ところで、特許文献1に開示されているような鋼板ではなく、超音波探傷装置の検査対象としては、例えば航空機部品としての、複合材製の部品や金属接着された部品も存在しており、これらの部品については、超音波探傷検査によって、例えば接着不良等の欠陥を検出することになる。こうした部品は、多種多様な形状を有しているため、前記特許文献1に開示されているような超音波探傷装置を、そのまま利用することができない。
そこで、こうした様々な種類の部品について超音波探傷を行う場合には、被検査物を所定の検査位置に固定すると共に、探傷子が取り付けられたロボットアームを動かして、その固定された被検査物に対して相対的に、探傷子を、互いに直交する主走査方向及び副走査方向に走査するようにして、その被検査物についてのCスキャン探傷検査を行うようにしている。しかしながら、こうした検査方法では、1つの被検査物についての超音波探傷検査が終わる毎に、被検査物の取り外し及び新たな被検査物の固定という段取り作業が必要であり、複数の被検査物の検査を連続して行おうとしたときには、段取り作業が、1つの被検査物の検査に要する時間を空けて断続的に必要になる。このため、作業者は長時間拘束されることになり、この点で、作業効率が悪いという不都合がある。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の被検査物について超音波探傷検査を行う場合に、その作業効率を向上させることにある。
ここに開示する超音波探傷装置は、被検査物をパレット上に載置すると共に、そのパレットを所定の搬送方向に間欠搬送しながら、探傷子を、その搬送方向に直交する主走査方向に走査して被検査物に対し相対的に探傷子を2次元走査することにより、被検査物の固定や固定した被検査物の取り外しといった作業を無くして、複数の被検査物について行う超音波探傷検査の作業効率を向上させるようにした。
この超音波探傷装置は、被検査物が載置されるパレットと、前記被検査物が載置されたパレットを、所定の水平方向に延びる検査搬送路上で間欠搬送する搬送手段と、前記検査搬送路の途中位置に配設されて、前記搬送手段によって搬送される前記被検査物に対し超音波探傷検査を行う探傷手段と、を備え、前記探傷手段は、前記被検査物に向かって超音波を送信する送信子と、前記被検査物からの超音波を受信する受信子とを含んで構成される探傷子と、前記パレットの間欠搬送に同期して、前記探傷子を前記搬送方向に直交する主走査方向に往復走査する走査機構と、を有している。
この構成によると、被検査物をパレットに載置し、そのパレットを所定の水平方向に延びる検査搬送路上で間欠搬送する一方で、検査搬送路の途中に配置した探傷手段により、探傷子を搬送方向に直交する主走査方向に往復移動することにより、探傷子は、被検査物に対して相対的に、主走査方向及び搬送方向(副走査方向)のそれぞれに走査されることになり、前記被検査物に対しCスキャン探傷法による超音波探傷が行われる。
この構成では、被検査物が載置されたパレットを、順次、検査搬送路に沿って搬送することによって、複数の被検査物を、連続的に検査することが実現し得る。このため、従来のように、1つの被検査物に対する検査が終了する度に、被検査物の取り外し及び新たな被検査物の固定といった段取り作業は不要になるため、作業者の拘束時間は短縮され、検査作業の作業効率が向上し得る。
また、被検査物をパレット上に載置して、そのパレットを搬送するため、被検査物の形状等が互いに異なっていても、被検査物の搬送を連続して行い得る。さらに、1つのパレット上に、複数の被検査物を載置し、それらの1つ1つについて超音波探傷検査を実行することも可能である。このため、互いに形状等の異なる複数の被検査物についての超音波探傷検査を連続的に行う場合に、作業効率が向上し得る。
前記被検査物は概略板状であり、前記探傷手段は、前記概略板状の被検査物を間に挟むように、前記パレットの搬送方向に直交する厚み方向に対向配置されると共に、それぞれ前記被検査物に向かって接触媒質を噴射する一対のノズルをさらに備え、前記一対のノズルは、前記走査機構によって前記主走査方向に往復走査され、前記送信子は、前記一対のノズルの一方に内蔵され、前記受信子は、前記一対のノズルの他方に内蔵されている、としてもよい。
一対のノズルのそれぞれから被検査物に向かって接触媒質(例えば水)が噴射されることにより、被検査物と各ノズルとの間には水柱が形成される。一方のノズルに内蔵された送信子から送信された超音波は、この水柱内を伝播して被検査物に至り、他方のノズルに内蔵された受信子は、被検査物から水柱内を伝播する超音波を受信する。
前記搬送手段は、前記探傷手段の配設位置よりも前記検査搬送路の上流側に設けられ、前記探傷手段による検査前の被検査物が載置された複数のパレットを保持すると共に、前記保持しているパレットを前記検査搬送路上に順次供給する上流側ストック部をさらに有している、としてもよい。
