JP2011115323A - 歩行介助ロボット - Google Patents

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Abstract

【課題】転倒を防止でき、残存する随意性を生かすことのでき、疲労が少なく長時間の訓練ができ、移動式の歩行訓練が可能な歩行介助ロボットを提供する。
【解決手段】被介助者の歩行を訓練する駆動部と、体幹の運動を計測するセンサ、下肢の運動を計測するセンサ、腕の振りを計測するセンサを備え、各センサの計測結果から被介助者が転倒するか否かを判定し、「転倒」と判断した場合にはこれを防ぐ指令を生成し、「転倒でない」と判断した場合には通常訓練を続行し、前記駆動部が、被介助者の前後・左右旋回への身体全体の移動を介助・抑制し、かつ腰の揺動の一部を介助・抑制する独立二輪駆動の駆動輪12Wを備えた移動部と、腰の揺動の他の一部を介助・拘束し、かつ腕の振りを入力する腕振り入力部による入力を介助・抑制する体幹支持部130と、被介助者の股・膝・足の関節まわりの下肢の運動を介助・抑制する下肢駆動部140を備えた。
【選択図】図1

Description

本発明は、脊髄損傷の患者などの下肢に麻痺がある被介助者の胴部を後方から支えて歩行を補助し転倒の恐れがあるときは歩行を抑制して支えるようにする歩行介助ロボットに関する。
従来の歩行介助器具や機器は、静的な歩行の実現および体重の免荷による歩行の実現を目的とするもので、概ね次のように4つの例に分類される。
(1)第1の例
〈被介助者が自ら器具を動かして歩行の助けとするもの:歩行器・杖・平行棒〉
第1の例は、従来の歩行補助器具、すなわち歩行器、杖、平行棒などである。
被介助者がこれらの器具を自ら動かすことで歩行の助けとするものである。
これらはモータ駆動による積極的な介助は得られないため、被介助者の残存機能を活用することになる。
また、転倒防止のリスクが高いこと、正しい歩行パターンの獲得を被介助者まかせではできないことから、常に療法士による監視と介助・指導が必要である。この器具では主に静的な歩行を訓練する。静的な歩行とは、体の重心が常に足底の接地範囲内にあるように歩く方法である。
〈第1の例の問題点〉
第1の例の問題点は上記第1の例では転倒の危険があることで、被介助者が自らバランスを取る必要があり、療法士の監視が常に必要である。
また、前かがみの姿勢になりがちで正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくいため、療法士の適切な介助と指導が必要である。
また、疲労が大きく長時間の訓練が難しいことがある。静的な歩行に対する動的な歩行を訓練することはできない。なお、ここで動的な歩行とは、健常者による通常の歩行で、体重心が足底接地範囲内になくともよくゼロモーメントポイントが足底接地範囲内にあるように歩く方法である。静的歩行よりも運動性に優れる。健常者による通常の歩行は動的な歩行である。
(2)第2の例
〈体幹を吊り上げて姿勢を保持また体重を免荷し両下肢に把持した機構により下肢の動作を機械側から介助するもの:据え置き型の装置〉
第2の例は、据え置き型の装置であり、体幹を吊り上げて姿勢を保持また体重を免荷し両下肢に把持した機構により下肢の動作を機械側から介助できるものである。
ドイツのHesseらが開発したGait Trainerやスイスで製品化されたLokomat、また、特表2007−520310号公報がある。被介助者はその場で歩行動作の訓練を行う。
また、別の構成例として、Staufferらの開発したWalk Trainerがある。(Y.Stauffer, Y.Allemand, M.Bouri, J.Fournier, R.Clavel, “Pelvic Motion Measurement During Over Ground Walking, Analysis and Implementation on the WalkTrainer Reeducation Device", in Proc. IEEE Int. Conf. Intel. Rob. Syst. (IROS), pp.2362-2367, 2008)
〈第2の例の構成〉
第2の例の構成を図23に示す。
図23において、第2の例は、歩行状態を計測する歩行状態計測部2101と、訓練中の介助動作の指令を生成しサーボ系でトレッドミルと駆動部を制御するコントローラ2102と、トレッドミルと体幹支持部と下肢駆動部とから成る駆動部2103から構成される。
駆動部は、体の移動の代替としてベルト上での運動をさせるトレッドミル2104と、体重免荷のためのハーネス等吊下げ機構を有する体幹支持部2105と、下肢に装着して下肢運動の介助を出力する下肢駆動部2106から成る。
例えば、Gait Trainerでは足部に固定し前後に動かす板を左右2個有する下肢駆動機構を備え、トレッドミルの機能を兼ねるためこれを有しないが基本構造として第2の例に属する。
Lokomatでは大腿・下腿・足部ふくむ下肢全体を支持・駆動する下肢駆動機構を備える。この駆動軸は左右計6軸である。トレッドミルも備える。
〈第2の例の処理〉
第2の例の処理は、体幹にハーネスを取り付けハーネスを上方へ牽引し免荷された状態とする。次に下肢駆動機構により下肢の動作を介助する。Gait Trainerでは足部に固定した板を交互に前後に動かし、歩行様のパターンを生じさせる。Lokomatでは、下肢駆動機構が股・膝・足の3回転軸を同期させ左右交互の動作で歩行様のパターンを生成する。特表2007−520310号公報では足先のみを駆動する。トレッドミルの速度は下肢の歩行パターンに同期するよう調整される。なお、体幹の上方への牽引には別途駆動機構を有するものもある。また、WalkTrainerでは6自由度の揺動を計測でき、それに基づき、腰および下肢の運動を介助できる。
〈第2の例の作用/効果〉
第2の例の作用/効果としては、体幹をハーネス等で支持するため高い安全性、特に転倒防止効果がある。
また、体幹の姿勢保持と下肢の動作は同機構で支持・駆動することが可能なため、機能回復レベルに応じた訓練ができ、疲労が少なく長時間の訓練ができる。
〈第2の例の問題点〉
第2の例では、第1に正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくい問題がある。
これは免荷により足底反力が十分でないこと、体幹または下肢が常に強く拘束されていること、下肢の訓練が主で上体・腕・腰をふくむ全身を統合した訓練ができないことによる。
第2に下肢への介助動作のタイミングが適切でないという問題がある。
これは上体・腕の随意動作に対し下肢への介助動作が同期していないことによる。該タイミングは被介助者が自ら合わせる必要がある。なお、WalkTrainerでは腰の随意的運動を計測し、それを基に下肢を駆動できるとしているが、腰の随意的運動が困難な患者へは適用できない。また、機構も複雑で大掛かりである。実用化するには、自然な歩行を介助するための必要最低限の運動に絞って機構を簡素化する必要がある。
(3)第3の例
〈下肢に駆動機構を装着し下肢の運動と一体となりこれを介助するもの:可搬型の装置〉
第3の例は、可搬型の装置であり下肢に駆動機構を装着し下肢の運動と一体となりこれを介助するものである。被介助者は歩行動作をしながら移動することができる。
本田技研工業(特開2009−000195号公報、特開2008−073506号公報、特開2008−017981号公報、特開2007−330299号公報、特開2007−054616号公報、特開2007−029633号公報、特開2007−020909号公報、特開2007−020672号公報、特開2007−000616号公報、特開2006−061460号公報、特開2004−344305号公報、特開2004−344304号公報、特開2003−135543号公報、特開2002−301124号公報)、芝浦工大(特開2008−220635号公報)、東京理科大(特開2008−278921号公報、特開2007−014698号公報)、電通大(特開2007−159971号公報)などの公開公報がある。
〈第3の例の構成〉
第3の例の構成は、図24に示すように、歩行状態を計測する歩行状態計測部2201と、訓練中の介助動作の指令を生成しサーボ系で駆動部を制御するコントローラ2202と、下肢駆動部のみとから成る駆動部2203から構成される。本発明における車輪などを備えた移動部や体幹を支持する部分は備えていない。
下肢を駆動する下肢駆動部2206を装着し、股・膝・足の全部または一部を駆動する。上体と腕を駆動する機構も備えるものもある。筋電図センサや圧センサなど運動を計測するセンサを下肢に装着し、下肢への介助動作を対応する筋活動と同期させる。センサの代わりにモータ負荷から予測する方法もある。体幹を支持して吊り上げる機構は備えていない。
〈第3の例の処理〉
第3の例の処理は、下肢に配置した筋電図等のセンサ情報から下肢の筋活動または運動を計測もしくは推定する。これを基に下肢を介助するタイミングと介助量を計算し下肢駆動機構を動かす。また、下肢に直接センサを配置せず、下肢の運動を外乱とみた場合の下肢駆動機構のモータへの負荷変動から下肢の運動周期を推定し、これにもとづき下肢駆動機構を動かす方法もある。下肢駆動機構は、股・膝・足の全部または股周辺など一部の筋力をモータにより介助する。
〈第3の例の作用/効果〉
使用者の随意性を考慮した介助ができる。また、介助を適切に与えることで疲労が少なく長時間の運動ができる。
〈第3の例の問題点〉
第3の例の問題点は適用できるのがある程度随意性の高い人に限られることである。すなわち、第1に、健常者以外の身体に麻痺のある患者に適用した場合、転倒の危険がある。これは体幹を上に吊り上げる機構を持たないことから、自分でバランスを取る必要があるためである。このため、下肢に麻痺があるなどにより転倒の危険がある場合は、療法士の監視が常に必要となる。
第2に正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくい。これは体幹または下肢が常に強く拘束されており随意的に自由に動かせる範囲が小さいこと、上体・腕・腰をふくむ全身を統合した訓練を実施することを想定していないことによる。特に腕や下肢の動きと協調した腰の動作を介助する機構は備えていない。
(4)第4の例
〈可搬型で自律的に動く台車が被介助者を誘導するもの:可搬型の装置〉
第4の例は、可搬型であり自律的に動く台車が被介助者を誘導するものである。
日立グループ(特開2001−327563号公報、特開2000−024061号公報、特開平07−184966号公報、特開平05−329186号公報、特開平09−299420号公報)、ソニー(特開平10−21618号公報)、熊谷組(特開2007−229430号公報、特開平07−184966号公報)などの公開公報がある。
〈第4の例の構成〉
第4の例の構成を図25に示す。
第4の例は、歩行状態を計測する歩行状態計測部2301と、訓練中の介助動作の指令を生成しサーボ系で移動部を制御するコントローラ2302と、移動部2303とから構成される。
