JP2011100700A - 冷陰極放電ランプ装置及び発光装置 - Google Patents

冷陰極放電ランプ装置及び発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】冷陰極放電ランプの放電電流を増加して光出力を大きくすることができるとともに、消費電力の軽減が可能であり、また、小形化を実現できる冷陰極放電ランプ装置及びこの冷陰極放電ランプ装置を用いた発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、内部に希ガス及び水銀が封入され、内周面に蛍光体層4が形成された透光性の気密バルブ2と、この気密バルブ2の両端部にそれぞれ封装され、一端側を開口部5aとし他端側を底端部5bとし前記開口部5aから底端部5bに向かう軸方向の長さ寸法が5mm以上に形成されたNbを含有するNi合金からなる筒状電極5及びこの筒状電極5の前記底端部5bに接続された電極リード線6を有する電極部材3とを備えた冷陰極放電ランプ1と、この冷陰極放電ランプ1を管電流10mA以上の電流で点灯させる点灯装置14と、を具備している冷陰極放電ランプ装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、放電電流を増加して光出力を大きくすることができる冷陰極放電ランプ装置及びこの冷陰極放電ランプ装置を用いた発光装置に関する。
近時、液晶表示装置、例えば、大型の液晶テレビ等には、バックライトが使用されており、その光源として冷陰極放電ランプが用いられている。このバックライトは、ケース内部に複数本の冷陰極放電ランプを配列し、放電ランプからの光を表示面側へ向けて照射するようになっている。そして、大型の液晶テレビ等の需要の増大とともに、液晶表示装置の製造コストの低減が求められ、その中のひとつの低減要素として冷陰極放電ランプの使用本数の削減が取りあげられている。
しかしながら、単に、冷陰極放電ランプの使用本数を削減した場合には、液晶表示装置の発光面の所定の輝度を確保することができず、輝度を確保するには、冷陰極放電ランプ単体の光出力の増加が必要となる。
この冷陰極放電ランプ単体の光出力を増加するためには、放電ランプの放電電流を増加することが考えられるが、この場合、消費電力の増大とともに、電極が大形化してしまうという問題が生じる。
従来、この種、冷陰極放電ランプにおいて、電極のスパッタ率を低下させ、ランプの寿命を向上させるために、電極をNb又はTaを含有するNi合金で形成するものが提案されている(特許文献1参照)。
特開2004−235073号公報
しかしながら、特許文献1に示されたものは、放電ランプ単体の光出力を増加するために、放電ランプの放電電流を増加するという点に着目したものではなく、また、放電電流を増加した場合に消費電力を軽減するというものでもない。
本発明は、冷陰極放電ランプの放電電流を増加して光出力を大きくすることができるとともに、消費電力の軽減が可能であり、また、小形化を実現できる冷陰極放電ランプ装置及びこの冷陰極放電ランプ装置を用いた発光装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の冷陰極放電ランプ装置は、内部に希ガス及び水銀が封入され、内周面に蛍光体層が形成された透光性の気密バルブと、この気密バルブの両端部にそれぞれ封装され、一端側を開口部とし他端側を底端部とし前記開口部から底端部に向かう軸方向の長さ寸法が5mm以上に形成されたNbを含有するNi合金からなる筒状電極及びこの筒状電極の前記底端部に接続された電極リード線を有する電極部材とを備えた冷陰極放電ランプと、この冷陰極放電ランプを管電流10mA以上の電流で点灯させる点灯装置と、を具備していることを特徴とする。
本発明及び以下の発明において、特に指定しない限り用語の技術的意味及び解釈は次による。気密バルブは、直線状、U字状、L字状やコ字状等のものを適用でき、格別その形状が限定されるものではない。
請求項2に記載の冷陰極放電ランプ装置は、請求項1に記載の冷陰極放電ランプ装置において、前記筒状電極は、Nbを1重量%〜10重量%含有するNi又はNi及び不可避的不純物を含むNi合金であることを特徴とする。
