JP2012066375A - ロボティックスーツ - Google Patents

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Abstract

【課題】人体の運動機能の補助、歩行アシスト等を好適に行えるスーツとして、人との同調性を高めたロボティックスーツを提供する。
【解決手段】人体の屈曲可動部位に対応して配置される関節部と、前記関節部間を連結して人体に装着されるリンクと、前記関節部を支点として前記リンクを回動するアクチュエータと、人体とスーツとの相互作用力を検出するセンサとを備え、前記アクチュエータの駆動を制御する制御系として、前記センサによって検出された前記相互作用力に基づいて、人とスーツとの同調の度合いを調整する調整部50と、調整部50により調整された入力に同調する出力を算出する解析部60と、解析部60の出力に基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御する制御部70とを備える。
【選択図】図5

Description

本出願は、運動補助やリハビリテーション等に使用することができる、同調制御(synchronization-based control)を利用したロボティックスーツに関する。
近年、力増幅や運動補助などを目的として、装着型のロボティックスーツが開発されている。これらのロボティックスーツは、建設作業など肉体的負担の重い作業に対して、作業負担軽減のために使用されることが期待されている。一方、介助者の負担軽減の観点から、片麻痺患者などの高齢者のリハビリテーション装置の開発が望まれている。とりわけ、患者の機能回復レベルにあったリハビリテーションが実施できる装置の実現が望まれている。
これまでのロボティックスーツは、筋電位信号を用いて筋肉の活性度を評価し、その評価に基づきロボティックスーツを動作させるという制御法によるもの(非特許文献1)、関節トルクと筋活動とを関係づける行列を用いたEMG信号に基づく制御法によるもの(非特許文献2)等がある。
本発明者は、人とスーツとの間に同調性をもたせた制御方法によるロボティックスーツを考案し、膝関節の周期運動にこのロボティックスーツを適用して同調性とアシスト効果が得られることを確認し、この人とスーツとの間に同調性をもたせた制御方法がモーションアシストに有効に作用することを見出した(非特許文献3)。
H.Kawamoto,Y.Sankai,"Power Assist Method Based on Phase Sequenceand Muscle Force Condition for HAL",AdvancedRobotics,Vol.19,No.7,pp.717-734,2005 K.Kiguchi and Q.Quan,"Muscle-Model-Oriented EMG-BasedControl of an Upper-limb Power-Assist Exoskeleton with a Neuro-FuzzyModifier",Proc.of IEEE World Congress ofComputational Intelligence,pp.1179-1184,2008. X.Zhang,M.Hashimoto,"SBC for Motion Assist UsingNeural Oscillator,"IEEE Int.Conf.on Robotics and Automation,Kobe,Japan,pp.659-664,May 2009 橋本稔,佐藤妙,張霞,小川尚希"モーションアシストシステムの同調制御",第11回建設ロボットシンポジウム論文集pp.101-108,2008. KiyotoshiMatsuoka."Sustained Oscillations Generatedby Mutually Inhibiting Neurons with Adaptation,"BiologocalCybernetics,vol.52,pp.367-376,1985 Gentaro Taga:A model of the neuro-musculo-skeletal system for human locomotion I.Emergence of basic gait,Biol.Cybern.73,pp97-111,1995
上述した同調制御によるアシスト制御方法を、歩行ロボティックスーツのような運動補助装置として利用できるようにするには、股関節と膝関節のような複数の関節についての動きを的確に制御できるようにする必要があり、また、左右の両足について的確に制御できるようにする必要がある。
本発明に係るロボティックスーツは、同調制御方法を利用するロボティックスーツとして、歩行ロボティックスーツのような実際に利用可能な装置として提供することを目的としている。
本出願に係るロボティックスーツは、人体の屈曲可動部位に対応して配置される関節部と、前記関節部間を連結して人体に装着されるリンクと、前記関節部を支点として前記リンクを回動するアクチュエータと、人体とスーツとの相互作用力を検出するセンサとを備え、前記アクチュエータの駆動を制御する制御系として、前記センサによって検出された前記相互作用力に基づいて、人とスーツとの同調の度合いを調整する調整部と、該調整部により調整された入力に同調する出力を算出する解析部と、該解析部の出力に基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御する制御部とを備えることを特徴とする。
また、前記アクチュエータは、前記関節部に位置合わせして装着されている構成とすることができる。
また、前記センサとしてトルクセンサを付設し、前記相互作用力として、前記トルクセンサによる出力を利用して制御することができる。
また、前記相互作用力として、前記アクチュエータ及びリンク自体の重量のトルクに対する寄与分を補正した値を使用することによって、人体とスーツとの相互作用力をより的確に把握することができる。
また、前記解析部においては、次式(1)〜(3)の関係を有する2つの神経振動子からなる数学モデルに基づいて出力を解析することを特徴とする。