搬送手段は、上流側ストック部に保持されているパレットを順次、探傷手段に搬送することになるため、上流側ストック部に保持されている複数のパレットそれぞれに載置されている被検査物に対する探傷検査が、順次、自動的に行われることになる。従って作業者は、それぞれ被検査物が載置された複数のパレットを、上流側ストック部に予めセットするという前作業を、超音波探傷検査の開始前に集中して行えばよく、作業者の拘束時間がさらに短くなって検査効率が大幅に向上し得る。
前記搬送手段は、前記探傷手段の配設位置よりも前記検査搬送路の下流側に設けられ、前記探傷手段による検査後の被検査物が載置されたパレットを前記検査搬送路上から順次除去すると共に、前記除去したパレットを複数保持する下流側ストック部をさらに有している、としてもよい。
探傷手段によって検査された後の被検査物が載置されたパレットは、検査搬送路における下流側において、下流側ストック部により、その検査搬送路上から順次除去されて保持されるため、探傷手段によって1つのパレットに対する超音波探傷検査が終了する度に、作業者が、検査搬送路上からパレットを除去して、そのパレットから被検査物を降ろすといった後作業を行う必要がなくなる。つまり、複数の被検査物(パレット)に対する超音波探傷検査が全て終了し、その複数の被検査物が全て下流側ストック部に保持された時点で、前記の後作業をまとめて行えばよく、作業者の拘束時間がさらに短縮して検査効率が大幅に向上し得る。
前記搬送手段は、前記探傷手段の配設位置よりも前記検査搬送路の上流側に設けられ、それぞれ前記被検査物が載置された複数のパレットを並べて保持すると共に、前記並んで保持しているパレットを移動させることによって、当該パレットを前記検査搬送路上に順次供給する上流側ストック部と、前記探傷手段の配設位置よりも前記検査搬送路の下流側に設けられ、それぞれ前記被検査物が載置された複数のパレットを並べて保持すると共に、前記並んで保持しているパレットの移動を伴いながら、前記検査搬送路上から前記パレットを順次除去する下流側ストック部と、前記上流側ストック部と下流側ストック部とを互いに連結すると共に、前記下流側ストック部に保持されているパレットを、前記上流側ストック部へと移動させるための循環搬送路と、をさらに有し、前記搬送手段は、前記検査搬送路、下流側ストック部、循環搬送路及び上流側ストック部を通じて前記パレットを循環させるように構成されている、としてもよい。
こうすることで、前記と同様に、上流側ストック部に複数のパレットを予めセットしておくことによって、その複数のパレットに対する超音波探傷検査が順次、自動的に行われると共に、超音波探傷検査の終了後には、その複数のパレットが順次、検査搬送路から除去されて、下流側ストック部に保持される。その結果、作業者の拘束時間が大幅に短縮される。また、上流側ストック部と下流側ストック部とを互いに連結する循環搬送路によってパレットを循環可能にすることで、そうした循環構成を有しない超音波探傷装置と比較したときに、セット可能なパレット数が同じでも、装置は小型化し得る。
前記搬送手段は、前記検査搬送路の端部に対して着脱可能に取り付けられて、当該検査搬送路を延長させる延長搬送路をさらに有し、前記搬送手段は、前記延長搬送路が取り付けられた状態では、相対的に長い長尺パレットを、前記延長搬送路及び検査搬送路上で搬送するように構成されている、としてもよい。
長尺パレットには、長さが比較的長い被検査物を載置することが可能であり、その長尺の被検査物に対する超音波探傷検査が実現し得る。つまり、長尺パレットを利用可能に構成することは、当該超音波探傷装置において探傷検査が可能な被検査物の形状の自由度を高める。
超音波探傷装置は、前記探傷手段による検査結果を、前記被検査物毎に記憶する記憶手段をさらに備えている、としてもよい。
被検査物毎に検査結果が記憶されていることで、作業者は、超音波探傷検査の進捗状況とは無関係に、任意の時間に検査結果の確認や解析を行い得る。その結果、作業者の拘束がさらに緩和される。
以上説明したように、この超音波探傷装置によると、被検査物が載置されたパレットを、検査搬送路上で間欠搬送する一方で、探傷子を主走査方向に往復走査することによって、複数の被検査物を、連続的に検査することが実現し得るため、従来のように1つの被検査物についての検査が終了する度に段取り作業を行う必要がなくなり、作業者の拘束が緩和されて、複数の被検査物に対して実行する超音波探傷検査の検査効率を向上させることができる。
