどして、予め培養、回収した酵母を凍結保存しておいても良い。このようにして凍結保存した酵母は、本発明の測定方法において使用するに際して、解凍等して調製しておくことができる。
醸造に用いられる酵母を、通常用いられる酵母用培地で培養して、酵母の増殖曲線を作成し、対数増殖後期もしくはそれ以降の段階に達した酵母(通常、8℃の培養温度で、培養開始から4〜5日目のもの)を、遠心分離等により分離、回収する。回収した酵母は、例えば、0.1M EDTAのようなキレート化合物溶液で洗浄しておくのが望ましい。
回収した酵母は、そのまま使用しても良いが、例えば、15%グリセロール溶液により、−80℃で凍結保存するなどして、予め培養、回収した酵母を凍結保存しておいても良い。このようにして凍結保存した酵母は、本発明の測定方法において使用するに際して、解凍等して調製しておくことができる。
本発明の測定方法において使用される、「被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分」は、例えば、下記のようにして調製することができる。
まず、大麦や麦芽等の被検原料サンプルを必要により粉砕処理し、水抽出、または通常の糖化を行う。被検原料サンプルの水抽出を行うに際しては、特開平10−179190号公報に記載された方法に従い、被検原料サンプルをα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、β−グルカナーゼ、プロテアーゼ等の添加によって酵素処理を行うことができる。被検原料サンプルの水抽出高分子画分を調製するに際して水抽出液から、高分子画分を分離するには、エタノール沈殿法、例えば、水抽出液に終濃度50%にエタノールを添加し、沈殿を遠心分離により回収する方法、または、透析、限外濾過、もしくはゲル濾過等により、分画、回収する方法等によって、分離、回収することができる。
まず、大麦や麦芽等の被検原料サンプルを必要により粉砕処理し、水抽出、または通常の糖化を行う。被検原料サンプルの水抽出を行うに際しては、特開平10−179190号公報に記載された方法に従い、被検原料サンプルをα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、β−グルカナーゼ、プロテアーゼ等の添加によって酵素処理を行うことができる。被検原料サンプルの水抽出高分子画分を調製するに際して水抽出液から、高分子画分を分離するには、エタノール沈殿法、例えば、水抽出液に終濃度50%にエタノールを添加し、沈殿を遠心分離により回収する方法、または、透析、限外濾過、もしくはゲル濾過等により、分画、回収する方法等によって、分離、回収することができる。
本発明の測定方法の工程(1)においては、前記酵母と、前記水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させる。ここで使用するバッファー液としては、酢酸バッファー−CaCl2を用いるのが望ましい。より好ましくはバッファー液は、例えば、50mM酢酸バッファー(pH4〜4.5)−0.1%CaCl2のような液である。
ここで、例えば、増殖の定常期後期に回収したものや、工場等で回収した酵母などのように酵母自体が強い凝集性を有している場合がある。使用する酵母が、このような凝集性の強い酵母であると、正常麦芽(非早凝性の麦芽)を用いて測定する場合であっても沈んでしまい、その結果、原料の非早凝性を正確に測定できなくなる虞がある。このため、酵母自体が強い凝集性を有している場合の酵母に基づく凝集を抑える一方で、早凝因子に基づく凝集にはほとんど影響を与えないようにして、凝集性が強い酵母による測定ノイズを排除することが望ましい。そこで、本発明者等は今般さらに、酢酸バッファー−CaCl2に、糖類成分(例えば、単糖類、二糖類、またはそれらの混合物)を加えたものをバッファー液として用いることによって、この望ましくない酵母に基づく凝集ノイズを適切に抑えることに成功した(実施例4)。これは、糖類成分が、酵母と早凝因子との結合を阻害する効果があると考えられる。
よって、本発明の別の一つの好ましい態様によれば、このバッファー液として、酢酸バッファー−CaCl2に、糖類成分(例えば、単糖類、二糖類、またはそれらの混合物)を加えたものを用いる。このような加える糖類成分としては、好ましくは、グルコース、マルトース、マンノースおよびそれらの混合物からなる群より選択されるものである。
加える糖類成分がマルトースである場合、バッファー中のマルトース濃度は、0.5〜1.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2重量%であり、特に好ましくは約1重量%である。糖類成分による酵母と早凝因子との結合の阻害効果の強さは糖類によって異なることが判明している。上記で挙げた糖類の場合、阻害効果の強い順に、マンノース>グルコース>マルトースであることが判明している。このため、マルトースより強い、マンノースやグルコースを使用する場合には、使用濃度を、上述のマルトースの場合の濃度よりも低い濃度に設定することが可能である。
本発明の特に好ましい態様によれば、使用するバッファー液は、50mM酢酸バッファー(pH4〜4.5)−0.1%CaCl2−1%マルトースのような液である。
また上記したように、本発明において、このようにバッファー液に糖類成分を加えるとするのは、使用する酵母が凝集性の強い場合であるのが好ましい。使用する酵母が凝集性の強いものであるかは、正常麦芽であっても沈降するか否かにより容易に確認することができる。
