JP4583550B2 - 炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法 - Google Patents

炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法 Download PDF

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  • Length Measuring Devices Characterised By Use Of Acoustic Means (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、強度及び剛性に優れることから、CFRPと呼ばれる炭素繊維強化プラスチック積層板(以下、必要に応じて、単に積層板という。)が、注目されている。この積層板は、積層板を構成する各層について、隣接する層同士で、繊維の走る方向が異なるよう、積層されたものである。このような積層板は、例えば、次世代超音速旅客機の機体主構造に使用される材料を始めとして、航空機の他の部材や、自動車などの車体或いは車両部品、タンク、構造物など、広範な工業製品への利用が期待される。
【0003】
一方、このような積層板の内部欠陥の発生や挙動については、十分な解明が行われておらず、現在、積層板の実用化に向けて、内部欠陥について種々の試験によるデータの収集が試みられている。特に、積層板の内部欠陥のうち、マトリックスクラックと呼ばれる欠陥(積層板を構成する層中板面に沿って縦横に走る欠陥)について、大きな関心が寄せられ、そのデータの蓄積が急務とされている。
【0004】
このようなマトリックスクラックの観察方法は、従来、被検材となる積層板内部に、鉛粉を含んだ液体を造影剤として注入し、積層板内へX線を透過して、その陰影を見るものであった。
【0005】
しかし、上記のX線を用いる従来の観察方法では、以下の問題がある。第一に、X線を透過して得られる陰影では、十分な解像度が得られず、マトリックスクラックが存在するにも拘らず、その確認が十分に行えないものであった。第二に、造影剤を注入する必要から、被検材となる積層板は、造影剤の入口となる端面が必ず必要であった。即ち、積層板を構成する各層に対して、造影剤を注入するには、積層板の表裏をなす板面からでは、内部の層(特に層と層の界面)に造影剤が行き渡らないので、積層された各層が露出する端部から造影剤を入れる必要があるからである。ところが、使用目的に応じて賦形される積層板は、必ずしも積層板の端部が、露出した状態になっているとは限らない。疲労試験によって生じる欠陥を観察する場合などにおいても、応力を加える引っ張り試験機に被検材を把持させるため、端部が露出した状態となっていないことがある。第三に、造影剤は、液体であるため、積層板がタンクに使用される場合において、欠陥の観察後に当該タンクの漏れ量を測定する際し、造影剤の存在がその量の測定を不正確なものとしてしまう危惧があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、これまで、炭素繊維強化プラスチック積層板の欠陥検出方法として、超音波が利用されなかったのは、この素材そのものが比較的新しいものであり、その欠陥検出方法を模索中であったこと、また模索中とはいえ、超音波探傷の利用を思い到らなかったのは、潜在的に、超音波探傷というものは、金属などの均一な母材を被検材としてその内部に超音波を伝播させて欠陥や異種化合物(母材と異なる素性のもの)の存否を調べるものであり、従って、複合素材、特にCFRPのように複数の繊維層を積層した積層板に超音波を発しても、層間の界面などが反射源(ノイズ)となり、欠陥の検出はできないのではないかという考えがあったからである。ところが、発明者は、鋭意研究の末、超音波を用いても、上記の反射源の問題はなく、従来のX線を透過する方法に比して、極めて良好な影像を得ることを発見した。