本発明の各実施形態について、光源モジュールとしてLEDを用いた光ポインティング装置を例として説明する。本発明の光ポインティング装置は、指先等の被写体に対して光を照射し、該被写体から反射された光を受光することによって、被写体の動きを検知するものである。以下、各実施形態の光ポインティング装置の構成について具体的に説明する。また、同一の機能および作用を示す部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態について図1〜5に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態の光ポインティング装置30の概略断面構造図である。図1に示すように、光ポインティング装置30は、基板部26およびカバー部(導光型光学部材)24を備える。基板部26は、回路基板21、光源16、撮像素子15および透明樹脂20から成る。カバー部24は、接触面11、傾斜面13を形成する折り曲げ素子12(光路変換部,プリズム)、結像素子(結像反射部)14および反射面17・18(光路変換部)を含む。カバー部24の接触面11に接触している被写体10は、指先等の被写体であり、光ポインティング装置30が指の指紋の動きを検知する対象物である。なお、ここでは光ポインティング装置30に対する被写体10の状態をわかりやすくするために、被写体10を光ポインティング装置30に対して便宜的に小さく記載している。
ここで、光ポインティング装置30の厚み方向(図1の縦方向)をZ軸とし、光ポインティング装置30の幅方向(図1の横方向)をY軸とする。光ポインティング装置30の下部から上部に向かう方向をZ軸の正方向とし、光源16から撮像素子15に向かう方向をY軸の正方向とする。また、Z軸の正方向を垂直方向、Y軸の正方向を水平方向とも称する。なお、図示していないが、光ポインティング装置30の奥行き方向をX軸とし、図1に示す光ポインティング装置30の奥側から手前側に向く方向をX軸の正方向とする。
まず、基板部26の構成について説明する。本実施形態では、1つの回路基板21上に光源16と撮像素子15を搭載している。光源16および撮像素子15は、ワイヤボンドまたはフリップチップ実装にて回路基板21と電気的に接続されている。回路基板21には、回路が形成されている。当該回路は、光源16の発光タイミングを制御したり、撮像素子15から出力された電気信号を受けて、被写体の動きを検知したりするものである。回路基板21は、同一材料からなる平面状のものであり、例えば、プリント基板やリードフレーム等から成る。
光源16は、カバー部24の接触面11に向けて光を照射するものである。光源16から照射された光Mは、透明樹脂20を介してカバー部24の折り曲げ素子12により屈折されて進行方向が変換されて接触面11に到達する。つまり、光Mは、接触面に対して斜め方向から(接触面に対して或る入射角で)入射する。後述のようにカバー部24は、空気よりも屈折率が大きい材質であるため、接触面11に到達した光Mは、接触面11上に被写体10が無い場合、その一部が接触面11を透過し、残りの一部が接触面11で反射する。このとき、光Mの接触面11に対する入射角が全反射の条件を満たす場合、光Mは、接触面11を透過せず、全て接触面11で反射しカバー部24内に向かう。一方、接触面11上に被写体10がある場合、光Mは、接触面11と接している被写体10の表面で反射し、カバー部24に入射される。光源16は、例えばLED等の光源で実現され、特に高輝度の赤外発光ダイオードで実現されることが好ましい。
撮像素子15は、光源16が照射した、被写体10で反射された光Lを受光し、受光した光に基づいて接触面11上の像を結像し、画像データに変換するものである。具体的に、撮像素子15は、CMOSやCCD等のイメージセンサである。撮像素子15は、不図示のDSP(Digital Signal Processor:算出部)を含み、受光した光をDSPに画像データとして取り込む。撮像素子15は、回路基板21の指示に従って、接触面11上の像を一定の間隔で撮影し続ける。
接触面11上に接している被写体10が移動した場合、撮像素子15が撮影する画像は、その直前に撮影した画像とは異なる画像となる。撮像素子15は、DSPにおいて、撮影した画像データとその直前の画像データとの同一箇所の値をそれぞれ比較し、被写体10の移動量および移動方向を算出する。すなわち、接触面11上の被写体10が移動した場合、撮影した画像データは、その直前に撮影した画像データに対して所定量ずれた値を示す画像データである。撮像素子15は、DSPにおいて、該所定量に基づいて被写体10の移動量および移動方向を算出する。撮像素子15は、算出した移動量および移動方向を電気信号として回路基板21に出力する。なお、DSPは、撮像素子15内ではなく、回路基板21に含まれるものであってもよい。その場合、撮像素子15は、撮像した画像データを順番に回路基板21に送信する。
撮像素子15の処理をまとめると、撮像素子15は、接触面11上に被写体10が無い場合、接触面11の像を撮像する。次に、接触面11上に被写体10が接触すると、撮像素子15は、接触面11と接している被写体10の表面の像を撮像する。例えば、被写体10が指先の場合、撮像素子15は、指先の指紋の像を撮像する。ここで、撮像素子15が撮像した画像データは、接触面11上に被写体10が無いときの画像データと異なる画像データとなっているため、撮像素子15のDSPは、接触面11上に被写体10が接触していることを示す信号を回路基板21に送信する。そして、被写体10が移動すると、DSPが直前に撮像した画像データと比較して、被写体10の移動量および移動方向を算出し、算出した移動量および移動方向を示す信号を回路基板21に送信する。
光源16および撮像素子15は、透光性樹脂からなる透明樹脂20によって樹脂封止されている。透明樹脂20の形状は、略直方体である。透明樹脂20の底面は、回路基板21の上表面と密着して接しており、光源16および撮像素子15にそれぞれ密着する凹部が形成されている。透光性樹脂として、例えば、シリコーン樹脂もしくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂またはアクリルやポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が用いられる。