また混合および懸濁の処理は、検体としての懸濁液(前記酵母と、前記水抽出高分子画分との混合物)を入れたキュベットもしくはバイアルなどの容器を、攪拌、振盪などの慣用の方法を実施することによって行われる。本発明においては、好ましくは、複数の検体を同時に振盪することができる多検体振盪装置を用いて、複数の検体を同時に混合し懸濁させ、複数の懸濁液を得る。これは、多検体を同時に測定するために有用である。ここで、多検体振盪装置は、後述するように、検体としての懸濁液を入れるための複数のキュベットもしくはバイアルを、所定の位置で水平方向に一列に保持でき、かつ、必要に応じて、該キュベットもしくはバイアルを振盪してその中の懸濁液を懸濁させることができるものが好ましい。
工程(2):
本発明における工程(2)においては、工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定する。
本発明における工程(2)においては、工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定する。
従来のキュベット法では、懸濁液を分光光度計を用いてその光学密度を測定することによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定したが、本発明によれば、懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析することによる。このため、従来法のように一検体づつ手分析によって順番に測定するのではなく、多検体を並べて、同時にカメラ装置で撮影し画像データを得ることができる。この画像データを画像解析することによって、本発明によれば、多検体を短時間で同時に測定することができる。
さらに本発明によれば、撮影および画像解析を連続的に行うことが可能であるので、本発明による測定方法を、連続的に行うことができ、例えば、経時的変化を測定することも可能である。
さらに本発明によれば、撮影および画像解析を連続的に行うことが可能であるので、本発明による測定方法を、連続的に行うことができ、例えば、経時的変化を測定することも可能である。
また本発明の測定方法においては、懸濁液の測定を、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を温度範囲内においてより高い温度に設定する。このような温度範囲に制御して測定することで、より精度の高い迅速な測定が可能となる。また早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、測定温度条件をより高く変更することで、所望の早期凝集因子の検出をより効率的に行うことができる。
本発明の方法において、測定しようとする懸濁液の温度を、特定の温度範囲に設定する場合、温度の調整手段は特に限定されない。例えば、工程(1)における混合および懸濁の処理は、前記したように、検体としての懸濁液(前記酵母と、前記水抽出高分子画分との混合物)を入れたキュベットもしくはバイアルなどの容器を、例えば振盪によって行うことができるが、このとき、振盪を、液温を一定に保ちながら行い、かつ前記測定装置内部の気温を制御することで、キュベット内部の液温(懸濁液の温度)を制御することができる。また例えば、振盪後のキュベットもしくはバイアルを測定装置内の温度制御手段(例えば、恒温装置)によって所望の温度に一定し、これにより懸濁液の温度を制御することもできる。
本発明においては、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して測定を行う。制御する懸濁液の温度は、好ましくは30〜40℃であり、より好ましくは32〜39℃であり、さらに好ましくは32〜35℃である。これらの値は、凝集性の高い早期凝集因子を優先的に測定したい場合のような特定の目的での測定ではない、通常の目的での測定(すなわち、弱早凝性、早凝性、強早凝性の麦芽のいずれも包含する全て早凝因子の検出)の場合に好ましい温度範囲であるといえる。一方、醸造工程で比較的問題となり易い凝集性の高い早期凝集因子を検出しようとする場合には、該温度は、好ましくは35〜40℃、より好ましくは37〜39℃に設定する。
なお、前記において「一定温度に制御して測定を行う」とは、記載された温度範囲内であっても、測定中はその内の特定の温度で一定の条件に保って測定することを意味し、ここで一定温度とは、例えば、測定中、設定した温度を、例えば±0.8℃(好ましくは±0.5℃)の温度範囲内に保つことを意味する。このような一定温度に保って(固定して)測定することによって、より精度の高い測定が可能となる。
本発明の一つの好ましい態様によれば、前記したように、本発明の方法は、工程(2)において、懸濁液の温度を、30〜35℃(好ましくは32〜35℃)の範囲の一定温度に制御して測定を行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を35℃より高い(好ましくは37〜39℃の範囲の)一定の温度に制御して測定を行う。より好ましくは、工程(2)において、懸濁液の温度を、32〜35℃の範囲の一定温度に制御して測定を行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を37〜39℃の範囲の一定温度に制御して測定を行う。このように温度条件を特定して測定することで、より効率的かつ迅速な測定が可能となる。
本発明の一つのさらに好ましい態様によれば、前記したように、本発明の方法は、工程(2)において、懸濁液の温度を35℃以下(好ましくは30〜35℃、より好ましくは32〜35℃の範囲)の一定温度に制御して行う測定と、懸濁液の温度を35℃より高い(好ましくは35〜40℃、より好ましくは37〜39℃の範囲の)一定の温度に制御して行う測定とを同時に行う。より好ましくは、工程(2)において、懸濁液の温度を32〜35℃の範囲の一定温度に制御して行う測定と、懸濁液の温度を37〜39℃の範囲の一定温度に制御して行う測定とを同時に行う。検体中の早期凝集因子の状態がより適格かつ効率的に測定することができる。
