JP2011093870A - 水溶性コーヒーエキスの製造方法 - Google Patents

水溶性コーヒーエキスの製造方法 Download PDF

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百合香 越智
Eisei Nishitani
栄盛 西谷
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明夫 杉本
Takanori Takihara
孝宣 瀧原
Tomoaki Imaeda
友昭 今枝
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Abstract

【課題】カフェインとモノカフェオイルキナ酸類を低減し、生理活性成分を増加し、かつ、水溶解性に優れたコーヒーエキスや飲食物、及び前記コーヒーエキスを有効成分とする経口用高血糖改善組成物や経口用脂肪細胞分化促進組成物を提供する。
【解決手段】焙煎コーヒー豆の粉砕物を熱水抽出し、熱水抽出液を得る工程、前記工程で得られた抽出液を合成吸着剤に接触させる工程、前記工程に続いて、該合成吸着剤に非吸着の画分を含有する溶液を分離・回収する工程、前記工程に続いて、該合成吸着剤を20〜40%の含水有機溶媒で洗浄する工程、前記工程に続いて、該合成吸着剤に吸着している成分を50〜100%の含水有機溶媒で溶出させ、溶離液を回収する工程、及び前記非吸着画分溶液と溶離液とを混合する工程からなる水溶性コーヒーエキスの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、モノカフェオイルキナ酸類を減少させ、生理活性成分を強化したコーヒーエキス、及びコーヒー飲料等に関し、より詳しくは、焙煎コーヒー豆粉砕物の熱水抽出物から特定の分画方法により、モノカフェオイルキナ酸類とカフェインの含有量を調節したコーヒーエキス、及び前記コーヒーエキスを配合してなる飲食物に関する。さらに、前記コーヒーエキスを有効成分とする経口用高血糖改善組成物、経口用脂肪細胞分化促進組成物及びこれら組成物の使用方法に関する。
コーヒーは、社会通念上、コーヒー豆を焙煎し、それを湯又は水で抽出した飲み物を総称してコーヒーといわれている。コーヒーを食品に応用して作られているコーヒー製品は、独特の風味を有し、飲料、菓子等広く飲食されている。コーヒーは、現代社会におけるストレス等を紛らわせ、リラックスする為、嗜好食品として多くの人に愛好されている。また、最近になって、コーヒーには、2型糖尿病の発症を予防する効果があるといわれており、その効果はカフェインとクロロゲン酸によるものとされているが、具体的にそのメカニズムは明らかではない。そして、コーヒーに前記効果があるからといって、コーヒーの多量摂取は心血管系疾患リスクを高めるという懸念がある。
従来、コーヒーや、コーヒーに含まれる成分、例えばクロロゲン酸類、ニコチン酸等に関連し、生理活性作用を言及した技術として、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、4,5−ジカフェオイルキナ酸、3−フェルロイルキナ酸、4−フェルロイルキナ酸、5−フェルロイルキナ酸及び3−フェルロイル−4−カフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上のクロロゲン酸類からなる高インスリン血症予防・改善剤(例えば、特許文献1参照。)や、クロロゲン酸及びジグリセリドを含有する生活習慣病予防・改善剤(例えば、特許文献2参照。)や、クロロゲン酸類からなる抗肥満剤(例えば、特許文献3参照。)や、クロロゲン酸類からなる血糖値上昇抑制剤(例えば、特許文献4参照。)や、コーヒー抽出物を活性炭処理後、合成吸着剤と接触させるクロロゲン酸類を0.01〜20質量%含有し、フェノール類含有量を低減させたコーヒー組成物の製造方法(例えば、特許文献5参照。)が知られている。
また、少なくとも1つのニコチン酸化合物、少なくとも1つのメーラード反応産物及び/又は、少なくとも1つのメーラード反応産物の代謝産物を含むコーヒー様サプリメント(例えば、特許文献6参照。)や、焙煎コーヒー豆10g当りニコチン酸化合物を3mg以上且つメーラード反応産物を10mg以上含有する改質コーヒー(例えば、特許文献7参照。)や、脱脂生コーヒー豆の極性溶媒抽出物を有効成分として含有するダイエット用組成物(例えば、特許文献8参照。)が知られている。
一方、植物から得られる生理活性を有するものは、生薬としてこれまで数多く知られているが、現代病とも言われている、肥満、高血圧症、脂質代謝異常等に作用を有する植物由来の成分を有効成分とする技術が増えている。例えば、哺乳類において血漿トリアシルグリセロール(TG)濃度を低下させ、かつ、遊離脂肪酸(FFA)濃度を上昇させるための、柳茶(生薬)を有効成分として含有する医薬製剤(例えば、特許文献9参照。)や緑藻網オオヒゲマワリ目のデュナリエラ属に属する微細藻のうち黄橙色の藻体または該藻体から得られる抽出物を含有する脂肪細胞縮小化剤(例えば、特許文献10参照。)や、温州みかんなどの柑橘類(特にマンダリン系柑橘類)の果肉に多量に含まれているβ−クリプトキサンチンを含有するPPAR活性化剤(例えば、特許文献11参照。)が知られている。
しかしながら、焙煎コーヒー豆粉砕物の熱水抽出物を特定の分画方法により得られる、カフェインやモノカフェオイルキナ酸類を低減し、生理活性成分を強化した水溶性コーヒーエキスや、前記水溶性コーヒーエキスを配合した飲食物、及び前記水溶性コーヒーエキスを有効成分とする経口用高血糖改善組成物や経口用脂肪細胞分化促進組成物は知られていない。
特許第4179765号公報 特開2002−308766号公報 特開2008−88187号公報 特開2008−189681号公報 特開2007−282571号公報 特開2006−262890号公報 特開2006−296414号公報 特開2006−335758号公報 特開2001−2579号公報 特開2007−210917号公報 WO2005−112904号公報