上式において、xijはi番目の神経振動子のj番目のニューロンの内部状態を表す変数(i=1,2、j=1,2)、xij'はニューロンの疲労状態を表す変数、g(xij)はニューロンの出力、Siは定常入力、bjは疲労係数、aijはi番目のニューロンからj番目のニューロンへの結合係数、Tr、Taは時定数、Inputは相互作用力τ_mutualに同調ゲインCを掛けたものである。
また、前記関節部と前記リンクとを備える作用部が、人体の左右の体側部に沿ってそれぞれ配置され、前記解析部は、前記左右の作用部の対応する関節部間の協調動作を取り入れるモデルに基づいて出力を解析することにより、左右の作用部を調整し、歩行などを安定して制御することができる。
また、前記関節部間の協調動作を取り入れるモデルにおいて、神経振動子間を結合する係数を、ロボティックスーツと人との同調性を優先する値に設定することにより、スーツと人との同調性を良好に維持して制御することができる。
本発明に係るロボティックスーツは、人体とスーツとの相互作用力に基づいてアクチュエータを制御し、人体とスーツとの同調の度合いを調整しながら制御することによって、運動補助、リハビリ等に好適に利用できるスーツとして提供することができる。
歩行ロボティックスーツの構成を示す斜視図である。 歩行ロボティックスーツを装着した状態を示す写真である。 歩行ロボティックスーツの制御系の構成を示すブロック図である。 神経振動子のモデルを示す説明図である。 歩行ロボティックスーツの同調制御方法を示すブロック図である。 歩行ロボティックスーツのリンク構造をモデル化して示した図である。 重力項の補正前(a)、(b)と補正後(c)、(d)のトルクセンサの計測値を示すグラフである。 歩行ロボティックスーツの基本周波数を示すグラフである。 同調ゲインを変えた場合の相互作用トルクを示すグラフである。 同調ゲインを0.8とした場合の引き込み周波数を示すグラフである。 同調ゲインを変えた場合の相互作用トルクを示すグラフである。 同調ゲインを変えた場合の引き込み周波数を示すグラフである。 同調ゲインを0.5とした場合の引き込み周波数を示すグラフである。 同調ゲインを0.1とした場合の動作を示すグラフである。 歩行ロボティックスーツを装着した場合の筋活動量の測定結果を示すグラフである。 歩行ロボティックスーツを装着していない場合の筋活動量の測定結果を示すグラフである。 神経振動子間に抑制結合を加えたモデルを示す説明図である。 神経振動子間に抑制結合を入れない場合の左右脚の神経振動子の出力(a)、抑制結合を入れた場合の神経振動子の出力(b)を示すグラフである。 神経振動子間に抑制結合を入れた場合と、抑制結合を入れない場合における歩行安定性への影響を示す予想図である。 神経振動子間に抑制結合を入れた場合(a)、入れない場合(b)について、神経振動しの入力信号に対する振る舞いを調べた結果を示すグラフである。 歩行ロボティックスーツの構成を示す正面図である。 歩行ロボティックスーツを装着した状態を示す写真である。 同調ゲインを変えたときの左右脚の歩行周波数を示すグラフである。 同調ゲインを変えたときの左右脚の振幅を示すグラフである。 同調ゲインを変えたときの左右脚の相互作用トルクを示すグラフである。 同調ゲインを変えたときの左右脚の筋活動量を示すグラフである。 左右脚の位相差について解析した結果を示すグラフである。 上肢に装着したロボティックスーツの動きを示す説明図である。 リハビリ装置と使用者との相互作用力と、相互作用力によって生成される運動の加速度を示すグラフである。 リハビリ装置のアームが使用者の腕を引っ張るように同調制御している場合の相互作用力と加速度を示すグラフである。 同調制御の場合におけるリハビリ装置のアームの動作(a)と、相互作用力と加速度との関係(b)を示すグラフである。 インピーダンス制御の場合におけるリハビリ装置のアームの動作(a)と、相互作用力と加速度との関係(b)を示すグラフである。 同調制御方法によりリハビリ装置を制御した場合のアームの動作を示すグラフである。 図33のA領域(a)とB領域(b)における相互作用力と加速度を示すグラフである。
(歩行ロボティックスーツの構成)
図1は、本発明に係るロボティックスーツを歩行ロボティックスーツとして構成した例を示す。
図示例の歩行ロボティックスーツ10は、腰部に装着されるフレーム12と、フレーム12の左右に設けられたアーム部13a、13bにそれぞれ回動自在に取り付けられた第1のリンク14a及び第2のリンク14bと、第1のリンク14aと第1のリンク14bの下端部にそれぞれ回動自在に取り付けられた第3のリンク15a及び第4のリンク15bとを備える。
アーム部13a、13bと第1及び第2のリンク14a、14bとが連結する関節部(可動部分)には第1のアクチュエータ16aと第2のアクチュエータ16bがそれぞれ装着されている。第1のアクチュエータ16aは、アーム部13aと第1のリンク14aとの関節部(連結軸)を支点として第1のリンク14aを回動させる作用をなす。同様に、第2のアクチュエータ16bは、アーム部13bと第2のリンク14bとの関節部(連結軸)を支点として第2のリンク14bを回動させる作用をなす。
第1のリンク14aと第3のリンク15aとを連結する関節部(可動部分)、及び第2のリンク14bと第4のリンク15bとの関節部(可動部分)には、第3のアクチュエータ17aと第4のアクチュエータ17bがそれぞれ装着されている。第3のアクチュエータ17aは、第1のリンク14aに対して第3のリンク15aを回動させる作用をなし、第4のアクチュエータ17bは、第2のリンク14bに対して第4のリンク15bを回動させる作用をなす。
歩行ロボティックスーツ10を人体に装着した際に、第1のアクチュエータ16aと第2のアクチュエータ16bは、股関節に対応して位置し、第3のアクチュエータ17aと第4のアクチュエータ17bは、膝関節に対応して位置する。第1、第2のリンク14a、14bは、これらのアクチュエータ16a〜17bの対応する位置に合わせて長さが設定される。