以下、超音波探傷装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1,2は、超音波探傷装置1の全体構成を示しており、この超音波探傷装置1は、大別して、上流側ストック部2、下流側ストック部3、及び、その上流側ストック部2と下流側ストック部3との間に配置された探傷手段4を備えて構成されている。尚、図1は主に、超音波探傷装置1の動作を説明するための図であり、理解容易のために、構成部品の一部の図示を省略している。また、以下においては、説明の便宜上、図1,2における紙面右手前を前、左奥を後、右奥を右、左手前を左と呼ぶこととする。
超音波探傷装置1は、この例では、例えば複合材製の航空機部品や、金属接着された航空機部品等を被検査物9とし、各被検査物9の接着不良等の欠陥を検出する。ここで、被検査物9は、図1にも例示するように、その形状が異なる複数種の部品を含むものの、これらの被検査物9は全て、その縦横の長さよりも、厚みが薄い概略板状を有している。この超音波探傷装置1では、概略板状の被検査物9は全て、パレット5上に載置され、超音波探傷装置1は、このパレット5上に載置された被検査物9に対し探傷子を2次元走査することによって、Cスキャン探傷法による超音波探傷検査を実施する。尚、超音波探傷装置1の検査対象は、特に限定されるものではなく、パレット5の上に載置可能なものであれば、どのようなものであってもよい。
この超音波探傷装置1において最も特徴的な点は、複数の被検査物9に対する超音波探傷検査を自動的に連続して行い得る点にある。このことにより、この超音波探傷装置1は、作業者の拘束時間を短縮し、検査効率を向上させる。以下、超音波探傷装置1の各部の構成について、詳細に説明する。
上流側ストック部2は、フレーム21と、パレット5を下降させる下降装置22と、パレット5を探傷手段4に搬送するための上流側検査搬送路23と、下流側ストック部3から上流側ストック部2へとパレット5を搬送するための下流側循環搬送路24と、を備えて構成されている。フレーム21は、前後左右に所定間隔を空けて立設された4つの脚部211と、その各脚部211の上端を互いに連結する前後左右の梁部212とを備えて構成され、下降装置22は、前側及び後側の梁部212のそれぞれに対し、左右方向に所定の間隔を空けて2つ、取り付け支持されている。
各下降装置22は、無端体(チェーン又はベルト)221と、この無端体221が巻き掛けられる一対の回り車222(スプロケット又はプーリ)とを備えて構成され、一対の回り車222の内の一方は、梁部212に対し、左右方向に延びる軸回りに回転可能となるように支持される一方、他方の回り車222は、フレーム21の下端部に、左右方向に延びる軸回りに回転可能となるように配設されている。これにより無端体221は、フレーム21の前側及び後側のそれぞれにおいて、上下方向に延びるように配設されて上下方向に走行するように構成される。各無端体221には、その長手方向に所定間隔を空けて複数の爪223が取り付けられており、この各爪223は、無端体221の走行に伴い、上下方向に移動をする。各爪223は、水平に配置されているパレット5に係合してパレット5を支持するための爪であり、この上流側ストック部2においては、4つの下降装置22が互いに同期して駆動することによって、フレーム21の内方側に配置される爪223が下向きに移動し、それによって、4つの爪223によって水平に支持されているパレット5が下降するように構成されている。ここで、上流側ストック部2では、各下降装置22において、フレーム21の内方側で6つの爪223が上下方向に並んで配設されるように構成されており、これによって、上流側ストック部2では、最大6個のパレット5を上下方向に並べて保持することが可能に構成されている(つまり、6段に構成されている)。
上流側検査搬送路23は、パレット5を探傷手段4に搬送するための搬送路を構成する部分であり、フレーム21の前側及び後側のそれぞれにおいて、左右に配置された脚部211の下端部同士を互いに連結する連結支持部231と、当該連結支持部231に対して取り付け支持された複数の搬送ローラ232と、を備えて構成されている。尚、前側に配設された連結支持部231に支持される搬送ローラ232は、当該連結支持部231の陰になるため、図面上には現れていない。搬送ローラ232は、連結支持部231におけるフレーム21の内方側に、左右方向に等間隔を空けて配設されており、各搬送ローラ232は、前後方向に延びる軸回りに回転可能に、連結支持部231に取り付けられている。各搬送ローラ232は、パレット5が載置された状態で回転することによりこのパレット5を水平方向に搬送するためのローラであり、これにより、上流側検査搬送路23は、パレット5を、探傷手段4に搬送するための検査搬送路の一部を構成することになる。また、前記下降装置22の爪223に支持されているパレット5が最下段に位置したときには、そのパレット5は上流側検査搬送路23の搬送ローラ232上に載置されることになる。このため、この上流側検査搬送路23は、上流側ストック部2において、パレット5を保持する最下段の部分も構成することになる。
