以下に、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図24)に基づいて説明する。図1は農作業用トラクタの側面図、図2はトラクタを斜め後方から見た斜視図、図3は動力伝達系のスケルトン図、図4は油圧無段変速機の油圧回路図、図5はトラクタの油圧回路図、図6はキャビンの平面図、図7は制御手段の機能ブロック図である。
図1及び図2に示す如く、作業車両としてのトラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持し、前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、前後進走行するように構成される。この場合、走行機体2の進行方向左側に位置する前後車輪3,4の組と、進行方向右側に位置する前後車輪3,4の組とにより、左右一対の走行部が構成されている。
エンジン5はボンネット6にて覆われる。また、前記走行機体2の上面にはキャビン7が設置され、該キャビン7の内部には、オペレータが着座する操縦座席8と、該操縦座席8の前方に位置する操縦コラム234とが搭載されている。操縦コラム234の上部には、操向手段としての操縦ハンドル9(丸ハンドル)が設けられている。操縦座席8に着座したオペレータが操縦ハンドル9を回動操作することにより、その操作量(回動量)に応じて左右前車輪3,3のかじ取り角(操向角度)が変わるように構成されている。キャビン7の左右外側部には、オペレータが乗降するための左右1対のステップ10が設けられ、該ステップ10より内側で且つキャビン7の底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
また、前記走行機体2は、前バンパ12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部にボルト15にて着脱可能に固定する左右の機体フレーム16とにより構成される。機体フレーム16の後部には、前記エンジン5からの出力を適宜変速して後車輪4(前車輪3)に伝達するためのミッションケース17が連結されている。この場合、後車輪4は、前記ミッションケース17に対して、当該ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18、及びこの後車軸ケース18の外側端に装着されたギヤケース19を介して取付けられている。
前記ミッションケース17の後部における上面には、耕耘機等の作業部(図示せず)を昇降動するための油圧式の作業部用昇降機構20が着脱可能に取付けられている。耕耘機等の作業部は、ミッションケース17の後部にロワーリンク21及びトップリンク22を介して連結される。さらに、ミッションケース17の後側面に、前記作業部を駆動するPTO軸23が設けられている。
図5は本実施形態におけるトラクタ1の油圧回路200を示している。トラクタ1の油圧回路200は、エンジン5の回転力により作動する昇降機構20用の油圧ポンプ94と、走行用油圧ポンプ95とを備える。走行用油圧ポンプ95は、パワーステアリング油圧機構202を介して操縦ハンドル9によるパワーステアリング用の油圧シリンダ93に接続する一方、左右一対の後車輪4のためのブレーキ65用のブレーキシリンダ68をそれぞれ作動させる切換弁である左右ブレーキ電磁弁67a,67bに接続している。
さらに走行用油圧ポンプ95は、PTOクラッチ100のためのPTOクラッチ油圧電磁弁(比例制御弁)104と、後述する主変速用油圧無段変速機29に対する比例制御弁203とそれによって作動する切換弁204と、走行副変速用油圧シリンダ55の高速クラッチ電磁弁666と、走行機体2の前進切換用油圧クラッチ40及び後進切換用油圧クラッチ42を作動させる前進用クラッチ電磁弁46及び後進用クラッチ電磁弁48と、前車輪3及び後車輪4を同時に駆動するための四駆用油圧クラッチ74に対する四駆油圧電磁弁80と、前車輪3を倍速駆動に切換えるための倍速用油圧クラッチ76に対する倍速油圧電磁弁82とに接続している。
また、作業部用油圧ポンプ94は、作業部用昇降機構20における単動式油圧シリンダ205に作動油を供給するための制御電磁弁201に接続している。作業部用油圧ポンプ94から油圧無段変速機29にチャージ油を供給している。なお、油圧回路200には、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
図3はミッションケース17を示している。ミッションケース17の内部は、仕切り壁31にて前後に仕切られている。ミッションケース17の前側及び後側には、前側壁部材32及び後側壁部材33が着脱可能に固定されている。ミッションケース17は略四角箱形に構成され、ミッションケース17の内部には、前室34と後室35とが形成される。前室34と後室35は、これらの内部の作動油(潤滑油)が相互に移動するように連通されている。前側壁部材32には、後述する前車輪駆動ケース69が備えられる。前室34には、後述する走行副変速ギヤ機構30と、PTO変速ギヤ機構96とが配置される。後室35には、後述する走行主変速機構である油圧無段変速機29と、差動ギヤ機構58とが配置される。
前記エンジン5の後側面にはエンジン出力軸24が後ろ向きに突出し、エンジン出力軸24にはフライホイール25を直結している。フライホイール25から後ろ向きに突出する主動軸26と、ミッションケース17の前面から前向きに突出する主変速入力軸27とは、両端に自在軸継手を備え且つ伸縮可能な動力伝達軸28を介して連結されている。前記エンジン5の回転動力を主変速入力軸27に伝達し、次いで、油圧無段変速機29と、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速して、差動ギヤ機構58を介して後車輪4にこの駆動力を伝達するように構成している。また、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速したエンジン5の回転を、前車輪駆動ケース69と前車軸ケース13の差動ギヤ機構86とを介して前車輪3に伝達するように構成している。
図3、図4に示す如く、後室35の内部に設けられたインライン式油圧無段変速機29は、可変容量形の変速用油圧ポンプ部500と、該油圧ポンプ部500から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ部501とを備える。主変速入力軸27には円筒形の主変速出力軸36を同心状に被嵌している。主変速入力軸27の後端側は、後側壁部材33に軸受にて回転自在に軸支される。前記仕切り壁31と後側壁部材33との間の主変速入力軸27には、油圧ポンプ部500及び油圧モータ部501のためのシリンダブロック505が被嵌される。油圧ポンプ部500は、主変速入力軸27の入力側と反対側のシリンダブロック505後部に配置される。油圧モータ部501は、主変速入力軸27の入力側のシリンダブロック505前部に配置される。
油圧無段変速機29から主変速出力を取出すための主変速出力ギヤ37が主変速出力軸36に設けられる。主変速出力軸36の前端と後端とが前室34と後室35とにそれぞれ突出している。主変速出力軸36の中間は、玉軸受にて仕切り壁31に回転自在に軸支される。主変速出力軸36の前端部には、主変速出力ギヤ37が設けられる。主変速入力軸27の入力側(前端側)は、主変速出力軸36前端より前方に突出するように、ころ軸受を介して主変速出力軸36の軸孔に回転自在に軸支される。
図4に示す如く、前記油圧ポンプ部500には、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を変更可能なポンプ斜板509と、該ポンプ斜板509に連結するポンププランジャ506とを備える。ポンププランジャ506を出入自在に配置するための第1プランジャ孔507をシリンダブロック505に形成する。前記シリンダブロック505には、ポンププランジャ506と同数の第1スプール弁536が設けられる。また、第1スプール弁536を作動させるための第1ラジアル軸受538が、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて配置される。
他方、前記油圧モータ部501には、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を一定に保つモータ斜板518と、モータ斜板518に連結するモータプランジャ515と、モータプランジャ515をシリンダブロック505に出入自在に配置する第2プランジャ孔516とが備えられる。前記シリンダブロック505には、モータプランジャ515と同数の第2スプール弁540が設けられる。また、第2スプール弁540を作動させるための第2ラジアル軸受542が、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて配置される。ポンププランジャ506と、それと同数のモータプランジャ515とは、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に交互に配列される。
さらに、主変速入力軸27が挿入されるシリンダブロック505の軸孔には、輪溝形の第1油室530と、輪溝形の第2油室531とがそれぞれ形成される。シリンダブロック505には、この回転中心の同一円周上に略等間隔に配列する第1弁孔532と第2弁孔533とが形成される。第1弁孔532及び第2弁孔533は、第1油室530及び第2油室531とそれぞれ連通している。第1プランジャ孔507は第1油路535を介して第1弁孔532と連通され、第2プランジャ孔516は第2油路534を介して第2弁孔533と連通されている。
第1弁孔532に挿入された第1スプール弁536は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列される。第1弁孔532から背圧バネ力の弾圧にて突出した第1スプール弁536の先端が第1ラジアル軸受538の外輪側面に当接される。そして、シリンダブロック505の1回転で第1スプール弁536が1往復し、第1プランジャ孔507が、第1弁孔532と第1油路535とを介して第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成する。