このように、回路基板21上に搭載された光源16および撮像素子15がそれぞれ透明樹脂20によって樹脂封止されているため、回路基板21、光源16、撮像素子15および透明樹脂20が一体となっている基板部26が形成されている。そのため、光ポインティング装置30の部品点数を減らすことができ、組み立て工程数も減らすことができる。よって、光ポインティング装置30の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置30を実現することができる。次に、カバー部24の構成について説明する。カバー部24は、光源16および撮像素子15などの光ポインティング装置30を構成する各部・各素子を保護するものである。カバー部24は、基板部26の上側に位置し、基板部26の側面および上表面に密着して接している。カバー部24のZ軸の負側の表面であって、基板部26上に搭載され光ポインティング装置30として形成されているときに外部に露出していない表面部分を、カバー部24の裏面と称する。すなわち、カバー部24の裏面における一部の当接面(当接面24A、24B、24C)は、基板部26の側面および上表面と密着して接している。カバー部24の底面(当接面24C)は、基板部26の底面と同一平面を形成している。カバー部24の上表面とカバー部24の底面(当接面24C)および基板部26の底面とは平行となっており、カバー部24の両側面がカバー部24の上表面、並びに、カバー部24の底面(当接面24C)および基板部26の底面に対してある角度を持つ面で形成されている。つまり図1に示すように、光ポインティング装置30の断面図において、台形状となっている。ただし、この形状に限るものではなく前記側面が底面に対して垂直になっていても構わない。
カバー側面の底部付近にはフランジ25が設けられており、本発明の光ポインティング装置が機器に搭載され、指等の被写体によりカバー部24の接触面11からZ軸の負方向側に押された場合に、図示しない基板部26底面に設けられる板バネ状の接点スイッチによるZ軸の正方向側へ生じる力をある位置で規制して、押ボタンスイッチとして必要な一定のストローク量を確保するために使用される。
接触面11は、被写体10が光ポインティング装置30と接する面である。接触面11は、カバー部24の上表面であって、光源16の上方に位置する。
折り曲げ素子(プリズム)12は、光源16の上方、且つ、接触面11の下方に位置し、カバー部24の裏面の基板部26と接しない部分に位置する、カバー部24の裏面の凹部を形成する。折り曲げ素子12には、傾斜面13が形成されており、該傾斜面13とカバー部24の上表面とがなす狭角を傾斜角度θとする。折り曲げ素子12は、光源16から照射された光Mを傾斜面13で屈折させて、被写体10に向かうように光Mの経路を変換するものである。また、折り曲げ素子12は、被写体10から反射された光Lを傾斜面13で全反射させて、カバー部24の内部であって、Y軸の正方向に光Lの経路を変換するものである。傾斜面13で全反射された、被写体10から反射された光Lは、後述の反射面17に向かう。このように、折り曲げ素子12の傾斜面13は、光Mを透過し、光Lを全反射するものである。そのため、カバー部24には、光源16の上方であって、カバー部24と基板部26との間の空間の屈折率より大きい屈折率である材質が用いられる。例えば、カバー部24には、屈折率が1.5程度の可視光吸収タイプのポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂を用いて、上記空間は空気層とすればよい。つまり、折り曲げ素子12の傾斜面13には、光Lを全反射するために、アルミ反射膜などを蒸着していない。
結像素子(レンズ)14は、被写体10からの反射光Lを反射して、撮像素子15上に被写体10の像を結像するものである。結像素子14は、撮像素子15の上方、且つ、撮像素子15よりY軸の正方向側に位置し、カバー部24の裏面の基板部26と接しない部分に位置する、カバー部24の裏面の凹部を形成する。結像素子14には、直交する2方向の曲率が異なるトロイダル面が形成されている。結像素子14は、このトロイダル面で反射する光Lを撮像素子15に結像するように反射している。結像素子14において効率的に光Lを反射させるために、結像素子14のトロイダル面には、金属(例えば、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜など)の反射膜を蒸着させる。尚、上記の説明では、結像素子14にはトロイダル面が形成されているが、その代わりに例えば、球面、非球面等の反射体であって、撮像素子15に結像できるものであれば使用することが可能である。
カバー部24の底面(当接面24C)側の前記折り曲げ素子(プリズム)12の全反射面端部からY軸の正方向に、微細なプリズム構造からなる迷光対策用の迷光防止プリズム(迷光防止部)19Aが形成されている。また、図2はカバー部24の底面(当接面24C)側からの斜視図であるが、結像素子(レンズ)14のX軸方向両サイドにも同様に微細なプリズム構造からなるアパーチャ19Bが形成されている。これら効果を、図3を用いて説明する。図3は、迷光防止構造の効果を模式的に示す光ポインティング装置の断面図である。