また本発明において、懸濁液に可視光を照射するための光源は、後述するカメラ装置で撮影でき、かつそれによって撮影された画像データを画像解析して白色度を数値化することができるのであれば、いずれのタイプの光源でも良い。例えば、光源としては、市販の白色LED光源を使用することができる。光源の光度も同様、本発明の測定が可能である限り限定されないが、10000〜30000mcd程度、例えば18000mcd程度の光度の光を検体に照射できるものである。
使用されるカメラ装置としては、撮影された画像データを画像処理装置に出力できるものであれば特に制限はない。このため通常、該カメラ装置は、デジタルカメラが望ましく、好ましくはデジタルビデオカメラである。デジタルカメラの画素数としては、得られた画像データに基づいて画像解析して白色度を求めることができれば特に制限されないが、例えば、130万画素、またはそれ以上の画素数を有するものが好ましい。
よって、本発明による好ましい態様によれば、工程(2)において、散乱された光をデジタルカメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、数値化された懸濁液の白色度を得る。
ここで、数値化された白色度とは、例えば、得られた画像データを画像解析して、測定すべき領域の白と黒の比率を白色度として得ることができる。このとき、好ましくは、懸濁液の白色度を、消光時の白色度を0とし、かつ、混合・懸濁直後の酵母が均一分散している懸濁液の白色度を100とし、相対値として数値化する。この場合、白色度が高いほど数値も、0〜100の間で大きくなる。
また画像データの画像解析はパーソナルコンピュータと、画像中の白と黒のエリアを数値化可能な市販のソフトウエアとを組み合わせることによって行うことができる。
本発明の好ましい態様によれば、懸濁液への可視光の照射を、懸濁液の真下に置かれた光源から行う。またこのとき、懸濁液において散乱された光は、通常、懸濁液に対し水平方向に設置されたカメラ装置から撮影する。このようにすることによって、懸濁酵母による散乱光を正確に捉えることができ、また、これによって、分析を行う者の違いによる処理の正確性や測定誤差の問題も大幅に低減することができる。
本発明の一つの好ましい態様によれば、工程(1)における混合および懸濁の後、必要により所定の時間、静置した後に、再度懸濁してから懸濁液における酵母の沈降度合いを測定する。ここで静置する時間は、混合された懸濁液中の酵母が早凝性因子と反応し凝集塊を形成することができるのであれば、特に制限はなく、いずれの時間であってもよい。
また、静置後の懸濁の時間は、懸濁液中の酵母凝集塊が均一に分散された状態とすることができるのであれば、特に制限はなく、いずれの時間であってもよい。このように、一定の静置時間と懸濁時間を設けることで、酵母の沈降度合いが明確になり、バラツキの少ない正確で再現性の高い測定が可能となる。
また、静置後の懸濁の時間は、懸濁液中の酵母凝集塊が均一に分散された状態とすることができるのであれば、特に制限はなく、いずれの時間であってもよい。このように、一定の静置時間と懸濁時間を設けることで、酵母の沈降度合いが明確になり、バラツキの少ない正確で再現性の高い測定が可能となる。
本発明の測定方法では、前記したように、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定する。すなわち、酵母の沈降度合いが大きいほど、懸濁液を側面から観察すると、黒く見えるようになり、白色度の値も小さくなる。一方、沈降度合いが低く、酵母の沈降が少ないほど、懸濁液は白く見え、白色度の値も大きくなる。このようにして、白色度の値から、酵母の沈降度合いを測定することができる。
本発明のより好ましい態様によれば、複数の懸濁液における酵母の沈降度合いを、同時に測定する。このとき、より好ましくは、工程(1)の混合・懸濁処理を、多検体同時に行うようにする。このように工程(1)および工程(2)を共に多検体同時に実施可能とすることによって、本発明の測定方法を人手によらず、自動化することが可能となる。
測定装置
本発明によれば、前記したように、懸濁液中の菌体の沈降を連続的に定量測定するための測定装置であって、
検体としての懸濁液を入れるための複数のキュベットもしくはバイアルを、所定の位置で水平方向に一列に保持し、かつ、必要に応じて、該キュベットもしくはバイアルを振盪してその中の懸濁液を懸濁させる、検体振盪手段と、
該キュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御する、温度制御手段と、
一列に配置された該キュベットもしくはバイアルを撮影する、カメラ装置と、
該カメラ装置で撮影された画像データを画像解析して、懸濁液の白色度の数値データを得る、データ処理手段と
から構成されてなる、測定装置が提供される。
本発明によれば、前記したように、懸濁液中の菌体の沈降を連続的に定量測定するための測定装置であって、
検体としての懸濁液を入れるための複数のキュベットもしくはバイアルを、所定の位置で水平方向に一列に保持し、かつ、必要に応じて、該キュベットもしくはバイアルを振盪してその中の懸濁液を懸濁させる、検体振盪手段と、
該キュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御する、温度制御手段と、
一列に配置された該キュベットもしくはバイアルを撮影する、カメラ装置と、
該カメラ装置で撮影された画像データを画像解析して、懸濁液の白色度の数値データを得る、データ処理手段と