また、第2弁孔533に挿入された第2スプール弁540は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列される。第2弁孔533から背圧バネ力の弾圧にて突出した第2スプール弁540の先端が第2ラジアル軸受542の外輪側面に当接される。そして、シリンダブロック505の1回転で第2スプール弁540が1往復し、第2プランジャ孔516が、第2弁孔533と第2油路534とを介し、第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成する。なお、上記した走行用油圧ポンプ95の作動油を第1油室530に補給する第1チャージ弁544と、作動油供給油路543の作動油を第2油室531に補給する第2チャージ弁545とが備えられる。
さらに、前記ポンプ斜板509は、傾斜角調節支点555を介して後側壁部材33の取付け部に回動可能に配置される。ポンプ斜板509はその傾斜角が主変速入力軸27の軸線に対して調節自在となるように構成されている。主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509の傾斜角を変更する主変速操作用アクチュエータである主変速油圧シリンダ556を備える(図4及び図5参照)。主変速油圧シリンダ556にてポンプ斜板509の傾斜角が変更されて、無段変速機29の主変速動作が行われるように構成する。
前記したインライン式油圧無段変速機29の主変速動作を以下に説明する。変速比操作手段(変速切換操作具)としての前進ペダル232又は後進ペダル233(詳細は後述する)の踏み込み量に比例して作動する比例制御電磁弁203からの作動油で切換弁204が作動して主変速油圧シリンダ556(図5参照)が制御され、主変速入力軸27の軸線に対して、油圧ポンプ部500に設けられたポンプ斜板509の傾斜角が変更される。
ポンプ斜板509の傾斜角が略零のときは、油圧ポンプ部500にて油圧モータ部501が駆動されないので、主変速入力軸27に被嵌されたシリンダブロック505と、油圧モータ部501に設けられたモータ斜板518とが同一方向に略同一回転数で回転し、主変速入力軸27と略同一回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が変更されることなく主変速出力ギヤ37に伝えられる。
主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を一方向(正の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と同一回転方向にモータ斜板518が駆動され、油圧モータ部501を増速作動させ、主変速入力軸27より高い回転数で主変速出力軸36を回転させる。即ち、主変速入力軸27の回転数に油圧モータ部501の回転数が加算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、主変速入力軸27の回転数よりも高い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜角(正の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの主変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(正の傾斜角)で最高の走行速度(車速)になる。
さらに、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を他方向(負の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と逆の方向にモータ斜板518が回転され、油圧モータ部501を減速(逆転)作動させ、主変速入力軸27より低い回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が減速されて主変速出力ギヤ37に伝えられる。即ち、主変速入力軸27の回転数に油圧モータ部501の回転数が減算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、主変速入力軸27の回転数よりも低い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜角(負の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(負の傾斜角)で最低の走行速度(車速=零)になる。なお、実施形態では、ポンプ斜板509の負の傾斜角が略11度のとき、変速比が零(中立=停止状態)となる。また、後述の変速比パターンに応じて若干相違するが、正の傾斜角が略11度のとき、変速比が最大(最高速度)となるように設定されている。
図3に示されるように、前記ミッションケース17の前室34には、走行機体2の前進と後進との切換を行うための前進ギヤ41及び後進ギヤ43と、低速と高速との切換を行うための走行副変速ギヤ機構30とが配置される。前進ギヤ41及び後進ギヤ43を介して前進と後進とを切換える構成について説明する。主変速出力ギヤ37が配置される前室34の内部には、走行カウンタ軸38と逆転軸39とが配設される。前記走行カウンタ軸38には、前進用の湿式多板型油圧クラッチ40にて連結される前進ギヤ41と、後進用の湿式多板型油圧クラッチ42にて連結される後進ギヤ43とが被嵌される。主変速出力ギヤ37に前進ギヤ41が噛合される。主変速出力ギヤ37には、逆転軸39に設けられた逆転ギヤ44を介して、後進ギヤ43が噛合される。なお、逆転軸39に設けられた回転検出ギヤ115には、主変速出力ギヤ37の回転を検出する電磁ピックアップ型の主変速出力軸回転センサ116(図7参照)を対向させて設置されている。
そして、後述する前進ペダル232の踏込み操作により、前進クラッチ電磁弁46にてクラッチシリンダ47が作動して油圧クラッチ40が継続され、主変速出力ギヤ37と走行カウンタ軸38とが前進ギヤ41にて連結される。また、後述する後進ペダル233の踏込み操作により、後進クラッチ電磁弁48にてクラッチシリンダ49が作動して油圧クラッチ42が継続され、主変速出力ギヤ37と、走行カウンタ軸38とが、逆転軸39に設けられた逆転ギヤ44及び逆転出力ギヤ45と、後進ギヤ43とを介して連結される(図3参照)。なお、前進ペダル232及び後進ペダル233のいずれも踏み込んでいない中立位置のときには、前進用及び後進用の各油圧クラッチ40,42の両方がともに切断され、前車輪3及び後車輪4に対して出力される主変速出力ギヤ37からの走行駆動力が略零(主クラッチ切の状態)になるように構成している。
次に、走行副変速ギヤ機構30を介して低速と高速との切り替えるための構成について説明する。図3に示されるように、前記ミッションケース17の前室34には、走行副変速ギヤ機構30と副変速軸50とが配置される。走行カウンタ軸38には、副変速用の低速ギヤ51及び高速ギヤ53を設ける一方、副変速軸50には、走行カウンタ軸38の低速ギヤ51に噛み合う低速ギヤ52と、走行カウンタ軸38の高速ギヤ53に噛み合う高速ギヤ54とを設けている。また、副変速軸50には、副変速油圧シリンダ55にて継断可能な低速クラッチ56及び高速クラッチ57を備える。そして、副変速操作手段としての副変速切換スイッチ222の操作、またはエンジン5の回転数検出等により、副変速油圧シリンダ55の制御(詳細は後述する)にて低速クラッチ56または高速クラッチ57が継続され、副変速軸50に低速ギヤ52または高速ギヤ54が連結され、副変速軸50から前車輪3及び後車輪4に対して走行駆動力が出力されるように構成している。
前記副変速軸50の後端部は、仕切り壁31を貫通してミッションケース17の後室35内部にまで延びている(図3参照)。後室35の内部には、左右の後車輪4に走行駆動力を伝える差動ギヤ機構58が配置される。差動ギヤ機構58には、副変速軸50後端のピニオン59に噛合するリングギヤ60と、該リングギヤ60に設けられた差動ギヤケース61と、左右方向に延びる差動出力軸62とが備えられる。差動出力軸62がファイナルギヤ63等にて後車軸64に連結され、後車軸64の後車輪4を駆動する(図5参照)。また、左右の差動出力軸62には左右のブレーキ65がそれぞれ設置され、操縦コラム234後面側の一つのブレーキペダル230の基端側をブレーキペダル軸255に回動自在に連結する(図7参照)。ブレーキペダル230と左右ブレーキ65とは、左右一対のブレーキロッド250及びリンク機構251などを介して機械的に連結する。ブレーキペダル230を制動位置に係止する駐車レバー252及びフック253を備え、左右ブレーキ65を駐車ブレーキとして作動できる(図16参照)。一方、操縦ハンドル9の操舵角検出等により、左右オートブレーキ電磁弁67a,67bにてブレーキシリンダ68が作動して、旋回内側のブレーキ65が自動的に制動作動する。
次に、前後車輪3,4の二駆と四駆の切換え構成について説明する。図3に示されるように、ミッションケース17の前側壁部材32に設けられた前車輪駆動ケース69には、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが備えられている。前車輪入力軸72は、ギヤ70,71を介して副変速軸50と動力伝達可能に連結される。また、前車輪出力軸73には、四駆用油圧クラッチ74を介して前車輪出力軸73に連結される四駆ギヤ75と、倍速用油圧クラッチ76を介して前車輪出力軸73に連結される倍速ギヤ77とを被嵌する。四駆ギヤ75は前車輪入力軸72のギヤ78と噛み合い、倍速ギヤ77は前車輪入力軸72のギヤ79と噛み合っている。そして、二駆と四駆との切換レバー(図示省略)を四駆側に操作することにより、四駆油圧電磁弁80にてクラッチシリンダ81が作動して四駆用油圧クラッチ74が継続され、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが四駆ギヤ75にて連結され、後車輪4と共に前車輪3が駆動されるように構成する(図3参照)。
次に、前車輪3の倍速駆動の切換え構成について説明する。操縦ハンドル9のUターン(圃場の枕地での方向転換)操作の検出により、倍速油圧電磁弁82にてクラッチシリンダ83が作動して倍速用油圧クラッチ76が継続され、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが倍速ギヤ77にて連結され、四駆ギヤ75にて前車輪3が駆動されるときの速度に比べて約2倍の高速度で前車輪3が駆動されるように構成する(図3参照)。なお、前車輪入力軸72のギヤ78の近傍箇所には、当該ギヤ78の回転を検出する電磁ピックアップ型の車速センサ117(図7参照)が設置されている。
