JP2011115082A - 抗体結合タンパク質およびそれの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決の手段】 ヒトFcレセプターFcγRIのうち、細胞外領域の抗体結合ドメインの全体配列または概ね全体配列からなるポリペプチド、または前記ポリペプチドを複数連結したポリペプチドのN末端側に、ヒトFcレセプターFcγRIのシグナルペプチドを付加したタンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および前記ベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体を用いることで、ヒト抗体に対する結合親和性が向上したタンパク質を製造することができた。
【選択図】 なし
Description
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるヒトFcレセプターFcγRIのうち、細胞外領域の抗体結合ドメインの全体配列または概ね全体配列からなるポリペプチドのN末端側に、ヒトFcレセプターFcγRIのシグナルペプチドを付加した、タンパク質。
ヒトFcレセプターFcγRIタンパク質は図1に示すように、N末端側から15アミノ酸からなるシグナルペプチド領域(SS、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち−15番目から−1番目までの領域)、277アミノ酸の細胞外領域(EC、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち1番目から277番目までの領域)、21アミノ酸の細胞膜貫通領域(TM、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち278番目から298番目までの領域)、61アミノ酸の細胞内領域(C、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち299番目から359番目までの領域)からなる。このうち、IgG分子Fc領域と結合性を有する領域は細胞外領域、特にその中の抗体結合ドメイン(BR、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち80番目から179番目)であり、当該領域でIgG抗体を直接捕捉している。
本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるヒトFcレセプターFcγRIのうち細胞外領域の抗体結合ドメインの全体配列または概ね全体配列からなるポリペプチドのN末端側にヒトFcレセプターFcγRIのシグナルペプチドを付加したタンパク質、または、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるヒトFcレセプターFcγRIのうち細胞外領域の抗体結合ドメインの全体配列または概ね全体配列からなるポリペプチドを複数連結したポリペプチドのN末端側にヒトFcレセプターFcγRIのシグナルペプチドを付加したタンパク質をコードするポリヌクレオチドのことをいう。なお、遺伝子組み換え技術を用いて本発明のタンパク質を製造する場合は、前記タンパク質のアミノ酸配列をヌクレオチド配列に変換する際に、組み換え対象宿主細胞におけるコドンの使用頻度を考慮のうえ変換するのが好ましい。一例としてBrevibacillus choshinensisを宿主とする場合は、セリン(Ser)ではTCA、ロイシン(Leu)ではCTA、アルギニン(Arg)ではCGG/AGA/AGG、イソロイシン(Ile)ではATAへの変換をそれぞれ避けて変換するのが好ましい(特願2008−046438号参照)。
本発明のタンパク質の製造方法としては、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるヒトFcレセプターFcγRIから適当な試薬を用いて細胞外領域の抗体結合ドメインを含んだポリペプチドを調製し、前記ペプチド同士を直接またはリンカーを介したペプチド結合により製造する方法、および本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを設計し、前記ポリヌクレオチドから遺伝子工学的手法を用いて製造する方法があげられるが、後者の製造方法が、本発明のタンパク質を簡便かつ大量に生産できる点で好ましい。以下、後者の製造方法について詳細に説明する。
(1)目的とする本発明のタンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、前記ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成して取得する方法、
(2)ヒトFcγRI細胞外領域の抗体結合ドメイン(配列番号3に記載のヌクレオチド配列)の全体配列または概ね全体配列からなるポリヌクレオチドを、直接人工的に、またはヒトFcγRIのcDNAなどからPCR法といったDNA増幅法を用いて調製し、調製した前記ポリヌクレオチドを適当な方法で連結し取得する方法、
が例示できる。
ヒトFcレセプターFcγRI細胞外領域のうち抗体結合ドメインを含むタンパク質を発現可能なプラスミドの作製を、以下の方法で行なった。
(1)ヒトFcγRI細胞外領域のうち抗体結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを以下の方法で調製した。
(1−1)Human cDNA clone SC119841プラスミド(Origene社製)をテンプレートとし、配列番号9(5’−CCCATACAGCTGGAAATCCACAGAGGC−3’、配列番号1の283から309番目の塩基に相当)と配列番号10(5’−GC[TCTAGA]TCAGTGGTGGTGGTGGTGGTG[ACTAGT]AGTGACAGATATTCCTGCTGATGTG−3’:角かっこ部分はそれぞれ制限酵素XbaI、SpeIの認識配列、36から60番目の塩基は配列番号1の528から552番目の塩基の相補鎖に相当)のオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして使用した。なお、ヒトFcγRIの調製および定量を行なうために、発現させるタンパク質のC末端側にポリヒスチジンタグが付加されるようにPCRプライマーを設計した。