から構成されてなる、測定装置が提供される。
図1には、カメラ装置と、キュベットもしくはバイアル、光源との位置関係を示した概念図を示した。また図2には、本発明による装置の概念図を示した。
ここで、菌体としては、例えば、酵母、カビが挙げられ、好ましくは、酵母である。なお本発明の測定法は、凝集して沈降しうる生物全般に適用することも可能である。
前記検体振盪手段は、検体としての懸濁液を入れるための複数のキュベットもしくはバイアルを、所定の位置で水平方向に一列に保持してなり、かつ、必要に応じて、該キュベットもしくはバイアルを振盪してその中の懸濁液を懸濁させることができるものである。
ここで、複数の(例えば、11〜12本の)キュベットもしくはバイアルが、所定の位置で水平方向に一列に保持されているとは、カメラ装置により、複数のキュベットもしくはバイアルが同時に撮影できるような、高さや位置(カメラ装置に対する位置)にキュベットもしくはバイアルが保持され、かつ、同時に撮影可能なように、通常は、カメラ装置の撮影される方向とは直角に一列に配置されている場合を言う。このため、この目的の範囲で、キュベットもしくはバイアルの位置は適宜設定することができる。またこの場合、キュベットもしくはバイアルの高さや位置、並び方、およびカメラ装置との位置関係は、多検体をカメラ装置で同時に撮影できる限り、適宜変更してもよい。
また、検体振盪手段において、必要に応じて、キュベットもしくはバイアルを振盪してその中の懸濁液を懸濁させることができるとは、所定の位置に保持したキュベットもしくはバイアルを振盪し懸濁液を懸濁させることができる装置であれば特に制限はないが、例えば、複数のキュベットもしくはバイアルを、並列に(一列に)固定し、反転させながら振盪できる多検体振盪装置が挙げられる。好ましくは、このような多検体振盪装置は、振盪速度、振盪時間、および待機時間は可変で、適宜設定できるものである。このような制御は、別途制御装置を用いて行うことができる。制御装置等により厳密に振盪速度、振盪時間、および待機時間を制御することによって、分析を行う者の違いによる測定誤差を無くすことができる。制御装置としては、例えば、市販品を使用してもよい。
本発明の測定装置は、キュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を20〜45℃(好ましくは30〜40℃)の範囲内の一定温度に制御する、温度制御手段を備えてなる。より好ましくは、この温度制御手段は、複数のキュベットもしくはバイアルの一部の中の懸濁液の温度を35℃以下の一定温度に制御し、かつ、他のキュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を35℃より高い一定の温度に制御しうるものである。
より詳しくは、温度制御手段は、本発明の測定装置において、懸濁液の温度を一定に保つためにキュベット等の内部の温度を20〜45℃に調整でき、一定の温度(例えば、±0.5℃の温度範囲内)に制御が可能なものである。本発明では、キュベット内部の温度が20〜45℃(例えば、好ましくは30〜40℃、より好ましくは30〜35℃、より好ましくは32〜35℃)で一定温度になるように装置内部の温度をコントロールできる。キュベット内部の温度を上昇させると凝集性は弱くなり(早凝因子に対する感受性が低下)、温度を下げると凝集性が強くなる(早凝因子に対する感受性増加)。このため、これらを利用して、目的に応じて上下に温度を変化させるとよい。
温度制御手段の具体例としては、加温装置と冷却装置によって温度調節された空気を装置内に送風して温度を制御するもの、または、加温装置と冷却装置によって装置内部の温度を直接制御するものなどが挙げられる。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記検体振盪手段は、この温度制御手段を備えてなる。
さらに好ましくは、本発明の装置は、検体振盪手段において、キュベットもしくはバイアルを所定の時間振盪させた後、所定の時間静置させ、カメラ装置による撮影が行われるように、検体振盪手段とカメラ装置とを制御する制御手段をさらに含んでなる。このように、混合、懸濁、静置、カメラ撮影までの操作を、制御することによって、測定の自動化が可能となり、分析者の違いによって生じ得る誤差をほぼ無くすことができる。さらには、より最適な測定条件を見出し、設定することが可能となる。
このような制御の例としては、例えば、ガラスバイアルの場合、混合2分間→放置(静置)15分以上→混合2分間→測定(撮影)との条件が挙げられ、また、キュベット型の場合、混合7分間→放置(静置)2分間→混合7分間→測定(撮影)との条件が挙げられる。
このような制御の例としては、例えば、ガラスバイアルの場合、混合2分間→放置(静置)15分以上→混合2分間→測定(撮影)との条件が挙げられ、また、キュベット型の場合、混合7分間→放置(静置)2分間→混合7分間→測定(撮影)との条件が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、検体振盪手段において、キュベットもしくはバイアルの真下に可視光の光源を有してなる。
本発明において、前記データ処理手段とは、カメラ装置で撮影された画像データを画像解析して、懸濁液の白色度の数値データを得ることができるものである。このような処理手段としては、例えば、パーソナルコンピュータが挙げられる。この場合、パーソナルコンピュータは、得られた画像データの画像解析を行うことができるソフトウエア、例えば、画像中の白と黒のエリアを数値化可能な市販のソフトウエアとを組み合わせて使用することが好ましい。
