JP2011114965A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータ制御の電流検出方法として、多点同期電流を検出して移動平均信号とする場合、過去のデータを用いていることにより、検出値は移動平均期間の(N−1)/2倍の遅れが発生する。
【解決手段】2軸の電圧指令空間ベクトルを用いた空間ベクトル変調方式において、三相電圧指令値に変換して検出電流遅れ補償部に出力する。検出電流遅れ補償部では位相を順次進ませたキャリア信号と比較して予測ゲート信号を求める。予測ゲート信号に制御周期、モータの誘起起電力、モータのインダクタンスを用いて制御周期のPWM電圧によって変化する各予測点の電流成分を算出し、この算出された電流成分と、A/D変換器からの現在出力より順次遅らせたモータ電流とで移動平均信号を求め、この信号を検出電流とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、モータ制御装置の電流制御方式に係り、特に電流リプルやノイズ及び遅れ時間の検出値への影響を低減する電流制御方式を備えたモータ制御装置に関するものである。
図7は、同期電流検出装置の基本的な構成図を示したものである。PWMインバータは、信号発生回路1からのPWMキャリア信号(三角波)と電圧指令とをコンパレータ2で比較することでPWM波形を生成し、これをゲート信号としてインバータ主回路3のスイッチング素子をオン・オフ制御することで正弦波を発生してモータに出力する。モータ電流は電流検出器5で検出し、検出信号はA/D変換器6において、信号発生器1からのA/Dトリガ信号によるタイミングでディジタル信号に変換された後、検出電流として制御回路に出力される。
この方式では、キャリア信号と同期したA/Dトリガ信号により、インバータの主回路3から流れる電流の大きさをA/D変換器6で取り込むことで、ほぼ瞬時値の取り込みが可能で時間遅れのない電流検出iとなっている。
図8は、多点同期電流検出方式を用いて電流を検出する場合の詳細図で、A/D変換器6の出力側にDフリップフロップからなるメモリ部M1〜M7を接続し、A/D変換器6とM1〜M7の各出力を加算部Adに入力し、平均化部Avにおいて移動平均して検出電流としている。このような移動平均を検出電流とする方法は、特許文献1によって知られている。
特開2003−219690
図9は、図8による多点同期電流検出の説明図で、PWMキャリア信号の一周期(以下キャリア周期という)中に8個のA/Dトリガ信号を出力する場合の例である。PWMキャリア信号に同期して一周期間に複数回、ここでは、メモリ部M7から出力された最古検出値i(n-7)〜最新検出値i(n)の8回の電流検出を行い、加算部Adで検出した過去8回の移動平均期間の検出値を加算した後、平均化部Avにおいて移動平均することでキャリア周期における電流値を得ている。このようにすることで、検出電流値に含まれるPWMパルス電圧による電流変化の影響やノイズを低減し、正確な電流検出が可能となる。
しかし、キャリア周期の移動平均をとっていることにより、PWMパルス電圧による電流リプル分などの影響を抑えることはできるが、過去のデータを用いているため、例えばN点検出を行って移動平均した場合、その検出値には「移動平均期間(キャリア周期)の(N−1)/2N倍」の遅れが発生する。電流が変化している場合、この遅れは現在値との誤差を生む。その結果、電流制御の応答性や安定性の低下を引き起こす原因となる。
図10は電流変化時の多点同期電流検出信号の誤差発生の状態を示したもので、指令値どおりの電圧ベクトルをPWMインバータが出力したときの電流であるところ、i0(n-7〜n)となって、遅れ時間によるxの誤差が発生する。
出願人は、多点同期電流検出による移動平均値の電流変化時の遅れによる誤差を抑制する電流検出方法を特願2008−140228として提案している。