(1−2)PCR反応を、94℃・5分の熱処理後、94℃・30秒間の第一ステップ、65℃・30秒間の第二ステップ、72℃・1分間の第三ステップを25サイクル行ない、最後に、72℃・7分の条件で行なった。反応液組成を表1に示す。
(1−4)目的産物に相当するバンドをアガロースゲルから抽出(QIAquick Gel extraction kit(商品名):キアゲン社製)し、ヒトFcγRIの抗体結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを調製した。
(2)(1)で調製したポリヌクレオチドにヒトFcγRIのシグナルペプチド領域をコードするポリヌクレオチドを、以下の方法で連結した。
(2−1)(1)で調製したポリヌクレオチドと、配列番号11(5’−GA[AGATCT]ATGTGGTTCTTGACAACTCTGCTCCTTTGGGTTCCAGTTGATGGGCAAGTGGACACCACAAAGCCCATACAGCTGGAAATCCACAGAGG−3’:角かっこ部分は制限酵素BglIIの認識配列、9から71番目の塩基は配列番号1の1から63番目の塩基に相当)のオリゴヌクレオチドとを等モル量で混合し、PCRを(1−2)に記載の条件のうちサイクル数を5回に変更した条件で行ない、両ヌクレオチドを連結した。なお、配列番号11のオリゴヌクレオチドは5’末端側にヒトFcγRIのシグナルペプチド領域をコードするポリヌクレオチドが付加され、3’末端側は抗体結合ドメインのN末端側をコードするポリヌクレオチドとなるよう設計した。
(2−2)(2−1)のPCR反応液をテンプレートとし、配列番号10と配列番号12(5’−GA[AGATCT]ATGTGGTTCTTGACAACTCTGCTCC−3’:角かっこ部分は制限酵素BglIIの認識配列、9から33番目の塩基は配列番号1の1から25番目の塩基に相当)のオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして使用した他は、(1−2)と同様に行なった。
(2−3)PCR終了後、(1−3)および(1−4)と同様の方法により、ヒトFcγRIのシグナルペプチド領域を連結した抗体結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを調製した。
(3)(2)で調製したポリヌクレオチドを制限酵素BglIIとXbaIにより消化後、これらの制限酵素により事前に消化したプラスミドpECEdhfr(非特許文献5)とライゲーションし(Ligation Kit Ver.2:タカラバイオ社製)、50μg/mLの抗生物質カルベシニリンを添加したLB寒天培地を用いて大腸菌JM109株を形質転換した。
(4)(3)の形質転換体を50μg/mLの抗生物質カルベシニリンを含むLB培地により培養(37℃、18時間)し、QIAprep Spin Miniprep Kit(商品名、キアゲン社製)によりプラスミドを抽出した。
(5)抽出プラスミドを制限酵素BglIIとXbaIにより消化し、2%のアガロース電気泳動に供した。
ヒトFcレセプターFcγRI細胞外領域のうち抗体結合ドメインを2つ連結したタンパク質を発現可能なプラスミドの作製を、以下の方法で行なった。
(1)ヒトFcγRIの抗体結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを以下の方法で調製した。
(1−1)Human cDNA clone SC119841プラスミド(Origene社製)をテンプレートとし、配列番号13(5’−CG[GCTAGC]CCCATACAGCTGGAAATCCACAGAGGC:角かっこ部分は制限酵素NheIの認識配列、9から35番目の塩基は配列番号1の283から309番目の塩基に相当)と配列番号14(5’−GG[ACTAGT]AGTGACAGATATTCCTGCTGATGTG−3’:角かっこ部分は制限酵素SpeIの認識配列、9から33番目の塩基は配列番号1の528から552番目の塩基の相補鎖に相当)のオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして使用した他は、実施例1の(1−2)と同様にPCR反応を行なった。
(1−2)実施例1の(1−3)および(1−4)と同様な方法で、目的産物を精製し、ヒトFcγRIの抗体結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを調製した。
(2)(1)で調製したポリヌクレオチドを制限酵素NheIとSpeIにより消化し、制限酵素SpeIにより事前に消化した実施例1で作製したプラスミドpECEFcB1dhfr(図2)と実施例1の(3)から(5)と同様な方法でライゲーションし、形質転換およびプラスミド抽出を行なった。なお、制限酵素NheIとSpeIで消化した断片はライゲーション可能であるが、再消化することはできない。この性質を利用して、複数のポリペプチドを連結する際は制限酵素SpeIおよびBglII消化により挿入断片の挿入方向を確認することができる。
(3)抽出プラスミドを制限酵素BglIIとXbaIにより消化し、2%のアガロース電気泳動に供し、インサートサイズから設計通りであることを確認した。また、制限酵素BglIIとSpeIにより消化して同様に電気泳動に供し、消化断片が制限酵素BglIIとXbaIの消化断片と同じもの、すなわち、挿入した抗体結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドがNheIとSpeIでライゲーションし、プラスミドpECEFcB1dhfr(図2)の抗体結合ドメインのDNA配列と同方向になっているものを選択した。
