JP2011099723A - 超音波検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被検査物である単結晶に対する表面の鏡面加工を省略可能としかつ非破壊検査であって、単結晶における結晶欠陥であり母材と同種の材質からなり異種界面を伴わない欠陥を検出可能とする超音波検査方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る超音波検査方法は、被検査物に超音波を入射し前記被検査物内で反射された超音波を受信することによって前記被検査物内の欠陥を測定する超音波検査方法であって、前記被検査物が単結晶体であり、入射する前記超音波の周波数が78 MHz以上であることを特徴とする。
【選択図】図5
【解決手段】本発明に係る超音波検査方法は、被検査物に超音波を入射し前記被検査物内で反射された超音波を受信することによって前記被検査物内の欠陥を測定する超音波検査方法であって、前記被検査物が単結晶体であり、入射する前記超音波の周波数が78 MHz以上であることを特徴とする。
【選択図】図5
Description
本発明は、被検査物中の欠陥の検査方法に関し、特に単結晶中の結晶欠陥を検出する超音波検査方法に関するものである。
単結晶基板(特に半導体単結晶基板)の中に存在する結晶欠陥は電子デバイスの特性や寿命を低下させるため、結晶欠陥を極力低減する方法が種々模索されている。結晶欠陥のうち局所的な多結晶化や結晶転位の密集したリネージと呼ばれる欠陥は、デバイス特性を著しく低下させることから単結晶基板中に残存させないことが望まれる。しかしながら、単結晶中の結晶欠陥を完全に除去することは困難であることから、結晶欠陥を抑制する努力に加えて品質保証の観点から単結晶製造後の検査が重要となる。
従来、結晶欠陥の検査は、例えば、成長した単結晶インゴットから切り出したウェハの表面を鏡面に研磨した後、水酸化カリウム(KOH)融液を用いてウェハ表面をエッチングすることで欠陥を可視化して行われていた。このほか、透過電子顕微鏡法、X線回折法、フォトルミネセンス法、カソードルミネセンス法などが結晶欠陥評価に使用されている。
溶融KOHによりウェハ表面をエッチングして結晶欠陥を浮き立たせ目視観察する方法は、KOHに取り扱い上の注意が必要なものの、比較的簡便でかつ欠陥検出に対する信頼性が高いとされている。これは、化学反応を利用することでミクロな欠陥もそのままのサイズでエッチングされてウェハ表面に凹凸を形成するため、欠陥検出の空間分解能が光学顕微鏡の分解能で決まる特徴を有しているからである。また、結晶欠陥が密集して見かけがマクロなサイズとなれば検出はさらに容易となる。
しかしながら、この方法は、表面をエッチングして結晶欠陥に起因する凹凸を観察するという性質上、微小な欠陥でも検出できるようにするためエッチング前のウェハ表面を平滑(鏡面状態)にする必要がある。また、ウェハ表面に対するエッチング・観察であることから、ウェハ内部の欠陥は見えないという短所もある。さらに、この検査方法は破壊試験の一種であり、検査に一旦使用した結晶ウェハは、例え結晶欠陥が検出されなかった場合でも再び製造ラインに戻すことはできない。このため、製品の全数検査が不可能であるとともに、検査した分だけ製品数の低下を招く問題が生じる。
透過電子顕微鏡による結晶欠陥の観察は、ウェハ内部のミクロ欠陥(例えば、転位など)を詳細に観察できる利点があるが、破壊試験の一種である上、検査対象物に対して特殊な試料加工が必須でありかつ試料のごく一部分しか観察できない。このため、調査・研究には好適であるが、製造ラインにおける日常的な欠陥検査には不適当である。
