JP5505063B2 - 高透明ジルコニア焼結体 - Google Patents

高透明ジルコニア焼結体 Download PDF

Info

Publication number
JP5505063B2
JP5505063B2 JP2010101402A JP2010101402A JP5505063B2 JP 5505063 B2 JP5505063 B2 JP 5505063B2 JP 2010101402 A JP2010101402 A JP 2010101402A JP 2010101402 A JP2010101402 A JP 2010101402A JP 5505063 B2 JP5505063 B2 JP 5505063B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sintered body
zirconia
mol
zirconia sintered
primary
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2010101402A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011011970A (ja
Inventor
勲 山下
孝次 津久間
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tosoh Corp
Original Assignee
Tosoh Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tosoh Corp filed Critical Tosoh Corp
Priority to JP2010101402A priority Critical patent/JP5505063B2/ja
Publication of JP2011011970A publication Critical patent/JP2011011970A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5505063B2 publication Critical patent/JP5505063B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Description

本発明は透明性が極めて高く、光学用途に適するジルコニア焼結体に関する。
透明セラミックスは、屈折率,誘電率,赤外透過性等の特性がガラスやプラスティックスより優れているため、近年、レンズ,表示基板等の光学用素材への利用が検討されている。透明セラミックスの中でも、透明ジルコニア焼結体は特に優れた特性を有しているが、これを光学用素材用途に用いる場合、透過損失が小さく極めて高い透明性を有することが必要である。
これまで、6mol%以上のイットリアおよび3mol%以上のチタニアを含み、直線透過率が66%(試料厚さ1mm、測定波長600nm)の透明ジルコニア焼結体や、7.2mol%のイットリアおよび10mol%のチタニアを含み、直線透過率が72%(試料厚さ1mm)の透明ジルコニア焼結体などが報告されている(特許文献1〜3、非特許文献1)。
また、6〜15mol%のイットリアのみを含み、73%(試料厚さ1mm、測定波長550nm)の直線透過率を有するジルコニア焼結体が報告されている(特許文献4)。
しかしながら、これらの焼結体は、ある程度の透光性は有しているが濁りのあるいわゆる曇った焼結体であり、光学用途にはさらなる透明性が必要であった。
さらに、引用文献4で開示された製造方法は、試料容器の設置方法で製造雰囲気を調製していたため、容器の変形等が伴う高温のHIP処理において雰囲気を安定制御することが必要であった。
このように、これまでは透光性が高く、かつ、濁りのない高い透明性を有するジルコニア焼結体、および、それを再現良く得ることができるジルコニア焼結体の製造方法はなかった。
特開昭62−91467号公報 特開平01−126267号公報 特開平01−172264号公報 特開2007−246384号公報
J.Eur.Cram.Soc.,29,(2009)283−291
本発明は、透過損失が小さく、極めて高い透明性を有するジルコニア焼結体、および、その製造方法を提供する。
本発明者等は、チタニア・イットリア含有ジルコニア焼結体について検討し、高い透明性を有するチタニア・イットリア含有ジルコニア焼結体、およびそれを再現よく得られる製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明のジルコニア焼結体について説明する。
本発明のジルコニア焼結体は、3〜20mol%のチタニアと6〜15mol%のイットリアを含有するジルコニアからなり、試料厚さ1mm、波長600nmにおいて、直線透過率が73%以上であり、かつ、ヘーズ率2.0%以下の高透明性を有するジルコニア焼結体である。
本発明の焼結体はチタニア(TiO)を3〜20mol%含有するものであり、特に8〜15mol%であることが好ましい。チタニア含量が3mol%未満ではチタニアによる透明性並びにその透明性の再現確率を向上させる効果が得られない。また、20mol%を超えるとZrTiO等の化合物相が混在する。
本発明の焼結体はイットリア(Y)を6〜15mol%含有するものであり、特に8〜12mol%であることが好ましい。イットリア含量をこの範囲とすることで、ジルコニア焼結体の結晶相を立方晶蛍石型構造のみとすることができる。イットリア含量が6mol%未満では立方晶の他に正方晶が混在し、また15mol%を超えると立方晶以外の異なる結晶相が混在しやすくなる。
