本発明の光学フィルムは、一般式(1)で表されるラクトン環構造を有することを特徴とするアクリル樹脂(A)、および一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有するセルロースエステル樹脂(B)とを含有することを特徴とする。
本発明のアクリル樹脂(A)は、位相差発現性に優れているが、脆性に劣る。セルロースエステル樹脂を混合することにより脆性は改善されるものの、互いの樹脂の相溶性の善し悪しにより、脆性の改善レベルに差があった。この脆性改善レベルの差は、環境変化に対する光学安定性と相関が見られた。
本発明の一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有するセルロースエステル樹脂(B)は、一般式(1)で表されるアクリル樹脂との相溶性が高く、混合することにより大きな脆性の改善が得られる。そして環境変化に対する光学安定性も大きくすることができた。
さらに、位相差制御剤などの低分子量成分を添加すると脆性が劣化する傾向にあるが、本発明のアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の混合物では脆性の劣化も小さく、位相差制御の範囲を広くすることができた。
また、位相差制御剤のフィルム中での安定性もアクリル樹脂のみあるいはセルロースエステル樹脂のみの場合に比べて良好でブリードアウトなどを生じることも少ない。
以下、各構成要件について詳細に述べる。
<一般式(1)で表されるアクリル樹脂>
前記一般式(1)で表されるアクリル樹脂は、ラクトン環含有重合体であって、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。
R1で表される有機残基として、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。R2は水素原子が好ましい。R2で表される有機残基として、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、−(CH2)mNR11R12、−(CH2)mN(R11R12R13)+・M−、または−(C2H4O)pR14等が挙げられる。
ここで、R11、R12およびR13は同一でも異なっていてもよく、各々、炭素数1〜8のアルキル基であり、R14は炭素数1〜18のアルキル基であり、m=2〜5、p=1〜80であり、M−はCl−、Br−、SO4 2−、PO4 3−、CH3COO−またはHCOO−である。R2は水素原子、または炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、またはエチル基がより好ましい。
R3で表される有機残基として、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。R3は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、または2−ヒドロキシエチル基がより好ましい。
本発明のラクトン環含有重合体であるアクリル樹脂(A)を得るための製造方法は、公知の製造方法、例えば、特開2005−281589号、同2006−96960号、同2006−171464号、同2008−299096号に記載の方法を使用することができる。
例えば、ラクトン環含有重合体は、好ましくは、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を得る重合工程、得られた重合体(a)を加熱処理することにより分子内環化して、ラクトン環構造を重合体(a)に導入するラクトン環化縮合工程を行うことによって得られる。
前記重合工程においては、下記一般式(1a)で表される単量体を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を得る。
(式中、R7およびR8は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
一般式(1a)で表される単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。
これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、本発明の効果を十分に発揮させる点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。一般式(1a)で表される単量体は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
重合工程において供する単量体成分中の一般式(1a)で表される単量体の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。
ラクトン環含有重合体は、一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造としては、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(2a)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
(式中、R4は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、または−C−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5およびR6は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。
水酸基含有単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
一般式(2a)で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
水酸基含有単量体としては、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
一般式(2a)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
重合工程で得られた重合体(a)は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)であり、重合体(a)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは5000〜500000、特に好ましくは10000〜200000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