不可避的不純物とは、筒状電極を構成する原料中に存在したり、製造工程中において不可避的に混入したりする微量の不純物を意味している。
請求項3に記載の冷陰極放電ランプ装置は、請求項1又は請求項2に記載の冷陰極放電ランプ装置において、前記点灯装置は、冷陰極放電ランプを管電流14mA以上の電流で点灯させることを特徴とする。
請求項4に記載の発光装置は、装置本体と、この装置本体に配設された請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の冷陰極放電ランプ装置と、を具備していることを特徴とする。
発光装置は、ディスプレイ装置やいわゆる空間を照らす照明器具を含む概念である。例えば、液晶パネルのバックライト装置等の各種ディスプレイ装置、また、屋内又は屋外で使用される照明器具に適用可能である。
請求項1に記載の発明によれば、冷陰極放電ランプの放電電流を増加して光出力を大きくすることができるとともに、消費電力の軽減が可能であり、また、小形化を実現できる冷陰極放電ランプ装置を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、仕事関数を低減できるとともに、加工性の良好な筒状電極を得ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、管電圧の低下の飽和傾向が高まっても、さらに管電圧を低下させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、上記各請求項に記載の発明の効果を奏する発光装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る冷陰極放電ランプを示す断面図である。 同冷陰極放電ランプ装置における電極材質とV−I特性(管電圧−管電流特性)との関係を示すグラフである。 同筒状電極における電極材質と光電子スペクトルとの関係を示すグラフである。 同発光装置としてのバックライト装置を示す分解斜視図である。
以下、本発明の実施形態に係る冷陰極放電ランプ装置について図1乃至図3を参照して説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
図1の冷陰極放電ランプを示す断面図において、本実施形態の前提となる冷陰極放電ランプについて説明する。冷陰極放電ランプ1は、透光性の気密バルブとしてガラスバルブ2と電極部材3とを備えている。ガラスバルブ2は、半硬質ガラスから形成されている。なお、半硬質ガラスに限らず、硬質ガラス、軟質ガラス等を適用でき、また、硼・珪酸ガラス、ソーダガラス等、ガラスの組成も格別限定されるものではない。
この冷陰極放電ランプ1は、液晶表示装置のバックライトの光源として用いられる場合、ガラスバルブ2の外径が品種ごとにφ1.5mm〜φ5.0mmの範囲内で用意され、液晶表示装置の仕様に応じて使い分けられる。そして、ガラスバルブ2の長さも150mm〜1500mm程度のものが用意されており、その寸法は、バックライトの大形化、大光量化に伴って細径化、長尺化の傾向にある。ガラスバルブ2は両端が封止されて内部に気密空間が形成されており、Ar、Xe、Ne等の希ガス及び水銀蒸気が封入されている。また、ガラスバルブ2の内周面には、蛍光体層の蛍光膜4が形成されている。蛍光膜4は、ハロリン酸塩蛍光体や希土類金属蛍光体等が適用され得る。
電極部材3は、筒状電極5と、この筒状電極5に給電を行うために接合される電極リード線6とを備えている。電極5は、ガラスバルブ2の内径よりもやや小さい外径を有し、一端側を開口部5aとし他端側を底端部5bとするカップ形状であり、このようにカップ形状にすることによって、ホローカソード効果により陰極降下電圧を低下させることができる。そして、カップ形状の電極5の開口部5aから底端部5bに向かう軸方向の長さ寸法が5mm以上、好ましくは10mm以上に形成されている。また、電極5は、Nbを1重量%〜10重量%含有するNi又はNi及び不可避的不純物を含むNi合金からなり、板材をプレス加工又は線材を冷間鍛造加工することにより形成されている。なお、不可避的不純物とは、電極5を構成する原料中に存在したり、製造工程中において不可避的に混入したりする微量の不純物を意味している。