図3(a)は、図1の光ポインティング装置30において迷光防止プリズム19Aが無い場合の光ポインティング装置300であり、図3(b)は図1の光ポインティング装置30である。なお、アパーチャ19Bも、同様の微細構造を用いて結像素子14のX軸方向における有効径外からの迷光・外乱光が撮像素子15に入らずある特定方向に導くための構造であるが、迷光防止プリズム19Aと作用・効果は同じため、ここでは迷光防止プリズム19Aのみの説明を行う。一方、光源16の光は光源の発光点からある拡がりを持って出射する。その出射光のうち、光Mは被写体10で散乱反射されて、反射光Lとなって、撮像素子15に入射する。しかし、M以外の光N1や光N2は、迷光防止プリズムが形成されていない図3(a)では、図示するがごとく、結像素子14による光路を通らず迷光となって撮像素子15に入射する。この場合、光路Lを通る光により撮像素子15上に撮像された像を回路基板21により画像処理された信号成分は、被写体10が動いた場合、動いた量や方向に関する信号情報が得られる。これに対して、光路N1や光路N2を通る光による同様の像は、被写体10が動いたとしても、動かない像しか得られないため、信号情報が得られないだけでなく、動く像に対して動かない像が重なり、像の動きを隠してしまうため、正確な信号情報が得られなくなる。(ここで、以下信号情報が得られる光路Lを通る光を信号光、信号光以外をノイズ光と称する。また、光ポインティング装置内部の光源で発生するノイズ光を迷光、光ポインティング装置外部から入射する光により発生するノイズ光を外乱光と定義する。)一方、迷光防止プリズム19Aを設けた図3(b)では、図3(a)で発生していた迷光N1・N2が、N1’・N2’に変化して、カバー部24外に反射され、回路基板21等で吸収されてしまうため、ノイズ光とならない。この迷光防止プリズム19Aやアパーチャ19Bは、図3に示した光源16のN1・N2の角度の光以外にも効果があり、また光ポインティング装置30内部に設けた光源16からの迷光だけではなく、装置外からの外乱光にも効果がある。
迷光防止プリズム19Aやアパーチャ19Bの微細プリズム構造は、一辺の大きさが30〜100μm程度で、形成角度も成形金型のアンダーカット方向にならないように適宜設定すれば良い。また、図示していないが、迷光防止プリズム19Aやアパーチャ19Bに、金属(例えば、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜など)蒸着膜を付与して反射特性を持たせることで、プリズムの全反射角度以外の角度からくる迷光を撮像素子15と反対方向に反射させたり、遮光膜(例えばカーボンブラックを混ぜ込んだ塗料やインクをインクジェットや印刷にて形成する)を付与してその場で迷光を吸収させることでも迷光対策効果を高めることが出来る。また、迷光対策用の微細プリズム構造と上記蒸着膜や遮光膜をハイブリッドすることも出来る。例えば、迷光対策を施したい箇所のすぐ近くに全反射面がある場合、大部分を蒸着膜や遮光膜で覆っても、覆っていないわずかな部分からの迷光が問題となる。これは、上記膜の形成精度が0.5mm〜1mと低く、全反射面に上記膜が少しでも付かないように、マスクを大きくする必要があるからであるが、金型の製造精度は上記値より1桁以上(10μm程度)あるため、この膜が形成出来ない部分に微細プリズム構造を形成することは十分可能である。
また、迷光防止構造として、プリズム以外に凹凸のディンプル構造でも、作用は違うが入射した光がその場で散乱するため、強い光となって撮像素子15に到達することは無くなるため、迷光防止作用は十分ある。
反射面17は、傾斜面13で全反射された光Lを結像素子14に入射させ、結像素子14から反射された光Lを撮像素子15に入射させるために、光Lを反射するものである。反射面17は、撮像素子15の上方であって、カバー部24の上表面に位置する。反射面17は、カバー部24の上表面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面17を形成する反射膜は、外部に露出しており使用者によく見えるため、外観上、できるだけ目立たない膜とすることが望ましい。例えば、光源16が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、反射面17を形成する反射膜は、図4(a)に示す特性を有する赤外線反射膜であればよい。図4(a)は、各波長における透過率および反射率を示す図であり、横軸に波長(nm)、縦軸に透過率および反射率(%)が示されている。図示の点線が透過率を示し、実線が反射率を示す(以下、図4(b)および(c)も同様である)。反射膜の具体例として、反射面17を形成する反射膜は、光源16から照射された800nm以上の波長帯の赤外光を反射し、800nm以下の可視波長帯の光を透過するものであればよい。このように、光源16が照射する光の波長と、反射面17を形成する反射膜の反射率および透過率の特性を適宜設定することによって、被写体10からの反射光Lを効率的に反射し、且つ、外観上は目立たない反射面17を形成することができる。
また、光源16が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、カバー部24は、図4(b)に示す特性を有する材質で形成されることが好ましい。具体的には、カバー部24の材質を赤外光のみを透過する可視光吸収型のポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂にすればよい。このような材質でカバー部24を形成することによって、カバー部24の外部から進入してくる不要光のうち、可視光成分をカバー部24で遮断することができる。そして、上述のように、赤外光を反射する反射面17を形成することによって、上記不要光のうち、赤外光成分を反射面17で遮断することができる。光ポインティング装置30に入射する不要光を遮断することによって、該不要光による誤動作を防ぐことができる。
さらに、光ポインティング装置30の表面である、カバー部24の表面に色目を付ける場合、例えば、カバー部24の上表面および反射面17の上表面に、図4(c)に示すような所定の色(図示の例では、緑色)の波長帯のみを反射し、それ以外の波長を透過する特性を有する材料でコートすればよい。このような特性を有する材料でカバー部24の上表面および反射面17の上表面をコートすることによって、光ポインティング装置30の光学特性を損ねることなく、光ポインティング装置30の表面に所望の色を付けることができる。
反射面18は、結像素子14から反射されて反射面17で反射された光Lを再度反射面17に向けて反射するものである。反射面18は、撮像素子15の上方、且つ、撮像素子15よりY軸の正方向側に位置し、カバー部24の裏面に位置する。反射面18は、カバー部24の裏面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面18を形成する反射膜は、効率的に光を反射するものが好ましい。例えば、反射面18は、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜などの金属を蒸着して形成される。
