図を参照することにより、本発明に係る加熱条件決定方法が適用されるリフロー装置10の構成及び動作について説明する。以下の説明では、基板を搬送するコンベアはx−y面内に配置されるとし、基板の搬送方向をx方向とし、高さ方向をz方向とする。
図1に示すリフロー装置10は、基板を搬送して電子部品が実装された部品実装基板を生産する実装ラインに備えられる装置の1つである。実装ラインは、リフロー装置10の他に、印刷装置、部品実装装置等を備え(図示せず)、印刷装置、部品実装装置、リフロー装置の順にプリント配線基板を搬送する。搬送中に、印刷装置によってクリームはんだがプリント配線板に塗布され、部品実装装置によって電子部品がはんだを介して載置される。
リフロー装置10には、クリームはんだが塗布されたプリント配線板に電子部品が載置された基板(以下、「基板」という。)が搬入される。リフロー装置10は、基板を加熱することによってはんだを溶融した後、その基板を冷却することによってはんだを凝固させる。このように、リフロー装置10で基板を加熱・冷却することによって、電子部品はプリント配線板にはんだ付けされる。
なお、プリント配線板に載置される電子部品は、コンデンサ、抵抗、IC(Integrated Circuit)パッケージ等を含む。また、クリームはんだは、リフロー装置によってプリント配線板に電子部品を接合するための接合材料の一例であり、その他の金属等であってもよい。
リフロー装置10は、機種変更によって異なる種類の部品実装基板を生産する実装ラインに備えられるリフロー装置の一例であって、リフロー装置10の構成の概略を図1の平面図に示す。リフロー装置10は、図1に示すように、x方向に基板を搬送するコンベア12と、コンベア12が通過する中空を内部に有する炉体16とを備える。炉体16内の中空は、内部の温度環境によって、x方向に順に、予備加熱ゾーン18と、本加熱ゾーン20と、冷却ゾーン22とに区分される。
予備加熱ゾーン18は、フラックスを活性化するとともに、急激な加熱による基板の熱衝撃を緩和するためのゾーンであり、多くの場合、はんだの融点より低い温度環境が形成される。本加熱ゾーン20は、はんだを十分に溶融させるためのゾーンであり、はんだの融点以上の温度環境が形成される。冷却ゾーン22は、はんだを凝固させるために適した低温の温度環境が形成される。
予備加熱ゾーン18と本加熱ゾーン20とはさらに、x方向に複数の加熱ゾーンに区分される。実施の形態では、図1に示すように、予備加熱ゾーン18は、6つの予備加熱ゾーン(PH1〜6)に区分され、本加熱ゾーン20は、2つの本加熱ゾーン(REF1及び2)に区分される。各加熱ゾーンを形成する炉体16の内壁には、その上下それぞれに加熱ユニット(図示せず)が設けられる。加熱ユニットは、例えばヒータとファンと温度センサとを備え、制御装置23による制御の下、各加熱ゾーンがオペレータにより設定された温度環境となるように加熱する。なお、加熱ユニットは、各加熱ゾーンの温度環境を制御できれば、どのような形態であってもよい。
コンベア12は、制御装置23による制御の下、オペレータにより設定された搬送速度で第1基板24又は第2基板26を搬送する。
第1基板24と第2基板26とは、種類が異なる基板であって、プリント配線板の寸法、厚み及び材料、プリント配線板に実装される電子部品の種類、数量及び配置のされ方等が異なる基板である。具体例を挙げると、第1基板24は、両面実装基板を製造する場合の表面のみに部品が実装された基板であり、第2基板26は、第1基板24の裏面に部品が実装された基板である。
種類が異なる基板24,26では、同一の温度環境下での温度上昇の困難さ(以下、「加熱特性」という。)が異なる。しかし、機種を切り替える際に、加熱条件を変更すると、設定変更の操作時間だけでなく、設定した加熱条件に従ってリフロー装置10が収束するまでの待ち時間が発生し、生産性が低下する。特に、温度設定を変更すると、待ち時間は長くなる。そのため、リフロー装置10を用いて異なる種類の基板を効率的に生産するには、機種を切り替える際に、できる限り加熱条件を変更することなく、特に温度設定を変更することなく、加熱することが望ましい。
ここで、このように効率的な生産を可能にする加熱条件の決定方法について説明するに前に、同一の温度設定であっても、加熱特性が異なる第1及び第2基板24,26の温度プロファイルを制御できる原理について説明する。