第3のリンク15aと第4のリンク15bの下端部は足首(実際には靴部分)にフリージョイントとして固定される。第3、第4のリンク15a、15bは、膝位置から足首位置までの長さに合わせて形成される。
図2は、歩行ロボティックスーツ10を人体に装着した状態を示す。フレーム12は腰部の後ろ側に配置し、アーム部13a、13bで腰部を左右から挟むようにして、フレーム12を腰にしっかりと固定する。
第1及び第3のリンク14a、15aは左側の体側部に沿うように下肢部に装着し、第2及び第4のリンク14b、15bは右側の体側部に沿うように下肢部に装着する。第1及び第3のリンク14a、15aが体側部の一方の作用部であり、第2及び第4のリンク14b、15bが体側部の他方の作用部である。
第1、第2のリンク14a、14bは、ファスナーテープを用いて膝よりも若干上位置で固定し、第3、第4のリンク15a、15bは膝よりも若干下位置で固定する。第3、第4のリンク15a、15bの下端部に設けたジョイント部を靴に固定する。
第3、第4のリンク15a、15bの下端部をフリージョイントとして靴に固定することにより、足首関節を自由に動かせる状態で、歩行ロボティックスーツ10の重量を床反力によって受け、歩行ロボティックスーツ10を装着したことによる重量の負担を軽減させる。なお、本実施形態において使用した歩行ロボティックスーツ10の全重量は約9kgである。
腰の部分のジョイントは受動的な外転内転ジョイントしている。こうして、股関節及び膝関節を可動とした状態で歩行ロボティックスーツ10が人体に装着される。
第1〜第4のアクチュエータ16a〜17bとしては、株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ製の製品(商品名:FHA-14C-50-E200)を使用した。
第1〜第4のアクチュエータ16a〜17bに付設された減速機にトルクセンサが内蔵されており、トルクセンサにより歩行ロボティックスーツ10と人体との相互作用力をトルクとして検出する。検出されたトルクに基づいて、制御システムにより、第1〜第4のアクチュエータ16a〜17bの駆動を制御する。トルクセンサの感度は7.2Nm/Vである。
図3は歩行ロボティックスーツ10の制御系の構成を示すブロック図である。
この制御系は、制御用PC30によって歩行ロボティックスーツ10のアクチュエータ20を制御する構成としたもので、アクチュエータ20を駆動するドライバ21と、アクチュエータ20に付設されたトルクセンサ22と、トルクセンサ22の出力を制御用PC30に入力するアンプ23、A/D変換器24、インターフェースボード25とを備える。また、アクチュエータ20の現在角度はエンコーダ26により検出され、カウンタを介して制御用PC30に取り込まれる。
制御用PC30では、検出された相互作用トルクをもとに、同調制御方法に基づいて関節部の目標角度を算出し、この目標角度と現在角度からPID制御(フィードバック制御)により指令電圧を決定し、指令電圧をD/A変換器27からドライバ21を介してアクチュエータ20に送ってアクチュエータ20を駆動制御する。アクチュエータ20は具体的には、上述した第1〜第4のアクチュエータ16a、16b、17a、17bであり、実際には個々のアクチュエータを個別に制御する。
(同調制御方法)
アクチュエータ20を駆動制御する方法として、本発明においては同調制御方法に基づく制御方法を採用する。同調制御方法とは、たとえば、介護者が被介護者の動こうとするタイミングに合わせて力を加えてアシストする、すなわち介護者が被介護者の動作に同調しながら運動を補助する場合のように、人とスーツとの間に同調性をもたせて制御する方法であり、スーツが自然な動きとなるように、人とスーツとの親和性を図りながら制御する方法である。
歩行ロボティックスーツ10の制御システムとして、本実施形態においては、入力と出力との間に同調現象を再現する神経振動子によるモデルを利用する。神経振動子の数学モデルには様々なものがあるが、本実施形態においては、松岡モデルを用いる(非特許文献5)。このモデルを、(1)〜(3)式に表す。
上式で、xijはi番目の神経振動子のj番目のニューロンの内部状態を表す変数(i=1,2、j=1,2)、xij'はニューロンの疲労状態を表す変数、g(xij)はニューロンの出力、Siは定常入力、bjは疲労係数、aijはi番目のニューロンからj番目のニューロンへの結合係数、Tr、Taは時定数である。
図4に一つの関節の神経振動子の入出力を示す。神経振動子は、図4に示すような2つのニューロンにより構成される。この神経振動子の出力をg(xi1)−g(xi2)とすることで、正弦波のような周期的な信号が得られる。
Inputは周波数の同調のためのものであり、τ_mutualは相互作用力により発生する関節トルク(相互作用トルク)である。これに同調ゲインCを掛けて同調の度合を調整する。
神経振動子の入力Inputと相互作用トルクτ_mutualには(4)式の関係がある。
Input=C*τ_mutual (4)
C=0である場合は、外部情報をフィードバックせず、自分自身の特性(振幅や周波数など)に基づく神経振動子の出力が得られる。いいかえれば、同調しない制御となる。
C≠0である場合は、外部情報をフィードバックし、入力信号に引き込まれた(相互作用を取り入れた)神経振動子の出力が得られる。この場合は同調制御であり、同調ゲインCを調整することによって、望みの同調性を実現することができる。
図5に、歩行ロボティックスーツ10の制御系と同調制御方法を示した。
人と歩行ロボティックスーツ10の各関節部における相互作用力を前述したトルクセンサにより検出し、トルクセンサによって検出された相互作用力の、人とスーツとの同調の度合いを調整する調整部(ゲイン調整部)50を介して、解析部60に入力する。解析部60は、上述した神経振動子モデルにより解析して各関節の目標角度を求め、各関節における現在角度と目標角度との差に基づき制御部70に出力する。
制御部70は、PID制御によりアクチュエータをフィードバック制御するものであり、アクチュエータを駆動した結果得られる相互作用力をトルクセンサによって再度検知し、解析部60によって新たに目標角度を設定して、再度アクチュエータを駆動制御する。