そこで、本願発明は、超音波を利用することにより、上記従来の方法に代わるマトリックスクラックの検出方法を提供することを可能として、上記の課題の解決を図るものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願の第1の発明に係る炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法は、超音波の送信及び受信を行う焦点型の超音波探触子(2)を用いて、被検材(M)である炭素繊維強化プラスチック積層板に対し、当該被検材(M)の表面(f1)側に超音波の媒質(N)を介して上記探触子(2)を配位させると共に、被検材(M)の裏面(f2)に、被検材(M)の裏面(f2)と間隔を開けて超音波の反射板(6)を配置し、探触子(2)にて被検材(M)表面側から被検材(M)内に向けて超音波(S)を発信し、被検材(M)内部を通って反射板(6)にて生じた反射を、上記の探触子(2)にて受信し、受信した結果をCスコープ表示させて、反射波の減衰を観察するものである。
【0008】
特に、本願の第1の発明に係る炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法は、被検材(M)を引っ張ることにより与えた疲労によるマトリックスクラックの発生を観察するものであり、超音波の送信により得た反射板からの引っ張り前における上記反射波の減衰と、超音波の送信により得た上記反射板からの引っ張り後における上記反射波の減衰とを比較し、引っ張り後の反射波にのみ生じた減衰を観察することにて、疲労によるマトリックスクラックを確認するものであることを特徴とする。
0009
本願第1の発明に係る炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法は、上記の通り、超音波を用いて、炭素繊維強化プラスチック積層板中の欠陥を観察するものであり、超音波を用いることにより、炭素繊維強化プラスチック積層板内の欠陥を、従来のX線による観察する方法に比して、格段に高い精度で、検出することが可能となった。従って、従来は見過ごされていたマトリックスクラックを確実に検出することが可能となった。また、超音波を用いることにより、被検材M内部へ従来のように、造影剤を注入する必要がない。
【0010】
更に、本願第1の発明では、焦点型の探触子2を用いることにより、より高い解像度で、欠陥の影像を得ることを可能とした。また、Cスコープ表示することにより、特に、積層板を構成する複数の層中板面に沿って縦横に走るマトリックスクラックの存否をより確認しやすい状態にして、観察者に知らせることが可能となった。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。図1及び図2(A)へ、本願発明の一実施の形態を示す。図1は本願発明の一実施の形態を示す説明図である。図2(A)は、図1の要部略側面図であり、探触子2と被検材Mとの位置関係を示す。また、図2(B)は、被検材である炭素繊維強化プラスチック積層板の一部切欠略斜視図である。
【0012】
本願発明に係る炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法は、超音波の送信及び受信を行う焦点型の超音波探触子2(以下探触子2という。)と、探触子2の超音波の送信・受信の調整及び探傷結果を取得する探傷器3と、探傷器3が取得したデータをCスコープ表示することが可能なモニタ4と、探触子2を走査することが可能な走査部5とを備えた超音波探傷装置1(以下探傷装置1という。)を用いるものであり、探傷に際し、被検材Mである炭素繊維強化プラスチック積層板に対し、その表面f1側に水などの超音波の媒質Nを介して上記探触子2を配位させると共に、被検材Mの裏面f2にガラスなどの超音波の反射板6を配置する。そして、探触子1にて被検材M表面側から被検材M内に向けて超音波Sを発信し、被検材M内部を通って反射板6にて生じた反射を、上記の探触子2にて受信する。受信した結果をモニタ3にてCスコープ表示させ、マトリックスクラックの観察を行う。
【0013】
以下、水浸法による場合を例に採り、上記の各構成について更に具体的に説明する。
【0014】