電極リード線6は、封着部材6aとリード部材6bとから構成されており、封着部材6aの先端側は、電極5の底端部5bに抵抗溶接又はレーザービーム溶接等によって接合されている。なお、この接合部に、適宜溶着バインダを設けるようにしてもよい。また、封着部材6aとリード部材6bとは、溶着によって接合されている。封着部材6aには、Kov(コバール)線が用いられており、リード部材6bには、ニッケル鉄合金の周りを銅で被覆したジュメット線が用いられている。
このように構成された電極部材3は、ガラスバルブ2の両端部に一対封装されており、カップ形状の電極5の開口部5aを互いに対向させて配置され、ガラスバルブ2の両端部から電極リード線6が導出されている。また、電極部材3のガラスバルブ2への封装にあたっては、封装に先立って封着部材6aにビードガラス7が溶着される。そして、電極部材3をガラスバルブ2に接合する際は、ビードガラス7とガラスバルブ2の端部とを溶融して封着する。なお、本実施形態のガラスバルブ2は、その外形の形状が直線状の態様であるが、これ以外にもU字状、L字状やコ字状等のものを適用できる。
次に、本発明者は、上記のような冷陰極放電ランプ1における電極5の材質と放電特性との関係について測定を行い、調査分析を試みた。放電特性としては、管電流と管電圧とを指標としてとりあげた。ここで、管電流は、ランプ1の光出力の特性を代替するものであり、管電圧は、ランプ1の消費電力を現すものとなる。
筒状電極5として(a)外径寸法φ2.1mm、開口部5aから底端部5bまでの軸方向の長さ寸法L5mmのNiからなる電極、同様に、(b)外径寸法φ2.1mm、軸方向の長さ寸法L5mmの5重量%のNbを含有するNi合金からなる電極、(c)外径寸法φ2.7mm、軸方向の長さ寸法L20mmのNiからなる電極、(d)外径寸法φ2.7mm、軸方向の長さ寸法L20mmの5重量%のNbを含有するNi合金からなる電極の4種類の筒状電極5をプレス加工で成形し、この筒状電極5に外径寸法0.8mm、長さ寸法10mmのKov線の封着部材6aを接合し、電極部材3を構成した。これら電極部材3を一対の電極5の対向する開口部5a間の距離を160mmとし、外径寸法φ4mm、内径寸法φ3mmのガラスバルブ2の両端部に封装し、内部に希ガスとしてNe−Arを3kPa封入して冷陰極放電ランプ1を製作した。そして、これら冷陰極放電ランプ1を点灯装置に接続して冷陰極放電ランプ装置を構成し、ランプ1に電力を供給し点灯して管電流と管電圧について測定を行った。
その結果は、図2の電極材質とV−I特性のグラフに示すとおりである。図中、縦軸は、管電圧(V)を示し、横軸は、管電流(mA)を示している。例えば、管電流が5mAの場合は、電極(a)外径寸法φ2.1mm、軸方向の長さ寸法L5mmのNiからなる電極では、管電圧が418V、電極(b)外径寸法φ2.1mm、軸方向の長さ寸法L5mmの5重量%のNbを含有するNi合金からなる電極では、管電圧が376V、電極(c)外径寸法φ2.7mm、軸方向の長さ寸法L20mmのNiからなる電極では、管電圧が376V、電極(d)外径寸法φ2.7mm、軸方向の長さ寸法L20mmの5重量%のNbを含有するNi合金からなる電極では、管電圧が341Vである。
この測定結果から、同一寸法の電極、すなわち、電極(a)及び(b)、電極(c)及び(d)においては、Nbを含有するNi合金の電極がNiの電極に対し、管電圧が低く、電極の陰極降下電圧が電極の材質に左右されること、また、同じ材質の電極、すなわち、電極(a)及び(c)、電極(b)及び(d)においては、電極の寸法の大きい方が管電圧が低く、電極の寸法にも左右されることが分かる。
さらに、管電流を増加させ測定を行ったところ、電極(a)外径寸法φ2.1mm、軸方向の長さ寸法L5mmのNiからなる電極では、管電流7mA付近からグロー放電が電極のカップ形状の外表面まで発生し、8〜9mAでは、放電がほとんど電極のカップ形状の外表面で行われ、電極が赤熱化する異常放電の状態となった。