重合工程で得られた重合体(a)は、続くラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることによりラクトン環構造が重合体(a)に導入され、ラクトン環含有重合体となる。
この重合体(a)へラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。
ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、本発明の効果を十分に発揮させることができる。
重合体(a)を加熱処理する方法については、公知の方法、例えば、特開2005−281589号、同2006−96960号、同2006−171464号、同2008−299096号に記載の方法を使用することができる。
例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。
ラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは5000〜500000、特に好ましくは10000〜200000である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG(熱重量)測定における150〜300℃の間での質量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、15質量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が6以下となるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上250℃以下である。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下である。残存揮発分の総量が5000ppmよりも多いと、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良の原因となる。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。
本発明のアクリル樹脂(A)は、光学フィルムの全質量に対して99〜20質量%であり、90〜50質量%であることが好ましい。
<一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有するセルロースエステル樹脂(B)>
本発明における一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有するセルロースエステルは、未置換の水酸基を有するセルロース、またはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、フタリル基等のアシル基によってすでに一部の水酸基が置換されているセルロースエステルの存在下で、多塩基酸またはその無水物と多価アルコールとのエステル化反応、またはL−ラクチド、D−ラクチドの開環重合、L−乳酸、D−乳酸の自己縮合を公知の方法で行わせることによって得ることができる。
(式中、A、Bは、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または、水酸基で置換された炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。但しA、Bは同じでも異なってもよい。)
以下にAの具体例を挙げる。
A−1 −CH2CH2−
A−2 −CH2CH2CH2−
A−3 −CH=CH−
A−6 −CH2C(CH3)2−
以下Bの具体例を挙げる。
B−1 −CH2CH2−
B−2 −CH2CH2CH2CH2−
エステル化反応に用いる多塩基酸無水物として、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水フマル酸が挙げられるが特に限定されない。
エステル化反応に用いることができる多価アルコールとして、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられるが特に限定されない。
エステル化反応は、無触媒で反応をすることもできるが、公知のルイス酸触媒などを用いることができる。使用できる触媒としてはスズ、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ナトリウム、カリウム、アルミニウムなどの金属およびその誘導体が挙げられ、特に誘導体については金属有機化合物、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。
具体的にはオクチルスズ、塩化スズ、塩化亜鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、アルキルアルミニウムなどを例示することができる。また、触媒としてパラトルエンスルホン酸に代表される酸触媒を用いることもできる。また、カルボン酸とアルコールとの脱水反応を促進するためにカルボジイミド、ジメチルアミノピリジンなど公知の化合物を添加してもよい。
係る反応は、セルロースエステルおよびその他の反応させる化合物を溶解させることが可能な有機溶媒中における反応によってもよいし、剪断力を付加しながら加熱攪拌が可能なバッチ式ニーダーを用いた反応によるものであってもよいし、一軸あるいは二軸のエクストルーダーを用いた反応によるものであってもよい。
本発明の繰り返し単位は当該部分のセルロースに対して0.5〜190質量%の範囲で適宜含有させることができる。
セルロースエステルの置換度は、適宜選択することができるが、2.2〜3であることが熱可塑性、熱加工性の点から好ましい。
本発明のセルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
本発明の繰り返し単位は、当該部分のセルロースに対しての数平均分子量として300〜10000であり、500〜8000であることが熱加工性の点から好ましい。なお、当該セルロースエステルが有する繰り返し単位のみの数平均分子量は、エステル化反応する前のセルロースエステルと反応後のセルロースエステルをポリスチレン換算したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)データまたは、1H−NMR(日本電子製JNM−EX−270:溶媒:重塩化メチレン)により比較して求めた。
本発明の繰り返し単位をセルロースに導入する際に副反応として、一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有するオリゴマー、ポリエステルが生成することあるが、これらの化合物(X)は可塑剤として作用することから精製により必ずしも完全に除去する必要はなくセルロースエステルに含んでもよい。含有量としてはセルロースエステルに対して5質量%以下であればセルロースエステルの性質を大きく変化させることは少ない。可塑性の点から、好ましくは0.05〜2質量%である。
