JP2011121100A - ヘリカルギア及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】原材料10の外面に潤滑被膜11を形成する潤滑工程と、原材料10を切断してギア素材20を形成する切断工程と、ギア素材20を、平歯車形状が転写された鍛造ダイスにおける冷間鍛造によって、中心に貫通孔31を有するスパーギア30を成形する鍛造工程と、スパーギア30から、所定のねじれ角のはすば歯車形状が転写された押出ダイスにおける捩り剪断変形によって、中心に貫通孔を有するヘリカルギア40を成形する押出工程とを有している。
【選択図】図2
Description
そこで、かかる問題を解決するために、雌ダイスを螺旋運動させることにより、プレス加工によってヘリカルギアを製造する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、鍛造によって予備成形された初期ヘリカルギアの寸法精度を高めるため、複数の工程(サイジング工程等)による発明が開示されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
(あ)最初に、歯先部が拡径または縮径する変形によって歯形を創成し、初期ヘリカルギアを成形するものであるところ、このときの変形が過酷であるため、ねじれ角(ピッチ円筒ねじれ角、または基礎円筒ねじれ角)を大きくすることができない。
(い)このため、ねじれ角の大きい(例えば、25°以上)ヘリカルギアについては、依然、ホブ加工に頼らざるを得なかった。
(え)特に、かかる金型は、パンチまたはダイスが螺旋運動をするため、それ自体の構造が複雑になり、また、被成形材(中間ヘリカルギア)の歯部を金型の歯部に一致させるための位置合わせ手段を必要とし、トータルの金型コストが上昇していた。
前記鍛造工程において成形されたスパーギアを、所定のねじれ角のはすば歯車形状が転写された押出ダイスにおける捩り剪断変形によって、ヘリカルギアに成形する押出工程と、
を有することを特徴とする。
前記押出工程において、先端部が円筒状または円柱状の押出パンチを前記押出ダイスに挿入することを特徴とする。
(3)前記押出工程において、前記貫通孔にマンドレルを挿入することを特徴とする。
(4)前記押出工程において、前記スパーギアを前記押出ダイスの一方側から前記押出ダイスに挿入し、前記ヘリカルギアを前記押出ダイスの他方側から排出することを特徴とする。
(6)また、基礎円部から歯先部にかけて連続したメタルフローが形成されていることを特徴とする。
(イ)従来のように、軸心に直角な面において歯形を創成しながら、軸心方向には所定のねじれ角を付与しようとすると、過酷な冷間鍛造が必要となり、所望の形状の歯形を形成することが困難であったり、歯部に損傷(亀裂発生や局部変形)が生じたりして、大きなねじれ角のヘリカルギアの成形が不可能であったところ、本発明は、軸心に直角な面における歯形の創成(冷間鍛造)と、軸心を中心にねじれ角を付与するねじり剪断変形(サイジング)と、を別工程に分離し、それぞれに変形を分担しているから、ホブ加工に頼ることなく、大きなねじれ角のヘリカルギアの成形が可能になる。
また、押出工程における加工(サイジング)が軽度であるから、金型にかかる面圧が比較的低く抑えられ、金型寿命が長くなりことによって金型コストがさらに安価になる。
(ホ)押出工程が「しごき変形(サイジング)」であって、スパーギアを挟圧する一対の押出パンチを不要にするから、スパーギアを押出ダイスの一方側から挿入し、ヘリカルギアを押出ダイスの他方側から排出することが可能になる。したがって、ヘリカルギアをノックアウト(挿入側への排出)する必要がないから、複数のスパーギアを積層して、押出パンチを一方向に向かって動かすだけで、複数のヘリカルギアを連続的に形成することが可能になる。
(ト)また、基礎円部から歯先部にかけてメタルフローが連続しているから、優れた疲労強度を有する。
図1〜図4は本発明の実施の形態1に係るヘリカルギアの製造方法を説明するものであって、図1は製造工程を示すフローチャート、図2は製造工程を模式的に示す斜視図および側面図、図3および図4はそれぞれ製造工程に用いられる金型を模式的に示す断面図と側面図である。