こうして、アクチュエータの駆動を補正制御する操作を繰り返し行うことによって同調制御することができる。実施形態においては、制御プロセスを1msecの間隔で繰り返し行って同調制御した。
本実施形態においては、上記のように、神経振動子を用いたモデルを利用して同調制御を行った、同調制御は、神経振動子のモデルを利用して行う方法に限定されるものではない。ある入力に対して同調した出力が得られるモデルであれば、神経振動子モデル以外の方法を利用して同調制御することが可能である。
(歩行ロボティックスーツの使用例)
以下では、上述した歩行ロボティックスーツを使用して、実際にアシスト効果、同調効果がどのようにあらわれたかを検証した結果について説明する。
はじめに、人と歩行ロボティックスーツとの相互作用のトルクを正確に知るために、重力項を補正する操作、すなわちアクチュエータやリンク自体の重量がトルクの検出値に及ぼす作用を補正するための操作を行う。
図6は、歩行ロボティックスーツ10の片脚についての構成を二次元でモデル化したものである。関節トルクは次の(5)式によって求めることができる。
τ=g(θ) (5)
τはトルクセンサによって計測した数値を用いる。g(θ)は重力項であり、ラグランジュ法を用いて(6)式のように書くことができる。
1=(m1lg1+m'2l1+M1)gsin(θ1)+M2gsin(θ12) (6)
2=M2gsin(θ12) (7)
ここで、gは重力加速度であり、mjはj番目のリンクの質量である。m'jはj番目のアクチュエータの質量である。lgjはj番目リンクの重心位置であり、ljはj番目リンクの長さを表す。
ここで、M1=m2l1+m3l1、M2=m21g2+m3l2 (8)
(6)式と(7)式のパラメータを定めるために、静止状態で計測した関節角θと関節トルクτを用いて、同定実験を行った。このとき関節角θと関節トルクτのデータ4パターンを用いた。4パターンとは、関節角θ、θをそれぞれ4つの目標値(30、45、60、90度)に設定して、それらの関節トルクを計測し得られた4組のデータのことである。
(6)式と(7)式から得られたパラメータの値を表1に示す。ただし、リンクの長さは既知としている。
次に、股関節と膝関節を90度回転させたときの計測値と、上述した重力項の値との比較を行った。トルクセンサからの計測値を図7の(a)、(b)に示す。トルクセンサの計測値から計算値(重力項)を引いて補正した結果を図7の(c)、(d)に示す。図7(c)、(d)は、計測値と計算値との誤差がほぼゼロになっていることを示している。この結果から、重力のみしか考慮していないにも関わらず、動作状態でも計測値と計算値がほぼ一致し、上述した重力項による補正が、相互作用のトルクを正確に検出する上で有効であることがわかる。
(同調性の検証)
歩行ロボティックスーツ10の同調性を検証するため、健常者に歩行ロボティックスーツ10を装着してもらい、まず、予備歩行テストを行った。
予備歩行テストでは、歩数、所要時間、歩行距離(5m)を計測し、歩行周波数(1/t、tは一回の歩行サイクル所要時間)、歩幅、歩行比(歩幅(m)/歩調(steps/min))を算出した。その結果、今回の装着者においては、歩行周波数は約0.7Hz、歩幅は約0.55m、歩行比は0.0061(m・min/steps)であった。
図8は、歩行ロボティックスーツ10自体に設定した歩行周波数と振幅のグラフを示す。歩行ロボティックスーツ10に設定した歩行周波数は1.0Hz、振幅は±20.0度である。
次に、歩行ロボティックスーツ10をこの基本周波数と振幅に設定し、装着者に歩行ロボティックスーツ10とは同調しないようにしてもらいながら、約0.7Hzで歩行運動を行ってもらった。装着者の歩行周波数を維持するため、電子メトロノームのリズムを0.7Hzに設定し、電子メトロノームに合わせて、歩行運動を行ってもらった。
図9は、歩行ロボティックスーツ10の同調ゲインCを0.2、0.5、0.8に変えた場合について、相互作用トルクの絶対値の平均値と同調ゲインとの関係を調べた結果を示す。図9は左右の脚について、股関節と膝関節部分における相互作用トルクが同調ゲインの設定によってどのように変化したかを示す。
図9の測定結果は、同調性が増加する(同調ゲインを大きくする)にともなって、相互作用トルクが軽減することを示す。これは、互いに同調したことによって、相互作用トルクが減少したと考えられ、同調性が確認されたものと考えられる。
図10は、同調ゲインC=0.8のときの歩行周波数を示す。図10は、左右の脚の歩行周波数が、股関節、膝関節とも完全に一致し、装着者と歩行ロボティックスーツ10が同調した動作を行っていることを示している。このときの引き込み周波数(最終的に同調したときの歩行周波数)は0.7Hzである。この場合の同調動作は、歩行周波数を1.0Hzに設定した歩行ロボティックスーツ10が人間側に同調し、人間がアクティブな運動をしていることを意味する。なお、同調ゲインを0.2、0.5とした場合も、歩行ロボティックスーツ10は装着者に同調し、歩行周波数は0.7Hzとなった。
次に、装着者に歩行ロボティックスーツ10の動作に同調させるように歩行運動を行ってもらい、装着者と歩行ロボティックスーツ10との相互作用トルクと引き込み周波数の変化を調べた。実験は、同調ゲインを0.3、0.5、0.8として行った。
図11に同調ゲインを変えたときの相互作用トルクの測定結果を示す。この場合も、図9に示したと同様に、同調ゲインを大きくするにともなって相互作用トルクが減少する傾向が見られた。この結果は、人の歩行パターンは、受動的であるか能動的であるかに関わらず、歩行ロボティックスーツと人との同調性が増加する(高まる)にしたがって、相互作用トルクが減少していくことを示している。
図12は、同調ゲインを変えたときに歩行周波数(引き込み周波数)がどのようになるかを測定した結果を示す。図12に示す実験結果は、同調ゲインを増加させると引き込み周波数が0.9Hzから0.7Hzに移っていくことを示す。この結果は、同調ゲインを調整することによって、様々な歩行周波数で歩行できる可能性があることを示す。
