JP2011112161A - 変速機の充填材取り付け構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速機ケース内への充填材の取り付け構造の簡素化を図る。
【解決手段】変速機ケース4の内部空間に収容されてオイル貯留空間を縮小化するための充填材7の車両前方側位置に水平方向に延びるボルト挿通孔を形成する。このボルト挿通孔にボルトBを挿通し、このボルトを回動中心とした可動が可能に充填材7を変速機ケース4の内面に取り付ける。変速機ケース4における車両後方側に充填材7の車両後方側の上面に当接可能なストッパ44を設ける。オイルに浸漬された充填材7に作用する浮力によって充填材7が上記ボルトを回動中心として回動する際、この充填材7の上面がストッパ44に当接することで位置規制される。これにより、ボルトによる取り付け箇所を1箇所のみとしながらも充填材7の取り付け位置が安定的に維持される。
【選択図】図2

Description

本発明は、変速機ケース内の潤滑油量を削減するために設けられる充填材の取り付け構造に係る。特に、本発明は、充填材の取り付け構造の簡素化を図るための対策に関する。
従来より、自動車に搭載される変速機(例えば手動変速機)では、静的油面(車両停車時に変速機ケース内の底部に回収されている潤滑油(以下、オイルと呼ぶ場合もある)の油面)を高く確保しながらも、オイル貯留量を削減して車両走行時の各種ギヤによるオイルの攪拌に伴う動力損失を低減することが望まれている。そのために変速機ケースの形状を改良することが考えられるが、変速機ケースの生産性、強度、NV(noise/vibration)性能等を考慮すると、変速機ケースの改良には制約があり、オイル貯留量の削減には限界がある。
そこで、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、変速機ケース内に充填材(軽量容積部材または収納部材と呼ばれることもある)を収容し、これによってオイル貯留量を削減することが提案されている。
このように充填材を変速機ケース内に収容することで、変速機ケース内におけるオイル貯留空間を縮小化でき、オイル貯留量の削減を図りながらも静的油面を高く確保することが可能になる。
つまり、静的油面を高く確保することで各ギヤに対する潤滑性能(例えば車両発進時の潤滑性能)を高く得ながらも、車両走行時には油面高さを低く抑え、各種ギヤによるオイルの攪拌に伴う動力損失が低減できて燃料消費率の改善を図ることができる。また、オイル貯留量を削減したことにより、変速機全体を軽量化でき、これも燃料消費率の改善に寄与することになる。尚、上記静的油面としての必要な高さ位置としては、例えば変速機構のアウトプットシャフト(出力軸)の軸心位置の高さが挙げられる。
上記充填材の取り付け構造として、特許文献1及び特許文献2には、変速機ケースの底部にバッフルプレートを配設し、充填材をバッフルプレートに固定することが開示されている。
特開2005−140297号公報 特開2005−140298号公報
ところが、上記各特許文献のものにあっては、バッフルプレートを配設するために変速機ケースの形状を改良せねばならず、また、充填材の取り付けが可能となるようにバッフルプレートを加工せねばならない。また、バッフルプレートに対する充填材の固定箇所が複数必要であった。このため、構成の複雑化を招くものとなっていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、変速機ケース内への充填材の取り付け構造の簡素化を図ることにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、変速機ケース内の所定位置で充填材を保持するために、潤滑油に充填材が浸漬した際に発生する浮力を有効利用するようにしている。つまり、充填材の一部を、上記浮力が作用した場合の充填材の移動を可能とするように支持しておく。そして、充填材の他の一部に対しては、上記浮力が作用して充填材が移動する際の移動を規制するように構成する。つまり、この浮力による移動を規制することで、この充填材の他の一部を位置規制でき、充填材全体を所定位置で保持できることになる。
−解決手段−
具体的に、本発明は、変速機ケース内に貯留される潤滑油よりも比重が小さい充填材を変速機ケース内に取り付けるための構造を前提とする。この充填材の取り付け構造に対し、充填材を、第1の位置規制手段及び第2の位置規制手段によって変速機ケース内に支持する。そして、上記第1の位置規制手段を、充填材に作用する浮力の作用方向に対して交差する方向への移動を規制するものとする。一方、上記第2の位置規制手段を、上記変速機ケースに設けられ、上記充填材に浮力が作用して、この充填材が上方へ移動する場合に充填材に当接することにより、この充填材の上方への移動位置を規制するものとする。
この特定事項により、変速機ケース内に取り付けられた充填材は、浮力の作用方向に対して交差する方向(例えば直交する方向)への移動が第1の位置規制手段によって規制され、浮力の作用による上方への移動が第2の位置規制手段によって規制される。つまり、第2の位置規制手段は、充填材の上方移動を規制する手段として構成されているため、ボルト等の締結具による取り付け構造は必要なくなる。このため、変速機ケースに対する充填材の取り付け構造の簡素化を図ることができ、また、変速機ケースに対する充填材の取り付け作業も簡略化することができる。