第1基板24は、コンベア12によって第1搬送速度V1で搬送される間に、第1予備加熱ゾーンPH1から第6予備加熱ゾーンPH6までの予備加熱ゾーン18と、第1本加熱ゾーンREF1から第2本加熱ゾーンREF2までの本加熱ゾーン20とを順に通過する。加熱ゾーンPH1〜PH6、REF1及びREF2のそれぞれを通過するために要する時間は、第1搬送速度V1によって決まる。そのため、第1基板24は、設定に従って温度環境が制御された各加熱ゾーンを、その加熱特性に応じた時間を掛けて通過することになる。そのため、一定の温度環境下を通過する場合であっても、第1搬送速度V1を適切に決定することによって、第1基板24について所望の温度プロファイルを実現することができる。
第2基板26についても、一定の温度環境下を通過する場合であっても、第1基板24の場合と同様に第2搬送速度V2を適切に決定することによって、第2基板26について所望の温度プロファイルを実現することができる。
このように、リフロー装置10では、リフロー装置10の各加熱ゾーンPH1〜PH6、REF1及びREF2の温度設定と、第1搬送速度V1と、第2搬送速度V2とを適切に決定することによって、基板24,26に応じた温度プロファイルを実現することができる。その結果、機種を切り替える際に、温度設定を変更することなく、第1基板24と第2基板26とをはんだ付けすることができる。
本発明に係る加熱条件決定方法は、これまで説明したような異なる種類の基板を生産するリフロー装置10に適用できる加熱条件を決定する方法である。この加熱条件は、各加熱ゾーンの温度設定と、第1搬送速度V1と、第2搬送速度V2とを含む。本発明に係る加熱条件決定方法は、コンピュータ等の情報処理装置(図示せず)によって、オペレータの入力した情報及び指示に基づいて実行される。実施の形態では、加熱条件決定方法を実行する情報処理装置は、リフロー装置10とは別に設けられる。
ここから、図2を参照して、本発明に係る加熱条件決定方法の概略を説明する。図2は、本発明に係る加熱条件決定方法の全体的なフローチャートである。
情報処理装置は、第1基板24及び第2基板26それぞれの加熱特性値を示す情報(加熱特性情報)を取得する(S1)。
加熱特性値とは、基板の局所的な上記加熱特性を示す指標、すなわち、基板の局所的な昇温の困難さを示す指標である。加熱特性値は、第1及び第2基板24,26のそれぞれの温度測定点ごとに算出され、各温度測定点に熱電対を取り付けた試験用基板28,30(図3及び図4参照)を実際にリフロー装置10で加熱することによって測定される各温度測定点の温度変化に基づいて算出される。
ここで、基板24,26の加熱特性値を算出する方法の詳細について一例を挙げて説明する。
まず、リフロー装置10によって加熱・冷却する基板24,26のそれぞれについて試験用基板28,30を準備する(準備ステップ)。第1基板24の試験用基板である第1試験用基板28の平面図と側面図のそれぞれを図3(a)と(b)に示す。同図に示すように、第1試験用基板28には複数の熱電対が取り付けられる。
熱電対が取り付けられる箇所(温度測定点)は、当該基板において特徴的な温度プロファイルを示すと予想される箇所、当該基板の中で温度プロファイルに特に注意を要する箇所等に適宜設定される。温度測定点は、基板内の加熱特性値の分布を算出する数値計算結果、技術者の経験等に基づいて決定される。
図3に示す第1試験用基板28では、3箇所の温度測定点TP1a〜TP1cが設定されている。第1温度測定点TP1aは、第1基板24の中で最も容易に昇温すると予測される箇所として、第1基板24の端部近傍に設定される。第2温度測定点TP1bは、第1基板24の中で最も昇温し難いと予測される箇所として、第1基板24に載置される寸法が大きい部品のリード部分に設定される。第3温度測定点TP1cは、第1基板24の中で温度プロファイルに特に注意を要する箇所として、第1基板24に載置される部品の中で耐熱温度が低い部品に設定される。
第2基板26の試験用基板である第2試験用基板30の平面図と側面図のそれぞれを図4(a)と(b)に示す。同図に示すように、第2基板26についても、第1基板24と同様に、第1温度測定点TP2aは、第2基板26の中で最も容易に昇温すると予測される箇所に設定され、第2温度測定点TP2bは、第2基板26の中で最も昇温し難いと予測される箇所に設定され、第3温度測定点TP2cは、耐熱温度が低い部品に設定される。
第1試験用基板28と第2試験用基板30が準備されると、両試験用基板28,30は実際にリフロー装置10で搬送され、各試験用基板28,30の温度プロファイルが測定される(測定ステップ)。試験用基板28,30を搬送する際のリフロー装置10の加熱条件は、オペレータによって適宜設定されてよい。実測した温度プロファイルを次の式(1)に従って計算処理することによって、各温度測定点TP1a〜TP1c及びTP2a〜TP2cにつき加熱特性値が算出される(算出ステップ)。
m:加熱特性値
T
a:加熱ゾーンにおける温度設定
T
int:加熱ゾーンにおける温度測定点の初期温度