この検出方法は、図11で示すように、キャリア比較PWM信号発生器1において基準キャリア信号と三相電圧指令と比較した後、予測電流演算部7で基準キャリア信号よりもそれぞれ順次位相を進ませた(キャリア周期内の検出回数/2)の予測点数分のPWMキャリア信号を発生させ、各PWMキャリア信号と電圧指令値とを比較して各予測点のA/D変換器のトリガ周期(以下、トリガ周期という)あたりの出力電圧平均値を求める。この出力電圧平均値にトリガ周期TAD、モータの誘起起電力e0、モータのインダクタンスLを用いてトリガ周期TAD間の出力電圧平均値によって変化する各予測点の電流成分を算出し、この算出された電流成分と、A/D変換器からの現在出力より順次遅らせたモータ電流とで移動平均信号を求めるものである。
この方法は、移動平均値による遅れ時間を(±トリガ周期TAD/2)の範囲内に縮小することができる。これによって、通常の移動平均と同じようにPWMパルス電圧による電流リプルの検出値への影響を低減でき、通常の移動平均で発生する電流変化時の遅れによる誤差を低減できる等の利点を有する。
ところで、この提案による電流検出遅れ補償方法は、ゲート信号作成部の電圧指令変調方式が電圧指令とキャリア信号とをコンパレータにより振幅比較すると同時に、図13で示すように、現在時刻より先に進んだトリガ周期TADの電流値を演算するために必要なゲート信号に基づいたPWMパルス電圧も三相電圧指令と基準キャリア信号より位相を進ませたキャリア信号(進み位相)を用いたキャリア比較変調方式が採用されている。したがって、電圧指令値をPWMパルス電圧に変調する方式として従来から知られている空間ベクトル変調方式には、電圧指令が2軸の複素空間における空間ベクトルとなることから、先の提案である特願2008−140228の手法はそのままでは適用できない。
本発明が目的とするところは、多点同期電流検出方式における電流検出遅れ等による補償法を空間ベクトル変調方式にも適用可能な電流検出方法を提供することにある。
本発明は、電流制御器で、入力された出力電流指令値と検出電流値の偏差分に応じた2軸の電圧指令空間ベクトルを算出し、求まった電圧指令空間ベクトルを空間ベクトル変調部に入力して三相のゲート信号を生成し、このゲート信号に基づきインバータ主回路のスイッチング素子のオン・オフによるPWMパルス電圧でモータを駆動し、検出されたモータ電流から生成される多点同期電流を移動平均し、この移動平均電流をモータの検出電流とするものにおいて、
前記電圧指令空間ベクトルを二相/三相変換器に入力して三相電圧指令値に変換して電流検出遅れ補償部に入力し、この電流検出遅れ補償部で、前記空間ベクトル変調部と同期したキャリア信号とし、基準となるキャリア信号よりそれぞれ順次位相を進ませた予測点数分のPWMキャリア信号を発生させ、各PWMキャリア信号と前記変換された三相電圧指令値とを比較し、得られた各予測PWMパルス電圧のトリガ周期あたりの出力電圧平均値を求め、この出力電圧平均値にトリガ周期、モータの誘起起電力、及びモータのインダクタンスを用いてトリガ周期の前記出力電圧平均値によって変化する各予測点の電流成分を算出し、算出された電流成分と前記A/D変換器の現在出力より順次遅らせたモータ電流の多点同期電流との和の平均値を移動平均電流とすると共に、
前記空間ベクトル変調部では、入力した電圧指令空間ベクトルと等価になる複数の基本ベクトルとそのデューティを演算し、ベクトルゲート変換手段でゲート信号を求め、このゲート信号をモータ駆動装置に入力してPWMパルス電圧をモータに出力することを特徴としたものである。
また、本発明は、電流制御器で、入力された出力電流指令値と検出電流値の偏差分に応じた2軸の電圧指令空間ベクトルを算出し、求まった電圧指令空間ベクトルを空間ベクトル変調部に入力して三相のゲート信号を生成し、このPWMパルス電圧に基づきインバータ主回路のスイッチング素子のオン・オフによるPWMパルス電圧でモータを駆動し、検出されたモータ電流から生成される多点同期電流を移動平均し、この移動平均電流をモータの検出電流とするものにおいて、
前記空間ベクトル変調部に、前記入力された電圧指令空間ベクトルと等価になる複数の基本ベクトルとそのデューティを演算選択し、この選択ベクトルと基準となるキャリア信号より順次位相を進ませた各キャリア信号とを使用して電流予測を行うための位相の進んだ予測PWMパルス電圧を生成し、選択ベクトルと基準となるキャリア信号とを使用してモータ駆動装置のゲート信号とすると共に、