本発明の焼結体は、イットリアおよびチタニアの両者を含有し、それがジルコニアに固溶していることが好ましい。
本発明の焼結体の結晶相は立方晶であることが好ましく、特に立方晶蛍石型構造であることが好ましい。立方晶は光学異方性がないため、ジルコニア焼結体が有する多結晶体の個々の結晶を立方晶であることによって、特に高い透明性が得られる。
本発明の焼結体は、金属不純物が10ppm以下であることが好ましい。例えば、Fe含有量が10ppmを超えると、焼結体が黄色味の着色をする。
本発明の焼結体は、残留気孔が0.001vol%以下であることが好ましい。これにより、本発明の焼結体の着色感がなくなる。残留気孔が0.001vol%を超えると、気孔による短波長側の可視光の散乱が大きくなるために長波長側の色が強調され、焼結体が黄色味を帯び易い。
本発明のジルコニア焼結体の平均結晶粒径は、平均結晶粒径は60μm以下であることが好ましく、特に56μm以下であることが好ましい、また、下限値としては30μm以上であることが好ましく、特に40μm以上、さらには45μm以上であることが好ましい。
本発明の焼結体の直線透過率は試料厚さ1mm、測定波長600nmで73%以上であり、特に73.5%以上であることが好ましい。
直線透過率は、以下の関係式を有するパラメーターである。
Ti=Tt−Td (1)
Tt:全光線透過率(%)
Td:拡散透過率(%)
Ti:直線透過率(%)
本発明の焼結体は、試料厚さ1mmでヘーズ率2.0%以下であり、特に1.0%以下であることが好ましい。ここで、ヘーズ率とは透明材料の濁り(曇り)の程度を表す尺度であり、透明性の差を表す指標として用いることができる。
ヘーズ率が2.0%を越えると焼結体に曇りが多くなり、光学材料用途へは用いることができない。一方、ヘーズ率は小さい程好ましいが、2.0%以下であれば光学材料用途に用いるのに十分な透明性となる。
ヘーズ率H(%)は、以下の関係式から求めることができる。
H=100×Td/Tt (2)
H :ヘーズ率(%)
Tt:全光線透過率(%)
Td:拡散透過率(%)
また、本発明の焼結体は600nmにおける拡散係数κが0.15cm−1以下であることが好ましい。拡散係数は、以下の(3)式又は(3)’式のいずれかで求めることができる。
κ=−log(1−H)/d (3)
κ=−log(Ti/Tt)/d (3)’
κ :拡散係数(cm−1
H :ヘーズ率(%)
Ti:直線透過率(%)
Tt:全光線透過率(%)
d :試料厚み(cm)
拡散係数はヘーズ率が高いほど増加し、例えば、ヘーズ率が2.0%以下であれば、波長600nmにおいて(3)式により求まる拡散係数は0.15cm−1以下となる。
本発明の焼結体は、明度L*が84以上90以下であることが好ましい。明度をこの範囲とすることで焼結体の透明感が向上する。L*が84未満であると明度が低すぎるため、透明感が低下する。
また、色相a*が−1.5以上0.2以下、b*が0.0以上4.0以下であることで焼結体の着色感がなくなる。特に色相b*が4.0を超えると、焼結体が薄黄色味を帯び易い。
明度および色相がL*=84〜90、a*=−1.5〜0.2、b*=0.0〜4.0を満たすことで高品位な着色感のない高い透明感が得られる。
以下、本発明のジルコニア焼結体の製造方法を説明する。
本発明の焼結体はジルコニア,イットリア,チタニアを含有する原料粉末を成型、一次焼結した後に、熱間静水圧プレス(HIP)処理し、アニールして製造することができる。
本発明の製造方法では、ジルコニア,イットリア,チタニアを含有する粉末を原料粉末として用いる。
原料粉末は、これらの成分を所定量含有していれば特に制限はないが、イットリア固溶ジルコニア粉末とチタニア粉末を混合した混合粉末を用いることが工業的には有利である。
混合粉末に用いるイットリア固溶ジルコニア粉末は、純度99.9%以上、比表面積5〜20m/gの粉末を用いることが特に好ましい。さらに、イットリア固溶ジルコニア粉末は、平均結晶子径10〜50nm、平均2次粒子径は100〜500nmの粉末であることが好ましく、加水分解法等の湿式合成法で製造された粉末が特に好ましい。
混合粉末に用いるチタニア粉末は純度99.9%以上、比表面積10〜100m/gであることが好ましく、純度99.95%以上、平均結晶子径が30nm以下、平均2次粒子径が500nm以下の微細な粉末であることが特に好ましい。さらに、硫酸法,気相熱分解法で製造された粉末が好ましい。
ジルコニア粉末とチタニア粉末を混合する場合は、両者が均一に分散すれば特に方法に制限はないが、湿式ボールミル、湿式攪拌ミル等の湿式混合がより均一に混合できるため好ましい。
原料粉末は、金属不純物が少ないことが好ましく、例えば、Feが10ppm以下であることが好ましい。Feが10ppmを超えると、得られるジルコニア焼結体が黄色の着色を生じる。
本発明の製造方法では、原料粉末を成型して一次焼結に供する成型体を得る。
原料粉末の成型方法は、一次焼結に供するに適切な形状の成型体が得られる方法であれば制限はなく、一般的にセラミックスの成型に用いられているプレス成型、冷間静水圧プレス成型、鋳込み成型、押し出し成型、射出成型等の成型方法を用いることができる。
本発明の製造方法では、成型体を一次焼結してHIP処理に供する一次焼結体を作製する。一次焼結体は相対密度が94%以上であり、焼結粒子の平均粒径が10μm以下であることが好ましい。
一次焼結体の相対密度は、94%以上であることが好ましい。相対密度が94%未満であると焼結体は開気孔を含むようになり、HIP処理ガスが焼結体内部に侵入するため、密度が上がらず透過率が低下する。