下流側循環搬送路24は、上流側検査搬送路23と同様の構成を有しており、フレーム21の前側及び後側のそれぞれにおいて、左右に配置された脚部211の上端部同士を互いに連結する連結支持部241と、当該連結支持部241に対して所定間隔を空けかつ、それぞれ前後方向に延びる軸回りに回転可能に取り付け支持された複数の搬送ローラ242と、を備えて構成されている。各搬送ローラ242は、パレット5が載置された状態で回転することによりこのパレット5を水平方向に搬送するローラであり、これにより、下流側循環搬送路24は、パレット5を、下流側ストック部3から上流側ストック部2に移動させるための循環搬送路の一部を構成することになると共に、上流側ストック部2において、パレット5を保持する最上段の部分も構成することになる。ここで、この下流側循環搬送路24を構成する各搬送ローラ242は、詳細な図示は省略するが、下降装置22の駆動時には下降するパレット5と干渉することを避けるべく退避位置に位置することが可能に構成されている。
下流側ストック部3は、上流側ストック部2と同様に、フレーム31と、パレット5を上昇させる上昇装置32と、探傷手段4からパレット5を搬送するための下流側検査搬送路33と、下流側ストック部3から上流側ストック部2へとパレット5を搬送するための上流側循環搬送路34と、を備えて構成されている。ここで、フレーム31、下流側検査搬送路33及び上流側循環搬送路34の各構成は、上流側ストック部2におけるフレーム21、上流側検査搬送路23及び下流側循環搬送路24の各構成と互いに同じであるため、対応する部分には対応する符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、各上昇装置32の構成も、その駆動方向が下降装置22の駆動方向とは逆で、下流側ストック部3においては、爪323によって水平に支持されたパレット5を上昇させることを除いて、下降装置22の構成と同じであるため、対応する部分には対応する符号を付して、その詳細な説明は省略する。下流側ストック部3は、上流側ストック部2と同様に、6個のパレット5を上下方向に並べて保持することが可能に構成されており、前記の検査搬送路上には、1個のパレット5しか置くことができないことから、この超音波探傷装置1は、最大で11個のパレット5をセットすることが可能に構成されている。尚、この例では、上流側ストック部2及び下流側ストック部3の段数をそれぞれ6段に構成しているが、超音波探傷装置1における段数は特に限定されず、適宜の段数を設定すればよい。
こうしてこの超音波探傷装置1では、上流側ストック部2の上流側検査搬送路23と、下流側ストック部3の下流側検査搬送路33とは、探傷手段4を挟んで互いに連続するように構成されている。この上流側検査搬送路23と下流側検査搬送路33とによって構成される検査搬送路上を、超音波探傷装置1の右側から左側に向かって(以下、この方向を搬送方向や副走査方向ともいう)パレット5が移動し、詳しくは後述するが、探傷手段4を通過する際に当該パレット5上に載置されている被検査物9に対する超音波探傷検査が実行されることになる。また、超音波探傷検査が完了したパレット5は、下流側ストック部3において、その最下段(つまり、下流側検査搬送路33)から最上段へと、上昇装置32の駆動に伴い順次上昇する。さらに、下流側ストック部3の最上段に位置するパレット5は、上流側循環搬送路34と下流側循環搬送路24とからなる循環搬送路によって、下流側ストック部3から上流側ストック部2へと移動をする。そうして、上流側ストック部2において、その最上段から最下段へと、下降装置22の駆動に伴い、パレット5は順次下降し得る。このように超音波探傷装置1は、検査搬送路、下流側ストック部3、循環搬送路、及び上流側ストック部2を通って、パレット5が循環可能に構成されている(図1も参照)。
ここで、図3を参照しながら、この超音波探傷装置1におけるパレット5の移動手順について説明する。先ず初期状態として、上流側ストック部2には、最下段から最上段までの各段に、順にA〜Fの6個のパレットがセットされ、下流側ストック部3には、最上段から2段目までの各段に、順にG〜Kの5個のパレットがセットされているとする。つまり、この例では、超音波探傷装置1に、最大数のパレットがセットされている。
