JP2011111604A - インクジェット記録用水性インク、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録用水性インク、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】耐光性および耐オゾン性に優れ、且つ、発色性およびブロンジングにも優れるインクジェット記録用水性インクを提供する。
【解決手段】着色剤、水および水溶性有機溶剤を含むインクジェット記録用水性インクであって下記着色剤が下記の染料(1)および、スルホンアミドとスルホン酸塩を含む銅フタロシアニン系染料を含むことを特徴とする。染料(1):一般式(1)で表される染料
Figure 2011111604

【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水性インク、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置に関する。
従来から、インクジェット記録用シアンインクとして、C.I.アシッドブルー74およびC.I.アシッドブルー9等のシアン染料を含むインクが知られている。しかし、前記シアン染料は、耐光性が充分でない。このため、市販のインクジェット記録用シアンインクには、C.I.ダイレクトブルー86およびC.I.ダイレクトブルー199等の銅フタロシアニン系染料が広く用いられている。これらの一般的な銅フタロシアニン系染料は、マゼンタ染料やイエロー染料と比べても耐光性に優れるものの、オゾンとの接触により退色・変色し易く、記録物に色変化や光学濃度の低下を生じさせるという問題がある。このため、耐オゾン性を向上させた銅フタロシアニン系染料が提案されている(特許文献1)。
前記シアンインクには、耐光性、耐オゾン性に優れていることに加え、発色性、ブロンジングにも優れていることが求められる。しかしながら、従来のシアンインクには、前記すべての性能を満たすものがなかった。なお、前記ブロンジングとは、染料の会合または凝集により、光沢紙等の被記録媒体表面において、金属光沢のようなギラツキ(乱反射)が生じる現象である。
特開平3−103484号公報
そこで、本発明は、耐光性および耐オゾン性に優れ、且つ、発色性およびブロンジングにも優れるインクジェット記録用水性インクを提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録用水性インクは、着色剤、水および水溶性有機溶剤を含むインクジェット記録用水性インクであって、
前記着色剤が、下記の染料(1)および染料(2)を含むことを特徴とする。
染料(1):一般式(1)で表される染料
染料(2):一般式(2)で表される染料
Figure 2011111604
一般式(1)において、
環A、AおよびAは、それぞれ、ベンゼン環、2,3−ピリジン環および3,2−ピリジン環からなる群から選択される少なくとも一つであり、且つ、環A、AおよびAの少なくとも一つは、2,3−ピリジン環または3,2−ピリジン環であり、環A、AおよびAは同一でも異なっていてもよく、
lは、0≦l≦4を満たし、mは、0≦m≦4を満たし、nは、0≦n≦4を満たし、且つ、l、mおよびnは、0≦l+m+n≦4を満たし、
zは、1≦z≦3を満たす整数であり、
は、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基である。
Figure 2011111604
一般式(2)において、
Pc(Cu)は、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核であり、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムのいずれかであり、
xは、0<x<4を満たし、yは、0<y<4を満たし、且つ、xおよびyは、2≦x+y≦5を満たし、
SOM基およびSONH基は、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、CおよびDのいずれかに存在する。
Figure 2011111604
前記目的を達成するために、本発明者等は、一連の研究を重ねたところ、インクジェット記録用水性インクに前記染料(1)と前記染料(2)とを組み合わせて用いれば、発色性、ブロンジング、耐オゾン性および耐光性のすべての性能に優れることを見出し、本発明に至った。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の構成の一例を示す概略斜視図である。
本発明のインクジェット記録用水性インク(以下、単に「水性インク」または「インク」と言うことがある)について説明する。本発明の水性インクは、着色剤、水および水溶性有機溶剤を含む。前述のとおり、前記着色剤は、前記染料(1)および前記染料(2)を含む。
前述のとおり、前記染料(1)は、一般式(1)で表される染料である。
前述のとおり、一般式(1)において、