図1〜図4において、ヘリカルギアの製造方法100は、丸棒または丸形パイプ(以下、「原材料10」と称す)の外面に潤滑被膜(例えば、リン酸被膜等)11を形成する潤滑工程(S1、図2の(a)参照)と、
原材料10を所定の長さに切断して「ギア素材20」を形成する切断工程(S2、図2の(b)参照)と、
ギア素材20を、平歯車形状が転写された鍛造ダイス(鍛造ダイスに相当する)3dにおける冷間鍛造によって、中心に貫通孔31を有するスパーギア30を成形する鍛造工程(S3、図2の(c)参照)と、
スパーギア30から、所定のねじれ角のはすば歯車形状が転写された押出ダイス(押出ダイスに相当する)4dにおける捩り剪断変形によって、中心に貫通孔41を有するヘリカルギア40を成形する押出工程(S4、図2の(d)参照)と、を有している。図2の(d)において、実線に挟まれた範囲が歯先部43a、破線に挟まれた範囲が歯元部42a、実線と破線に挟まれた範囲が歯側面43b、をそれぞれ模式的に示している。
また、切断工程(S2)における切断要領は剪断加工に限定するものでなく、機械加工(鋸切断)であってもよい。さらに、切断工程の直後に、切断面を平坦にする平押し工程あるいは切断面の外周角面を成形する面取り工程を追加してもよい。
さらに、押出工程の後に、歯形の研磨工程を追加して、さらに歯形精度を高めてもよい。
したがって、鍛造ダイス3dに転写される歯車形状(モジュール、転位係数等)と、押出ダイス4dに転写される歯車形状(ねじれ角を除くモジュール、転位係数等)は、同じになっている。
また、押出工程(S4)において歯部43の平面形状を変える必要がないから、歯部43を押出パンチ4pで押す必要がなく、押出パンチ4pの先端形状を、基礎円筒部42に相当する円形または円環にすることができる。したがって、押出ダイス4dと押出パンチ4pとを相対的に螺旋運動させる必要がなくなり、金型構成が簡素になり、金型コストが安価になっている。
また、押出工程(S4)において、スパーギア30の貫通孔31にマンドレル(図示しない)を挿入して、ヘリカルギア40の貫通孔41をマンドレルによって拘束するようにしてもよい。このとき、貫通孔41の内径を大きくしても、歯部43の歯形形状が正規の形状に維持される。
図5は、本発明の実施の形態1に係るヘリカルギアの製造方法の押出工程における塑性変形を解析するためのモデルであって、(a)はヘリカルギアの加工荷重を示す荷重−ストローク線図、(b)はヘリカルギアへの塑性変形状態を示す側面図、(c)はスパーギアを示す平面図である。
図5において、貫通孔31の内半径がR1、基礎円筒部32の外半径がR2、歯部33の歯先円の外半径がR3のスパーギア30が、ねじれ角θのヘリカルギア40に捩り剪断変形された状態を示している。このとき、ヘリカルギア40の貫通孔41の内半径がR1、基礎円筒部42の外半径がR2、歯部43の歯先円の外半径がR3に維持されている(図5の(c)参照)。
そうすると、ヘリカルギア40は、以下のように第一段階および第二段階によって塑性変形が進行したと判断される。
最初はスパーギア30の歯部33に曲げ塑性変形が生じ、スパーギア素材が押し込まれるに従って塑性変形する範囲が広がっていき、加工荷重が上昇する。この荷重が高まると、スパーギア30全体の捩り剪断荷重より高くなり、スパーギア30の歯部33のみの塑性変形から基礎円筒部32の捩り剪断変形に転移する(図5の(a)参照)。これは、押出工程後のヘリカルギア40を見れば、この痕跡を見ることができる(図5の(b)参照)。
次に、第二段階において、歯部33と基礎円筒部32とが一体となって捩り剪断変形をする。この捩り剪断変形はスパーギア30と押出ダイス(ヘリカルギア金型に同じ)4dが最初にぶつかった部分で、一瞬に剪断変形する。そして、この部分を通過した後は剪断変形を生じない。したがって、この加工工程を通して加工荷重は増加することなく、一定となる(図5の(b)参照)。
すなわち、ヘリカルギア40は鍛造加工によるというよりは、むしろ「捩り剪断変形」によって形成されている。
図5の(b)において、塑性加工する部分は、最初はA面でスタートするが、第二段階でB面となり、このB面は工程に伴い、順次上に移動していくことになる。
次に、捩り剪断変形荷重を、以下の仮定の元に解析する。