超音波探傷装置1は、パレットAを検査搬送路23,33上で移動させ、このパレットAに対する超音波探傷検査を行う(工程P11参照)。パレットAに対する超音波探傷検査が完了し、当該パレットAが下流側ストック部3に到達すれば、上流側ストック部2の下降装置22を駆動して、B〜Fの各パレットを1段分だけ下降させる(工程P12参照)。これによって、上流側ストック部2の最上段は空きになることから、超音波探傷装置1は次いで、循環搬送路24,34を通じて、下流側ストック部3から上流側ストック部2にパレットGを移動させる(工程P13参照)。その後、下流側ストック部3の上昇装置32を駆動することによって、H〜K及びAの各パレットを1段分だけ上昇させる(工程P14参照)。こうして、工程P15に示すように、下流側ストック部3における最下段が空きになった初期状態と同様の状態となる。この工程P11〜P15を繰り返すことにより、A〜Kの11個のパレットそれぞれに対して超音波探傷検査を、順次行うことができる。
これに対し、図4は、図3とは異なるパレット5の移動手順を示している。この例は、上流側ストック部2の最上段及び下流側ストック部3の最下段を少なくとも含む、2つ以上の空きが存在している場合に行い得る移動手順である。ここでは初期状態として、上流側ストック部2には、最下段から5段目までの各段に、順にA〜Eのパレットがセットされ、下流側ストック部3には、最上段から2段目までの各段に、順にF〜Jのパレットがセットされているとする。
超音波探傷装置1は、パレットAを検査搬送路23,33上で移動させ、このパレットAに対する超音波探傷検査を行う。これと共に、超音波探傷装置1は、パレットFを循環搬送路24,34を通じて、下流側ストック部3から上流側ストック部2へと移動させる(工程P21参照)。パレットAに対する超音波探傷検査が完了して当該パレットAが下流側ストック部3に到達すると共に、パレットFが上流側ストック部2に到達すれば、超音波探傷装置1は、上流側ストック部2の下降装置22を駆動して、B〜Fの各パレットを1段分だけ下降させると共に、下流側ストック部3の上昇装置32を駆動して、G〜J及びAの各パレットを1段分だけ上昇させる(工程P22参照)。こうして、工程P23に示すように、上流側ストック部2における最上段と下流側ストック部3における最下段が空きになった初期状態と同様の状態となる。この工程P21〜P23を繰り返すことにより、A〜Jの10個のパレットそれぞれに対して超音波探傷検査を順次行うことができる。この図4の例のように2以上の空きがある場合には、パレットの移動手順を少なくして、複数のパレット5についての超音波探傷検査に要する時間を短縮することが可能になる。
パレット5は、図5,6に示すように、平面視で矩形状の枠体51と、その枠体51内に配設された複数本のワイヤ52とを備えて構成されている。枠体51の前後(超音波探傷装置1における前後に対応、図1等参照)の部分にはそれぞれ、その上面にラックギア53が設けられている。この各ラックギア53は、図6に示すように、ピニオンギア54と噛み合うギアであり、ピニオンギア54は、図1,2では図示を省略するが、上流側ストック部2における上流側検査搬送路23(各連結支持部231)付近、及び、下流側循環搬送路24(各連結支持部241)付近、並びに、下流側ストック部3における下流側検査搬送路33(各連結支持部331)付近、及び、上流側循環搬送路34(各連結支持部341)付近にそれぞれ設けられている。ラックギア53に噛み合った状態でピニオンギア54が回転駆動することにより、搬送ローラ232,242,332,342に支持されたパレット5が、検査搬送路23,33上、又は、循環搬送路24,34上を搬送されることになる(図6の実線及び二点鎖線の矢印参照)。ここで、探傷手段4による超音波探傷検査を行うべく、パレット5が検査搬送路23,33上を移動するときには、後述するように、当該パレット5は所定ピッチで間欠搬送される。
各ワイヤ52は、枠体51内において、その前後の部分を互いに連結するように前後方向に延びて配設されていると共に、左右方向に所定間隔を空けて配置されている。ワイヤ52は、被検査物9を支持することで、被検査物9をパレット5に載置するためのものである。このため、各ワイヤ52は、被検査物9を支持可能な剛性を有することが望ましいが、この各ワイヤ52は、詳しくは後述するが、被検査物9と、探傷子(受信子)との間に介在することになるため、ワイヤ52は超音波探傷検査に実質的な影響を及ぼさない程度の小径であることが望ましい。また、その間隔は適宜設定することが可能である。
探傷手段4は、探傷子を支持する支持体41と、支持体41を、パレット5の搬送方向(副走査方向)に直交する主走査方向(つまり、超音波探傷装置1における前後方向)に往復移動させる走査機構42と、を備えて構成されている。
支持体41は、図7に端的に示すように、概略板状の被検査物9を間に挟んだ上側と下側とのそれぞれにおいて、主走査方向に延びる上側支持部411及び下側支持部412と、これら上側支持部411及び下側支持部412の基端部同士を互いに連結して、上側支持部411と下側支持部412とを一体化させる連結部413とを備えて側面視でコ字状に形成されている。