環A、AおよびAは、それぞれ、ベンゼン環、2,3−ピリジン環および3,2−ピリジン環からなる群から選択される少なくとも一つであり、且つ、環A、AおよびAの少なくとも一つは、2,3−ピリジン環または3,2−ピリジン環であり、環A、AおよびAは同一でも異なっていてもよく、
lは、0≦l≦4を満たし、mは、0≦m≦4を満たし、nは、0≦n≦4を満たし、且つ、l、mおよびnは、0≦l+m+n≦4を満たし、
zは、1≦z≦3を満たす整数であり、
は、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基である。
一般式(1)で表される化合物は、環A、AおよびAがすべて2,3−ピリジン環または3,2−ピリジン環である化合物であってもよいし、環A、AおよびAのうち二つが2,3−ピリジン環または3,2−ピリジン環であり、残り一つがベンゼン環である化合物であってもよいし、環A、AおよびAのうち一つが2,3−ピリジン環または3,2−ピリジン環であり、残り二つがベンゼン環である化合物であってもよい。
前記染料(1)は、単一の前記化合物で構成されていてもよいし、2種以上の前記化合物を含む混合物であってもよい。
前記染料(1)の好ましい具体例としては、化学式(1−A)〜(1−F)で表される化合物があげられる。
Figure 2011111604
化学式(1−A)において、
環A、AおよびAは、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環および/または3,2−ピリジン環であり、
lは、1.0であり、mは、1.8であり、nは、1.2であり、l、mおよびnは、混合物における平均値である。
Figure 2011111604
化学式(1−B)において、
環AおよびAは、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環および/または3,2−ピリジン環であり、環Aは、ベンゼン環であり、
lは、2.4であり、mは、0.6であり、nは、1.0であり、l、mおよびnは、混合物における平均値である。
Figure 2011111604
化学式(1−C)において、
環A、AおよびAは、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環および/または3,2−ピリジン環であり、
lは、3.0であり、mは、0.2であり、nは、0.8であり、l、mおよびnは、混合物における平均値である。
Figure 2011111604
化学式(1−D)において、
環Aは、ベンゼン環であり、環AおよびAは、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環および/または3,2−ピリジン環であり、
lは、1.8であり、mは、0.9であり、nは、1.3であり、l、mおよびnは、混合物における平均値である。
Figure 2011111604
化学式(1−E)において、
環A、AおよびAは、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環および/または3,2−ピリジン環であり、
lは、1.1であり、mは、1.3であり、nは、1.6であり、l、mおよびnは、混合物における平均値である。
Figure 2011111604
化学式(1−F)において、
環AおよびAは、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環および/または3,2−ピリジン環であり、環Aは、ベンゼン環であり、
lは、0であり、mは、1.8であり、nは、2.2であり、l、mおよびnは、混合物における平均値である。
前記染料(1)は、従来公知の方法で製造できる。前記染料(1)の製造方法は、例えば、つぎのとおりである。
すなわち、まず、構造式(11)で表される銅ポルフィラジン化合物を合成する。構造式(11)で表される銅ポルフィラジン化合物は、例えば、触媒および銅化合物の存在下、含窒素複素芳香環(2,3−ピリジン環および3,2−ピリジン環の少なくとも一方)ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体とを反応させることにより得られる。前記含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体と前記フタル酸誘導体の反応のモル比を変えることにより、A、AおよびAの前記含窒素複素芳香環の数とベンゼン環の数を調整することが可能である。前記含窒素複素芳香環ジカルボン酸としては、隣接する2つの位置にそれぞれカルボキシル基、またはそれから誘導される反応性の基(例えば、酸アミド基、イミド基、酸無水物基、カルボニトリル基等)を有する6員環含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体等があげられる。銅ポルフィラジン化合物の合成方法としては、例えば、ニトリル法、ワイラー法等の従来公知の方法があげられる。
Figure 2011111604
つぎに、構造式(11)で表される銅ポルフィラジン化合物を、クロロスルホン酸中でクロロスルホン化するか、硫酸または発煙硫酸中でスルホン化した後、クロロ化剤でスルホ基をクロロスルホ基に変換すること等によって、構造式(12)で表される銅クロロスルホニルポルフィラジン化合物を得る。