なお本明細書において、「約」および「程度」を用いた値の表現は、その値を設定することによる目的を達成する上で、当業者であれば許容することができる値の変動を含む意味である。例えば、所定の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内の変動を許容し得ることを意味する。
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実験方法
1)酵母の培養
YEPG培地(1%Yeast Extract、2% Bactopepton、7.5% Maltose、2.5% Glucose)で、20℃静置培養で3日間培養した前培養液を、あらかじめ8℃に冷却しておいたYEPG培地(通常は250ml容メディウムビンに培地100ml)に1.5%濃度で添加し、スターラーで攪拌しながら8℃で培養した。培養時、経時的にOD600を測定し、酵母の増殖曲線を作成し、対数増殖期、増殖曲線がねはじめた対数増殖後期(培養開始4日目)、定常期初期(培養開始5日10時間目)のそれぞれの酵母を用いることができるようにした。
1)酵母の培養
YEPG培地(1%Yeast Extract、2% Bactopepton、7.5% Maltose、2.5% Glucose)で、20℃静置培養で3日間培養した前培養液を、あらかじめ8℃に冷却しておいたYEPG培地(通常は250ml容メディウムビンに培地100ml)に1.5%濃度で添加し、スターラーで攪拌しながら8℃で培養した。培養時、経時的にOD600を測定し、酵母の増殖曲線を作成し、対数増殖期、増殖曲線がねはじめた対数増殖後期(培養開始4日目)、定常期初期(培養開始5日10時間目)のそれぞれの酵母を用いることができるようにした。
2)試験用酵母の調製
培養の終了した定常期初期の酵母を、3000rpm、5分間(4℃)の遠心により回収した。回収した酵母は、冷水により懸濁洗浄し同様に遠心により回収し、冷却した100mM EDTA(pH8.0)によって懸濁洗浄2回、冷水による懸濁洗浄2回行い、20mlの冷水に懸濁させた。酵母液を1/200希釈し、OD600を測定することにより酵母濃度を測定した。また、冷水による洗浄を2回行った後、15%のグリセロール液に懸濁し、同様に酵母液のOD600を測定することにより酵母濃度を測定した後、−80℃で凍結させた。
培養の終了した定常期初期の酵母を、3000rpm、5分間(4℃)の遠心により回収した。回収した酵母は、冷水により懸濁洗浄し同様に遠心により回収し、冷却した100mM EDTA(pH8.0)によって懸濁洗浄2回、冷水による懸濁洗浄2回行い、20mlの冷水に懸濁させた。酵母液を1/200希釈し、OD600を測定することにより酵母濃度を測定した。また、冷水による洗浄を2回行った後、15%のグリセロール液に懸濁し、同様に酵母液のOD600を測定することにより酵母濃度を測定した後、−80℃で凍結させた。
3)麦芽水抽出高分子画分の調製
下記のような早凝性麦芽および非早凝性麦芽(正常麦芽)の各20gにそれぞれ、120mlの水を加え、スターラーで10分間攪拌した。攪拌後、4℃にて8718g、10分間の遠心分離により不要画分を取り除き、上清を回収した。上清をさらにろ過して不溶画分を取り除き、等量のエタノールを混和した。室温で10分間静置後、4℃にて11387g、10分間遠心分離により沈殿画分を回収した。沈殿画分を10mlの熱水で懸濁し、測定サンプルとした。
早凝性麦芽1〜3: キリンビール株式会社製の麦芽評価用サンプル
正常麦芽1〜3: キリンビール株式会社製の麦芽評価用サンプル
下記のような早凝性麦芽および非早凝性麦芽(正常麦芽)の各20gにそれぞれ、120mlの水を加え、スターラーで10分間攪拌した。攪拌後、4℃にて8718g、10分間の遠心分離により不要画分を取り除き、上清を回収した。上清をさらにろ過して不溶画分を取り除き、等量のエタノールを混和した。室温で10分間静置後、4℃にて11387g、10分間遠心分離により沈殿画分を回収した。沈殿画分を10mlの熱水で懸濁し、測定サンプルとした。
早凝性麦芽1〜3: キリンビール株式会社製の麦芽評価用サンプル
正常麦芽1〜3: キリンビール株式会社製の麦芽評価用サンプル
実施例1: 早凝性麦芽の識別
上記2)で得られた凍結乾燥酵母に水を加えて所定の濃度(OD600が約200)とした酵母液を用意し、一方で、上記3)で得られた麦芽水抽出高分子画分(早凝性麦芽1〜3および正常麦芽1〜3)とを用意した。
次いで、酵母液0.075mlと、麦芽水抽出高分子画分0.385mlとを、50mM酢酸ナトリウム(pH4.8)1.5mlおよび50%塩化カルシュウム6μlに懸濁させ、全量が3mlとなるように水で調製した。得られた溶液を、それぞれプラスティックキュベット(10×10×45mm)に入れ、パラフィルムで上部をシールした。
これらを用意した、多検体振盪装置内のフォルダーに置き、7分間振盪→2分間静置→7分間浸透後、沈降を下記条件にてモニタリングした。
上記2)で得られた凍結乾燥酵母に水を加えて所定の濃度(OD600が約200)とした酵母液を用意し、一方で、上記3)で得られた麦芽水抽出高分子画分(早凝性麦芽1〜3および正常麦芽1〜3)とを用意した。
次いで、酵母液0.075mlと、麦芽水抽出高分子画分0.385mlとを、50mM酢酸ナトリウム(pH4.8)1.5mlおよび50%塩化カルシュウム6μlに懸濁させ、全量が3mlとなるように水で調製した。得られた溶液を、それぞれプラスティックキュベット(10×10×45mm)に入れ、パラフィルムで上部をシールした。
これらを用意した、多検体振盪装置内のフォルダーに置き、7分間振盪→2分間静置→7分間浸透後、沈降を下記条件にてモニタリングした。
使用する多検体振盪装置は、振盪装置部として、キュベットを11本並列に固定でき、反転させながら振盪させることができるものである。
