JP2011119837A - 固体撮像素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】光検知素子の個数を増やすことなく、あるいは、画素回路の制御および/または画素回路後段での演算処理を複雑化させることなくダイナミックレンジを拡大する。
【解決手段】1個のフォトダイオード10に対して、互いに電気的に分離されたフローティングディフュージョン領域31および32が配置される。転送ゲート21および22は、蓄積領域15と、フローティングディフュージョン領域31および32との間にそれぞれ設けられる。転送ゲート21は、蓄積領域15での最大信号電荷蓄積量をフローティングディフュージョン領域31へ転送するのに必要である完全転送期間にわたってオンする。完全転送期間の経過後には、転送ゲート21がオフするとともに、転送ゲート22が一定期間オンすることによって、当該期間にフォトダイオード10が発生した信号電荷がフローティングディフュージョン領域32へ転送される。
【選択図】図1
【解決手段】1個のフォトダイオード10に対して、互いに電気的に分離されたフローティングディフュージョン領域31および32が配置される。転送ゲート21および22は、蓄積領域15と、フローティングディフュージョン領域31および32との間にそれぞれ設けられる。転送ゲート21は、蓄積領域15での最大信号電荷蓄積量をフローティングディフュージョン領域31へ転送するのに必要である完全転送期間にわたってオンする。完全転送期間の経過後には、転送ゲート21がオフするとともに、転送ゲート22が一定期間オンすることによって、当該期間にフォトダイオード10が発生した信号電荷がフローティングディフュージョン領域32へ転送される。
【選択図】図1
Description
本発明は、固体撮像素子に関し、より特定的には、固体撮像素子のダイナミックレンジ拡大に関するものである。
CCD(Charge-coupled device)やCMOS(Complementary mental-oxide semiconductor)イメージャーなどの固体撮像素子は、ビデオカメラやデジタルカメラを始めとして、今や携帯電話などにも内蔵されるようになり、廉価で消費電力の少ない撮像素子として広く普及している。
しかしながら、固体撮像素子の感知能力は、ヒトの視覚感知と比べて、大きく劣っている。ヒトの視覚では、一視野内に、4〜5桁程度の輝度分布があっても、明るい所と暗い所のコントラストを十分に検知することが可能である。この優れたコントラスト感知能力は、網膜内にある受光細胞が、その光感応特性を個々の細胞毎に調整できる機能によって実現されている。
これに対して、従来の固体撮像素子では、あるタイミングにおいて撮像される視野内に極端な輝度の差があった場合には、視野内の明るい所と暗い所で十分なコントラストを同時に得ることが困難である。
このため、特開2000−340779号公報(特許文献1)には、周辺画素への入射光量に応じて、各画素回路での受光感度範囲をシフト可能な機構を備えることによって、ダイナミックレンジを拡大した半導体撮像素子の構成が記載されている。
また、特開2004−159274号公報(特許文献2)では、画素回路の構成については単純なものとしたままで、長時間の蓄積による低照度信号と、短時間の蓄積による高照度信号とを画素回路からシリーズに取出すことにより、高照度における光電荷の飽和を防止してダイナミックレンジを広げる構成が記載されている。
同様に、特開2004−363666号公報(特許文献3)には、長時間の光電荷蓄積による低照度信号と、短時間の光電荷蓄積による中照度信号と、超短時間の光電荷蓄積による高照度信号とを独立に取出すとともに、後段の信号処理でこれらの信号を組み合わせることによって、広いダイナミックレンジの撮像条件を動的に変更するダイナミックレンジの適応的制御を実現することが記載されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載された構成では、各画素回路において自身の受光量を検知するための第1の光検知素子と、近傍画素での平均受光光量を検知するために他の画素回路との間で抵抗素子を介して互いに接続される第2の光検知素子との2個の光検
知素子を配置する必要が生じる。このため、特にモバイル型機器等への適用で要求される画素回路の小型化が困難になるおそれがある。
知素子を配置する必要が生じる。このため、特にモバイル型機器等への適用で要求される画素回路の小型化が困難になるおそれがある。
また、特許文献2および3では、画素回路は小型化できるものの、光検知素子で発生した信号電荷をフローティングディフュージョン領域へ転送するための転送ゲートの制御、および、画素回路から読出した信号の後段での処理が複雑化するおそれがある。
すなわち、光検知素子を増加させることなく、かつ、画素回路の制御あるいは画素回路後段での演算処理の複雑化をともなうことなくダイナミックレンジの拡大を図ることが困難であった。
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、画素に配置される光検知素子の個数を増やすことなく、あるいは、画素回路の制御および/または画素回路後段での演算処理を複雑化させることなく、ダイナミックレンジを拡大することが可能な固体撮像装置素子の構成を提供することである。
この発明によれば、固体撮像素子は、受光に応じて信号電荷を発生するように構成された光検知素子と、光検知素子によって発生された信号電荷を蓄積するための蓄積領域と、互いに電気的に分離された、それぞれが所定容量を有する第1および第2のフローティングディフュージョン領域と、第1および第2の転送手段と、第1および第2の転送手段を制御するための制御手段とを備える。第1の転送手段は、作動時に蓄積領域の信号電荷を第1のフローティングディフュージョン領域へ転送する一方で、非作動時に転送を遮断する。第2の転送手段は、作動時に蓄積領域の信号電荷を第2のフローティングディフュージョン領域へ転送する一方で、非作動時に転送を遮断する。制御手段は、蓄積領域での最大信号電荷蓄積量を、第1の転送手段によって蓄積領域から第1のフローティングディフュージョン領域へ転送するのに必要である完全転送期間にわたって第1の転送手段を作動させるとともに、完全転送期間の経過後には、第1の転送手段を非作動とする一方で、第1の転送手段の作動期間と連続的に第2の転送手段を第1の期間にわたって作動させる。そして、少なくとも第1のフローティングディフュージョン領域は、最大信号電荷蓄積量を受入れるために必要な容量を有する。
好ましくは、第1および第2のフローティングディフュージョン領域の各々は、最大信号電荷蓄積量を受入れるために必要な容量を有する。さらに好ましくは、第1のフローティングディフュージョン領域の容量は、蓄積領域の容量以上である。あるいは、第1および第2のフローティングディフュージョン領域の各々は、同等の容量を有する。
また好ましくは、第1の期間は、完全転送期間以上の長さを有する。