前記予測PWMパルス電圧を電流検出遅れ補償部に入力して各予測PWMパルス電圧のトリガ周期あたりの出力電圧平均値を求め、この出力電圧平均値にトリガ周期、モータの誘起起電力、及びモータのインダクタンスを用いてトリガ周期の前記出力電圧平均値によって変化する各予測点の電流成分を算出し、算出された電流成分と前記A/D変換器の現在出力より順次遅らせたモータ電流の多点同期電流との和の平均値を移動平均電流とし、検出電流値として前記電流制御器に入力することを特徴としたものである。
以上のとおり、本発明によれば、移動平均による遅れ時間を縮小することができる。これによって、特許文献1の移動平均と同じようにPWMパルス電圧によるによる電流リプルの検出値への影響を低減させることができると共に、前記特許文献1で発生する電流変化時の遅れによる誤差を低減させることができる。また、電圧指令値を予測するようなモデル予測制御ではないため、演算手段に使用されるCPUの演算負荷が前記モデル予測制御に比べて軽くなるものである。また、本発明による電流検出遅れ補償法は、キャリア比較変調方式のみならず、空間ベクトル変調方式でも適用できるものである。
本発明の実施形態を示す制御ブロック構成図 空間ベクトル変調の説明図で、(a)は三相インバータの出力電圧空間ベクトル図、(b)は指令ベクトルの変調図、(c)はスイッチングパターン図、(d)はベクトルの並び変換図 空間ベクトル変調と予測PWMパルス電圧作成図の電圧指令ベクトルと基本ベクトル図、 空間ベクトル変調と予測PWMパルス電圧作成図の進み位相の予測PWMパルス電圧作成図 電圧指令空間ベクトル領域と選択ベクトルとその選択順図 本発明の他の実施例を示す制御ブロック図 スイッチングパターン作成図で、(a)は空間ベクトルとデューティ図、(b)はインバータ出力スイッチングパターンと電流予測用スイッチングパターン図、(c)位相進みスイッチングパターンの作成説明図 従来の同期電流検出の概略構成図 従来の多点同期電流検出装置の構成図 従来の多点同期電流検出信号の説明図 電流変化時の従来の多点同期電流検出信号の説明図 多点同期電流検出装置の構成図 予測PWM信号発生手段の構成図 多点同期電流の検出信号の説明図
図1は、本発明の第1の実施例を示す制御ブロック構成図で、図11と同一部分若しくは相当するする部位に同一符号を付している。10は電流制御器で、出力電流指令値と検出電流の偏差信号に基づいて電圧指令空間ベクトルV*を演算する。求められた電圧指令空間ベクトルV*は空間ベクトル変調部20と二相/三相変換部30に入力される。二相/三相変換部30に入力された電圧指令空間ベクトルV*は2軸の固定座標系であることから、この変換部30でU,V,Wの三相に変換して三相電圧指令値とし、キャリア比較PWM発生器1に入力される。
なお、電流制御器10から三相電圧指令値と、電圧指令空間ベクトルV*の両方を出力するよう構成してもよい。また、三相電圧指令値を電流制御器10から出力し、キャリア比較PWM発生器1にはそのまま三相電圧指令値を入力し、空間ベクトル変調部20には三相/二相変換処理を施した電圧指令値を入力するよう構成してもよい。
キャリア比較PWM発生器1は図12で示すようにキャリア発生手段10a〜10cを有し、キャリア信号aは比較器u1,v1,w1の一方の入力端子に、また、キャリア信号bは、キャリア信号aよりφ1(トリガ周期1サンプル)の進み位相となって比較器u2,v2,w2の一方の入力端子に、さらに、キャリア信号cは、キャリア信号aよりφ2(トリガ周期2サンプル)の進み位相となって比較器u3,v3,w3の一方の入力端子にそれぞれ入力される。各比較器の他方の入力端子には、二相/三相変換部30からの電圧指令が各相各別にそれぞれ入力され、比較器u1〜3,v1〜3,w1〜3において三相電圧指令値と進み位相のキャリア信号との大小比較を行って予測PWMパルス電圧が出力される。
キャリア信号は、空間ベクトル変調部20と同期したものであり、キャリア信号の位相は予測したい時刻分進ませる。したがって、進み位相φ1,φ2は、ここではトリガ周期1サンプルと2サンプルの時間に相当する進み位相としているが、進み位相φ1,φ2は現在時刻i(n)よりも予測したい任意の進み位相に設定される。