一方、平行ビーム光学系を用いたX線回折法による検査は、原理的には欠陥検出に十分な空間分解能を有する上、被検査物の表面状態の影響もほとんど受けないため、好適な検査方法と考えられる。しかしながら、ミクロな結晶欠陥を捕らえるためには平行度が高いビームを絞って使用する必要があるため照射ビームのX線強度が弱くなりやすく、特性X線を使用した通常のX線回折装置の線源を使用した場合、X線強度が弱いために非常に長い測定時間を必要とする。このため、X線回折法による検査は、高いスループットが要求される製造ラインで使用することが困難である。なお、測定時間を短縮するために十分な強度のX線ビームを得ようとすると、現状ではシンクロトロン放射光施設などを利用する必要がある。
フォトルミネセンス法、カソードルミネセンス法などの発光現象を利用した検査も、しばしば用いられる非破壊の検査手法である。これらの方法では結晶欠陥の検出において、ウェハ表面近くの励起キャリアの発光再結合現象を利用しているために、ウェハの表面状態に強く影響されウェハ表面を鏡面加工すると共に清浄に保つ必要がある。また、一般には検出の空間分解能を向上させようとすると測定時間が著しく増大するという問題がある。カソードルミネセンス法は、ウェハ表面に対して電子ビームを走査するため、被検査物を真空装置内に設置する必要があり、製造ラインで日常的に高いスループットで検査する方法として必ずしも適さない。
上記の検査方法に対して、超音波の反射により欠陥を検出する超音波探傷法は、主として被検査物中の中空欠陥(ボイド)やクラック、異物を検出することに用いられている。例えば、特許文献1には、一方向凝固鋳物や単結晶鋳物などの結晶成長に方向性を有する被検査物に対して、結晶成長方向と一致する振動方向をもった横波超音波を入射し、反射された超音波に基づいて超音波が反射された位置までの距離を測定し、肉厚の測定やボイド・クラックを探傷する超音波検査方法が開示されている。
また、特許文献2には、所定の半径および幅とした複数の円盤状またはリング状の超音波送受信部を有する探触子を設け、これを用いて被検体に向けて発射した超音波の反射波を受信し、各超音波送受信部で受信された受信波の反射率の組み合わせから、被検体内部に存在する物質の種類を識別する超音波検査方法が開示されている。
また、特許文献3には、複数の層構造物を有する検査対象物を挟んで互いに向かい合うように2つの超音波センサを配置し、一方の超音波センサから検査対象物に向けて超音波を送信し、検査対象物を透過した超音波の受信信号に基づいて検査対象物内の欠陥の有無を判定し、欠陥が見つかった場合に検査対象物から反射される超音波の受信信号に基づいて欠陥が存在する層構造物を検出する超音波検査方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に記載の超音波検査方法は、ボイドやクラック、異物、剥離などの明確な異種界面を伴う比較的マクロな欠陥を対象とした検査方法であり、被検査物の母材と同種の材質からなり異種界面を伴わない欠陥(同種界面の欠陥)を検出できるものではない。すなわち、半導体単結晶内部の結晶欠陥(例えば、局所的な多結晶化やリネージ)は、従来の超音波検査方法では検出が不可能とされていた。
従って、本発明の目的は、被検査物である単結晶に対する表面の鏡面加工を省略可能としかつ非破壊検査であって、単結晶における結晶欠陥であり母材と同種の材質からなり異種界面を伴わない欠陥を検出可能とする超音波検査方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するため、被検査物に超音波を入射し前記被検査物内で反射された超音波を受信することによって前記被検査物内の欠陥を測定する超音波検査方法であって、前記被検査物が単結晶体であり、入射する前記超音波の周波数が78 MHz以上であることを特徴とする超音波検査方法を提供する。なお、本発明において、単結晶とは擬単結晶の場合(厳密には複数の結晶粒から構成されるが、各結晶粒の結晶方位が略揃っていて(各結晶粒が3次元配向していて)全体として単一結晶粒と遜色ない状態)を含むものとする。
また、本発明は上記目的を達成するため、被検査物に超音波を入射し前記被検査物内で反射された超音波を受信することによって前記被検査物内の欠陥を測定する超音波検査方法であって、前記被検査物が単結晶体であり、前記被検査物内での前記超音波の波長が60μm以下であることを特徴とする超音波検査方法を提供する。