これらのオリゴマー、ポリエステルの数平均分子量は、300〜10000であり、可塑性の点から好ましくは500〜8000である。
本発明のセルロースエステル樹脂(B)は、光学フィルムの全質量に対して1〜80質量%であり、5〜60質量%であることが好ましい。
<位相差制御剤(C)>
本発明においては、光学フィルムに位相差制御剤(C)を添加することができる。この位相差制御剤(C)としては、特開2002−296421号公報記載の化合物や種々のエステル系可塑剤を用いることができる。以下において、好ましいエステル系化合物について詳細な説明をする。
本発明においては、後述する各種化合物のうち、特に、添加剤として添加し延伸した場合に芳香族環が平面内に並ぶような構造を有する化合物が好ましい。
このため、芳香族環が、主鎖の中又は末端にブロックとして入っている化合物が好ましい。
(ポリエステルポリオール)
本発明において使用されるポリエステルポリオールとしては、炭素数の平均が2〜3.5であるグリコールと炭素数の平均が4〜5.5である二塩基酸との脱水縮合反応、又は該グリコールと炭素数の平均が4〜5.5である無水二塩基酸の付加及び脱水縮合反応による常法により製造されるものであることが好ましい。
《グリコール》
かかるポリエステルポリオールに用いられるグリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられ、これらを単独又は2種以上を併用して用いられ、例えばエチレングリコール、又はエチレングリコールとジエチレングリコールの混合物などが特に好ましく用いられる。
また、上記したグリコールに関しては、ポリエステルポリオールの製造、セルロースとの相溶性、透明性等の観点から、グリコールの炭素数の平均が、2〜3.5の範囲内にあることが好ましい。
上記グリコールとしてエチレングリコールとジエチレングリコールの混合物が用いられる場合、そのエチレングリコール/ジエチレングリコールのモル比率としては、好ましくは25〜100/75〜0で用いられ、セルロースエステルとの相溶性の優れたセルロースエステル用改質剤を得ることができる。さらに、より好ましくは25〜40/75〜60、及び60〜95/40〜5であり、かかる範囲に調製することで、該ポリエステルポリオールの結晶性及び融点が従来汎用のものに近く、それ自体の生産性も良好となる。
《二塩基酸》
次に本発明に用いられるポリエステルポリオールを構成する二塩基酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸等を挙げることができる。
これらを単独又は2種以上を併用して用いることができ、例えばコハク酸、又はコハク酸とテレフタル酸の混合物等が特に好ましく用いられる。
また、上記した二塩基酸に関しては、ポリエステルポリオールの製造、セルロースとの相溶性、透明性等の観点から、二塩基酸の炭素数の平均が4〜5.5の範囲内であることが好ましい。
上記二塩基酸としてコハク酸とテレフタル酸の混合物が用いられる場合、そのコハク酸/テレフタル酸のモル比率としては、好ましくは25〜100/75〜0で用いられ、セルロースエステルとの相溶性の優れたセルロースエステル用改質剤を得ることができる。
さらに、より好ましくは25〜40/75〜60、及び60〜95/40〜5であり、かかる範囲に調製することで、該ポリエステルポリオールの結晶性及び融点が従来汎用のものに近く、それ自体の生産性も良好となる。
本発明に用いられるポリエステルポリオールを構成するグリコールと二塩基酸としては、上記以外の組み合わせも含むものであるが、グリコールの炭素数の平均と二塩基酸の炭素数の平均との合計が、6〜7.5である組み合わせが好ましい。
上記グリコール及び二塩基酸から得られるポリエステルポリオールは、数平均分子量が1000以上200000以下の範囲であればよく、より好ましくは1000〜5000の基本的にヒドロキシル基(水酸基)末端のポリエステルが用いられ、数平均分子量1200〜4000のものが特に好ましく用いられる。
かかる範囲の数平均分子量を有するポリエステルポリオールを用いることで、セルロースエステルとの相溶性に優れた位相差制御剤(セルロースエステル用改質剤)を固相反応で得ることができる。
本発明の効果を得る上で、上記数平均分子量1000以上のポリエステルポリオールをフィルム中に2〜30質量%含有することが、位相差発現性、相溶性、透湿性等の観点から好ましい。より好ましくは10〜20質量%である。
実際には、ポリマーのフィルム中の含有量はポリマーの種類や重量平均分子量によって、ドープ中、ウェブ中、フィルム形成後相分離しない範囲内で、寸法安定性、保留性及び透過率等の性能に応じて決められる。
一方、本発明で用いられるポリエステルポリオール中に於けるカルボキシル基末端は、その含有量は、本発明の効果の観点から、ヒドロキシル基(水酸基)末端の1/20以下のモル数であることが好ましく、さらに1/40以下に止めることがより好ましい。
上記したポリエステルポリオールを製造するにあたり、チタン、亜鉛、鉛、ジルコニウムなどの金属有機酸塩若しくは金属キレート化合物、あるいは、酸化アンチモンなど、従来公知のエステル化触媒が使用できる。
このようなエステル化触媒としては、例えばテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが好ましく用いられ、用いられるグリコール(a)と二塩基酸(b)の合計100質量部に対して0.0005〜0.02質量部用いられることが好ましい。
ポリエステルポリオールの重縮合は常法によって行われる。
例えば、上記二塩基酸とグリコールの直接反応、上記の二塩基酸又はこれらのアルキルエステル類、例えば二塩基酸のメチルエステルとグリコール類とのポリエステル化反応又はエステル交換反応により熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコールとの脱ハロゲン化水素反応のいずれかの方法により容易に合成し得るが、数平均分子量がさほど大きくないポリエステルポリオールは直接反応によるのが好ましい。
低分子量側に分布が高くあるポリエステルポリオールはセルロースエステルとの相溶性が非常によく、フィルム形成後、透湿度も小さく、しかも透明性に富んだセルロースエステルフィルムを得ることができる。
分子量の調節方法は、特に制限なく従来の方法を使用できる。例えば、重合条件にもよるが、1価の酸又は1価のアルコールで分子末端を封鎖する方法により、これらの1価のものの添加する量によりコントロールできる。この場合、1価の酸がポリマーの安定性から好ましい。