このように、本実施の形態の光ポインティング装置30では、基板部26における撮像素子15を封止する透明樹脂20側面及び上表面を基準として、基板部26の上方に、カバー部24を組み立てている。そして、カバー部24には、基板部26の透明樹脂20に当て決めを行うための基準となる当接面24A・24Bが、接触面11、折り曲げ素子12や結像素子14及びフランジ25と一体的に形成されている。そのため、当接面24A・24Bと、各接触面11、折り曲げ素子12や結像素子14及びフランジ25とが、金型公差で高精度に配置されている。
したがって、カバー部24の当接面24A・24Bを、基板部26の透明樹脂20の側面及び上面にコンタクトさせることによって、カバー部24との位置関係を高精度に配置することができる。それゆえ、光ポインティング装置30を構成する各部・各素子を精度良く配置することができるため、被写体10の検知精度の高い光ポインティング装置30を実現することができるものとなっている。
ここで、再度、光源16から照射された光が被写体10を反射して撮像素子15に入射する経路を説明する。まず、光源16から照射された光Mが、折り曲げ素子12の傾斜面13で屈折透過されて、接触面11に到達する。接触面11上に被写体10がある場合、被写体10の接触面11に接している表面上で、光源16から照射された光Mが散乱反射する。被写体10の表面で反射された光Lは、折り曲げ素子12の傾斜面13で全反射されて、進路がY軸の正方向に変わる。傾斜面13で全反射された光Lは、反射面17で反射し、結像素子14に到達する。そして、光Lは、結像素子14で折り返し反射されて、反射面17、反射面18、反射面17で次々と反射されて撮像素子15に入射する。
このような光学系とすることで、光学系の光路長を長く取り、収差を抑えるようにしても、カバー部24のY軸方向の長さを小さく光路長に比較して小さくすることが出来、小型化を図ることが出来る。
上述のように、本実施形態では、接触面11、折り曲げ素子12、結像素子14、迷光防止プリズム19Aおよびアパーチャ19Bがカバー部24と一体で成形されている。そのため、光ポインティング装置30の部品点数を減らすことができ、組み立て工程数も減らすことができる。また、カバー部24を成形する金型を高精度で作成することにより、折り曲げ素子12の傾斜面13および結像素子14、迷光防止プリズム19Aおよびアパーチャ19Bを高精度に製造することができ、且つ、接触面11、折り曲げ素子12、結像素子14、迷光防止プリズム19Aおよびアパーチャ19Bの位置関係も金型精度で配置することができる。よって、光ポインティング装置30の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置30を実現することができる。
また、接触面11、折り曲げ素子12、結像素子14とを、それぞれ別部品として組立てる場合、組み立て用の当接面、嵌合形状等の形状が必要となり、さらに迷光防止対策として、微細構造が形成できないため、遮光シート等別途アパーチャや迷光防止手段が必要になるため、それらを組み付けるための当接面、嵌合形状等の形状も必要となり、さらにそれぞれの相対位置関係を調整するためのマージンを確保する必要がある。一体とする場合は上記の形状が必要なく、必要最小限の光学面があれば、調整マージンも確保する必要がなく、接触面11、折り曲げ素子12および結像素子14、迷光防止プリズム19Aおよびアパーチャ19Bを含むカバー部24の厚みを小さくすることができる。それゆえ、光ポインティング装置30の厚みを小さくすることができる。
また、本実施形態では、基板部26の透明樹脂20側面および上表面を基準として、基板部26の上方に、カバー部24を組み立てている。それを、図5を用いて説明する。図5は、本発明第1の実施形態における光ポインティング装置の組立方を説明する模式図である。カバー部24には、基板部26の透明樹脂20に当て決めを行うための基準となる当接面24A・24B・24Cが、接触面11、折り曲げ素子12や結像素子14、迷光防止プリズム19A、アパーチャ19Bおよびフランジ25と一体的に形成されている。そのため、当接面24A・24B・24Cと、各接触面11、折り曲げ素子12や結像素子14、迷光防止プリズム19A、アパーチャ19Bおよびフランジ25とが、金型公差で高精度に配置されている。カバー部24を図5の矢印Pのように配置し、カバー部24の当接面24A・24B・24Cに対して、基板部26の透明樹脂20の側面および上面(表面)とコンタクトさせることで、カバー部24との位置関係を高精度に配置することができる。よって、光ポインティング装置30を構成する各部・各素子を精度良く配置することができるため、被写体10の検知精度の高い光ポインティング装置30を実現することができる。
また、透明樹脂20の側面上およびレンズ部を除く上表面上に遮光性樹脂を樹脂封止してもよい。また、透明樹脂20の側面上、および被写体からの反射光Lが透過する箇所を除く透明樹脂20の上表面上に遮光性樹脂を樹脂封止してもよい。遮光性樹脂として、透光性樹脂と同様に、例えば、シリコーン樹脂もしくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂またはアクリルやポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が用いられる。ただし、遮光性樹脂は、透光性樹脂と異なり、カーボンブラックを含む。このように、透明樹脂20の周囲に遮光性樹脂を樹脂封止することによって、光源16から照射された光が直接、または、被写体10ではない箇所で反射して、撮像素子15に入射することを防ぐことができる。いわゆる、被写体10からの反射光Lではない迷光が撮像素子15に入射することを防ぐことができる。よって、迷光による光ポインティング装置30の誤動作を防ぐことができ、高精度に被写体10を検知することができる。