また、本発明は上記目的を達成するため、被検査物に周波数の超音波を入射し前記被検査物内で反射された超音波を受信することによって前記被検査物内の欠陥を測定する超音波検査方法であって、前記被検査物が単結晶体であり、前記被検査物中の音速をv[km/s]と表記した場合、測定しようとする前記欠陥の大きさd[μm]と入射する前記超音波の周波数f[GHz]との関係が「f ≧ v / 6d」であることを特徴とする超音波検査方法を提供する。
また、本発明は上記目的を達成するため、上記の本発明に係る超音波検査方法において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記被検査物を液体に浸漬した状態で測定を行う。
(2)前記被検査物が単結晶ウェハであり、かつ前記超音波を前記単結晶ウェハの主表面より入射させる。
(3)前記単結晶ウェハが半導体単結晶ウェハである。
(4)前記単結晶ウェハが半絶縁性砒化ガリウムウェハである。
(5)前記単結晶ウェハの表面状態が鏡面でない。
(6)前記超音波を入射した前記単結晶ウェハの前記主表面の裏面において反射された超音波を受信する。
(7)前記反射された超音波として前記単結晶ウェハ内で多重反射した超音波を受信する。
なお、上記の超音波検査において、1回の測定における受信超音波が弱い場合、前記測定を繰り返して行い前記受信した超音波の強度を積分・平均化することは好ましい。
(8)上述の超音波検査方法を利用した超音波検査装置を提供する。
(1)前記被検査物を液体に浸漬した状態で測定を行う。
(2)前記被検査物が単結晶ウェハであり、かつ前記超音波を前記単結晶ウェハの主表面より入射させる。
(3)前記単結晶ウェハが半導体単結晶ウェハである。
(4)前記単結晶ウェハが半絶縁性砒化ガリウムウェハである。
(5)前記単結晶ウェハの表面状態が鏡面でない。
(6)前記超音波を入射した前記単結晶ウェハの前記主表面の裏面において反射された超音波を受信する。
(7)前記反射された超音波として前記単結晶ウェハ内で多重反射した超音波を受信する。
なお、上記の超音波検査において、1回の測定における受信超音波が弱い場合、前記測定を繰り返して行い前記受信した超音波の強度を積分・平均化することは好ましい。
(8)上述の超音波検査方法を利用した超音波検査装置を提供する。
また、本発明は上記目的を達成するため、半導体単結晶ウェハの製造方法であって、単結晶インゴットをウェハ状にスライスする工程の後、スライスしたウェハの表面に対する鏡面加工工程を行わずに上記の超音波検査方法によって前記スライスしたウェハ中の結晶欠陥を測定する工程を行い、前記測定の結果で前記結晶欠陥が所定以下のウェハのみを次工程に進めることを特徴とする半導体単結晶ウェハの製造方法を提供する。
本発明によれば、次のような特長を有する単結晶体の超音波検査方法を提供できる。
(i)非破壊検査であることから、良品判定された被検査物をそのまま製品に利用できる。
(ii)短時間で測定できることから、製造ライン中で全数検査が可能である。
(iii)被検査物内部の結晶欠陥も検出可能である。
(iv)被検査物表面に対して、検査のための加工(例えば、鏡面加工)を必要としない。
(v)取り扱いに注意を要する薬品(例えば、KOH)を使用しなくてよい。
これらの特長により、製品検査を別途行うための手間削減、製品の良品率向上、それらに伴うコスト削減などの効果がある。
(i)非破壊検査であることから、良品判定された被検査物をそのまま製品に利用できる。
(ii)短時間で測定できることから、製造ライン中で全数検査が可能である。
(iii)被検査物内部の結晶欠陥も検出可能である。
(iv)被検査物表面に対して、検査のための加工(例えば、鏡面加工)を必要としない。
(v)取り扱いに注意を要する薬品(例えば、KOH)を使用しなくてよい。