例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸等を挙げることができるが、重縮合反応中には系外に溜去せず、停止して反応系外にこのような1価の酸を系外に除去するときに溜去し易いものが選ばれるが、これらを混合使用してもよい。
また、直接反応の場合には、反応中に溜去してくる水の量により反応を停止するタイミングを計ることによっても数平均分子量を調節できる。その他、仕込むグリコール又は二塩基酸のモル数を偏らせることによってもできるし、反応温度をコントロールしても調節できる。
(芳香族末端エステル系可塑剤)
本発明に係る位相差制御剤として、下記一般式(I)で表される芳香族末端エステル系可塑剤を用いることができる。
一般式(I)B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(I)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基又はオキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
芳香族末端エステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
芳香族末端エステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。
また、芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
また、芳香族末端エステルの炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種又は2種以上の混合物として使用される。
炭素数6〜12のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
芳香族末端エステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜2000、より好ましくは500〜1500の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシル基(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシル基(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものが好適である。
《芳香族末端エステルの酸価、ヒドロキシル基(水酸基)価》
「酸価」とは、試料1g中に含まれる酸(分子末端に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価及びヒドロキシル基(水酸基)価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
以下に、芳香族末端エステル系可塑剤の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
芳香族末端エステル系可塑剤の含有量は、セルロースエステルフィルム中に1〜20質量%含有することが好ましく、特に3〜11質量%含有することが好ましい。
(多価アルコールエステル)
本発明では、位相差制御剤として、さらに多価アルコールエステル系可塑剤を使用することができる。
本発明で用いられる多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールは、次の一般式(4)で表される。
一般式(4) R1−(OH)n
式中、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性又はフェノール性ヒドロキシル基(水酸基)を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトールなどを挙げることができる。
中でも、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると、透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。
炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を用いるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。
分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を示す。
(糖エステル化合物)
位相差制御剤としては、フラノース構造及びピラノース構造から選ばれる少なくとも一種の構造が1〜12個結合した糖化合物のヒドロキシル基(水酸基)をエステル化した糖エステル化合物を含む光学フィルムであることが好ましい。
糖化合物としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。
前記エステル化合物が単糖類(α−グルコース、βフルクトース)の安息香酸エステル、もしくは下記一般式(A)で表される、単糖類の−OR12、−OR15、−OR22、−OR25の任意の2箇所以上が脱水縮合して生成したm+n=2〜12の多糖類の安息香酸エステルであることが好ましい。
糖エステル化合物は、糖化合物の有するヒドロキシル基(水酸基)の一部又は全部がエステル化されているもの又はその混合物である。
上記一般式中の安息香酸はさらに置換基を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、さらにこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。
以下に、エステル化化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係る光学フィルムは、位相差値の変動を抑制して、表示品位を安定化する為に、糖エステル化合物を光学フィルムを構成する樹脂総量の、1〜30質量%含むことが好ましい。
糖エステル化合物としては、モノペットSB(第一工業製薬(株)製)として市販されている。
(その他の位相差制御剤)
位相差制御剤としては、分子内にビスフェノールAを含有しているものも好ましい。ビスフェノールAの両端にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した化合物などを用いることができる。
例えばニューポールBP−2P、BP−3P、BP−23P、BP−5PなどのBPシリーズ、BPE−20(F)、BPE−20NK、BPE−20T、BPE−40、BPE−60、BPE−100、BPE−180などのBPEシリーズ(三洋化成(株)製)などやアデカポリエーテルBPX−11、BPX−33、BPX−55などのBPXシリーズ((株)アデカ製)がある。