ここで移動部は歩行器に車輪を駆動する台車のような機構を備えたものである。コントローラには地図などを内蔵し自律走行が可能である。
〈第4の例の処理〉
第4の例の処理は、被介助者が手で歩行器のバーを握るかまたはバーに肘を置く。腰をベルトで保持するものもある。歩行器は内蔵した地図等により自律的にまたは被介助者の指示により移動し、それに誘導されて歩行を訓練する。
〈第4の例の作用/効果〉
第4の例の作用/効果は、手で歩行器のバーを握るかバーに肘を置くことでまたは腰を保持することで、疲労が少なく長時間の訓練ができる。
また、台車の移動で歩行する速度や方向を誘導でき、間接的に下肢の筋活動を調整できる。すなわち速度を落とせば下肢筋活動は少なくなる。
〈第4の例の問題点〉
第4の例では、第1に腰にベルトを備えない場合転倒の危険がある。被介助者が自分でバランスを取る必要があり、療法士の監視が常に必要となる。
第2に正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくい。被介助者の運動は健常者の運動と異なるパターンになる傾向があり、上体・腕・腰・下肢が協調的に動く動的な歩行パターンを訓練することは難しい。さらに腕固定・肘付で前かがみの姿勢になりがちでこの意味からも健常者の運動とは異なってしまい、上体・腕・腰をふくむ全身を統合した訓練を実現することが難しい。
第3に随意性を生かした訓練になっていない。これは上体・腕の随意動作に対し下肢への介助動作が同期していないこと、腕など介助不要な部位も拘束し随意的な運動ができないことによる。
このように、第1の例では、転倒の危険があることで、被介助者が自らバランスを取る必要があり、療法士の監視が常に必要である。また、前かがみの姿勢になりがちで正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくいため、療法士の適切な介助と指導が必要である。また、疲労が大きく長時間の訓練が難しいことがある。静的な歩行に対する動的な歩行を訓練することはできない。
また、第2の例では、第1に正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくい問題がある。これは免荷により足底反力が十分でないこと、体幹または下肢が常に強く拘束されていること、下肢の訓練が主で上体・腕・腰をふくむ全身を統合した訓練ができないことによる。
第2に下肢への介助動作のタイミングが適切でないという問題がある。これは上体・腕の随意動作に対し下肢への介助動作が同期していないことによる。該タイミングは被介助者が自ら合わせる必要がある。なお、WalkTrainerでは腰の随意的運動を計測し、それを基に下肢を駆動できるとしているが、腰の随意的運動が困難な患者へは適用できない。また、機構も複雑で大掛かりである。実用化するには、自然な歩行を介助するための必要最低限の運動に絞って機構を簡素化する必要がある。
第3に装置が据え置き型で大掛かりである問題がある。
また、第3の例では、適用できるのがある程度随意性の高い人に限られるのが問題である。
すなわち、第1に、健常者以外の身体に麻痺のある患者に適用した場合、転倒の危険がある。これは体幹を上に吊り上げる機構を持たないことから、自分でバランスを取る必要があるためである。このため、下肢に麻痺があるなどにより転倒の危険がある場合は、療法士の監視が常に必要となる。
第2に正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくい。これは体幹または下肢が常に強く拘束されており随意的に自由に動かせる範囲が小さいこと、上体・腕・腰をふくむ全身を統合した訓練を実施することを想定していないことによる。特に腕や下肢の動きと協調した腰の動作を介助する機構は備えていない。
また、第4の例では、第1に腰にベルトを備えない場合転倒の危険がある。被介助者が自分でバランスを取る必要があり、療法士の監視が常に必要となる。
第2に正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくい。被介助者の運動は健常者の運動と異なるパターンになる傾向があり、上体・腕・腰・下肢が協調的に動く動的な歩行パターンを訓練することは難しい。さらに腕固定・肘付で前かがみの姿勢になりがちでこの意味からも健常者の運動とは異なってしまい、上体・腕・腰をふくむ全身を統合した訓練を実現することが難しい。
第3に随意性を生かした訓練になっていない。これは上体・腕の随意動作に対し下肢への介助動作が同期していないこと、腕など介助不要な部位も拘束し随意的な運動ができないことによる。
〈従来技術の問題点〉
以上より、従来技術には下記のような(イ)〜(ホ)の問題があった。
(イ) 転倒の危険がある。
自分でバランスを取る必要があるが、バランス機能が衰えている被介助者には適用できない。また療法士の監視が常に必要となる。
(ロ) 正しい姿勢・運動パターンを獲得しにくい。
これは体幹または下肢が常に強く拘束されていること、免荷により足底反力が十分でないこと、歩行パターンが静的であり健常者が通常の歩行で行う動的な歩行パターンを訓練することが難しいこと、腕固定・肘付で前かがみの姿勢になりがちであること、上体・腕・腰をふくむ全身を統合した訓練が実現できないことのいずれかによる。
(ハ) 随意性を生かした訓練になっていない。
これは上体と腕の随意動作と下肢への介助動作が同期していないこと、介助が不要な部位も拘束しているため随意的な運動ができないことによる。
(ニ) 疲労が大きく長時間の訓練ができない。
(ホ) 装置が据え置き型で大掛かり。
〈本発明の目的〉
したがって、本発明の目的は上記の(イ)〜(ホ)の問題点をすべて解決するためになされたもので、次の(ヘ)〜(ヌ)ができる介助ロボットを提供することにある。
(ヘ) 高い安全性。特に転倒を防止する。
すなわち、バランスが崩れるなど転倒時には機械が被介助者の運動を拘束できることである。
(ト) 静的歩行パターンから動的歩行パターンまでを介助する。
すなわち、体幹・下肢は転倒時以外拘束されないこと、足底反力が十分であること、健常者による通常の歩行パターンである動的な歩行パターンが訓練できること、前かがみでない正しい姿勢を保てること、上体・腕・腰の全身の動きを統合した訓練できることである。
(チ) 残存する随意性を生かす。
すなわち、上体・腕の随意動作と下肢への介助動作が同期すること、介助不要な部位は拘束せず随意的に運動できることである。
(リ) 疲労が少なく長時間の訓練ができること。
(ヌ) 大掛かりでなく移動式の歩行訓練が可能であること。
特開2008−073506号公報 特開2009−000195号公報 特開2001−327563号公報
本発明は、以上の点に鑑み、上記従来例を改良して被介助者が自力で容易に装着して歩行訓練できる歩行介助装置を提供することをその課題としている。
上記課題を解決するために、本願第1発明は歩行介助ロボットに係り、被介助者の身体に装着して前記被介助者の歩行を訓練する駆動部と、前記被介助者の体幹の運動を計測するセンサ、下肢の運動を計測するセンサ、および腕の振りを計測するセンサを備えた歩行状態計測部と、前記各センサの計測結果から前記被介助者が転倒するか否かを判定し、「転倒」と判断した場合にはこれを防ぐ指令を生成し、また「転倒でない」と判断した場合には通常訓練としての指令を生成し、生成した前記指令を前記駆動部のサーボ系に与えてこれを制御するコントローラと、を有する歩行介助ロボットであって、前記駆動部が、前記被介助者の前後・左右旋回への身体全体の移動を介助または抑制し、かつ前記被介助者の腰の揺動の一部を介助または抑制する独立二輪駆動の駆動輪を備えた移動部と、前記被介助者の腰の揺動の他の一部を介助または拘束し、かつ前記被介助者の腕の振りを入力する腕振り入力部による入力を介助または抑制する体幹支持部と、前記被介助者の股・膝・足の関節まわりの下肢の運動を介助または抑制する下肢駆動部を有することを特徴としている。
本願第2発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、前記移動部が、独立2輪の駆動輪を有しており、電源と制御部分を内蔵する車体から成り、前記体幹支持部が、前記車体に連結されて、前記被介助者の体幹の腰部を支持して腰誘導のための水平軸方向の回転駆動軸を有し、前記腕の振り入力部が、前記体幹支持部に連結されて、前記被介助者の腕の振りを入力し、前記下肢駆動部が、前記体幹支持部に連結されて、前記被介助者の下肢を駆動し、さらに、前記体幹支持部に連結されて、前記被介助者の股を下から支持する股下支持部を有することを特徴としている。
本願第3発明は、第2発明の歩行介助ロボットにおいて、前記体幹支持部が、前記移動部に水平軸方向の回転駆動するギアとモータを介して連結し、前記被介助者の腰を左右から支持する二股部材を前記水平軸の先端に有し、
前記下肢駆動部が、前記体幹支持部の前記二股部材に前記被介助者の左右の下肢をそれぞれ独立に駆動する一対のギアとモータを介して連結されて、かつ前記歩行状態計測部のセンサとアンプを搭載し、前記移動部が、前記各駆動輪にギアとモータを連結し、前記モータを駆動するアンプと前記下肢駆動部のモータのアンプと前記体幹支持部のモータのアンプとコントローラと電源を車体に内蔵することを特徴としている。
本願第4発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、前記股下支持部が、前記体幹支持部に結合されて、その先端が前記被介助者の股下に配置し前記被介助者の股が沈下した際にこれを支持する支持部材と、前記支持部材に前記被介助者の腰の動作を計測するセンサと下肢の大腿の前後左右上下の動作を計測するセンサを備え、前記体幹支持部の前記被介助者の腰の動きを計測するセンサを備えた腰揺動計測部を備え、前記被介助者の上肢の動きを計測するセンサを備えた腕振り計測部を備えたことを特徴としている。
本願第5発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、前記コントローラが、以下のステップ(1)および(2)を実行することを特徴としている。
(1)予め定めておいた各計測値の閾値aと、前記歩行状態計測部において取得された各計測値xを基に、それに対応する閾値aの80%(0.8*a)と閾値aとを各計測値xと比較して、次の(イ)〜(ハ)のいずれかの判定をするステップと、
(イ)いずれのセンサ値xも|x|<0.8aを満たすなら、「前記介助動作を継続する」と判定する。
(ロ)いずれかのセンサ値xが、a>|x|>=0.8aなら、「前記介助動作をやめて動作を抑制する」と判定する。
(ハ)さらに、いずれかのセンサ値xが|x|>=aなら、「前記駆動部の動作を一時停止する」と判定する。
(2)上記判定結果を前記駆動部へ指令するステップ。
本願第6発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、前記コントローラが、以下のステップ(1)〜(4)を実行することを特徴としている。
(1)一時停止の判断の閾値として誤判別確率の目標値から対応する判別スコアを求め、これを閾値aと予め定めるステップと、
(2)前記歩行状態計測部において取得された各計測値xを基に、該計測値の判別スコアcを求めるステップと、
