JP2011094118A - セルロースエステル系樹脂組成物 - Google Patents

セルロースエステル系樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】成形加工性、難燃性、弾性率に優れたセルロース系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】セルロースエステル系樹脂に、下記一般式(1)で表される化合物を配合したセルロースエステル系樹脂組成物。
一般式(1)
Figure 2011094118

(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換の、アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。xはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースエステル系樹脂組成物に関する。更に詳しくは、難燃性、成型加工性や弾性率に優れたセルロースエステル系樹脂組成物及びそれを成形してなる成形体に関する。
セルロース系樹脂は一般に他の合成樹脂に比較して強靭であり、透明性、つや、光沢に優れ、また、表面が滑らかで感触が良いという大きな特徴を有している。このため、この樹脂の用途は、例えば、シート、フィルム、電線被覆、玩具、医療用機器あるいは食品包装材など多岐にわたっている。
一般に、セルロース系樹脂は熱可塑性をほとんど有しておらず、加工成形に際しては高温をかけて溶融するか溶剤に溶解せねばならない。しかし、高温をかけて溶融するとき同時に熱分解を起こし、着色することがある。これを避けるために適当な可塑剤を配合してその軟化点を下げる必要がある。かかる目的のために従来から、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、トルエンスルホンアミド、トリアセチン又は、ペンタエリスリトールテトラアセテートなどや、同時に難燃性を付与する難燃剤として、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどが使用されてきた。
上記の可塑剤や難燃剤は、セルロース系樹脂との相溶性、可塑化効率、耐熱性、弾性率、難燃性などの広範囲な性能を満足させ得るものではなく、該樹脂の用途拡大の妨げとなっているのが現状である。
この解決策として、特許文献1では、可塑剤としてエステル系化合物を用いることが提案されている。このエステル系化合物を含むセルロース系樹脂組成物は、透湿性や保留性の点で優れているが、難燃性を付与することができないという問題がある。
また、特許文献2では、複数のリン酸エステル系難燃剤を併用することが記載されているが、この樹脂組成物は耐熱性や弾性率が不十分であった。
一方、難燃剤として環状リン化合物を樹脂に添加することが知られている(特許文献4、6〜9)。
例えば特許文献4では、熱可塑性樹脂に対して環状リン化合物を添加することで、耐熱性、難燃性、成形加工性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られることが記載されている(特許文献4)。この特許文献4ではセルロース系と環状リン化合物とを併用することや環状リン化合物により弾性率を改良することについては記載されていない。
また、前記一般式(1)で表される環状リン化合物をセルロースと併用することが知られている(特許文献3)。特許文献3では、耐光性を付与する目的で、セルロースエステル100重量部に対して環状ホスホナイトを0.1〜0.2wt%添加したセルロースエステル樹脂組成物が記載されている。本発明とは使用目的が異なり、実施形態も大きく異なる。
その他、難燃加工剤として特許文献5に記載の環状リン化合物も知られている。
特開2003−96236号公報 特開2006−176596号公報 特開昭55−125134号公報 特開2001−192565号公報 特開2009−108089号公報 特開2001−115040号公報 特開2006−328125号公報 特開2005−162871号公報 特開2005−162872号公報
本発明の目的は、成形加工性、難燃性、弾性率に優れたセルロース系樹脂組成物を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決することができる。
[1]
セルロースエステル系樹脂と、下記一般式(1)で表される化合物とを含有するセルロースエステル系樹脂組成物。
一般式(1)
Figure 2011094118
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換の、アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。xはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
[2]
前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、樹脂組成物全体に対して1質量%以上である、上記[1]に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
[3]
前記一般式(1)において、R及びRがそれぞれ独立に、ハロゲン原子又はアルキル基であり、かつRが水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換の、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基から選ばれるいずれかである、上記[1]又は[2]に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
[4]
前記一般式(1)で表される化合物が、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、又は10−(2,4−t−ブチル−3−ヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドである上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
[5]
前記セルロースエステル系樹脂が、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースプロピオネートブチレートのいずれかである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
[6]
前記セルロースエステル系樹脂がセルロースアセテートである上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
[7]
前記セルロースエステル系樹脂のアシル置換度が2.7以下である上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
[8]
上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物を成形して得られる成形体。
[9]
上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物を加熱及び成形する工程を含む、成形体の製造方法。
[10]
上記[9]に記載の成形体から構成される電子機器用筐体。
本発明によれば、セルロースエステル系樹脂組成物と前記一般式(1)で表される化合物とを使用することで、成形加工性、難燃性、弾性率に優れたセルロース系樹脂組成物を提供することができる。また、本発明のセルロース系樹脂組成物は、成形加工性、難燃性、弾性率に優れているため、自動車、家電、電気電子機器等の構成部品、機械部品、住宅・建築用材料等として好適に使用することができる。更に、セルロース系樹脂組成物は植物由来の樹脂であるため、従来の石油由来の樹脂に代替する材料として有用である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物は、セルロースエステル系樹脂と、下記一般式(1)で表される化合物とを含有する。
一般式(1)
Figure 2011094118
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換の、アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。xはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
脂肪族基は、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜10である。脂肪族基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。脂肪族基はアルキル基が好ましい。直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロメチル基、2−ブロモメチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、又は2−エチルヘキシル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられる。
芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15である。具体的には、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基が挙げられる。
ヘテロ環基としては、5又は6員の芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基が挙げられる。ヘテロ環基は縮環の形態であってもよい。
アルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜10である。アルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15である。具体的には、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ナフトキシ基、m−クロロフェノキシ基、o−ヘキサデカノイルアミノフェノキシ基などが挙げられる。
アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基は、無置換でもよいし、置換基を有していてもよい。これらの基が有するさらなる置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられ、好ましくは、水酸基、アルキル基(炭素数は好ましくは1〜5)、アリール基(炭素数は好ましくは6〜10)である。
及びRは、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基であり、より好ましくは塩素原子、臭素原子、炭素数1〜5のアルキル基である。
は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換の、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基であり、より好ましくは、水素原子、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のフェノキシ基、置換又は無置換のベンジル基であり、水素原子、置換又は無置換の、フェニル基、ベンジル基が更に好ましい。
前記一般式(1)において、R及びRがそれぞれ独立に、ハロゲン原子又はアルキル基であり、かつRが水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換の、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基から選ばれるいずれかであることが好ましい。
xは0〜4の整数を表し、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 2011094118
前記一般式(1)で表される化合物は、好ましくは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(例示化合物A−1)、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(例示化合物A−6)、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(例示化合物A−8)、又は10−(2,4−t−ブチル−3−ヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(例示化合物A−15)であり、より好ましくは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(例示化合物A−1)である。
一般式(1)で表される化合物の含有量は、樹脂組成物全体に対して、1質量%以上であることが好ましく、1〜60質量%がより好ましく、5〜40質量%が更に好ましく、10〜40質量%が更により好ましい。上記範囲内であれば、より優れた成形加工性、難燃性、弾性率が得られる。熱変形温度を低くすることができることから25〜35質量%が特に好ましい。また、弾性率の観点からは15〜25質量%であることが特に好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の合成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、特開2001−192565号公報、特開2001−302685号公報、特開2009−108089号公報等を参考に合成することができる。なお、前記一般式(1)で表される化合物として市販品も利用することができる。
セルロースエステル系樹脂とは、セルロースの水酸基の少なくとも一部がエステル化されているセルロース誘導体をいう。エステル化に用いる酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸・サリチル酸などの芳香族カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸等が挙げられる。
セルロースエステル系樹脂は、成形性の観点から低級脂肪酸のエステル誘導体であることが好ましい。ここで、低級脂肪酸は炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースの低級脂肪酸エステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートやそれらの混合脂肪酸エステルを挙げることができる。中でも、好ましくは、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレートであり、より好ましくは特に好ましくはセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネートであり、特に好ましくはセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートであり、最も好ましくはセルロースアセテートである。
セルロースエステルにおいて、成形性及び、機械的特性の観点から置換基(アシル基)の平均置換度は、2.7以下であることが好ましく、1.7〜2.7であることがより好ましく、1.8〜2.6であることが更に好ましく、特に2.4〜2.5であることが好ましい。
セルロースエステル系樹脂の分子量は、数平均分子量(Mn)が5×10〜1000×10の範囲が好ましく、10×10〜800×10の範囲が更に好ましく、20×10〜500×10の範囲が最も好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、7×10〜10000×10の範囲が好ましく、90×10〜8000×10の範囲が更に好ましく、100×10〜5000×10の範囲が最も好ましい。この範囲の平均分子量とすることにより、成形体の成形性、力学強度等を向上させることができる。
分子量分布(MWD)は1.1〜10.0の範囲が好ましく、2.0〜8.0の範囲が更に好ましい。この範囲の分子量分布とすることにより、成形性等を向上させることができる。
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として少なくともセルロースエステル系樹脂を含んでいればよく、セルロースエステル系樹脂のみを含んでいてもよく、ルロースエステル系樹脂とともに他の樹脂を併用してもよい。
樹脂組成物中、セルロースエステル系樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、80〜99質量%であることが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、用途に応じて、その他の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、フィラー(強化材)、難燃剤、セルロースエステル系樹脂以外のポリマー、可塑剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、難燃助剤、加工助剤、ドリップ防止剤、抗菌剤、防カビ剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で、又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の樹脂組成物はフィラー(強化材)を含有することができる。フィラーを含有することにより、樹脂組成物によって形成される成形体の機械的特性を強化することができる。
フィラーとしては、常用のものを使用できる。フィラーの形状は、繊維状、板状、粒状、粉末状等いずれでもよい。また、無機物でも有機物でもよい。