上記第1の位置規制手段及び第2の位置規制手段の具体構成としては以下のものが挙げられる。先ず、第1の位置規制手段としては、充填材に形成された挿通孔に挿通されて充填材を変速機ケースに締結する締結具を備えさせる。また、第2の位置規制手段を、上記変速機ケースに一体的に設けられ、上記浮力が作用することで上記締結具を回動中心として回動する充填材の上端面に当接して、その回動を規制するストッパとしている。
このように、第2の位置規制手段の構成としては、変速機ケースにストッパを一体的に設けるのみであり、構成の簡素化を図ることができる。また、第1の位置規制手段は、締結具であるため、充填材の取り付け状態を安定的に維持することができる。
上記第1の位置規制手段及び第2の位置規制手段の配設位置として具体的には以下のものが挙げられる。上記充填材を、変速機ケース内の潤滑油に浸漬するギヤの近傍に配設する。そして、上記ギヤにおける潤滑油に浸漬されている領域において、第2の位置規制手段を第1の位置規制手段よりも上記ギヤの回転方向の下流側に位置させている。
このように第1の位置規制手段及び第2の位置規制手段を配設した場合、ギヤの回転に伴って潤滑油が掻き上げられる際には、その潤滑油の流れは、第2の位置規制手段の配設位置から第1の位置規制手段の配設位置に向かうものとなる。つまり、充填材に作用している浮力の方向と同方向に潤滑油の流体力が作用することになる。このため、充填材と第2の位置規制手段との間の当接力を高く得ることができ、充填材の位置規制が確実に行われることになる。
また、上記充填材を中空部材で構成している。これによれば、比較的体積の大きい充填材を軽量なものとして実現でき、上記浮力を十分に得ることができる。このため、変速機ケース内の油面位置がある程度下降したとしても、充填材を第2の位置規制手段に当接させることが可能になる。
充填材の好ましい構成としては以下のものが挙げられる。先ず、充填材に、その内部空間と変速機ケースの内部空間とを連通させる連通手段を設けた構成である。
この構成によれば、潤滑油の熱を受けて、充填材内部の空気が膨張する状況では、この膨張した空気が連通手段によって変速機ケースの内部空間に放出されるため、この充填材の内圧上昇が抑制されることになる。つまり、充填材の内部空間と変速機ケースの内部空間とを均圧することができ、これら圧力に差が生じて充填材の変形や応力集中が生じるといったことを防止できる。
また、上記連通手段を、充填材の内部空間に開放する下部開口と、変速機ケースの内部空間に開放する上部開口とを有する管体で形成する。そして、上部開口を、変速機ケース内で回転するギヤによる潤滑油の流れ方向の下流側に向かうように形成している。
この構成によれば、変速機ケース内でのギヤの回転に伴って潤滑油が掻き上げられる場合に、潤滑油が管体の上部開口に直接的に飛散されることがない。このため、変速機ケースの内部空間に存在するオイルが充填材の内部空間に流れ込んでしまうことが効果的に抑制され、変速機ケースの内部空間でのオイル量が不足するといった状況を回避できる。
更には、上記下部開口を、充填材の内部空間の底部で開放させている。
この構成によれば、仮に、充填材の内部空間に潤滑油が流れ込んでしまった場合であっても、その充填材の内部空間での油面が管体の下部開口にまで達した状況になると、その後に充填材の内圧上昇に伴って充填材の内部の潤滑油は管体内を上昇することになる。このため、充填材の内部空間の潤滑油は、管体の上部開口から変速機ケースの内部空間に戻されることになる。これによっても、変速機ケースの内部空間でのオイル量が不足するといった状況を回避できる。
本発明では、充填材の一部を、上記浮力が作用した場合の充填材の移動を可能とするように支持しておく一方、充填材の他の一部に対しては、上記浮力が作用して充填材が移動する際の移動を規制するように構成している。このため、潤滑油に充填材が浸漬した際に発生する浮力を有効利用して、変速機ケースに対する充填材の取り付け構造の簡素化を図ることができる。
実施形態に係る手動変速機の概略構成を示すスケルトン図である。 変速機ケースの底部付近の内部構造を示す図である。 (a)は充填材の平面図であり、(b)は充填材の正面図である。 充填材の取り付け部分であって、図2におけるIV−IV線に沿った断面図である。 (a)はオイルセパレータの平面図であり、(b)はオイルセパレータの正面図である。 充填材取り付け構造の変形例における図4に相当する図である。 充填材の変形例における図2に相当する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、自動車用の手動変速機(マニュアルトランスミッション)に本発明を適用した場合について説明する。
−手動変速機の概略構成−
図1は、本実施形態に係る手動変速機1の概略構成を示すスケルトン図(後述する入力軸21、出力軸22及びディファレンシャルギア3の配設位置を二次元に展開した図)である。
この図1に示すように、手動変速機1は、複数のギヤ列で成る変速機構2とディファレンシャルギヤ3とを備え、これらが共通の変速機ケース4内に収容されてトランスアクスルを構成している。また、この変速機ケース4は、複数のケース部材がボルト止め等の手段によって一体的に締結された構成となっている。