(3)各計測値xに対応する閾値aの80%(0.8*a)と前記閾値aとを前記各計測値xと比較して、次の(イ)〜(ハ)のいずれかの判定をするステップと、
(イ) |x|<0.8aを満たすなら、「前記介助動作を継続する」と判定する。
(ロ) a>|x|>=0.8aなら、「前記介助動作をやめて動作を抑制する」と判定する。
(ハ) |x|>=aなら、「前記駆動部の動作を一時停止する」と判定する。
(4)上記判定結果を前記駆動部へ指令するステップ。
本願第7発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、前記コントローラが、以下のステップ(1)〜(3)を実行することを特徴としている。
(1)注目する特徴に関する計測値を予め選定し、それら計測値の各閾値aを設定するステップ、
(2)前記歩行状態計測部において取得された計測値を基に、前記計測値に対応する閾値aを前記各計測値xと比較して、次の(イ)〜(ハ)のいずれかの判定をするステップと、
(イ) 今回の計測値xがすべてその閾値aに応じて|x|>aを満たすなら、「前記駆動部の動作を一時停止する」と判定する。
(ロ) (イ)でなければ、今回の計測値のうち少なくとも1個が|x|>0.8aを満たすなら、「前記介助動作をやめて動作を抑制する」と判定する。
(ハ) (ロ)でなければ、「前記介助動作を継続する」と判定する。
(3)上記判定結果を前記駆動部へ指令するステップ。
本願第8発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、前記コントローラが、以下のステップ(1)〜(3)を実行することを特徴としている。
(1)前記歩行状態計測部において取得された現在および過去のセンサ情報を基に、各計測値の移動平均σと標準偏差sdを求めるステップ、
(2)今回の当該計測値xと前記移動平均σとの差の絶対値|x−σ|と前記標準偏差sdとを比較して、次の(イ)〜(ハ)のいずれかの判定をするステップと、
(イ)|x−σ|<sdなら、「前記介助動作を継続する」と判定する。
(ロ) 2sd>|x−σ|>=sdなら、「前記介助動作をやめて動作を抑制する」と判定する。
(ハ)|x−σ|>=2sdなら、「前記駆動部の動作を一時停止する」と判定する。
(3)上記判定結果を前記駆動部へ指令するステップ。
本願第9発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、前記コントローラが、
(1)転倒の危険性が中程度と判定した場合、次の(イ)〜(ホ)の1つ以上を行わせ、
(イ)前記移動部の移動速度を低下させ、
(ロ)前記移動部と体幹支持部による腰揺動の速度を低下させ、
(ハ)前記股下支持部の回転軸の粘性を上げ、
(ニ)前記腕振り計測部において被介助者の手腕で把持する部材の動作の粘性を上げ、
(ホ)前記下肢駆動部の下肢運動の速度を低下させ、
(2)転倒の危険性が大きいと判定した場合、次の(へ)〜(ヌ)の1つ以上を行わせ、
(ヘ)前記移動部の移動を停止させ、
(ト)前記移動部と体幹支持部による腰揺動を停止させ、
(チ)前記股下支持部の回転を固定し、
(リ)前記腕振り計測部において被介助者の手腕で把持する部材の動作を固定し、
(ヌ)前記下肢駆動部の下肢運動を停止させ、
(3)転倒の危険性が小さいと判定した場合、次の(ル)を行わせる
(ル)前記被介助者の腰の前後・左右・上下への3次元の揺動を介助するよう、前記腕振り計測部への入力を基に前記被介助者の歩行周期に同期して、前記駆動部の移動部と前記体幹支持部と前記下肢駆動部とを協調して動作させる。
ことを特徴としている。
本願第10発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記腕振り計測部が、前記被介助者の手で把持するための腕の振り入力バーと、該腕の振り入力バーを前記体幹支持部に結合する回転軸と、該回転軸に角度センサとブレーキとを有し、該ブレーキにより前記腕の振り入力バーの動きを制限することで前記腕の振りを抑制することを特徴としている。
本願第11発明は、第1発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記股下支持部が、トーションバーを介して前記体幹支持部に結合され、角度センサとブレーキとを同軸上に備え、前記角度センサにより前記腰支持部材の姿勢を計測し、圧力・加速度・接触圧のいずれかを計測するセンサを前記腰支持部材の前記回転軸付近の複数箇所に備え、前記腰支持部材の前後・左右・上下の動作と負荷を計測し、前記ブレーキにより前記腰支持部材の姿勢変化を拘束することを特徴としている。
本願第12発明は、第9発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記腰揺動計測部が、被介助者の体幹の一部である腰の動きを左右・後方から支持する体幹支持部と、前記体幹の前方に備えた腰ベルトと、前記腰ベルトおよび前記体幹支持部材に備えた各エアバッグと、前記コントローラからの指令により前記各エアバッグの圧を調整する圧力制御器と、前記エアバッグの各表面に配置された圧センサとを備えて成ることを特徴としている。
本願第13発明は、第12発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記コントローラが、
転倒の危険性が小さいと判定した場合、前記エアバッグの圧力を減らしかつ前記腰揺動計測部にて計測した前記圧センサの計測値にしたがって柔軟制御を実施するよう前記下肢駆動部への指令を生成し、
転倒の危険性が中程度以上のとき、前記エアバッグの圧力を増やしかつ柔軟制御を停止するよう前記下肢駆動部への指令を生成することを特徴としている。
本願第14発明は、第12発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記移動部が、前記駆動輪によるその場での旋回機能を有し、かつ、前記圧センサで計測した圧情報を基にばね・ダンパ系で構成される柔軟モデルで表現される機構を有するかのごとく前記旋回機能が左右への旋回を行うことを特徴としている。
本願第15発明は、第12発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記移動部が、前記圧センサで左にかかる圧p1と右にかかる圧p2の各検出を行い、左右の圧力差p1−p2を基に前記移動部の旋回中心に対するトルクTを求め、前記トルクと前記柔軟モデルから旋回角度θを求め、前記移動部旋回指令値θを基に前記移動部の各駆動輪を駆動することを特徴としている。
本願第16発明は、第12発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記体幹支持部が、前記移動部に支持されて、いずれも水平平面内で動作する第1平行リンクと第2平行リンクを備え、かついずれのリンクも各1個の駆動モータで独立に駆動され、前記被介助者の体幹を前記第1平行リンクで水平面内の左右横方向に移動をさせ、前記第2平行リンクで水平面内の回旋をさせ、さらに、前記下肢駆動部を常に前記体幹支持部の正面の向きに平行な姿勢に保つことを特徴としている。
本願第17発明は、第16発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記コントローラが、前記駆動部内の前記移動部と前記体幹支持部と前記下肢駆動部とを協調して動作させる際、被介助者の腰の動きが足の接地状態に応じて変化することに着目して被介助者の足の接地状態に応じて、
(1)立脚中期(右脚接地)には、腰の水平面での左旋回と前額面での左旋回と右側方へ揺動に対する介助動作を同時に実行し、
(2)立脚中期(左脚接地)には、腰の水平面での右旋回と前額面での右旋回と左側方へ揺動に対する介助動作を同時に実行し、
(3)両脚支持期においては、
(イ)直前の立脚中期が左脚接地であれば水平面での左旋回と前額面での左旋回と側方揺動が無いことに対する介助動作を実行し、
(ロ)直前の立脚中期が右脚接地であれば水平面での右旋回と前額面での右旋回と側方揺動が無いことに対する介助動作を実行すること
を特徴としている。
本願第18発明は、第10発明の歩行介助ロボットにおいて、
前記コントローラが、前記腕振り計測部への入力値である前記被介助者が手で把持する前記腕の振り入力バーの回転角度において、一方の腕と同側の下肢とにおいて互いの前後の振り動作の位相が180度ずれるように、前記駆動部への指令を生成することを特徴としている。
本願第19発明は、歩行介助ロボットに係り、
被介助者の身体に装着して前記被介助者の歩行を訓練する駆動部と、
前記被介助者の体幹の運動を計測するセンサ、下肢の運動を計測するセンサ、および腕の振りを計測するセンサを備えた歩行状態計測部と、
前記各センサの計測結果から前記被介助者が転倒するか否かを判定し、「転倒」と判断した場合にはこれを防ぐ指令を生成し、また「転倒でない」と判断した場合には通常訓練としての指令を生成し、生成した前記指令を前記駆動部のサーボ系に与えてこれを制御するコントローラと、を有する歩行介助ロボットであって、
前記駆動部が、前記被介助者の前後・左右旋回への身体全体の移動を介助または抑制し、かつ前記被介助者の腰の揺動の一部を介助または抑制する独立二輪駆動の駆動輪を備えた車両から成る移動部と、
前記被介助者の腰の揺動の他の一部を介助または拘束し、かつ前記被介助者の腕の振りを入力する腕振り入力部による入力を介助または抑制する体幹支持部と、
前記被介助者の股・膝・足の関節まわりの下肢の運動を介助または抑制する下肢駆動部と、
前記体幹支持部に連結されて前記被介助者の股を下から支持する股下支持部を有し、
前記駆動輪は前記車両の両側に設けられて、倒立制御が実施され、
前記体幹支持部は回転軸とその先端が二股に分かれた形状をし、当該二股の間に前記被介助者の腰が固定され、前記回転軸の反対側が前記車両に取り付けられ、
前記腕振り入力部が前記二股部分にそれぞれ設けられ、
前記下肢駆動部は、前記被介助者の大腿を囲う枠体と、前記枠体内に取り付けられ大腿の前後を押さえるエアバッグと、前記枠体を前記被介助者の股関節を中心にして揺動させる揺動部材と、前記揺動部材を揺動させるモータとを備え、前記モータを前記体幹支持部に取り付け、
前記股下支持部は、腰ベルトと大腿ベルトと前記両ベルト間を繋ぐ連結ベルトで前記被介助者の腰部を支持し、前記腰ベルトを、角度センサ付き水平面内回転軸と角度センサ・ブレーキ付き垂直面内回転軸とを介して前記体幹支持部に取り付けることを特徴としている。
上記発明によれば、高い安全性、特に転倒を防止でき、静的歩行パターンから動的歩行パターンまでを介助し、残存する随意性を生かすことのでき、疲労が少なく長時間の訓練ができ、大掛かりでなく移動式の歩行訓練が可能となる歩行介助ロボットを得ることができる。