ジアリルビスフェノールA、ジメタリルビスフェノールAや、ビスフェノールAを臭素などで置換したテトラブロモビスフェーノールAやこれを重合したオリゴマーやポリマー、ジフェニルフォスフェイトなどで置換したビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェイト)なども用いることができる。
ビスフェノールAを重合したポリカーボネートやビスフェノールAをテレフタル酸などの二塩基酸と重合したポリアリレート、エポキシを含有するモノマーと重合したエポキシオリゴマーやポリマーなども用いることができる。
ビスフェノールAとスチレンやスチレンアクリルなどをグラフト重合させたモディパーCL130DやL440−Gなども用いることができる。
本発明に係る光学フィルムは、2種以上の位相差制御剤を含有させることもできる。この場合その組み合わせを最適化することで位相差制御剤の溶出を少なくすることもできる。
その理由は明らかではないが、1種類当たりの添加量を減らすことができることと、2種の位相差制御剤同士及びアクリル樹脂(A)含有組成物との相互作用によって溶出が抑制されるものと思われる。
本発明の位相差制御剤(C)は、光学フィルムの質量全体に対して0〜20質量%の範囲で含有することができ、好ましくは、1〜15質量%である。
<アクリル粒子(D)>
本発明においては、光学フィルムにアクリル粒子(D)を含有させてもよい。
本発明のアクリル粒子(D)は、前記アクリル樹脂(A)およびセルロースエステル樹脂(B)と光学フィルム中で粒子の状態で存在すること(非相溶状態ともいう)が特徴である。
上記アクリル粒子(D)は、例えば、作製した光学フィルムを所定量採取し、溶媒に溶解させて攪拌し、充分に溶解・分散させたところで、アクリル粒子(D)の平均粒子径未満の孔径を有するPTFE製のメンブレンフィルターを用いて濾過し、濾過捕集された不溶物の重さが、光学フィルムに添加したアクリル粒子(D)の90質量%以上あることが好ましい。
本発明に用いられるアクリル粒子(D)は特に限定されるものではないが、2層以上の層構造を有するアクリル粒子(D)であることが好ましく、特に下記多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層重合体、ゴム弾性を示す架橋軟質層重合体、および最外硬質層重合体が、層状に重ね合わされてなる構造を有する粒子状のアクリル系重合体を言う。
本発明のアクリル系樹脂組成物に用いられる多層構造アクリル系粒状複合体の好ましい態様としては、以下の様なものが挙げられる。
(a)メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%、および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られる最内硬質層重合体、(b)上記最内硬質層重合体の存在下に、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体混合物を重合して得られる架橋軟質層重合体、(c)上記最内硬質層および架橋軟質層からなる重合体の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%とアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%とからなる単量体混合物を重合して得られる最外硬層重合体、よりなる3層構造を有し、かつ得られた3層構造重合体が最内硬質層重合体(a)5〜40質量%、軟質層重合体(b)30〜60質量%、および最外硬質層重合体(c)20〜50質量%からなり、アセトンで分別したときに不溶部があり、その不溶部のメチルエチルケトン膨潤度が1.5〜4.0であるアクリル系粒状複合体、が挙げられる。
なお、特公昭60−17406号あるいは特公平3−39095号において開示されている様に、多層構造アクリル系粒状複合体の各層の組成や粒子径を規定しただけでなく、多層構造アクリル系粒状複合体の引張り弾性率やアセトン不溶部のメチルエチルケトン膨潤度を特定範囲内に設定することにより、さらに充分な耐衝撃性と耐応力白化性のバランスを実現することが可能となる。
ここで、多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最内硬質層重合体(a)は、メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが好ましく用いられる。
最内硬質層重合体(a)におけるアルキルアクリレート単位の割合は1〜20質量%であり、該単位が1質量%未満では、重合体の熱分解性が大きくなり、一方、該単位が20質量%を越えると、最内硬質層重合体(c)のガラス転移温度が低くなり、3層構造アクリル系粒状複合体の耐衝撃性付与効果が低下するので、いずれも好ましくない。
多官能性グラフト剤としては、異なる重合可能な官能基を有する多官能性単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸のアリルエステル等が挙げられ、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。
多官能性グラフト剤は、最内硬質層重合体と軟質層重合体を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は0.01〜0.3質量%である。
アクリル系粒状複合体を構成する架橋軟質層重合体(b)は、上記最内硬質層重合体(a)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
また、これらの重合性単量体と共に、25質量%以下の共重合可能な他の単官能性単量体を共重合させることも可能である。
共重合可能な他の単官能性単量体としては、スチレンおよび置換スチレン誘導体が挙げられる。アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとスチレンとの比率は、前者が多いほど生成重合体(b)のガラス転移温度が低下し、即ち軟質化できるのである。
一方、樹脂組生物の透明性の観点からは、軟質層重合体(b)の常温での屈折率を最内硬質層重合体(a)、最外硬質層重合体(c)、および硬質熱可塑性アクリル樹脂に近づけるほうが有利であり、これらを勘案して両者の比率を選定する。
例えば、被覆層厚みの小さな用途においては、必ずしもスチレンを共重合しなくとも良い。
多官能性グラフト剤としては、前記の最内層硬質重合体(a)の項で挙げたものを用いることができる。ここで用いる多官能性グラフト剤は、軟質層重合体(b)と最外硬質層重合体(c)を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.5〜5質量%が好ましい。