上記変速機構2は、2軸噛合式の変速機構として構成されており、互いに平行な入力軸21及び出力軸22を備えている。これら入力軸21と出力軸22との間には変速比が互いに異なる複数の変速段を成立させるためのギヤ列23〜27が配設されている。また、これらギヤ列23〜27に対応してシンクロメッシュタイプの複数の噛合クラッチ23a〜27aが配設されている。また、これら噛合クラッチ23a〜27aに対応してクラッチハブスリーブ2A,2B,2Cがそれぞれ備えられている。このクラッチハブスリーブ2A,2B,2Cにはそれぞれフォークシャフト28(図1では1本のみを示している)が係合可能に設けられている。これにより、ドライバによるシフトレバーの操作に伴って何れかのフォークシャフト28を作動させることにより、クラッチハブスリーブ2A,2B,2Cのうち対応するクラッチハブスリーブ(例えばクラッチハブスリーブ2A)を移動させ、ギヤ列23〜27のうち対応するギヤ列(例えばギヤ列23)を動力伝達可能に係合することによって所望の変速段を成立させるようになっている。
また、上記入力軸21及び出力軸22にはリバースギヤ29が配設され、図示しないリバース用アイドルギヤと噛み合わされることにより後進変速段が成立可能となっている。
尚、上記入力軸21は、エンジンEの出力軸であるクランクシャフトCに対してクラッチ5及びスプライン嵌合部51を介して連結されている。つまり、クラッチ5の係合状態ではエンジンEの駆動力が入力軸21に伝達され、クラッチ5の解放状態ではエンジンEの駆動力が入力軸21に伝達されないようになっている。
尚、このクラッチ5の係合/解放動作は、ドライバによるクラッチペダルの踏み込み操作に連動して行われる。また、アクチュエータによりクラッチ5の係合/解放動作が行われるようにしてもよい。
また、上記出力軸22にはファイナルドライブギヤ22aが配設されている。このファイナルドライブギヤ22aは、上記ディファレンシャルギア3のリングギヤ31と噛み合っている。
上記ディファレンシャルギア3は、傘歯車式のものであって、上記リングギヤ31、一対のサイドギヤ32,32及びピニオンギヤ33,33を備えた構成となっている。また、上記サイドギヤ32,32及びピニオンギヤ33,33はディファレンシャルケース34内に収容されており、上記リングギヤ31はディファレンシャルケース34に回転一体に取り付けられている。このディファレンシャルギア3による差動動作については周知であるため、ここでの説明は省略する。
また、サイドギヤ32,32には、それぞれドライブシャフト61,61を介して前輪(駆動輪)62,62が連結され、ディファレンシャルギア3に伝達された駆動力が各前輪62,62の回転力として伝達されるようになっている。
上記変速機ケース4の内部には所定量の潤滑油(オイル)が貯留されており、このオイルによって、変速機構2を構成する各ギヤ列23〜27やディファレンシャルギア3が潤滑可能となっている。
特に、ディファレンシャルギア3は変速機ケース4の底部に位置しており、上記オイルに、このディファレンシャルギア3が浸漬している。このため、車両の走行時には、ディファレンシャルギア3を構成している上記リングギヤ31の回転によってオイルが掻き上げられ、このオイルが変速機構2を構成する各ギヤ列23〜27やディファレンシャルギア3を構成するサイドギヤ32,32及びピニオンギヤ33,33に跳ね掛けられることで潤滑されるようになっている。
−充填材及びその取り付け構造−
(充填材の機能)
図2は、上記変速機ケース4の底部付近(ディファレンシャルギア3の配設部分及びその周辺)の内部構造を示している。また、この図2は、図中左側が車両前方である。更に、この図2では、後述する充填材7の取り付け構造を理解し易くするために、ディファレンシャルギア3を構成している上記リングギヤ31、サイドギヤ32、ピニオンギヤ33については省略している。
また、図2中の仮想線Iは、車両停車時におけるオイルの油面(静的油面)を示している。例えば、車両が停車し、変速機構2やディファレンシャルギア3を潤滑していたオイルの大部分が変速機ケース4の底部に回収(落下回収)された状態での油面を示している。一方、図2中の仮想線IIは、車両走行時におけるオイルの油面(動的油面)を示している。例えば、車両が発進し、上記リングギヤ31の回転によるオイルの掻き上げによって変速機構2やディファレンシャルギア3の潤滑が十分に行われている状態での油面を示している(リングギヤ31の回転に伴い、回転下流側の油面は高くなっている)。
上記変速機ケース4内には、貯留されるオイルの量を削減するために充填材7が収容されている。この充填材7を収容する目的は、変速機ケース4内においてオイルが貯留される空間に充填材7を配置することで、上記変速機ケース4内でのオイル貯留空間を縮小化することである。これにより、オイル貯留量の削減を図りながらも静的油面を高く確保できるようにしている。
このように静的油面を高く確保することにより、各ギヤ(上記各ギヤ列23〜27やディファレンシャルギア3)に対する潤滑性能(例えば車両発進時の潤滑性能)を高く確保できる。また、オイル貯留量が削減されていることにより、車両発進後には急速に油面位置を降下させることができ、各種ギヤ(上記ディファレンシャルギア3のリングギヤ31等)によるオイルの攪拌に伴う動力損失の低減を図って燃料消費率の改善を図っている。また、オイル貯留量を削減したことにより、手動変速機1全体の軽量化を図ることもでき、これによっても燃料消費率の改善を図ることができる。
尚、上記静的油面としての必要な高さ位置は、本実施形態では、上記出力軸22の軸心位置(図2におけるX1)の高さに規定されている。この出力軸22の軸心位置は、図2からも判るように、上記ディファレンシャルギア3のリングギヤ31の軸心位置(図2におけるX2)よりも僅かに高い位置となっている。つまり、車両停車時における油面高さをこの位置(出力軸22の軸心位置X1)に規定しておけば、車両発進と同時にディファレンシャルギア3のリングギヤ31によるオイルの掻き上げ量が十分に確保され、このオイルが変速機構2を構成する各ギヤ列23〜27やディファレンシャルギア3に跳ね掛けられることで車両発進直後から十分な潤滑性能が得られることになる。