図1は本発明に係る歩行介助ロボットの全体システム構成を示す図である。 図2は駆動部の機能と歩行状態計測部とコントローラの機能について説明する図である。 図3は図1に示した歩行介助ロボットを被介助者Pが使用している状態を示す概念側面図である。 図4は移動部の構成を説明する概念図である。 図5は体幹支持部の形状を説明する図で、(A)は体幹支持部130の正面図、(B)はその平面図である。 図6は下肢駆動部の形状を説明する図で、(A)は下肢駆動部の平面図、(B)はその正面図である。 図7は下肢駆動部の動作原理を説明する図で、(A)は下肢駆動部の分解斜視図、(B)は下肢駆動部の先端に取り付けられる大腿支持部の平面図、(C)は被介助者の股・膝を屈曲促進させる仕組みを説明する図で、(イ)は直立時、(ロ)は歩行時を表している。 図8は歩行状態計測部の全体構成を説明する図である。 図9は図8の股下支持部を説明する図で、(A)は股下支持部の構成を説明する概念図、(B)は股下支持部の回転軸配置の説明図、(C)は股下支持部の本体を成す腰支持部材のセンサ取り付け位置の説明図で、(イ)は正面図、(ロ)は側面図である。 図10は腰揺動計測部の詳細を示す平面図である。 図11は腕振り計測部の詳細を示す図である。 図12は転倒判定方法の第1の例を示す図である。 図13は転倒判定方法の第2の例を示す図である。 図14は転倒判定方法の第3の例を示す図である。 図15は転倒判定方法の第4の例を示す図である。 図16は転倒への対処の第1の例を示す図である。 図17は転倒への対処の第2の例を示す図である。 図18は通常訓練時の介助方法の第1の例の構成例を説明する図である。 図19は通常訓練時の介助方法の第1の例の動作例で説明する図である。 図20は通常訓練時の介助方法の第2の例で腰左右・回旋揺動のための体幹支持部の機構例を説明する図である。 図21は通常訓練時の介助方法の第3の例を説明する図で、(A)は足の接地状態と腰揺動との関係を示す図、(B)は腰揺動を後方から見た図である。 通常訓練時の介助方法の第4の例を図22で説明する。 図23は従来の歩行介助器具の第2の例の構成を示す図である。 図24は従来の歩行介助器具の第3の例の構成を示す図である。 図25は従来の歩行介助器具の第4の例の構成を示す図である。
この発明の実施形態の歩行介助ロボットについて、全体のシステム構成を図1で説明する。
〈本発明に係る歩行介助ロボットの全体システム構成〉
図1は本発明に係る歩行介助ロボットの全体システム構成を示す図である。
図1において、本発明に係る歩行介助ロボットは、歩行訓練を必要とする患者である被介助者を転倒しないように後側から腰部を支えながら歩行訓練をさせるもので、転倒の虞がないときは両方の下肢を交互に駆動して前進・後退・左右旋回を介助し、転倒の虞があるときは介助動作を抑制し、転倒させない動作を行うものである。
全体のシステムとしては、歩行介助ロボット10と、歩行介助ロボット10を使用するため被介助者が身体に装着するもの、とで構成される。
以下、これらについて説明する。
〈歩行介助ロボット10の体幹支持部130の構成〉
歩行介助ロボット10の駆動部は、左右に駆動輪12Wのある移動部である車体120(後述)と、この車体120の頂部に設けられたモータ13Mによって回転可能に取り付けられている体幹支持部130と、下肢駆動部140(後述)とで構成される。体幹支持部130はモータ12Mの反対側先端の連結アーム13Bで左右の二股に分かれ、二股の両端にアーム(左アーム13Lと右アーム13R)が形成され、左アーム13Lと右アーム13Rの先端にそれぞれ面ファスナー付きの腹ベルト18Bが取り付けられている。
《被介助者Pの体幹の固定》
この腹ベルト18Bと二股アーム13R、13Lと連結アーム13Bのそれぞれの内側には圧センサ18P付きエアバッグ18Aが設けられており、被介助者Pの体幹(主として腰)を腹ベルト18Bと二股アーム13R、13Lの内側に納めて、面ファスナー付きの腹ベルト18Bで腹部を押さえ、エアバッグ18Aを膨らませると、被介助者Pの体幹を二股アームの内側に固定することができ、各圧センサ18Pがその部位の圧力を計測する。
《被介助者Pの大腿の固定》
一方、二股アーム13R、13Lの外側にはそれぞれギア付きモータ14M/Gが取り付けられ、モータシャフトに固定されたL型リンク14Lが下方に延びかつそこから互いに内側に向かって延び、その先端で被介助者Pの大腿が位置する部位に大腿支持部170が取り付けられている。
大腿支持部170は大腿を取り囲む断面コ字状をしたプラスチック製コ字状枠とコ字状両端枠にそれぞれ面ファスナー付きの大腿ベルト17Bが取り付けられている。また、プラスチック製コ字状枠の内側の前後にエアバッグ17Aが取り付けられている。そこで、被介助者Pが自分の大腿をプラスチック製コ字状枠の内側に入れて、両方の大腿ベルト17Bの面ファスナーを互いに重ねて大腿を大腿支持部170に軽く固定した後、エアバッグ17Aを膨らませることで大腿を大腿支持部170の内側にしっかりと固定することができる。
このようにして大腿支持部170に固定された大腿は、ギア付きモータ14Mを前後に旋回駆動することで強制的に前後に動かされるようになる。
このようにギア付きモータ14M/Gから大腿支持部170までで下肢駆動部140を構成する。
《身体の名称の定義》
ここで、本発明の説明に用いる身体の名称についての定義を記載しておく。
「下肢」とは、股〜膝〜足に至る身体の部分である。
「股下」とは、左右の大腿に共通する付け根の部分である。
「大腿」とは下肢の一部で股〜膝に至る部分である。
「上肢」とは肩〜腕〜手指に至る身体の部分である。
《被介助者Pの股下の支持》
股下支持部160は、布製の腰ベルト16Bと大腿ベルト16Dとこの両者を連結する連結ベルト16Rから成る被着部163と、この被着部163の背中側に設けられた腰支持部材180(図9)を介して、垂直面内に回転し角度センサおよびブレーキとを有する回転軸162(以下、垂直面回転軸162という。)162とこの垂直面回転軸162に連結される水平面内にフリーに回転し角度センサを有する回転軸161(以下、水平面回転軸161という。)とを経て最終的に体幹支持部130の下側に取り付けられて成る。この股下支持部160によって被介助者Pの腰部を自由に水平及び垂直方向に動かせるようになる。
また、被着ベルトの両腰側に係止部16Fを設け、歩行介助ロボット10の二股アーム13R、13Lの上部に設けられた係止孔13Fに係合させて被介助者Pの腰部を固定している。
《被介助者Pの腕の運動》
二股アーム13R、13Lの上には被介助者Pの腕の振り入力部190がそれぞれ設けられている。腕の振り入力部190はレバー状をしていてその根元側に回転軸があり、角度センサとブレーキを介して二股アーム13R、13Lに固定されている。被介助者Pがこのレバーを握って、歩行時に左右に前後させることで被介助者Pの腕の振りを入力することができる。
以上が、本発明に係る歩行介助ロボットの全体システム構成である。
次ぎに、全体のシステムを構成する各部の機能について説明をする。図2は駆動部100の機能と、歩行状態計測部200と、コントローラ300の機能について説明する図である。
(1)駆動部100は、移動部120と体幹支持部130と下肢駆動部140とを備え、コントローラ300の判定結果を基に、それぞれ移動部120と体幹支持部130と下肢駆動部140とを最適に駆動するものである。
(2)歩行状態計測部200は、被介助者Pの歩行状態を各センサから測定して計測結果を求めるものである。
(3)コントローラ300は、歩行状態計測部200の計測結果を受信して、「被介助者が転倒するか否か」を判定し、「転倒」と判断した場合には転倒を防ぐ指令を生成し、駆動部100に送る。「転倒でない」(非転倒)と判断した場合には通常訓練としての指令を生成し、駆動部100に送るものである。
これらの駆動部100と歩行状態計測部200とコントローラ300の機能について、さらに詳しく説明する。
〈駆動部100の機能〉
駆動部100は、図2に示すように、(1)移動部120と、(2)体幹支持部130と、(3)下肢駆動部140と、を備えて成る。各構成部分においてはサーボ系を構成している。
(1)《移動部120の機能》
移動部120は独立2駆動輪12W(図4)を2個備え、
(イ)被介助者Pの前後・左右旋回の移動を介助(非転倒時)および抑制(転倒と判断時)し、
さらに(ロ)被介助者Pの腰の揺動(上下・左右)を介助(非転倒時)および抑制(転倒と判断時)する。
《移動部120は2輪による「倒立制御」》
移動部120は2輪によるいわゆる「倒立制御」を実施している。
「倒立制御」の技術は、たとえば、「独創的ロボットの研究開発」(山藤ほか著、養賢堂、P13〜15)に記載されている技術で、直立姿勢制御を実装すれば容易に実現可能である。ただし、本実施例で実現する場合には、被介助者P、体幹支持部130や下肢駆動部140等のメカや被介助者を含めた形で倒立し、平衡を維持する必要がある。このため被介助者Pの身体が直立静止した状態で倒立の平衡点となるように設定する。また、身体が動くことによる負荷の変動は倒立に対する外乱となる。この外乱を打ち消すようフィードバック制御をかけるべく2輪の推進力を発生させる。
(2)《体幹支持部130の機能》
体幹支持部130は、(ハ)被介助者の腰の揺動(左右・旋回)を介助(非転倒時)および拘束(転倒と判断時)する。
さらに、(ニ)被介助者の腕の振りによる入力を介助(非転倒時)および抑制(転倒と判断時)する。
(3)《下肢駆動部140の機能》
下肢駆動部140は、(ホ)被介助者の股・膝・足の各関節まわりの下肢の運動を介助(非転倒時)および抑制(転倒と判断時)する。
〈歩行状態計測部200の機能〉
歩行状態計測部200では、被介助者の(a)体幹(主として腰)の運動と、(b)下肢(左右の大腿)の運動、および(c)腕の振りからそれぞれのセンサで歩行状態を計測し、これらの歩行状態の計測結果をコントローラ300に出力する。
〈コントローラ300の機能〉
コントローラ300では、歩行状態計測部200の計測結果から、「被介助者が転倒するか否か」を判定する。
(イ)「転倒」と判断した場合には、これを防ぐ指令を生成する。
(ロ)「転倒でない」と判断した場合には、通常訓練としての指令を生成する。
そして生成されたこの指令を基に駆動部100の各構成部分(1)〜(3)が協調動作する動作指令を生成し、駆動部100へ入力する。
〈駆動部100の構成〉
次に、駆動部100の構成について図3〜図6に基づいて説明する。
図3は図1に示した歩行介助ロボットを被介助者Pが使用している状態を示す概念側面図である。
図3において、被介助者Pに対し、独立2輪の駆動輪を有し電源と制御部分を内蔵する車体を持つ移動部120による駆動と、移動部120に連結し被介助者Pの体幹、特に腰を支持し、腰誘導のため水平軸方向の回転駆動軸を有する体幹支持部130による駆動と、この体幹支持部130に連結し被介助者Pの下肢すなわち左右の大腿をそれぞれ独立に駆動する一対の駆動軸を有する下肢駆動部140による駆動によって、被介助者Pの体幹と下肢は運動を介助(非転倒時)または抑制(転倒と判断時)される。
股下支持部160は体幹支持部130に連結し被介助者Pの股を下から支持する。ここでの股下支持部160はトーションバー16Tを介して体幹支持部130に結合されているのが特徴(実施例2)である。
また、腕の振り入力部190は体幹支持部130に連結し被介助者Pの腕の振りを入力する。
《移動部120の構成》
図4は移動部120の構成を説明する概念図である。