図3に示すように、前車軸ケース13から後ろ向きに突出する前車輪伝達軸84と、前記ミッションケース17の前面から前向きに突出する前車輪出力軸73との間を、前車輪3に動力伝達する前車輪駆動軸85を介して連結する。また、前車軸ケース13の内部には、左右の前車輪3に走行駆動力を伝える差動ギヤ機構86が配置される。差動ギヤ機構86には、前車輪伝達軸84前端のピニオン87に噛合するリングギヤ88と、該リングギヤ88に設けられた差動ギヤケース89と、左右の差動出力軸90とが備えられる。差動出力軸90にはファイナルギヤ91等にて前車軸92が連結され、前車軸92に設けられた前車輪3が駆動されるように構成している。
次に、PTO軸23の駆動速度を切換える(正転4段と逆転1段)ための構成について説明する。図3に示されるように、ミッションケース17の前室34には、エンジン5からの動力をPTO軸23に伝達するためのPTO変速ギヤ機構96と、エンジン5からの動力を各油圧ポンプ94,95に伝達するためのポンプ駆動軸97とが設けられている。PTO変速ギヤ機構96には、PTOカウンタ軸98と、PTO変速出力軸99とを備える。PTOカウンタ軸98にはPTO油圧クラッチ100を介してPTO入力ギヤ101が連結される。PTO入力ギヤ101には、前記主変速入力軸27の入力側ギヤ102と、ポンプ駆動軸97の出力側ギヤ103とが噛合され、主変速入力軸27にポンプ駆動軸97が連結される。そして、PTOクラッチレバー(図示省略)操作により、油圧電磁弁104(図5及び図7参照)にてクラッチシリンダ105が作動してPTO油圧クラッチ100が継続され、主変速入力軸27とPTOカウンタ軸98とがPTO入力ギヤ101にて連結される。
また、前記PTO変速出力軸99には、1速ギヤ106、2速ギヤ107、3速ギヤ108、4速ギヤ109、及び逆転ギヤ110が被嵌されている。前記各ギヤ106〜110をPTO変速出力軸99に択一的に連結するための変速シフタ111には、PTO変速レバー224(図6参照)に連結した変速アーム112が係合される。そして、PTO変速レバー224の変速操作により、1速〜4速及び逆転の各PTO変速出力が、PTO変速出力軸99からPTO軸23にギヤ113,114を介して伝達されるように構成されている(図3参照)。
次に、図3及び図4を参照して、走行副変速ギヤ機構30の変速構造について詳述する。図4に示す如く、副変速油圧シリンダ55には、ピストン660の片側のピストンロッド661が内設される第1シリンダ室662と、他方の第2シリンダ室663とが形成される。ピストン660先端のシフトアーム664によって低速クラッチ56又は高速クラッチ57を継続し、副変速軸50を低速又は高速で駆動するように構成する。第1シリンダ室662は、走行用油圧ポンプ95の吐出側に直接連通する。第2シリンダ室663は、高速クラッチ電磁弁666を介して、走行用油圧ポンプ95の吐出側に連通する。高速クラッチ電磁弁666を変速ソレノイド667によって切換え、高速クラッチ57を継続して副変速軸50を高速駆動するように構成する(図3参照)。
次に、図17を参照して、本実施形態における作業車両の走行制御(変速制御)について説明する。制御手段としての走行コントローラ210には、電源印加用キースイッチ211を介してバッテリ254に接続される。キースイッチ211は、エンジン5を始動するためのスタータ212に接続される。走行コントローラ210には、エンジン5の回転を制御する電子ガバナコントローラ213が接続されている。電子ガバナコントローラ213には、エンジン5の燃料を調節するエンジンガバナ214、エンジン5の回転数を検出するエンジン回転センサ215、スロットルレバー206の操作位置を検出するスロットルポテンショメータ217等が接続される。オペレータがスロットルレバー206を手動操作すると、電子ガバナコントローラ213は、スロットルポテンショメータ217値とエンジン回転数とが一致するように、エンジンガバナ214を制御する。なお、エンジン回転数は、負荷の変動に拘らず、スロットルレバー206の位置に応じた回転数に保持される。
また、走行コントローラ210には、前進用油圧クラッチ40に対する前進用クラッチ電磁弁46、後進用油圧クラッチ42に対する後進用クラッチ電磁弁48、走行副変速用油圧シリンダ55に対する高速クラッチ電磁弁666、前進ペダル232及び後進ペダル233の踏み込み量に比例して主変速油圧シリンダ556を作動させるための比例制御電磁弁203、左右ブレーキペダル電磁弁67a,67b、並びにPTOクラッチ100のためのPTOクラッチ油圧電磁弁(比例制御弁)104等が接続されている。
さらに、走行コントローラ210には、操縦ハンドル9の回動量(操舵角度)を検出する左操舵スイッチ218及び右操舵スイッチ119、前進ペダル232及び後進ペダル233の操作量(踏み込み量)を検出する変速ポテンショ220、無段変速機29の変速比パターン(図18参照)を多段階に切換える変速比設定器221、走行副変速ギヤ機構30を高速に切換える副変速切換スイッチ222、主変速出力軸36の出力回転数を検出する主変速出力軸回転センサ116、前後車輪3,4の回転速度(走行速度)を検出する車速センサ117、ブレーキペダル230の踏み込みを検出するブレーキペダルスイッチ231、並びに前進または中立または後進の各切換え位置に操作可能な前後進切換スイッチ223等が接続されている。
図6及び図7に示すキャビン7内の操縦座席8の前方の床板235から突出する操縦コラム234上に操縦ハンドル9が配置される。操縦コラム234の右側面側には、エンジン5の回転数を調節するスロットルレバー206と、後述するアクセル連結レバー127と、前進ペダル232及び後進ペダル233を略一定姿勢に維持するペダルロックレバー128とが配置されている。また、操縦コラム234の右側の下方には、ブレーキペダル230と、前進ペダル232及び後進ペダル233が並列状に配置されている。操縦座席8の左側には、PTO変速レバー224、デフロックペダル225等を配置する。操縦座席8の右側には、作業機昇降レバー259を配置する。
図7に示されるように、操縦座席8の右側の合成樹脂製の右側アームレスト8aの前端側には、合成樹脂成形加工により、ダイヤル設置台121を一体的に形成している。ダイヤル設置台121には、車速設定ダイヤル211と、副変速切換スイッチ222と、前後進切換スイッチ223とが配置される。操縦座席8に座ったオペレータが右手を右側アームレスト8aに載せ、車速設定ダイヤル211または副変速切換スイッチ222または前後進切換スイッチ223を、オペレータが右手で操作することになる。
図17に示されるように、開閉可能な上面蓋123で上面側を閉鎖した右側アームレスト8aの内部には、作業機姿勢コントローラ122を配置する。作業機姿勢コントローラ122には、ロータリ耕耘作業機(図示省略)の左右方向の傾きを調節する傾きダイヤル124と、ロータリ耕耘作業機の耕耘爪(図示省略)の耕耘深さを調節する耕深ダイヤル125とが配置されている。傾きダイヤル124または耕深ダイヤル125を、操縦座席8に座ったオペレータが右手で操作することになる。なお、ロータリ耕耘作業機は、ロワーリンク21及びトップリンク22を介して連結される。また、操縦座席8の右側アームレスト8a及び左側アームレスト8bは、それらの後端側の回動支軸120を中心に前端側を持上げ(略水平姿勢から略垂直姿勢に移行)可能に設けられている。また、右側アームレスト8aの下方には、オペレータが水筒などを入れるための小物入れボックス126を配置している。
図7乃至図15を参照して、上記前進ペダル232、後進ペダル233の取付け構造を説明する。前進ペダル232及び後進ペダル233は、そのペダルアーム232a,233a基端の回動支軸部237a,237bを、ブレーキペダル軸255に回動可能に被嵌する。前進ペダル232及び後進ペダル233の踏み板236a,236bは、回動支軸部237a,237bを中心に床板235の上面にて初期(中立)位置から斜め下方に踏み込み作動可能に装着されている。前進ペダル及び後進ペダルのペダル踏み込み量を、変速センサである変速ポテンショ220に伝える伝達リンク機構275を備える。
図8乃至図13に示されるように、伝達リンク機構275は、前進ペダル232及び後進ペダル233を後述するカム板258にそれぞれ連結する一対の牽制リンク238a,238bと、前進ペダル232及び後進ペダル233を中立位置(変速出力が略零の位置)に戻す中立位置復元手段241と、踏み板236a,236bのペダル踏込み量(踏込み角度θ)が所定以上になったときにペダル踏力を増大させる踏込み抵抗変更手段242とを備える。なお、中立位置復元手段241及び踏込み抵抗変更手段242を設置するための変速フレーム266を、操縦コラム234の取付け部に配置する。
図9乃至図11に示されるように、各回動支軸部237a,237bにリンクアーム239a,239bをそれぞれ設置し、各牽制リンク238a,238bの一端部をリンク軸268a,268bを介して各リンクアーム239a,239bに回動可能にそれぞれ連結する。牽制リンク238a,238bの他端部を支軸269を介して後述するカム板258の中間部に回動可能に連結する。前進用及び後進用の各踏み板236a,236bが初期(中立)位置に支持されているときに、前進用の牽制リンク238a及びリンクアーム239aと、後進用の牽制リンク238b及びリンクアーム239bとが、ブレーキペダル軸255と支軸269とを結ぶ直線を挟んで略対称になる位置に、それらリンク238a,238b及びリンクアーム239a,239bを配置する。なお、上述した初期(中立)位置とは、ペダル踏込み量が略零の変速中立位置(無段変速機29からの変速出力が略零の変速中立位置)のことである。
その結果、前進ペダル232または後進ペダル233のいずれか一方の踏み板236a(236b)をオペレータが踏み込んだ場合、踏み込んだ側の踏み板236a(236b)は、踏み込み方向(前方斜め下方)に移動する一方、踏み込んでいない他方の踏み板236b(236a)が、踏み込んだ側の踏み板236a(236b)の踏み込み方向(前方斜め下方)とは逆の方向(後方斜め上方)に移動することになる。なお、前進用及び後進用の両方のペダル232,233の踏み板236a,236bをオペレータが同時に踏み込んだ場合、各ペダル232,233が、各牽制リンク238a,238b及びカム板258などの連結にて互いに牽制されているから、両方の踏み板236a,236bが同時に踏み込み方向(前方斜め下方)に移動することがない。