T
s:到達温度
t:加熱ゾーンでの加熱時間
なお、本願出願人らは、上記加熱特性値を利用した熱解析方法等に関する発明につき特許権の設定登録をしており(特許第4226855号公報参照)、上記加熱特性値mに関する考え方は、従来提案された技術である。
このように、実施の形態では、第1基板24の加熱特性値は、各温度測定点TP1a〜TP1cについて算出される加熱特性値である。また、第2基板26の加熱特性値は、各温度測定点TP2a〜TP2cについて算出される加熱特性値である。
なお、加熱特性情報の取得処理(S1)において、加熱特性情報は、図3に示すような試験用基板28,30の測定結果に基づいて情報処理装置自身が算出することによって取得されてもよく、また、試験用基板28,30の測定結果に基づいて又はシミュレーション解析によって、別の情報処理装置で算出された熱特性値情報をオペレータが入力する等によって取得されてもよい。
次に、情報処理装置は、第1及び第2基板24,26それぞれの温度プロファイル条件を示す情報(温度プロファイル条件情報)を取得する(S2)。
温度プロファイル条件とは、基板を損傷することなく、好適なはんだ接合を可能にする温度プロファイルを実現するための条件である。温度プロファイル条件は、はんだの性質に応じて要求される条件を含む。また、温度プロファイル条件は、細分化された加熱ゾーンの数に応じた多数の要素を含む温度設定を1つに決定するために必要となる条件をも含む。
はんだの性質に応じて要求される条件の例として、予備加熱ゾーン18において、(A1)最も昇温し易い箇所の温度が予備加熱終了時に予熱最高温度以下であること、(A2)最も昇温し易い箇所の温度が予熱高温域となる時間が予熱制約時間以下であること等を挙げることができる。同条件の例として、本加熱ゾーンにおいて、(B1)最も昇温し易い箇所の温度が本加熱最高温度以下であること、(B2)最も昇温し難い箇所ではんだ溶融時間を確保できること等を含む。
はんだの性質に応じて要求される条件の具体例を図5に示す。図5は、はんだの性質に応じて要求される温度プロファイル条件とともに、その条件を満たす第1基板24の温度プロファイルの一例を示しており、横軸は経過時間(又は通過ゾーン)、縦軸は温度を示す。図5に示す例では、予熱最高温度を180℃、予熱高温域を150℃〜180℃、予熱制約時間を120秒、本加熱最高温度を240℃、はんだ溶融時間を220℃〜240℃の範囲となる時間で40秒としている。
また、温度設定を1つに決定するために必要となる条件の例として、予備加熱ゾーン18において、(A3)最も昇温し易い箇所と、最も昇温し難い箇所とで、予備加熱終了時の温度差が最小となること、(A4)第1〜第6予備加熱ゾーンPH1〜6の温度設定のそれぞれが、予熱最高温度(℃)の近傍値であること、(A5)第1〜第6予備加熱ゾーンPH1〜6の温度設定の分散が閾値より小さくなること等を挙げることができる。
図2に戻り、さらに、情報処理装置は、搬送最低速度Vminを示す情報(搬送最低速度情報)を取得する(S3)。
搬送最低速度Vminとは、許容できる第1及び第2搬送速度V1,V2の最低速度である。搬送最低速度Vminを算出する方法の一例について、図6を参照して説明する。
図6は、搬送方向の基板長さをLとし、L/2の基板間隔で基板を順次搬送した場合の、搬送速度(m/min)と生産タクト(sec)との関係を示す。生産する基板長さLが200(mm)であり、搬送する際の基板間隔が100(mm)であるとすると、当該基板の搬送速度と生産タクトとの関係は、図6の三角でマークした折れ線に従う。目標生産タクトが例えば25(sec)と決定されると、搬送最低速度Vminは、三角でマークした折れ線において目標生産タクトに対応する搬送速度として算出される。このように、基板長さと、基板間隔と、目標生産タクトとを決定することによって、搬送最低速度Vminを算出することができる。
なお、搬送最低速度情報の取得処理(S3)において、搬送最低速度情報は、情報処理装置自身が搬送最低速度を算出することによって取得されてもよく、また、オペレータの入力等によって取得されてもよい。
最後に、情報処理装置は、先に実行された各処理(S1〜S3)で取得した加熱特性情報と、温度プロファイル条件情報と、搬送最低速度情報とを利用して、加熱条件を決定する加熱条件決定処理を実行する(S4)。
加熱条件決定処理(S4)では、加熱特性情報の取得処理(S1)において取得した情報に含まれる加熱特性値と、搬送最低速度情報の取得処理(S3)において取得した情報に含まれる搬送最低速度とを利用して、第1及び第2基板24,26をリフロー装置10で加熱した場合の基板の温度プロファイルをシミュレートする。加熱条件を変えたシミュレートを繰り返すことによって、温度プロファイル条件の取得処理(S2)において取得した情報が示す温度プロファイル条件に適合する加熱条件が探索される。探索した結果、当該温度プロファイル条件に適合する加熱条件(適合加熱条件)を見つけることができた場合に、当該適合加熱条件が第1及び第2基板24,26に適用すべき加熱条件として決定され、当該加熱条件を示す情報が出力される。