上側支持部411には、その先端部に送信側ノズル414が、その中心軸(探傷軸X)が鉛直方向となるように取り付けられている。送信側ノズル414は接触媒質としての水を下向きに噴射するノズルであり、この水の噴射によって、送信側ノズル414とパレット5上の被検査物9における上向きの面との間には、水柱が形成されるようになる。図示は省略するが、送信側ノズル414には、被検査物9に向かって超音波を送信する送信子(探傷子)が内蔵されており、この送信子が送信した超音波は水柱内を伝播して被検査物9に至るようになる。
下側支持部412には、その先端部に受信側ノズル415が、上側支持部411の送信側ノズル414と同軸となるように取り付けられている。この受信側ノズル415も、前記送信側ノズル414と同様に、水を上向きに噴射する。この水の噴射によって、受信側ノズル415とパレット5上に被検査物9における下向きの面との間には、前記上側の水柱と同軸に水柱が形成されるようになる。また、図示は省略するが、受信側ノズル415には、被検査物9からの超音波を受信する受信子(探傷子)が内蔵されており、この受信子は水柱内を伝播して受信側ノズル415に至る超音波を受信する。こうして、探傷手段4においては、被検査物9を間に挟んだ上下のそれぞれに、送信子(送信側ノズル414)と受信子(受信側ノズル415)とがそれぞれ、鉛直方向に延びる探傷軸X上に配置された状態にされる。尚、送信子と受信子とは逆に配置してもよい。
走査機構42は、上流側ストック部2と下流側ストック部3との間でそれらのフレーム21,31に固定されて、主走査方向に延びる案内レールを有しており、前記の支持体41は、この案内レールに対して係合した状態で、図示省略の駆動源によって、主走査方向に往復移動される。図8に示すように、この支持体41の往復移動に伴い、前記送信側ノズル414(送信子)及び受信側ノズル415(受信子)、つまり探傷軸Xが、被検査物9に対して相対的に、主走査方向に往復移動するようになる。一方、パレット5は、検査搬送路上を、副走査方向に移動することから、送信子及び受信子からなる探傷子は、パレット5上に載置された概略板状の被検査物9に対して縦横に2次元走査されるようになりる。より詳細には、パレット5は、検査搬送路上を所定ピッチで間欠搬送される一方、操作機構42は、探傷子を、パレット5の搬送が停止している間に、主走査方向の一方向に移動(往方向に移動又は復方向に移動)することで、パレット5上の被検査物9の全面が、探傷子によって2次元走査される。そうして、被検査物9に対するCスキャン探傷法による超音波探傷検査が実現する。ここで、図5に一点鎖線で示す範囲が、各パレット5において探傷子を走査可能な範囲に相当し、この範囲は換言すれば、各パレット5において、被検査物9を載置することが可能な範囲である。尚、この超音波探傷装置1では、この範囲内であれば1つのパレット5の上に複数の被検査物9を載置することが可能にされている。
尚、ここでは探傷手段4として、送信子及び受信子を、被検査物9を間に挟んで厚み方向に対向配置しているが、送信子及び受信子を含む探傷子を、被検査物9の上方又は下方に配置するように構成してもよい。
図9は、超音波探傷装置1の制御に係る制御装置6の構成を示しており、この制御装置6は、例えば液晶表示装置等からなる表示部61、例えばキーボードやポインティングデバイス等からなる入力部62、例えばハードディスクドライブ等からなる記憶部63、例えばCPU等からなる制御部64を備えて構成されている。こうした制御装置6は、汎用PCを利用することが可能である。つまり、作業者は、制御装置6を用いて、表示部61に表示される画面を見ながら入力部62を通じて検査条件等を入力設定することにより、その検査条件等に基づいて超音波探傷装置1が制御されて、被検査物9に対する超音波探傷検査を行うことができると共に、その結果が記憶部63に記憶されることによって、被検査物9の検査結果の確認や解析を行うことが可能に構成されている。