具体的には、無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の繊維状の無機フィラーや;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが挙げられる。
有機フィラーとしては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維等の合成繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、マニラ麻、亜麻、リネン、絹、ウール等の天然繊維、微結晶セルロース、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙等から得られる繊維状の有機フィラーや、有機顔料等の粒状の有機フィラーが挙げられる。
本発明の樹脂組成物がフィラーを含有する場合、その含有量は限定的でないが、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される化合物に加え、更に他の難燃剤を含有することができる。これによって、その燃焼速度の低下又は抑制といった難燃効果を向上させることができる。
難燃剤は、特に限定されず、常用のものを用いることができる。例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂との複合時や成形加工時に熱分解してハロゲン化水素が発生して加工機械や金型を腐食させたり、作業環境を悪化させたりすることがなく、また、焼却廃棄時にハロゲンが気散したり、分解してダイオキシン類等の有害物質の発生等によって環境に悪影響を与える可能性が少ないことから、リン含有難燃剤及びケイ素含有難燃剤が好ましい。
リン含有難燃剤としては、特に限定されることはなく、常用のものを用いることができる。例えば、リン酸エステル、リン酸縮合エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物が挙げられる。
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどを挙げることができる。
リン酸縮合エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物などの芳香族リン酸縮合エステル等を挙げることができる。
また、リン酸、ポリリン酸と周期律表1族〜14族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるポリリン酸塩を挙げることもできる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩などがあり、芳香族アミン塩としてはピリジン塩、トリアジン等が挙げられる。
また、前記以外にも、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)などの含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミドを挙げることができる。
これらのリン含有難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ケイ素含有難燃剤としては、二次元又は三次元構造の有機ケイ素化合物、ポリジメチルシロキサン、又はポリジメチルシロキサンの側鎖又は末端のメチル基が、水素原子、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基で置換又は修飾されたもの、いわゆるシリコーンオイル、又は変性シリコーンオイルが挙げられる。
置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、又はトリフロロメチル基等が挙げられる。
これらのケイ素含有難燃剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン含有難燃剤又はケイ素含有難燃剤以外の難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛等の無機系難燃剤を用いることができる。これらの他の難燃剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
本発明の樹脂組成物が上記難燃剤を含有する場合、その含有量は限定的でないが、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、2〜10質量部であることがより好ましい。この範囲とすることにより、耐衝撃性・脆性等を改良させたり、ペレットブロッキングの発生を抑制できる。
本発明の樹脂組成物は、セルロースエステル系樹脂以外のセルロース誘導体やポリマーを含有することができる。
セルロースエステル系樹脂以外のセルロース誘導体としては、エチルエーテル基以外のアルキルエーテル基を有するセルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースエーテルエステル、セルロースカルバメート等が挙げられる。
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物がセルロースエステル系樹脂以外のセルロース誘導体を含む場合、その含有量としては、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは1〜20質量部とすることができる。
また、セルロースエステル系樹脂以外のポリマーとしては、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーのいずれも用い得るが、成形性の点から熱可塑性ポリマーが好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー(エチレン−プロピレンブロックコポリマーなど)、ポリブテン−1及びポリ−4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート及びその他の芳香族ポリエステル等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン12等のポリアミド、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリアセタール(ホモポリマー及び共重合体を含む)、ポリウレタン、芳香族及び脂肪族ポリケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性澱粉樹脂、ポリメタクリル酸メチルやメタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂、AES樹脂(エチレン系ゴム強化AS樹脂)、ACS樹脂(塩素化ポリエチレン強化AS樹脂)、ASA樹脂(アクリル系ゴム強化AS樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ビニルエステル系樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素系ポリマー、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリイミドなどを挙げることができる。また、各種アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、ジエン系ゴム(例えば、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエン又はイソプレンとの共重合体、ブチルゴム、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、その他ポリウレタン系やポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
更に、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造等を有するもの、ビニル基などを有するもの、あるいは各種の平均粒径(樹脂組成物中における)を有するものや、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成され、また隣接し合った層が異種の重合体から構成されるいわゆるコアシェルゴムと呼ばれる多層構造重合体なども使用することができ、更にシリコーン化合物を含有したコアシェルゴムも使用することができる。
これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物がセルロースエステル系樹脂以外のポリマーを含有する場合、その含有量は、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して30質量部程度以下が好ましく、2〜10質量部程度がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は可塑剤を含有することができる。これにより、難燃性及び成形性をより一層向上させることができる。可塑剤としては、ポリマーの成形に常用されるものを用いることができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ロジンなどの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸若しくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート及びグリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコール、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール、アジピン酸ベンジルブチルジグリコールなどのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、及び末端エーテル変性化合物等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、その含有量は、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、0.005〜5質量部がより好ましく、0.01〜1質量部であることが更に好ましい。
また、離型剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンを使用できる。
本発明の樹脂組成物は、慣用の方法で調製することができ、例えば、各成分をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどの混合機で予備混合した後、一軸又は二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調整したり、加熱ロールやバンバリミキサーなどの混練機で溶融混練して調製してもよい。
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形することにより得られる。より具体的には、前記セルロースエステル系樹脂及び前記一般式(1)の化合物、及び必要に応じて各種添加剤等を含む樹脂組成物を加熱し、各種の成形方法により成形する工程を含む製造方法によって得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形等が挙げられる。
加熱温度は、通常150〜300℃であり、好ましくは170〜260℃である。
本発明の成形体の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)の内装又は外装部品、自動車、機械部品、住宅・建築用材料等が挙げられる。これらの中でも、優れた耐熱性及び耐衝撃性を有しており、環境への負荷が小さい観点から、例えば、コピー機、プリンター、パソコン、テレビ等といった電気電子機器用の外装部品(特に筐体)として好適に使用することができる。
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
[樹脂組成物の調製]
下記表1に示す組成で樹脂組成物を調製した。
Figure 2011094118
上記表1に示す各成分は下記の通りである。
エチルセルロース:ダウケミカル日本(株) 製、商品名:エトセル100cp(エチル置換度:2.55、Mw:185000、Mn:76000)
セルロースアセテートプロピオネート:イーストマンケミカル社製、商品名:482−20(アセチル置換度:0.1、プロピオニル置換度:2.5、Mw:234000、Mn:73000)
セルロースアセテート:ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−70(アセチル置換度:2.45、Mw:200000、Mn:65000)
HCA:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(東京化成工業(株)製)
SANKO−220:10−(2,4−t−ブチル−3−ヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光(株)製)
TPP:トリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製)
[試験片の作製]
上記で得られた樹脂組成物(ペレット)を射出成形機((株)井元製作所製、半自動射出成形機)に供給して、金型温度30℃、射出圧力1.5kgf/cmにて4×10×80mmの多目的試験片(衝撃試験片及び熱変形試験片)を成形した。
[評価]
<成形性>
フローテスタ((株)島津製作所製CFT−100D、L=10mm、D=1.0mmのダイを使用)を用い、樹脂組成物をガラス転移温度以下の温度で装置に投入し、剪断速度100S−1、昇温速度2℃/minで昇温測定を行った。一般的に射出成形が容易に可能である、この測定での見かけの粘度が100Pa・Sとなる温度を流動特性温度とした。流動特性温度は、成形性の指標とすることができ、より低温である方が、成形しやすくなるため好ましい。
<難燃性>
UL−94試験法に準拠し、1/16インチ(約1.6mm)厚みのテストピースを使用して評価した。表1中、「V−2」は燃焼試験時に樹脂組成物のドリップがあり所定時間内(燃焼時間30秒以内)に自己消火したことを意味し、「V−not」は成形片が完全に燃焼したことを意味する。
<曲げ弾性率>
ISO178に準拠して、射出成形にて成形した試験片を23℃±2℃、50%±5%RHで48時間以上調整した後、インストロン(東洋精機製、ストログラフV50)によって支点間距離64mm、試験速度2mm/minで曲げ弾性率(GPa)を測定した。
成形性、難燃性、曲げ弾性率の評価結果を上記表1に示した。表1から明らかなように、実施例で得られた成形品は、成形加工性に優れ、難燃性を有し、高弾性率となることが分かる。

Claims (10)

  1. セルロースエステル系樹脂と、下記一般式(1)で表される化合物とを含有するセルロースエステル系樹脂組成物。
    一般式(1)
    Figure 2011094118
    (一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換の、アルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。xはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
  2. 前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、樹脂組成物全体に対して1質量%以上である、請求項1に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
  3. 前記一般式(1)において、R及びRがそれぞれ独立に、ハロゲン原子又はアルキル基であり、かつRが水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換の、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基から選ばれるいずれかである、請求項1又は2に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
  4. 前記一般式(1)で表される化合物が、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、又は10−(2,4−t−ブチル−3−ヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドである請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
  5. 前記セルロースエステル系樹脂が、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースプロピオネートブチレートのいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
  6. 前記セルロースエステル系樹脂がセルロースアセテートである請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
  7. 前記セルロースエステル系樹脂のアシル置換度が2.7以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物を成形して得られる成形体。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースエステル系樹脂組成物を加熱及び成形する工程を含む、成形体の製造方法。
  10. 請求項9に記載の成形体から構成される電子機器用筐体。
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