加熱条件決定処理(S4)の概略について図7を参照して説明する。図7は、加熱条件決定処理(S4)の詳細を示すフローチャートである。図7の詳細は後に説明するため、ここでは、本発明に特徴的な加熱条件決定処理(S4)の概略について説明する。
加熱条件決定処理(S4)では、まず、第1搬送速度V1と第2搬送速度V2とを等しい速度として仮想基板について加熱条件が探索される(S11。第1探索ステップに相当する。)。この探索処理(S11)では、第1搬送速度V1と第2搬送速度V2とが等しく搬送最低速度Vminであるとして、第1基板24及び第2基板26の温度プロファイル条件に適合する温度設定が探索される。
ここで、「仮想基板」とは、搬送する基板24,26の加熱特性値を包含する加熱特性値を有する仮想的な基板をいう。第1および第2基板24,26の仮想基板の加熱特性の例を図8に示す。同図に示すように、仮想基板の加熱特性値の最大値TP3maxは、第1基板24の加熱特性値の最大値TP1bと第2基板26の加熱特性値の最大値TP2bとの大きい方である第1基板24の加熱特性値の最大値TP1bと等しい。また、仮想基板の加熱特性値の最小値TP3minは、第1基板24の加熱特性値の最小値TP1aと第2基板26の加熱特性値の最小値TP2aとの小さい方である第2基板26の加熱特性値の最小値TP2aと等しい。
なお、仮想基板の加熱特性値の最大値TP3maxは、搬送する各基板の加熱特性値の最大値の中の最大値TP1b以上であればよい。また、仮想基板の加熱特性値の最小値TP3minは、搬送する各基板の加熱特性値の最小値の中の最小値TP2a以下であればよい。
搬送最低速度Vminとして仮想基板の適合加熱条件を見つけることができた場合(S12でYes)、好ましくは、搬送速度を速くしながら(S14)、温度プロファイル条件に適合する温度設定を探索する(S15)。できるだけ速い搬送速度の加熱条件を見つけることによって、生産性を向上させることが可能になる。
このようにして、仮想基板について適合加熱条件を見つけることができた場合(S12でYes、又はS16でYes)、その適合加熱条件(S13において保持された加熱条件)を第1基板24及び第2基板26に適用すべき加熱条件として決定する(S17。加熱条件決定ステップに相当する。)。この場合、第1搬送速度V1と第2搬送速度V2は、等しい。また、その速度(V1=V2)は、搬送最低速度Vmin又はそれ以上の速度である。
仮想基板について搬送最低速度Vminとした適合加熱条件を見つけることができなかった場合(S12でNo)、第1基板24及び第2基板26の加熱特性値のうち、最大の加熱特性値を含む第1基板24につき、加熱条件が探索される(S18。第2探索ステップに相当する。)。この探索処理(S18)では、第1搬送速度V1を搬送最低速度Vminとして、第1基板24の温度プロファイル条件に適合する温度設定が探索される。
第1搬送速度V1を搬送最低速度Vminという遅い搬送速度にすることによって、第1基板24の温度プロファイル条件に適合する温度設定の中でも低温の温度設定を見つけることができる。
この温度設定は、第1基板24の後に生産される、第2基板26にも適用される。第1基板24は、両基板24,26の中で最大の加熱特性値を含むので、第2基板26は、第1基板24よりも全体的に温度上昇し易い基板と言える。そのため、仮想基板において適合加熱条件を見つけられない場合には(S12でNo)、第2搬送速度V2を第1搬送速度V1よりも速くする必要があるが、第2搬送速度V2の上限は、コンベア12の搬送能力等によって制限される。
第1基板24の温度プロファイル条件を満たす温度設定のうち、低温の温度設定をまず見つけることによって、第1基板24及び第2基板26の温度プロファイル条件を満たす第2搬送速度V2を可能な限り低速にすることができ、第2搬送速度V2をその上限以下にできる可能性が高くなる。
従って、第1基板24の温度プロファイル条件を満たす低温の温度設定をまず見つけることによって、リフロー装置10の性能ないし仕様上の制限下で、第1基板24及び第2基板26を同一の温度設定で加熱できる加熱条件を見つけ出すことが容易になる。