あるいは好ましくは、第1の転送手段の作動期間は、所定周期で設けられる。固体撮像素子のダイナミックレンジは、第1の転送手段の前回の作動期間の終了時点から今回の作動期間の開始時点までの期間と完全転送期間との和である基準露光期間において光検知素子が最大信号電荷蓄積量に相当する信号電荷量を発生する受光量に従う基準ダイナミックレンジと、第1の期間の長さに応じて変化する拡張ダイナミックレンジとの和で示される。そして、拡張ダイナミックレンジは、第1の期間に対する基準露光期間の比の対数に従う。
あるいは好ましくは、第1の転送手段の作動期間は、所定周期で設けられる。固体撮像素子のダイナミックレンジは、第1の転送手段の前回の作動期間の終了時点から今回の作動期間の開始時点までの期間と完全転送期間との和である基準露光期間において光検知素子が最大信号電荷蓄積量に相当する信号電荷量を発生する受光量に従う基準ダイナミックレンジと、第1の期間の長さに応じて変化する拡張ダイナミックレンジとの和で示される。そして、拡張ダイナミックレンジは、第1の期間に対する基準露光期間の比の対数に従う。
好ましくは、固体撮像素子は、連続的に配置された複数の画素回路をさらに備える。そして、第1および第2のフローティングディフュージョン領域は、複数個ずつの画素回路の間で共有されるように配置される。光検知素子、蓄積領域、第1の転送手段および、第2の転送手段は、複数の画素回路の各々に設けられる。第1のフローティングディフュージョン領域は、複数個の画素回路のそれぞれの第1の転送手段と共通に接続される。第2のフローティングディフュージョン領域は、複数個の画素回路のそれぞれの第2の転送手段と共通に接続される。そして、制御手段は、複数個の画素回路のうちの1つの画素回路において、第1または第2の転送手段が作動している間は、複数個の画素回路のうちの他の各画素回路において、第1および第2の転送手段を非作動とする。
あるいは好ましくは、固体撮像素子は、連続的に配置された複数の画素回路をさらに備える。第1および第2のフローティングディフュージョン領域、ならびに、第1および第2の転送手段は、複数の画素回路のうちの複数個ずつの画素回路の間で共有されるように配置される。各画素回路は、上記の光検知素子および蓄積領域に加えて、第3の転送手段をさらに含む。第3の転送手段は、作動時に蓄積領域の信号電荷を、複数個の画素回路毎に設けられた接続ノードへ転送する一方で、非作動時に転送を遮断する。第1の転送手段は、接続ノードおよび第1のフローティングディフュージョン領域の間に設けられ、作動時に接続ノードへ転送された信号電荷をさらに第1のフローティングディフュージョン領域へ転送する一方で、非作動時に転送を遮断する。第2の転送手段は、接続ノードおよび第2のフローティングディフュージョン領域の間に設けられ、作動時に接続ノードへ転送された信号電荷をさらに第2のフローティングディフュージョン領域へ転送する一方で、非作動時に転送を遮断する。そして、制御手段は、複数個の画素回路のうちの1つの画素回路において、第3の転送手段が作動している間は、複数個の画素回路のうちの他の各画素回路において、第3の転送手段を非作動とする。
この発明によれば、画素に配置される光検知素子の個数を増やすことなく、あるいは、画素回路の制御および/または画素回路後段での演算処理を複雑化させることなく、ダイナミックレンジを拡大することが可能な固体撮像装置素子を提供することができる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では図中のまたは同一部分には同一符号を付してその説明は繰返さないものとする。
図1は、本発明の実施の形態による固体撮像素子の基本構成を説明する回路図である。図1には、1個の画素(光検知素子)に対する信号読出構成が示される。
図1を参照して、本発明の実施の形態による固体撮像素子100は、フォトダイオード10と、蓄積領域15と、転送ゲート21,22と、フローティングディフュージョン領域31,32と、リセットスイッチ35,36と、「増幅器」を構成するトランジスタ41,42と、制御回路50と、演算器60とを備える。
フォトダイオード10は、画素毎に設けられ、接地電位Vssを供給する接地ノード5および転送ゲート21,22の間に電気的に接続される。図1の例では、フォトダイオード10のアノードが接地ノード5と接続され、フォトダイオード10のカソードは、フォトダイオード10によって発生された信号電荷の蓄積領域15を構成する。すなわち、図1の例では、信号電荷はカソード(n型)での多数キャリアである電子(負電荷)となる。フォトダイオード10は、「光検知素子」の一実施例として示される。
蓄積領域15には、寄生容量等により所定の容量Cpdが存在する。一般的な画素構成では、フォトダイオード10の受光面積が、レイアウト制約の範囲内で可能な限り確保されるので、蓄積領域15の容量Cpdがある程度確保される。蓄積領域15に蓄積可能な最大信号電荷量は、容量Cpdに依存して決まる。
フローティングディフュージョン領域31および32は、互いに電気的に分離されている。フローティングディフュージョン領域31および32には、寄生容量等により所定の容量Cfd1およびCfd2がそれぞれ存在する。好ましくは、Cfd1=Cfd2となるように、フローティングディフュージョン領域31および32は設計される。
転送ゲート21は、制御回路50からの転送制御信号TG1によってオンオフを制御されるトランジスタで構成される。転送ゲート21のオン期間では、蓄積領域15からフローティングディフュージョン領域31へ信号電荷が転送される。一方、転送ゲート21のオフ期間では、蓄積領域15からフローティングディフュージョン領域31への信号電荷の転送は停止される。
同様に、転送ゲート22は、制御回路50からの転送制御信号TG2によってオンオフを制御されるトランジスタで構成される。転送ゲート22のオン期間では、蓄積領域15からフローティングディフュージョン領域32へ信号電荷が転送される。一方、転送ゲート22のオフ期間では、蓄積領域15からフローティングディフュージョン領域32への信号電荷の転送は停止される。このように、転送ゲート21,22の各々は、オン時に作動し、オフ時に非作動となる。図1の例では、転送ゲート21,22は、n型トランジスタで構成される。
制御回路50は、各画素での1フレーム期間(撮像周期)や走査タイミングを規定する制御信号群に応じて、各画素での撮像のための転送ゲート21,22の動作期間を制御するように構成される。
リセットスイッチ35は、リセット信号Rfdに応答して、フローティングディフュージョン領域31を、リセット電位としての電源電位Vddを供給する電源ノード6と電気的に接続する。同様に、リセットスイッチ36は、リセット信号Rfdに応答して、フローティングディフュージョン領域32を、リセット電位としての電源電位Vddを供給する電源ノード6と電気的に接続する。
すなわち、リセットスイッチ35および36のオンにそれぞれ応答して、フローティングディフュージョン領域31および32にそれぞれ存在する信号電荷(負電荷)は電源ノード6に吸い寄せられて、フローティングディフュージョン領域31および32にそれぞれ蓄積された信号電荷量はクリア(リセット)されることとなる。