Figure 2011111604
つぎに、得られた銅クロロスルホニルポルフィラジン化合物と、構造式(13)で表される有機アミンおよびアミノ化剤(アンモニアまたはアンモニア発生化合物)とを、水溶媒中で、おおよそpH8〜10、5℃〜70℃、1時間〜20時間反応させることにより、前記染料(1)を得ることができる。前記アミノ化剤としては、アンモニアまたは前記反応に際してアンモニアを発生する化合物(アンモニア発生化合物)を使用でき、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、尿素、アンモニア水、アンモニアガス等があげられる。構造式(13)で表される有機アミンにおいて、XおよびYは、それぞれ、水素原子またはナトリウムである。前記XおよびYは、前記水溶媒中で電離して、イオン(HまたはNa)となっていてもよい。前記有機アミンは、従来公知の方法で製造できる。
Figure 2011111604
このようにして得られた前記染料(1)は、酸析または塩析後、ろ過等により分離できる。塩析は、例えば、酸性〜アルカリ性、好ましくは、pH1〜11で行うことが好ましい。塩析の際の温度は、特に限定されないが、例えば、40℃〜80℃、好ましくは、50℃〜70℃である。
前述の方法で合成される前記染料(1)は、遊離酸またはその塩の形で得られる。遊離酸とするには、例えば、酸析すればよい。塩とするには、例えば、塩析するか、遊離酸としたものに所望の有機または無機の塩基を添加する通常の塩交換法を用いればよい。
前記染料(1)の配合量は、特に制限されない。水性インクに前記染料(1)を含ませることで、耐オゾン性および耐光性を向上させることができる。前記染料(1)の配合量は、前記水性インク全量に対し、例えば、0.1重量%〜10重量%であり、好ましくは、1.4重量%〜5.7重量%であり、より好ましくは、1.6重量%〜4.8重量%である。
前述のとおり、前記染料(2)は、一般式(2)で表される染料である。
前述のとおり、一般式(2)において、
Pc(Cu)は、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核であり、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムのいずれかであり、
xは、0<x<4を満たし、yは、0<y<4を満たし、且つ、xおよびyは、2≦x+y≦5を満たし、
SOM基およびSONH基は、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、CおよびDのいずれかに存在する。
前記Mは、水性インク中で電離して、イオン(Li、Na、KおよびNH のいずれか)となっていてもよい。
本発明のインクジェット記録用水性インクでは、前記一般式(2)において、xおよびyは、x+y=4を満たしてもよい。
前記染料(2)の好ましい具体例としては、化学式(2−A)〜(2−D)で表される化合物があげられる。
Figure 2011111604
化学式(2−A)で表される化合物は、一般式(2)において、Mがナトリウムであり、xが1、yが3であり、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、CおよびDのそれぞれに一つの置換基が存在する態様である。
Figure 2011111604
化学式(2−B)で表される化合物は、一般式(2)において、Mがナトリウムであり、xが2、yが2であり、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、CおよびDのそれぞれに一つの置換基が存在する態様である。
Figure 2011111604
化学式(2−C)で表される化合物は、一般式(2)において、Mがナトリウムであり、xが3、yが1であり、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、CおよびDのそれぞれに一つの置換基が存在する態様である。
Figure 2011111604
化学式(2−D)で表される化合物は、一般式(2)において、Mがアンモニウムであり、xが1、yが3であり、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、CおよびDのそれぞれに一つの置換基が存在する態様である。
前記染料(2)は、例えば、下記工程(A)〜(C)に示す従来公知の銅フタロシアニン置換方法等により製造できる。
工程(A)
まず、クロロスルホン化剤を用いて銅フタロシアニン化合物をクロロスルホン化する。前記クロロスルホン化剤としては、例えば、クロロスルホン酸とクロロ化剤(オキシ塩化リンまたは三塩化リン)との混合物等があげられる。クロロスルホン酸と銅フタロシアニン化合物とのモル比(クロロスルホン酸:銅フタロシアニン化合物)は、5:1〜200:1が好ましく、クロロ化剤と銅フタロシアニン化合物のモル比(クロロ化剤:銅フタロシアニン化合物)は、0.5:1〜10:1が好ましい。