出力電流検出器5により検出されたモータ4の電流は、A/D変換器6においてディジタル信号に変換され、予測電流演算部7と検出された電流値の過去数点分を記憶する逐次記憶部8へ出力される。また、予測電流演算部7と逐次記憶部8の出力は加算されて移動平均処理部9に入力され、この移動平均処理部9で検出電流値が算出されて電流制御器10に入力される。点線で囲んだ部分が電流検出遅れ補償部である。
電流検出遅れ補償部では、図10で示す過去の電流i(n-7)〜i(n-5)の代わりに、予測点の予測電流i(n+1)〜i(n+3)を使用し、移動平均としてi0(n-4〜n+3)を算出する。予測点の電流演算方法としては、次のように演算する。
電動機制御において、電動機の巻線抵抗による電圧降下が小さいと仮定して無視した場合、(1)式のファラデーの電磁誘導の法則から、出力電流は(2)式で表せる。
Figure 2011114965
Figure 2011114965
電圧vを構成する要素のうち、ωφで表すことのできる誘起起電力e0は、トリガ周期TAD中(電流検出間隔で、図13のTADでありA/D変換トリガ信号である。)で一定とすると、電流変化は電圧vから誘起起電力e0を減算した電圧により発生する。したがって、次のトリガ周期TADまでに変化する電流は、
Figure 2011114965
Figure 2011114965
で表せる。したがって、現在時刻よりトリガ周期1サンプル先に進んだトリガ周期TADの電流(三相)はi+1をi(n)に加算して
Figure 2011114965
となる。また、現在時刻より2サンプル先に進んだトリガ周期TADの電流は、同様にしてi(n+1)の値に加算して
(t(n+2)−t(n+1)=t(n+1)−t(n)
Figure 2011114965
となる。
空間ベクトル変調方式では、電流予測に用いる電圧指令値は2軸の固定座標系上で表現された空間ベクトルが使用されるため、三相座標上の電圧指令値を必要とする方式にはそのまま適用することができない。そのために、変調を行う前の空間ベクトルによる電圧指令値を二相/三相変換器30によって三相電圧指令値に変換する。そして、キャリア比較PWM発生器1において、三相電圧指令値を予測したい時刻、すなわち、現在時刻より先に進んだトリガ周期TADだけ位相を進めたキャリア信号によって比較し、現在時刻より先に進んだトリガ周期TADのPWMパルス電圧を得る。このPWMパルス電圧を用いて予測電流演算部7は(5)式を演算して予測点の電流成分を算出する。算出された電流成分と逐次記憶部8により順次遅らせたモータ検出電流との和の平均値を移動平均処理部9で求めて電流検出値とする。
図2は空間ベクトル変調の概要を示したものである。図2(a)は三相インバータの基本ベクトルを示したもので、三相インバータの場合、インバータを構成するスイッチング素子オン・オフのとり得るパターンは8パターンとなるため、V1からV6まで6つの基本ベクトルとV0,V7の零ベクトルを持つ。なお、図中のベクトルの添え字(000),(001)…は、三相インバータU相,V相,W相上下アームのスイッチング状態を示している。1の場合はアームの上側がオン、下側がオフであることを示し、0の場合はアームの上側はオフで下側がオンであることを示している。すなわち、V1ベクトルの(100)はU相にアーム上側が接続され、V,W相にはアーム下側が接続されているスイッチング状態のベクトルであることを示している。
図2(b)は、電圧指令空間ベクトルV*から選択する基本ベクトルとそのベクトルを出力する時間比率(以下デューティという)を決める模式図である。
電圧指令空間ベクトルV*は必ず零ベクトル以外の2つの基本ベクトルに挟まれる角度に位置する。その2つの基本ベクトルをVα,Vβとする。VZ0,VZ1
2種類の零ベクトルを示している。
電圧指令空間ベクトルV*は、基本ベクトルVα,Vβの方向の成分に分解できる。この分解したベクトルの長さを基本ベクトルの長さで除算したものがデューディとなる。dαはVαのスイッチング状態を出力するデューティ、dβはVβのスイッチング状態を出力するデューティとなる。残りのdz(=1−dα−dβ)は零ベクトルを出力するデューディとなる。零ベクトル出力期間はVZ0,VZ1のうちのどちらか片方か、または両方を用いて出力すればよい。