図13は、同調ゲインを0.5とした場合の歩行周波数を示す。この場合の引き込み周波数は約0.8Hzである。歩行ロボティックスーツ10と装着者の双方がある程度の同調性をもっているときには、互いに引き込み・同調し、各々の基本周波数の0.7Hzと1.0Hzの中間の歩行周波数に引き込まれることを示している。
以上の同調性についての実験結果は、本実施形態の歩行ロボティックスーツ10が人の動作と的確に同調しながら駆動制御されることを示すものであり、歩行ロボティックスーツ10が人と同調制御されることにより、歩行ロボティックスーツ10と人との相互作用力を軽減し、人の動作に親和した駆動制御がなされることを示している。
本実施形態の歩行ロボティックスーツ10の制御方法は、人体の筋電位信号を検知して制御するといった方法とは異なり、もっぱら装置側において人とスーツとの相互作用力を検出して制御する方法であり、スーツの構成を簡素化することが可能であり、人との親和性を高めたロボティックスーツとして構成することができるという特徴がある。
(アシスト効果について)
歩行ロボティックスーツ10を装着した場合と装着しなかった場合において、それぞれ同じ運動が生成されるようにし、それぞれの運動負担を筋電位信号によって調べた。筋電位信号については、歩行運動に関する内側広筋、大腿直筋、外側広筋、大腿三頭筋の四つの筋肉の負担を筋電位計を用いて計測した。
100%MVC法を用いて筋活動量を計算する。100%MVC法は、対象となる筋の最大随意収縮(Maximal Voluntary Contraction: MVC)時の筋活動量を100%としてある動作局面の筋活動量の割合を表したものである。筋活動量をRMS(Root Mean Square)値を用いて表す。そのRMS信号は使用した筋電位計(personal-EMG)により出力され、その信号を用いて筋活動量を計算している。歩行ロボティックスーツ10を装着した場合は、同調ゲインC =0.1とし、ある程度の同調性を持たせる設定とした。そのため、引き込み周波数は0.95Hzとなった。その様子を図14に示す。
次に、歩行ロボティックスーツ10の装着者に電子メトロノームを用いて周波数0.95Hzで自己歩行運動を行ってもらい、同じ個所の筋肉の筋電位信号を計測した。歩行ロボティックスーツ10を装着した場合の四つの筋肉の筋活動量の様子を図15、歩行ロボティックスーツ10を装着しなかった場合の筋活動量の様子を図16に示す。表2は、図15、図16の平均値を示す。
歩行ロボティックスーツ10を装着した場合には、筋活動量の平均値が7.5%になり、装着しなかった場合には、筋活動量の平均値は9.0%になった。すなわち、同調制御による歩行ロボティックスーツ10を装着した場合には、装着者はより小さな力で目標運動を達成したことになる。この実験結果は、歩行ロボティックスーツ10によるアシスト効果の有効性を示すものと考えられる。
なお、表2から、大腿直筋と大腿三頭筋が最もアシストされたことが分かる。大腿直筋と大腿三頭筋は股関節と膝関節の屈伸運動に関係していることから、スイング運動やかかと着地時の股関節と膝関節の伸展運動がアシストされたと考えられる。
(歩行比の作用について)
歩行ロボティックスーツ10の同調ゲインを0.5とし、歩行ロボティックスーツ10を装着した装着者に受動的に(歩行ロボティックスーツ10に同調するように)歩行を行ってもらい、予備歩行テストと同一の歩行距離で、歩数と所要時間を測定し、歩行周波数、歩幅、歩行比を算出した。
その結果、歩行周波数は0.75Hzとなり、歩幅は増加して0.63mとなった。歩行比は若干増加し、0.0065m・min/stepsとなった。
このことから、小刻み歩行パターンをとっている装着者に対しては、歩幅を増加させる効果が期待できる。
上述した歩行ロボティックスーツ10の同調性、アシスト効果、歩行比の上昇という効果は、歩行ロボティックスーツ10を歩行運動のロボティックスーツとして利用する他に、リハビリテーション用として利用できる可能性を示している。歩行運動のリハビリテーションでは、歩行動作を補助すると同時に、歩行動作を所定の引き込み周波数に引き込むように調整する(強制的に動かす)ことによって、所望の歩行訓練を行うことができる。すなわち、歩行ロボティックスーツ10を利用することにより、リハビリ運動として加える負荷を調節しながら、無理のないリハビリ運動を実現することが可能である。
上記実施形態の歩行ロボティックスーツは、下肢部に装着する複数の関節部を備えた歩行ロボティックスーツとして構成したものであるが、下肢部に限らず上肢部に装着するロボティックスーツとして構成することもできる。
また、ロボティックスーツを、人体を全体として補助するロボティックスーツとして構成し、人体の屈曲可動部分の動作をアシストするように形成することも可能である。
また、実施形態の歩行ロボティックスーツは各脚に2つの関節部を設けたものであるが、さらに3つ以上の関節部を設けて制御する場合も、上述した方法と同様な方法によって同調制御することが可能である。
(関節部間の協調動作を取り入れる制御方法)
上述した実施形態においては、複数の関節部を有する歩行ロボティックスーツについて同調性等を検証した。ところで、歩行ロボティックスーツでは歩行の安定性を確保するという問題がある。以下の実施形態においては、関節部間の協調動作を考慮することにより、歩行の安定性を確保することについて検証する。
関節部間の協調動作を考慮するため、左右脚の対応する神経振動子間に抑制結合を加えて制御する方法を採用する。図17に神経振動子間に抑制結合を加えたモデルを示す。神経振動子の入力と出力のモデルは図4に示したモデルと同様である。
神経振動子の出力をg(xi)−g(xi+1) (i=1,3)とすると、神経振動子の初期状態を定めることにより、図18(a)に示すような、左右で逆位相となる周期的な信号が得られる。図18(b)は神経振動子間に抑制結合を加えた場合に得られる信号を示す。抑制結合を入れる前にくらべて若干(1/6周期程度)遅くなっている。