図1へ示すように、この探傷装置1は、探傷器3と走査部5とを一括して制御する制御部7を備えるものである。探触子2は、垂直探傷用のものを用いる。この探触子2は、焦点型のものであり、その探傷範囲は、被検材Mの厚み幅w(図2(A))をカバーするものである。被検材Mは、超音波の媒質Nとなる水などの液体が収容された、水槽8内に配置される。図1中、80は、水槽8の給排水管を示している。図2(A)へ示すように、被検材Mは、水槽8中、スペーサ9,9を介して、反射板6の上に配置される。反射板6には、ガラス板が適当である。この他、反射板6に金属などの表面が滑らかな(鏡面状の)板を用いて実施することも可能である。スペーサ9,9は反射板6と被検材Mの裏面f2との間の間隔vを保つためのものである。この間隔vは、この実施の形態において、約1mmであるが、必要に応じて変更可能である。
【0015】
上記の走査部5は、探触子2を支持するマニュピレータである。詳しくは、走査部5は、図1へ示す通り、上下に伸びその下端に探触子2が固定されたアーム50と、アーム50を保持する案内部51と、案内部51をガイドする主ガイド部52と、主ガイド部52を支持する副ガイド部53,53と、案内部51及び主ガイド部52の移動のための動力を提供するモータ(このモータとその動力の伝達系統については図面の煩雑を避けるため図示しない。)と、このモータを(サーボ)制御するモータードライバー54とを備える。副ガイド部53,53は、図1に示すように、上記の水槽8の上端に設けられたレールであり、主ガイド部52は、副カイド部53,53の上に配置され、上記のモータからの動力を受け、副ガイド部53,53上を、前後方向(図1のx方向)に移動することが可能である。
【0016】
上記の案内部51は、主ガイド部52上に配置され、同様に、モータから動力を得て、主ガイド部52上を左右方向(図1のy方向)に移動することが可能である。上記のアーム50は、案内部51に嵌合しており、案内部51に対して、上下方向(図1及び図2(A)のz方向)の位置を変えることが可能である。案内部51及び主ガイド部52の上記x方向及びy方向についての移動にて、アーム50の水平移動を行うことにより、被検材Mに対する探触子2の走査を行うことができる。
【0017】
被検材Mの水槽8内へのセットの際など、上記のアーム50の上方への移動にて、探触子2の退避を行う。また、上記のアーム50の上下の移動によって、被検材Mに対する探触子2の間隔、即ちギャップg(図2(A))を調整することができる。この実施の形態では、上記のギャップgは1mm程度とするが、被検材Mの厚みなどの条件に応じて変更する。その際の調整をアーム50の上下の移動によって行う。このアーム50の上下の移動についても、適宜モータから動力を得て行うものとすればよい。尚、図2(A)において、上記の水槽8及び走査部5を始めとする探傷装置1の他の構成は、図面の煩雑を避けるため、省略している。
【0018】
探触子2は、探傷器3へ電気的に接続されている。探傷器3には、探触子2が発信する超音波の強さや感度、時間(ゲート)の調整や設定を行うことができる。また、探傷図形としてAスコープを取得することができる(表示することが可能なものを用いてもよい。但し、必ずしもAスコープ表示は必要ではない)。図1へ示す通り、探傷器3は、制御部7に接続されており、制御部7に探傷データの受渡しを行うことが可能である。この実施の形態では、制御部7は、制御ユニット70と、処理装置71とにて構成されている。
【0019】
制御部ユニット70は、探傷器3とのインターフェイスを備える他、走査部5の制御手段として機能する。即ち、制御ユニット70は、探傷器3との接続回路の他、上記のモータ駆動の制御回路、走査部5の手動制御回路、探傷ピッチ制御回路を備え、自動或いは手動による探触子2の探傷走査の制御、探触子2の探傷ピッチの制御を行うことができる。処理装置71は、コンピュータ或いは制御CPUを備えたボードである。従って、この実施の形態において、Cスコープ表示を行うモニタ4には、コンピュータのディスプレイを用いる。
【0020】
処理装置71を通して、制御ユニット70をコントロールすることにより、探傷器3及び走査部5の制御を行うことができる。また、探傷器3が探触子2から得た画像データ(探傷図形データ)については、制御ユニット70を通じて、最終的に処理装置71がこれを取得し、モニタ4に表示したり、記憶装置(図示しない。)にデータを記録したりすることが可能である。また、必要に応じて、プリンタなどの印刷装置を接続しておくことにより、表示された画像データを紙面に印刷することができる(図示しない)。