一般的に、2つの基本ベクトルと、1つ若しくは2つの零ベクトルを用いて電圧指令空間ベクトルV*と等価の出力を決めるが、電圧指令空間ベクトルV*と等価になるようにデューティを設定することが可能であれば、それ以外の複数の基本ベクトルを用いてもよい。
図2(c)は選択した電圧ベクトルを出力するパターン例を示したものである。
この例では、出力する電圧ベクトルとして、電圧指令値に近い基本ベクトル2種類(Vα,Vβ)と零ベクトル2種類(VZ0,VZ1)を選択している。また、零ベクトル2種類のデューティVZ0,VZ1は、空間ベクトル変調において得られたデューティdz(=VZ0+VZ1)を分解している。そして、ベクトルの出力順序はVZ0→Vα→Vβ→VZ1としているが、実際にはどのような順序で出力しても、電流制御の周期あたりの平均出力電圧は指令値と等しくなるため問題はない。しかし、この実施例では、出力順序は問題ないが、ベクトルの選択に制限を加える必要がある。
図3は空間ベクトル変調部20における動作から空間ベクトル変調部の動作制限についての説明図である。図3(a)に示すような電圧指令空間ベクトルV*が、電流制御器10から出力されている場合、電圧指令空間ベクトルV*を二相/三相変換すると三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*は、Vu*>Vv*>Vw*となる。
図3(b)の(イ),(ウ)はその三相電圧指令と、多点電流検出の1サンプル時間、及び2サンプル時間分の位相を進めたキャリア信号との比較図である。これによって得られる予測PWMパルス電圧から図9のように電流予測を行う。三角波キャリアとの比較によって得られる予測PWMパルスを、対応する空間ベクトルに置き換えると、図3(a)の基本ベクトルのうち、図3(b)の(ア)で示すようにV0,V1,V2,V7の空間ベクトルが使われることになる。また、その順序は三角波キャリアの頂点を始点としてV0→V1→V2→V7→V2→V1→V0…と変化する。このPWMパルス電圧の出力パターンは、三相電圧指令の大小関係から決まるため、電圧指令の位相によって一意に決定される。空間ベクトルによって示すと、図4で示す領域1〜6のうち、電圧指令空間ベクトルV*がどの領域にあるかにより、同図で示す電圧指令領域毎に選択するベクトルと出力順序が決まる。
以上のように電流予測用のPWMパルス電圧は、電圧指令の位相によって一意に決まるため、実際のPWMパルス電圧を作成する空間ベクトル変調部20で出力される選択空間ベクトル、及びベクトルの出力順序もこれに合わせなければ、予測するPWMパルス電圧と実際のPWMパルス電圧との整合性がとれない。よって、空間ベクトル変調部20では、その空間ベクトルの選択及びデューティ演算部20aにおいて、図3(b)(ア)のように予測PWMパルス電圧の出力にあわせる形で空間ベクトルの選択と出力パターンの決定を行い、選択ベクトルのデューティを演算で求め、ベクトルゲート変換手段20bを介して三相インバータ回路3のスイッチング素子をオン・オフ制御する。
図2(d)はベクトルゲート変換手段21bの概略説明図である。選択ベクトル・デューティ演算部20aによって得られたベクトルとデューティ4種類dZ0,dZ1,dα,dβを用いて空間ベクトルの領域により一意に決まる並びとし、この並び順どおりにデューティd1〜d4を並べる。並べたデューティから3つの閾値v1,v2,v3を作り、キャリアと比較する。期間T1ではデューティdZ0のベクトルを出力し、T2の期間ではdα、T3の期間ではdβ、T4の期間ではdZ1をそれぞれ出力する。図2(d)で示す例では、閾値v1の大きさはデューティd1、v2の大きさはデューティd1+d2、v3の大きさはデューティd1+d2+d3としているが、v1の大きさをデューティd4にするなどその順序を入れ替えても構わない。ただし、上記の並び順(dZ0→dα→dβ→dZ1→キャリア頂上→dZ1→dβ→dα→dZ0)は、スイッチの切換が一番少ない順序となる。
以上のように、この実施例では、空間ベクトル変調方式に制限を加えることで、同方式を用いた電流制御システムでも、電流予測による多点電流検出方式における検出遅れの補償が可能となる。また、電流予測アルゴリズムは従来手法と同様である。また、電流予測できる形に電圧指令を変換する部分も一般的な二相/三相変換器で可能なため、従来と比較して演算負荷や回路規模は殆んど変わらずに電流予測が可能であり、且つ電流予測部の修正は不要である。