(充填材7の構成)
次に、上記充填材7の構成について説明する。図3(a)は充填材7の一部を破断した平面図であり、図3(b)は充填材7の一部を破断した正面図(上記変速機ケース4に取り付けられた場合にリングギヤ31の軸心に沿う方向から見た図)である。
図3に示すように、本実施形態に係る充填材7は、合成樹脂製の中空体により構成されている。これにより、充填材7は、その全体としての比重が上記オイルよりも小さくなり、オイル内に浸漬された際には、浮力が作用するようになっている。
尚、この充填材7の具体的な構成材料としては、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等の合成樹脂が挙げられる。また、繊維補強樹脂を適用することも可能である。この繊維補強樹脂としては、上記合成樹脂に、ガラス繊維、セラミック繊維等の繊維を添加したものが挙げられる。更には、アルミニウム、アルミニウム合金、発泡アルミニウム等の金属材料を適用することも可能である。
上記充填材7の構成として具体的には、内周壁71、外周壁72、一対の側壁73,74を主要部として構成されている。
上記内周壁71は、この充填材7が上記変速機ケース4に取り付けられた場合に、上記ディファレンシャルケース34の外周囲(ピニオンギヤ33の外周囲)を囲むように(図1を参照)、正面視円弧形状に形成されている(図3(b)を参照)。つまり、ディファレンシャルケース34やサイドギヤ32は、この内周壁71の内側で回転するようになっており、この回転及び上記リングギヤ31の回転により、変速機ケース4内では図2に矢印αで示すようなオイルの流れ(上記オイルの掻き上げによる流れ)が生じることになる。
上記外周壁72は、上記内周壁71との間に所定間隔を存した外周側に位置し、変速機ケース4の底面41(図2参照)に沿うような正面視円弧形状に形成されている。上記変速機ケース4の底面41も正面視略円弧形状に形成されており、図2に示す如く充填材7が変速機ケース4に取り付けられた状態では、この充填材7の外周壁72と変速機ケース4の底面41とは僅かな隙間を存して対向することになる。
上記各側壁73,74は、上記内周壁71と外周壁72との間を連結することで充填材7を中空体とするためのものである。つまり、図3(b)において紙面手前側に位置する側壁73は、内周壁71及び外周壁72において図3(b)の紙面手前側に位置する端縁同士を連結している。同様に、図3(b)において紙面奥側に位置する側壁74は、内周壁71及び外周壁72において図3(b)の紙面奥側に位置する端縁同士を連結している。
また、これら各側壁73,74同士の間の2箇所には筒状の連結部75,76が架け渡されている。
これら連結部75,76は、充填材7の内部空間を密閉空間としながらも、上記各側壁73,74に亘る円柱状の空間75a,76aを形成するためのものである。これら空間75a,76aが、後述するように、充填材7を変速機ケース4に取り付けるためのボルト挿通孔75a,76aとして利用される。
上記各ボルト挿通孔75a,76aの配設位置として具体的には、充填材7における車両前方側の位置及び車両後方側の位置にそれぞれ設定されている。つまり、充填材7における車両前後方向(充填材7が変速機ケース4に取り付けられた状態での車両前後方向)の中央位置に対して所定寸法を存した車両前方側の位置及び所定寸法を存した車両後方側の位置のそれぞれにボルト挿通孔75a,76aが設けられている。
実際には、これら一対のボルト挿通孔75a,76aのうち一方のみ(後述するように、本実施形態では車両前方側のボルト挿通孔75aのみ)が利用されて充填材7が変速機ケース4に取り付けられる。具体的な取り付け構造については後述する。
また、上記外周壁72における車両前方側の上端部は、上記出力軸22との干渉を回避するために、この出力軸22の外周面との間に所定間隔を存して後退した湾曲面77で形成されている。
一方、この充填材7における車両後方側の上端部は、上記内周壁71の上端縁と外周壁72の上端縁との間に亘る水平面(上面)78により構成されている。
尚、上記内周壁71及び外周壁72の各上端縁の位置としては、充填材7が変速機ケース4に取り付けられた状態で、車両前方側及び車両後方側ともに略同一の高さ位置に設定されるようになっている(図2を参照)。
(充填材7の取り付け構造)
次に、上述の如く構成された充填材7の取り付け構造を取り付け作業と共に説明する。図4は充填材7の取り付け部分における断面図である。具体的には、図2のIV−IV線に沿った断面図である。つまり、以下では、車両前方側に位置するボルト挿通孔75aを利用して充填材7を変速機ケース4に取り付ける場合について説明する。
図2及び図4に示すように、上記リングギヤ31の軸心位置(図2におけるX2)よりも僅かに車両前方寄りの位置には、変速機ケース4内面(縦壁面)の一部が内側(図2における手前側)に膨出されて成るケースボス42が設けられている。このケースボス42の端面42a(図4における左側の端面)は鉛直方向に延び且つ略円形の平坦面となっている。また、このケースボス42の端面42aの中心部にはボルト孔43が形成されている。また、このケースボス42の端面42aの外径寸法は、上記充填材7に設けられているボルト挿通孔75aの内径寸法よりも大きく設定されている。