図9乃至図11に示されるように、中立位置復元手段241は、踏み板236a,236bを初期(中立)位置に戻すための戻しバネ256と、カム溝257を先端部に形成したT形状のカム板258と、カム溝257に移動可能に内設するカムローラ265とからなる。カム板258の基端部をカム軸270を介して変速フレーム266の一端部に回動可能に連結する。カム軸270を変速フレーム266に配置する。戻しバネ256の一端側をカム軸270に係止する。戻しバネ256の他端側は、カムローラ265を回動可能に被嵌するためのローラ軸267に係止する。カムローラ265がカム溝257の略中間部に位置しているときに、ローラ軸267と、支軸269と、カム軸270とが、同一直線上に配置される。
その結果、戻しバネ256が最も縮小して、前進ペダル232及び後進ペダル233の踏み板236a,236bが、初期(中立)位置にそれぞれ保持される。一方、前進用または後進用の踏み板236a,236bの一方をオペレータが踏み込んだ場合、カム板258が戻しバネ256力に抗して正転または逆転方向に回動し、カムローラ265がカム溝257の略中間部からいずれか一端側に移動し、カムローラ265の移動量に比例して戻しバネ256が伸張される。その戻しバネ256を伸張する力が、前進または後進ペダル232,233を踏み込んで低速移動するときの低速操作域のペダル踏力である。
図11及び図12に示されるように、踏み込み抵抗変更手段242は、踏み板236a,236bの踏力を増大するための踏力増大バネ260と、踏力増大バネ260を押しバネ座261と引きバネ座262との間に配置するバネシリンダ263と、押しバネ座261及び引きバネ座262に一端側を連結する押し引きロッド264と、押し引きロッド264の他端側にローラ軸267を介して回動可能に軸支するカムローラ265とからなる。バネシリンダ263の支持アーム272を、アーム軸273を介して変速フレーム266に回動可能に連結する。踏み板236a,236bを踏み込んでカムローラ265がカム溝257の端部に移動した状態で、その踏み板236a,236bをさらに踏み込んで、カム板258をさらに同一方向に連続して回転させた場合、押し引きロッド264が押し方向または引き方向に移動し、押しばね座261または引きバネ座262が移動して踏力増大バネ260を圧縮することになる。
その踏力増大バネ260を圧縮する力(ペダル踏込み反力)が、前進または後進ペダル232,233のいずれか一方を踏み込んで高速移動するときの高速操作域のペダル踏力である。前進ペダル232及び後進ペダル233の踏込み抵抗力が、踏込み中途部で急激に増大する。即ち、低速移動域の踏込み量(カムローラ265がカム溝257の端部に移動するまで)を越えて踏み板236a,236bを踏み込むと、そのペダル232(233)の踏込み反力(ペダル踏力)が踏み込み抵抗変更手段242によって急激に増大して、ペダル232(233)の高速操作域をオペレータが区別できることになる。
図9乃至図11に示されるように、各踏み板236a,236bの踏込み量(または踏込み角度)を検出するための踏込み検出センサとしての変速ポテンショ220を、ブラケット240とセンサリンク271との間に設ける。なお、ブラケット240は変速フレーム266に一体的に連結する。センサリンク271はカム板258に一体的に連結する。変速ポテンショ220のセンサアーム220aは、変速ポテンショ220に内臓したバネ(図示省略)のバネ力にてセンサリンク271に常に弾圧されている。センサアーム220aはセンサリンク271と連動して回転することになる。
図8乃至図11を参照して、前進ペダル232または後進ペダル233をオペレータが足踏み操作し、トラクタ1を前進または後進させて、前方または後方に移動させる動作を説明する。先ず、前進ペダル232を足踏み操作したときの動作を説明する。前進用の踏み板236aをオペレータが踏み込んだときに、カム板258が牽制リンク238aを介して押し下げられて図9における反時計方向に回転する。このカム板258の回転により、カム溝257内をカムローラ265が移動して、戻しバネ256を伸張する。一方、変速ポテンショ220をセンサリンク271を介して作動して、前進ペダル232の踏込み量(または踏込み角度)を検出し、無段変速機29からの変速駆動出力(前進速度)を、前進ペダル232の踏込み量に比例させて増速する。
前進用の踏み板236aが踏み込まれて、カムローラ265がカム溝257の端部に移動した状態において、前進用の踏み板236aをオペレータがさらに踏み込んで、変速駆動出力(前進速度)を増速するように操作した場合、押し引きロッド264がカム板258を介して引き下げられ、踏力増大バネ260が引きバネ座262を介して圧縮され、前進ペダル232の踏力が増大される。前進ペダル232の踏力の急激な変化をオペレータが感じながら、前進ペダル232を低速操作域から高速操作域に踏み込み操作できる。
なお、オペレータが足を前進ペダル232から離すことにより、引きバネ座262が踏力増大バネ260力にて初期位置に戻り、かつカム板258が戻しバネ256力にて中立(初期)位置に戻り、前進ペダル232を初期位置に戻す。また、前進ペダル232を踏み込んだときに、後進ペダル233は踏み込み方向とは逆の方向に移動する一方、オペレータが足を前進ペダル232から離したときには、後進ペダル233も初期位置に戻る。
一方、後進ペダル233を足踏み操作したときの動作を説明する。後進用の踏み板236bをオペレータが踏込んだときに、カム板258が牽制リンク238bを介して引き上げられて図9における時計方向に回転する。このカム板258の回転により、カム溝257内をカムローラ265が移動し、戻しバネ256を伸張する一方、変速ポテンショ220をセンサリンク271を介して作動し、後進ペダル233の踏込み量を検出し、無段変速機29からの変速駆動出力(後進速度)を、後進ペダル233の踏込み量に比例させて増速する。
後進用の踏み板236bが踏み込まれて、カムローラ265がカム溝257の端部に移動した状態において、後進用の踏み板236bをオペレータがさらに踏み込んで、変速駆動出力(後進速度)を増速するように操作した場合、押し引きロッド264がカム板258を介して押し上げられ、踏力増大バネ260が押しバネ座261を介して圧縮され、後進ペダル233の踏力が増大される。後進ペダル233の踏力の急激な変化をオペレータが感じながら、後進ペダル233を低速操作域から高速操作域に踏み込み操作できる。
なお、オペレータが足を後進ペダル233から離すことにより、押しバネ座261が踏力増大バネ260力にて初期位置に戻り、かつカム板258が戻しバネ256力にて初期(中立)位置に戻り、後進ペダル233を初期位置に戻す。また、後進ペダル233を踏み込んだときに、前進ペダル232は踏み込み方向とは逆の方向に移動する一方、オペレータが足を後進ペダル233から離したときには、前進ペダル232も初期位置に戻る。
図8乃至図10、図12乃至図15を参照して、アクセル連結レバー127について説明する。
図9、図10、図13に示されるように、操縦コラム234のコラムフレーム129には、変速フレーム266と、レバー支点フレーム130を一体的に連結している。スロットルレバー206の基端部を左右方向に略水平に延長させてレバー支点軸131を一体的に形成する。レバー支点軸131をレバー支点フレーム130に回動可能に配置する。レバー支点軸131には、レバー支点軸131の一方向の回動(レバー206の増速操作方向)によって回動可能な一方向回転クラッチ付きアクセル軸受134を被嵌する。アクセル軸受134にはスロットルアーム133を配置する。スロットルアーム133をスロットルリンク132を介してエンジンガバナ214に連結する。スロットルレバー206を任意の操作位置に維持するための皿バネ135をレバー支点軸131に被嵌する。スロットルレバー206を、皿バネ135の制動力に抗して回動操作(前後方向)したとき、スロットルアーム133が連動して回動して、エンジンガバナ214を作動させてエンジン5の回転数を変更する。即ち、スロットルレバー206を図10の実線位置から仮想線方向(反時計方向)に回動した場合、エンジン5の回転数が例えば最高出力回転数まで増加するように、スロットルアーム133を回動させてエンジンガバナ214を作動させる。なお、スロットルレバー206を仮想線方向から図10の実線位置に戻す方向(時計方向)に回動した場合、エンジン5の回転数が例えばアイドリング回転数まで減少するように、スロットルアーム133が戻しバネ(図示省略)力にて復動する。
図10及び図13に示されるように、前進ペダル232とエンジンガバナ214を連結するアクセル連動機構118として、アクセル連動アーム136と、クラッチアーム139と、アクセル操作アーム142とを備える。レバー支点軸131にはアクセル連動アーム136の基端部を回動可能に被嵌させる。アクセル連動アーム136には、スロットルアーム133に当接させる突起137を一体的に形成する。アクセル連動アーム136が増速方向(図10反時計方向)に回動したとき、アクセル連動アーム136の突起137がスロットルアーム133を押して、スロットルアーム133を増速方向(図10反時計方向)に回動させる。一方、アクセル連動アーム136が初期位置側である減速方向(図10時計方向)に戻ったとき、アクセル連動アーム136の突起137がスロットルアーム133から離れるように移動して、スロットルアーム133を減速方向(図10時計方向)に回動させ、スロットルレバー206によるスロットルアーム133回動位置まで、スロットルアーム133をバネ力で復動させる。