なお、リセット電位としては、電源電位Vddとは異なる電位を適用することも可能である。また、図1では、リセットスイッチ35および36が共通のリセット信号Rfdにより制御される例を示したが、リセットスイッチ35および36のそれぞれのリセット信号を別個に設けてもよい。
トランジスタ41は、電源ノード6および出力ノードNo1の間に接続される。トランジスタ42は、電源ノード6および出力ノードNo2の間に接続される。出力ノードNo1およびNo2は、図示しないデータ線、および、電流源151,152を介して、接地ノード5と電気的に接続可能である。そして、トランジスタ41のゲートは、フローティングディフュージョン領域31と接続され、トランジスタ42のゲートは、フローティングディフュージョン領域32と接続される。
トランジスタ41,42は、いわゆるソースフォロアアンプとして動作し、フローティングディフュージョン領域31,32の電位に応じた電位の信号V1,V2を発生する。この結果、出力ノードNo1,No2を、図示しない選択スイッチを介して、接地ノード5と電気的に接続することによって、フローティングディフュージョン領域31の電位Vfd1(電位信号V1)およびフローティングディフュージョン領域32の電位Vfd2(電位信号V2)を、所望のタイミングで読み出すことが可能である。
なお、本実施の形態において、電源電位Vddおよび接地電位Vssは、Vdd>Vssの関係にあり、かつ、(Vdd−Vss)の電位差により回路動作に必要なバイアスを与えることが可能であれば、それぞれ任意の電位に設定できる。すなわち、接地電位Vssについても、接地電位以外の任意の電位(負電位でも可)に設定することが可能であることを確認的に記載する。
演算器60は、電位信号V1,V2に基づいて、フォトダイオード10(光検知素子)の受光量を示す出力信号Voutを出力する。後述する、受光量とフローティングディフュージョン領域31,32での電位変化量との所定の関係に従って、出力信号Voutは演算される。
次に、図2および図3を用いて、図1に示した固体撮像素子の動作を説明する。
図2を参照して、時刻t0では、転送制御信号TG2が論理ハイレベル(以下、「Hレベル」と表記する)から論理ローレベル(以下、「Lレベル」と表記する)へ変化する。これにより、転送ゲート21,22の両方がオフされた状態となる。
図2を参照して、時刻t0では、転送制御信号TG2が論理ハイレベル(以下、「Hレベル」と表記する)から論理ローレベル(以下、「Lレベル」と表記する)へ変化する。これにより、転送ゲート21,22の両方がオフされた状態となる。
図3(a)に示すように、時刻t0において、前回の撮像(前回フレーム)で発生した信号電荷90は、全てフローティングディフュージョン領域31,32へ転送された状態となる。したがって、蓄積領域15の信号電荷量は零である。一方、時刻t0において、フローティングディフュージョン領域31,32には、点線で示されるように、前回フレームでの受光量に応じた量の信号電荷が蓄積された状態となる。
そして、時刻t0以降では、新たな撮像(今回フレーム)での受光に対応して、フォトダイオード10が信号電荷を発生する。転送ゲート21,22の両方がオフされているので、当該信号電荷は、蓄積領域15へ蓄積される。
再び図2を参照して、時刻t1では、リセット信号Rfdが発生される。これにより、リセットスイッチ35,36(図1)がターンオンされるので、フローティングディフュージョン領域31,32の電位Vfd1およびVfd2が、電源電位Vddにリセットされる。
図3(b)に示すように、時刻t1後は、上記リセット動作により、フローティングディフュージョン領域31,32には信号電荷は存在しないことになる。また、蓄積領域15には、時刻t0〜t1の期間での受光量に応じた量の信号電荷90が発生しているが、転送ゲート21および22の両方がオフしているため、蓄積領域15の信号電荷は、フローティングディフュージョン領域31,32へは転送されない。転送ゲート21,22がオフされているので、蓄積領域15およびフローティングディフュージョン領域31,32の間にはそれぞれポテンシャル障壁が存在するからである。
なお、時刻t0〜t1間の任意のタイミングで、トランジスタ41,42によって、出力ノードNo1,No2に、フローティングディフュージョン領域31,32の蓄積電荷量に応じた電位信号V1,V2を発生することができる。そして、この電位信号V1,V2から、前回フレームにおける受光量を示す出力信号Voutを取り出すことができる。
再び図2を参照して、転送制御信号TGは、時刻t2〜t4の間は、蓄積領域15の信号電荷を読出すためにHレベルに設定される。時刻t2〜t4のうちの、時刻t2〜t3は転送制御信号TG1がHレベルに設定され、時刻t3〜t4では転送制御信号TG2がHレベルに設定される。
時刻t2に、転送制御信号TG1がHレベルに変化するのに応答して、転送ゲート21がオンされる。そして、転送ゲート21は、転送制御信号TG1がLレベルに変化するのに応答して、時刻t3にオフされる。
ここで、転送ゲート21のオン期間、すなわち、時刻t2〜t3の期間長(T0の長さ)の決定手法についてする。
フォトダイオード10が発生する信号電荷量は、プロセスおよび構造に依存する物理定数となる光電変換効率(量子効率)と、受光強度と、光照射時間との積に依存する。一方で、フォトダイオード10の蓄積領域15の容量Cpdによって、蓄積できる最大電荷量(飽和電荷量)が決まる。飽和電荷量を超える信号電荷が発生されても、蓄積領域15には蓄積できないので、その明るさを検知することができなくなる。
したがって、フォトダイオード10のサイズおよび構造から、蓄積領域15に蓄積される信号電荷量の最大値(以下、最大信号電荷蓄積量)Qpdmaxが決まる。そして、少なくとも、フローティングディフュージョン領域31の容量Cfd1は、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを受入れられるように設計される。たとえば、容量Cfd1は、蓄積領域15の容量Cpdよりも大きく設計される。
ここで、転送ゲート21が、一定量の信号電荷を転送するのに要する時間は、転送ゲート21を構成するトランジスタのサイズ(W/L)等の、プロセスおよび構造に依存する物理定数と、蓄積領域15およびフローティングディフュージョン領域31の間の電位差に依存して決まる。したがって、転送ゲート21のオン期間(T0)は、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを転送ゲート21によって転送可能な範囲内で、できるだけ短く設定することが好ましい。一般的には、T0は、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを転送ゲート
21によって転送するための所要時間と同等に設定される。以下では、T0を完全転送期間とも称する。
21によって転送するための所要時間と同等に設定される。以下では、T0を完全転送期間とも称する。