そして、充填材7の内周壁71がディファレンシャルケース34の外周囲を囲むように充填材7を配設すると共に、この充填材7における車両前方側のボルト挿通孔75aの軸心位置と、上記ケースボス42の端面42aに形成されているボルト孔43の軸心位置とが位置合わせされた状態にする。これにより、充填材7の側壁74がケースボス42の端面42aに対向するように位置される。
また、上記充填材7のボルト挿通孔75aの内部に金属製で円筒形状のカラー79を挿入しておく。
そして、この状態で、上記カラー79の内部空間にボルト(締結具)Bが挿通されると共に、このボルトBがケースボス42のボルト孔43にねじ込まれることで充填材7が変速機ケース4に取り付けられる。
上記カラー79は、その内径寸法が上記ボルトBのネジ部B1の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。また、このカラー79の外径寸法は充填材7のボルト挿通孔75aの内径寸法よりも僅かに小さく設定されている。更に、このカラー79の軸心方向の長さ寸法は上記充填材7の幅寸法(各側壁73,74の外面同士の間の寸法)よりも僅かに大きく設定されている。
このような形状のカラー79がボルト挿通孔75aの内部に挿入されていることにより、充填材7は、ボルト挿通孔75aの内周面とカラー79の外周面との間に隙間が存在し、且つ一方の側壁73とボルトBの頭部B2との間及び他方の側壁74とケースボス42の端面42aとの間にそれぞれ隙間が存在した状態で変速機ケース4の内面に取り付けられることになる。このため、充填材7は、上記ボルトBの軸心を中心として回動自在に支持されることになり、また、ボルトBの頭部B2によって抜け止め(図4における左方向への抜け止め)がなされている。また、カラー79の軸心方向両側の端面は、それぞれボルトBの頭部B2及びケースボス42の端面42aに当接しており、ボルトBの軸力(締結力)は、上記カラー79を介してケースボス42に作用しているため、高い締結力が保持されている。以上が本発明でいう第1の位置規制手段の構成である。
このようにして充填材7が変速機ケース4に取り付けられていることにより、変速機ケース4内の底部にオイルが貯留されている状態では、充填材7に浮力が作用する。この浮力は、図2に示すように、上記ボルトBを中心として充填材7を上方へ回動させる力、つまり、図2における反時計回り方向に回動させる力として作用することになる。
一方、上記変速機ケース4の内面には、上記浮力が作用して回動しようとしている充填材7の回動位置を規制するためのストッパ(第2の位置規制手段)44が設けられている。このストッパ44は、充填材7における車両後方側の上端部、つまり上記水平面78が当接することによって充填材7の回動位置を規制するように、変速機ケース4の内面から水平方向に突出している。
尚、このストッパ44は、変速機ケース4の内面に一体形成(変速機ケース4の鋳造時に一体形成)されていてもよいし、この変速機ケース4の内面に形成された溝や孔に嵌め込まれることで、この変速機ケース4の内面に一体的に組み付けられていてもよい。
より具体的に、上記ストッパ44の配設位置としては、このストッパ44の下面44aの高さ位置が、上記出力軸22の軸心位置(図2におけるX1)の高さに略一致するように規定されている。これにより、充填材7がストッパ44に当接した状態では、この充填材7の水平面78の高さ位置は、上記出力軸22の軸心位置(X1)の高さに略一致することになる。上述したように、オイルの静的油面は、上記出力軸22の軸心位置(X1)の高さに規定されているので、車両停車時には、充填材7の水平面78がストッパ44に当接し、この充填材7の全体がオイルに浸漬されることになる。これにより、充填材7の全体が、オイル貯留量を削減するためにオイル貯留空間を縮小化させることに寄与する。
−オイルセパレータ−
上記充填材7の上方にはオイルセパレータ8が配設されている。図5(a)はオイルセパレータ8の一部を示す平面図であり、図5(b)はオイルセパレータ8の一部を示す正面図(上記変速機ケース4に取り付けられた場合にリングギヤ31の軸心に沿う方向から見た図)である。尚、このオイルセパレータ8は、例えば変速機ケース4の内面にボルト止め等の手段によって取り付けられている。
図5に示すように、オイルセパレータ8は、樹脂製または金属製の板材が屈曲成形されて成っている。また、このオイルセパレータ8は、変速機ケース4の内部空間を複数の空間に区画することにより、車両旋回時の油面の偏りを防止する機能を有すると共に、落下回収されるオイルが上記リングギヤ31の配設位置へ流れ込むことを抑制して、オイルの攪拌に伴う動力損失の低減を図る機能を有している。これら機能については周知であるため、ここでの説明は省略する。
また、本実施形態におけるオイルセパレータ8は、その上端部に、オイルガイドプレート81を有している。このオイルガイドプレート81は、図2及び図5(a)に示すように、リングギヤ31の軸心の延長方向に対して車両前方向へ所定の傾斜角度(図5(a)における角度θ)を存して延長されている。このため、回転するリングギヤ31によって掻き上げられたオイルの一部は、このオイルガイドプレート81に飛散し、図5(a)に破線の矢印で示すように、このオイルガイドプレート81の表面(傾斜面)に沿って図2における紙面奥側(図5(a)における上側)に流れ、オイルを広範囲に亘って供給して各部の潤滑が良好に行えるようになっている。
−実施形態の効果−