人との相互作用に加えて神経振動子間の相互作用を考慮すると、神経振動子からの出力が不安定になる。そこで、神経振動子間の抑制結合係数を、ロボティックスーツと人との同調性が優先されるような小さな値に設定すると、左右脚の位相が反転した信号が得られる。図18(b)は、抑制結合係数を十分に小さくした場合の信号を示している。
このように、抑制結合係数の値を十分に小さくすることにより、人との相互作用を取り入れながら、各関節部間の協調動作によって歩行安定性を確保することが可能となる。
図19は、神経振動子間に抑制結合を入れた場合と、抑制結合を入れない場合における歩行安定性への影響を示す。
抑制結合を入れた場合には、ロボティックスーツの同調性が低い(同調ゲインが低い)場合に歩行安定性が高く、同調性を高くするにしたがって、装着者自身の歩行安定性に近づいていく。一方、抑制結合を入れない場合には、同調性が低いと動作が不安定になり、同調性を上げていくにしたがって装着者自身の歩行安定性に近づいていく。
(入力信号に対する神経振動子の振舞い)
神経振動子に抑制結合を入れた場合と入れない場合とで、入力信号に対して神経振動子がどのように振舞うかを調べた。
図20は、左右脚の神経振動子の振る舞いを調べた結果を示す。この実験は、異なる周波数の正弦波を左右の神経振動子に入力し、同調ゲインC=1として一定時間フィードバックした後、入力信号を0にしたときに、神経振動子がどのように振舞うかを調べたものである。図20(a)は、神経振動子間に抑制結合を入れない場合、図20(b)は抑制結合を入れた場合である。
神経振動子間に抑制結合を入れない場合、入力信号がある間は入力信号に同調した出力信号が得られるが、入力信号が0になると、本来の逆位相には戻れず、2つの神経振動子はランダムな位相で振動する。
一方、神経振動子間に抑制結合を入れると、入力信号がある間は入力信号に同調した出力信号が得られ、入力信号が0になっても、本来の逆位相を維持したまま、2つの神経振動子は元の逆位相に戻って振動していく。
すなわち、神経振動子間に抑制結合を入れることによって、神経振動子が協調して安定的な同調出力が得られるようになる。
(歩行ロボティックスーツへの使用例)
図21は、関節部間の協調動作の検証に用いた歩行ロボティックスーツ40の構成を示す。この歩行ロボティックスーツ40は、腰部に取り付けるフレーム42と、フレーム42の両端にそれぞれ回動可能に軸支したリンク43を備える。フレーム42とリンク43との連結位置(関節部)には、それぞれフレーム42とリンク43との連結位置(関節部)を支点としてリンク43を回動駆動するアクチュエータ44が装着される。リンク43とアクチュエータ44とは左右で対称位置に装着される。アクチュエータ44には減速機が取り付けられ、減速機にはロボティックスーツと装着者との間の相互作用力を検知するトルクセンサが内蔵されている。
図22は、歩行ロボティックスーツ40を装着した状態を示す。歩行ロボティックスーツ40の全重量は約3kgである。
この歩行ロボティックスーツ40は、股関節に対応して一つの関節部を設けたものであり、図1に示した左右の脚にそれぞれ複数(2つ)の関節部を設けたものとは異なる構成となっている。
この歩行ロボティックスーツ40の制御システムは、図3、図5に示示した制御系と同様である。ただし、本実施形態においては、図5に示す神経振動子の解析部による出力として、神経振動子間の抑制結合を加えた解析に基づいた出力が得られるように設定されている。
健常者の被験者の片足にロード(2.8 kg)をつけ、歩行に不自由な要素を加えたと仮定し、上記の歩行ロボティックスーツ40を装着してもらい、歩行ロボティックスーツ40の動作に合わせて歩いてもらった。同調ゲインを0.2、0.3、0.4、0.5、0.8に設定し、各々、抑制結合を加えた場合と加えなかった場合について歩行実験を行った。
各場合について、両足の太ももの4箇所の筋電位と、相互作用トルクを計測した。筋電位についての計測結果は、筋活動量として算出した。歩行周波数と振幅についてはフーリエ解析を用いて解析した。左右股関節の位相差はリターンマップを用いて解析した。
図23は、同調ゲインを変えた際に、抑制結合によって引き込み周波数がどうなるかを示している。図23(a)が抑制結合を入れた場合、図23(b)が同調結合を入れない場合である。この結果は、同調ゲインを変えることによって、抑制結合を入れた場合と入れない場合の双方で、引き込み周波数が変化することを示す。すなわち、同調ゲインを調整することによって、引き込み周波数を調整することができると考えられる。
なお、同調ゲインが低い場合(同調ゲイン=0.2)には、抑制結合を入れると左右脚の周波数が一致し、抑制結合を入れないと左右脚の周波数が一致しないこと、同調ゲインを大きくしていくと、周波数についての差が見られないという現象がみられた。この結果は、同調ゲインが低い場合には、抑制結合を入れる制御方法が歩行の安定性に寄与することを示していると考えられる。
図24は、歩行パターンごとの、左右脚の振幅(歩幅)についての測定結果を示す。抑制結合を加えた場合には、同調ゲインが何れの値のときにも左右脚の振幅差は見られない。一方、抑制結合を加えなかった場合には、とくに、同調ゲインを低く設定すると、左右脚に大きな差が見られた。すなわち、抑制結合を加えない場合には、歩行バランスを大きく崩す可能性があること、言い換えれば、抑制結合を加えることが歩行の安定性に大きく寄与することを示している。
図25は、歩行パターンのそれぞれについて、相互作用トルクの平均値を示したものである。抑制結合を加えた場合には、左右脚の相互作用トルクがバランスしているのに対して、抑制結合を加えない場合には、左右脚の相互作用トルクがアンバランスとなっている。また、同調ゲインを大きくするにしたがって、相互作用トルクが低減する傾向が見られた。
図26は、抑制結合を加えた場合と、加えなかった場合について筋活動量を観察した結果を示す。
この実験結果からも、抑制結合を加えた場合は、左右脚で比較的バランスした値が得られるのに対して、抑制結合を加えない場合には、左右脚の筋活動量が大きく相違することが示されている。なお、筋活動量は、抑制結合を加えた場合も加えなかった場合も、同調ゲインを大きくするにしたがって、左右脚の差が小さくなる傾向にある。