多官能性架橋剤としては、ジビニル化合物、ジアリル化合物、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物などの一般に知られている架橋剤が使用できるが、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200〜600)が好ましく用いられる。
ここで用いる多官能性架橋剤は、軟質層(b)の重合時に架橋構造を生成し、耐衝撃性付与の効果を発現させるために用いられる。ただし、先の多官能性グラフト剤を軟質層の重合時に用いれば、ある程度は軟質層(b)の架橋構造を生成するので、多官能性架橋剤は必須成分ではないが、多官能性架橋剤を軟質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.01〜5質量%が好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最外硬質層重合体(c)は、上記最内硬質層重合体(a)および軟質層重合体(b)の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%およびアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アクリルアルキレートとしては、前述したものが用いられるが、メチルアクリレートやエチルアクリレートが好ましく用いられる。最外硬質層(c)におけるアルキルアクリレート単位の割合は、1〜20質量%が好ましい。
また、最外硬質層(c)の重合時に、アクリル樹脂(A)との相溶性向上を目的として、分子量を調節するためアルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用い、実施することも可能である。
とりわけ、最外硬質層に、分子量が内側から外側へ向かって次第に小さくなるような勾配を設けることは、伸びと耐衝撃性のバランスを改良するうえで好ましい。具体的な方法としては、最外硬質層を形成するための単量体混合物を2つ以上に分割し、各回ごとに添加する連鎖移動剤量を順次増加するような手法によって、分子量を内側から外側へ向かって小さくすることが可能である。
この際に形成される分子量は、各回に用いられる単量体混合物をそれ単独で同条件にて重合し、得られた重合体の分子量を測定することによって調べることもできる。
本発明に好ましく用いられる多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体の粒子径については、特に限定されるものではないが、10nm以上、1000nm以下であることが好ましく、さらに、20nm以上、500nm以下であることがより好ましく、特に50nm以上、400nm以下であることが最も好ましい。
本発明に好ましく用いられる多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体において、コアとシェルの質量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体を100質量部としたときに、コア層が50質量部以上、90質量部以下であることが好ましく、さらに、60質量部以上、80質量部以下であることがより好ましい。
このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”およびクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
また、本発明に好ましく用いられるアクリル粒子(D)として好適に使用されるグラフト共重合体であるアクリル粒子(D−1)の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体であるアクリル粒子(D−1)に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
また、アクリル樹脂(A)およびアクリル粒子(D)のそれぞれの屈折率が近似している場合、本発明の光学フィルムの透明性を得ることができるため、好ましい。具体的には、アクリル粒子(D)とアクリル樹脂(A)の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
このような屈折率条件を満たすためには、アクリル樹脂(A)の各単量体単位組成比を調整する方法、またはアクリル粒子(D)に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法などにより、屈折率差を小さくすることができ、透明性に優れた光学フィルムを得ることができる。
なお、ここで言う屈折率差とは、アクリル樹脂(A)が可溶な溶媒に、本発明の光学フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル樹脂(A))と不溶部分(アクリル粒子(D))をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
本発明においてアクリル樹脂(A)に、アクリル粒子(D)を配合する方法には、特に制限はなく、アクリル樹脂(A)とその他の任意成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、アクリル粒子(D)を添加しながら一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が好ましく用いられる。
また、アクリル粒子(D)を予め分散した溶液を、アクリル樹脂(A)及びセルロースエステル樹脂(B)を溶解した溶液(ドープ液)に添加して混合する方法や、アクリル粒子(D)及びその他の任意の添加剤を溶解、混合した溶液をインライン添加する等の方法を用いることができる。
本発明のアクリル粒子としては、市販のものも使用することができる。例えば、メタブレンW−341(D2)(三菱レイヨン(株)製)を、ケミスノーMR−2G(D3)、MS−300X(D4)(綜研化学(株)製)等を挙げることができる。
本発明の光学フィルムにおいて、該光学フィルムを構成する樹脂の総質量に対して、0〜45質量%のアクリル粒子(D)を含有することが好ましい。
<その他の添加剤>
本発明の光学フィルムにおいては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸およびグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が可塑化効果が大きい。
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000mPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