【0021】
欠陥探傷に際し、上記のアーム50に対する操作にて、所定のギャップgを確保した後、図2(A)へ示す通り、探触子2は、被検材Mに向けて超音波s1を発する。媒質Nを経て被検材Mの表面f1から被検材Mの内部を伝播し、被検材Mの裏面f2側から反射板6に到達する。反射板6で反射した超音波は、反射波s2として、再び被検材Mの内部を伝播して、被検材Mの表面f1から探触子2に到達する。この被検材M内部の伝播中、マトリックスクラックkが存在すると、そこで、超音波が乱反射して、探触子2に帰ってくる反射波s2が減衰するので、その影像を捕らえることによって、マトリックスクラックkの存在を確認することができる。
【0022】
探傷装置が探傷結果として取得する探傷図形は、一次的にはAスコープであるが、外部への表示(モニタ表示)に際しては、Cスコープ表示を行うことにより、積層板を構成する複数の層中板面に沿って縦横に走るマトリックスクラックkの存否をより確認しやすい状態にして、観察することができる。即ち、Cスコープでは深さ情報(z方向についての情報)はないが、図2(B)へ示す通り、x方向及びy方向に沿う平面情報が得られる。マトリックスクラックkは、被検材Mである積層板を構成する層m1…m8中、積層板の板面(表面f1若しくは裏面f2)に沿って、縦横に走る欠陥であるため、上記のCスコープにて、x−y平面上での位置の確認が容易となる。
【0023】
超音波による探傷では、X線と異なり、一度に被検材Mの検査部位全体の画像を得ることができないので、上記の通り、探触子2の走査によって、各位置での探傷データを得て、そこから、検査部位全体の画像を得ることとなる。
【0024】
この実施の形態では、制御部7にCスコープ表示を行うモニタ4が接続されているが、この他、探傷器3が上記のCスコープ表示を行うモニタ4を備えるものとしても実施可能である(図示しない)。
【0025】
上記の実施の形態において、走査中、被検材Mに対して探触子2が位置を変えて行くものとしたが、この他、探触子2に対して
被検材Mが位置を変えるものとしても実施することが可能である(図示しない)。また、上記の実施の形態において、探触子には、(送受信部が)一体型のものを採用したが、分割型のものを用いて実施することも可能である。また、水浸法の他、直接接触法や、部分水浸法を用いるものであっても実施可能である。
【0026】
最後に、図3に示す引張試験片Pを用いて、得られ探傷データについて説明する。この試験片Pは、図2(B)へ示す被検材Mを平面視円形(円盤状)に形成して、その周囲に、引張試験機(図示しない。)にチャックさせるための、チャック部p2…p2を設けたものである。詳しくは、この試験片Pは、四方に伸びる4つのチャック部p2…p2を備えた平面視十字型の金属片の内部中央に、円盤状の被検材Mを埋設し、窓P1から、表面f1と裏面f2の被検面を外部へ露出させたものである。被検材Mは、8つの層が積層されたものであり、各層の厚みは0.8mmとした。引張試験機にて、チャック部p2…p2を把持し、引張試験片Pを四方に引っ張って、疲労によるマトリックスクラックの発生を観察した。疲労試験は、同一の引張試験片Pに対し2回行った。1回目の引張試験後の表面f1側から得たCスコープの画像(のトレース)を図4へ示し、その裏面f2側から得た画像を図5へ示す。また、2回目の引張試験後の表面f1側から得たCスコープの画像を図6へ示し、その裏面f2側から得た画像を図7へ示す。確認したマトリックスクラックkのデータを表1へ示す。影像の比較例として、2回目の引張試験後(再疲労試験後)の上記引張試験片PのX線の映像(のトレース)を図8へ示す。表1中のマトリックスクラックkの伸びる方向については、図3のx方向に沿うものを0°とし、y方向に沿うものを90°とする。
【0027】
【表1】
欠陥長さ(mm) 方向 断面方向 欠陥番号 1回目疲労試験後 2回目疲労試験後 (°) 推定位置 k1 6.4 6.8
0 裏面側 k2 75.8 75.6 0 表面側 k3 27.4 42.6 0 / k4 22.9 26.6 0 表面側 k5 31.7 36.6 0 裏面側