図10,11は、制御装置6の表示部61に表示される画面の一例を示している。図10は、メイン画面の一例であり、このメイン画面101は、超音波探傷装置1による被検査物に対する超音波探傷検査を実行している最中には、その超音波探傷装置1にセットされている各パレットの現況の情報を表示するように構成されている。つまり、メイン画面101には、超音波探傷装置1にセットされているパレットが、超音波探傷装置1における実際のパレット5の並びと同じ並びで表示されており(図例では、上流側ストック部2に対応する、画面向かって右側に、下から上に順にA〜Fの6個のパレットと、下流側ストック部3に対応する、画面向かって左側に、上から下に順にG〜Kの5個のパレットとが表示されている)、超音波探傷装置1において、前述したようにパレット5が移動することに伴い、このメイン画面101におけるパレットの並びも変更されることになる。メイン画面101ではまた、各パレットの情報として、ステータス(未探傷、探傷済み、探傷中、及びエラー発生等)と、探傷条件(探傷速度、送りピッチ、パレット上の載置位置(P1,P2)等)と、当該パレットの探傷検査の終了予定時刻が表示されるように構成されている。ここで、メイン画面101においては、各パレットのステータスに応じて、当該パレットの表示色を変えるようにしてもよく、例えば、未探傷のときは黄色、探傷済みのときは緑色、探傷中のときは緑色の点滅、エラー発生のときは赤色としてもよい。こうすることによって作業者は、メイン画面101を一目見るだけで、超音波探傷装置1による超音波探傷検査の進捗状況や、エラー発生の有無を確認することが可能になる。
またメイン画面101に表示されている各パレットは選択操作が可能に構成されており、いずれかのパレットの選択操作を行ったり、メイン画面101の上部に設けられた「パレット情報」の選択ボタンの選択操作を行ったりしたときには、パレット情報画面が表示部61に表示される。このパレット情報画面は、超音波探傷装置1による超音波探傷検査の開始前のときには、当該パレットについての探傷条件(検査条件)を設定するための画面であり、超音波探傷検査の最中や、検査終了後のときには、当該パレットについての各種の情報(探傷条件、現況、検査結果等)を表示する画面である。
図11は、探傷条件(検査条件)を設定するためのパレット情報画面102の一例を示している。このパレット情報画面102には、パレット上の被検査物の載置位置を入力するための載置位置入力部1021と、探傷速度及びパレットの送りピッチを設定するための条件設定部1022と、パレットに載置される各被検査物のシリアル番号、部品番号及び部品名称等の識別情報を入力する識別情報入力部1023と、を含んで構成されている。
ここで載置位置入力部1021には、パレットにおける探傷子が走査可能な範囲(被検査物を載置可能な範囲)が表示されており、作業者は、例えばマウスドラッグ操作によって、パレット5上に載置される被検査物9の大きさ及び位置を指定することが可能に構成されている。図例では、パレットAに、A1〜A5の5個の被検査物が載置されることが設定されている。
こうしてパレット情報画面102において入力された情報に基づいて、制御装置6は超音波探傷装置1を制御して、各パレット5に載置されている被検査物9に対し超音波探傷検査を実行することになる。その検査結果を受けて制御装置6は、パレット情報画面102において入力された情報と検査結果(探傷画像及び検査の合否結果を含む)とを対応付けて記憶部63に記憶することになる。これによって記憶部63には、被検査物9の情報と、その被検査物9に対して行った超音波探傷検査の結果とが蓄積されることになる。
図10に戻り、メイン画面101の上部には「探傷画像」及び「管理」の選択ボタンが含まれており、この内「探傷画像」を選択操作したときには、記憶部63に記憶されている探傷画像の中から、所望の被検査物9の探傷画像を表示部61に表示させてこれを確認することが可能に構成されている。また、「管理」を選択操作したときには、記憶部63に記憶されている検査結果の中から、所望の被検査物9の検査結果を表示部61に表示させてこれを確認することが可能に構成されている。これらの探傷画像や検査結果を表示させるときには、例えば検査日時やシリアル番号等の各種の検索キーに基づいて検索を行うことが可能に構成されており、これによって所望の被検査物9に関する情報を、容易に確認することが可能になる。
以上説明したように、この超音波探傷装置1では、被検査物9をパレット5に載置し、そのパレット5を水平方向に延びる検査搬送路23,33上で間欠搬送する一方で、検査搬送路23,33の途中に配置した探傷手段4において、探傷子を主走査方向に往復移動するように構成されている。このことにより、探傷子は、被検査物9に対して相対的に、主走査方向及び副走査方向のそれぞれに走査されることになり、被検査物9に対しCスキャン探傷法による超音波探傷が実行されることになる。このため、この超音波探傷装置1では、被検査物9が載置されたパレット5を、順次、検査搬送路23,33に沿って搬送することによって、複数の被検査物9を、連続的に検査することが実現し得る。つまり従来のように1つの被検査物に対する検査が終了する度に、被検査物の取り外し及び新たな被検査物の固定といった段取り作業が不要であるため、作業者の拘束時間は短縮され、検査作業の作業効率が向上し得る。特に、この超音波探傷装置1では、上流側ストック部2部及び下流側ストック部3を備えて、パレット5を循環させるようにし、最大で11個のパレット5をセットして、それら11個のパレット5に対する超音波探傷検査を連続して自動的に行い得るため、作業者は、超音波探傷検査の開始前に、各パレット5に被検査物9を載置して、それを超音波探傷装置1にセットするという前作業を集中して行えばよく、超音波探傷装置1による超音波探傷検査の最中には、特に作業がない。その結果、作業者の拘束時間が大幅に短縮される。尚、パレット5の循環構成は、超音波探傷装置1の小型化に寄与する。