図4の移動部120は図3の移動部120を図の左側から見た図で表し、図4のその他の部分(体幹支持部130,下肢駆動部140)は図3と同じ方向から見た図で表して、それぞれ判り易くしている。
移動部である車体120は、左右の駆動輪12Wにギア12Gとモータ12Mを連結し、そのモータ12Mを駆動するアンプ12Aと、アンプ12Aに制御信号を送るとコントローラ300と電源(図示省略)を自身に内蔵して成る。
歩行状態計測部200の各センサから送られてくる検出信号がコントローラ300に入ると、コントローラ300は後述する諸判定を行って、被介助者の背後にある移動部(車体)120の左右の駆動輪12Wをその諸判定の結果に基づいてそれぞれ別々に、左右のアンプ12Aを介してモータ12M、ギア12G、シャフト12Sを経て左右のタイヤ12Wを駆動する。
これにより、車体120の速度を速めたり、遅めたり、右旋回したり、左旋回することができる。
なお、図4において、コントローラ300が諸判定を行って、体幹支持部130の制御が必要となったときは、アンプ13Aを介してモータ13M、ギア13Gを介して体幹支持部130を制御する。
また、図4において、コントローラ300が諸判定を行って、下肢駆動部140の制御が必要となったときは、アンプ14Aを介してモータ14M、ギア14Gを介して下肢駆動部140を制御する。
《体幹支持部130の形状と機能》
図5は体幹支持部130の形状を説明する図で、(A)は体幹支持部130の正面図、(B)はその平面図である。体幹支持部130は、そのシャフト部13Sが移動部120(図1、図3、および図4)である車両の頂部において水平軸方向に回転駆動するモータ13Mとギア13Gに連結している。
体幹支持部130は平面図(B)で見てシャフト部13Sの先端で連結アーム13Bとなって左右に二股に分かれ、その両端からそれぞれ二股アーム13R、13Lが形成されている。二股アーム13R、13Lは互いに平行となっており、この二股アーム13Rと13Lの間に体幹(腰)を支持(開放側を腹側、連結アーム13B側を背側に)している。開放側には腹ベルト18B(後述、図10)が設けられる。
そこで、歩行状態計測部200(図2および図4)の各センサからの検出信号がコントローラ300(図2および図3)に入ると、コントローラ300は後述する諸判定を行って、体幹支持部130の制御が必要となったときは、移動部120(図2および図3)内のアンプ13A(図3)を経てモータ13Mにモータ駆動信号を送る。
モータ13Mは車体(移動部)120の上部に固定されており(図1および図4)、モータ13Mが旋回すると、ギア13Gを介してシャフト13Sを所定角度旋回させ、これによりシャフト13Sに固定の体幹支持部130も旋回し、これに固定されている被介助者P(図1および図3)の体幹に軸方向の回転を与えることができる。
《下肢駆動部140の形状と機能》
図6は下肢駆動部140の形状を説明する図で、(A)は下肢駆動部140の平面図と、(B)はその正面図である。
下肢駆動部140(図1、図2および図4)は、大腿支持部170(図1、図4および図6)を左右の下肢を独立に駆動する一対のギア14Gとモータ14Mを介してそれぞれ体幹支持部130の二股アーム13Rと13Lに連結している。
そこで、歩行状態計測部200(図2および図4)の各センサからの検出信号がコントローラ300(図2および図4)に入ると、コントローラ300は後述する諸判定を行って、大腿支持部170(図1)の制御が必要となったときは、移動部120(図4)内のアンプ14A(図4)を経てモータ14Mにモータ駆動信号を送る。モータ14Mが旋回すると、ギア14Gを介してL型リンク14Lを所定角度旋回させ、これによりL型リンク14Lに固定の大腿支持部170(図1)も旋回し、これに固定されている被介助者P(図1および図3)の大腿に前後運動を与えることができる。
《下肢駆動部140の動作原理》
図7は下肢駆動部140(図1〜図4、図6)の動作原理を説明する図で、(A)は下肢駆動部140の分解斜視図、(B)は下肢駆動部140の先端に取り付けられる大腿支持部170の平面図、(C)は下肢駆動部140の第2の例で被介助者の股・膝を屈曲促進させる仕組みを説明する図で、(イ)は直立時、(ロ)は歩行時を表している。
図7(A)において、下肢駆動部140は、図1で説明したように、二股アーム13R、13L(図1)の外側に取り付けられたギア付きモータ14M/Gと、このギア14M/Gに連結したシャフト14Sと、さらにシャフト14Sに連結したL型リンク14Lと、L型リンク14Lの下方かつ互いに内側に向かって延びた先端に取り付けられた大腿支持部170とで構成される。
大腿支持部170は図7(B)のように大腿を取り囲む断面「コ」字状のプラスチック枠17Hと、コ字状プラスチック枠17Hの開放側両端に設けられた面ファスナー17F1と17F2と、コ字状プラスチック枠17Hの内側両端(被介助者Pの大腿Pdの表側と裏側に当接するよう)に設けられたエアバッグ17A1と17A2から構成されている。
L型リンク14Lの長さはモータシャフト14Sが被介助者Pの大腿Pdの股関節Pcに一致した場合のエアバッグ17A1、17A2が大腿Pdに当接するときの長さに一致している。
L型リンク14Lは図7(C)のように2本のL型リンク14Lでリンクを構成し、平行四辺形状に変形できるようにし、それの変形に伴ってコ字状プラスチック枠17Hの枠も変形できるように角部をヒンジ構成している。
もちろん、1本のL型リンク14Lでその先端のコ字状プラスチック枠17Hを平行四辺形状に変形できるようにし、角部をヒンジ構成してもよい。
《下肢駆動部140の動作原理》
以上の構成から成る大腿支持部170に被介助者Pの大腿Pdを入れてエアバッグ17A1、17A2を膨らませると、図7(C)の(イ)のように大腿Pdを大腿支持部170の内側に拘束することができる。被介助者の足が床(地面)について起立している(イ)状態では、ギア付きモータ14M/Gはエアバッグ17A1・17A2を取り付けたリンク17Lを図の状態にしている。
股・膝を屈曲促進させたいときは、モータ14Mを前に旋回駆動させることで、図7(C)の(ロ)のようにシャフト14S(すなわち、股関節Pcを中心に)リンク14Lの下辺を前進させて、大腿支持部170に固定された大腿Pdを強制的に前に持ち上げ、被介助者Pの股・膝の屈曲を促進させて、足を上げ前に進めさせる。
その際、前後のエアバッグ17A2、A1の大きさを変化させて、大腿Pdの持ち上げ時に前のエアバッグ17A2を膨らませ、後のエアバッグ17A1を縮めるようにすると、エアバッグ17がクッション性を発揮して、大腿Pdに優しくなる。
《股下支持部160と大腿ベルト16Dと大腿支持部170の違い》
以上のように、大腿支持部170は下肢を前後に駆動するためのもので、プラスチック等や固い素材からなり、モータ/ギア14M/G(図1)などに連結されている。
一方、大腿ベルト16Dは股下支持部160を構成する1部で、転倒と判断した時に身体を支えるためのもので、布など柔らかい素材でできている。腰ベルト16B(図1)に連結ベルト16Rで連結している。腰ベルト16Bには係止部16Fがあり、これが体幹支持部130の左・右アーム13L・13Rにある係止孔13Fと係合して体幹支持部130と連結している。コントローラ300(図2)が転倒と判断した時には、股下支持部160を構成するモータ13Mが旋回し、左・右アーム13L・13Rのうち転倒側のアームを上に上げ、これにより所望のアームが上に動き、そのアームが腰ベルト16Bを引き上げ、それに伴い腰ベルト16Bも引き上げられ、転倒を防止する。
使用イメージとしては、まず、訓練開始前に腰ベルト13Kと大腿ベルト16Dを装着し、そのまま装置に近づき大腿支持部170を装着して、訓練開始となる。
〈歩行状態計測部200の全体構成〉
図8は歩行状態計測部200(図2)の全体構成を説明する図である。
歩行状態計測部200は、股下支持部160(図1および図2)に設けられた股下計測部210と、腰揺動計測部220と腕振り計測部230とから成る。
股下支持部160は体幹支持部130に水平面回転軸161(図9)と垂直面回転軸162(図9)を介して連結されており、体幹支持部130に結合され、被介助者Pの股下に配置し、躓(つまず)くなどで被介助者Pの腰Phが沈下した際にこれを支持する部材である。
体幹支持部130に被介助者Pの腰Phと大腿Pdの前後・左右・上下の動作を計測するセンサを備えることで股下計測部210を構成している。
腰揺動計測部220は、体幹支持部130の被介助者Pの腰Phを支持する部分において被介助者Pの腰Phの動きを計測するセンサを備えている。
腕振り計測部230は、被介助者Pの上肢Paの動きを計測するセンサを備える。
《前後・左右・下への転倒状態の検出》
前後・左右・下への転倒状態は腰Phの動きで検出する。
例えば、股下支持部160に3軸の圧センサまたは加速度センサ、角度センサ、接触センサのいずれかを備え腰動作を検出する。また、体幹支持部130に3軸加速度センサを備え腰動作を検出することもできる。
転倒状態ではない場合は、通常の訓練として介助動作を継続する。たとえば、股下支持部160と体幹支持部130に圧センサまたは加速度センサを備え、左右への腰の揺動を計測し、また、腕振り計測部230に角度センサまたは圧センサを備え、腕の振りを計測する。これらの情報を基に介助動作を計算する。
《股下支持部160の説明》
図9は、図8の股下支持部160を説明する図で、(A)は股下支持部160の実施例2の構成を説明する概念図、(B)は股下支持部160の実施例1の回転軸配置の説明図、(C)は股下支持部160の実施例2の本体を成す腰支持部材180のセンサ取り付け位置の説明図で、(イ)は正面図、(ロ)は側面図である。
図9(A)のように、腰支持部材180は腰Phを支持する部材で腰Phに配置し、被介助者Pが転倒したと判断された時等に腰Phが下降した場合にこれを受けるもので、回転軸上に回転を抑制するトーションバー16T、回転角度を測る角度センサ16A、回転を停止するブレーキ16BRを備えている。
図9(B)のように、体幹支持部130に2つの回転軸161と162を介して連結される股下支持部160は、2つの回転軸を有する。すなわち水平面内にフリーに回転し角度センサを有する回転軸161と、垂直面内に回転し角度センサおよびブレーキとを有し腰支持部材180に連結する回転軸162とから成る。
また、図9(C)のように、腰支持部材180の上部左右側面に上に圧力または加速度または接触のセンサ18S1、18S2、18S3(例えば圧センサ)を配置して、上下・左右方向から加わる圧を計測する。この腰支持部材180の動作を介して前後・左右・下への転倒状態を腰の動きで検出する。例えば、腰Phの左右への揺動、すなわち大腿の前後方向への運動状態は、股下支持部160が水平面内回転軸161(図9(B))に備える角度センサ131の検出値にて推定可能である。
また、垂直面内回転軸162(図9(B))に備える角度センサ132および腰支持部材180上に備える圧または加速度センサ18S1〜18S3は、腰Phの前後・上下方向の揺動を計測できる。
以上のセンサ値は、図12から図15にかけて後述する転倒判定に用いられる。