図5は第2の実施例を示したもので、図1と同一部分若しくは相する部分に同一符号を付している。この実施例は、空間ベクトル変調部20における変調結果である選択ベクトルとそのデューティ、及びベクトル配置順序から、ベクトルゲート信号変換部11と同様の手法を用いて予測PWMパルス電圧を作成し、電流を予測するものであり、ベクトル選択方法や選択順序が自由に設定できる。以下ベクトル情報から電流予測を行う手順を詳述する。
図6(a)は、図2(b)と同様な指令ベクトルの変調状態を示す空間ベクトルとデューティの関係図で、その時のインバータの選択ベクトル(スイッチング状態)の時系列は図6(b)の(ア)とする。電流検出はキャリア信号の1周期に8回行うとすると、図中tn−5からtn+5までの矢印で示すA/D変換トリガのタイミングで電流検出が行われることになる。現時刻をtnとし、現在時刻よりもトリガ周期1サンプル進んだ時刻をtn+1、2サンプル進んだ時刻をtn+2、3サンプル進んだ時刻をtn+3…とする。逆に現在時刻よりもトリガ周期1サンプル過去の時刻をtn−1、2サンプル過去の時刻をtn−2、3サンプル過去の時刻をtn−3…とする。
1サンプル進んだ時刻の電流値を予測するためには、選択ベクトル時系列におけるtn〜tn+1間の三相のPWMパルス電圧が分かればよい。すなわち、Ptn(n+1)で示した間隔(トリガ周期TAD)のスイッチングパターンが現在時刻よりも過去に出現した時系列をつくればよい。このような選択ベクトル時系列を得るには、元の時系列の位相を1サンプル分進ませればよい。図6(b)の(イ)はその状態のパターンで、tn−1〜tnまでの時間に予め現在より先に進んだトリガ周期の時刻となる期間Ptn(n+1),Ptn(n+1)と同じスイッチングパターンを得ることができる。同様に(ウ)(エ)で示すようにトリガ周期2サンプル、3サンプル進ませた時刻のスイッチングパターンを得ることができる。つまり、2サンプル進ませた(ウ)のスイッチングパターンの時系列からは、現在時刻(tn)よりtn+1〜tn+2,(エ)のスイッチング時系列からは、tn+2〜tn+3先に進んだトリガ周期の時刻におけるスイッチングパターンをtn−1〜tnまでの期間に予め得ることができる。
次に、電流検出遅れ補償部のベクトルゲート変換手段11が、デューディと位相を進ませたキャリアを用いて比較することで、電流予測用の時刻を進ませた時系列スイッチングパターンを得る手法について説明する。
図6(c)はその概略図で、同図(ア)はインバータの実際のゲート信号生成用のスイッチングパターン、(イ)は電流予測用のトリガ周期1サンプル進みのゲート信号生成用のスイッチングパターンである。(ア)で示すインバータ実際のゲート信号生成用スイッチングパターンは、図2(d)で述べたようにキャリアと比較する指令閾値は、選択するベクトルのデューティを任意に決めた出力パターンの順に下から並べたものを用いる。全てのデューティを加算した大きさは、三角波キャリアの大きさが、並べたデューティ領域に入っている間、そのデューティに対応したベクトルを選択することで、その時点での選択ベクトルを決定することができる。その後は、テーブルなどを用いて選択ベクトル情報から三相のゲート信号に変換することで得られる。
図6(c)の(イ)で示す1サンプル進みのゲート信号生成用スイッチングパターンは、実際のゲート信号生成のデューティと同じデューティを用い、同じようにデューティを並べて領域を設定する。キャリア信号も同じキャリア波形を用い、その位相をトリガ周期1サンプル分進める。このキャリア信号とデューティ領域から選択するベクトルを決定する。これによって、図6(c)の(イ)で示すように位相が1サンプル進んだ選択ベクトル時系列が得られる。現在時刻より1サンプル進んだトリガ周期の時刻となるtn〜tn+1に発生するスイッチングパターンを、過去の時間のtn−n〜tnで得ることが可能となる。選択ベクトルから三相のゲート信号への変換はテーブルなどを用いて行う。以下同様にしてキャリアの位相を2サンプル、3サンプリング進めることで図6(b)の(ウ)、(エ)のような選択ベクトルの時系列が得られるため、現在時刻より進んだ任意のトリガ周期間におけるゲート信号のスイッチングパターンを得ることができる。これらスイッチングパターンから、従来と同様の手法で電流予測を行うことができる。
