JP2011102227A - 高強度透明ジルコニア焼結体 - Google Patents

高強度透明ジルコニア焼結体 Download PDF

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Abstract

【課題】
透光性ジルコニア焼結体では、チタニアを含有することにより透光性は向上するが、機械的強度が低くなるという問題があった。
【解決手段】
イットリアを6〜15mol%、チタニアを3〜20mol%含有し、平均曲げ強度が250MPa以上、なおかつ、試料厚さ1mm、波長600nmにおいて直線透過率が50%以上である酸化チタン含有ジルコニア焼結体を提供する。当該焼結体は、例えば、イットリアを6〜15mol%、チタニアを3〜20mol%含有するジルコニア粉末を成形後、常圧で一次焼結して得られる一次焼結体を熱間静水圧プレス(HIP)処理する製造方法において、平均粒径が30μm未満の焼結体とすることによって得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は透明かつ機械的強度に優れており、時計用部品、装飾部材、電子機器外装部品、審美歯科部品に用いることができるチタニア添加透明ジルコニア焼結体に関する。
透明ジルコニア焼結体は、高屈折率、高誘電率を有するため、光学部材としての利用が期待されている(特許文献1)。特にチタニアを添加した透明ジルコニア焼結体は、高い透過率を示すことから、光学レンズなどへの適用が精力的に検討されている(非特許文献1、特許文献2)。
さらに、ジルコニア焼結体は審美歯科部品などへの適用(特許文献3、4)に加え、最近では装飾用部品、外装用部品への適用が検討されており、透光性に加え、高い機械的強度を有するチタニア添加ジルコニア焼結体が求められている。しかしながら、従来のチタニア添加透明ジルコニアは透光性を有してはいるが、機械的強度が不十分であった。
例えば、特許文献2には、波長600nm、厚み0.8mmにおいて直線透過率65%のジルコニア焼結体が報告されている。しかし、結晶粒径が100μm程度と大きく、機械的強度は低いものであった。また、非特許文献2には、粒径200μmのチタニア添加透明ジルコニア焼結体が開示されているが、その機械的強度(曲げ強度)は210MPa程度で低いものであった。
このように、これまで機械的強度と高透光性を両立したチタニア添加ジルコニア焼結体及びその製造方法は知られていなかった。
特開2007−246384 特開昭62−91467号公報 特開平01−113038号公報 特開平01−172264号公報
Journal of the Europian Ceramics Society 29 (2009) 283−291. ジルコニア セラミックス 8、宗宮重行、吉村昌弘編、内田老鶴圃、19ページ、1986年.
透光性および機械的強度に優れるチタニア含有ジルコニア焼結体を提供する。
本発明者等は、装飾部材等の透明部材に必要とされる強度および透明性を有するチタニア・イットリア含有ジルコニア焼結体について鋭意検討した結果、イットリアを6〜15mol%、チタニアを3〜20mol%含有するジルコニア焼結体において、平均曲げ強度が250MPa以上、なおかつ、試料厚さ1mm、波長600nmにおいて直線透過率が50%以上の焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
以下、本発明のジルコニア焼結体について説明する。
本発明のジルコニア焼結体は、イットリア(Y)を6〜15mol%含有し、特に8〜12mol%含有することが好ましい。イットリア含量をこの範囲とすることで、ジルコニア焼結体の結晶相を立方晶蛍石型構造のみとすることができる。一方、イットリア含量が6mol%未満では立方晶の他に正方晶が混在し、また、15mol%を超えるとパイロクロア型酸化物(YTi)等の立方晶以外の異なる結晶相が混在し、透光性が低下する。
本発明のジルコニア焼結体は、チタニア(TiO)を3〜20mol%含有するものであり、特に8〜15mol%含有することが好ましい。チタニア含量が3mol%未満では十分な透光性が得られない。また、20mol%を超えるとZrTiO等の化合物相が混在し、やはり透光性が低下する。
本発明のジルコニア焼結体は、イットリアおよびチタニアの両者を含有し、それがジルコニアに固溶していることが好ましい。
本発明のジルコニア焼結体は、金属不純物が10ppm以下であることが好ましい。金属不純物が10ppmを超えると、焼結体が着色しやすくなる。金属不純物としては、Ti,Y,Zr以外の金属が挙げられ、Al,Fe,Mgなどを例示することができる。