《腰揺動計測部220の説明》
図10は腰揺動計測部220(図8)の詳細を示す平面図である。
腰揺動計測部220は体幹支持部130の連結アーム13Bと左右の二股アーム13L、13Rと腰ベルト13Kで、体幹の腰Phを前後左右に取り囲むように構成される。腰揺動計測部220と腰Phとの間にエアバッグ13A1〜13A4を備え、空気圧を高めることで腰Phを体幹支持部130に把持できる。また、エアバッグ13A1〜13A4と腰Phとの間にそれぞれ圧センサ13S1〜13S4を配置し、腰Ph周りに加わる圧を計測する。
この情報は以下に述べる転倒の判定および通常訓練時の介助の際に用いられる。
《腕振り計測部230の説明》
図11は腕振り計測部230(図8)の詳細を示す図である。
腕振り計測部230は、被介助者Pの腕Paおよび手Ptが把持する腕の振り入力バー23Bと、この入力バー23Bを回転をさせるための回転軸23J、これに連結し、入力バー23Bの回転を計測する角度センサ23Aとブレーキ23BRとから成る。ブレーキ23BRは入力バー23Bの回転を抑制する働きをする。これらは体幹支持部130に固定されている。
これらのセンサを用いた機構構成の働きのうち、転倒の判定方法1〜4については図12〜図15で、転倒への対処1、2については図16および図17で、通常訓練時の介助方法1〜4については図18〜図22で説明する。
〈転倒判定方法1〉
転倒判定方法の第1の例を図12に示す。
転倒判定方法の第1の例は、各種センサから取得した情報を基にそれらの各閾値と比較し、どれか一つでも越えたら転倒と判定するものである。
簡便ですばやい対応ができることが、この第1の例の長所であるが、ノイズ(誤認識)も多いので留意を要する。
図12において、判定開始(S121)後、各計測値xに対応する各閾値aを一時停止判断の閾値として設定する(S122)。
歩行状態計測部200(図2)において、図8に示した腰揺動計測部に備えるセンサと図9に示した股下支持部160に備えるセンサの各センサからの計測値xを取得する(S123)。各センサには加速度センサ、タッチセンサ、角度センサ、角速度センサ、圧センサが用いられる。
コントローラ300(図2)は歩行状態計測部200(図2)からそれらの情報を取得し(S124)、取得した各計測値xとその閾値aに応じて次の対処を実施する(S125)。
各閾値aの80%(即ち0.8*a)と閾値aとを各計測値xと比較し、いずれのセンサ値xも|x|<0.8*aを満たすなら介助動作を継続する。
そうでなくて、いずれかの少なくとも一つのセンサ値xが
|x|>=0.8a かつ|x|<a
なら介助動作をやめて動作を抑制する。
このとき、この条件を満たすセンサ値がどの程度閾値に近いかにより、例えば、80%以上を転倒危険度の程度の大きい、20〜80%を中程度、それ以下を小さいと評価する。
これは図16に示す転倒への対処で用いられる。そうでなくて、いずれかの少なくとも一つのセンサ値xが|x|>=aなら、機器の動作を一時停止する。
次にこれらの判定結果を駆動部へ指令する(S126)。
さらに、停止スイッチが押されたまたは一時停止が解除されたなら終了し、そうでないなら上記処理を継続し、処理S124へ戻る(S127)。
〈転倒判定方法2〉
転倒判定方法の第2の例を図13に示す。
転倒判定方法の第2の例は、各種センサから取得した情報を基に、いわゆる判別分析により複数のセンサ情報を組み合わせ、転倒か否かを判定するものである。
複数の情報を組み合わせることで誤判定を防ぐことができることが、この第2の例の長所である。
また、判定確率をあらかじめ設定できる。
図13において、判定開始(S131)後、一時停止の判断の閾値として誤判別確率の目標値から対応する判別スコアを求め、これを閾値aと設定しておく(S132)。
歩行状態計測部200(図2)において各センサからの計測値xを取得する(S133)。各センサには加速度センサ、タッチセンサ、角度センサ、角速度センサ、圧センサが用いられる。
コントローラ300(図2)は歩行状態計測部200(図2)からそれらの情報を取得し(S134)、取得した各計測値xからその判別スコアcを計算し(S135)、閾値aに応じて次の対処を実施する(S136)。
判別スコアcに対応する閾値aの80%(即ち0.8*a)と閾値aとを各計測値xと比較し、
|x|<0.8aを満たすなら、介助動作を継続する。
そうでなくて、|x|>=0.8aかつ|x|<aなら、介助動作をやめて動作を抑制する。このとき、この条件を満たすセンサ値の割合により、転倒危険度の程度の大きい、中程度、小さいを評価する。
そうでなくて、|x|>=aなら、機器の動作を一時停止する。
次に、これらの判定結果を駆動部へ指令する(S137)。
さらに、停止スイッチが押されたまたは一時停止が解除されたなら終了し、そうでないなら上記処理を継続し、処理S134へ戻る(S138)。
〈転倒判定方法3〉
転倒判定方法の第3の例を図14に示す。
転倒判定方法の第3の例は、各種センサから取得した情報を基に、転倒前に足が速くなるなどの特徴に関係する条件がそろったら転倒と判定するものである。
設定する特徴に沿った確度の高い判定が可能なことが、この第3の例の長所である。
図14において、判定開始(S141)後、予め注目する特徴に関する計測値を選定し、それら計測値の各閾値aを設定しておく(S142)。例えば、歩行状態計測部200(図2)において、図9に示した股下支持部160に備えるセンサと図10に示した腰揺動計測部に備えるセンサの中から、腰の左右方向の揺動をとらえるセンサ、すなわち股下支持部160が水平面内回転軸(図9(B)の符号161)に備える角度センサ値に着目する。
歩行状態計測部200において各センサからの計測値xを取得する(S143)。各センサには加速度センサ、タッチセンサ、角度センサ、角速度センサ、圧センサが用いられる。
コントローラ300(図2)は歩行状態計測部200(図2)からそれらの情報を取得する(S144)。
コントローラ300は、取得した情報から、各計測値xとその閾値aに応じて次の対処を実施する(S145)。
すなわち、今回の計測値xがすべてその閾値aに応じて|x|>aを満たすなら、一時停止する。
そうでなければ、今回の計測値のうち少なくとも1個が|x|>0.8aを満たすなら、介助動作をやめて動作を抑制する。
このとき、この条件を満たすセンサ値の割合により、転倒危険度の程度の大きい、中程度、小さいを評価する。
そうでなければ、介助を継続する。
それらの判定結果を駆動部へ指令する(S146)。
さらに、停止スイッチが押されたか、または一時停止が解除されたなら終了し、そうでないなら上記処理を継続し、処理S144へ戻る(S148)。
〈転倒判定方法4〉
転倒判定方法の第4の例を図15に示す。
転倒判定方法の第4の例は、各種センサから取得した情報を基に、移動平均を求め、同時に求める標準偏差を閾値として比較し、標準偏差を逸脱した場合に転倒と判定するものである。
状態の時間的な変化を考慮しながらセンサ値の急激な変化を転倒と判定することが、この第4の例の長所である。
図15において、判定開始(S151)後、予め歩行状態計測部200(図2)において各センサからの計測値xを取得する(S152)。各センサには加速度センサ、タッチセンサ、角度センサ、角速度センサ、圧センサが用いられる。
コントローラ300(図2)は歩行状態計測部200(図2)からそれらの情報を取得する(S153)。
コントローラ300は、センサ情報を取得するたびに、各計測値の移動平均σとこれに対応する標準偏差sdを求める(S154)。
今回の当該計測値xと移動平均σとの差の絶対値|x−σ|とを比較する(S155)。
ここで、今回の計測値のうち少なくとも1個が|x−σ|<sdなら、介助動作を継続する。
そうでなければ、今回の計測値のうち少なくとも1個が|x−σ|>=sdかつ|x−σ|<2sdなら、介助動作をやめて動作を抑制する。
このとき、この条件を満たすセンサ値の割合により、転倒危険度の程度の大きい、中程度、小さいを評価する。
そうでなければ、今回のすべての計測値について、|x−σ|>=2sdであり、機器の動作を一時停止し、それらの判定結果を駆動部へ指令する(S156)。
さらに、停止スイッチが押されたか、または一時停止が解除されたなら終了し、そうでないなら上記処理を継続し、処理S153へ戻る(S157)。
〈転倒への対処1〉
転倒への対処の第1の例を図16で示す。
転倒への対処の第1の例は、上記転倒の判定を受けて実施するものである。このために、歩行パターンの周期を低く抑えること、また可動範囲を制限することで歩行動作の安定性を上げるものである。例えば、移動部120への指令速度の低下、移動部120と体幹支持部130による腰揺動の指令速度の低下と腰揺動範囲の制限、腕振り計測部190の粘性向上、下肢駆動部に140よる下肢運動への介助の指令速度の低下、関節可動範囲の制限をする。
これらの対策は転倒の危険度によりさらに細かく分かれる。
転倒の危険性を中程度と判定した場合、移動部120の移動速度を低下させ、移動部120と体幹支持部130による腰揺動の速度を低下させ、股下支持部160の回転軸の粘性を上げ、腕振り計測部230(図8)において被介助者Pの手腕で把持する腕振り入力部190の部材の動作の粘性を上げ、下肢駆動部140の下肢運動の速度を低下させる。
転倒の危険性が大きいと判定した場合、移動部120の移動を停止させ、移動部120と体幹支持部130による腰揺動を停止させ、股下支持部160の回転を固定し、腕振り計測部230において被介助者Pの手腕で把持する部材の動作を固定し、下肢駆動部140の下肢運動を停止させる。
転倒の危険性が小さいと判定した場合、被介助者の腰の前後・左右・上下への3次元の揺動を介助するよう、腕振り計測部230への入力を基に被介助者Pの歩行周期に同期して、移動部120と体幹支持部130と下肢駆動部140とを協調して動作させる。
また、被介助者Pが手Ptで把持する腕の振り入力バー23Bと、腕の振り入力バー23Bを体幹支持部130に結合する回転軸23Jと、回転軸23Jに設けられた角度センサ23Aとブレーキ23BRとにおいて、ブレーキ23BRにより腕の振り入力バー23Bの動きを制限することで被介助者Pの腕Paの振りを抑制する。これも上記転倒危険度の評価結果に応じてブレーキをかける強さや腕振り可能な角度を角度センサで監視し制限する。
〈転倒への対処2〉
転倒への対処の第2の例を図17で示す。
転倒への対処の第2の例も上記転倒の判定を受けて実施するものである。このために、本発明の装置への身体固定の度合を上げることで身体の動きを抑制し安定性をあげるものである。すなわち、図17(A)の体幹支持部130の股下支持部160のブレーキ16BRを強くかけること、図17(B)の体幹支持部130の腰揺動計測部220の内蔵エアバッグ13A1〜13A4の圧を上げること、図17(C)の下肢駆動部140の内蔵エアバッグ17A1、17A2の圧をあげることである。
具体的には、図17(A)の股下支持部160において、トーションバー16Tを介して体幹支持部130に結合され、角度センサ16Aとブレーキ16BRとを同軸上に備え、ブレーキ16BRにより腰支持部材180の姿勢変化を拘束する。これにより腰Phの急激な低下を防ぐことができる。