これらの特長により、製品検査を別途行うための手間削減、製品の良品率向上、それらに伴うコスト削減などの効果がある。
以下、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはない。
超音波検査(超音波探傷)は、被検査物に超音波を入射して被検査物の内部で反射(散乱)された超音波を受信し、反射音波が返ってくるまでの時間から距離を計算して内部の様子を可視化する検査方法である。超音波の反射(散乱)は音響インピーダンス(簡易的には「物質の密度×物質中の音速」)の差の大きい界面(特に異なる物質間の界面、すなわち異種界面)で生じることから、超音波検査は、ボイドやクラック、異物、剥離などの明確な異種界面を伴う比較的マクロな欠陥を対象とした検査方法と従来から考えられてきた。
被検査物としては、金属などの多結晶体やガラスなどのアモルファス体で構成されている物が一般的であった。多結晶体による被検査物の場合、通常、無数の結晶粒(グレイン)が無秩序な方位関係で(特段の配向性を持たずに)集合しているため、結晶方位に関して本来存在するはずの音響インピーダンスの異方性(この場合、主に音速の異方性)は、全体として平均化されてしまって観測されない。また、アモルファス体(非晶質体)による被検査物の場合も同様である。そのため、被検査物の母材と同種の材質からなり異種界面を伴わない欠陥(例えば、結晶欠陥などの同種界面による欠陥)は、超音波検査で検出できないと考えられてきた。
ここにおいて、本発明者らは被検査物が単結晶体であることに着目し、単結晶体では結晶方位が明確に揃っていることから、結晶方位の異なる部分(例えば、局所的な多結晶化)が存在したり、結晶格子が著しく乱れた部分(例えば、リネージ)が存在したりする場合、その部分ではマトリックスの結晶方位の音速と異なる音速で伝播する可能性があると考えた。すなわち、音速に差異のある媒体界面では音波の反射(散乱)が生じるので、単結晶からなる被検査物においては、結晶格子の乱れた部分で超音波が散乱され結晶欠陥を観測できる可能性があると考えた。本発明は、単結晶体からなる被検査物に対して特定の周波数領域の超音波を入射することによって、結晶欠陥に起因する超音波の散乱像が得られることを見出したことに基づき完成されたものである。
電子デバイス用の単結晶基板における有害な結晶欠陥のひとつ、リネージと呼ばれる結晶欠陥は、欠陥全体の大きさがミリメートルサイズ以上の比較的マクロな欠陥である。そこで、この欠陥に対して、従来から一般的に使用されている10 MHz程度の超音波を入射したところ、まったく何も検出されなかった。この理由としては、リネージが比較的マクロな欠陥に見えていながら、個々には1〜10μm程度のミクロな欠陥(具体的には転位)であり、この転位が高密度に密集しているために全体として比較的マクロな大きさに見えるためではないかと推測された。
次に、局所的に多結晶化した部分について考える。局所的に多結晶化した部分は、結晶方位が異なるミクロな結晶粒が多数存在するため、単結晶マトリックスとの界面において音波が散乱されると考えられる。ただし、結晶方位による音速の差はわずかであると考えられることから、超音波の散乱強度も微弱であると予想された。
単結晶中の結晶欠陥による超音波の散乱は、光の散乱と同様に波動の散乱法則に支配されると推定される。欠陥サイズに対して、波動の波長が長い場合にはレイリー散乱になると考えられ、波長の4乗に反比例して散乱強度が低下するため、使用する超音波の波長・周波数の選択は非常に重要である。散乱強度を増大させミクロなサイズの欠陥を観察可能とするためには、欠陥サイズと音波の波長とを接近させることが有効であり、入射する超音波の高周波数化・被検査物中での超音波の短波長化が有効と考えられた。
本発明で対象とした欠陥のサイズは概ね1〜10μm程度であることから、超音波の波長としても10μm程度以下が望ましい。被検査物として例えば砒化ガリウムを想定した場合、砒化ガリウム中の常温での音速は約4.7 km/sであるから、波長が10μm程度となるのは周波数で約470 MHzとなる。これより音波の波長が長くなり相対的に欠陥が小さい場合には、レイリー散乱により散乱強度が減少して、検出の可否は検出器の感度に依存することとなる。