以上説明したように、本実施形態では、充填材7を、その車両前方側に位置するボルト挿通孔75aを利用して変速機ケース4に対して回動自在に(ボルト挿通孔75aに挿通されるボルトBを回動中心として回動自在に)取り付けている。また、充填材7の車両後方側にあっては、浮力を受けている充填材7に対し、上記変速機ケース4の内面に設けられたストッパ44が当接することによって、充填材7の回動位置を規制している。つまり、充填材7の車両後方側は、浮力を利用して位置規制がなされており、この充填材7の車両後方側には、ボルト止め等の固定手段は必要ない。
このため、変速機ケース4に対する充填材7の取り付け構造の簡素化を図ることができ、また、変速機ケース4に対する充填材7の取り付け作業も簡略化することができる。更には、ボルトB等の締結具の個数を削減できるためコストの低廉化を図ることもできる。
また、上述した如く、リングギヤ31の回転に伴ってオイルが掻き上げられる場合、そのオイルの流れは、図2に矢印αで示すように、充填材7の車両後方側を上方へ押し上げるように作用する。つまり、上記充填材7に作用している浮力の方向と同方向にオイルの流体力が作用することになる。このため、充填材7の水平面78は高い圧力でストッパ44に押し当てられることになり、この充填材7の車両後方側の位置規制が確実に行われる。
また、上記充填材7の形状としては、上記外周壁72が変速機ケース4の底面41に近接するようになっているので、車両走行時においてオイルの油面(動的油面)が低くなっても、充填材7にはある程度の浮力が作用することになる。このため、充填材7の水平面78がストッパ44に当接した状態(図2に示す状態)を維持することができ、充填材7の取り付け位置が安定的に維持されることになる。つまり、油面の下降に伴って充填材7が回動する(図2において時計回り方向に回動する)といったことが阻止される。その結果、上記充填材7の湾曲面77を出力軸22の外周面に近接させた場合であっても、充填材7の回動によって湾曲面77が出力軸22に干渉するといったことは防止される。
−充填材取り付け構造の変形例−
次に、充填材取り付け構造の変形例について説明する。手動変速機1の構成及び充填材7の形状は上述した実施形態のものと略同様であるので、ここでは、上記実施形態との相違点についてのみ説明する。
図6は本変形例における充填材7の取り付け部分を示す図であって、上記実施形態における図4で示した部分と同一箇所の断面図である。つまり、この変形例においても、車両前方側に位置するボルト挿通孔75aを利用して充填材7を変速機ケース4に取り付ける場合について説明する。
図6に示すように、変速機ケース4内面(縦壁面)の一部には、内側(図6における左側)に膨出されて成るケースボス45が設けられている。このケースボス45は、その外径寸法が上記充填材7に設けられているボルト挿通孔75aの内径寸法よりも小さく設定されている。また、このケースボス45の突出寸法(変速機ケース4内面から水平方向への突出寸法)は、上記充填材7の幅寸法(各側壁73,74の外面同士の間の寸法)よりも僅かに大きく設定されている。更に、このケースボス45の端面45a(図6における左側の端面)は鉛直方向に延び且つ略円形の平坦面となっている。また、このケースボス45の端面45aの中心部にはボルト孔46が形成されている。
そして、充填材7の内周壁71がディファレンシャルケース34の外周囲を囲むように充填材7を配設すると共に、この充填材7における車両前方側のボルト挿通孔75aの内部に上記ケースボス45を挿通させた状態で、ケースボス45の端面45aにワッシャ47を適用し、このワッシャ47を介してボルトBをケースボス45のボルト孔46にねじ込む。これにより、充填材7が変速機ケース4に取り付けられる。尚、上記ワッシャ47の外径寸法は、上記充填材7のボルト挿通孔75aの内径寸法よりも大きく設定されている。
このような取り付け構造では、充填材7のボルト挿通孔75aの内周面とケースボス45の外周面との間に隙間が存在し、且つ一方の側壁73とワッシャ47との間及び他方の側壁74と変速機ケース4との間にそれぞれ隙間が存在した状態で充填材7が変速機ケース4の内面に取り付けられることになる。このため、充填材7は、上記ボルトBの軸心を中心として回動自在に支持されることになり、また、上記ワッシャ47によって抜け止め(図6における左方向への抜け止め)がなされている。
このようにして充填材7が変速機ケース4に取り付けられていることにより、本変形例においても、変速機ケース4内の底部にオイルが貯留されている状態では、充填材7に浮力が作用する。この浮力は、上記ボルトBを中心として充填材7を上方へ回動させる力として作用することになる。また、上記実施形態の場合と同様に、充填材7の車両後方側にあっては、上記変速機ケース4の内面に設けられたストッパ44が充填材7の水平面78に当接することによって充填材7の回動位置を規制している。つまり、充填材7の車両後方側は、浮力を利用して位置規制がなされており、この充填材7の車両後方側には、ボルト止め等の固定手段は必要ない。
このため、変速機ケース4に対する充填材7の取り付け構造の簡素化を図ることができ、また、変速機ケース4に対する充填材7の取り付け作業も簡略化することができる。更には、ボルトB等の締結具の個数を削減できるためコストの低廉化を図ることもできる。
−充填材7の変形例−
次に、充填材7の変形例について説明する。手動変速機1の構成は上述した実施形態のものと同様であるので、ここでも、上記実施形態との相違点についてのみ説明する。
車両停車状態から車両走行状態に移行すると、変速機構2を構成する各ギヤの噛み合い動作に伴って熱が発生し、オイルの温度が上昇していく。例えば、オイルの温度としては135℃程度まで上昇することがある。