このクロロスルホン化反応は、例えば、温度90℃〜180℃で、0.5時間〜16時間行われる。一般に、クロロスルホン化の反応時間は、反応温度に依存しており、反応温度が高ければ短くなり、温度が低ければ長くなる傾向にある。前記クロロスルホン化反応は、温度135℃〜145℃で、1.5時間〜5.0時間行われることがより好ましい。
前記クロロスルホン化剤は、硫酸を含んでもよい。前記クロロスルホン化剤が硫酸を含む場合には、硫酸と銅フタロシアニン化合物とのモル比(硫酸:銅フタロシアニン化合物)は、0.3:1〜2:1が好ましい。
工程(B)
つぎに、工程(A)で得られた生成物をアンモニアと縮合反応させて構造式(21)で表される化合物を得る。
Figure 2011111604
この工程は、例えば、3重量%〜35重量%の水酸化アンモニウムを用いて、0℃〜50℃の反応温度で行われる。一般に、この反応時間は、反応温度に依存しており、反応温度が高ければ短くなり、温度が低ければ長くなる傾向にある。前記縮合反応は、温度0℃〜45℃で、0.5時間〜24時間行われることが好ましい。
工程(C)
つぎに、必要に応じて、工程(B)で得られた構造式(21)で表される化合物中のNH を1価の金属カチオンで交換する。この金属カチオン交換反応は、工程(B)の生成物を酸性にし(例えば、塩酸を用いてNH をHに交換し)、ついで透析によって元のカチオンを除去し、つぎに1価の金属カチオンを添加する(例えば、アルカリ金属水酸化物の添加による)等の方法により行うことができる。このようにして、前記染料(2)を製造できる。
前記染料(2)の配合量は、特に制限されない。水性インクに前記染料(2)を含ませることで、発色性の向上およびブロンジングの低減をさせることができる。前記染料(2)の配合量は、前記水性インク全量に対し、例えば、0.05重量%〜5重量%であり、好ましくは、0.1重量%〜1.8重量%であり、より好ましくは、0.25重量%〜1.5重量%である。
前記水性インクにおける前記染料(1)と前記染料(2)との重量比は、染料(1):染料(2)=70:30〜95:5であることが好ましい。前記重量比を前記範囲とすることで、発色性および耐光性に加え、ブロンジングと耐オゾン性とが共に極めて良好な水性インクを得ることができる。
前記染料(1)と前記染料(2)との合計配合量は、特に制限されないが、前記水性インク全量に対し、2重量%〜6重量%であることが好ましい。前記合計配合量を前記範囲とすることで、発色性、ブロンジング、耐オゾン性、耐光性および噴射安定性の全てが、極めて良好な水性インクを得ることができる。
前記着色剤は、前記染料(1)および前記染料(2)に加え、さらに他の染料および顔料等を含んでもよい。
前記水は、イオン交換水または純水であることが好ましい。前記水性インク全量に対する前記水の配合量(水割合)は、例えば、10重量%〜90重量%であり、好ましくは、40重量%〜80重量%である。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、インクジェットヘッドのノズル先端部における水性インクの乾燥を防止する湿潤剤および被記録媒体上での乾燥速度を調整する浸透剤があげられる。
前記湿潤剤は、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
前記水性インク全量に対する前記湿潤剤の配合量(湿潤剤割合)は、例えば、0重量%〜95重量%であり、好ましくは、5重量%〜80重量%であり、さらに好ましくは、5重量%〜50重量%である。
前記浸透剤は、例えば、グリコールエーテルがあげられる。前記グリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテルおよびトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル等があげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記水性インク全量に対する前記浸透剤の配合量(浸透剤割合)は、例えば、0重量%〜20重量%である。前記浸透剤割合を前記範囲とすることで、前記水性インクの被記録媒体への浸透性を、より好適なものとできる。前記浸透剤割合は、好ましくは、0.1重量%〜15重量%であり、より好ましくは、0.5重量%〜10重量%である。
前記水性インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。前記粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
前記水性インクは、例えば、着色剤、水および水溶性有機溶剤と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
本発明の水性インクは、例えば、水性シアンインクとして用いることができる。ただし、本発明は、これに限定されない。本発明の水性インクは、前記染料(1)および前記染料(2)以外の着色剤を用いることにより、シアン以外の色の水性インクとすることもできる。