図27は、同調ゲインを0.2(同調性が低い)とした場合に、歩行ロボティックスーツ40の左右の位相差を解析してリターンマップとして表したものである。この解析結果は、抑制結合を加えた場合には、左右位相差がほぼ180度付近に収斂したのに対し、抑制結合を加えなかった場合には、左右位相差が散乱し、元の逆位相が乱れた結果となった。
図23〜27に示した実験結果は、神経振動子間に抑制結合を加えた制御を行った場合と、抑制結合を加えなかった場合とで、顕著な差が生じることを示している。すなわち、左右の神経振動子間に抑制結合を加えて制御する方法は、歩行安定性を維持する上できわめて有効であることを示唆するものと考えられる。とくに、同調ゲインが低い場合に、歩行安定性を維持する上で有効である。
上記実施形態は、左右の脚にそれぞれ一つの関節部を設けたロボティックスーツについて実験した結果である。前述した左右の脚にそれぞれ2つの関節部を設けたロボティックスーツについても、左右の神経振動子間に抑制結合を加えて制御することによって、歩行の安定性を向上させることができるものと考えられる。
(上肢リハビリ装置への利用例)
上述した実施形態はロボティックスーツを下肢に適用した例である。以下では、ロボティックスーツを上肢のリハビリ(リハビリテーション)装置として適用した例について説明する。
図28は上肢にロボティックスーツを装着した状態を示す。上肢のリハビリ動作には、肩を前後方向に動かす動作と、左右に動かす動作(体側につけたり離したりする動作)がある。このため、本実施形態においては、肩の関節部分に駆動軸方向を直交させる配置(2自由度)に2つのモータを装着し、肘部分については前後方向(1自由度)の動作を可能とする1つのモータを装着した。肩関節に装着したモータは上腕に装着するアーム(リンク)に連繋し、このアームの端部(肘位置に相当する)にモータを介して下腕のアーム(リンク)を連繋した。
リハビリ療法においては、患者の回復に合わせて患者自身の随意運動を反映させながら、さらにその動作を拡大させるように力を加えることによって有効なリハビリ効果が生まれると考えられる。このリハビリ動作では、療法士と患者の動きが互いに同調しながら一つの運動を生成する引き込み・同調現象が起こっていると考えられる。本実施形態のロボティックスーツは、前述した同調制御を上肢のリハビリに利用したものであり、使用者の腕とロボティックスーツとの間の相互作用力を検知し、この相互作用力を前述した神経振動子への入力として同調制御する。使用者の腕と装置のアームとの相互作用力を検知するため、肩関節と肘関節の近くのリンク(アーム)にひずみゲージを取り付けてトルクを検出するようにした。相互作用力を検知する方法として、駆動用のモータにトルクセンサを取り付けて検知することも可能である。
図28(a)、(b)はリハビリ装置のアームが、使用者の腕よりも先行して動作している状態、いいかえれば装置のアームが使用者の腕を引っ張っている状態である。この場合は、アームの運動方向と反対向きの相互作用力が生じる。図28(c)、(d)は、使用者の腕がアームよりも先行して動作している状態、いいかえれば使用者が装置のアームを引っ張っている状態である。この場合は、アームの運動方向と同じ向きの相互作用力が生じる。
図29は、装置と使用者の相互作用力と、相互作用力によって生成される運動の加速度を示す。図29(a)は、アームの運動方向と反対向きの相互作用力が生じる場合で、生成される運動の相互作用力と加速度とは同位相となる。図29(b)は、アームの運動方向と同じ向きの相互作用力が生じる場合で、加速度は相互作用力と逆位相となる。したがって、リハビリ装置と使用者との相互作用力が同位相にあるか逆位相にあるかを検知することにより、アームが腕を引っ張っている状態か、使用者がアームを引っ張っている状態かを探ることができる。
ロボティックスーツをリハビリ用に使用する際には、運動の過程で装置が患者(使用者)の腕を引っ張るような現象を生じさせることによってリハビリ効果を発揮させることができると考えられる。前述したように、同調制御方法は患者の動きに合わせて駆動力を作用させる制御方法であり、これによって患者の回復状態に応じて適切なリハビリ運動をさせることが可能である。
図30は、患者にリハビリ装置を装着しアームが装着者の腕を引っ張るように同調制御している場合の相互作用力と加速度を示す。装置の動きが先行して患者の動きを拡大させるような領域が周期的に出現していることがわかる。
(実験例1)
インピーダンス制御方法にしたがってリハビリ装置を制御する場合と、同調制御方法にしたがってリハビリ装置を制御する場合の作用の相違を比較する実験を行った。
リハビリ中の被検者3名の上肢に上述したリハビリ装置を装着し、インピーダンス制御と同調制御により、それぞれ20〜30秒間、腕の曲げ伸ばし運動(肩関節を基点として上腕を前後動させながら肘関節を基点として腕を曲げ伸ばしする動作)を行い、そのときの装置と腕の相互作用力と腕の加速度を測定した。なお、インピーダンス制御とは、相互作用力が変化したときにロボット(装置)のインピーダンスを変化させることによってロボットの動作を元の状態から変化させるという制御方法である。上述したリハビリ装置は、インピーダンス制御と同調制御とを切り換えて制御できるように設計してある。
図31は同調制御の場合、図32はインピーダンス制御の場合である。図31(a)、図32(a)は、相互作用力を入力した場合と入力しない場合でのアームの動き、図31(b)、図32(b)は相互作用力と腕の加速度を示す。
図32(a)に示すように、インピーダンス制御の場合は、相互作用力を制御信号として入力してもアームの回転動作はほとんど変化しない。すなわち、この場合は、相互作用力に関わらずに、いいかえれば被検者の感覚が反映されずに腕が動かされていることがわかる。一方、同調制御による場合は、図31(a)に示すように、相互作用力を制御信号として入力することにより、腕の動きが大きく変化している。すなわち、この場合は被検者の感覚が反映されて腕の動きが変化することがわかる。