以上のように、本実施形態の光ポインティング装置30は、カバー部24の裏面(光源16および撮像素子15と対向する面)に、光源16から出射された光が結像素子14を経ずに撮像素子15に入射する光の経路を変える迷光防止プリズム19Aを備えている。すなわち、カバー部24に、光源16から出射された光が被写体10で反射することなく直接撮像素子15に入射する光に対する対策(迷光対策)が施されている。これにより、光源16から出射された光のうち、迷光の原因となる被写体10で反射されなかった光が迷光防止プリズム19Aに到達すると、迷光防止プリズム19Aから出射するときに経路が変化する。従って、光源16から出射された光が被写体10で反射することなく迷光となることを防止することができるという効果を奏する。
また、迷光防止プリズム19Aは、カバー部24の裏面に形成されているため、薄型の光ポインティング装置30においても迷光を防止することができる。
それゆえ、薄型の光ポインティング装置においても、撮像素子15にて撮像した画像データに対する迷光による影響を低減することのできる光ポインティング装置30を提供することができるという効果を奏する。
しかも、光ポインティング装置30は、接触面11、折り曲げ素子12、結像素子14、迷光防止プリズム19Aおよびアパーチャ19Bがカバー部24と一体的に形成されている。すなわち、光ポインティング装置30において必須の構成である光学系が、一体的に形成されている。これにより、光学系の光路長を長く取り、収差を抑えるようにしても、カバー部24の垂直方向の長さを光路長に比較して小さくすることができる。従って、光ポインティング装置30のさらなる小型化,薄型化を実現することができる。また、一体成形することによって、カバー部24を高精度に組み立てることができると共に、部品点数を削減することもできる。
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について、図6に基づいて説明する。図6は、第2の実施形態の光ポインティング装置30aの概略断面構造図である。第2の実施形態では、第1の実施形態における、反射光Lを水平方向に全反射させる折り曲げ素子12に換えて、回折素子12’を配置している。以下では、第2の実施形態において、回折素子12’を配置したことにより、第1の実施形態と異なる点について説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成については説明を省略する。
図6に示すように、基板部26において、光源16を封止する透明樹脂20は、Y軸の負側の側面が回路基板21の側面と同一平面ではなく、Y軸の負側の側面が回路基板21の側面よりY軸の正側に位置している。光源16から照射された光Mは、透明樹脂20のレンズ部27を介して、カバー部24の裏面で透過屈折され接触面11に到達する。
また、カバー部24は、接触面11、回折素子12’、結像素子14、迷光防止プリズム19A、アパーチャ19Bおよび反射面17、18を含む。カバー部24は、基板部26の上方に位置し、撮像素子15および光源16を封止する透明樹脂20におけるX軸の正側の側面およびY軸の正側の側面並びに上表面に密着して接している。
回折素子12’は、光源16の上方、且つ、接触面11の下方であって、カバー部24の裏面(当接面24C)の基板部26と接しない部分に位置する。回折素子12’は、被写体10から反射された光Lを反射させて、カバー部24の内部であって、Y軸の正方向に光Lの経路を変換するものである。回折素子12’で反射された、被写体10から反射された光Lは、反射面17に向かう。
回折素子12’の具体的な形状を図7に基づいて説明する。図7(a)は、回折素子12’の断面形状を示す概略構成図である。回折素子12’は、+1次の反射回折光を利用する反射型回折素子である。回折素子12’の形状は、+1次光が強く発生するように、例えば、図7(a)に示すような断面形状がブレーズ形状であることが望ましい。図7(a)に示すブレーズ形状の回折素子12’を用いることにより、光利用効率が上がるとともに、迷光となる0次光、−1次光および高次の回折光を抑えることができる。よって、光ポインティング装置30aにおいて、光学系の結像性能の劣化を防ぐことが可能となる。
また、反射率を向上させるために、回折素子12’の外側表面(Z軸の負側の表面)に反射膜al(例えば、アルミ、銀、金、誘電体ダイクロ膜など)を蒸着していることが望ましい。ここで、図7(a)に示すように、回折素子12’のブレーズ形状の溝深さ(Z方向の長さ)をtとする。溝深さtは、+1次回折効率が最大となる深さが望ましい。例えば、カバー部24の屈折率n、光源16が照射する光の波長をλとした場合、t=λ/(2n)とすることが望ましい。
また、回折素子12’のブレーズ形状の溝パターンは、図7(b)のように直線の等ピッチであり、回折角をできるだけ大きくするためにできるだけ細かくすることが望ましい。ただし、製造上、金型に対してバイトを用いて溝を切削加工で作製し、成形することが最もコスト的に有利である。そのため、溝を切削加工で精度よく作製できる範囲を考慮した場合、回折素子12’の溝ピッチは0.8〜3.0μmの間で設計することが望ましい。
さらに、撮像素子15上に投影する被写体10の像を写す結像性能を向上させるために、回折素子12’の溝パターンを、図7(c)に示すように曲線とすることで、像の歪みを補正することができる。また、図7(d)に示すように回折素子12’の溝ピッチを等ピッチでなく、徐々にピッチが変化するパターンとし、或る一方向にレンズ効果を持たすように回折素子12’を設計しても良い。この場合、撮像素子15上において、X軸方向およびY軸方向で焦点距離が異なることで発生する収差を補正することができる。
また、図5(e)に示すように、回折素子12’の溝パターンを曲線かつ不等ピッチのパターンとすることで、像の歪みおよび非点収差(アス)の両方を補正することができる。
また、回折素子12’の別の具体例として、回折素子12’に反射型のフレネルレンズを用いてもよい。フレネルレンズの具体的な形状を図8に示す。図8は、図7(a)と同様に、フレネルレンズである回折素子12’の断面形状を示す概略構成図である。図示のように、フレネルレンズの断面形状がブレーズ形状である。また、反射率を向上させるために、回折素子12’の外側表面に反射膜al(例えば、アルミ、銀、金、誘電体ダイクロ膜など)が蒸着されていることが望ましい。回折素子12’にフレネルレンズを用いる場合、カバー部24の一部にプリズムやバルク型レンズを形成するのに比べて、カバー部24の厚みの均一化を図ることができる。そのため、カバー部24の強度を上げながら、光ポインティング装置30aの薄型化が実現できる。