本発明のジルコニア焼結体の平均結晶粒径は30μm未満であることが好ましく、特に25μm以下、さらに22μm以下であることが好ましい。結晶粒径の下限は特に限定されないが、透光性の観点からは6μm以上、特に10μm以上であることが好ましい。平均粒径を30μm未満とすることで、高い機械的強度、特に高い曲げ強度が得られる。平均粒径が30μm以上であると、機械的強度が低下し易い。
本発明のジルコニア焼結体は気孔を有しない緻密なものであり、焼結密度は相対密度で99.9%以上、特に99.99%以上、そして99.998%以上であることが好ましい。それに対応して、ジルコニア焼結体の気孔量は0.002容量%以下であることが好ましく、特に0.001容量%以下であることが好ましい。気孔量が0.002容量%を超えると直線透過率が低下し易い。
本発明のジルコニア焼結体の機械的強度は、平均曲げ強度が250MPa以上であり、好ましくは260MPa以上、特に280MPa以上であることが好ましく、さらには300MPa以上であることが特に好ましい。250MPa未満では、ジルコニア焼結体が破損しやすくなる。
本発明の焼結体の結晶相は立方晶であることが好ましく、立方晶蛍石型構造であることが特に好ましい。立方晶は光学異方性がないため、多結晶体の個々の結晶を立方晶とすることで、得られる焼結体の透光性が高くなる。正方晶等の光学異方性を有する結晶相を含有した場合、直線線透過率が低下し易い。
本発明のジルコニア焼結体は、試料厚さ1mm、波長600nmにおける直線透過率が50%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは65%以上、さらには70%以上であることが好ましい。直線透過率が50%未満では見た目の透光感が低く、審美性が低下する。
なお、直線透過率は以下の関係式を有するパラメーターである。
Ti=Tt−Td (1)
Tt:全光線透過率(%)
Td:拡散透過率(%)
Ti:直線透過率(%)
本発明のジルコニア焼結体はヘーズ率が20%以下、特に10%以下が好ましく、5%以下、さらに3%以下が好ましい。ヘーズ率とは透明材料の濁り(曇り)の程度を表す尺度であり、透光性の差を表す指標として用いられる。ヘーズ率が20%を超えると見た目の透光感が著しく低下する。
ヘーズ率H(%)は、以下の関係式から求めることができる。
H=100×Td/Tt (2)
H :ヘーズ率(%)
Tt:全光線透過率(%)
Td:拡散透過率(%)
本発明のジルコニア焼結体は脈理が無いことが好ましい。脈理が発生すると、屈折率差による光散乱のため透光性が低下しやすい。
以下、本発明のジルコニア焼結体の製造方法を説明する。
本発明のジルコニア焼結体の製造法は特に限定されるものではないが、例えばイットリアを6〜15mol%、チタニアを3〜20mol%含有するジルコニア粉末を成形後、常圧で一次焼結して得られる一次焼結体を熱間静水圧プレス(HIP)処理する製造方法において、一次焼結の温度を1200℃以上1400℃以下とし、かつ、HIP処理を1250℃以上1600℃未満、保持時間1時間以上で行うことによって製造することができる。
原料粉末としては、ジルコニア、イットリア、チタニアを含有する粉末を用いることができる。
原料粉末は、これらの成分を所定量含有していれば特に制限はないが、イットリア固溶ジルコニア粉末とチタニア粉末を混合した混合粉末を用いることが好ましい。
混合粉末に用いるイットリア固溶ジルコニア粉末は、純度99.9%以上、比表面積5〜20m/gの粉末を用いることが特に好ましい。さらに、イットリア固溶ジルコニア粉末は、平均結晶子径10〜50nm、平均二次粒子径は100〜500nmの粉末であることが好ましく、加水分解法等の湿式合成法で製造された粉末が特に好ましい。
混合粉末に用いるチタニア粉末は純度99.9%以上、比表面積10〜100m/gであることが好ましく、純度99.9%以上、平均二次粒子径が500nm以下の微細な粉末であることが特に好ましい。さらに、硫酸法,気相熱分解法で製造された粉末が好ましい。
ジルコニア粉末とチタニア粉末を混合する場合は、両者が均一に分散すれば特に方法に制限はないが、湿式ボールミル、湿式攪拌ミル等の湿式混合がより均一に混合できるため好ましい。
混合が十分でない場合、混合粉末は不均一となり、得られるジルコニア焼結体に組成が不均質となり、脈理が発生し、屈折率差による光散乱のため透過率は低下しやすい。
原料粉末は、金属不純物が少ないことが好ましく、例えば、Feが10ppm以下であることが好ましい。Feが10ppmを超えると得られるジルコニア焼結体が黄色の着色を生じる。
原料粉末は成形し、一次焼結に供する成形体を得る。原料粉末の成型方法は、一次焼結に供するに適切な形状の成型体が得られる方法であれば制限はなく、一般的にセラミックスの成型に用いられているプレス成型、冷間静水圧プレス成型、鋳込み成型、押し出し成型、射出成型等の成型方法を用いることができる。