これに対し、電極(b)外径寸法φ2.1mm、軸方向の長さ寸法L5mmの5重量%のNbを含有するNi合金からなる電極では、放電が電極のカップ形状の外表面まで発生することがなく、管電流20mAにおいてもホローカソード効果によって電極のカップ形状の内面から放電が行われることが確認できた。
この結果から、Niからなる電極より、Nbを含有するNi合金からなる電極の方が電子放出性が良好で、仕事関数が低く、電極の単位表面積あたりの電子放出量が多いことが分かる。
また、同様に、電極(c)外径寸法φ2.7mm、軸方向の長さ寸法L20mmのNiからなる電極と、電極(d)外径寸法φ2.7mm、軸方向の長さ寸法L20mmの5重量%のNbを含有するNi合金からなる電極との比較においても、電極(d)、つまり、Nbを含有するNi合金からなる電極の方が管電圧が低く、その優位性は変わらない。加えて、電極(c)及び(d)が電極(a)及び(b)に対して、寸法が大きく、その表面積が大きいため相対的に管電圧が低い値となっている。
管電流を増加させていくと、電極(a)及び(c)のNiからなる電極では、管電流の増加に従い管電圧の低下は飽和傾向にある。電極(a)では、前記のように異常放電の発生とともに、管電圧は上昇している。電極(c)では、管電流10mA付近から飽和してきており、管電流14mA以上では、ほとんど飽和状態となっている。一方、電極(b)及び(d)のNbを含有するNi合金の電極では、管電流を増加させても管電圧の低下に飽和傾向は現れず、管電流10mA付近より、さらに管電圧の低下度合いが大きくなる現象がみられる。
このような測定結果から、管電流を15mA以上の大きな電流とした場合、電極(b)外径寸法φ2.1mm、軸方向の長さ寸法L5mmのNbを含有するNi合金からなる電極は、寸法が小さいながら、電極(c)外径寸法φ2.7mm、軸方向の長さ寸法L20mmのNiからなる電極と同等、又はそれ以上の管電圧の特性を示しており、電極(b)が電極(c)の代替として適用可能であることが分かる。
したがって、大きな管電流を流す場合、Nbを含有するNi合金の電極5を用いることにより、電極の寸法を小さくすることができ、これによって、冷陰極放電ランプ1における非発光部の長さ寸法をその分短くすることが可能で、換言すれば、発光部の長さ寸法を長くすることが可能で、光出力の増加と冷陰極放電ランプ、冷陰極放電ランプ装置、ひいては発光装置の小形化を達成することができる。
以上のようにNbを含有するNi合金の電極5を用いることにより、Niからなる電極では管電圧の低下が飽和状態となる管電流においても、管電圧を低下させることができ、消費電力を軽減することが可能で、また、装置の小形化を実現することができる。
具体的には、Nbを含有するNi合金の電極5は、上述のようにNiからなる電極を用いたときに、管電圧が飽和してくる管電流10mA以上の電流を流す場合に適用するのが好ましい。さらには、飽和傾向の高い14mA以上又は15mA以上の電流を流す場合に適用するのが効果的である。特に、管電流を15mA以上の電流とした場合、電極(b)が電極(c)の代替として適用可能であり、Nbを含有するNi合金の電極(b)は、Niからなる電極(c)に対し、軸方向の長さ寸法Lで1/4、表面積で約1/5のサイズで代替可能となる。
また、電極5の寸法は、上記の測定結果に従えば、外径寸法は、φ2.0mm〜φ3.0mm、開口部5aから底端部5bまでの軸方向の長さ寸法Lは、5mm〜30mmに設定するのが好適である。長さ寸法Lが30mmを超えると、放電ランプ1の非発光部が長くなり、放電ランプ1の全長に対する非発光部の長さの割合が増し、光出力の減少や、例えば、発光装置を構成する際、デザイン上の制約を受けることとなるからである。
続いて、Nbを含有するNi合金の電極5について、最適なNbの添加量を追及するため以下の実験を行い分析した。