可塑剤はアクリル樹脂(A)を含有する組成物100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。
本発明のアクリル樹脂(A)を含有する組成物は紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系またはサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
また、特に薄い被覆層から基板層への移行性も小さく、積層板の表面にも析出しにくいため、含有された紫外線吸収剤量が長時間維持され、耐候性改良効果の持続性に優れるなどの点から好ましい。
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
さらに、本発明の光学フィルムに用いられるアクリル樹脂(A)には成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、光学フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
本発明のアクリル樹脂組成物として、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
<光学フィルムの製膜>
光学フィルムの製膜方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の光学フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、溶融流延法、溶液流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から流延法による溶液製膜が好ましい。
(有機溶媒)
本発明の光学フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の溶解を促進する役割もある。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)と、必要な場合、位相差制御剤(C)、アクリル粒子(D)を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
以下、本発明の光学フィルムの好ましい製膜方法について説明する。
1)溶解工程
アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)に対する良溶媒を主とする有機溶に、溶解釜中で該アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)、場合によってアクリル粒子(D)、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、或いは該アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)溶液に、場合によってアクリル粒子(D)溶液、その他の添加剤溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来るが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のアクリル樹脂(A)と、セルロースエステル樹脂(B)は、計15〜45質量%の範囲であることが好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去出来る。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
図1は本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程を模式的に示した図である。
必要な場合は、アクリル粒子仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へアクリル粒子添加液を添加する。
その後主ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材にはアクリル粒子が含まれることがある、その場合には返材の添加量に合わせてアクリル粒子添加液の添加量をコントロールすることが好ましい。
アクリル粒子を含有する添加液には、アクリル粒子を0.5〜10質量%含有していることが好ましく、1〜10質量%含有していることがさらに好ましく、1〜5質量%含有していることが最も好ましい。
アクリル粒子の含有量の少ない方が、低粘度で取り扱い易く、アクリル粒子の含有量の多い方が、添加量が少なく、主ドープへの添加が容易になるため、上記の範囲が好ましい。
返材とは、光学フィルムを細かく粉砕した物で、光学フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトした光学フィルム原反が使用される。
また、予めアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、場合によってアクリル粒子を混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
2)流延工程
ドープを送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、或いは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、さらには、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御出来る装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲でとることができる。
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下である。
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃がさらに好ましく、70〜100℃が最も好ましい。
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってから光学フィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
本発明の光学フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
本発明の光学フィルムの膜厚に特に制限はないが、後述する偏光板保護フィルムに使用する場合は20〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
<偏光板>