1個のフォトダイオード10に対して、単一の転送ゲートおよびフローティングディフュージョン領域を配置した通常の画素構成(たとえば、後程説明する図5の構成)では、各フレーム毎に転送ゲートを完全転送期間T0だけオンさせるとともに、フローティングディフュージョン領域に転送された信号電荷量に基づいて受光量を検知することが、一般な信号読出である。この場合には、1フレーム期間での露光時間で最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを生じさせる光強度が、コントラストを検知可能な受光範囲の上限に相当する。現状のプロセスおよび構造では、たとえば、30フレーム/秒程度の動画撮影時に、コントラストを検知可能な受光範囲の範囲の広さを示すダイナミックレンジは、60(dB)程度が一般的である。また、この際の完全転送期間T0は、一般的に、数(ns)〜数十(ns)程度である。
これに対して、本実施の形態による固体撮像素子では、時刻t3に転送ゲート21がオフされるのと同時に、転送制御信号TG2がHレベルに変化するのに応答して、転送ゲート22がオンされる。そして、転送ゲート22は、転送制御信号TG2がLレベルに変化するのに応答して、時刻t4にオフされる。これにより、完全転送期間T0の経過後においても、転送ゲート22が時刻t3〜t4の間(以下、延長期間T1とも称する)、転送ゲート22のオンによって、フォトダイオード10によって発生された信号電荷を、フローティングディフュージョン領域32へ転送することができる。なお、転送ゲート21のオン期間(時刻t2〜t3)および転送ゲート22のオン期間(時刻t3〜t4)は、連続的に設けられる。また、延長期間T1は「第1の期間」に対応する。
図3(c)を参照して、時刻t2〜t3では、完全転送期間T0にわたって転送ゲート21がオンされる。これにより、蓄積領域15の信号電荷がフローティングディフュージョン領域31へ転送される。一方、転送ゲート22はオフされているので、フローティングディフュージョン領域32への信号電荷90の転送は遮断される。
図3(d)では、時刻t3時点において、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxが、フローティングディフュージョン領域31へ転送されたケースを想定する。すなわち、図3では、上述した従来の画素構成におけるダイナミックレンジを超えた受光強度に対応する撮像が示される。このとき、時刻t0〜t2の間では、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを超える信号電荷90が発生されるが、蓄積領域15の飽和により、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを超える電荷量を、時刻t2の時点で蓄積領域15に蓄積することができない。
図3(e)に示されるように、時刻t3〜t4では、転送ゲート21がオフされることによって、フローティングディフュージョン領域31への信号電荷90の転送が遮断される一方で、延長期間T1にわたって転送ゲート22がオンされる。
これにより、時刻t3以降にフォトダイオード10が受光に応じて新たに発生した信号電荷90が、フローティングディフュージョン領域32へ転送される。
再び図2を参照して、時刻t2〜t3間では、フローティングディフュージョン領域31に転送された信号電荷90の電荷量に応じて、電位Vfd1が変化する。同様に、時刻t3〜t4間では、フローティングディフュージョン領域32に転送された信号電荷90の電荷量に応じて、電位Vfd2が変化する。時刻t2から(T0+T1)が経過した時刻t4において、転送ゲート22はターンオフされる。
これにより、図3(f)に示されるように、時刻t4以降では、転送ゲート21,22ではポテンシャル障壁が再び上昇するので、蓄積領域15からフローティングディフュージョン領域30への信号電荷の転送は停止される。この状態は、図3(a)に示した時刻t0と同じである。
この時点では、フローティングディフュージョン領域31には、時刻t2時点で蓄積領域15に蓄積されていた信号電荷90が蓄積された状態となる一方で、フローティングディフュージョン領域32には、時刻t3〜t4の期間でフォトダイオード10が発生した信号電荷90が蓄積された状態となる。
なお、時刻t4では、延長期間T1の間に発生された信号電荷90が、フローティングディフュージョン領域30へ完全に転送されているべきである。なぜなら、時刻t4から、次回フレームの露光が開始されるので、蓄積領域15に信号電荷90が残留していると、次回フレームでの受光量検知に誤差が発生するからである。
この観点から、延長期間T1は、少なくとも、蓄積領域15での最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを転送ゲート21によって転送するのに必要な時間、すなわち、完全転送期間T0以上確保することが好ましい(T1≧T0)。
再び図2を参照して、時刻t4以降において、電位Vfd1およびVfd2は、時刻t3および時刻t4での電位にそれぞれ維持される。そして、フローティングディフュージョン領域31,32が次にリセットされるまでの任意のタイミングにおいて、電位Vfd1およびVfd2に基づく電位信号V1,V2を出力ノードNo1,No2から読出すことができる。
上述した、1個のフォトダイオード10に対して、単一の転送ゲートおよびフローティングディフュージョン領域を配置した通常の画素構成における一般的な信号読出では、1回の撮像(1フレーム)に対応する露光時間は、TF1(TF1=TF0+T0)となる。ここで、TF0は、転送ゲート21がターンオフされてから再びターンオンされるまでの期間に対応し、T0は転送ゲート21のオン期間に対応する。
これに対して、本実施の形態による固体撮像素子の各画素では、1回の撮像(1フレーム)に対応する露光時間は、TF1(TF1=TF0+T0、以下では「基準露光時間」とも称する)からTF2(=TF1+T1)に延長される。この延長によるダイナミックレンジの拡大の原理について、図4を用いて説明する。
図4は、本実施の形態による固体撮像素子における画素回路の出力特性を概念的に示すグラフである。
なお、図4の横軸は、フォトダイオード10が受光する光量(あるいは受光強度)を示し、縦軸は、フローティングディフュージョン領域31,32でのリセット時からの電位変化(ΔVfd1,ΔVfd2)を示すものとする。すなわち、ΔVfd1,ΔVfd2は、フローティングディフュージョン領域31,32へ転送された信号電荷量と、容量Cfd1,Cfd2とによって決まる。
図4において、基準露光時間TF1の間にフォトダイオード10が最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを発生するときの光量に対応するL0までの範囲、すなわち、光量Lmn(最小光量値)〜L0の範囲に対応して、フローティングディフュージョン領域31の電位変化ΔVfd1が0〜Vmaxの範囲で生じる。すなわち、光量Lmn(最小光量値)〜L0の範囲の光量(あるいは受光強度)は、電位Vfd1に基づいて検出できる。