本発明のジルコニア焼結体の透明性は一次焼結体の組織、特に焼結体に含まれる気孔の存在形態に強く依存する。一次焼結体に含まれる気孔の存在形態としては、粒界気孔と粒内気孔の2つの形態が考えられるが、特に粒内気孔は含まないことが好ましい。一次焼結体の結晶粒子間に存在する粒界気孔であれば、存在したとしてもHIP処理によって消滅し易く、最終的に得られる焼結体の透明性への影響は小さい。
一次焼結体の焼結粒子の平均粒径は10μm以下であることが好ましく、特に好ましくは3μm以下である。焼結粒子の平均粒径が10μmを超えると粒内気孔が生成し易く、HIP処理によっても粒内気孔が排除されにくい。一方、焼結粒子の平均粒径10μm以下であると、気孔が粒界気孔として存在し易く、HIP処理において効率よく気孔を排除することができる。一次焼結体の平均粒径が3μm以下であれば、その傾向が顕著になる。
一次焼結体の結晶相は、立方相と正方相の混相であることが好ましい。結晶系の異なる粒子を隣接させることによって一次焼結体の粒成長が抑制されるため、粒内気孔を含まない焼結体が得られ易いからである。
一次焼結の焼結温度はHIP処理温度より低い温度とし、好ましくは1200〜1400℃、特に1250〜1400℃が好ましく、更には1250〜1300℃であることが好ましい。これにより、一次焼結中の粒成長を抑制することができる。昇温速度は100〜300℃/hとすることが好ましい。
一次焼結の保持時間は焼結温度により変わるため一律には決められないが、1〜10時間程度の範囲である。例えば、焼結温度が1300℃の場合は10時間程度が好ましく、それよりさらに高い焼結温度の場合には1〜5時間の短時間で焼結することも可能である。一次焼結は通常大気中で行えるが、酸素、真空等の雰囲気中での焼結を適用してもよい。
本発明の製造方法では、次に一次焼結体をHIP処理する。
HIP処理の温度は1400℃以上1800℃以下が好ましく、特に1550〜1800℃が好ましく、さらに1600〜1700℃が好ましい1400℃以上とすることによって得られる焼結体の透明性が向上し、1550℃以上では更に透明性が向上する。1800℃を超える温度も適用できるが、得られるジルコニア焼結体の結晶粒径が極めて大きくなるため、強度が低下する。
本発明の製造方法では、一次焼結中又はHIP処理中、或いはその両方の工程においてチタニア成分中のTi4+を還元することが好ましい。本発明のジルコニア焼結体は、HIP処理中の焼結体が含有するTi中のTi3+の割合(以下、Ti還元比率)が高いほど透明性が高くなる。これは、以下に示すメカニズムによるものと考えられる。
ジルコニアに固溶しているチタニア中の4価チタンが還元されて3価チタンが生成すると、(4)式に従い酸素が放出され、結晶格子中には新たに酸素空孔(□)が形成される。
Ti4+ → Ti3+1.50.5 + 1/4O↑ (4)
酸素空孔の形成により結晶格子内での物質移動が容易になるため、残留気孔の移動(消滅)が促進される。
Ti還元は一次焼結、もしくはHIP処理のいずれかの処理中に行うことができるが、特にHIP処理中に行うことが好ましい。
Ti還元比率はHIP処理後とアニール(酸化)後の焼結体の重量差がチタニアの酸素欠陥であるとして計算によって求めることができる。チタニアを含まない場合、アニールの前後で焼結体の有意な重量変化は認められないため、本発明の方法におけるHIP処理後とアニール(酸化)後の焼結体の重量差はチタニア由来の還元であることがわかる。さらにHIP処理後とアニール後のジルコニア焼結体のESRスペクトルを測定により、HIP処理後(アニール前)の焼結体のESRスペクトルにのみTi3+の明瞭なシグナル(g=2.0)が認められることからも還元によるTi3+の生成、アニールによる酸化が確認できる。
本発明の方法におけるTi還元比率は20%以上であり、特に25%以上であることが好ましい。Ti還元比率が20%以上においては酸素空孔が多く形成され、残留気孔の移動(消滅)が促進され、透明性が高いジルコニア焼結体が得られる。一方、Ti還元比率が20%未満であると、形成される酸素空孔が少ないために残留気孔の排除が進行し難い。
一次焼結やHIP処理中にTiを還元する場合、それらを還元性雰囲気で行えばよい。特にHIP処理におけるTi還元は、アルゴン、窒素等の非酸化性ガス等のHIP圧力媒体中に含まれている微量の酸素と、HIP装置内の加熱ヒーター、断熱材等のカーボンが反応して生成する一酸化炭素を利用して、還元することができる。
HIP処理で試料を設置する容器(試料容器)の材質に特に制限はないが、カーボン等の還元性の材質であることが好ましい。これにより、Ti還元がさらに促進される。
本発明の製造法では、HIP処理後の焼結体をアニールすることでジルコニア焼結体を得ることができる。
Ti還元比率20%以上のHIP処理後の焼結体は黒色を呈しているため、そのままでは十分な透明性を有しない。本発明の方法では、アニールにより焼結体を酸化して透明性が高くなおかつ濁り(曇り)のないジルコニア焼結体とすることができる。
アニールは大気、又は酸素を用いた酸化性雰囲気において、温度1000〜1200℃で1時間以上、常圧で保持することが好ましい。
本発明のジルコニア焼結体は直線透過率が73%以上(厚み1mm、600nm)でなおかつヘーズ率2.0%以下の濁り(曇り)のない高品質の透明性を有する。またガラス、プラスチック等の透明材料に比較して、屈折率、誘電率が著しく高く、より長波長の赤外線透過性があり、さらに、硬度、曲げ強度、破壊靭性等の機械的性質に優れるものである。
一次焼結体の組織のSEM写真(a)1300℃、10h (b)1400℃、2h (c)1500℃、2h(9mol%イットリア、10mol%チタニア含有ジルコニア) ヘーズ率とTi還元比率との関係 ヘーズ率と一次焼結温度との関係