また、回折素子12’にホログラムレンズを用いれば、通常のレンズで補正しきれない収差を補正することができるため、結像性能があがり、撮像素子15上に被写体10の像を鮮明に映すことができる。
このように、被写体10から反射された光Lを水平方向に反射するために回折素子12’を用いると、カバー部24に折り曲げ素子(プリズム)12を形成するのに比べて、カバー部24の厚みの均一化を図ることができる。そのため、カバー部24の強度を上げながら、薄型化が実現できる。それに加えて、光源16から照射された光を接触面11に対して均一な光強度で照射することができる。
また、被写体10からの反射光Lを水平方向に折り曲げる従来の光ポインティング装置(例えば、上記特許文献1の構成)において、折り曲げ素子12の大きさ、特にZ軸方向の長さが光ポインティング装置の厚みに大きく影響する。つまり、光ポインティング装置を薄型に設計するためには、折り曲げ素子12のZ軸方向の長さを小さくすることが重要である。しかしながら、折り曲げ素子12の大きさは自由に設計できるものではなく、折り曲げ素子12の大きさは接触面11の大きさに依存する。そして、接触面11上の模様を検出するためには、接触面11がある程度の面積を有していなければならない。よって、接触面11の面積を確保しようとすると、必然的に折り曲げ素子12が大きくなり、光ポインティング装置30の厚み(Z軸方向の大きさ)を小さくすることができなかった。
第2の実施形態では、折り曲げ素子12の代わりに、折り曲げ素子12よりもZ軸方向の長さを小さくできる回折素子12’を用いることによって、第1の実施形態より光ポインティング装置30aの薄型化を図ることができる。
第2の実施形態でも、第1の実施形態で示した方法と同様に、基板部26における撮像素子15を封止する透明樹脂20側面及び上表面を基準として、基板部26の上方に、カバー部24を組み立てている。すなわち、カバー部24の裏面における一部の当接面(当接面24A、24B、24C)と、撮像素子15および光源16を封止する透明樹脂20におけるX軸の正側の側面およびY軸の正側の側面並びに上表面を基準として、基板部26の上方にカバー部24を組み立てている。そのため、基板部26とカバー部24との位置関係を高精度に配置することができる。よって、光ポインティング装置30aを構成する各部・各素子を精度良く配置することができるため、被写体10の検知精度の高い光ポインティング装置30aを実現することができる。
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態について図9に基づいて説明する。図9は、第3の実施形態の光ポインティング装置30bの概略断面構造図である。第3の実施形態では、第1・2の実施形態に加えて、光ポインティング装置反射光Lを水平方向に全反射させる折り曲げ素子12に換えて、回折素子12’を配置している。以下では、第3の実施形態において、回折素子12’を配置したことにより、第1の実施形態と異なる点について説明する。なお、第3の実施形態においては、説明上第1の実施形態と同じ構成を用いて説明するが、その変更部分および効果については第2の実施形態でも同様であり、同様の効果をもつ。また、第1の実施形態と同様の部分はその説明を省略する。
図示のように、光ポインティング装置30bは、カバー部24の接触面11上部に、装置外部からの光を遮光する遮光膜28A・28Bが形成されている。図中Pで示すウィンドエリアは、前記遮光膜が形成されておらず、被写体10がカバー部24の接触面11に接触する部分であり、光源16からの光が前記遮光膜28A・28Bに遮光されることなく、被写体10に到達できるエリアである。
本実施形態のポインティング装置30bの外から来る光において、結像素子14における良好な特性が得られるカバー接触面上の物体面以外からの光は、カバー部24内部で多重反射して、撮像素子15に入射するため、カバー部24の結像素子14を含めた光学系を通過する信号光に対して、外乱光となり撮像素子15で撮像される像のコントラストが低下する。もちろん、装置の外から来る光でも、被写体10が指である場合、指を透過してくる光が接触面からカバー部24内部に入射し、結像素子14を含めた光学系を通過する成分は、信号光となるためコントラストが向上するが、外乱光の方が多いため、結果として上記像のコントラストは低下してしまう。
しかし、上記の構成によれば、前記外乱光の影響を抑制し、信号光のみを増強することが出来るため、前記撮像素子にて撮影される像のコントラストが向上する。
前記遮光膜28A・28Bは、具体的に外乱光を反射する反射膜(例えば、アルミ、銀、金、誘電体ダイクロ膜など)でも構わないし、また外乱光をその場で吸収する吸収膜(例えば、カーボンブラックを混ぜた塗料や墨)でも構わない。蒸着膜の場合は、前記ウィンドエリアをマスクして蒸着すれば良いし、吸収膜の場合は、インクジェットやパッド印刷により形成すれば良い。
遮光膜を形成するエリアは、フランジ25は搭載する機器の筐体内部に配置されるため、機器の筐体から突出するフランジ25よりもZ軸の正方向に形成されていれば良い。また、機器の筐体部にも厚みがあり、その厚みにより外乱光が遮光されるため、遮光膜28Bも必ずしも必要とではなく、遮光膜28Aのみを形成する等の措置を適宜行えば良い。
〔第4の実施形態〕
最後に、光ポインティング装置を搭載した電子機器について、図10を用いて説明する。図10は、光ポインティング装置107を搭載した携帯電話機100の外観を示す図である。図10(a)は携帯電話機100の正面図であり、(b)は携帯電話機100の背面図であり、(c)は携帯電話機100の側面図である。図10では、電子機器として携帯電話機である例を示しているがこれに限定されるものではない。電子機器として、例えば、PC(特にモバイルPC)、PDA、ゲーム機、テレビ等のリモコンなどであってもよい。