これまで説明したように第1基板24につき加熱条件が探索された結果(S18)、第1基板24の温度プロファイル条件を満たす温度設定が見つけられた場合(S19でYes)、その温度設定の下で、第2基板26の温度プロファイル条件を満たす第2搬送速度V2が探索される(S20。第3探索ステップに相当する。)。第2搬送速度V2の探索の結果、第2基板26の温度プロファイル条件を満たす第2搬送速度V2が見つけられた場合(S21でYes)、探索処理(S20)によって見つけられた第2搬送速度V2と、搬送最低速度Vminである第1搬送速度V1と、第1基板24の探索処理(S18)によって見つけられた温度設定とを内容に含む加熱条件を決定する(S17)。
最後に、決定された加熱条件を示す加熱条件情報が出力される(S23)。これにより、加熱条件決定処理(図2のS4)は終了する。
なお、加熱条件決定方法は、出力された加熱条件情報に基づいて、リフロー装置10により第1及び第2基板24,26を共通の温度設定で加熱できるか否かをオペレータに報知する処理を含んでもよい。この報知処理は、具体的には、情報処理装置が、出力された加熱条件情報に基づいて、例えば当該装置に接続されたモニタ、スピーカ等の1つ以上を含む報知手段を制御し、加熱できる場合に適切な加熱条件をオペレータに提示し、加熱できない場合にはその旨をオペレータに報知する(報知ステップ)。
本発明に係る加熱条件決定方法に含まれる加熱条件決定処理(図2のS4)は、これまで説明した一連の処理により実行でき、各処理の詳細、特に探索処理(図7のS11,S15,S18及びS20)の詳細は、これまで説明した本発明の趣旨に矛盾しない限り、いかなる方法であってもよい。
加熱条件決定処理(図2のS4)の詳細な例の1つについて、ここから図7に加えて、図9及び図10を参照して説明する。図9は、搬送速度一定とする場合の加熱条件探索処理(図7のS12、S15及びS18)の詳細を示すフローチャートである。図10は、温度設定一定とする場合の加熱条件探索処理(図7のS20)の詳細を示すフローチャートである。
加熱条件決定処理(図2のS4)において情報処理装置は、まず、仮想基板につき、搬送速度を搬送最低速度Vminとして、第1基板24及び第2基板26の温度プロファイル条件に適合する加熱条件を探索する(S11)。
仮想基板の加熱条件探索処理(S11)では、具体的には、搬送速度を一定として、第1基板24及び第2基板26の温度プロファイル条件に適合する温度設定が探索される。仮想基板の加熱条件探索処理(S11)の詳細の一例を、図9のフローチャートを参照して説明する。
情報処理装置は、まず、予め定められた温度設定の初期条件を取得し(S31)、取得した当該温度設定と搬送最低速度Vminとを利用して仮想基板の温度プロファイルをシミュレートする(S32)。シミュレート(S32)後に、情報処理装置は、シミュレートした結果が第1基板24及び第2基板26の温度プロファイル条件を満たすか否かを判断する(S33)。
当該温度プロファイル条件を満たさないと判断された場合(S33でNo)、情報処理装置はさらに、温度設定を変更できるか否かを判断する(S34)。
温度設定を変更できるか否かは、例えば、リフロー装置10において設定できる各加熱ゾーンの最高温度及び最低温度を基準に決定される。温度設定を変更した場合に、各加熱ゾーンの温度設定が、当該最低温度以上であってかつ当該最高温度以下であるとき、温度設定を変更できると判断され(S34でYes)、当該最高温度より高いか又は当該最低温度より低い温度設定を含むとき、温度設定を変更できないと判断される(S34でNo)。
温度設定を変更できると判断されたとき(S34でYes)、情報処理装置は、温度設定を変更して(S35)、シミュレーション(S32)を再度実行する。
シミュレートした結果が第1基板24及び第2基板26の温度プロファイル条件を満たすと判断された場合には(S33でYes)、情報処理装置は、加熱条件を示す情報を探索結果情報として出力する(S36)。ここで出力される情報が示す加熱条件は、当該判断の基になったシミュレーション(S32)に利用した温度設定と、第1搬送速度V1及び第2搬送速度V2を搬送最低速度Vminとすることを含む。
また、温度設定を変更できないと判断されたとき(S34でNo)、情報処理装置は、仮想基板の加熱条件を決定できないことを示す情報を探索結果情報として出力する(S36)。
これによって、仮想基板の加熱条件探索処理(S11)は終了する。ここから、図7に戻って、加熱条件決定処理(図2のS4)の詳細の続きを説明する。
情報処理装置は、適合加熱条件の有無を判断する(S12)。具体的には、仮想基板の加熱条件探索処理(S11)において出力される探索結果情報が加熱条件を示す情報である場合、情報処理装置は、適合加熱条件がある(S12でYes)と判断する。これに対して、探索結果情報が加熱条件を決定できないことを示す情報である場合、情報処理装置は、適合加熱条件がない(S12でNo)と判断する。