(仮定1)ギア部の捩り剪断変形については、ギア歯部の加工荷重を無視する。
(仮定2)捩り剪断変形は、B面で、一瞬に起こり、B面以下では塑性をしない。
(仮定3)押出ダイス4dとヘリカルギア40との摩擦は無視する。
そうすると、基礎円筒部42の捩りモーメントT1は、式1による。
P = ギア数×歯巾×ギアの剪断長さ(長さS)×τ ・・・・・式2
T =P×(R2−R3)/2 ・・・・・式3
そして、式1によって求められた基礎円筒部42の捩りモーメントT1、式3によって求められた歯部43の捩りモーメントTとの大小関係を比較し、後者が前者より大きくなれば(T>T1)、本発明の捩り剪断変形が可能になる。
ギア数×歯巾=0.5・π・R2
最初のギア変形量=5mm、とした場合、
T1−T=(2/3)・π・τ・(1000−125)−2・π・10・5・τ・10
=(582−1000)・π・τ
となる。 このような条件であれば、基礎円筒部42の捩りモーメントT1(式1参照)より歯部43の捩りモーメントT(式3参照)の方が大きくなるから(P>T)、このような加工が成立することがわかる。
図6は、本発明の実施の形態2に係るヘリカルギアを説明するものであって、(a)はスパーギア30のメタルフローを模式的に示す断面斜視図、(b)はヘリカルギア40のメタルフローを模式的に示す断面斜視図である。
図示しないギア素材20は、軸心に直角の面において軸心を中心にした同心円状のメタルフローが形成され、軸心を含む面において軸心に平行なメタルフローが形成されていた。そして、図6の(a)において、スパーギア30には、基礎円筒部32から歯部33に侵入する連続したメタルフローが形成されている。
また、スパーギア30の軸心を含む面(以下、「放射面」と称す)34は、ヘリカルギア40では捩り剪断変形によって曲面44になっているが、かかる曲面44における基礎円筒部42のメタルフローは、基礎円筒部42の外面(歯元円に相当する)に平行した曲線を呈し、曲面44に平行な曲面における歯部43のメタルフローは、歯先円に平行した曲線を呈している。
また、実施の形態1において説明したように、ヘリカルギアの製造方法は、大きなねじれ角を具備するヘリカルギアを、材料歩留まりが高く、金型コストおよび加工コストを安価に抑えて製造することができるものであるから、実施の形態2におけるヘリカルギアは安価に製造されるものである。
3p 鍛造パンチ
4d 押出ダイス
4p 押出パンチ
10 原材料
11 潤滑被膜
20 ギア素材
30 スパーギア
31 貫通孔
32 基礎円筒部
33 歯部
34 放射面
40 ヘリカルギア
41 貫通孔
42 基礎円筒部
43 歯部
44 曲面
100 製造方法
θ ねじれ角
P 剪断力
R1 貫通孔の内半径
R2 基礎円筒部の外半径
R3 歯部の外半径
T 基礎円筒部に作用する捩りモーメント
T1 歯部に作用する捩りモーメント
Claims (6)
- 円筒状または円盤状の素材を、平歯車形状が転写された鍛造ダイスにおける冷間鍛造によって、中心に貫通孔を有するスパーギアに成形する鍛造工程と、
前記鍛造工程において成形されたスパーギアを、所定のねじれ角のはすば歯車形状が転写された押出ダイスにおける捩り剪断変形によって、ヘリカルギアに成形する押出工程と、
を有することを特徴とするヘリカルギアの製造方法。 - 前記鍛造工程において、先端部に平歯車形状が転写された鍛造パンチを前記鍛造ダイスに挿入し、
前記押出工程において、先端部が円筒状または円柱状の押出パンチを前記押出ダイスに挿入することを特徴とするヘリカルギアの製造方法。 - 前記押出工程において、前記貫通孔にマンドレルを挿入することを特徴とする請求項2記載のヘリカルギアの製造方法。
- 前記押出工程において、前記スパーギアを前記押出ダイスの一方側から前記押出ダイスに挿入し、前記ヘリカルギアを前記押出ダイスの他方側から排出することを特徴とするヘリカルギアの製造方法。
- 請求項1〜4の何れかのヘリカルギアの製造方法によって製造されたことを特徴とするヘリカルギア。
- 基礎円部から歯先部にかけて連続したメタルフローが形成されていることを特徴とする請求項5記載のヘリカルギア。
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