そして、充填材7が密閉された中空体である場合、上記オイルの熱を受けて、充填材7内部の空気が加熱され、空気の体積が膨張する。この場合、充填材7の内圧が上昇することで、充填材7の変形が懸念される状況となる。特に、各壁71,72,73,74同士の境界部分では応力が集中することが懸念される。
この点を考慮し、本変形例では以下の構成を採用している。
図7は本変形例における図2に相当する図である。この図7に示すように、本変形例に係る充填材7では、充填材7の内部空間と変速機ケース4の内部空間とを連通させるための連通パイプ(連通手段、管体)9が設けられている。
この連通パイプ9は、上記充填材7の水平面78を貫通して配設されており、その下部は、充填材7の内部空間を下方に向かって延び、この充填材7の底部近傍で開放されている。つまり、この連通パイプ9の下部開口91は、充填材7の内部空間において、その底部近傍で開放されている。
一方、連通パイプ9の上部は、上記充填材7の水平面78から上方に延びた後、上記リングギヤ31の軸心位置X2側に湾曲されて開放されている。つまり、この連通パイプ9の上部には、湾曲部92を経た後、側方または斜め下方に向かう上部開口93が設けられている。
このような連通パイプ9が設けられていることにより、充填材7の内部空間と変速機ケース4の内部空間とは連通されている。このため、充填材7の内部空間と変速機ケース4の内部空間とを均圧することができ、これら圧力に差が生じて充填材7の変形や応力集中が生じるといったことを防止できる。つまり、上記オイルの熱を受けて、充填材7内部の空気が膨張する状況では、この膨張した空気が連通パイプ9を経て変速機ケース4の内部空間に放出されるため、この充填材7の内圧上昇を抑制することができ、充填材7の変形等を回避できることになる。
また、このように充填材7の内部空間と変速機ケース4の内部空間とが連通パイプ9によって連通された構成の場合、変速機ケース4の内部空間に存在するオイルが充填材7の内部空間に流れ込んでしまうことが懸念される。
これを考慮し、上述した如く、連通パイプ9の上部には、上記充填材7の水平面78から上方に延びた後、上記リングギヤ31の軸心位置X2側に湾曲された湾曲部92を有している。これは、変速機ケース4の内部でリングギヤ31等の回転に伴ってオイルが掻き上げられる場合に、そのオイルの流れの下流側に連通パイプ9の上部開口93が向くようにするための構成である。つまり、図7に矢印αで示すように流れるオイル(リングギヤ31等の回転によって掻き上げられたオイル)が連通パイプ9の上部開口93に直接的に飛散されることがないような構成とされている。
これにより、変速機ケース4の内部空間に存在するオイルが充填材7の内部空間に流れ込んでしまうことが効果的に抑制され、変速機ケース4の内部空間でのオイル量が不足する(十分な潤滑性能を得るためのオイル量が得られない)といった状況を回避することができる。
また、上述した如く、上記連通パイプ9の下部は充填材7の底部近傍で開放されている。このため、仮に、充填材7の内部空間にオイルが流れ込んでしまった場合であっても、図7に示すように、その充填材7の内部空間での油面が連通パイプ9の下端位置にまで達して連通パイプ9がオイルに浸漬する状況になると、その後に充填材7の内圧上昇に伴って充填材7の内部のオイルは連通パイプ9内を下部開口91から上部開口93に向けて上昇することになる。このため、充填材7の内部空間のオイルは、連通パイプ9の上部開口93から変速機ケース4の内部空間に戻されることになる。
これによっても、変速機ケース4の内部空間でのオイル量が不足する(十分な潤滑性能を得るためのオイル量が得られない)といった状況を回避することができる。
具体的には、以下の式(1)の関係が成立した際に、充填材7の内部空間のオイルが連通パイプ9を経て変速機ケース4の内部空間に戻されることになる。
p1>p0+ρ・g・h …(1)
ここで、p1は充填材7の内部空間の圧力(Pa)、p0は変速機ケース4の内部空間の圧力(Pa)、ρはオイルの密度(kg/m3)、gは重力の加速度(m/s2)、hは圧力ヘッド(連通パイプ9の上部開口93の高さ位置と充填材7の内部の油面高さ位置との差:m)である。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態及び各変形例は、自動車用の手動変速機1に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、自動車用の自動変速機にも適用が可能である。また、自動車以外に適用される変速機に対しても本発明は適用可能である。
また、上記実施形態及び各変形例では、ボルトBによって充填材7の1箇所を変速機ケース4に取り付けるようにしていた。本発明はこれに限らず、その他の手段、例えばカシメやネジ止め等によって充填材7の1箇所を変速機ケース4に取り付ける構成としてもよい。
また、上記実施形態及び各変形例では、充填材7の車両前方側に位置するボルト挿通孔75aを利用して充填材7を変速機ケース4に取り付ける場合について説明した。本発明はこれに限らず、充填材7の車両後方側に位置するボルト挿通孔76aを利用して充填材7を変速機ケース4に取り付けるようにしてもよい。この場合、ストッパは、充填材7の湾曲面77が当接する位置に設けられることになる。尚、この場合、上述したリングギヤ31の回転に伴うオイルの流れにより上記浮力の方向と同方向にオイルの流体力が作用することにはならないため、上記実施形態及び各変形例の構成とすることが好ましい。尚、図2では図中の反時計回り方向にリングギヤ31が回転するものであったため、充填材7の車両前方側に位置するボルト挿通孔75aを利用して充填材7を変速機ケース4に取り付けるようにしていた。これに対し、図2における時計回り方向にリングギヤ31が回転するものである場合には、充填材7の車両後方側に位置するボルト挿通孔76aを利用して充填材7を変速機ケース4に取り付けることで、上記オイルの流体力を有効に利用することができる。