また、超音波探傷検査の結果が記憶部63に記憶されることにより、その検査結果の確認や解析は、超音波探傷検査の進捗状況とは無関係に任意の時間に行い得る。例えば全てのパレット5に対する超音波探傷検査が終了した時点で、検査結果の確認や解析を行ってもよい。このことも、作業者の拘束を緩和することになる。
また、被検査物9をパレット5上に載置して、そのパレット5を搬送するため、被検査物9の形状等が互いに異なっていても、被検査物9の搬送を連続して行い得る。さらに、1つのパレット5上に、複数の被検査物9を載置し、それらの1つ1つについて超音波探傷検査を一度に実行することも可能である。このため、この超音波探傷装置1は、互いに形状等の異なる、複数の被検査物9についての超音波探傷検査を連続的に行う場合に特に有効である。
また、この超音波探傷装置1では、オプションとして、延長搬送路7を設けることが可能に構成されている。この延長搬送路7は、図12に示すように、上流側ストック部2の下端部や下流側ストック部3の下端部に着脱可能に取り付けられる一対のローラ支持部71によって構成されている。各ローラ支持部71は、その基端部が上流側ストック部2や下流側ストック部3に対して着脱可能に支持されると共に、そこから左右外方に水平方向に延びて配設されている。ローラ支持部71に対しては、複数の搬送ローラ72が取り付け支持されており、これにより延長搬送路7は、前記上流側ストック部2の上流側検査搬送路23や下流側ストック部3の下流側検査搬送路33と同様の構成を有している。つまり、搬送ローラ72は、ローラ支持部71に対して左右方向に等間隔を空けて配設されており、各搬送ローラ72は、前後方向に延びる軸回りに回転可能に、そのローラ支持部71に取り付けられている。ローラ支持部71にはまた、その先端部に脚部を有しており、これによってローラ支持部71が水平に配設されることで、搬送ローラ72が水平方向に並んで配置されることになる。各搬送ローラ72は、パレットが載置された状態で回転することにより、このパレットを搬送するためのローラであり、これにより、上流側ストック部2の前側及び後側のそれぞれにローラ支持部71を取り付けることによって、上流側検査搬送路23が、その搬送方向の上流側にさらに延長されることになる。同様に、下流側ストック部3の前側及び後側のそれぞれにローラ支持部71を取り付けることによって、下流側検査搬送路33が、その搬送方向の下流側にさらに延長されることになる。このようにして検査搬送路を延長することにより、図12に仮想的に示すように、左右方向(搬送方向)の長さが相対的に長い長尺パレット501を、検査搬送路23,33,7上で搬送することが実現し得る。長尺パレット501は、上流側ストック部2及び下流側ストック部3に保持することはできないものの、長尺パレット501には、図示は省略するが、長尺の被検査物9を載置することが可能である。つまり、延長搬送路7を設けることは、超音波探傷装置1において検査可能な被検査物9の形状の自由度を高めることになる。また、前記の各ローラ支持部71(延長搬送路7)は、上流側ストック部2に対し取り付けることによって、例えば被検査物9が載置されたパレット5(つまり、上流側ストック部2及び下流側ストック部3に保持し得るパレット)を、超音波探傷装置1にセットするときにも利用し得る。つまり各ローラ支持部71によって形成される延長搬送路7は、その上方が開放されているためパレット5を置きやすいことから、超音波探傷装置1にパレット5をセットする前作業の効率が向上する。
尚、ここでは、上流側ストック部2及び下流側ストック部3において、複数のパレット5を上下方向に並べて保持するように構成しているが、複数のパレット5を保持するための態様は、これに限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。また、パレット5の下降装置22及び上昇装置32の構成や、検査搬送路及び循環搬送路の構成も、前記の構成に限定されるものではなく、パレット5を移動可能な構成であれば、どのようなものを採用してもよい。さらに、前記の超音波探傷装置1では、パレット5を循環可能に構成しているが、これを省略することも可能である。さらには、複数のパレット5を保持可能な上流側ストック部や下流側ストック部3を省略してもよい。