光源としては、白色LED光源(日亜化学株式会社製,NSPW500BS)(AC100V/3A)を使用した。
振盪装置の制御装置としては、キーエンス社製KV−16ATを使用した。
カメラ装置としては、デジタルビデオカメラ(株式会社アートレイ製、ARTCAM−130MI(150万画素))を使用した。
パーソナルコンピュータとしては市販のもの(OS:WindoowsXP)を使用し、市販の沈殿速度解析ソフトを使用した。
測定は、いずれも室温条件下にて行った。
光源としては、白色LED光源(日亜化学株式会社製,NSPW500BS)(AC100V/3A)を使用した。
振盪装置の制御装置としては、キーエンス社製KV−16ATを使用した。
カメラ装置としては、デジタルビデオカメラ(株式会社アートレイ製、ARTCAM−130MI(150万画素))を使用した。
パーソナルコンピュータとしては市販のもの(OS:WindoowsXP)を使用し、市販の沈殿速度解析ソフトを使用した。
測定は、いずれも室温条件下にて行った。
結果は図3に示される通りであった。図は、モニタリング開始10分後の画像である。
図中、右から2連ずつ、正常麦芽1、早凝麦芽1、早凝麦芽2、正常麦芽2、早凝麦芽3、正常麦芽3を意味する。
また下記表1に、図の画像データを画像解析することによって得られた白色度の数値を示した。
図中、右から2連ずつ、正常麦芽1、早凝麦芽1、早凝麦芽2、正常麦芽2、早凝麦芽3、正常麦芽3を意味する。
また下記表1に、図の画像データを画像解析することによって得られた白色度の数値を示した。
実施例2: 測定時間の検討
前記実施例1と同様にして、早凝性麦芽1のサンプルを用意した。これらを実施例1に従って、バイアルを5段に分けて考え(図5)、各段でモニタリングを行い、時間0分から30分まで経時的に、白色度を測定した。
前記実施例1と同様にして、早凝性麦芽1のサンプルを用意した。これらを実施例1に従って、バイアルを5段に分けて考え(図5)、各段でモニタリングを行い、時間0分から30分まで経時的に、白色度を測定した。
結果は図4に示される通りであった。図中、系列2〜6とは、5段に分けた窓を通して、測定結果を表、系列2〜6は順に下からの窓の位置での結果を意味する。
測定時間を検討した結果、いずれの段においても、最初の3分までに濁度は大幅に減少するが、それ以後30分まで比較的安定であることが判明した。
測定時間を検討した結果、いずれの段においても、最初の3分までに濁度は大幅に減少するが、それ以後30分まで比較的安定であることが判明した。
実施例3: 測定位置の検討
まず前記実施例1と同様にして、早凝性麦芽および非早凝性麦芽のサンプルを用意した。次いで、バイアルあるいはキュベットのどの位置で比較するのが最も精度が高いか検討するため、バイアルを5段に分けて考え(図5)、それぞれの段のエリアごとに濁度を比較した。
まず前記実施例1と同様にして、早凝性麦芽および非早凝性麦芽のサンプルを用意した。次いで、バイアルあるいはキュベットのどの位置で比較するのが最も精度が高いか検討するため、バイアルを5段に分けて考え(図5)、それぞれの段のエリアごとに濁度を比較した。
結果は図6に示される通りであった。図は4分放置後の濁度である。図では、各バイアルについて5段のエリアに分けた結果を順に示してある。いずれのバイアルにおいても、5段のエリアに分けて測定することによって、早凝性麦芽と非早凝性麦芽を判定することが可能であった。
実施例4: バッファー液の検討
前述の「実験方法」の「1)酵母の培養」の項と同様にして、酵母の培養を行い、作成した増殖曲線の、定常期後期の培養酵母を下記のように採取したものを下記で使用した:
酵母1: 培養開始から7日間培養したもの、
酵母2: 培養開始から6日16時間培養したもの。
また対照として、定常期初期(培養開始から5日10時間培養したもの)の培養酵母を「正常酵母」として以下において使用した。
得られた各培養酵母サンプルにそれぞれ水を加えて所定の濃度(OD600が約200)とした酵母液を用意した。
前述の「実験方法」の「1)酵母の培養」の項と同様にして、酵母の培養を行い、作成した増殖曲線の、定常期後期の培養酵母を下記のように採取したものを下記で使用した:
酵母1: 培養開始から7日間培養したもの、
酵母2: 培養開始から6日16時間培養したもの。
また対照として、定常期初期(培養開始から5日10時間培養したもの)の培養酵母を「正常酵母」として以下において使用した。
得られた各培養酵母サンプルにそれぞれ水を加えて所定の濃度(OD600が約200)とした酵母液を用意した。
前述の「実験方法」の「3)麦芽水抽出高分子画分の調製」の項と同様にして、麦芽サンプルとして、「正常麦芽1」と「早凝性麦芽1」とを用意した。
用意した酵母液を使用し、また麦芽水抽出高分子画分として「正常麦芽1」と「早凝性麦芽1」とを使用し、さらにバッファーとして下記の条件のものを使用した以外は、「実施例1」と同様にして試験を行い、各場合についての白色度を求めた。
結果は表2に示される通りであった。
糖類成分を加えない場合における結果から明らかなように、凝集性の強い酵母(すなわち、酵母1および酵母2)を使用すると、酵母自体の凝集性のために、正常麦芽を使用した場合であっても、白色度が低下した。
凝集性の強い酵母を使用した場合に、バッファー液に1%マルトースを加えると、正常麦芽と、早凝性麦芽との白色度の値に明確な差異が見られるようになった。このような明確な差異が生ずる結果、使用麦芽が早凝性のものか否かが判別可能となることが明らかとなった。上記表中では、このような差異は、使用した糖類成分がマルトースで、濃度が1重量%である場合に顕著であった。