(実験例1)外径寸法φ2.7mm、軸方向の長さ寸法L20mmからなる電極において、(a)純Ni、また、(b)Nbの添加量を1重量%、(c)2.5重量%、(d)5重量%、(e)7.5重量%、(f)10重量%、(g)12.5重量%としたNb含有のNi合金電極を各々試験溶解炉で溶解して、それぞれ総重量30gのボタン型合金を作製した。これらのボタン型合金より厚さ寸法1mmの(a)〜(g)の試験片を切り出し、研磨した後、それぞれの試験片の仕事関数を測定した。その結果は、図4の電極材質と光電子スペクトルのグラフに示すとおりである。
金属の表面に一定のエネルギーをもった光を照射すると、そのエネルギー量に応じた電子が金属の表面から放出される。電子が放出される最小のエネルギーがその金属が有する仕事関数と一致する。そのため、仕事関数を測定する手段として、光電子スペクトル測定が用いられ、この測定方法に基づいて実験を行った。
図4において、横軸は、照射された光のもつエネルギーであり、縦軸は、光の照射で試験片の表面から放出された電子の数で、絶対数を自然対数で除した数値で表している。仕事関数の値は、それぞれの曲線の接線と横軸が交わった点から求めることができる。その結果、具体的には下表のとおりとなった。
Figure 2011100700
試験片(a)〜(g)による仕事関数の測定の結果、Niに比べNb含有のNi合金は、いずれも仕事関数がNiより低下している。Niの仕事関数が4.73eVであるのに対し、Nbを1重量%含有するNi合金では、4.63eV、Nbを2.5重量%以上含有するNi合金では、4.53eVとなっている。また、Nbを2.5重量%以上含有する、すなわち、5重量%、7.5重量%、10重量%、12.5重量%含有するNi合金の仕事関数は、同一の値を示しており、少ないNbの含有量で仕事関数は飽和することが確認できた。
これらの結果から、Nbを含有するNi合金におけるNbの添加量は、1重量%以上あれば仕事関数を低下させることができ、より好ましくは、Nbの添加量を2.5重量%とすることにより、一層低い仕事関数が得られることが判明した。
以上の結果は、上述した図2の電極材質とV−I特性(管電圧−管電流特性)のグラフで示した管電圧の低下傾向と一致している。仕事関数の低下が電極5の陰極降下電圧の減少となり、管電圧低下となっている。これらによって、電極(a)及び(b)、電極(c)及び(d)の比較において、電極(a)と(c)の管電圧が飽和領域に到達するまでの電極(b)と(d)との管電圧の差が説明可能となる。しかしながら、管電流を増加して大きな電流とした場合、電極(a)及び(c)の管電圧が飽和状態となるにもかかわらず、電極(b)及び(d)の管電圧は飽和することなく、さらに低下していく現象を示すことが説明できない。この現象は、次のように推測される。
図2に示すように、冷陰極放電ランプのV−I特性で管電圧が一旦飽和領域に到達した後、さらに管電流の増加に伴って管電圧が低下することは、電極の仕事関数が変化したと考えることができる。管電流を増加していくと、電極に衝突する電子、イオンの数が増加し、電極の温度は上昇してくる。同時に、仕事関数で決まる電子放出性でV−I特性における飽和現象が出るため、従来は、この飽和現象に制限されて冷陰極放電ランプの仕様が決定されていた。本実施形態のNb含有のNi合金からなる電極では、電流を多く流し管電流を増加させていくと飽和現象が出現する領域を超えて、さらに管電圧が低下する。このことから仕事関数が温度依存性を有しているように考えられる。つまり、温度が上昇すると、仕事関数が低下してくるものと推測される。
(実験例2)上記実験例1によって、Nb含有のNi合金の優位性が確認できたことから、Nbの添加量が5重量%以上の4つの合金試料、すなわち、Nbの添加量が5重量%、7.5重量%、10重量%、12.5重量%の各合金試料で板材加工と筒状電極加工とを試みた。
その結果、Nbの添加量が12.5重量%の試料では、筒状電極加工において、破断が多発し加工が困難であった。また、Nbの添加量が10重量%の試料でも約6%の破断が発生した。この破断の原因を調べた結果、Nb金属の特性でもある脆化が板材加工時に発生していることが確認できた。
したがって、実験例1によって、Nbを含有するNi合金において、仕事関数を低下させるには、Nbの添加量を1重量%以上とすればよいことが確認できたが、筒状電極加工の際、Nbの添加量が12.5重量%以上では加工が困難になることが判明した。よって、仕事関数及び加工性の両面から、Nbの添加量は、1重量%〜10重量%が好ましいとの知見を得るに至った。