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(直線透過率)
ジルコニア焼結体を、厚み1mmに加工し、表面粗さRa=0.02μm以下に両面鏡面研磨したものを測定試料として用いた。直線透過率はダブルビーム方式の分光光度計(日本分光株式会社製、V−650型)で測定した。重水素ランプおよびハロゲンランプを光源として波長200〜800nmをスキャンして各波長での直線透過率を測定した。600nmの波長での値を代表値とした。
(ヘーズ率及び拡散係数)
ジルコニア焼結体を、厚み1mmに加工し、表面粗さRa=0.02μm以下に両面鏡面研磨したものを測定試料として用いた。ヘーズ率はJIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」、JIS K7136「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準じた方法で、ヘーズメーター(東京電色製、TC−HIII)を用いて測定した。
拡散係数は(3)式を用いて計算した。
κ=−log(1−H)/d (3)
(平均粒径)
焼結体を平面研削した後、ダイアモンド砥粒9μm、6μm、1μmを用いて鏡面研磨した。研磨面を熱エッチングした後、SEM観察した。熱エッチングは各焼結体試料の焼結(又はHIP処理)温度より50〜100℃低い温度で2時間処理することで行った。SEM写真から、平均粒径をJ.Am.Ceram.Soc.,52[8]443−6(1969)に記載されている方法に従い、(5)式により求めた。Lの値は100本以上の実測長さの平均値とした。
D=1.56L (5)
D:平均結晶粒径(μm)
L:任意の直線を横切る粒子の平均長さ(μm)
(明度、色相)
測定試料として試料厚みを1mmに加工し、表面粗さRa=0.02μm以下に両面鏡面研磨したものを用いた。測定はJIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」の5.3項、5.4項に準じて、精密型分光光度色彩計(東京電色製、TC−1500SX)を用いて行った。試料の裏面に常用標準白色板を置き、試料からの反射光を測定して、明度L、色相aおよびbを求めた。
(Ti還元比率)
HIP処理後とアニール後の焼結体の重量変化を測定し、得られた重量変化から下記(6)式によって、Ti3+含量(z)、Ti還元比率(z/y)を算出した。
Zr1−x−yTi4+ 2−0.5x → Zr1−x−yTi4+ y−zTi3+ 2−0.5x−0.5z (6)
実施例1〜12
(原料粉末の調製)
ジルコニア粉末及びチタニア粉末を所定量秤量し、エタノール溶媒中ジルコニア製φ10mmボールで72時間ボールミル混合し、乾燥した粉末を原料粉末とした。
ジルコニア粉末として、加水分解法で製造された8mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製,TZ−8Y)、もしくは10mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製,TZ−10Y)を使用し、チタニア粉末として、硫酸法で製造された高純度チタニア粉末(石原産業製,PT−401M)を用いた。原料粉末の物性を表1に示した。
Figure 0005505063
(一次焼結)
原料粉末を金型プレスによって圧力50MPaで成形した後、冷間静水圧プレス装置を用い圧力200MPaでさらに固め、直径20mm、厚さ2mmの円柱成形体を得た。
一次焼結は、大気中で昇温速度を100℃/h、一次焼結温度を1300〜1400℃の所定温度、焼結時間を2時間もしくは10時間とし、一次焼結体を得た(試料番号:No.1〜8)。
得られた一次焼結体の組成、密度、平均粒径、結晶相を表2に示した。
いずれの一次焼結体も相対密度が94〜98%、平均粒径が3μm以下であり、結晶相は立方晶と正方晶の2相であった。
Figure 0005505063
(HIP処理及びアニール)
No.1〜8の一次焼結体を用い、温度1650℃、圧力150MPa、保持時間1時間でHIP処理した。なお、圧力媒体として純度99.9%のアルゴンガスを用いた。
試料を設置する容器として、蓋付きカーボン製容器,蓋なしカーボン製容器,蓋なしアルミナ製容器の3種類のうちいずれかを用いた。
HIP処理後のジルコニア焼結体はすべて黒色を呈していたため、大気中、1000℃で2時間アニールした。アニール後のジルコニア焼結体はすべて無色透明を呈していた。
得られたジルコニア焼結体は、密度がアルキメデス法の測定誤差範囲内で100%であり、結晶相は蛍石型立方晶単相であった。
HIP処理中のTi還元比率、及びアニール後のジルコニア焼結体の平均粒径、ヘーズ率、直線透過率、拡散係数、明度、色相を表3に示した。
なお、全てのジルコニア焼結体はHIP処理後に重量減少が認められたが、アニール後重量は増加し、HIP処理前の重量と等しくなった。
また、HIP処理前後、およびアニール後のジルコニア焼結体のESRスペクトルを測定した結果、HIP処理後(アニール前)の焼結体のESRスペクトルにのみTi3+の明瞭なシグナル(g=2.0)が認められた。これにより、アニールによりTi3+が酸化されていることがわかった。
Figure 0005505063
いずれのジルコニア焼結体の直線透過率(試料厚さ1mm、測定波長600nm)は73〜74%であり、ヘーズ率が0.3〜1.0%と非常に低く、濁りのない高い透明性を有していた。
実施例13〜16
(原料粉末の調製)
8mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製、TZ−8Y)と気相法で製造されたチタニア粉末(昭和電工製、スーパーチタニア)をボールミル混合して、7.2mol%イットリア10mol%チタニア含有ジルコニア粉末を得た。
用いたチタニア粉末の物性を表4に示した。
Figure 0005505063
(一次焼結)
一次焼結を大気中1325℃、2h保持した以外は、実施例1〜12と同様に成型、一次焼成して一次焼結体を得た(試料番号:No.9)。
(HIP処理及びアニール)
HIP処理温度を1600℃もしくは1700℃に変えた以外は、実施例1〜12と同様の方法でジルコニア焼結体を得た。ジルコニア焼結体の特性を表5に示した。
Figure 0005505063
実施例17
実施例3と同様の方法でイットリア7.2mol%、チタニア10mol%を含有するジルコニア焼結体を作製した。それについて、屈折率、比誘電率、3点曲げ強度、ビッカース硬度を測定した。
屈折率はプリズムカップリング法で、比誘電率は周波数100〜1000kHzの範囲で、3点曲げ強度はJIS R1601に基づき、ビッカース硬度は荷重5kgでそれぞれ測定した(表6)。
屈折率、比誘電率はガラス等の透明材料に比較して極めて高く、機械的特性に優れていた。
Figure 0005505063
比較例1
試料番号No.2(7.2mol%イットリア、10mol%チタニア)、並びに試料番号No.5(9.0mol%イットリア、10mol%チタニア)の一次焼結体を用い、それを蓋付きアルミナ容器に設置した以外は実施例2と全く同様の方法でHIP処理してジルコニア焼結体を得た。
いずれの一次焼結体から得られたジルコニア焼結体もTi還元比率が低く、試料番号No.2から得られた焼結体は3%、試料番号No.5から得られた焼結体は5%であった。
焼結体の直線透過率は、試料番号No.2から得られた焼結体が45%、試料番号No.5から得られた焼結体が64%であった。ヘーズ率は、試料番号No.2から得られた焼結体が29%、試料番号No.5から得られた焼結体が11%であった。どちらもヘーズ率10%以上、直線透過率65%以下であり、透明性が低く、また、No.5から得られた焼結体の拡散係数は1.03cm−1と高かった。
比較例2
実施例7〜10で用いた原料粉末(9.0mol%イットリア、Y10mol%チタニア)からなる成形体を用い、1500℃、1600℃の各温度で2時間保持して一次焼結体を得た。一次焼結体の平均粒径は、1500℃で焼結した一次焼結体(試料番号No.10)が15.0μm、1600℃で焼結した一次焼結体(試料番号No.11)が30.3μmであった。
得られた一次焼結体を実施例9と全く同様の方法でHIP処理してジルコニア焼結体を得た。直線透過率は、試料番号No.10から得られたジルコニア焼結体が55%、No.11から得られたジルコニア焼結体が48%、ヘーズ率は、試料番号No.10から得られたジルコニア焼結体が20%、No.11から得られたジルコニア焼結体が27%であり、どちらも透明性の悪いものであった。
実施例18、比較例3
9.0mol%イットリア、10mol%チタニア含有ジルコニアについて、焼結温度による一次焼結体組織の変化を観察した。SEM写真を図1に示した。1300℃、10h保持した一次焼結体(試料番号No.5)、及び1400℃、2時間保持した一次焼結体では、気孔はすべて粒界に存在しているが、1500℃、2時間保持した一次焼結体(試料番号No.10)では、粒内に取り込まれた気孔が多数存在していた。又、各試料の結晶相をXRDで同定した結果、1300℃、及び1400℃で焼結した一次焼結体(実施例18)には立方晶の他に正方晶が認められたが、1500℃で焼結した一次焼結体(比較例3)には立方晶のみ認められた。
試料番号No.5、及びNo.10のHIP処理焼結体の透明性は実施例7〜9、及び比較例2に示した通りであり、No.10の低い透明性の原因は大きい粒子内に取り込まれた粒内気孔(図1(c))が粒界気孔(図1(a))に比較してHIP処理で消滅し難いためであった。
実施例19
実施例1〜16、及び比較例1のデータをもとにTi還元比率とヘーズ率との関係を求めた。結果を図2に示した。
実施例20
実施例1〜16、及び比較例2のデータをもとに一次焼結温度とヘーズ率との関係を求めた。結果を図3に示した。
比較例4
特許文献1に従って、ジルコニア焼結体を得た。特許文献1粉末製造例8〜13に従って、7mol%イットリア、10mol%チタニア含有ジルコニア粉末を得、焼結例Aに従って、酸素流通中1700℃で焼結後、1500℃、100MPaでHIP処理した。HIP処理後のTi還元比率は18%であった。
得られたジルコニア焼結体は、直線透過率65%、ヘーズ率9%であり、本発明のジルコニア焼結体よりも低い透明性であった。
一次焼結温度が高いため粒内気孔が形成されたこと、及びTi還元比率が低く、焼結促進されなかったことが原因と考えられる。
比較例5
特許文献4に記載された方法に従ってジルコニア焼結体を得た。特許文献2実施例1に従って、8mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー、TZ−8Y)を用い、一次焼結を1375℃で行い、HIP処理を半密閉アルミナ容器中で1750℃、150MPaで行った。得られた焼結体は、直線透過率72.5%、ヘーズ率2.5%、拡散係数0.251cm−1であり、濁り(曇り)があるものであった。
本発明の焼結体は、光学用レンズ・プリズムとして用いた場合、ガラスでは達成できない屈折率2.0以上の高屈折率のものができる。さらに、機械的性質に優れているため、装飾部品としても利用でき、例えば時計や携帯電話などの電子機器用外装部品として用いることができる。