凝集性の強い酵母を使用した場合に、バッファー液に1%マルトースを加えると、正常麦芽と、早凝性麦芽との白色度の値に明確な差異が見られるようになった。このような明確な差異が生ずる結果、使用麦芽が早凝性のものか否かが判別可能となることが明らかとなった。上記表中では、このような差異は、使用した糖類成分がマルトースで、濃度が1重量%である場合に顕著であった。
実施例5: 測定温度の検討
前述の「実験方法」の「3)麦芽水抽出高分子画分の調製」の項と同様にして、麦芽サンプルとして、「正常麦芽1」(正常麦芽)と「早凝性麦芽1」(早凝麦芽)とを用意した。
また発酵試験で実際に麦汁を発酵した場合の麦汁残糖度を基準に、正常麦芽の場合に比べ高いものを、「強早凝麦芽」(強早凝麦芽1および2)として採取し、また正常麦芽の場合に比べ低いものを「弱早凝麦芽」として採取した(いずれも、キリンビール株式会社製の麦芽評価用サンプル)。これらを、前述の「実験方法」の「3)麦芽水抽出高分子画分の調製」の項と同様にして、麦芽サンプルとし、それぞれ「強早凝麦芽1」(強早凝麦芽)、「強早凝麦芽2」(強早凝麦芽)および、「弱早凝麦芽」(弱早凝麦芽)として用意した。
前述の「実験方法」の「3)麦芽水抽出高分子画分の調製」の項と同様にして、麦芽サンプルとして、「正常麦芽1」(正常麦芽)と「早凝性麦芽1」(早凝麦芽)とを用意した。
また発酵試験で実際に麦汁を発酵した場合の麦汁残糖度を基準に、正常麦芽の場合に比べ高いものを、「強早凝麦芽」(強早凝麦芽1および2)として採取し、また正常麦芽の場合に比べ低いものを「弱早凝麦芽」として採取した(いずれも、キリンビール株式会社製の麦芽評価用サンプル)。これらを、前述の「実験方法」の「3)麦芽水抽出高分子画分の調製」の項と同様にして、麦芽サンプルとし、それぞれ「強早凝麦芽1」(強早凝麦芽)、「強早凝麦芽2」(強早凝麦芽)および、「弱早凝麦芽」(弱早凝麦芽)として用意した。
用意した酵母液を使用し、また麦芽水抽出高分子画分として「正常麦芽」、「早凝性麦芽」、に加えて「強早凝麦芽1」、「強早凝麦芽2」、「弱早凝麦芽」とを使用し、さらに測定温度条件として表3に記載の条件のものを使用した以外は、「実施例1」と同様にして試験を行い、各サンプルの場合についての白色度を求めた。
なおここで、使用した測定装置は、懸濁液の温度を一定に保つために内部の温度を22〜40℃に調整できるものであり、±0.5℃で制御が可能なものであった。実験では、キュベット内部の温度が32〜35℃の下記表記載の各温度で一定になるように装置内部の温度をコントロールした。
結果は表3および図7に示される通りであった。
Claims (31)
- 醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速測定方法であって、
(1) 対数増殖後期またはそれ以降の酵母と、被検原料サンプルから調製された水抽出高分子画分とを、バッファー液中で混合して懸濁させ、
(2) 工程(1)で得られた懸濁液に対して可視光を照射して散乱された光を、カメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、懸濁液の白色度を求めることによって、懸濁液における酵母の沈降度合いを測定し、
ここで、測定は、工程(1)で得られた懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御して行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を温度範囲内においてより高い温度に設定する
ことを特徴とする、測定方法。 - 測定において、工程(1)で得られた懸濁液の温度を30〜40℃の範囲内の一定温度に制御する、請求項1に記載の方法。
- 工程(2)において、懸濁液の温度を、30〜35℃の範囲の一定温度に制御して測定を行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を35℃より高い一定の温度に制御して測定を行う、請求項1または2に記載の方法。
- 工程(2)において、懸濁液の温度を、32〜35℃の範囲の一定温度に制御して測定を行い、かつ、早凝活性が強い酵母早期凝集因子の測定を希望する場合には、懸濁液の温度を37〜39℃の範囲の一定温度に制御して測定を行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(2)において、懸濁液の温度を35℃以下の一定温度に制御して行う測定と、懸濁液の温度を35℃より高い一定の温度に制御して行う測定とを同時に行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 一定温度に制御することが、測定中、懸濁液の温度を±0.5℃の温度範囲内に保つことを意味する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(2)において、散乱された光をデジタルカメラ装置で撮影し、得られた画像データを画像解析して、数値化された懸濁液の白色度を得る、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 懸濁液の白色度を、消光時の白色度を0とし、かつ、混合・懸濁直後の酵母が均一分散している懸濁液の白色度を100として、数値化する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(2)において、懸濁液への可視光の照射を、懸濁液の真下に置かれた光源から行い、かつ、懸濁液において散乱された光を、懸濁液に対し水平方向に設置されたカメラ装置から撮影する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(1)において、複数の検体を同時に振盪することができる多検体振盪装置を用いて、複数の検体を同時に混合し懸濁させ、複数の懸濁液を得る、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