ここで、波長相当の大きさを有する散乱体による散乱強度の1/1000程度(-30 dB)の強度までであればノイズの少ない良好な観察が可能と考えられ、欠陥サイズの6倍の波長以下(約60μm以下)すなわちGaAsの場合で周波数約78 MHz以上あれば明瞭に検出が可能となる。言い換えると、被検査物中の音速をv[km/s]と表記した場合、測定しようとする欠陥サイズd[μm]と入射する超音波の周波数f[GHz]との関係が「f ≧ v / 6d」となるような超音波を選定することが好ましい。
より好ましくは欠陥サイズの5倍以下の波長(約50μm以下)、GaAsの場合で周波数約94 MHz以上の超音波を使用すると良く、更に好ましくは欠陥サイズの4倍以下の波長(約40μm以下)、GaAsの場合で周波数約118 MHz以上の超音波を使用すると良い。一方、散乱音波受信時のノイズをさらに低減し相対検出感度を増大させて散乱強度の1/10000(-40 dB)の強度まで検出できる環境であれば、欠陥サイズの9倍程度の波長(90μm程度)すなわちGaAsの場合で50 MHz程度の周波数でも検出が可能となる。
被検査物としては、単結晶体であれば良く、ウェハ状で提供される単結晶体であることがより好ましい。また、被検査物の材質としては特に限定されないが、電子デバイス用の基板材料として用いられる材料、例えば、シリコン(Si)等の半導体材料、砒化ガリウム(GaAs)や炭化珪素(SiC)等の化合物半導体材料、サファイア(Al2O3)等の絶縁基板材料を好適に検査することができる。シリコン、サファイアは音響インピーダンスが砒化ガリウムより小さく超音波の入射損失が小さいので、超音波検査に好適な材料である。
表1に代表的な被検査物と被検査物中の音速、超音波の推奨周波数を示す。なお、欠陥サイズは10μmと仮定した。
本発明に係る超音波検査は、被検査物を液体に浸漬して行うことが好ましい。使用する液体としては特に限定されないが、取り扱いの容易さやコストの観点から水が好ましい。ただし、室温の水は、音響インピーダンスが上記被検査物材料の1/20程度と小さく被検査物との音響インピーダンス差が大きいため、超音波が被検査物に侵入する際の反射損失が大きくなりやすい弱点がある。水の場合、水温が上がると(〜74℃)音速が増加し検査の検出感度が増大するので、室温の水よりも温水を使用することがより好ましい。言い換えると、超音波検査における欠陥検出感度の観点からは、音響インピーダンス差を小さくするために音響インピーダンスが被検査物により近い液体を使用することが好ましい。水よりも音響インピーダンスの大きな有機溶媒としては、例えばグリセリンが挙げられる。また、水銀などの液体金属も音響インピーダンスが大きいので好ましく使用することができる。
本発明に係る超音波検査方法による効果を確認するために、以下のような実験を行った。図1は、本発明に係る超音波検査方法の1例を示す断面模式図である。図1に示すように、水(純水、被検査物の汚染防止のため)を入れた検査槽の中にウェハ状の被検査物を載せた試料台を浸漬設置し、超音波探触子を走査しながら測定した。被検査物の材料としては、LEC(液体封止チョクラルスキー)法で成長した半絶縁性砒化ガリウム単結晶を使用した。直径100 mmの単結晶インゴットから1 mm厚さのウェハを切り出し、ウェハ表面を鏡面加工せずにそのまま超音波検査にて結晶欠陥の観察を行った。
超音波検査にあたり、ウェハ裏面(超音波を入射するウェハ表面の反対側の表面、図1における試料台側の表面)において反射された超音波の反射ピークを主に受信した。これは、以下のような理由による。
(ア)超音波を入射するウェハ表面からの強い反射の影響を避けるためである。