適合加熱条件があると判断された場合に(S12でYes)、情報処理装置は、探索結果情報が加熱条件を示す情報を自身が備える記憶手段に保持する(S13)。続けて、情報処理装置は、より速い速度に搬送速度を変更して(S14)、変更後の搬送速度を利用して仮想基板につき加熱条件を探索する(S15)。この加熱条件探索処理(S15)は、加熱条件探索処理(S11)と同様である。ここで出力される情報が示す加熱条件は、当該判断の基になったシミュレーション(S32)に利用した温度設定及び第1搬送速度V1を含む。
さらに、情報処理装置は、適合加熱条件の有無を判断する(S16)。適合加熱条件の判断処理(S16)の詳細は、適合加熱条件の判断処理(S12)と同様である。適合加熱条件があると判断された場合(S16でYes)、情報処理装置は、上記各処理(S13〜S16)を繰り返す。適合加熱条件がないと判断された場合(S16でNo)、情報処理装置は、加熱条件保持処理(S13)において保持した加熱条件を第1基板24及び第2基板26に適用すべき加熱条件として決定する(S17)。
適合加熱条件がないと判断された場合に(S12でNo)、情報処理装置は、第1基板24につき、搬送速度を搬送最低速度Vminとして、第1基板24の温度プロファイル条件に適合する加熱条件を探索する(S18)。第1基板24の加熱条件探索処理(S18)は、仮想基板の加熱条件探索処理(S11)と同様に搬送速度を所与として加熱条件を探索する処理であり、各処理(S31〜S36)の対象を仮想基板から第1基板24に変更したものである。また、ここで出力される情報が示す加熱条件は、当該判断の基になったシミュレーション(S32)に利用した温度設定と、第1搬送速度V1を搬送最低速度Vminとすることを含む。
第1基板24の加熱条件探索処理(S18)の後に、情報処理装置は、適合加熱条件の有無を判断する(S19)。適合加熱条件の判断処理(S19)の詳細は、適合加熱条件の判断処理(S12)と同様である。適合加熱条件があると判断された場合に(S19でYes)、情報処理装置は、第1基板24の加熱条件探索処理(S18)において見つけられた温度設定を利用して、第2基板26につき、第2基板26の温度プロファイル条件に適合する加熱条件を探索する(S20)。
第2基板26の加熱条件探索処理(S20)では、具体的には、温度設定を一定として、第2基板26の温度プロファイル条件に適合する温度設定が探索される。第2基板26の加熱条件探索処理(S20)の詳細の一例を、図10のフローチャートを参照して説明する。
情報処理装置は、まず、予め定められた第2搬送速度V2の初期条件を取得する(S41)。第2搬送速度V2の初期条件は、例えば、搬送最低速度Vminである。
情報処理装置は、取得した当該第2搬送速度V2と、第1基板の加熱条件探索処理(S18)において見つけられた温度設定とを利用して、第2基板26の温度プロファイルをシミュレートする(S42)。
シミュレート(S42)後に、情報処理装置は、シミュレートした結果が第2基板26の温度プロファイル条件を満たすか否かを判断する(S43)。
当該温度プロファイル条件を満たさないと判断された場合(S43でNo)、情報処理装置は、例えばより高速に、第2搬送速度V2を変更できるか否かを判断する(S44)。
第2搬送速度V2を変更できるか否かは、例えば、リフロー装置10において設定できる第2搬送速度V2の範囲を基準に決定される。第2搬送速度V2の初期条件が搬送最低速度Vminであり、第2搬送速度V2を高速にしてシミュレートする場合には、設定可能な第2搬送速度V2の最高速度が基準となる。シミュレートのための第2搬送速度V2を高速に変更した場合に、第2搬送速度V2が当該最高速度以下であるとき、第2搬送速度V2を変更できると判断される(S44でYes)。また、第2搬送速度V2が当該最高速度より速いとき、第2搬送速度V2を変更できないと判断される(S44でNo)。
第2搬送速度V2を変更できると判断されたとき(S44でYes)、情報処理装置は、例えば高速に第2搬送速度V2を変更して(S45)、シミュレーション(S42)を再度実行する。
シミュレートした結果が第2基板26の温度プロファイル条件を満たすと判断された場合には(S43でYes)、情報処理装置は、加熱条件を示す情報を探索結果情報として出力する(S46)。ここで出力される情報が示す加熱条件は、当該判断の基になったシミュレーション(S42)に利用した温度設定及び第2搬送速度V2を含む。
また、第2搬送速度V2を変更できないと判断されたとき(S44でNo)、情報処理装置は、第2基板26の加熱条件を決定できないことを示す情報を探索結果情報として出力する(S46)。