実施例1および2で作製したプラスミドpECEFcB1dhfr(図2)、pECEFcB2dhfr(図3)に挿入されている、ヒトFcレセプターFcγRIの抗体結合ドメインを含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列をチェーンターミネータ法に基づくBig Dye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit(商品名、PEアプライドバイオシステム社製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI Prism 310 DNA analyzer(PEアプライドバイオシステム社製)において解析した。なお、シークエンスは挿入配列を制限酵素BglIIとXbaIにより消化し、DNA Blunting Kit(タカラバイオ社製)を用いてDNA末端を平滑化し、事前にSmaI処理したプラスミドpUC19(タカラバイオ社製)に挿入して行なった。シークエンス用プライマーとして、配列番号15(5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC−3’)と配列番号16(5’−GAGCGGATAACAATTTCACACAGG−3’)に示すオリゴヌクレオチドを使用した。
ヒトFcレセプターFcγRI細胞外領域における抗体結合ドメインを1つまたは2つ連結したタンパク質を分離精製した。具体的には以下の通りである。
(1)実施例1および2で作製したプラスミドpECEFcB1dhfr(図2)、pECEFcB2dhfr(図3)を、リポフェクトアミン(インビトロジェン社製)を用いてCOS7細胞に導入し、10% FCSを含むD−MEM培地(GIBCO社製)で培養することで(37℃、3日間)、一過的に細胞外へタンパク質を発現させ、培養後、培養液を回収した。
(2)培養上清約1Lを、20mM酢酸緩衝液(pH5.2)で透析し脱塩処理を施した。
(3)20mM酢酸緩衝液(pH5.2)で平衡化した300mLのStreamline SPゲル(商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を備えた吸着流動床システム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に添加し、同緩衝液で洗浄後、10%グリセロール、1M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)により溶出し、ヒトIgG結合活性を含むタンパク質の濃縮画分を調製した。
(4)(3)で得られた濃縮画分を、20mM イミダゾール、500mM NaClを含む20mM リン酸緩衝液(pH7.4)に透析し、同緩衝液で平衡化したHisTrap HSカラム(商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に添加し、洗浄後、500mM イミダゾール、500mM NaClを含む20mM リン酸緩衝液(pH7.4)で溶出することで、ヒトFcγRI細胞外領域の抗体結合ドメインを含むポリペプチド(約30μg)または前記ペプチドを2つ連結したタンパク質(約50μg)精製標品を得た。なお、タンパク質濃度の定量は、ウシガンマグロブリンを標準タンパク質としてブラッドフォード法に基づくプロテインアッセイキット(Bio−Rad社製)を用いて行なった。
実施例4で調製したタンパク質を用いて、抗体結合活性を以下の方法でELISA法により評価した。
(1)96穴のELISAプレート(Nunc社製)に100μg/mLから段階的に希釈したガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)または10μg/mLのガンマグロブリン製剤を各ウェルに100μLずつ添加し、4℃で18時間静置することによりガンマグロブリンを固相に固定化した。
(2)TBS緩衝液(0.2%(w/v)Tween 20、150mM NaClを含むTris−HCl緩衝液(pH8.0))で洗浄後、Starting Block Blocking Buffers(PIERCE社製)によりブロッキング操作を行なった。
(3)TBS緩衝液で洗浄後、調製した培養上清の精製濃縮液を100μL添加し、(1)で固定化したヒトガンマグロブリンと反応させた(30℃、2時間)。
(4)(3)の反応終了後、TBS緩衝液で洗浄し、His−probe(H−15)HRP抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)を添加した。
(5)(4)の反応終了後、TBS緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を添加し450nmの吸光度を測定した。
Claims (7)
- 配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるヒトFcレセプターFcγRIのうち、細胞外領域の抗体結合ドメインの全体配列または概ね全体配列からなるポリペプチドのN末端側に、ヒトFcレセプターFcγRIのシグナルペプチドを付加した、タンパク質。
- 配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるヒトFcレセプターFcγRIのうち、細胞外領域の抗体結合ドメインの全体配列または概ね全体配列からなるポリペプチドを複数連結したポリペプチドのN末端側に、ヒトFcレセプターFcγRIのシグナルペプチドを付加した、タンパク質。
- 配列番号6または8に記載のアミノ酸配列からなる、タンパク質。
- 請求項1から3のいずれかに記載のタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
- 請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
- 請求項5に記載のベクターで宿主を形質転換して得られる、形質転換体。
- 請求項6に記載の形質転換体を用いた、タンパク質の製造方法。
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WO2000032767A1 (en) * | 1998-12-03 | 2000-06-08 | MAX-PLANCK-Gesellschaft zur Förderung der Wissenschaften e.V. | RECOMBINANT SOLUBLE Fc RECEPTORS |
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JP2009201403A (ja) * | 2008-02-27 | 2009-09-10 | Tosoh Corp | ヒト型Fcレセプターをコードするポリヌクレオチド、およびそれを利用したヒト型Fcレセプターの製造方法 |
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