アクセル連動アーム136にはガイド棒138の一端部を連結する。ガイド棒138には、その軸芯線方向にスライド可能に、クラッチアーム139を被嵌する。クラッチアーム139には、後述するアクセル操作アーム142に当接させるための当接体139aを一体的に形成する。クラッチアーム139に連結するシフト部材140を、レバー支点軸131にスライド可能に被嵌させる。レバー支点軸131にはレバーホルダ141を回動可能に被嵌する。アクセル連結レバー127をレバーホルダ141にスライド可能に挿通する。アクセル連結レバー127は、レバーホルダ141を介して、レバー支点軸131の軸線方向にスライド可能に配置する。アクセル連結レバー127には、シフトアーム140aを介してシフト部材140を連結する。一方、前進ペダル232の回動支軸部237aには、当接体139aに当接させるためのアクセル操作アーム142を配置する。アクセル操作アーム142の上面側には、当接体139aの誤動作を防ぐための板形の誤動作防止体143を配置する。
次に、アクセル連結レバー127の操作と、アクセル連動機構118の動作を説明する。アクセル連結レバー127が図13の実線位置のとき、クラッチアーム139の当接体139aは、アクセル操作アーム142の回動軌跡から外れた位置に支持される。この場合、前進ペダル232をオペレータが踏み込んで、アクセル操作アーム142を図10の時計方向に回動させても、アクセル操作アーム142がクラッチアーム139の当接体139aに当接しないから、クラッチアーム139が回動しない。即ち、前進ペダル232をオペレータが踏み込んでも、この前進ペダル232の操作によってエンジン5の回転数は変更されない。オペレータがスロットルレバー206を操作したとき、エンジン5の回転数が変更されるだけである。
一方、アクセル連結レバー127をオペレータが引張って図13の実線位置から仮想線位置に移動させた場合、クラッチアーム139の当接体139aは、アクセル操作アーム142の回動範囲(図10時計方向)に支持される。そして、前進ペダル232をオペレータが踏み込んだとき、アクセル操作アーム142がクラッチアーム139の当接体139aに当接する。そのため、クラッチアーム139がアクセル操作アーム142によって回動して、突起137を介してスロットルアーム133を増速側に回動させる。即ち、前進ペダル232をオペレータが踏み込んだとき、前進ペダル232の踏み込み量に比例して、無段変速機29の出力が増速側に変更されてから、エンジン5の回転数も増速側に変更される。オペレータが前進ペダル232から足を離して戻すことにより、エンジン5の回転数も増速前の回転数(スロットルレバー206にて設定された回転数)に戻る。また、後進ペダル233をオペレータが踏み込んでも、アクセル操作アーム142がクラッチアーム139から離れる方向(図10反時計方向)に回動するから、エンジン5の回転数は変更されない。
なお、なお、例えばアクセル連動アーム136とアクセル操作アーム142などのリンク比を変更した場合、無段変速機29の出力を増速側に変更するタイミングと、エンジン5の回転数を増速側に変更するタイミングとを、前進ペダル232の踏み込み量に対して任意に設定できる。一方、前進ペダル232をオペレータが踏み込んだ状態で、アクセル連結レバー127をオペレータが引張った場合、クラッチアーム139の当接体139aが誤動作防止体143に当接し、アクセル連結レバー127が図13の実線位置から仮想線位置に移動するのを阻止される。そのため、クラッチアーム139の当接体139aは、アクセル操作アーム142の回動軌跡から外れた位置に支持される。
なお、スロットルレバー206のレバー軸131を伸縮継ぎ手部材150を介して伸縮可能に形成し、伸縮継ぎ手部材150をレバーホルダ141とシフトアーム140aとの間に配置した場合、レバーホルダ141とシフトアーム140aとの間をロッド(図示省略)などで連結することにより、スロットルレバー206をレバー軸131の軸線方向に移動して、クラッチアーム139の当接体139aをアクセル操作アーム142に対して接離できる。スロットルレバー206の兼用にてアクセル連結レバー127を不要にできる。
図9及び図10、図12乃至図16を参照して、ペダルロックレバー128の構成について説明する。トラクタ1の移動速度を略一定に維持する定速移動機構119として、ロックアーム146と、ロックギヤ147とを備える。ペダルロックレバー128の基端部のレバー軸144を、軸受体145を介してコラムフレーム129に回動可能に軸支する。レバー軸144にはロックアーム146の基端部を連結する。ロックアーム146の先端部には係合爪146aを一体的に固設する。係合爪146aを係脱可能に係合する扇形のロックギヤ147を、後進ペダル233の回動支軸部237bに一体的に固設する。ロックアーム146には、解除ワイヤ148及びリンクなどを介してブレーキペダル230を連結する(図16参照)。また、ロックアーム146には、ペダルロックレバー128をロック位置または非ロック位置に維持するための支点越え作用形の切換バネ149を連結する(図10参照)。
次に、ペダルロックレバー128の操作と、定速移動機構119の動作を説明する。ペダルロックレバー128は、図9及び図10の仮想線位置または実線位置のいずれかで、オペレータが切換えた位置に切換バネ149にて維持される。ペダルロックレバー128が実線位置のとき、ロックアーム146の係合爪146aがロックギヤ147に係合し、前進ペダル232及び後進ペダル233を略一定位置に維持する。例えば前進ペダル232または後進ペダル233をオペレータが任意の位置に足踏み操作し、図10の仮想線位置のペダルロックレバー128を実線位置に操作して、係合爪146aをロックギヤ147に係合させた場合、前進ペダル232及び後進ペダル233が操作位置に維持され、オペレータが前進ペダル232または後進ペダル233から足を離しても、トラクタ1が略一定速度で前進または後進方向に移動する。
また、前進ペダル232をオペレータが最大踏み込み位置に足踏み操作し、図10の仮想線位置のペダルロックレバー128を実線位置に操作して、係合爪146aをロックギヤ147に係合させた場合、前進ペダル232が最大踏み込み位置に固定維持され、作業車両の前進の移動速度が略最高速度に保たれ、オペレータが前進ペダル232から足を離しても、トラクタ1が略最高速度で前進方向に移動する。そのように、トラクタ1が略最高速度で前進移動しているとき、変速比設定ダイヤル211をオペレータが操作して、中立または多段変速(図18参照)の速度を設定できる。即ち、オペレータが前進ペダル232(後進ペダル233)から足を離し、オペレータが変速比設定ダイヤル211を操作するだけで、油圧無段変速機29の主変速出力が略零になる中立状態に切換えたり、油圧無段変速機29の主変速出力を多段階に変速できる。
また、ペダルロックレバー128が実線位置(図10)に切換えられている場合、ブレーキペダル230をオペレータが踏み込んだとき、解除ワイヤ148を介して係合位置のロックアーム146が非係合位置側に引張られる。そのため、ロックアーム146が図10の実線位置(係合位置)から仮想線位置(非係合位置)に移動し、係合爪146aとロックギヤ147の係合を解除し、前進ペダル232及び後進ペダル233を作動可能に維持する。なお、前進ペダル232または後進ペダル233からオペレータが足を離している場合、ブレーキペダル230をオペレータが踏み込んだとき、前進ペダル232または後進ペダル233が初期(中立)位置に復帰する。そして、移動速度(車速)が一定以下になったとき、前進用油圧クラッチ40及び後進用油圧クラッチ42の両方を自動的に切リ(OFF)に維持し、左右のブレーキ65を自動的に作動させて左右後車輪4を制動する。
次に、一定変速比制御(変速比適応制御)について説明する。ここで、変速比とは、エンジン5回転数に対する前記油圧式無段変速機29の出力軸36の回転数の比率をいう。以下同じ。油圧式無段変速機29を備えたトラクタ1において、実際(現実)の出力軸36の回転数を走行コントローラ210にフィードバックさせて、目標変速比に一致させる制御を、変速比適応制御という。即ち、エンジン5の回転数を、負荷の変動に拘らず、略一定に保持するように制御する一方、実際の変速比が目標変速比となるように、油圧式無段変速機29の変速比を制御するための比例電磁弁203を制御するもので、前進及び後進ペダル232,233の踏み込み量に対する油圧式無段変速機29の変速比として複数の変速比パターンを、走行コントローラ210のRAM(随時読み書き可能メモリ)に記憶させる。
この変速比パターンは、変速ペダルとしての前進ペダル232及び後進ペダル233の踏込み量が増大するのに比例して、変速比が大きくなるパターンであり、図18の実施形態では15種類の変速比パターン(変速比線No.1〜No.15)を準備して、予めパターン記憶手段に記憶させている。オペレータが変速比設定ダイヤル221の目盛(例えばN、1、2、3、…14、15)を選択すると、複数の変速比パターンから1つのパターンを設定することができる。換言すると、変速比設定ダイヤル221は、前進ペダル232及び後進ペダル233の踏込み量に対応する変速比の変化率を変更(設定)するためのものである。なお、設定ダイヤル221は、その目盛がN(変速中立)のとき、前進ペダル232及び後進ペダル233の踏込み量に関係なく、油圧無段変速機29の出力を略零(変速比を0)に維持する。
なお、図18に示す実施形態では、横軸にペダル踏込み量(最大踏込み量に対する%で示し、右向きは前進ペダルのもの、左向きは後進ペダルのもの)を採り、縦軸(左縦軸参照)にはエンジン5の回転数に対する出力軸36の回転数の変速比(0〜2)を採って変速比パターンの線図を示す。図18において下の線から順にNo.1〜No.15とし、前進用変速比パターンと後進用変速比パターンは同じ(左右対称)に設定されている。さらに、ペダル踏込み量に対するペダル踏力の変化を示す線図(破線で示す)が記載されている。すなわち、右縦軸にはペダル踏力(最大値に対する%で示す)を採る。
本実施形態では、前進ペダル232(または後進ペダル233)の踏込み量の中途部(例えば全踏込み量の約70%の位置)で、そのペダルの踏力が踏み込み抵抗変更手段242により急増するようになっている。即ち、ペダル踏込み量が0%から約70%までは、中立位置復元手段241の付勢力に抗することで、ペダル踏力が低い勾配で直線的に比例して増加する。ペダル踏込み量が約70%の位置では、踏み込み抵抗変更手段242による抵抗力が付加されるのでペダル踏力が最大値の約20%から約50%に急変し、その後のペダル踏込み量が約70%から100%までは、ペダル踏力が高い勾配で略直線的に比例して増加するのである。