成型体は一次焼結し、HIP処理に供するための一次焼結体を作製する。
一次焼結体は相対密度が90%以上であることが好ましい。相対密度が90%未満であるとHIP処理において気孔を排除しきれないため、得られるジルコニア焼結体の密度が上がらず、透光性が低下しやすい。
一次焼結体の焼結粒子の平均粒径は10μm以下であることが好ましく、特に好ましくは3μm以下、さらには2μm以下であることが好ましい。本発明のジルコニア焼結体の透光性は一次焼結体の組織に強く依存し、一次焼結体の焼結粒子の平均粒径が10μmを超える場合には一次焼結体の粒径中に気孔が残存し易く、HIP処理後にも気孔は排除されにくい。一方、焼結粒子の平均粒径10μm以下であると、一次焼結体中の気孔は全て焼結粒径の粒界に存在し、HIP処理後に十分に気孔が排除される。また、平均粒径が10μm以下であると、HIP処理中に焼結粒子の塑性流動が起こりやすくなり、これが気
孔を効率的に除去しやすくなる原因であると考えられる。平均粒径3μm以下ではこの効果が顕著になりやすい。
一次焼結体の結晶相は、立方相と正方相の混相であることが好ましい。結晶系の異なる粒子を隣接させることにより、一次焼結体の粒成長が抑制され、粒内気孔が生成し難い。また、HIP処理における粒成長が抑制されやすくなる。
一次焼結の焼結温度は1200℃以上1400℃以下、特に1250℃以上1400℃以下が好ましく、更には1300℃以上1375℃以下であることが好ましい。この様な温度範囲の焼結により、上述した範囲の焼結密度、及び焼結粒子の平均粒径が得られる。
一次焼結は大気、酸素、真空等の雰囲気中での焼結を適用することができ、特に最も簡便なため大気中で行うことが好ましい。
次に、一次焼結体をHIP処理する。HIP処理温度は一次焼結温度よりも高い温度で、なおかつ1250℃以上1600℃未満であることが好ましく、特に好ましくは1275℃以上1550℃以下、さらに1300℃以上1500℃以下であることが好ましい。1600℃以上では焼結粒径が著しく粗大化し、強度が低下しやすい。しかしながら、1250℃未満では、HIP処理をしても、立方晶と正方晶が混在する一次焼結体の結晶相が立方晶のみにならず、得られるジルコニア焼結体の透光性が低下しやすい。
HIP処理の保持時間は1時間以上であることが好ましい。1時間未満ではHIP処理による焼結体中の気孔の排除が不十分となりやすい。1時間を越えてHIP処理しても、HIP処理体への影響はないが、生産性の観点から5時間以下で十分である。
HIP処理の圧力媒体は、非酸化雰囲気であれば特に限定するものではないが、窒素ガス、アルゴンガスなどが例示でき、特に汎用的なアルゴンガスで十分である。
HIP処理の圧力は、50MPa以上であることが好ましく、100MPa以上200MPa以下であることが特に好ましい。50MPa未満ではHIP処理中の気孔排除が効率よく行われにくい。また、100MPa以上とすることで気孔排除が促進され、得られるジルコニア焼結の透光性が高くなりやすい。
HIP処理では、焼結体中のTiは還元されることが好ましい。これにより透光性が高くなる。ここでいうTiの還元とは、チタニア(TiO)として添加された4価のTiが3価(TiO1.5)に還元されることを指す。
本発明のジルコニア焼結体は、HIP処理中の焼結体が含有するTi中のTi3+の割合(以下、Ti還元比率)が高いほど透明性が高くなる。これは、以下に示すメカニズムによるものと考えられる。
ジルコニアに固溶しているチタニア中の4価チタンが還元されて3価チタンが生成すると、(3)式に従い酸素が放出され、結晶格子中には新たに酸素空孔(□)が形成される。
Ti4+ → Ti3+1.50.5 + 1/4O↑ (3)
酸素空孔の形成により結晶格子内での物質移動が容易になるため、残留気孔の移動(消滅)が促進される。
Ti還元は一次焼結、もしくはHIP処理のいずれかの処理中に行うことができるが、特にHIP処理中に行うことが好ましい。
Ti還元比率は20%以上であることが好ましく、30%以上であることが特に好ましく、さらには40%以上であることが好ましい。Ti還元比率が20%未満であると、得られるジルコニア焼結体の透光性が低下する。
Ti還元比率はHIP処理後とアニール(酸化)後の焼結体の重量差がチタニアの酸素欠陥であるとして、実施例に示した計算によって求めることができる。
チタニアを含まない場合、アニールの前後で焼結体の有意な重量変化は認められないため、HIP処理後とアニール(酸化)後の焼結体の重量差はチタニア由来の還元であることがわかる。さらに、HIP処理後とアニール後のジルコニア焼結体のESRスペクトルを測定により、HIP処理後(アニール前)の焼結体のESRスペクトルにのみTi3+の明瞭なシグナル(g=2.0)が認められることからも還元によるTi3+の生成、アニールによる酸化が確認できる。