Claims (7)

  1. 3〜20mol%のチタニアと6〜15mol%のイットリアを含有するジルコニアからなり、試料厚さ1mm、波長600nmにおいて、直線透過率が73〜75%であり、かつ、ヘーズ率2.0%以下のジルコニア焼結体。
  2. イットリアとチタニアが固溶した立方晶蛍石型構造である請求項1に記載のジルコニア焼結体。
  3. 明度Lが84以上90以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア焼結体。
  4. 色相が、aが−1.5以上0.2以下、かつ、bが0.0以上4.0以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のジルコニア焼結体を用いた光学部品。
  6. 光学用レンズに用いる請求項の光学部品。
  7. 請求項1乃至4のいずれかに記載のジルコニア焼結体を用いる電子機器用外装部品。
JP2010101402A 2009-06-04 2010-04-26 高透明ジルコニア焼結体 Active JP5505063B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010101402A JP5505063B2 (ja) 2009-06-04 2010-04-26 高透明ジルコニア焼結体

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009134741 2009-06-04
JP2009134741 2009-06-04
JP2010101402A JP5505063B2 (ja) 2009-06-04 2010-04-26 高透明ジルコニア焼結体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011011970A JP2011011970A (ja) 2011-01-20
JP5505063B2 true JP5505063B2 (ja) 2014-05-28