更に、上記実施形態及び各変形例に係る充填材7は、車両前方側及び車両後方側の両方にボルト挿通孔75a,76aを備えたものであった。これは充填材7の汎用性を拡大するための構成である。つまり、上述した如く、図2において図中の反時計回り方向にリングギヤ31が回転するものでは車両前方側のボルト挿通孔75aを利用し、逆に、図2において図中の時計回り方向にギヤ(オイルを掻き上げるギヤ)が回転するものでは車両後方側のボルト挿通孔76aを利用するための構成である。本発明はこれに限らず、車両前方側または車両後方側の一方のみにボルト挿通孔75a,76aを備えさせるようにしてもよい。
また、上述した充填材7の変形例では、連通パイプ9によって、充填材7の内部空間と変速機ケース4の内部空間とを連通させるようにしていた。本発明はこれに限らず、充填材7のうちオイルが飛散し難い領域に開口を形成することで、充填材7の内部空間と変速機ケース4の内部空間とを連通させるようにしてもよい。
また、上記実施形態及び各変形例では、1個の充填材7について説明したが、変速機ケース4の内部に複数の充填材7が収容される場合にも本発明は適用可能である。この場合、1個の充填材7のみに対して本発明を適用してもよいし、複数の充填材7に対して本発明を適用してもよい。
また、上記ストッパ44が当接する充填材7の位置としては、充填材7の上端面(上記水平面78)に限定されるものではなく、充填材7の高さ方向の途中部分にストッパが当接する構成としてもよい。
本発明は、手動変速機の変速機ケース内に貯留されるオイル量を削減するために設けられる充填材の取り付け構造に適用可能である。
1 手動変速機
2 変速機構
31 リングギヤ
4 変速機ケース
44 ストッパ(第2の位置規制手段)
7 充填材
75a ボルト挿通孔
78 水平面(上面)
9 連通パイプ(連通手段、管体)
91 下部開口
92 湾曲部
93 上部開口
B ボルト(第1の位置規制手段、締結具)

Claims (7)

  1. 変速機ケース内に貯留される潤滑油よりも比重が小さい充填材を変速機ケース内に取り付けるための構造において、
    上記充填材は、第1の位置規制手段及び第2の位置規制手段によって変速機ケース内に支持されており、
    上記第1の位置規制手段は、充填材に作用する浮力の作用方向に対して交差する方向への移動を規制し、
    上記第2の位置規制手段は、上記変速機ケースに設けられており、上記充填材に浮力が作用して、この充填材が上方へ移動する場合に充填材に当接することにより、この充填材の上方への移動位置を規制するよう構成されていることを特徴とする変速機の充填材取り付け構造。
  2. 請求項1記載の変速機の充填材取り付け構造において、
    上記第1の位置規制手段は、充填材に形成された挿通孔に挿通されて充填材を変速機ケースに締結する締結具を有しており、
    上記第2の位置規制手段は、上記変速機ケースに一体的に設けられ、上記浮力が作用することで上記締結具を回動中心として回動する充填材の上端面に当接して、その回動を規制するストッパであることを特徴とする変速機の充填材取り付け構造。
  3. 請求項1または2記載の変速機の充填材取り付け構造において、
    上記充填材は、変速機ケース内の潤滑油に浸漬するギヤの近傍に配設されており、
    上記ギヤにおける潤滑油に浸漬されている領域において、第2の位置規制手段は第1の位置規制手段よりも上記ギヤの回転方向の下流側に位置していることを特徴とする変速機の充填材取り付け構造。
  4. 請求項1、2または3記載の変速機の充填材取り付け構造において、
    上記充填材は中空部材で構成されていることを特徴とする変速機の充填材取り付け構造。
  5. 請求項4記載の変速機の充填材取り付け構造において、
    上記充填材には、その内部空間と変速機ケースの内部空間とを連通させる連通手段が設けられていることを特徴とする変速機の充填材取り付け構造。
  6. 請求項5記載の変速機の充填材取り付け構造において、
    上記連通手段は、充填材の内部空間に開放する下部開口と、変速機ケースの内部空間に開放する上部開口とを有する管体で形成されており、
    上記上部開口は、変速機ケース内で回転するギヤによる潤滑油の流れ方向の下流側に向かうように形成されていることを特徴とする変速機の充填材取り付け構造。
  7. 請求項6記載の変速機の充填材取り付け構造において、
    上記下部開口は、充填材の内部空間の底部で開放されていることを特徴とする変速機の充填材取り付け構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014040891A (ja) * 2012-08-23 2014-03-06 Fuji Heavy Ind Ltd スペーサ
JP2019113164A (ja) * 2017-12-26 2019-07-11 株式会社Subaru 動力伝達装置

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