HIP処理で試料を設置する容器(試料容器)の材質に特に制限はないが、カーボン等の還元性の材質であることが好ましい。これにより、Ti還元が促進され、気孔の排除が促進されやすくなる。
HIP処理後のHIP処理体は、アニール処理することが好ましい。HIP処理後HIP処理体はTiの還元により暗黒色を呈しているため、アニール処理により透明な焼結体とすることができる。
アニール処理は、酸化雰囲気中、温度800〜1200℃で1時間以上、常圧で保持することが好ましい。雰囲気は、大気、又は酸素を用いた酸化性雰囲気で行うことが好ましく、通常は大気中で行うことが簡便である。
本発明のジルコニア焼結体は直線透過率が50%以上(試料厚み1mm、波長600nm)高い透光性を有し、なおかつ、平均曲げ強度が250MPa以上の高い機械的強度を有する。
本発明の焼結体組織(実施例6) 本発明の焼結体の透過率(実施例6) 本発明の焼結体のシュリーレン像(実施例6) 比較例の焼結体のシュリーレン像(比較例6)
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(Ti還元比率)
HIP処理後とアニール後の焼結体の重量変化を測定し、得られた重量減少から下記(4)式によって、Ti3+含量(z)、Ti還元比率(z/y)を算出した。
Zr1−x−yTi4+ 2−0.5x → Zr1−x−yTi4+ y−zTi3+ 2−0.5x−0.5z (4)
(全光線透過率および直線透過率)
全光線透過率および直線透過率はダブルビーム方式の分光光度計(日本分光株式会社製、V−650型)で測定した。測定試料はヘーズ率測定に用いたのと同様のものとした。重水素ランプおよびハロゲンランプを光源として波長200〜800nmをスキャンして各波長での直線透過率を測定した。600nmの波長での値を代表値とした。
(ヘーズ率)
ジルコニア焼結体を厚み1mmに加工し、表面粗さRa=0.02μm以下に両面鏡面研磨したものを測定試料として用いた。ヘーズ率はJIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」、JIS K7136「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準じた方法で、ヘーズメーター(東京電色製、TC−HIII)を用いて測定した。
(平均粒径)
一次焼結体及びHIP処理後の焼結体を平面研削した後、ダイアモンド砥粒9μm、6μm、1μmを用いて鏡面研磨した。研磨面を熱エッチングした後、SEM観察した。
なお、熱エッチングはのHIP処理温度より50〜100℃低い温度で2時間保持することで行った。エッチング後の焼結体のSEM観察から、J.Am.Ceram.Soc.,52[8]443−6(1969)に記載されている方法に従い、(5)式により平均粒径を求めた。
D=1.56L (5)
ここで、Dは平均結晶粒径(μm)、Lは任意の直線を横切る粒子の平均長さ(μm)であり、Lの値は100本以上の実測長さの平均値とした。
(曲げ強度)
ジルコニア焼結体の曲げ強度はJIS R1601に従い測定した。測定は10回行い、その平均値を平均曲げ強度とした。
(屈折率分布の観察)
ジルコニア焼結体の屈折率分布としてシュリーレン像を観察した。シュリーレン像は、小型シュリーレン装置(SLM−10;、溝尻光学工業所製)を用いて観察した。
実施例1〜7
(原料粉末)
ジルコニア粉末及びチタニア粉末を所定量秤量し、エタノール溶媒中ジルコニア製φ10mmボールで72時間ボールミル混合し、乾燥した粉末を調製して原料粉末とした。
なお、ジルコニア粉末として、加水分解法で製造された8mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製,TZ−8Y)、もしくは10mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製,TZ−10Y)を使用し、チタニア粉末として、硫酸法で製造された高純度チタニア粉末(石原産業製,PT−401M)を用いた。
(一次焼結)
原料粉末を金型プレスによって圧力50MPaで成形した後、冷間静水圧プレス装置を用い圧力200MPaでさらに固め、直径20mmの円柱成形体を得た。
当該成型体を大気中、昇温速度を100℃/h、焼結温度1325又は1350℃、焼結時間2時間で焼結し、一次焼結体を得た(試料番号:No.1〜4)。得られた一次焼結体の組成、密度、平均粒径、結晶相を表1に示した。