Family

ID=43591228

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010101402A Active JP5505063B2 (ja) 2009-06-04 2010-04-26 高透明ジルコニア焼結体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5505063B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101742762B1 (ko) 2009-08-07 2017-06-01 토소가부시키가이샤 투명 지르코니아 소결체, 그리고 그의 제조방법
JP5630795B1 (ja) 2014-03-24 2014-11-26 有限会社金栄堂 着色レンズの設計方法
DE102016009730A1 (de) * 2016-07-28 2018-02-01 Forschungszentrum Jülich GmbH Verfahren zur Verstärkung von transparenten Keramiken sowie Keramik

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6291467A (ja) * 1985-06-20 1987-04-25 東ソー株式会社 透光性ジルコニア焼結体の製造法
JPH01113038A (ja) * 1987-07-02 1989-05-01 Tosoh Corp 歯列矯正ブラケット
JP2569662B2 (ja) * 1987-12-28 1997-01-08 東ソー株式会社 透光性ジルコニア質焼結体の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011011970A (ja) 2011-01-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2010140644A1 (ja) 高強度透明ジルコニア焼結体及びその製造方法、並びにその用途
JP5125065B2 (ja) 透明ジルコニア焼結体
JP5861397B2 (ja) 着色透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びにその用途
JP5685846B2 (ja) 透明ジルコニア焼結体及びその製造方法、並びにその用途
JP5655512B2 (ja) 着色透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びにその用途
JP2018002495A (ja) 着色透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びにその用途
JP5505063B2 (ja) 高透明ジルコニア焼結体
JP5770431B2 (ja) 高強度透明ジルコニア焼結体
KR101575561B1 (ko) 투명도가 향상된 다결정 산질화알루미늄의 제조방법
JP6772592B2 (ja) 透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びにその用途
JP2001158660A (ja) 透光性希土類アルミニウムガーネット焼結体及びその製造方法
JP6672833B2 (ja) 着色ジルコニア焼結体及びその製造方法
JP4715322B2 (ja) 歯列矯正ブラケット及びその製造方法
JP2018080064A (ja) オレンジ色ジルコニア焼結体及びその製造方法
JP2018002527A (ja) 透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びにその用途
JP2017141144A (ja) オレンジ色ジルコニア焼結体及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130308

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131031

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131105

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131224

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20131227

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140218

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140303

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5505063

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151