したがって、この実施例では、空間ベクトル変調法におけるベクトル選択、パターンを自由に設定できる。そのため、従来のキャリア比較によるインバータ制御とは異なり、自由なスイッチングパターンによるインバータの制御での電流予測による遅れ補償が可能になる。
1… 第1のキャリア比較PWM発生器
2… 第2のキャリア比較PWM発生器
3… 三相インバータ
4… モータ
5… 電流検出器
6… A/D変換器
7… 予測電流演算部
8… 逐次記憶部
9… 移動平均処理部
10… 電流制御器
11… ベクトル/ゲート変換手段
20… 空間ベクトル変調部
20a… 選択ベクトル・デューティ演算手段
20b… ベクトル/ゲート変換手段
30… 二相/三相変換部

Claims (2)

  1. 電流制御器で、入力された出力電流指令値と検出電流値の偏差分に応じた2軸の電圧指令空間ベクトルを算出し、求まった電圧指令空間ベクトルを空間ベクトル変調部に入力して三相のゲート信号を生成し、このゲート信号に基づきインバータ主回路のスイッチング素子のオン・オフによるPWMパルス電圧でモータを駆動し、検出されたモータ電流から生成される多点同期電流を移動平均し、この移動平均電流をモータの検出電流とするものにおいて、
    前記電圧指令空間ベクトルを二相/三相変換器に入力して三相電圧指令値に変換して電流検出遅れ補償部に入力し、この電流検出遅れ補償部で、前記空間ベクトル変調部と同期したキャリア信号とし、基準となるキャリア信号よりそれぞれ順次位相を進ませた予測点数分のPWMキャリア信号を発生させ、各PWMキャリア信号と前記変換された三相電圧指令値とを比較し、得られた各予測PWMパルス電圧のトリガ周期あたりの出力電圧平均値を求め、この出力電圧平均値にトリガ周期、モータの誘起起電力、及びモータのインダクタンスを用いてトリガ周期の前記出力電圧平均値によって変化する各予測点の電流成分を算出し、算出された電流成分と前記A/D変換器の現在出力より順次遅らせたモータ電流の多点同期電流との和の平均値を移動平均電流とすると共に、
    前記空間ベクトル変調部では、入力した電圧指令空間ベクトルと等価になる複数の基本ベクトルとそのデューティを演算し、ベクトルゲート変換手段でゲート信号を求め、このゲート信号をモータ駆動装置に入力してPWMパルス電圧をモータに出力する手段を備えたことを特徴としたモータ制御装置。
  2. 電流制御器で、入力された出力電流指令値と検出電流値の偏差分に応じた2軸の電圧指令空間ベクトルを算出し、求まった電圧指令空間ベクトルを空間ベクトル変調部に入力して三相のゲート信号を生成し、このPWMパルス電圧に基づきインバータ主回路のスイッチング素子のオン・オフによるPWMパルス電圧でモータを駆動し、検出されたモータ電流から生成される多点同期電流を移動平均し、この移動平均電流をモータの検出電流とするものにおいて、
    前記空間ベクトル変調部に、前記入力された電圧指令空間ベクトルと等価になる複数の基本ベクトルとそのデューティを演算選択し、この選択ベクトルと基準となるキャリア信号より順次位相を進ませた各キャリア信号とを使用して電流予測を行うための位相の進んだ予測PWMパルス電圧を生成し、選択ベクトルと基準となるキャリア信号とを使用してモータ駆動装置のゲート信号とすると共に、
    前記予測PWMパルス電圧を電流検出遅れ補償部に入力して各予測PWMパルス電圧のトリガ周期あたりの出力電圧平均値を求め、この出力電圧平均値にトリガ周期、モータの誘起起電力、及びモータのインダクタンスを用いてトリガ周期の前記出力電圧平均値によって変化する各予測点の電流成分を算出し、算出された電流成分と前記A/D変換器の現在出力より順次遅らせたモータ電流の多点同期電流との和の平均値を移動平均電流とし、検出電流値として前記電流制御器に入力する手段を備えたことを特徴としたモータ制御装置。
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