つぎに、本発明のインクカートリッジについて説明する。本発明のインクカートリッジは、インクジェット記録用水性インクを含むインクカートリッジであって、前記水性インクが、本発明のインクジェット記録用水性インクであることを特徴とする。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
つぎに、本発明のインクジェット記録装置について説明する。本発明のインクジェット記録装置は、インク収容部およびインク吐出手段を含み、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出手段によって吐出するインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に、本発明のインクカートリッジが収容されていることを特徴とする。これを除き、本発明のインクジェット記録装置の構成は、例えば、従来公知のインクジェット記録装置と同様であってもよい。
図1に、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインクカートリッジ2と、インク吐出手段(インクジェットヘッド)3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8とを主要な構成部材として含む。
前記4つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む。例えば、前記水性シアンインクを含むインクカートリッジが、本発明のインクカートリッジである。前記インクジェットヘッド3は、記録紙等の被記録媒体Pに記録を行う。前記ヘッドユニット4は、前記インクジェットヘッド3を備えている。前記キャリッジ5には、前記4つのインクカートリッジ2および前記ヘッドユニット4が搭載される。前記駆動ユニット6は、前記キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。前記駆動ユニット6としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008−246821号公報参照)。前記プラテンローラ7は、前記キャリッジ5の往復方向に延び、前記インクジェットヘッド3と対向して配置されている。前記記録は、印字、印画、印刷等を含む。
前記被記録媒体Pは、このインクジェット記録装置1の側方又は下方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙される。前記被記録媒体Pは、前記インクジェットヘッド3と、前記プラテンローラ7との間に導入される。すると、前記被記録媒体Pに、前記インクジェットヘッド3から吐出されるインクにより所定の記録がなされる。前記被記録媒体Pは、その後、前記インクジェット記録装置1から排紙される。図1においては、前記被記録媒体Pの給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
前記パージ装置8は、前記インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。前記パージ装置8としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008−246821号公報参照)。
前記パージ装置8の前記プラテンローラ7側の位置には、前記パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。前記ワイパ部材20は、へら状に形成されており、前記キャリッジ5の移動に伴って、前記インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ18は、インクの乾燥を防止するため、記録が終了すると前記リセット位置に戻される前記インクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
前記インクジェット記録装置において、前記4つのインクカートリッジは、複数のキャリッジに搭載されていてもよい。また、前記インクカートリッジは、前記キャリッジには搭載されず、インクジェット記録装置内に配置、固定されていてもよい。この態様においては、例えば、前記インクカートリッジと、前記キャリッジに搭載された前記ヘッドユニットとが、チューブ等により連結され、前記インクカートリッジから前記ヘッドユニットに前記インクが供給される。
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実
施例および比較例により限定および制限されない。
[実施例1〜14および比較例1〜6]
インク組成成分(表1)を、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製の親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)タイプメンブレンフィルタ(孔径0.20μm)を用いてろ過することで、実施例1〜14および比較例1〜6のインクジェット記録用水性インクを得た。なお、表1において、染料(1−A)〜(1−F)は、それぞれ、化学式(1−A)〜(1−F)で表される化合物であり、染料(2−A)〜(2−C)は、それぞれ、化学式(2−A)〜(2−C)で表される化合物である。