(イ)観察しようとしている欠陥は、結晶粒界もしくは亜粒界、または粒界に沿って存在する転位群であり、ウェハを表裏に貫通しているものも多いことを考慮したためである。
(ウ)欠陥による散乱波を直接観察するよりも、該欠陥によって散乱されずに透過しウェハ裏面で反射されてきた音波の方が往復する分だけ該欠陥による散乱の影響を受けるので、欠陥の検出感度が相対的に高くなるためである。なお、ウェハの表面と裏面との間で多重反射された超音波を受信すれば、該欠陥部分で複数回散乱されるため更に欠陥の検出感度を高めることができる。
(ア)超音波を入射するウェハ表面からの強い反射の影響を避けるためである。
(イ)観察しようとしている欠陥は、結晶粒界もしくは亜粒界、または粒界に沿って存在する転位群であり、ウェハを表裏に貫通しているものも多いことを考慮したためである。
(ウ)欠陥による散乱波を直接観察するよりも、該欠陥によって散乱されずに透過しウェハ裏面で反射されてきた音波の方が往復する分だけ該欠陥による散乱の影響を受けるので、欠陥の検出感度が相対的に高くなるためである。なお、ウェハの表面と裏面との間で多重反射された超音波を受信すれば、該欠陥部分で複数回散乱されるため更に欠陥の検出感度を高めることができる。
周波数80 MHz、125 MHzの超音波で測定した結果を次に示す。図2は周波数80 MHzの超音波で超音波検査を行った場合の観察像の1例であり、図3は周波数125 MHzの超音波で超音波検査を行った場合の観察像の1例である。図2に示した観察像は、16回の繰り返し測定を行い、各測定で受信した反射波の強度を積分して平均化したものである。繰り返し測定を行うことによりノイズを低減することができ、欠陥像を明瞭に観察することができた。また、周波数125 MHzの超音波を利用した超音波検査では、図3に示したように、1回の測定でも非常に明瞭に欠陥像を観察することができた。なお、比較として周波数10 MHzの超音波を利用して同じウェハを観察したところ、何も観測されなかった。
上記の超音波検査の後、比較のために、該ウェハ表面を鏡面加工してKOHエッチング処理を施した。その後、光学顕微鏡を用いてエッチング処理したウェハ表面を観察した。図4は、KOHエッチング処理を施した後のウェハ表面の光学顕微鏡観察像の1例である。図3と図4との比較から判るように、本発明に係る超音波検査方法は従来のKOHエッチング処理と同等以上に鮮明な欠陥観察ができることが確認された。また、ウェハ1枚あたりに要する検査時間を比較すると、本発明に係る超音波検査では、従来の鏡面加工やKOHエッチング処理が不要となるため所要時間が半分以下となり、大幅な時間短縮が可能となった。
図5は、GaAs単結晶ウェハの場合における超音波の反射波強度と入射波周波数との関係を示すグラフである。測定される超音波の波形を基に、レイリー散乱における散乱強度の周波数依存性を考慮して作成したものである。図1に示したような測定系においては、背景雑音(バックグラウンドノイズ)の標準的な低減処理を行った場合、約-32 dB(雑音レベルA)の背景雑音が残存する。また、繰り返し測定を行い反射波の信号の積算回数を増やし、さらに画像処理など種々のノイズ除去処理を施した場合、背景雑音は約-40 dB(雑音レベルB)まで低減できる。
図5から判るように、背景雑音が雑音レベルA(約-32 dB)の場合、約78 MHzが欠陥検出の下限周波数となっている。78 MHzは被検査物中の波長で約60μmに相当する。また、背景雑音が雑音レベルB(約-40 dB)の場合、約50 MHzが欠陥検出の下限周波数である。50 MHzは被検査物中の波長で約90μmに相当する。一方、周波数が94 MHzや118 MHz以上では背景雑音を優に超えていることが判る。すなわち、好ましくは周波数94 MHz以上、更に好ましくは周波数118 MHz以上の超音波を用いることが良いと言える。
市販のSi基板、SiC基板、サファイア基板のそれぞれに対して、本発明に係る超音波検査方法による欠陥観察を行った後、エッチング処理による欠陥観察を行い、両観察結果を比較したところ、従来のエッチング処理と同等以上に鮮明な欠陥観察ができることが確認された。