k6 2.6 9.2 90 / k7 48.3 48.8 0 裏面側 k8 − 52.2 0 表面側 k9 − 4.6 0 表面側k10 − 5.4 0 表面側k11
− 12.0 0 表面側k12 − 9.2 90 /k13 − 9.0 90 /k14 − 45.2 90 /k15 − 53.8 90 /k16 − 20.0
90 /k17 − 2.4 90 /k18 − 22.2 90 表面側k19 − 2.2 90 裏面側
【0028】
上記の表1において、−は欠陥を検出しなかったものを示し、/は、検出状況に顕著な差がなく、表裏の判断ができなかったものを示している。
【0029】
引張試験の結果、1回目の疲労試験後の探傷では、k1〜k7に示すクラックが認められ、その殆どが0°方向のものであった。2回目の疲労試験後では、新たに12箇所のクラックが検出された。そのうち8箇所については、90°方向のクラックであった。また、1回目の疲労試験後に確認したk2,k4,k5及びk6で示すクラックについては、2回目の疲労試験後、1回目の結果より更に進展していることが認められた。図4乃至図7に示す通り、超音波探傷により得た探傷図形にて、上記の各クラックk1〜k19が明確に視認できた。一方、従来のX線の影像(図8)と、対応する上記の超音波探傷のCスコープの影像(図6)とを比較すると、検出されたクラックの影像について全般に、Cスコープの影像(図6)の方が、X線の影像(図8)よりも鮮明である。更に、Cスコープの影像(図6)で確認できたk1〜k19で示すクラックのうち、X線の影像(図8)では、k1,k2,k3,k4,k5,k7,k14及びk16に示すクラックしか確認できない。具体的には、2回目の試験で、発生した90°方向の(y方向)のクラックについて、k14及びk16の2つのクラック以外は、確認できなかった。このように、超音波を用いて探傷を行うことにより、従来のX線によるものでは認識できなかった、CFRPのマトリックスクラックを検出することが可能となった。
【0030】
最後に、本願発明について、従来の金属材料などの欠陥検出に利用されている超音波探傷の場合との、原理の相違点について図9を用いて考察し、その上で、本願発明の好ましい実施の形態について総括する。本願発明の場合、マトリックスクラックkを検出するにあたり、焦点型の探触子2を用いて超音波sを発するものであるこれに対して、金属材料中の欠陥の探傷において、焦点型の超音波探触子2を用いて、底面エコー(被検材の裏面での反射エコー)の減衰を調べて、その欠陥を検出する方法は従来からあった。しかし、この場合、欠陥kaは、被検材の底面(裏面f2)まで達していることを前提とし、超音波の焦点を被検材の底面(裏面f2)に合わせるもの、即ち、探触子2の焦点距離を被検材mの底面(裏面f2)に一致させるものである(図9(B))。具体的には、従来、金属の欠陥kaを検出するのに焦点型の超音波探触子2を利用する場合、欠陥kaが発生する位置をある程度予測して、その位置に焦点Fが定まるように、探傷条件を設定するものであり、例えば、図9(B)へ示すように、金属材料において問題となる欠陥kaが割れである場合、このような割れの生じる位置(裏面f2)に焦点Fがくるように、探傷条件を設定し、このような焦点Fでの欠陥kaの有無を調べるものであった(図9(B))。一方、本願発明が被検材Mとする積層板におけるマトリックスクラックkは、(x−y)平面について縦横に走るものであり、本願発明によって、(x−y)平面の位置が特定される。当初、マトリックスクラックk自体は、被検材の内部に発生するものであり、このため、本願の発明者には、この発明前、割れ(裏面f2に達する欠陥)を検出することを前提とする、従来の焦点型の探触子を用いた探傷方法では、積層板のマトリックスクラックを検出できないとの考えがあった。ところが、マトリックスクラックkは、図9(A)へ示すように、深さ方向(方向z)についても、ある程度の幅dを有するものであることが分かった既述の通り、Cスコープにおいて方向zについての位置情報は分からないが鮮明な映像を確保することができた。即ち、本願発明に係る炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法は、被検材である炭素繊維強化プラスチック積層板に対し、焦点型の探触子を用いて超音波を発し、Cスコープ表示することにより、被検材内のマトリックスクラックを検出するものであり、特に、被検材(M)を引っ張ることにより与えた疲労によるマトリックスクラックの発生を観察するものであり、超音波の送信により得た反射板からの引っ張り前における上記反射波の減衰と、超音波の送信により得た上記反射板からの引っ張り後における上記反射波の減衰とを比較し、引っ張り後の反射波にのみ生じた減衰を観察することにて、疲労によるマトリックスクラックを確認するものである。