なお、試料番号No.1、2の組成はモル比で、TiO:Y:ZrO=0.1:0.072:0.828であり、試料番号No.3,4は、TiO:Y:ZrO=0.1:0.09:0.81であった。
いずれの一次焼結体も相対密度が90%以上、平均粒径は2μm以下、結晶相は立方晶と正方晶の混相であった。
Figure 2011102227
(HIP処理)
No.1〜4の一次焼結体を1400℃〜1500℃の所定のHIP温度、圧力150MPa、保持時間1時間でHIP処理した。なお、圧力媒体として純度99.9%のアルゴンガスを用いた。試料を設置する容器としては、蓋付きカーボン製容器を用いた。
HIP処理後のHIP処理体はすべて黒色を呈しており、大気中、1000℃で2時間アニール処理することにより透光性を有するジルコニア焼結体を得た。
得られたジルコニア焼結体は、密度がアルキメデス法の測定誤差範囲内で100%であり、結晶相は蛍石型立方晶単相であった。
HIP処理後のTi還元比率、及びアニール処理後のジルコニア焼結体の特性を表2に示した。
Figure 2011102227
いずれのジルコニア焼結体も直線透過率は60%以上と高く、かつ、曲げ強度も250MPa以上と高いものであった。本発明の焼結体は、図1に示したように微細な結晶粒子から構成されていた。
実施例8
実施例6のジルコニア焼結体についてシュリーレン像を観察し、得られたシュリーレン像を図3に示した。ジルコニア焼結体は脈理の無い均質な焼結体であった。
実施例9
実施例4のジルコニア焼結体について屈折率、比誘電率を測定した。屈折率はプリズムカップリング法で、比誘電率は周波数100〜1000kHzの範囲で測定した。結果を表3に示した。
屈折率、比誘電率はガラス等の透明材料に比較して極めて高く、さらに、誘電損失も非常に小さい値であった。
Figure 2011102227
比較例1〜4
試料番号2、4の一次焼結体を用いて、HIP温度1650℃、1200℃とした以外は実施例1と同様な条件でジルコニア焼結体を製造した。得られたジルコニア焼結体の結
果を表4に示した。
Figure 2011102227
HIP温度が1650℃では、結晶粒子は50μm以上であり、HIP処理温度の上昇により結晶粒子が大きくなり、強度が低くなった。一方、HIP温度1200℃では、直線透過率が1%未満であり、HIP処理温度の低下で透過率が著しく低下した。
本比較例のジルコニア焼結体の結晶相は、立方晶と正方晶の混相であった。
比較例5
:9mol%、TiO:10mol%を含むジルコニアを、温度1500℃、焼結時間2時間として一次焼結体(No.5)を製造した。得られた一次焼結体の結果を表5に示した。
Figure 2011102227
得られた一次焼結体の結晶相は立方晶単相であり、また、平均粒径が20μm以上と粗大なものであった。
得られた一次焼結体(No.5)を実施例1と同様な条件で処理してジルコニア焼結体を製造した。結果を表6に示した。
Figure 2011102227
結晶相が立方晶の一次焼結体から得られたジルコニア焼結体は、HIP後の透過率が低かった。
比較例6
原料粉末の混合を行わなかった以外は、実施例4と同様な処理によりジルコニア焼結体を製造した。得られたジルコニア焼結体の結果を表7に、シュリーレン像を図4に示した。
原料粉末が不均一なものでは、透過率は低く、シュリーレン像では屈折率分布の不均一性に起因する黒点が多数観測された。
Figure 2011102227
本発明のジルコニア焼結体は、高い透光性と機械的強度に優れているため、装飾品として利用でき、例えば、時計用部品、携帯電話や電子機器用透明パネル基板等の電子機器部品、及び審美歯科部品等として利用することができる。

Claims (7)

  1. イットリアを6〜15mol%、チタニアを3〜20mol%含有し、平均曲げ強度が250MPa以上、なおかつ、試料厚さ1mm、波長600nmにおいて直線透過率が50%以上であることを特徴とするジルコニア焼結体。
  2. 平均粒径が30μm未満であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア焼結体。
  3. 焼結密度が99.9%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア焼結体。
  4. 結晶相が立方晶蛍石構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のジルコニア焼結体を用いた部材。
  6. 電子機器の外装に用いることを特徴とする請求項5に記載の部材。
  7. 装飾品に用いることを特徴とする請求項5に記載の部材。
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