これによって、第2基板26の加熱条件探索処理(S20)は終了する。ここから、図7に戻って、加熱条件決定処理(図2のS4)の詳細の続きを説明する。
情報処理装置は、適合加熱条件の有無を判断する(S21)。適合加熱条件の判断処理(S21)の詳細は、適合加熱条件の判断処理(S12)と同様である。
適合加熱条件があると判断された場合に(S21でYes)、情報処理装置は、第1基板24の加熱条件探索処理(S18)における探索結果として出力された温度設定と、第1搬送速度V1を搬送最低速度Vminとすることと、第2基板26の加熱条件探索処理(S20)における探索結果として出力された第2搬送速度V2とを含む加熱条件を決定する(S17)
また、適合加熱条件の有無の判断処理(S19又はS21)において、適合加熱条件がない(S19でNo又はS21でNo)と判断された場合、情報処理装置は、適合加熱条件がないと決定する(S22)。最後に、情報処理装置は、加熱条件決定処理(S17)において決定された加熱情報、又は決定処理(S22)において決定された適合加熱条件がないことを示す情報を加熱条件情報として出力し(S23)、処理を終了する。
以上説明したように、実施の形態によると、種類の異なる第1及び第2基板24,26の加熱特性値を包含する加熱特性値を有する仮想基板の適合加熱条件を探索する。これによって、リフロー装置10において異なる種類の第1及び第2基板24,26を適切に加熱するために適用できる共通の加熱条件を決定することができる。このような加熱条件を設定することによって、第1及び第2基板24,26の機種を切り替える際に、加熱条件の設定を変更する必要はなくなり、段取りに要する時間を短縮することができるため、効率的な生産が可能になる。
また、実施の形態では、仮想基板の適合加熱条件を見つけることができない場合に、最大の加熱特性値を含む第1基板24について、可能な限り低速の第1搬送速度で適合加熱条件を探索する。これによって、低温の温度設定を見つけることができる。第1基板24が最大の加熱特性値を含むため、第2基板26は第1基板24より昇温し易い。そのため、第2搬送速度を第1搬送速度より速くすることで、第2基板26の適合加熱条件を探索することができる。
ここで、実施の形態で説明した加熱条件決定方法により決定した加熱条件に従ってシミュレートした基板の温度プロファイルの一例を図11〜図13に示す。基板は、加熱特性値が大きい第1基板24として、厚さ3mmの基板を使用し、加熱特性値が大きい第2基板26として、厚さ0.9mmの基板を使用した。リフロー装置は、5つの予備加熱ゾーンPH1〜5と2つの本加熱ゾーンREF1〜2とを有するとした。
また、温度プロファイル条件は、上記の(A1)〜(A5)及び(B1)〜(B2)であって、両基板24,26に共通で、予熱最高温度を180℃、予熱高温域を150℃〜180℃、予熱制約時間を120秒、本加熱最高温度を240℃、はんだ溶融時間を220℃〜240℃の範囲となる時間で40秒とした。
図11は、第1基板24の温度プロファイルの例を示す。シミュレーションでは、第1予備加熱ゾーンPH1の温度を170度、第2〜5予備加熱ゾーンPH2〜5の温度を180度、第1本加熱ゾーンREF1の温度を255度、第2本加熱ゾーンREF2の温度を240度とし、第1搬送速度V1を0.60m/minとした。同図に示す第1基板24の温度プロファイルは、上記の温度プロファイル条件を満たす。
そこで、第2基板26について、同一の温度設定かつ同一搬送速度(V2=V1=0.60m/min)としてシミュレートした結果を図12に示す。同図に示す第2基板26の温度プロファイルでは、予備加熱において、予熱高温域150℃〜180℃となる時間が約170秒であり、予熱制約時間120秒を超えている。また、本加熱において、最高温度が250度近くまで上昇しており、本加熱最高温度240℃を超えている。そのため、同一の温度設定かつ同一搬送速度では、温度プロファイル条件を満たすことができない。
次に、第2搬送速度V2を1.04m/minとし、同一の温度設定でシミュレートした結果を図13に示す。同図に示す第2基板26の温度プロファイルは、上記の温度プロファイル条件を満たす。このように、第1基板24より昇温し易い第2基板26では、第2搬送速度を第1搬送速度より速くすることで、第2基板26の適合加熱条件を見つけ出すことができる。
従って、リフロー装置10において同一の温度設定で第1及び第2基板24,26を適切に加熱することができる加熱条件が決定される。このような加熱条件を設定することによって、第1及び第2基板24,26の機種を切り替える際に必要な変更は、搬送速度だけであって、温度設定を変更する必要はない。そのため、機種を切り替える際に、リフロー装置10内の温度環境が設定された温度に従って収束するまでの待ち時間は発生せず、段取りに要する時間を短縮することができるため、効率的な生産が可能になる。