【0031】
【発明の効果】
本願第1の発明の実施によって、炭素繊維強化プラスチック積層板中のマトリックスクラックを、従来の方法にして、より高い精度で検出することが可能となった。また、造影剤の注入が不要となり、欠陥の状況をより簡便に観察すること可能となった。特に、タンクの漏れ量の測定など、液体の混入を嫌う試験において、被検材が炭素繊維強化プラスチック積層板である場合、従来のような被検材内に残留する造影剤の流出の影響を危惧する必要がなくなった。また、鉛を含んだ造影剤の使用による環境保全に対する懸念も必要ない。更に、X線という放射線を用いる大掛かりな従来の検出方法に比して、検査そのものの運営をより簡便に行うことが可能となった。更に、超音波の送受信に、ハンドスキャナと呼ばれる持ち運びが可能な装置を利用すれば、実施する場所を選ばない。
【0032】
特に、本願第1の発明の実施によって、より高い精度で、炭素繊維強化プラスチック積層板中のマトリックスクラックを検出すること可能となった。また、観察者が容易に、欠陥の有無やその位置を把握することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る欠陥検出方法の一実施の形態の説明図である。
【図2】(A)は上記実施の形態の要部略側面図であり、(B)は被検材Mの一部切欠略斜視図である。
【図3】炭素繊維強化プラスチック積層板の引張試験片Pの平面図である。
【図4】1回目の引張試験の後の上記引張試験片Pについて、その表面f1側のCスコープ探傷図形を示す説明図である。
【図5】1回目の引張試験の後の上記引張試験片Pについて、その裏面f2側のCスコープ探傷図形を示す説明図である。
【図6】2回目の引張試験の後の上記引張試験片Pについて、その表面f1側のCスコープ探傷図形を示す説明図である。
【図7】2回目の引張試験の後の上記引張試験片Pについて、その裏面f2側のCスコープ探傷図形を示す説明図である。
【図8】2回目の引張試験の後の上記引張試験片Pについて、その表面f1側から見たX線の影像を示す説明図である。
【図9】(A)は本願発明の原理を示す説明図であり、(B)は他材料における従来の超音波探傷の原理を示す説明図である。
【符号の説明】
1 超音波探傷装置
2 超音波探触子
3 超音波探傷器
4 モニタ
5 走査部
6 反射板
s1 (送信)超音波
s2 反射波
M 被検材
N 媒質

Claims (1)

  1. 超音波の送信及び受信を行う焦点型の超音波探触子(2)を用いて、被検材(M)である炭素繊維強化プラスチック積層板に対し、当該被検材(M)の表面(f1)側に超音波の媒質(N)を介して上記探触子(2)を配位させると共に、被検材(M)の裏面(f2)に、被検材(M)の裏面(f2)と間隔を開けて超音波の反射板(6)を配置し、
    探触子(2)にて被検材(M)表面側から被検材(M)内に向けて超音波(S)を発信し、被検材(M)内部を通って反射板(6)にて生じた反射を、上記の探触子(2)にて受信し、受信した結果をCスコープ表示させて、反射波の減衰を観察するものであり、
    被検材(M)を引っ張ることにより与えた疲労によるマトリックスクラックの発生を観察するものであり、
    超音波の送信により得た反射板からの引っ張り前における上記反射波の減衰と、超音波の送信により得た上記反射板からの引っ張り後における上記反射波の減衰とを比較し、引っ張り後の反射波にのみ生じた減衰を観察することにて、疲労によるマトリックスクラックを確認するものであることを特徴とする炭素繊維強化プラスチック積層板のマトリックスクラック検出方法。
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