電位の可変範囲を示すVmaxは、(Vdd−Vss)から、デバイス製造時の設計値であるフォトダイオード10での電位井戸の深さ(図3(a)での蓄積領域15の電位の深さに相当))を差し引いた電位差に相当する。すなわち、Vmaxは、リセット電位であるVddと、図3(a)での蓄積領域15の電位レベル(信号電荷無し)との電位差に対応する。このように、Vmaxはプロセス上の制約を受けるので、限られた0〜Vmaxの範囲を有効に用いて、受光量を検知する必要がある。
上述した、通常の画素構成における一般的な信号読出では、L0よりも光量が高い範囲、すなわち、L0に対応する光強度よりも受光強度が高い範囲では、蓄積領域15が飽和するため、光量を正しく検出することができない。したがって、光量L0がダイナミックレンジの上限に対応する。
これに対して、本実施の形態による固体撮像素子では、延長期間T1において、フォトダイオード10が発生した信号電荷がフローティングディフュージョン領域32に転送されるので、フォトダイオード10が受光する光量に応じた電位変化ΔVfd2が生じる。したがって、L0よりも高い範囲の光量についても、ΔVfd2に基づいて検知することができる。すなわち、基準露光時間TF1および延長期間T1の比に従って、ΔVfd1によって検知される受光量に対する倍数の形で、ΔVfd2に基づいてL0より高い範囲の光量を検知することができる。
そして、延長期間T1で転送される信号電荷量に応じた電位変化ΔVfd2がVmaxに達するときの光量L1に対応する受光強度が、ダイナミックレンジの上限となる。すなわち、実施の形態による固体撮像素子では、従来と比較して、ΔL(L0〜L1)だけダイナミックレンジが拡大することになる。
電位変化ΔVfd2の特性線(光量に対する傾き)は、延長期間T1の長さに応じて変化する。具体的には、同一光量に対して延長期間T1で発生される信号電荷の総量が小さいほど、フローティングディフュージョン領域32(容量Cfd2)によって検知可能な光量範囲が広くなる。したがって、延長期間T1が短いほど特性線の傾きは小さくなり、反対に、延長期間T1が長いほど特性線の傾きは大きくなる。
また、電位変化ΔVfd2の特性線(光量に対する傾き)は、容量Cfd2によっても変わる。すなわち、延長期間T1において検知可能な光量の範囲は、容量Cfd2によっても変化する。好ましくは、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxをフローティングディフュージョン領域32に受入れることができるように、容量Cfd1と同様に容量Cfd2を設計すれば、延長期間T1での受光量に応じて、信号電荷量が0〜Qpdmaxまでの範囲を用いて、L0よりも高い範囲の光量を検知できる。
なお、光量L0によって延長期間T1で生じる電位変化ΔVfd2は、Cfd1=Cfd2とすると、ΔVfd2=Vmax・(T1/TF1)である。後述のように、(T1/TF1)は、1/102あるいは1/103程度であるので、光量Lmin〜L0の範囲の受光量が、ΔVfd2に与える影響は、無視してもよい。
ここで、Lmn〜L0に対応する基準ダイナミックレンジDRは、下記(1)式で示される。
DR=20×log10(L0/Lmn) ・・・(1)
さらに、延長期間T1でも信号電荷量が0〜Qpdmaxまでの範囲を用いて光量を検知できるようにすれば、ΔLに対応する拡大ダイナミックレンジΔDRは、延長期間T1に対する基準露光時間TF1の比によって、下記(2)式で示される。
さらに、延長期間T1でも信号電荷量が0〜Qpdmaxまでの範囲を用いて光量を検知できるようにすれば、ΔLに対応する拡大ダイナミックレンジΔDRは、延長期間T1に対する基準露光時間TF1の比によって、下記(2)式で示される。
ΔDR=20×log10(TF1/T1) ・・・(2)
このように、延長期間T1に応じて拡大ダイナミックレンジΔDRが決まる。なお、容量Cfd2によって保持できる信号電荷量が最大信号電荷蓄積量Qpdmaxよりも小さい場合には、延長期間T1の間でフローティングディフュージョン領域32が飽和する可能性がある。この際には、飽和するまでの光量範囲のみが検知可能となるので、拡大ダイナミックレンジΔDRは、式(2)よりも小さくなる。
このように、延長期間T1に応じて拡大ダイナミックレンジΔDRが決まる。なお、容量Cfd2によって保持できる信号電荷量が最大信号電荷蓄積量Qpdmaxよりも小さい場合には、延長期間T1の間でフローティングディフュージョン領域32が飽和する可能性がある。この際には、飽和するまでの光量範囲のみが検知可能となるので、拡大ダイナミックレンジΔDRは、式(2)よりも小さくなる。
一方、図4に示されるように、延長期間T1を短くすると、同一の容量Cfd2に対するΔLは拡大する一方で、光量に対するΔVfd2の傾きが小さくなるので、コントラストの検知上不利となる。したがって、所望のダイナミックレンジに対する基準ダイナミックレンジDRの不足分をカバーするように、拡大ダイナミックレンジΔDRを設定することにより、延長期間T1を適切に求めることができる。
たとえば、30フレーム/秒の動画撮影では、1フレーム期間に対応させてTF1=33(ms)程度となる。このときの基準ダイナミックレンジDRは、上述のように、従来の固体撮像素子では60(dB)程度である。一方で、ヒトが同一視野内で検知可能な輝度分布は5桁前後から7桁の範囲(ダイナミックレンジが80〜140(dB))まで及ぶ。したがって、この差を拡大ダイナミックレンジΔDRによって埋めるように、延長期間T1を決めることができる。
一例として、固体撮像素子のダイナミックレンジを140dBとするためには、ΔDR=80(dB)が必要であるから、T1=TF1/104=3.3(μs)と定めることができる。同様に、固体撮像素子のダイナミックレンジを100dBとするためには、ΔDR=40(dB)が必要であるから、T1=TF1/102=330(μs)と定めることができる。現実的には、延長期間T1は、ヒトの視覚と同等のコントラスト検知能力を持たせる観点から、拡大ダイナミックレンジΔDRを加えた固体撮像素子のダイナミックレンジが80(dB)〜140(dB)となる範囲内で設定されることが好ましい。
図4の特性線から理解されるように、本実施の形態による固体撮像素子では、時刻t0〜t3(基準露光時間TF1)での露光によって発生した信号電荷量に基づいて、L0以下の範囲について光量に比例した出力(ΔVfd1)を得ることができる。さらに、延長期間T1(時刻t3〜t4)での露光によって発生した信号電荷量に応じて、L0より高い範囲の光量を検出することができる。すなわち、基準露光時間TF1および延長露光時間(延長期間T1)のそれぞれでは、異なる光量(受光強度)範囲での撮像を行っていることと等価である。