また、加熱特性値は、第1及び第2試験用基板28,30をリフロー装置10で加熱することによって取得され、取得された加熱特性値に基づいて加熱条件を決定できる。そのため、加熱条件を決定するために実際に基板を加熱する回数は少なくてすむ。従って、加熱条件を決定するために実際に基板を加熱するという試行を繰り返すような従来の加熱条件決定方法よりも、加熱条件の決定に要する時間を低減し手間を軽減することが可能になる。
また、仮想基板及び第1基板の適合加熱条件の探索では、搬送最低速度Vminが使用され、搬送最低速度Vminは、例えば目標生産タクトを考慮して決定される。その場合、実施の形態の加熱条件決定方法によって決定される加熱条件は、生産性を考慮したものとなる。そのため、一定以上の生産効率を確保しながら加熱条件を決定することが可能になる。
以上本発明に係る一実施の形態について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
例えば、実施の形態では、第1基板24は全体的に、第2基板26よりも昇温し難い場合を例に説明した。すなわち、第1基板24の加熱特性値の最大値は、両基板24,26を通じて最大の加熱特性値である一方で、第1基板24の加熱特性値の最小値は、両基板24,26を通じて最小の加熱特性値ではなく、第2基板26の加熱特性値の最小値よりも大きい。
しかし、実際の基板では、図14に示すように、第1基板24の加熱特性値の最大値及び最小値が、第1及び第2基板24,26の両基板を通じて最大及び最小となる場合もある。このように、第1基板24が、第2基板26の加熱特性値を包含する場合、仮想基板の加熱特性値は、図14に示すように第1基板24の加熱特性値と同一となるが、仮想基板の温度プロファイル条件と第1基板24の温度プロファイル条件とは、異なることがある。この場合も、実施の形態において説明した加熱条件決定方法によって、リフロー装置10において同一の温度環境下で第1及び第2基板24,26を加熱することができ、そのため効率的に種類の異なる基板を生産することが可能になる。
例えば、実施の形態では、機種を切り替えることによってリフロー装置10が2つの異なる種類の基板を生産する例について説明したが、本発明に係る加熱条件決定方法は、基板の種類を切り替えることによって3種以上の基板を生産する場合にも適用できる。この場合、仮想基板は、実施の形態と同様に、搬送する基板の加熱特性値を包含する加熱特性値を有する仮想的な基板とするとよい。仮想基板の適合加熱条件が存在しない場合も、実施の形態と同様に、まず、最大の加熱特性値を含む基板について、搬送速度を搬送最低速度Vminとして当該基板の温度プロファイル条件に適合する温度設定が探索される。探索によって、そのような温度設定を見つけることができた場合、実施の形態での温度設定を一定とした加熱条件の探索処理が他の基板のそれぞれについて実行される。探索処理を実行する基板の順序は、任意であってよいが、好ましくは最小の加熱特性値を含む基板から探索処理を行う。最大の加熱特性値を含む基板について決定された一定の温度設定の下で、最小の加熱特性値を含む基板の搬送速度を見つけることができた場合、残りの基板についてもそれぞれの温度プロファイル条件に適合する搬送速度を見つけられる可能性が高くなり、無駄な計算処理を減らすことができるからである。このようにして、リフロー装置10において機種を切り替えることによって3種以上の基板を生産する場合の温度設定と各基板の搬送速度とを決定することができる。
例えば、実施の形態では、本発明に係る加熱情報決定方法を実行する情報処理装置がリフロー装置10とは別に設けられることとしたが、当該情報処理装置は、リフロー装置10に備えられてもよく、例えばリフロー装置10が備える制御装置23に組み込まれてもよい。
例えば、本発明は、加熱条件決定方法として実現されるだけでなく、当該方法に含まれる各処理を各手順として情報処理装置(コンピュータ)に実行させるプログラムとして実現することができる。また、本発明は、加熱条件決定方法に含まれる各工程を実行する機能を発揮する手段を備えた加熱条件決定装置として実現することもできる。
例えば、加熱特性値は、特定の温度環境下での昇温の困難さを示す指標として定義したが、この値は、特定の温度環境下での昇温のし易さを示す指標、特定の温度環境下での温度降下のし難さ又はし易さを示す指標等を適宜変換することによって代替することもできる。これらの代替可能な各指標は適宜選択して利用されてよく、加熱特性値の定義は、これら代替可能な指標を利用する場合を本発明から除外する趣旨ではない。