腕の加速度についてみると、図32(b)に示すように、インピーダンス制御の場合は、相互作用力と加速度とが完全に同位相となっており、被検者の意図とは関わりなくアームによって被検者の腕が強制的に動かされていることを示している。一方、同調制御の場合は、図31(b)に示すように、相互作用力と加速度との間には相関関係がとくにみられない。これは、リハビリ装置から被検者の腕に無理な力を作用していないことを示している。
図33は同調制御方法によりリハビリ装置を制御した場合のアームの動作(揺動)を示す。図34(a)は、図33のA領域の相互作用力と加速度を示したもの、図34(b)は、図33のB領域の相互作用力と加速度を示している。
図34(a)に示すA領域においては、相互作用力と加速度との間には相関がみられず、被検者は装置からの力をさほど感じることなく腕の曲げ伸ばし運動をしている。図34(b)に示すB領域では相互作用力と加速度との間には同位相の相関がみられる。この領域ではリハビリ装置によって被検者の腕が引っ張られる状態(リハビリ装置が先行している状態)になっていると考えられる。このように、同調制御方法によりリハビリ装置を制御する方法においては、使用者の腕の動きが装置よりも先行したり、装置のアームが使用者の腕の動きよりも先行したりする動作を行いながら同調制御される。
試験後に被検者からアンケートを取った結果によると、同調制御方法によりリハビリ装置を制御した場合は、療法士によるリハビリ動作に近い感覚が得られ違和感なく使用することができる、自分の動きを感じとってリハビリ装置が動作している感覚が得られ、自分の意図する運動が可能で安心感があったという評価が得られた。これらの評価結果は、同調制御による制御方法が、患者(使用者)の随意運動を反映した制御、すなわち患者が動かそうとする意図をリハビリ装置側で感じながら患者の動作に合わせた制御がなされることを示していると考えられる。
同調制御方法においては、同調性(入力ゲイン)を適宜調節できるから、患者の回復状態に合わせてリハビリの強さを調節することが容易に可能であり、患者の動きに合わせて的確に動きを拡大させることによって有効なリハビリ効果が得られる。また、動かしやすさから無理のないリハビリが可能となり、リハビリ意欲を向上させることができるという利点もある。
上記実施形態においては、腕を前後方向に曲げ伸ばしする利用例について述べたが、前後方向とは別に、腕を左右方向(体側から離す方向)に伸ばす運動に利用することもできる。同調制御方法は使用者(患者)と装置との相互作用力を検知しながら装置の動作(強さ、動きの大きさ、動きの速さ等)を制御するものであり、どのような動きによってリハビリを行う場合であっても、使用者の随意運動を反映したリハビリを行うことができる点できわめて有効である。
本発明に係るロボティックスーツは、人体の運動機能の補助、歩行アシスト装置、リハビリテーション用装置等に利用することができる。
10 歩行ロボティックスーツ
12 フレーム
13a、13b アーム部
14a 第1のリンク
14b 第2のリンク
15a 第3のリンク
15b 第4のリンク
16a 第1のアクチュエータ
16b 第2のアクチュエータ
17a 第3のアクチュエータ
17b 第4のアクチュエータ
20 アクチュエータ
22 トルクセンサ
26 エンコーダ
30 制御用PC
40 歩行ロボティックスーツ
43 リンク
44 アクチュエータ
50 調整部
60 解析部
70 制御部



Claims (7)

  1. 人体の屈曲可動部位に対応して配置される関節部と、
    前記関節部間を連結して人体に装着されるリンクと、
    前記関節部を支点として前記リンクを回動するアクチュエータと、
    人体とスーツとの相互作用力を検出するセンサとを備え、
    前記アクチュエータの駆動を制御する制御系として、
    前記センサによって検出された前記相互作用力に基づいて、人とスーツとの同調の度合いを調整する調整部と、
    該調整部により調整された入力に同調する出力を算出する解析部と、
    該解析部の出力に基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御する制御部とを備えることを特徴とするロボティックスーツ。
  2. 前記作用部は、複数の関節部を備えることを特徴とする請求項1記載のロボティックスーツ。
  3. 前記アクチュエータは、前記関節部に位置合わせして装着されていることを特徴とする請求項1または2記載のロボティックスーツ。
  4. 前記センサとしてトルクセンサを付設し、前記相互作用力として、前記トルクセンサによる出力を利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のロボティックスーツ。
  5. 前記解析部においては、次式(1)〜(3)の関係を有する2つの神経振動子からなる数学モデルに基づいて出力を解析することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のロボティックスーツ。
    上式において、xijはi番目の神経振動子のj番目のニューロンの内部状態を表す変数(i=1,2、j=1,2)、xij'はニューロンの疲労状態を表す変数、g(xij)はニューロンの出力、Siは定常入力、bjは疲労係数、aijはi番目のニューロンからj番目のニューロンへの結合係数、Tr、Taは時定数、Inputは相互作用力τ_mutualに同調ゲインCを掛けたものである。
  6. 前記関節部と前記リンクとを備える作用部が、人体の左右の体側部に沿ってそれぞれ配置され、
    前記解析部は、前記左右の作用部の対応する関節部間の協調動作を取り入れるモデルに基づいて出力を解析することを特徴とする請求項5記載のロボティックスーツ。
  7. 前記関節部間の協調動作を取り入れるモデルにおいて、神経振動子間を結合する係数を、スーツと人との同調性を優先する値に設定することを特徴とする請求項6記載のロボティックスーツ。

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