また、図17(B)の腰揺動計測部220において、被介助者Pの腰Phの動きを左右・後方から支持する体幹支持部130と、体幹の前方に備えた腰ベルト13Kと、腰ベルト13Kと体幹支持部材130とに備えた複数のエアバッグ13A1〜13A4を備えている。ここで、コントローラ300(図2)からの指令により各エアバッグ13A1〜13A4の圧を調整する。調整は図示していない圧力制御器によりエアバッグの各表面に配置された圧センサ13S1〜13S4の値で行われる。
転倒の危険性が小さいと判定した場合、コントローラ300から圧力制御器への指令によりエアバッグ13A1〜13A4の圧力を減らす。また腰揺動計測部220(図17(B))にて計測した圧センサ13S1〜13S4の計測値にしたがって、いわゆる柔軟制御を実施するよう下肢駆動部140への指令を生成する。
転倒の危険性が中程度以上のとき、コントローラ300から圧力制御器への指令によりエアバッグ13A1〜13A4の圧力を増やす。また、柔軟制御を停止するよう下肢駆動部140への指令を生成する。
〈通常訓練時の介助方法1〉
ここで柔軟制御について、図18及び図19を用いて説明する。
通常訓練時の介助方法の第1の例を、図18の機構構成と図19の動作例で説明する。この第1の例は、腰に対して柔らかく拘束し、腰の左右方向への負荷を検出し、これに倣うような柔軟な動作を実現するものである。
図18の機構構成において、移動部120は、独立二輪駆動の駆動輪12W、12Wと、体幹支持部130と、左右への旋回を行う移動部120で構成される。
体幹支持部130は、エアバッグ13A1〜13A4と腰ベルト13Kを介して被介助者Pの体幹である腰部Phを支持する。独立二輪駆動の駆動輪12W、12Wは、駆動輪によりその場での旋回機能を有する。ここで圧センサ13S1〜13S4で計測した圧情報を基に、ばね・ダンパ系で構成される柔軟モデル1800、1800で表現される機構を有するかのごとく左右への旋回を行う。
ここで、柔軟モデル1800の実現方法について図19を用いて説明する。
図19のステップS191で、圧センサ13S1、13S3(図18)で左右にかかる各圧p1、p2を検出する。
左右の圧力差p1−p2を基に、移動部120の旋回中心に対するトルクTを求める(S192)。
求めたトルクTと柔軟モデルの式T=B・dΘ/dt+K・Θから移動部の旋回角度θを求める(S193)。
求めた移動部の旋回指令値θを基に移動部駆動輪を駆動する(S194)。
〈通常訓練時の介助方法2〉
通常訓練時の介助方法の第2の例は、体幹支持部130において図18の機構構成と図19の動作とは別の例を示すものとして、図20で腰左右・回旋揺動のための体幹支持部130の機構例を説明する。
図20において、移動部120に支持された平行リンク機構において、いずれも水平平面内で動作する2つの平行リンクA(200A)と平行リンクB(200B)で構成する。これらの平行リンク機構は各1個の駆動モータ20MA、20MBで独立に駆動される。駆動モータ20MAによりリンクA(200A)を変形させ、体幹の腰部Phを水平面内で左右横移動させる。
駆動モータ20MBによりリンクB(200B)で変形させ、腰部Phを水平面内で回旋させる。このとき下肢駆動部140を体幹支持部130の正面の向き130Fに常に平行な姿勢に保つことができる。これら腰と下肢との動きにより自然な歩行動作を実現できる。動きの詳細は以下に述べる。
〈通常訓練時の介助方法3〉
通常訓練時の介助方法の第3の例は、腰が上下・左右・回転の3軸方向の動きに同期して揺動する例である。
図21は通常訓練時の介助方法の第3の例を説明する図で、(A)は足の接地状態と腰揺動との関係を示す図で、(B)は腰揺動を後方から見た図である。(A)の波形の周期は歩行に同期しており、左右の振幅は腰中心が足底より出ない程度としている。横軸は時間tである。
図21(A)の足の接地状態と腰揺動との関係をみると、歩行に同期した周期において、腰を左右に揺動するよう体幹支持部130を通じて介助する。すなわち、コントローラ300(図2)において、駆動部100(図2)の移動部120(図2)の体幹支持部130(図2)と下肢駆動部140(図2)とを協調して動作させる。その際、被介助者の腰の動きにおいて、足の接地状態に応じて自然な歩行動作となるよう図21(B)のように腰の揺動を介助する。
すなわち、図21(B)で上から2番目の立脚中期(右脚接地)には、腰の水平面での腰の左旋回と、前額面での左旋回と、右側方へ揺動に対する介助動作を同時に実行する。
また、図21(B)で上から4番目の立脚中期(左脚接地)には、腰の水平面での右旋回と、前額面での右旋回と、左側方へ揺動に対する介助動作を同時に実行する。
また、図21(B)で1番上の両脚支持期においては、直前の立脚中期が左脚接地であれば水平面での左旋回と、前額面での左旋回と、側方揺動が無いことに対する介助動作を実行する。
また、図21(B)で上から3番目の直前の立脚中期が右脚接地であれば、水平面での右旋回と、前額面での右旋回と、側方揺動が無いことに対する介助動作を実行する。
〈通常訓練時の介助方法4〉
通常訓練時の介助方法の第4の例を図22で説明する。
図22の動作と図21の動作とは同期して実施される。
コントローラ300(図2)において、全身の協調動作を介助するよう制御を実施する。腕振り動作に股屈伸動作と腰の揺動を同期させるものである。すなわち、腕振り計測部230(図8)への入力値すなわち手で把持するバーの回転角度を計測する。一方の腕と同側の下肢とにおいて互いの前後の振り動作の位相が180度ずれるように、駆動部100(図2)への指令を発生する(図22の線図参照)。図22は右肩と右股の各前後方向の角度が同期する様子を示している。左肩・左股の角度も同様に同期する。ただし、右側と左側とは位相が半周期ずれる。
なお、腕振り計測部230においてモータを組み込み、反力を発生させることもできる。腕振り計測部230をマスタ、コントローラ300が協調制御する移動部120(図2)の体幹支持部130(図2)と下肢駆動部140(図2)とをスレーブとする、いわゆるロボット工学におけるマスタ・スレーブ制御またはバイラテラル制御を実現できる。すなわち、腰や大腿が介助される際の反力の一部を感じながら、腕振り計測部230を動かすことができる。
この反力により腰や下肢の感覚が喪失した被介助者Pにおいても、腕への反力で腰や下肢の動きを感じることができる。
以上のように、本発明によれば、高い安全性、特に転倒を防止でき、静的歩行パターンから動的歩行パターンまでを介助し、残存する随意性を生かすことのでき、疲労が少なく長時間の訓練ができ、大掛かりでなく移動式の歩行訓練が可能となる歩行介助ロボットが得られる。
10 歩行介助ロボット
12A アンプ
12G ギア
12M モータ
12S シャフト
12W 駆動輪
13B 連結アーム
13F 係止孔
13L 二股アームの左アーム
13R 二股アームの右アーム
13M モータ
14L L型リンク
14S シャフト
14M/G ギア付きモータ
16A 回転角度を測る角度センサ
16BR 回転を停止するブレーキ
16B 腰ベルト
16D 大腿ベルト
16F 係止部
16R 連結ベルト
16T トーションバー
17A エアバッグ
17B 大腿ベルト
17F 面ファスナー
17H コ字状プラスチック枠
18A エアバッグ
18B 腹ベルト
18P 圧センサ
18S 圧または加速度センサ
23A 角度センサ
23B 入力バー
23BR ブレーキ
23J 回転軸
100 駆動部
120 移動部である車体
130 体幹支持部
131 角度センサ
132 角度センサ
140 下肢駆動部
160 股下支持部
161 水平面内にフリーに回転し角度センサを有する回転軸
162 垂直面内に回転し角度センサおよびブレーキとを有する回転軸
163 被着部
170 大腿支持部
180 腰支持部材
190 腕の振り入力部
200 歩行状態計測部
210 股下計測部
220 腰揺動計測部
300 コントローラ
P 被介助者
Pd 大腿
Ph 腰
Pt 手
Pa 上肢

Claims (19)

  1. 被介助者の身体に装着して前記被介助者の歩行を訓練する駆動部と、
    前記被介助者の体幹の運動を計測するセンサ、下肢の運動を計測するセンサ、および腕の振りを計測するセンサを備えた歩行状態計測部と、
    前記各センサの計測結果から前記被介助者が転倒するか否かを判定し、「転倒」と判断した場合にはこれを防ぐ指令を生成し、また「転倒でない」と判断した場合には通常訓練としての指令を生成し、生成した前記指令を前記駆動部のサーボ系に与えてこれを制御するコントローラと、
    を有する歩行介助ロボットであって、
    前記駆動部が、前記被介助者の前後・左右旋回への身体全体の移動を介助または抑制し、かつ前記被介助者の腰の揺動の一部を介助または抑制する独立二輪駆動の駆動輪を備えた移動部と、
    前記被介助者の腰の揺動の他の一部を介助または拘束し、かつ前記被介助者の腕の振りを入力する腕振り入力部による入力を介助または抑制する体幹支持部と、
    前記被介助者の股・膝・足の関節まわりの下肢の運動を介助または抑制する下肢駆動部を有することを特徴とする歩行介助ロボット。
  2. 前記移動部が、独立2輪の駆動輪を有しており、電源と制御部分を内蔵する車体から成り、
    前記体幹支持部が、前記車体に連結されて、前記被介助者の体幹の腰部を支持して腰誘導のための水平軸方向の回転駆動軸を有し、
    前記腕の振り入力部が、前記体幹支持部に連結されて、前記被介助者の腕の振りを入力し、
    前記下肢駆動部が、前記体幹支持部に連結されて、前記被介助者の下肢を駆動し、さらに、
    前記体幹支持部に連結されて、前記被介助者の股を下から支持する股下支持部を有することを特徴とする請求項1記載の歩行介助ロボット。
  3. 前記体幹支持部が、前記移動部に水平軸方向の回転駆動するギアとモータを介して連結し、前記被介助者の腰を左右から支持する二股部材を前記水平軸の先端に有し、
    前記下肢駆動部が、前記体幹支持部の前記二股部材に前記被介助者の左右の下肢をそれぞれ独立に駆動する一対のギアとモータを介して連結されて、かつ前記歩行状態計測部のセンサとアンプを搭載し、
    前記移動部が、前記各駆動輪にギアとモータを連結し、前記モータを駆動するアンプと前記下肢駆動部のモータのアンプと前記体幹支持部のモータのアンプとコントローラと電源を車体に内蔵することを特徴とする請求項2記載の歩行介助ロボット。
  4. 前記股下支持部が、前記体幹支持部に結合されて、その先端が前記被介助者の股下に配置し前記被介助者の股が沈下した際にこれを支持する支持部材と、
    前記支持部材に前記被介助者の腰の動作を計測するセンサと下肢の大腿の前後左右上下の動作を計測するセンサを備え、
    前記体幹支持部の前記被介助者の腰の動きを計測するセンサを備えた腰揺動計測部を備え、
    前記被介助者の上肢の動きを計測するセンサを備えた腕振り計測部を備えた
    ことを特徴とする請求項1記載の歩行介助ロボット。
  5. 前記コントローラが、以下のステップ(1)および(2)を実行することを特徴とする請求項1記載の歩行介助ロボット。