- 複数の懸濁液における酵母の沈降度合いを、同時に測定する、請求項10に記載の方法。
- 工程(1)において使用する酵母が、酵母を培養し、対数増殖後期もしくはそれ以降の酵母を回収したものであるか、または、該回収した酵母を更に凍結保存したものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(1)において使用する高分子画分が、被検原料サンプルの水抽出液をエタノール沈殿することによって調製した高分子画分であるか、または、被検原料サンプルの水抽出液を透析、限外濾過、もしくはゲル濾過により分離した高分子画分である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(1)において使用する高分子画分が、被検原料サンプルの糖化液から調製された高分子画分である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(1)において使用する水抽出高分子画分の調製に際して、抽出中に被検原料サンプルを酵素処理する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(1)のバッファー液として、酢酸バッファー−CaCl2を用いる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(1)のバッファー液として、酢酸バッファー−CaCl2に、グルコース、マルトース、マンノースおよびそれらの混合物からなる群より選択される糖類成分を加えたものを使用する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 被検原料サンプルが、大麦、麦芽、または製麦途中の大麦である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
- 被検原料サンプルの水抽出高分子画分が、麦芽粉砕物を30秒間以上、水で抽出した抽出液の高分子画分であるか、または、大麦粉砕物もしくは製麦途中の大麦粉砕物を15分間以上水で抽出した抽出液の高分子画分である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法を用いることを特徴とする、醸造用原料の酵母早期凝集性の迅速判定法。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法を用いて、麦芽原料、製造途中の麦芽、または製造麦芽の早期凝集性を判定することにより、麦芽製造工程を管理することを特徴とする、麦芽の製造方法。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法を用いて、醸造原料の早期凝集性を判定することにより、用いる醸造原料の選択および調整を行うことを特徴とする、発酵アルコール飲料の製造方法。
- 懸濁液中の菌体の沈降を連続的に定量測定するための測定装置であって、
検体としての懸濁液を入れるための複数のキュベットもしくはバイアルを、所定の位置で水平方向に一列に保持し、かつ、必要に応じて、該キュベットもしくはバイアルを振盪してその中の懸濁液を懸濁させる、検体振盪手段と、
該キュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を20〜45℃の範囲内の一定温度に制御する、温度制御手段と、
一列に配置された該キュベットもしくはバイアルを撮影する、カメラ装置と、
該カメラ装置で撮影された画像データを画像解析して、懸濁液の白色度の数値データを得る、データ処理手段と
から構成されてなる、測定装置。 - 温度制御手段が、懸濁液の温度を30〜40℃の範囲内の一定温度に制御するものである、請求項23に記載の測定装置。
- 前記検体振盪手段が、前記温度制御手段を備えてなる、請求項23または24に記載の測定装置。
- 温度制御手段が、複数のキュベットもしくはバイアルの一部の中の懸濁液の温度を35℃以下の一定温度に制御し、かつ、他のキュベットもしくはバイアル中の懸濁液の温度を35℃より高い一定の温度に制御しうるものである、請求項23〜25のいずれか一項に記載の測定装置。
- 検体振盪手段が、キュベットもしくはバイアルの真下に可視光の光源を有してなる、請求項23〜26のいずれか一項に記載の測定装置。
- 検体振盪手段において、キュベットもしくはバイアルを所定の時間振盪させた後、所定の時間静置させ、カメラ装置による撮影が行われるように、検体振盪手段とカメラ装置とを制御する制御手段をさらに含んでなる、請求項23〜27のいずれか一項に記載の測定装置。
- カメラ装置が、デジタルビデオカメラである、請求項23〜28のいずれか一項に記載の測定装置。
- 醸造原料中に含まれる酵母早期凝集因子の迅速測定に用いられる、請求項23〜29のいずれか一項に記載の測定装置。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法を実施する、請求項23〜30のいずれか一項に記載の測定装置。
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CN105200117A (zh) * | 2015-10-15 | 2015-12-30 | 燕京啤酒(桂林漓泉)股份有限公司 | 麦芽中酵母提前絮凝因子的检测方法 |
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