本発明に用いられる偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の光学フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には該フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KV8UY−HA、KV8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×104Pa〜1.0×109Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
<液晶表示装置>
本発明の光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することが出来る。本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
また、色ムラ、ギラツキや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
本発明のアクリル樹脂(A)A1からA6の単量体構成等は表1に示した。A7は、ポリメチルメタクリレートである。なお、表1の各単量体は下記の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
MHMA:2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル
BzMA:メタクリル酸ベンジル
本発明のセルロースエステル樹脂(B)は、表2に示した。グラフトには、L−ラクチドを使用した。
<光学フィルム1の作製>
(ドープ液組成)
アクリル樹脂(A)A1 70質量部
セルローエステル樹脂(B)B5 30質量部
(30質量部のうち0.1質量部が化合物(X)である。)
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープ液を作製した。
(光学フィルム1の製膜)
上記作製したドープ液を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
剥離したアクリル樹脂のウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。
テンターで延伸後130℃で5分間緩和を行った後、120℃、130℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、光学フィルム1を得た。
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。
表3に記載の光学フィルム1の残留溶剤量は0.1%であり、膜厚は40μm、巻長は4000mであった。
以下、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の種類と組成比を表3、表4に記載のように変えた以外は、光学フィルム1と同様にして、その他の光学フィルム試料を作製した。
《評価方法》
得られた光学フィルム試料について以下の評価を実施した。
(脆性=延性破壊)
脆性を下記の延性破壊試験によって評価した。
23℃、55%RHの空調室で24時間調湿した光学フィルムを、5℃、22%RHの条件下、100mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、縦方向の中央部で、曲率半径0mm、折り曲げ角が180°でフィルムがぴったりと重なるように山折り、谷折りと2つにそれぞれ1回ずつ折りまげ、この評価を10回測定して、以下のように評価した。なお、ここでの評価で「折れる」とは、割れて2つ以上のピースに分離したことを表す。
◎・・・10回とも折れない
○・・・10回のうち1回折れる
△・・・10回のうち2回折れる
×・・・10回のうち3回以上折れる
(Ro、Rtの測定)
アッベ屈折率計(4T)を用いてフィルム構成材料の平均屈折率を測定した。また、市販のマイクロメーターを用いてフィルムの厚さを測定した。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長が590nmにおけるフィルムのリターデーション測定を行った。上述の平均屈折率と膜厚を入力し、面内リターデーション(Ro)および厚み方向のリターデーション(Rt)の値を得た。
位相差環境変動は、23℃、55%RHの環境で位相差を測定した試料を、続いて60℃、90%RHで1000時間処理したものを同様に測定し、Rtの差を示した。
(液晶表示装置としての特性評価)
〈偏光板の作製〉
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとした偏光板を以下のようにして作製した。
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光子を作った。
次に、この偏光子の片面にアルカリケン化処理した前記光学フィルム1貼合した。さらに偏光子のもう一方の面にアルカリケン化処理した位相差フィルムであるコニカミノルタオプト社製KC8UCR−5を貼り合わせ、乾燥して偏光板を作製した。同様にしてその他の試料光学フィルムを用いて偏光板を作製した。
〈液晶表示装置の作製〉
(画面ムラ)
上記作製した偏光板を使用して、本発明の光学フィルムの表示特性評価を行った。
得られた偏光板は、IPS型液晶表示装置である日立製液晶表示装置Wooo W32L−H90にあらかじめ貼合されていた視認側偏光板を注意深く剥がし、もともと貼ってあった偏光板の透過軸にあわせて、粘着剤を介して作製した本発明の光学フィルムが液晶セル側となるように偏光板を貼り付け、液晶表示装置を作製した。
その後、温度30℃、湿度90%RHの環境下において、バックライトを1000時間連続点灯し、全面黒表示状態を暗室にて目視で観察して、リターデーションムラ、配向角のズレの総合判断である画面ムラを目視で官能評価した。
◎:明室、暗室ともにムラが全く観察されない。
○:明室では全く観察されないが、暗室で若干ムラが観察される。
△:明室では気にならないが、暗室でムラが観察される。
×:明室でもムラが観察される。
以上の評価の結果を表3、表4に示す。
表3、表4から明らかなように、本発明では優れた脆性を有し、画像ムラも小さいことが分かる。
実施例2
実施例1において、位相差制御剤(C)、アクリル粒子(D)として表5、表6に記載の化合物を添加した他は同様にして同膜厚の試料を作製し、同様の評価を行った。結果を表5、表6に示す。
C1:芳香族末端エステル系可塑剤例示化合物(14)
C2:糖エステル化合物例示化合物(3)
C3:多価アルコールエステル例示化合物(16)
C4:下記トリアジン化合物
C5:芳香族末端エステル系可塑剤例示化合物(14)およびアクリル粒子D2等量
表5、表6から明らかなように、本発明では優れた脆性を有し、画像ムラも小さいことが分かる。