    (1)予め定めておいた各計測値の閾値aと、前記歩行状態計測部において取得された各計測値xを基に、それに対応する閾値aの80%(0.8*a)と閾値aとを各計測値xと比較して、次の(イ)〜(ハ)のいずれかの判定をするステップと、
    (イ)いずれのセンサ値xも|x|<0.8aを満たすなら、「前記介助動作を継続する」と判定する。
    (ロ)いずれかのセンサ値xが、a>|x|>=0.8aなら、「前記介助動作をやめて動作を抑制する」と判定する。
    (ハ)さらに、いずれかのセンサ値xが|x|>=aなら、「前記駆動部の動作を一時停止する」と判定する。
    (2)上記判定結果を前記駆動部へ指令するステップ。
  6. 前記コントローラが、以下のステップ(1)〜(4)を実行することを特徴とする請求項1記載の歩行介助ロボット。
    (1)一時停止の判断の閾値として誤判別確率の目標値から対応する判別スコアを求め、これを閾値aと予め定めるステップと、
    (2)前記歩行状態計測部において取得された各計測値xを基に、該計測値の判別スコアcを求めるステップと、
    (3)各計測値xに対応する閾値aの80%(0.8*a)と前記閾値aとを前記各計測値xと比較して、次の(イ)〜(ハ)のいずれかの判定をするステップと、
    (イ) |x|<0.8aを満たすなら、「前記介助動作を継続する」と判定する。
    (ロ) a>|x|>=0.8aなら、「前記介助動作をやめて動作を抑制する」と判定する。
    (ハ) |x|>=aなら、「前記駆動部の動作を一時停止する」と判定する。
    (4)上記判定結果を前記駆動部へ指令するステップ。
  7. 前記コントローラが、以下のステップ(1)〜(3)を実行することを特徴とする請求項1記載の歩行介助ロボット。
    (1)注目する特徴に関する計測値を予め選定し、それら計測値の各閾値aを設定するステップ、
    (2)前記歩行状態計測部において取得された計測値を基に、前記計測値に対応する閾値aを前記各計測値xと比較して、次の(イ)〜(ハ)のいずれかの判定をするステップと、
    (イ) 今回の計測値xがすべてその閾値aに応じて|x|>aを満たすなら、「前記駆動部の動作を一時停止する」と判定する。
    (ロ) (イ)でなければ、今回の計測値のうち少なくとも1個が|x|>0.8aを満たすなら、「前記介助動作をやめて動作を抑制する」と判定する。
    (ハ) (ロ)でなければ、「前記介助動作を継続する」と判定する。
    (3)上記判定結果を前記駆動部へ指令するステップ。
  8. 前記コントローラが、以下のステップ(1)〜(3)を実行することを特徴とする請求項1記載の歩行介助ロボット。
    (1)前記歩行状態計測部において取得された現在および過去のセンサ情報を基に、各計測値の移動平均σと標準偏差sdを求めるステップ、
    (2)今回の当該計測値xと前記移動平均σとの差の絶対値|x−σ|と前記標準偏差sdとを比較して、次の(イ)〜(ハ)のいずれかの判定をするステップと、
    (イ)|x−σ|<sdなら、「前記介助動作を継続する」と判定する。
    (ロ) 2sd>|x−σ|>=sdなら、「前記介助動作をやめて動作を抑制する」と判定する。
    (ハ)|x−σ|>=2sdなら、「前記駆動部の動作を一時停止する」と判定する。
    (3)上記判定結果を前記駆動部へ指令するステップ。
  9. 前記コントローラが、
    (1)転倒の危険性が中程度と判定した場合、次の(イ)〜(ホ)の1つ以上を行わせ、
    (イ)前記移動部の移動速度を低下させ、
    (ロ)前記移動部と体幹支持部による腰揺動の速度を低下させ、
    (ハ)前記股下支持部の回転軸の粘性を上げ、
    (ニ)前記腕振り計測部において被介助者の手腕で把持する部材の動作の粘性を上げ、
    (ホ)前記下肢駆動部の下肢運動の速度を低下させ、
    (2)転倒の危険性が大きいと判定した場合、次の(へ)〜(ヌ)の1つ以上を行わせ、
    (ヘ)前記移動部の移動を停止させ、
    (ト)前記移動部と体幹支持部による腰揺動を停止させ、
    (チ)前記股下支持部の回転を固定し、
    (リ)前記腕振り計測部において被介助者の手腕で把持する部材の動作を固定し、
    (ヌ)前記下肢駆動部の下肢運動を停止させ、
    (3)転倒の危険性が小さいと判定した場合、次の(ル)を行わせる
    (ル)前記被介助者の腰の前後・左右・上下への3次元の揺動を介助するよう、前記腕振り計測部への入力を基に前記被介助者の歩行周期に同期して、前記駆動部の移動部と前記体幹支持部と前記下肢駆動部とを協調して動作させる。
    ことを特徴とする請求項4記載の歩行介助ロボット。
  10. 前記腕振り計測部が、前記被介助者の手で把持するための腕の振り入力バーと、該腕の振り入力バーを前記体幹支持部に結合する回転軸と、該回転軸に角度センサとブレーキとを有し、該ブレーキにより前記腕の振り入力バーの動きを制限することで前記腕の振りを抑制することを特徴とする請求項1記載の歩行介助ロボット。
  11. 前記股下支持部が、トーションバーを介して前記体幹支持部に結合され、角度センサとブレーキとを同軸上に備え、前記角度センサにより前記腰支持部材の姿勢を計測し、圧力・加速度・接触圧のいずれかを計測するセンサを前記腰支持部材の前記回転軸付近の複数箇所に備え、前記腰支持部材の前後・左右・上下の動作と負荷を計測し、前記ブレーキにより前記腰支持部材の姿勢変化を拘束することを特徴とする請求項1記載の歩行介助ロボット。
  12. 前記腰揺動計測部が、
    被介助者の体幹の一部である腰の動きを左右・後方から支持する体幹支持部と、
    前記体幹の前方に備えた腰ベルトと、
    前記腰ベルトおよび前記体幹支持部材に備えた各エアバッグと、
    前記コントローラからの指令により前記各エアバッグの圧を調整する圧力制御器と、
    前記エアバッグの各表面に配置された圧センサとを備えて成ることを特徴とする請求項9記載の歩行介助ロボット。
  13. 前記コントローラが、
    転倒の危険性が小さいと判定した場合、前記エアバッグの圧力を減らしかつ前記腰揺動計測部にて計測した前記圧センサの計測値にしたがって柔軟制御を実施するよう前記下肢駆動部への指令を生成し、
    転倒の危険性が中程度以上のとき、前記エアバッグの圧力を増やしかつ柔軟制御を停止するよう前記下肢駆動部への指令を生成することを特徴とする請求項12記載の歩行介助ロボット。
  14. 前記移動部が、前記駆動輪によるその場での旋回機能を有し、かつ、前記圧センサで計測した圧情報を基にばね・ダンパ系で構成される柔軟モデルで表現される機構を有するかのごとく前記旋回機能が左右への旋回を行うことを特徴とする請求項12記載の歩行介助ロボット。
  15. 前記移動部が、前記圧センサで左にかかる圧p1と右にかかる圧p2の各検出を行い、左右の圧力差p1−p2を基に前記移動部の旋回中心に対するトルクTを求め、前記トルクと前記柔軟モデルから旋回角度θを求め、前記移動部旋回指令値θを基に前記移動部の各駆動輪を駆動することを特徴とする請求項12記載の歩行介助ロボット。
  16. 前記体幹支持部が、
    前記移動部に支持されて、いずれも水平平面内で動作する第1平行リンクと第2平行リンクを備え、かついずれのリンクも各1個の駆動モータで独立に駆動され、前記被介助者の体幹を前記第1平行リンクで水平面内の左右横方向に移動をさせ、前記第2平行リンクで水平面内の回旋をさせ、さらに、前記下肢駆動部を常に前記体幹支持部の正面の向きに平行な姿勢に保つことを特徴とする請求項12記載の歩行介助ロボット。
  17. 前記コントローラが、
    前記駆動部内のの前記移動部と前記体幹支持部と前記下肢駆動部とを協調して動作させる際、被介助者の腰の動きが足の接地状態に応じて変化することに着目して被介助者の足の接地状態に応じて、
    (1)立脚中期(右脚接地)には、腰の水平面での左旋回と前額面での左旋回と右側方へ揺動に対する介助動作を同時に実行し、
    (2)立脚中期(左脚接地)には、腰の水平面での右旋回と前額面での右旋回と左側方へ揺動に対する介助動作を同時に実行し、
    (3)両脚支持期においては、
    (イ)直前の立脚中期が左脚接地であれば水平面での左旋回と前額面での左旋回と側方揺動が無いことに対する介助動作を実行し、
    (ロ)直前の立脚中期が右脚接地であれば水平面での右旋回と前額面での右旋回と側方揺動が無いことに対する介助動作を実行すること
    を特徴とする請求項16記載の歩行介助ロボット。
  18. 前記コントローラが、
    前記腕振り計測部への入力値である前記被介助者が手で把持する前記腕の振り入力バーの回転角度において、一方の腕と同側の下肢とにおいて互いの前後の振り動作の位相が180度ずれるように、前記駆動部への指令を生成することを特徴とする請求項10記載の歩行介助ロボット。
  19. 被介助者の身体に装着して前記被介助者の歩行を訓練する駆動部と、
    前記被介助者の体幹の運動を計測するセンサ、下肢の運動を計測するセンサ、および腕の振りを計測するセンサを備えた歩行状態計測部と、
    前記各センサの計測結果から前記被介助者が転倒するか否かを判定し、「転倒」と判断した場合にはこれを防ぐ指令を生成し、また「転倒でない」と判断した場合には通常訓練としての指令を生成し、生成した前記指令を前記駆動部のサーボ系に与えてこれを制御するコントローラと、を有する歩行介助ロボットであって、
    前記駆動部が、前記被介助者の前後・左右旋回への身体全体の移動を介助または抑制し、かつ前記被介助者の腰の揺動の一部を介助または抑制する独立二輪駆動の駆動輪を備えた車両から成る移動部と、
    前記被介助者の腰の揺動の他の一部を介助または拘束し、かつ前記被介助者の腕の振りを入力する腕振り入力部による入力を介助または抑制する体幹支持部と、
    前記被介助者の股・膝・足の関節まわりの下肢の運動を介助または抑制する下肢駆動部と、
    前記体幹支持部に連結されて前記被介助者の股を下から支持する股下支持部を有し、
    前記駆動輪は前記車両の両側に設けられて、倒立制御が実施され、
    前記体幹支持部は回転軸とその先端が二股に分かれた形状をし、当該二股の間に前記被介助者の腰が固定され、前記回転軸の反対側が前記車両に取り付けられ、
    前記腕振り入力部が前記二股部分にそれぞれ設けられ、
    前記下肢駆動部は、前記被介助者の大腿を囲う枠体と、前記枠体内に取り付けられ大腿の前後を押さえるエアバッグと、前記枠体を前記被介助者の股関節を中心にして揺動させる揺動部材と、前記揺動部材を揺動させるモータとを備え、前記モータを前記体幹支持部に取り付け、
    前記股下支持部は、腰ベルトと大腿ベルトと前記両ベルト間を繋ぐ連結ベルトで前記被介助者の腰部を支持し、前記腰ベルトを、角度センサ付き水平面内回転軸と角度センサ・ブレーキ付き垂直面内回転軸とを介して前記体幹支持部に取り付けることを特徴とする歩行介助ロボット。
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