そして、各変速比パターン(変速比線)も上述のペダル踏込み量が約70%の位置より少ない領域とそれより大きい領域とで異なるようにしている。図28の実施形態において、No.1〜No.11の線(図18において下の線から数えて順にNo.1〜No.11とする)では、ペダル踏込み量が約70%の位置より少ない領域で変速比線の勾配が低く、約70%の位置を越える領域では変速比線の勾配が高くなるように設定されている。オペレータが加速を意図して、オペレータが通常のペダル踏込み量の範囲(約70%内)を越えてペダル232,233を踏込むとき、ペダル踏力の急激な増大で感得できる。また、オペレータが通常のペダル踏込み量の範囲(約70%内)を越えてペダル232,233を踏込むだけで、簡単に増速させることができる。
No.12の線(図18において下の線から12番目の線)では、ペダル踏込み量が0%〜100%まで変速比線はほぼ一直線に設定されている。No.13及びNo.14の線(図18において下の線から数えてNo.13及びNo.14とする)では、ペダル踏込み量が約70%の位置を越える領域での変速比線の勾配が、約70%の位置より少ない領域での勾配より低く設定されている。No.15の変速比線は、ペダル踏込み量が約70%の位置(踏み込み抵抗変更手段242がペダルに作用する直前)で変速比2となる直線である。
次に、変速比制御のフローチャート(図19)を参照しながら変速比適応制御態様を説明する。上述のように、前進ペダル232(または後進ペダル233)の踏込み量に比例させて比例制御電磁弁203を作動し、主変速油圧シリンダ556を駆動させて油圧無段変速機29の油圧ポンプ部500の圧油吐出量を制御する。その制御は、設定ダイヤル221で設定した変速比パターン(No.1〜No.15)を遂行する自動制御であり、より詳しくは、変速ペダル232,233の踏込み量を自己監視し、その踏込み量の変化に応じて変速比設定ダイヤル221で設定した変速比の目標線に追従するように自動制御するものである。これにて主変速出力軸36の回転数を無段階に変更調節できるものである。図9の変速比適応制御では、エンジンを始動させ(S1)、オペレータが前進ペダル232を最大踏込み位置に踏み込んだ状態で(S2:yes)、変速比設定ダイヤル221にて、作業種類等に応じてオペレータが所望の変速比パターン(No.1〜No.15)を選択・決定する(S3)と、走行コントローラ210のRAM(随時読み書き可能メモリ)に記憶された所定の変速比パターン(No.1〜No.15)が読み出される(S4)。
次に、オペレータがトラクタ1を前進(後進)させるために前進ペダル232(後進ペダル233)を踏み込むことにより、変速ポテンショメータ220からペダル踏込み量を走行コントローラ210に読み込む(S5)。この読み込み数値に基づいて、走行コントローラ210の演算部では、上記の選択された変速比パターン(No.1〜No.15)上のペダル踏込み量に対応する目標変速比値を算出する(S6)。なお、設定ダイヤル221の目盛がN(変速中立)の場合、前進ペダル232及び後進ペダル233の踏込み量に関係なく、油圧無段変速機29の出力が略零(変速比を0)に維持される。
他方、走行コントローラ210では、走行中に常時一定時間間隔(サンプリング時間間隔)毎に、エンジン回転センサ206からエンジン回転数を読み込み、主変速出力部回転センサ116により、主変速出力部回転数を検出して読み込む(S7)。サンプリング時間(現在)でのエンジン回転数(分母)と主変速出力部回転数(分子)との比率から現在変速比値を演算し、現在変速比値が目標変速比値に略等しいか否かを判別する(S8)。現在変速比値が目標変速比値から大小の所定%以上離しているときは(S8:no)、走行コントローラ210が比例制御電磁弁203の印加電圧値を補正することにより、油圧ポンプ部500の斜板角度を変更調節し、油圧モータ部501への作動油吐出量を制御して主変速出力軸36の回転数を増加または減少させるという主変速操作を実行する(S9)。
現在変速比値が目標変速比値に略等しければ(目標変速比値に対して現在変速比値が±所定%以内の場合)(S8:yes)、主変速出力軸36の回転数を維持させる(S10)。このように現在変速比値が目標変速比値に一致するようにフィードバック制御を行う。なお、トラクタが乾いた土の区域から水を多く含む土の区域に進入したときのように走行の負荷が増大するなどの外乱のために、エンジン5の出力トルク変動が不足した場合や環境変化によりエンジン5回転数が所定値から外れた場合には、電子ガバナーコントローラ213を作動させて、エンジン5回転数を所定の値に維持するように制御することは勿論である。
このような変速比適応制御を採用すれば、オペレータは一旦変速比設定ダイヤル221にて変速比の変速比パターンを設定した後は、前進ペダル232または後進ペダル233を操作するだけで、環境の変化や作業車両の走行負荷の変動により、現実の変速比の値が目標変速比の値からずれた時に、自動的に目標変速比の値に近づくように自動制御できる。また、エンジン5の回転数を負荷によって制御するための電子ガバナー214を備えたものであるから、エンジン5の回転数と油圧式無段変速機29の出力とを共に高効率に保持するように、エンジン回転数の制御とポンプ斜板509角度の制御とを実行できる。作業車両の走行操作を無段変速機構付きの自動車における走行操作に近似させて簡単にできる。長時間連続した作業でも疲労を少なくできる。
次に、図20に示すフローチャートを参照しながら、走行機体の走行停止制御について説明する。本実施形態のトラクタ1の始動時には、まず、オペレータはキースイッチ211をON位置に回動させて、走行コントローラ210等に電源が入り電気系統を立ち上がらせる。ブレーキペダル230を踏込みながら、キースイッチ211をスタータ212の作動位置に回動させて(S11)、エンジン5を始動させる(S12)。次に、キースイッチ211をON位置に戻すと(S13:yes)、油圧ポンプ部500の斜板角度を例えば略−11度に変更して変速比0に移動させる(S14)。この状態では、エンジン5の出力回転数の如何に拘らず、出力軸36の回転が略零になって主変速出力ギヤ37は停止する。
この変速比0に移動した時点から、T1時間経過したか否かを判別し(S15)、T1時間経過していない間は(S15:no)、走行コントローラ210は、前進クラッチ電磁弁46及び後進クラッチ電磁弁48の両者をOFFにして走行部への駆動力を遮断する(S16)。さらに、ブレーキシリンダ68に対するオートブレーキ電磁弁67をONにして後車輪4の制動(オートブレーキ作動)を実行する(S17)。これにより、トラクタ1の走行は停止する(S18)から、先に変速ペダル(前進ペダル232または後進ペダル233)を踏み込んで、オペレータがエンジン5を始動しても、発進しない。
そして、前記ステップS18の走行停止からさらにT2時間経過したか否かを判別し(S19)、T2時間経過したとき(S19:yes)、油圧ポンプ部500の斜板角度を略0度に移行させて変速比1にする(S20)。この場合、油圧ポンプ部500からの作動油が油圧モータ部501に供給されず、油圧式無段変速機29の作動油が循環しない。つまり、T2時間の間にオペレータが前進ペダル232または後進ペダル233を踏込まない(走行を開始しない)状態では、エンジン5の負荷を小さくし、無駄な燃料消費を回避できる。
前記ステップS15において、T1時間経過していれば(S15:yes)、上述した変速比適応制御等の走行作業を実行する(S21)。この走行作業中において、前進または後進ペダル232,233の踏込みがあるか否かを判別し(S22)。前進または後進ペダル232,233の踏込みがなかった場合(S22:no)、エンジン回転センサ215からのエンジン回転数、主変速出力部回転センサ116からの主変速出力回転数、及び車速センサ117からの車速を読取り(S23)、車速が所定の微小速度V1(例えば、0.1km/時間程度)以下になると(S24:yes)、オペレータが走行停止させる意図があるものと見做して上述のステップS16に移行する。これにより、オペレータはブレーキペダル230を踏むことなく停止できる。一方、車速が所定の微小速度V1より大きい場合には(S24:no)、オペレータは走行作業を続行する意思があるものと見做して、ステップS21の変速比適応制御等の走行作業を実行する。
次に、図21に示すフローチャートを参照しながら、走行機体の前後進切換制御について説明する。まず、エンジン5を始動させ(S31)、前進ペダル232を踏んで、変速比設定ダイヤル221にて、作業種類等に応じてオペレータが所望の変速比パターンを選択・決定する(S32)。このとき、左右ブレーキ65が作動して左右後車輪4を制動して走行機体が停止しているか否かを判別する(S33)。左右ブレーキ65が作動して左右後車輪4を制動しているときは(S33:yes)、図20の走行停止制御にて走行機体が停止した状態から前進(または後進)する発進制御モードになる。オペレータがトラクタ1を前進(後進)させるために前進ペダル232(後進ペダル233)を踏込むことにより、前進ポテンショメータ219(後進ポテンショメータ220)からペダル踏込み量を走行コントローラ210に読み込む(S34)。図20の走行停止制御にて走行機体が停止し、油圧ポンプ部500の斜板角度を略0度に移行させた変速比1のとき(S35:yes)、油圧ポンプ部500の斜板角度を略−11度に移行させて変速比0に移動させる(S36)。
油圧ポンプ部500の斜板角度が変速比0になったとき(S37:yes)、即ち主変速出力ギヤ37を絶対的に停止したとき、前進クラッチ電磁弁46(後進クラッチ電磁弁48)を作動し、前進クラッチ40(後進クラッチ42)を入りにし(S38)、左右ブレーキ65による後車輪4の制動を解除し(S39)、上述した図19の変速比適応制御が行われる(S46)。前進ペダル232(後進ペダル233)の踏込み量と、変速比設定ダイヤル221の設定値とにより算出された速度にて、トラクタ1が前進(後進)移動する。前進ペダル232(後進ペダル233)の踏込みによりスムーズに発進できる。
他方、左右ブレーキ65の少なくとも一方が非作動状態で左右後車輪4の少なくとも一方を制動していないときは(S33:no)、図19の変速比適応制御にて走行機体が前進(または後進)しているものと判断され、走行機体が前進(または後進)している状態から後進(または前進)する往復走行制御モードになる。このとき、エンジン回転センサ215からのエンジン回転数、主変速出力部回転センサ116からの主変速出力部回転数、及び車速センサ117からの車速を読込む(S40)。走行機体が前進(または後進)走行しているとき(S41:yes)、走行方向とは逆側の後進ペダル233(前進ペダル232)の踏込みがあるか否かを判断する(S42)。