半導体単結晶ウェハの製造ラインにおいて、従来の検査方法に替えて本発明に係る超音波検査方法を適用した。単結晶インゴットをウェハ状にスライスした後、該ウェハの表面に対する鏡面加工を行わずに本検査方法で該ウェハを検査することによって、非破壊で該ウェハ中の結晶欠陥の有無を判定することが可能となった。これにより、良品ウェハを検査のために破壊することが無くなるとともに、不良品ウェハが次工程に流れることによる不良製品の製造を大幅に減らすことができた。
Claims (12)
- 被検査物に超音波を入射し前記被検査物内で反射された超音波を受信することによって前記被検査物内の欠陥を測定する超音波検査方法であって、
前記被検査物が単結晶体であり、入射する前記超音波の周波数が78 MHz以上であることを特徴とする超音波検査方法。 - 被検査物に超音波を入射し前記被検査物内で反射された超音波を受信することによって前記被検査物内の欠陥を測定する超音波検査方法であって、
前記被検査物が単結晶体であり、前記被検査物内での前記超音波の波長が60μm以下であることを特徴とする超音波検査方法。 - 被検査物に周波数の超音波を入射し前記被検査物内で反射された超音波を受信することによって前記被検査物内の欠陥を測定する超音波検査方法であって、
前記被検査物が単結晶体であり、前記被検査物中の音速をv[km/s]と表記した場合、測定しようとする前記欠陥の大きさd[μm]と入射する前記超音波の周波数f[GHz]との関係が「f ≧ v / 6d」であることを特徴とする超音波検査方法。 - 前記被検査物を液体に浸漬した状態で測定を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の超音波検査方法。
- 前記被検査物が単結晶ウェハであり、かつ前記超音波を前記単結晶ウェハの主表面より入射させることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の超音波検査方法。
- 前記単結晶ウェハが半導体単結晶ウェハであることを特徴とする請求項5に記載の超音波検査方法。
- 前記単結晶ウェハが半絶縁性砒化ガリウムウェハであることを特徴とする請求項5に記載の超音波検査方法。
- 前記単結晶ウェハの表面状態が鏡面でないことを特徴とする請求項5乃至請求項7に記載の超音波検査方法。
- 前記超音波を入射した前記単結晶ウェハの前記主表面の裏面において反射された超音波を受信することを特徴とする請求項5乃至請求項8に記載の超音波検査方法。
- 前記反射された超音波として前記単結晶ウェハ内で多重反射した超音波を受信することを特徴とする請求項5乃至請求項9に記載の超音波検査方法。
- 請求項1乃至請求項10に記載の超音波検査方法を利用したことを特徴とする超音波検査装置。
- 半導体単結晶ウェハの製造方法であって、
単結晶インゴットをウェハ状にスライスする工程の後、スライスしたウェハの表面に対する鏡面加工工程を行わずに請求項5乃至請求項10に記載の超音波検査方法によって前記スライスしたウェハ中の結晶欠陥を測定する工程を行い、前記測定の結果で前記結晶欠陥が所定以下のウェハのみを次工程に進めることを特徴とする半導体単結晶ウェハの製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN104007181A (zh) * | 2014-05-07 | 2014-08-27 | 西安理工大学 | 单晶硅棒缺陷超声检测系统及方法 |
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- 2009-11-05 JP JP2009253649A patent/JP2011099723A/ja active Pending
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