そして、それぞれでの撮像結果を示す電位変化ΔVfd1,ΔVfd2が現れた電位Vfd1,Vfd2に応じた電位信号V1,V2に基づいて、図4の特性に従って、フォトダイオード10が受光した光量(あるいは受光強度)を示す出力信号Voutを、図1に示した演算器60により生成することができる。たとえば、拡張後のダイナミックレンジ全体を表現するためのMビットのデジタル信号(M:整数)のうちの、基準ダイナミックレンジに対応する下位側ビットをΔVfd1に応じて定めるとともに、拡大ダイナミックレンジに対応する上位側ビットをΔVfd2に応じて定めることができる。このように、本実施の形態による固体撮像素子では、広いダイナミックレンジの撮像を実現できる。
さらに、低光量範囲(Lmin〜L1)および高光量範囲(L0〜L1)のそれぞれでの特性(電位/光量)が一様な直線状であるので、後段での演算処理が簡易である他(たとえば、特許文献2および3と比較して)、固定パターンノイズの除去等も簡易かつ効率的に実行できることが期待される。
次に、図5〜7を用いて、フローティングディフュージョン領域31,32を電気的に独立的に設けたことによる効果をさらに説明する。
図5は、本実施の形態に対する比較例として示される固体撮像素子の構成を示す回路図である。
図5を参照して、比較例による固体撮像装置では、フォトダイオード10に対して、単一のフローティングディフュージョン領域30が設けられる点で、図1の構成と異なる。これに対応して、転送ゲート21,22(図1)に代えて、単一の転送ゲート20が配置され、増幅器を構成するトランジスタ41,42(図1)に代えて、単一のトランジスタ40が配置される。すなわち、図5の構成は、上述した通常の画素構成に相当する。
比較例による固体撮像装置では、転送ゲート20のオンオフは、図1の転送制御信号TGによって制御される。したがって、転送ゲート20は、上述した一般的な信号読出とは異なり、完全転送期間T0の経過後にも延長期間T1にわたって継続的にオンされる。
さらに、フローティングディフュージョン領域30の容量Cfdは、完全転送期間T0の経過時に最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを受入れた後に、さらに、延長期間T1においてフォトダイオード10が発生する信号電荷を受入れるための余裕を持つように設計される。たとえば、フローティングディフュージョン領域30の容量Cfdは、蓄積領域15の容量Cpdの2倍程度確保される。
図6を参照して、図2で説明したのと同様に、時刻t0で新たな撮像(今回フレーム)が開始され、時刻t1ではフローティングディフュージョン領域31の電位がリセットされる。そして、時刻t2〜t4の間(完全転送期間T0+延長期間T1)、転送ゲート21がオンされる。
すなわち、比較例による固体撮像素子は、本実施の形態による固体撮像素子と比較して、図1で分割配置されたフローティングディフュージョン領域31,32を、単一のフローティングディフュージョン領域30に統合した点のみが異なり、撮像の原理は、本実施の形態と同様である。すなわち、フローティングディフュージョン領域30は、大容量(Cfd=Cfd1+Cfd2)で設けられる。
この結果、比較例による固体撮像素子における各画素の出力特性は、図7中に点線で示したものとなる。図7の縦軸および横軸は、図4と同様である。
図7を参照して、比較例による固体撮像素子では、Cfdが大きく設計されるので、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを受けたときの、フローティングディフュージョン領域30の電位変化ΔVfd0がV0(<Vmax)に止まる。V0は、フローティングディフュージョン領域30の容量Cfdと、最大信号電荷蓄積量Qpdmaxとを用いて、V0=Qpdmax/Cfdで示される。
さらに、L0に対応する光強度よりも受光強度が高いときには、延長期間T1で発生される信号電荷量に対応して、フローティングディフュージョン領域30の電位変化ΔVfd0がV0よりも大きくなる。すなわち、L0よりも高い範囲の光量に対しても、電位変化ΔVfd0を生じさせることができる。
この結果、延長期間T1を設け、かつ、容量Cfdを最大信号電荷蓄積量Qpdmaxを受入れるための容量値よりも確保することによって、比較例による固体撮像素子によれば、基準ダイナミックレンジDRおよび拡大ダイナミックレンジΔDRにわたって、光量の検出が可能となる。すなわち、比較例による固体撮像素子では、基準露光時間TF1および延長露光時間(延長期間T1)のそれぞれでは、異なる光量(受光強度)範囲での撮像を行っていることと等価であり、かつ、それぞれで発生された信号電荷量を単純に足し合わせることによって、これらの撮像結果を合成した広いダイナミックレンジの撮像を等価的に実現できることになる。なお、図4で説明したのと同様に、光量がL0よりも大きい領域での特性線は、延長時間T1および容量Cfdに変化する。
図7には、さらに、図4に示した、本実施の形態による固体撮像素子における各画素の出力特性が実線で示される。
図7での実線および点線の比較から理解されるように、本実施の形態および比較例の間では、検知可能な光量の範囲(Lmin〜L1)は同一となるが、光量Lmin〜L0およびL0〜L1の範囲の各々において、ΔVfd1,ΔVfd2の変化範囲(0〜Vmax)の方が、ΔVfd0の変化範囲(0〜V0またはV0〜Vmax)よりも大きい。したがって、本実施の形態による固体撮像装置は、図5および図6に示した、フローティングディフュージョン領域が単一である比較例よりも、光量の検知感度が高く、コントラストの検知上有利である。
以上説明したように、本実施の形態による固体撮像素子では、完全転送期間T0に加えて、延長期間T1での露光によって発生した信号電荷を検知することにより、画素に配置される光検知素子の個数を増やすことなく、あるいは、画素回路の制御および/または画素回路後段での演算処理を複雑化させることなく、ダイナミックレンジを拡大することができる。
さらに、基準転送期間T0および延長期間T1のそれぞれで、別個のフローティングディフュージョン領域31,32に信号電荷を転送するので、転送ゲートの複雑な制御シーケンスを必要とすることなく、さらに、比較的簡易な出力特性(図4)に従って、複雑な演算処理を行うことなく、各画素(フォトダイオード10)の受光量を示す出力信号Voutを得ることができる。また、限られた電位変化の範囲(Vmax)を有効に活用して、ダイナミックレンジ内での光量差の検出感度を上昇することができる。そして、基準転送期間T0および延長期間T1を連続して設けることができるので、撮像間隔が延びることを防止でき、高速撮像に有利である。
(固体撮像装置の全体構成例)
次に、本実施の形態による固体撮像装置の全体構成例を説明する。
次に、本実施の形態による固体撮像装置の全体構成例を説明する。
図8を参照して、本実施の形態による固体撮像装置100は、画素回路110が連続的に配置された画素アレイ120と、画素アレイ120の周辺領域130とを含む。
たとえば、画素アレイ120には、第1行から第n行(n:整数)までのn個の行にわたって、画素回路110が行列状に配置される。このような構成では、n個の画素行のうちの1つの画素行が順次選択されて、選択行の各画素回路110が読出対象とされる。