走行方向とは逆側の後進ペダル233(前進ペダル232)の踏込みがあった場合(S42:yes)、走行方向の前進ペダル232(後進ペダル233)の踏込み中止にて、車速が微小速度V1(例えば、0.1km/時間程度)以下に減速すると(S43:yes)、前進クラッチ電磁弁46(後進クラッチ電磁弁48)をオフにして、前進クラッチ40(後進クラッチ42)を切りにする(S44)。略同時に、後進クラッチ電磁弁48(前進クラッチ電磁弁46)をオンにして、後進クラッチ42(前進クラッチ40)を入りにし(S45)、上述した図19の変速比適応制御が行われる(S46)。前進ペダル232(後進ペダル233)の踏込み量と、変速比設定ダイヤル221の設定値とにより算出された速度にて、走行機体が前進(後進)移動から一時的な停止状態を経て後進(前進)移動に移行する。前進ペダル232と後進ペダル233とを交互に踏込むことにより、走行機体の走行移動方向を前進と後進とに交互に切換え、走行機体をスムーズに往復移動できる。
次に、図22に示すフローチャートを参照しながら、走行機体の副変速高速切換制御について説明する。まず、エンジン5が回転しているエンジン回転中に(S50:yes)、高速・低速(副変速)切換スイッチ222を、副変速高速ONにして、副変速を低速側から高速側に切換えたときは(S51:yes)、主変速出力部回転センサ116からの主変速出力部回転数、及び車速センサ117からの車速を読込み(S53)、前進クラッチ40(後進クラッチ42)を切り(S54)、車速が速度V1以上か否かを判別する(S55)。
続いて、車速が所定の速度V1(例えば、0.1Km/時間程度)以下ではなく(S55:no)、作業を続行可能な速度V1以上のとき、高速クラッチ電磁弁666をONにし(S56)、副変速油圧シリンダ55を高速側に作動し、副変速用の低速クラッチ56を切って高速クラッチ57を継続する。略同時に、比例制御電磁弁203を作動して、油圧ポンプ部500の斜板角を、変速比下げ方向に移行する(S57)。そして、主変速出力部回転センサ116にて検出する主変速出力軸36の回転数と、車速センサ117にて検出する副変速軸50の回転数とが一致したか否かを判別する(S58)。主変速出力軸36の回転数と、副変速軸50の回転数とが略一致したときに(S58:yes)、切換スイッチ222を低速側から高速側に切換える直前に入りになっていた前進クラッチ40(後進クラッチ42)を再び入りにし(S59)、上述した図19の変速比適応制御が行われる(S60)。このように、主変速出力軸36の回転数と、副変速軸50の回転数とを略一致させた後、前進クラッチ40(後進クラッチ42)を再び入りにするから、前進クラッチ40(後進クラッチ42)を再び入りにしたときに、主変速出力軸36と副変速軸50の回転数の差が原因で、車速が急激に変化するのを防止できる。
他方、車速センサ117にて検出する車速が所定の速度V1以上か否かを判別したとき(S55)、車速が速度V1(例えば、0.1Km/時間程度)以下の場合(S55:yes)、左右ブレーキ65を入り作動し(S61)、登坂または下坂での逆行を防ぐ。略同時に、高速クラッチ電磁弁666をONにして高速クラッチ57を継続し(S62)、切換スイッチ222を低速から高速に切換る直前に入りになっていた前進クラッチ40(後進クラッチ42)を再び入りにし(S63)、左右ブレーキ65を切りにして左右後車輪4の制動を解除し(S64)、上述した図19の変速比適応制御が行われる(S60)。登坂または下坂などでトラクタ1の逆走を防いで走行副変速を低速から高速に変速できる。
次に、図23に示すフローチャートを参照しながら、走行機体の副変速低速切換制御について説明する。まず、エンジン5が回転していて副変速ギヤ機構30の高速クラッチ57が入りのときに(S70:yes)、高速・低速(副変速)切換スイッチ222が低速OFFのときは(S71:no)、副変速高速にて走行する(S72)。一方、切換スイッチ222を低速ON操作して、副変速を高速から低速に切換えたとき(S71:yes)、油圧ポンプ部500の斜板角度が一定変速比(C1=0.7)以上の場合(S73:yes)、一定変速比C1以下になるように比例制御電磁弁203を制御し、無段変速機29からの主変速出力を一定変速比C1以下に減速する(S74)。即ち、副変速が高速のときに油圧ポンプ部500の斜板角度が変速比C1以上の場合、副変速が低速のときの最高速度(油圧ポンプ部500の斜板角度が変速比2)と略同じかそれ以下になるように、油圧ポンプ部500の斜板角度を変速比C1以下に変更する。このように、副変速が低速のときの最高速度以下になるように、副変速が高速のときの走行速度を減速する。副変速を高速から低速に切換える前に、副変速低速の最高速度以下で前後車輪3,4を駆動し、無段変速機29の出力負荷の急増を防ぐ。なお、副変速が高速の油圧ポンプ部500の斜板角度が変速比C1のときの走行速度と、副変速が低速の最高速度の油圧ポンプ部500の斜板角度が変速比2のときの走行速度とが、略同じである。
上述のように、無段変速機29からの主変速出力を一定変速比C1以下に減速したとき(S74)、主変速出力部回転センサ116からの主変速出力部回転数、及び車速センサ117からの車速をそれぞれ読み込み(S75)、前進クラッチ40(後進クラッチ42)を切り(S76)、車速が所定の速度V1(例えば、0.1Km/時間程度)以上であるか否かを判別する(S77)。
また、車速が速度V1以下ではなく(S77:no)、作業を続行可能な場合、高速クラッチ電磁弁666をOFFにし(S78)、副変速油圧シリンダ55を低速側に作動し、副変速用の高速クラッチ57を切って低速クラッチ56を継続する。略同時に、比例制御電磁弁203を作動して、油圧ポンプ部500の斜板角を、変速比上げ方向に移行する(S79)。そして、主変速出力部回転センサ116にて検出する主変速出力軸36の回転数と、車速センサ117にて検出する副変速軸50の回転数とが一致したか否かを判別する(S80)。主変速出力軸36の回転数と、副変速軸50の回転数とが略一致したとき(S80:yes)、切換スイッチ222を高速から低速に切換える直前に入りになっていた前進クラッチ40(後進クラッチ42)を再び入りにし(S81)、上述した図19の変速比適応制御が行われる(S82)。主変速出力軸36の回転数と、副変速軸50の回転数とを略一致させた後、前進クラッチ40(後進クラッチ42)を再び入りにし、前進クラッチ40(後進クラッチ42)を再び入りにしたとき、車速が急激に変化するのを防止できる。
他方、上述のステップ77で、車速が所定の速度V1(例えば、0.1km/時間程度)以下の場合(S77:yes)、左右ブレーキ65を入り作動し(S83)、登坂または下坂などでの逆行を防止する。略同時に、高速クラッチ電磁弁666をオフにして低速クラッチ56を継続する(S84)。次いで、高速・低速切換スイッチ222を高速から低速に切換える直前に入りになっていた前進クラッチ40(後進クラッチ42)を再び入りにし(S85)、左右ブレーキ65を切り作動して左右後車輪4の制動を解除し(S86)、上述した図19の変速比適応制御が行われる(S82)。そのため、トラクタ1を停止することなく、また前記油圧式無段変速機29の変速駆動出力を中立(略零回転)にすることなく、副変速高速の走行から副変速低速の走行に低ショックにて移行でき、トラクタ1またはホイルローダなどの作業性を向上できる。
次に、図24に示すフローチャートを参照しながら、前後進手元操作制御について説明する。まず、前後進切換スイッチ223が中立位置に操作されている手元操作が中立のときは(S87:yes)、上述した図19の変速比適応制御が行われる(S88)。一方、前進ペダル232を最大踏み込み位置にロックレバー128操作にて維持して、前後進切換スイッチ223を前進位置に切換えたとき(S89:yes)、作業種類等に応じてオペレータが所望の変速比パターンを選択・決定した変速比設定ダイヤル221値を読み込み(S90)、走行コントローラ210のRAMに記憶された所定の変速比パターン(中立Nまたは図18のNo.1ないしNo.15)を読み出す。そして、前進クラッチ電磁弁46を作動し、前進クラッチ40を入りにし(S91)、オペレータが変速比設定ダイヤル221にて選択した変速比パターン(中立Nまたは図28のNo.1ないしNo.15)の最高速度を維持するように、比例制御電磁弁203を作動させる前進制御が実行される(S92)。
その結果、油圧無段変速機29の出力は、変速比パターン(中立N)で零になってトラクタ1が停止したり、オペレータが変速比設定ダイヤル221にて選択した変速比パターン(図18のNo.1ないしNo.15)の最高速度に維持され、トラクタ1が略一定の速度で前進方向に移動する。なお、オペレータが変速比設定ダイヤル221にて現在の変速比パターンと異なる他の変速比パターンを選択した場合、油圧無段変速機29の出力が多段的に変更される。また、前後進切換スイッチ223が中立位置に操作されて手元操作が中立にもどったときは(S93:yes)、ブレーキシリンダ68に対するオートブレーキ電磁弁67をONにして後車輪4を制動する(S94)。これにより、トラクタ1の走行は停止する。
他方、前進ペダル232を最大踏み込み位置にロックレバー128操作にて維持して、前後進切換スイッチ223を後進位置に切換えたとき(S95:yes)、変速比設定ダイヤル221値を読み込み(S96)、走行コントローラ210に記憶された所定の変速比パターン(中立Nまたは図18のNo.1ないしNo.15)を読み出す。そして、変速比パターン(図18のNo.1ないしNo.15)で後進クラッチ電磁弁48を作動し、後進クラッチ42を入りにし(S97)、オペレータが変速比設定ダイヤル221にて選択した変速比パターンの最高速度を維持するように、比例制御電磁弁203を作動させる後進制御が実行される(S98)。その結果、トラクタ1が略一定の速度で後進方向に移動する。