図10に示すように、携帯電話機100は、モニター側筐体101および操作側筐体102を備える。モニター側筐体101は、モニター部105およびスピーカー部106を含み、操作側筐体102は、マイク部103、テンキー104および光ポインティング装置107を含む。携帯電話機100に搭載される光ポインティング装置107は、上述の第1〜4の実施形態で説明した光ポインティング装置30、30a、30b、30cの何れも適用可能である。
なお、本実施形態において、光ポインティング装置107は、図10(a)に示すように、テンキー104の上部に配置されているが、光ポインティング装置107の配置方法およびその向きについては、これに限定されるわけではない。
スピーカー部106は、音声情報を外部に出力するものであり、マイク部103は音声情報を携帯電話機100に入力するものである。モニター部105は、映像情報を出力するものであり、本実施形態においては、光ポインティング装置107からの入力情報を表示するものである。
なお、本実施形態の携帯電話機100は、図10(a)〜図10(c)に示すように、上部の筐体(モニター側筐体101)と下部の筐体(操作側筐体102)とがヒンジを介して接続されている、いわゆる折りたたみ式の携帯電話機100を例として挙げている。携帯電話機100として、折りたたみ式が主流であるため、本実施形態では折りたたみ式の携帯電話機を一例として挙げているのであって、光ポインティング装置107を搭載することができる携帯電話機100は、折りたたみ式に限るものではない。
近年、折りたたみ式の携帯電話機100において、折りたたんだ状態で厚みが10mm以下のものも登場してきている。携帯電話機100の携帯性を考慮するならば、その厚みは極めて重要な要素となっている。図10に示す操作側筐体102において、図示されない内部の回路基板等を除いて、その厚みを決定する部品は、マイク部103、テンキー104、光ポインティング装置107である。この中で、光ポインティング装置107の厚さが最も厚く、光ポインティング装置107の薄型化は、携帯電話機100の薄型化に直接繋がる。よって、上述のように薄型化可能な本発明の光ポインティング装置は、携帯電話機100のような薄型化を必要とする電子機器に対して好適な発明である。
なお、上述の各実施形態では、光源16を備えた光ポインティング装置について説明した。しかし、光源16の代わりに、例えば太陽光のような外光の場合であっても、本発明の構成によって、性能を低下させることなく動作する光ポインティング装置を得ることができる。
また、上述の各実施形態では、カバー部24(導光型光学部材)を用いた光ポインティング装置について説明した。しかし、カバー部24を用いない従来の光ポインティング装置(例えば、特許文献2,3の構成)に、本発明の迷光防止部を設けることによって、同様の効果を得ることが可能となる。
本発明は、以下のように表現することもできる。
本発明に係る光ポインティング装置は、被写体からの散乱光を結像させる結像手段と、上記被写体からの散乱光を受光し上記被写体の表面の像を一定の間隔で連続して撮像して該像を画像データとして取り込む撮像素子と、上記撮像素子が取り込んだ画像データを直前に上記撮像素子が取り込んだ画像データと比較することによって、上記被写体の移動方向および移動量を算出する算出部と、前記結像手段と前記撮像素子と、前記算出部とを覆うカバー部材とを備えた光ポインティング装置であって、前記カバー部材には、少なくとも前記被写体が接触する接触面と、前記結像手段と、前記接触面から入射した前記被写体からの散乱光の方向を偏向させて前記結像手段に導く光路偏向手段と、迷光を防止する迷光防止手段と、前記結像手段に付与されるアパーチャが、一体的に形成されていてもよい。
上記の構成によれば、前記カバー部と、前記光路偏向手段、前記結像手段、迷光防止手段およびアパーチャとが一体で成形されているため、光ポインティング装置を構成する部品点数を削減することができる。よって、光ポインティング装置の製造工程において、組立工数を削減することができる。それゆえ、各部品の組み立て時に発生する組立誤差を抑えることができる。また、カバー部を成形する金型を高精度で作成することにより、光路偏向手段・結像手段・迷光防止手段およびアパーチャ自体の形状を高精度に製造することができ、且つ、接触面と折り曲げ素子および結像素子の位置関係や、結像手段とアパーチャの位置関係もばらつき無く高精度に配置することができる。従って、光ポインティング装置の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度が高く、また迷光によるS/N(Signal/Noise:ここでいうSignalとは接触面から光路偏向手段および結像手段を通って撮像素子に入射する被写体からの散乱光成分であり、Noiseとはそれ以外の光路を通って撮像素子に入射する不要光成分)比の高い光ポインティング装置を実現することができるという効果を奏する。
従って、上記の構成によれば、光ポインティング装置の製造コストを削減することができると共に、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置を実現することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る光ポインティング装置の迷光防止手段およびアパーチャは、微細構造であってもよい。
上記の構成によれば、迷光防止手段およびアパーチャは、前記光路偏向手段および前記結像手段と共に、金型等にて一体的に形成することが出来る。前記迷光防止手段および前記アパーチャは、インサート成形という手法でもカバー部材に対して一体的に形成することも出来るが、別パーツが必要となり、インサート成形時にそれらパーツの位置ずれも出てくる。しかし微細構造とすれば、別パーツも必要とせず高精度配置が可能となる。
また、本発明に係る光ポインティング装置の迷光防止手段およびアパーチャの微細構造はプリズム構造であってもよい。
前記迷光防止手段およびアパーチャの微細構造として、細かい凹凸のディンプル構造でも効果はあるが、ディンプル構造では迷光成分がそこで散乱し、再度カバー部の別の面で反射して撮像素子に入射する可能性は小さくない。しかし、上記の構成によれば、プリズムの平面部が迷光を特定の方向に反射するため、再度カバー部の別の面に反射して撮像素子に入る可能性が低くなるため、S/N比が向上する。