読出対象の画素回路110では、図1および図2に示した転送ゲート21,22のオン期間(読出期間)を設けることによって、1フレーム期間での受光量に応じた出力が読出される。
図9を参照して、図8に示した固体撮像装置100では、第1行から第n行での読出期間をそれぞれ規定する転送制御信号TG(1)〜TG(n)が設けられる。転送制御信号TG(1)〜TG(n)の各々は、対応の画素行に対して、図1および図2での転送制御信号TGとして作用する。転送制御信号TG(1)〜TG(n)の周期Tcは、図2に示した、1回の撮像(1フレーム)に対応する露光時間TF2に相当する。
転送制御信号TG(1)〜TG(n)の各々のHレベル期間は、転送制御信号TG1(1)〜TG1(n)のHレベル期間(基準転送期間T0)と、転送制御信号TG2(1)〜TG2(n)のHレベル期間(延長期間T1)とに分割される。すなわち、転送制御信号TG(1)〜TG(n)と、転送制御信号TG1(1)〜TG1(n)およびTG2(1)〜TG2(n)との間の関係は、図2に示した、転送制御信号TGと、転送制御信号TG1,TG2の関係と同様である。なお、図示を省略しているが、リセット信号Rfdについても、図2に準じた適切なタイミングで、転送制御信号TG(1)〜TG(n)に対応して生成されるものとする。
転送制御信号TG1(1)〜TG1(n)の各々は、対応の画素行の各画素回路110に対して、図1および図2での転送制御信号TG1として作用し、転送制御信号TG2(1)〜TG2(n)の各々は、対応の画素行の各画素回路110に対して、図1および図2での転送制御信号TG2として作用する。
図9に示した転送制御信号TG(1)〜TG(n),TG1(1)〜TG1(n),TG2(1)〜TG2(n)に従って、n個の画素行のうちの1つの画素行を読出対象に順次選択するとともに、読出対象の各画素回路110からの出力信号Voutを得ることが可能となる。
図1に示したように、本実施の形態では、複数のフローティングディフュージョン領域31,32が分割して設けられるため、当該領域の面積が大きくなることが懸念される。したがって、図10に示すように、フローティングディフュージョン領域31,32については、複数個の画素回路110によって共有する構成とすることが好ましい。
図10は、本実施の形態による固体撮像装置における、画素回路およびフローティングディフュージョン領域の配置例を説明する回路図である。
図10を参照して、FDユニット30♯は、k個(k:k≦nの整数)によって共有される。FDユニット30♯は、フローティングディフュージョン領域31,32と、リセットスイッチ35,36とを有する。図9に示した画素行毎の選択を行う構成では、k個の画素回路110は、異なる画素行に属している。
フローティングディフュージョン領域31は、k個の画素回路110の転送ゲート21と電気的に接続される。転送制御信号TG1(1)〜TG1(k)に応答した転送ゲート21の選択的なオンにより、k個のうちの1つの画素回路110の蓄積領域15からフローティングディフュージョン領域31へ、信号電荷を転送できる。
同様に、フローティングディフュージョン領域32は、k個の画素回路110の転送ゲート22と電気的に接続される。転送制御信号TG2(1)〜TG2(k)に応答した転送ゲート22の選択的なオンにより、k個のうちの1つの画素回路110の蓄積領域15からフローティングディフュージョン領域32へ、信号電荷を転送できる。
アンプユニット40♯は、フローティングディフュージョン領域31,32の電位に応じた電位信号V1,V2を発生するためのトランジスタ41,42を有する。アンプユニット40♯は、基本的には、FDユニット30♯に対応して設けられる。
図10の構成では、各画素回路110に配置される転送ゲート21および転送ゲート22が、「第1の転送手段」および「第2の転送手段」にそれぞれ対応する。
このような構成とすることにより、フローティングディフュージョン領域31,32の配置個数を削減することができるので、モバイル機器への搭載に適用するための装置の小型化に有利となる。
また、FDユニット30♯およびアンプユニット40♯については、可能な限り、画素アレイ120を避けて、周辺領域130(図8)に設けることによって、画素アレイ120での各画素回路110の開口部(フォトダイオード10の受光面積)を確保することができる。
あるいは、図11に示すように、各画素回路110の転送ゲートの配置を変更することも可能である。
図11は、本実施の形態による固体撮像装置における、画素回路およびフローティングディフュージョン領域の他の配置例を説明する回路図である。
図11を参照して、各画素回路110には、転送制御信号TG(TG(1)〜TG(n)のいずれか1つ)に応答してオンオフする転送ゲート20が、転送ゲート21,22に代えて設けられる。転送ゲート20は、蓄積領域15と、共通のFDユニット30♯を共有するk個の画素回路110の接続ノードN1との間に電気的に接続される。
転送ゲート21,22は、k個の画素回路によって共有されるFDユニット30♯に配置される。転送ゲート21は、接続ノードN1とフローティングディフュージョン領域31との間に電気的に接続される。同様に、転送ゲート21は、接続ノードN1とフローティングディフュージョン領域32との間に電気的に接続される。
転送ゲート21のオンオフを制御する転送制御信号TG1♯は、図9に示した転送制御信号TG1(1)〜TG1(n)の論理和演算によって生成することができる。同様に、転送ゲート22のオンオフを制御する転送制御信号TG2♯は、図9に示した転送制御信号TG2(1)〜TG2(n)の論理和演算によって生成することができる。
アンプユニット40♯は、図10と同様に、基本的にはFDユニット30♯に対応して設けられる。また、FDユニット30♯およびアンプユニット40♯は、可能な限り、画素アレイ120を避けて、周辺領域130(図8)に設けられる。
図11の構成としても、各画素回路110からフローティングディフュージョン領域31,32への信号電荷の転送を、図10の構成と同様に実行できる。図11の構成では、各画素回路110の転送ゲート20は、「第3の転送手段」に対応し、FDユニット30♯の転送ゲート21および転送ゲート22は、「第1の転送手段」および「第2の転送手段」にそれぞれ対応する。
図11に示す構成例では、固体撮像装置100全体での転送ゲートの個数を削減できるので、装置の小型化に有利である。特に、各画素回路110での転送ゲートの個数が減少するので、画素回路110について、面積の小型化あるいは、開口部(フォトダイオード10の受光面積)の確保を図ることができる。これにより、画像の高精細化や高感度化によるの画質向上を図ることができる。
なお、本実施の形態では、トランジスタについてはすべてn型の導電型の素子を例示したが、トランジスタの導電型については適宜変更してp型素子を用いることも可能である。その際には、転送制御信号の論理レベル(H/L)や、電源ノード6/接地ノード5への接続を適宜反転することによって、同様の画素制御を実現することができる。