次に、本発明の発光装置の実施形態について図4を参照して説明する。図は、発光装置として直下型のバックライト装置の分解斜視図を示している。このバックライト装置は、背面側ケース10、前面側ケース11、拡散板12、前記冷陰極放電ランプ1、点灯装置14を備えている。なお、冷陰極放電ランプ1と点灯装置14とで冷陰極放電ランプ装置が構成されている。
背面側ケース10は、金属やポリカーボネート等によって開口面を有する薄型の箱状に形成され、複数の冷陰極放電ランプ1が両端側をホルダーに支持され、カバー部材13によって覆われて配設されている。また、背面側ケース10の裏側には、冷陰極放電ランプ1に10mA以上、効果的には14mA以上又は15mA以上の管電流を流し点灯制御する点灯装置14が取付けられている。
前面側ケース11は、開口面を有する枠状に形成されており、この開口面から冷陰極放電ランプ1の光が放射されるようになっている。また、背面側ケース10の開口面と前面側ケース11の開口面との間には、板状の拡散板12が配置されている。拡散板12は、冷陰極放電ランプ1から放射される光のむらを低減する機能を有するものである。
このような構成によれば、冷陰極放電ランプ1の放電電流を多く流し、光出力を増大させることができるため、放電ランプ1の使用本数を削減することが可能となる。また、消費電力を軽減することができる。さらに、Niからなる電極を用いる場合に対し、Nbを含有するNi合金からなる電極5を用いることにより、電極5における非発光部の長さ寸法を短くすることができ、前面側ケース11の開口面から、開口面の開口領域を有効に利用して光を照射させることが可能となる。さらにまた、電極5における非発光部の長さ寸法を短くすることができるので、発光装置の小形化を実現することができる。
なお、本発明の発光装置は、ディスプレイ装置やいわゆる空間を照らす照明器具を含む概念である。例えば、液晶パネルのバックライト装置等の各種ディスプレイ装置、また、屋内又は屋外で使用される照明器具に適用可能である。なお、バックライト装置にあっては、直下方式、サイドライト方式等のいずれでも適用可能である。このような発光装置によれば、上記実施形態の効果を奏する発光装置を提供できる。
1・・・冷陰極放電ランプ、2・・・透光性の気密バルブ(ガラスバルブ)、
3・・・電極部材、4・・・蛍光体層、5・・・筒状電極、
5a・・・開口部、5b・・・底端部、6・・・電極リード線、
14・・・点灯装置

Claims (4)

  1. 内部に希ガス及び水銀が封入され、内周面に蛍光体層が形成された透光性の気密バルブと、この気密バルブの両端部にそれぞれ封装され、一端側を開口部とし他端側を底端部とし前記開口部から底端部に向かう軸方向の長さ寸法が5mm以上に形成されたNbを含有するNi合金からなる筒状電極及びこの筒状電極の前記底端部に接続された電極リード線を有する電極部材とを備えた冷陰極放電ランプと、
    この冷陰極放電ランプを管電流10mA以上の電流で点灯させる点灯装置と、
    を具備していることを特徴とする冷陰極放電ランプ装置。
  2. 前記筒状電極は、Nbを1重量%〜10重量%含有するNi又はNi及び不可避的不純物を含むNi合金であることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電ランプ装置。
  3. 前記点灯装置は、冷陰極放電ランプを管電流14mA以上の電流で点灯させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷陰極放電ランプ装置。
  4. 装置本体と、
    この装置本体に配設された請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の冷陰極放電ランプ装置と、
    を具備していることを特徴とする発光装置。
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