実施例および比較例の水性インクについて、(a)発色性評価、(b)ブロンジング評価、(c)耐オゾン性評価、(d)耐光性評価、(e)噴射安定性評価および(f)総合評価を、下記の方法により行った。なお、(a)発色性評価、(b)ブロンジング評価、(c)耐オゾン性評価および(d)耐光性評価に用いるサンプルは、つぎのようにして準備した。
まず、実施例および比較例の水性インクを、インクカートリッジに充填した。ついで、前記インクカートリッジを、ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cに装着した。つぎに、ブラザー工業(株)製の写真光沢紙BP71GAに前記水性インクのグラデーションサンプルをプリントした。
(a)発色性評価
前記グラデーションサンプルを、目視にて観察し、シアン色が充分に表現されているか否かを、下記の評価基準に従って評価した。
発色性評価 評価基準
A:シアン色を充分に表現できている。
C:シアン色を表現できていない。
(b)ブロンジング評価
前記グラデーションサンプルを、目視にて観察し、ブロンジングが発生しているか否かを、下記の評価基準に従って評価した。
ブロンジング評価 評価基準
A:全くブロンジングが見られない。
B:僅かにブロンジングが見られるが実用上問題ないレベルである。
C:著しいブロンジングが見られる。
(c)耐オゾン性評価
前記グラデーションサンプルのうち、初期OD値が1.0のパッチを評価パッチとして用いた。前記OD値は、Gretag Macbeth社製の分光測色計Spectrolino(光源:D65;視野:2°;status A)により測定した。スガ試験機(株)製のオゾンウェザーメーターOMS−Hを用いて、オゾン濃度1ppm、槽内温度24℃、槽内相対湿度60%の条件下、前記パッチを40時間放置した。ついで、前記放置後の前記パッチのOD値を、前述と同様にして、測定した。つぎに、下記式(I)によりOD値減少率(%)を求め、耐オゾン性を、下記の評価基準に従って評価した。なお、前記OD値減少率が小さいほど、画質の劣化が少なく、耐オゾン性に優れていたこととなる。

OD値減少率(%)={(X−Y)/X}×100 ・・・(I)
X:1.0(初期OD値)
Y:放置後のOD値
耐オゾン性評価 評価基準
A:OD値減少率が、20%未満
B:OD値減少率が、20%以上30%未満
C:OD値減少率が、30%以上40%未満
D:OD値減少率が、40%以上
(d)耐光性評価
前記グラデーションサンプルのうち、初期OD値が1.0のパッチを評価パッチとして用いた。前記OD値は、Gretag Macbeth社製の分光測色計Spectrolino(光源:D65;視野:2°;status A)により測定した。スガ試験機(株)製のスーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いて、槽内温度23℃、槽内相対湿度50%、照度81klxの条件下、前記パッチにキセノンランプ光を100時間照射した。ついで、前記照射後の前記パッチのOD値を、前述と同様にして、測定した。つぎに、下記式(II)によりOD値減少率(%)を求め、耐光性を、下記の評価基準に従って評価した。なお、前記OD値減少率が小さいほど、画質の劣化が少なく、耐光性に優れていたこととなる。

OD値減少率(%)={(X−Y)/X}×100 ・・・(II)
X:1.0(初期OD値)
Y:照射後のOD値
耐光性評価 評価基準
A:OD値減少率が、20%未満
B:OD値減少率が、20%以上30%未満
C:OD値減少率が、30%以上40%未満
D:OD値減少率が、40%以上
(e)噴射安定性評価
ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cを使用し、富士通コワーコ(株)製のオフィス用紙W(記録用紙)上に、1億ドット(約3万枚)の連続記録を行った。前記連続記録の結果を、下記の評価基準に従って評価した。不吐出とは、インクジェットヘッドのノズルが目詰まりし、前記水性インクが吐出されない状態である。吐出曲がりとは、インクジェットヘッドのノズルの一部が目詰まりし、前記水性インクが、前記記録用紙に対して垂直に吐出されず、斜めに吐出される状態である。
噴射安定性評価 評価基準
A:連続記録中において、不吐出および吐出曲がりが全くなかった。
B:連続記録中において、不吐出若しくは吐出曲がりが僅かにあったが、前記不吐出若しくは吐出曲がりが、共に5回以内のパージによって回復した。
C:連続記録中において、不吐出および吐出曲がりが多数有り、前記不吐出および吐出曲がりが、共に5回のパージでは回復しなかった。
(f)総合評価
各水性インクについて、前記(a)〜(e)の結果から、下記の評価基準に従って総合評価を行った。
総合評価 評価基準
G :すべての評価結果がAまたはBであった。
NG:評価結果のいずれかにCまたはDがあった。
実施例および比較例の水性インクの組成および評価結果を、表1に示す。
Figure 2011111604