また、本発明に係る光ポインティング装置の迷光防止手段およびアパーチャに、金属や誘電体を蒸着した蒸着膜による反射性能が付与されていてもよい。
迷光防止手段およびアパーチャに入射する迷光の入射角度は一定ではなく、さまざまな方向から入射するが、反射性能が付与されていない場合、迷光防止手段およびアパーチャ構造からくる全反射条件にあったある特定範囲の角度のみの迷光しか特定方向に反射出来ないが、蒸着膜による反射性能を付与することによって反射出来る角度範囲を広げて、迷光防止性能を向上することが出来る。
また、本発明に係る光ポインティング装置の前記結像手段は、球面、非球面、トロイダル面のいずれかによって構成されていてもよい。
光ポインティング装置の光学系の構成から発生する球面収差やコマ収差などの光学収差、および、撮像素子上に投影される像の歪量に基づいて、結像手段の曲率を球面・非球面・トロイダル面に適宜設定することで、前記光ポインティング装置の光学系の光学特性をさらに向上させることが出来る。
また、本発明に係る光ポインティング装置の前記結像手段は、金属や誘電体等を蒸着した蒸着膜により反射性能を付与されていてもよい。
上記構成とすることで、被写体での散乱光を結像手段で反射させて、被写体方向に戻すことが出来る、前記光ポインティング装置の平面方向の小型化を行うことが出来る。
また、本発明に係る光ポインティング装置の前記光路偏向手段は、全反射面、金属や誘電体を蒸着した蒸着膜反射面、または反射型回折格子面や反射型ホログラム面のいずれかによって構成されていてもよい。
前記光路偏向手段が全反射面の場合、後述する蒸着反射面や反射型回折格子面や反射型ホログラム面に対して、光の利用効率が一番高いため、撮像素子上に投影される像が明るくなるため、S/N比が向上する。また、前記光路偏向手段が蒸着反射面である場合、光の利用効率は落ちるが、光路偏向手段に入射される光も確実に反射させることが出来る。
前記接触面がある前記カバーの表面は、被写体が接触する可能性があり、前記接触面以外の箇所に被写体が接した場合、その被写体が接している箇所で反射光を反射させると、反射光がカバー部の表面で反射するのではなく、被写体の表面で反射することになるため、反射光の経路にずれが生じる。そこで、前記蒸着反射膜をこの箇所に配置することによって、反射光の経路のずれが発生することを抑えることが出来、前記結像素子の結像性能があがり、前記撮像素子が被写体の像を鮮明に撮像することができる。
また、前記光路偏向手段が反射型回折素子および反射型ホログラム面である場合、蒸着膜反射面同様、光の利用効率は落ちるが、特に前記上記カバー部の接触面と反対方向に、前記光路偏向手段を成形する場合には、そのための凹部を形成することなく、光路偏向手段の機能を含む前記カバー部を成形することができる。よって、凹部の折り曲げ素子を含む前記カバー部より、全記カバー部の厚みを均一にすることができ、前記カバー部の強度を上げながら、上記カバー部の薄型化が実現できる。加えて前記偏向手段が反射型ホログラム面の場合、前記結像手段にて補正しきれない収差を補正する役割を持たせることも出来るため、上記折り曲げ素子の反射光を反射する上記結像素子の結像性能があがり、上記撮像素子が被写体の像を鮮明に撮像することができる。
これら各反射面を適宜用いることにより、光ポインティング装置の性能を向上させることが出来る。
また、本発明に係る光ポインティング装置は、前記カバー部材によって覆われた光源をさらに備え、前記被写体からの散乱光は、前記光源から出射された光に基づいて生じるものであってもよい。
上記の構成によれば、前記散乱光は、前記光源から出射されて前記被写体によって反射された光に基づいて生じる。そのため、光源から出射された光が前記被写体に照射する角度をある程度揃えることができる。それゆえ、光源の照度を落としても、被写体の検知に十分な光量を保つことができる。よって、光源に供給する電流量を減らすことができるため、光ポインティング装置の消費電流量を抑えることができる。
また、本発明に係る光ポインティング装置の前記結像手段における物体面に位置するカバー部材の接触面以外の領域に装置外部からの光を遮光する遮光性能が付与されていてもよい。
本発明に係る光ポインティング装置の外から来る光において、前記結像手段における良好な特性が得られるカバー接触面上の物体面以外からの光は、光ポインティング装置にとっては、外乱光となる。
上記の構成によれば、前記外乱光の影響を抑制することが出来るため、前記撮像素子にて撮影される像のコントラストが向上する。
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記光源および上記撮像素子を樹脂封止した各透明樹脂は、略直方体の形状であり、上記光源を樹脂封止した透明樹脂の一方の側面は、上記基板の一方の側面と同一平面上に配置され、上記撮像素子を樹脂封止した他の透明樹脂の一方の側面は、上記基板の他方の側面と同一平面上に配置され、各透明樹脂の上表面と、上記基板の両側面と、それと同一平面の上記光源および上記撮像素子を樹脂封止した透明樹脂の一方の側面と、を基準として、上記カバー部を上記基板の上側に配置されていてもよい。
上記の構成によれば、上記各透明樹脂の上表面と、上記基板の両側面と、それと同一平面上に配置されている、上記光源および上記撮像素子を樹脂風刺した透明樹脂の一方の側面と、を基準として、上記カバー部を上記基板の上側に配置している。そのため、上記接触面、上記光源、上記撮像素子、上記折り曲げ素子および上記結像素子のそれぞれの位置関係を高精度に配置することができる。従って、被写体の検知精度の高い光ポインティング装置を実現することができる。
また、本発明に係る電子機器は、上記光ポインティング装置を備えるものである。
上記の構成によれば、上記電子機器は、薄型化が容易な上記光ポインティング装置を備えている。光ポインティング装置を搭載する場合、光ポインティング装置の厚みが電子機器の厚みに大きく影響するため、上記光ポインティング装置を備えていても、電子機器の薄型化が実現できる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。