また、本実施の形態では、負電荷(電子)を信号電荷とした構成を例示したが、フォトダイオード10のカソードを電源ノード6と電気的に接続することによって、正電荷(正孔)を信号電荷とするような回路構成とすることも可能である。ただし、正電荷(正孔)の移動度は、負電荷(電子)の移動度よりも小さいので、本実施の形態で例示した固体撮像素子は、高速撮像の面で相対的に有利であることが理解される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、光検知素子を各画素回路に有する一般的な固体撮像素子に適用できる。
5 接地ノード、6 電源ノード、10 フォトダイオード(光検知素子)、15 蓄積領域(フォトダイオード)、20,21,22 転送ゲート、30,31,32 フローティングディフュージョン領域、30♯ FDユニット、35,36 リセットスイッチ、40,41,42 トランジスタ(増幅器)、40♯ アンプユニット、50 制御回路、60 演算器、90 信号電荷、100 固体撮像装置、110 画素回路、120 画素アレイ、130 周辺領域、151,152 電流源、Cfd,Cfd1,Cfd2 容量(フローティングディフュージョン領域)、N1 接続ノード、No1,No2 出力ノード、Qpdmax 最大信号電荷蓄積量、Rfd リセット信号、T0 完全転送期間、T1 延長期間、TF1 基準露光時間、TG,TG1,TG2,TG(1)〜TG(n),TG1(1)〜TG1(n),TG2(1)〜TG2(n) 転送制御信号、V1,V2 電位信号、Vdd 電源電位、Vfd0,Vfd1,Vfd2 電位(フローティングディフュージョン領域)、Vout 出力信号、Vss 接地電位、ΔVfd0,ΔVfd1,ΔVfd2 電位変化(フローティングディフュージョン領域)。
Claims (8)
- 受光に応じて信号電荷を発生するように構成された光検知素子と、
前記光検知素子によって発生された信号電荷を蓄積するための蓄積領域と、
互いに電気的に分離された、それぞれが所定容量を有する第1および第2のフローティングディフュージョン領域と、
作動時に前記蓄積領域の信号電荷を前記第1のフローティングディフュージョン領域へ転送する一方で、非作動時に前記転送を遮断するための第1の転送手段と、
作動時に前記蓄積領域の信号電荷を前記第2のフローティングディフュージョン領域へ転送する一方で、非作動時に前記転送を遮断するための第2の転送手段と、
前記第1および第2の転送手段を制御するための制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記蓄積領域での最大信号電荷蓄積量を、前記第1の転送手段によって前記蓄積領域から前記第1のフローティングディフュージョン領域へ転送するのに必要である完全転送期間にわたって前記第1の転送手段を作動させるとともに、前記完全転送期間の経過後には、前記第1の転送手段を非作動とする一方で、前記第1の転送手段の作動期間と連続的に前記第2の転送手段を第1の期間にわたって作動させ、
少なくとも前記第1のフローティングディフュージョン領域は、前記最大信号電荷蓄積量を受入れるために必要な容量を有する、固体撮像素子。 - 前記第1および第2のフローティングディフュージョン領域の各々は、前記最大信号電荷蓄積量を受入れるために必要な容量を有する、請求項1記載の固体撮像素子。
- 前記第1のフローティングディフュージョン領域の容量は、前記蓄積領域の容量以上である、請求項1または2に記載の固体撮像素子。
- 前記第1および第2のフローティングディフュージョン領域の各々は、同等の容量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
- 前記第1の期間は、前記完全転送期間以上の長さを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
- 前記第1の転送手段の作動期間は、所定周期で設けられ、
前記固体撮像素子のダイナミックレンジは、前記第1の転送手段の前回の作動期間の終了時点から今回の作動期間の開始時点までの期間と前記完全転送期間との和である基準露光期間において前記光検知素子が前記最大信号電荷蓄積量に相当する信号電荷量を発生する受光量に従う基準ダイナミックレンジと、前記第1の期間の長さに応じて変化する拡張ダイナミックレンジとの和で示され、
前記拡張ダイナミックレンジは、前記第1の期間に対する前記基準露光期間の比の対数に従う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体撮像素子。 - 前記固体撮像素子は、
連続的に配置された複数の画素回路をさらに備え、
前記第1および第2のフローティングディフュージョン領域は、複数個ずつの前記画素回路の間で共有されるように配置され、
前記光検知素子、前記蓄積領域、前記第1の転送手段および、前記第2の転送手段は、前記複数の画素回路の各々に設けられ、
前記第1のフローティングディフュージョン領域は、前記複数個の前記画素回路のそれぞれの前記第1の転送手段と共通に接続され、
前記第2のフローティングディフュージョン領域は、前記複数個の前記画素回路のそれぞれの前記第2の転送手段と共通に接続され、
前記制御手段は、前記複数個の画素回路のうちの1つの画素回路において、前記第1または前記第2の転送手段が作動している間は、前記複数個の画素回路のうちの他の各画素回路において、前記第1および第2の転送手段を非作動とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体撮像素子。 - 前記固体撮像素子は、
連続的に配置された複数の画素回路をさらに備え、
前記第1および第2のフローティングディフュージョン領域、ならびに、前記第1および第2の転送手段は、前記複数の画素回路のうちの複数個ずつの前記画素回路の間で共有されるように配置され、
各前記画素回路は、
前記光検知素子および前記蓄積領域と、
作動時に前記蓄積領域の信号電荷を、前記複数個の画素回路毎に設けられた接続ノードへ転送する一方で、非作動時に前記転送を遮断するための第3の転送手段とを含み、
前記第1の転送手段は、前記接続ノードおよび前記第1のフローティングディフュージョン領域の間に設けられ、作動時に前記接続ノードへ転送された信号電荷をさらに前記第1のフローティングディフュージョン領域へ転送する一方で、前記非作動時に前記転送を遮断し、
前記第2の転送手段は、前記接続ノードおよび前記第2のフローティングディフュージョン領域の間に設けられ、作動時に前記接続ノードへ転送された信号電荷をさらに前記第2のフローティングディフュージョン領域へ転送する一方で、前記非作動時に前記転送を遮断し、
前記制御手段は、前記複数個の画素回路のうちの1つの画素回路において、前記第3の転送手段が作動している間は、前記複数個の画素回路のうちの他の各画素回路において、前記第3の転送手段を非作動とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
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