このように、前後進切換スイッチ223を前進または後進位置に切換える場合、先ず、前進ペダル232を最大足踏み位置にロックレバー128にて維持し、前進ペダル232及び後進ペダル233を一定位置に固定状態に保ちながら、オペレータが図19の変速比パターンを設定ダイヤル221にて選択・決定し、前後進切換スイッチ223を前進または後進位置に切換えて発進させ、トラクタ1の移動速度を設定ダイヤル221の多段変速にて切換え、トラクタ1を移動させる。なお、オペレータが変速比設定ダイヤル221にて現在の変速比パターンと異なる他の変速比パターンを選択した場合、油圧無段変速機29の出力が多段的に変更される。また、前後進切換スイッチ223が中立位置に操作されたとき(S99:yes)、オートブレーキ電磁弁67をONにして後車輪4を制動する(S100)。これにより、トラクタ1の走行は停止する。なお、変速比設定ダイヤル221の中立N(変速比パターン)選択でトラクタ1が停止する。
また、前後進切換スイッチ223が前進または後進位置に操作された場合、エンジン5が始動されていて、車速が所定の速度V1(例えば、0.1Km/時間程度)以下のとき、高速・低速(副変速)切換スイッチ222を、副変速高速スイッチONにして、高速クラッチ電磁弁666をオンにし、副変速油圧シリンダ55を高速側に作動し、副変速用の低速クラッチ56を切って高速クラッチ57を継続し、副変速を低速側から高速側に切換え可能にしている。同様に、車速が所定の速度V1以下のとき、切換スイッチ222を、副変速高速スイッチOFFにして、高速クラッチ電磁弁666をオフにし、副変速用の高速クラッチ57を切って低速クラッチ56を継続し、副変速を高速から低速に切換える。なお、前後進切換スイッチ223が前進または後進位置に操作された場合、切換スイッチ222の操作に関係なく、高速クラッチ電磁弁666をオフ維持し、低速クラッチ56の継続を維持してもよい。
上記の記載及び図7、図17から明らかなように、走行機体2に搭載されたエンジン5からの動力を変速する油圧式無段変速機29と、前記油圧式無段変速機29の変速比を変更する変速ペダルとしての前進ペダル232及び後進ペダル233と、前記前進ペダル232または後進ペダル233の操作量に基づいて前記油圧式無段変速機29を変速作動するように構成してなる作業車両において、前記前進ペダル232及び後進ぺダル233の踏込み量を検出する変速センサとしての変速ポテンショメータ220と、前記油圧式無段変速機29の最高出力を多段的に変更可能な複数の変速比パターン(N、No.1〜No.15)のいずれか1つを選択する速度設定手段としての変速比設定ダイヤル221と、前記油圧式無段変速機29の出力回転数を制御する制御手段としての走行コントローラ210とを備え、オペレータが座乗するための操縦座席8の少なくとも左右いずれか一側方に、オペレータの腕を載せるためのアームレスト8aを配置し、前記変速比設定ダイヤル221を前記アームレスト8aに配置したものであるから、例えば前記前進ペダル232をオペレータが最大足踏み操作し、オペレータがアームレスト8aに腕を載せた運転姿勢で前記変速比設定ダイヤル221を簡単に操作できる。前記油圧式無段変速機29の最大変速駆動出力回転数を変更し、前記作業車両としてのトラクタ1が連続して移動する速度を、作業条件に適した速度に決定できる。例えば圃場の枕地で方向転換して往復移動する耕耘作業などにおいて、前行程の移動速度を次行程で至極簡単に再現できる。トラクタ1またはホイルローダなどにおいて、方向転換と往復移動を繰り返す作業の運転操作性を向上でき、長時間の作業での疲労を少なくできる。
上記の記載及び図3、図7から明らかなように、前記油圧式無段変速機29からの出力を多段変速する副変速機構30を備え、前記副変速機構30をオペレータが切換操作するための副変速切換操作具としての高速・低速切換スイッチ222を、前記アームレスト8aに配置したものであるから、オペレータがアームレスト8aに腕を載せた運転姿勢で、前記変速比設定ダイヤル221と前記高速・低速切換スイッチ222を簡単に操作できる。例えばホイルローダに装着したアタッチメント(バケットなど)が軽負荷(バケットに土砂などを載せていない空の非作業状態)のときと、それ以外(バケットに土砂などを載せた作業状態)のときとで、前記変速比設定ダイヤル221と前記高速・低速切換スイッチ222の両方を操作し、ホイルローダなどにおける走行機動性を向上できる。
上記の記載及び図7から明らかなように、前記トラクタ1のアタッチメント(耕耘作業機など)を遠隔操作する遠隔コントローラとしての作業機姿勢コントローラ122を備え、前記作業機姿勢コントローラ122を前記アームレスト8aに配置したものであるから、オペレータがアームレスト8aに腕を載せた運転姿勢で、前記変速比設定ダイヤル221と前記作業機姿勢コントローラ122を簡単に操作できる。例えば耕耘作業機の耕耘速度と姿勢制御の両方を簡単に操作できる。
上記の記載及び図3、図7から明らかなように、前記油圧式無段変速機29からの出力を、前進推進力または後進推進力として車輪4に伝える前後進切換機構としての前進切換用及び後進切換用油圧クラッチ40,42を備え、前記前進切換用及び後進切換用油圧クラッチ40,42をオペレータが切換操作するための前後進切換操作具としての前後進切換スイッチ223を、前記アームレスト8aに配置したものであるから、オペレータがアームレスト8aに腕を載せた運転姿勢で、前記変速比設定ダイヤル221と前記前後進切換スイッチ223を簡単に操作できる。例えばトラクタ1またはホイルローダなどにおいて、交互に前進と後進を繰り返して往復移動する作業の運転操作性を向上できる。
さらに、上記の記載及び図10、図13から明らかなように、前記前進ペダル232を最大踏込み位置に維持するロック手段としての前記定速移動機構119と、前記定速移動機構119をロック作動させるロック操作具としてのペダルロックレバー128と、前記定速移動機構119の前進ペダル232維持動作を解除する解除操作具としてのブレーキペダル230とを備えたものであるから、例えば前記前進ペダル232をオペレータが手でロック操作でき、かつ前記前進ペダル232をオペレータが足で解除操作でき、オペレータが前記前進ペダル232のロックと解除を明確に認識して確実に操作できる。また、前記前進ペダル232を前記定速移動機構119によって踏込み位置に維持した場合、オペレータの足が前記前進ペダル232から誤って離れても、作業内容に適した移動速度を維持して作業を続行できる。また、例えば前記前進ペダル232をオペレータが最大足踏み操作し、前記油圧式無段変速機29の最大変速駆動出力回転数を変更し、前記作業車両としてのトラクタ1が連続して移動する速度を、作業条件に適した速度に決定できるし、圃場の枕地で方向転換して往復移動する耕耘作業などを、至極簡単にすることもできる。また、オペレータが前記前進ペダル232を最大足踏み位置に踏込んで、その踏込み位置に前記前進ペダル232を前記定速移動機構119によって維持できるから、オペレータが前記定速移動機構119の維持を解除して方向転換した後、最大足踏み位置に再び踏込んだ前記前進ペダル232を、前記定速移動機構119によって維持することにより、前記油圧式無段変速機29の前行程の変速出力を次行程でスムーズに再現できる。トラクタ1またはホイルローダなどにおいて、方向転換を繰り返す往復移動作業の走行機動性を向上でき、長時間の作業での疲労を少なくできる。
上記の記載及び図17、図19から明らかなように、前記走行コントローラ210は、前記前進ペダル232が最大踏込み位置のとき、前記変速比設定ダイヤル221にて設定された変速比パターン(N、No.1〜No.15)を記憶し、前記前進ペダル232の踏込み量に応じて、前記変速比設定ダイヤル221にて設定された変速比パターン(N、No.1〜No.15)に沿って、前記油圧式無段変速機29の出力回転数を制御するものであるから、オペレータが前記前進ペダル232を最大足踏み位置に踏込んで前記定速移動機構119を操作するだけで、前記油圧式無段変速機29の前行程の変速出力を次行程でスムーズに再現できる。例えば圃場の枕地で方向転換して往復移動する耕耘作業などを、至極簡単にすることができる。
上記の記載及び図17、図19から明らかなように、前記変速比設定ダイヤル221は、前記油圧式無段変速機29の最高出力を多段的に変更した複数の変速比パターン(N、No.1〜No.15)の選択位置と、前記油圧式無段変速機29の出力を略零にする中立位置とに、切換え可能に構成したものであるから、オペレータが前記前進ペダル232を踏込んで前記定速移動機構119を操作して最大足踏み位置などにロックした場合、前記変速比設定ダイヤル221をオペレータが操作して、前記油圧式無段変速機29の変速駆動出力回転数を多段的に変更できる。前記トラクタ1の停止(変速中立)、移動速度の多段切換などの従来の変速レバーに近似した操作を簡単にできる。また、エンジン5を作動させていても、前記変速比設定ダイヤル221を中立位置に切換えてオペレータが操縦座席8から離れることにより、オペレータが誤って前記前進ペダル232などを足踏み操作しても、その誤操作によって前記油圧式無段変速機29が誤動作するのを防止できる。
上記の記載及び図10、図13から明らかなように、前記エンジン5の回転数を変更するアクセル手段としてのスロットルアーム133と、前記前進ペダル232を前記スロットルアーム133に連結するクラッチ機構としてのアクセル連動機構118とを備えたものであるから、前記スロットルアーム133と前記前進ペダル232を、前記アクセル連動機構118を介して連結した場合、前記前進ペダル232を足踏み操作するだけで、前記油圧式無段変速機29の変速出力と、前記エンジン5の回転数とをスムーズに切換えることができる。例えば走行方向を大きく変更する走行域では、前記前進ペダル232の踏み込み量を少なくするだけで、前記油圧式無段変速機29の変速出力と前記エンジン5の回転数の両方を低くして、トラクタ1の移動速度を簡単に減速できる。一方、略直進する走行域では、前記前進ペダル232の踏み込み量を多くするだけで、前記油圧式無段変速機29の変速出力と前記エンジン5の回転数の両方を高くして、トラクタ1の移動速度を簡単に増速できる。
上記の記載及び図9、図10から明らかなように、前記油圧式無段変速機29の変速比を変更する後進ペダル233と、前記前進ペダル232及び後進ペダル233が同時に作動するのを防止する牽制機構としての伝達リンク機構275とを備えたものであるから、例えば前記前進ペダル232と後進ペダル233とをオペレータが同時に踏み込んでも、その踏み込み操作を前記伝達リンク機構275にて阻止でき、変速ポテンショメータ220または走行コントローラ210などが誤動作するを簡単に防止できる。