表1に示すとおり、染料(1)および染料(2)を組み合わせて用いた実施例では、評価結果が、良好であった。染料(1)と染料(2)との重量比以外は同条件とした実施例7〜10では、染料(1):染料(2)=70:30〜95:5(重量比)である実施例8および9において、ブロンジングと、耐オゾン性とが、共に極めて良好であった。染料合計配合量以外は同条件とした実施例11〜14では、染料合計配合量が2重量%〜6重量%である実施例12および13において、ブロンジング、耐オゾン性および噴射安定性が、極めて良好であった。
一方、染料(2)を含まない比較例1では、発色性およびブロンジングが劣っていた。染料(1)を含まない比較例2では、耐オゾン性が劣っていた。染料(2)に代えてC.I.アシッドブルー9を用いた比較例3では、耐オゾン性および耐光性が著しく劣っていた。染料(2)に代えてC.I.アシッドブルー74を用いた比較例4では、発色性が劣り、耐オゾン性および耐光性が著しく劣っていた。染料(1)に代えてC.I.アシッドブルー9を用いた比較例5では、耐オゾン性および耐光性が著しく劣っていた。染料(1)に代えてC.I.アシッドブルー74を用いた比較例6では、発色性が劣り、耐オゾン性および耐光性が著しく劣っていた。
以上のように、本発明の水性インクは、発色性、ブロンジング、耐オゾン性および耐光性のすべての性能に優れるものである。本発明の水性インクの用途は、特に限定されず、各種のインクジェット記録に広く適用可能である。
1 インクジェット記録装置
2 インクカートリッジ
3 インク吐出手段(インクジェットヘッド)
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置

Claims (6)

  1. 着色剤、水および水溶性有機溶剤を含むインクジェット記録用水性インクであって、
    前記着色剤が、下記の染料(1)および染料(2)を含むことを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
    染料(1):一般式(1)で表される染料
    染料(2):一般式(2)で表される染料
    Figure 2011111604
    一般式(1)において、
    環A、AおよびAは、それぞれ、ベンゼン環、2,3−ピリジン環および3,2−ピリジン環からなる群から選択される少なくとも一つであり、且つ、環A、AおよびAの少なくとも一つは、2,3−ピリジン環または3,2−ピリジン環であり、環A、AおよびAは同一でも異なっていてもよく、
    lは、0≦l≦4を満たし、mは、0≦m≦4を満たし、nは、0≦n≦4を満たし、且つ、l、mおよびnは、0≦l+m+n≦4を満たし、
    zは、1≦z≦3を満たす整数であり、
    は、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基である。
    Figure 2011111604
    一般式(2)において、
    Pc(Cu)は、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核であり、
    Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムのいずれかであり、
    xは、0<x<4を満たし、yは、0<y<4を満たし、且つ、xおよびyは、2≦x+y≦5を満たし、
    SOM基およびSONH基は、一般式(Pc)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、CおよびDのいずれかに存在する。
    Figure 2011111604
  2. 前記水性インクにおける前記染料(1)と前記染料(2)との重量比が、染料(1):染料(2)=70:30〜95:5である請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
  3. 前記水性インク全量に対し、前記染料(1)と前記染料(2)との合計配合量が、2重量%〜6重量%である請求項1または2記載のインクジェット記録用水性インク。
  4. 一般式(2)において、xおよびyは、x+y=4である請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
  5. インクジェット記録用水性インクを含むインクカートリッジであって、前記水性インクが、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  6. インク収容部およびインク吐出手段を含み、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出手段によって吐出するインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に、請求項5記載のインクカートリッジが収容されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
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