コーヒーの飲用が2型糖尿病の発症リスクを低減することは疫学調査により確認されており、その効果はカフェインとクロロゲン酸類によるものであると評価されている。しかしながら、生理活性機能を期待してコーヒーの多量飲用に対しては、有効成分と考えられているカフェインは、心血管系疾患を起こす等の副作用があり、一方、クロロゲン酸類は、渋味や酸味を有するために、高濃度化はコーヒーの味のバランスを損なってしまう欠点がある。本発明は、カフェインとクロロゲン酸類を低減し、生理活性成分を増加した水溶性コーヒーエキスの製造方法、前記水溶性コーヒーエキスを配合してなる飲食物、前記水溶性コーヒーエキスを有効成分とする経口用高血糖改善組成物、及び経口用脂肪細胞分化促進組成物を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するため、焙煎したコーヒー豆の焙煎の程度、抽出条件、分画に用いる吸着剤の種類、洗浄液の種類、分画の方法など種々鋭意検討した結果、焙煎コーヒー豆の粉砕物を熱水抽出し、熱水抽出液を得る工程、前記工程で得られた抽出液を合成吸着剤に接触させる工程、前記工程に続いて、該合成吸着剤に非吸着の画分を含有する溶液を分離・回収する工程、前記工程に続いて、該合成吸着剤を20〜40%の含水有機溶媒で洗浄する工程、前記工程に続いて、該合成吸着剤に吸着している成分を50〜100%の含水有機溶媒で溶出させ、溶離液を回収する工程、及び前記非吸着画分溶液と溶離液とを混合する工程により、得られたコーヒーエキスは水溶性であり、かつ特有の生理活性作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は(1)以下の工程(A)〜(F)を備えたことを特徴とする、水溶性コーヒーエキスの製造方法
1)焙煎コーヒー豆の粉砕物を熱水抽出し、熱水抽出液を得る工程(A);
2)前記工程(A)で得られた抽出液を合成吸着剤に接触させる工程(B);
3)前記工程(B)において、該合成吸着剤に非吸着の画分を含有する溶液を分離・回収する工程(C);
4)前記工程(C)に続いて、該合成吸着剤を20〜40%の含水有機溶媒で洗浄する工程(D);
5)前記工程(D)に続いて、該合成吸着剤に吸着している成分を50〜100%の含水有機溶媒で溶出させ、溶離液を回収する工程(E);
6)前記工程(C)で回収した非吸着液画分と前記工程(E)で回収した溶離液画分とを混合する工程(F);
や、(2)焙煎コーヒー豆が、a*値=3〜12の焙煎コーヒー豆であることを特徴とする前記(1)記載の製造方法や、(3)工程(A)の前、工程(A)〜(F)の間、工程(F)の後の任意の箇所で、脱カフェイン処理を行うことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の製造方法や、(4)工程(B)において、カラムに充填した合成吸着剤に抽出液を通液させ、工程(C)において、コーヒー成分の排出開始から樹脂容量の4倍量までの任意の量の通過液を回収することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の製造方法や、(5)合成吸着剤が、ポリスチレン/ジビニルベンゼン吸着剤であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載の製造方法や、(6)有機溶媒が、エタノール及び/又はメタノールである前記(1)〜(5)のいずれか記載の製造方法や、(7)工程(F)において、混合液を乾燥することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の製造方法に関する。
また、本発明は、(8)前記(1)〜(7)のいずれか記載の製造方法により得られる水溶性コーヒーエキスや、(9)モノカフェオイルキナ酸類含量が原料焙煎コーヒー豆よりも低下していることを特徴とする前記(8)記載の水溶性コーヒーエキスや、(10)モノカフェオイルキナ酸ラクトン類含量/モノカフェオイルキナ酸類含量が、原料焙煎コーヒー豆よりも増加していることを特徴とする前記(8)又は(9)記載の水溶性コーヒーエキスや、(11)モノカフェオイルキナ酸ラクトン類含量/モノカフェオイルキナ酸類含量が、2以上であることを特徴とする前記(8)〜(10)のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスや、(12)カフェイン含量が1.25重量%以下であることを特徴とする前記(8)〜(11)のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスや、(13)前記(8)〜(12)のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを配合してなる飲食物に関する。
さらに、本発明は、(14)前記(8)〜(12)のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを有効成分とする経口用高血糖改善組成物や、(15)前記(8)〜(12)のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを、経口用高血糖改善剤調製のために使用する方法や、(16)前記(8)〜(12)のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを有効成分とする経口用脂肪細胞分化促進組成物や、(17)前記(8)〜(12)のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを、経口用脂肪細胞分化促進剤調製のために使用する方法に関する。
本発明によれば、カフェインとモノカフェオイルキナ酸類が低減した水溶性コーヒーエキスを得ることができ、本発明の水溶性コーヒーエキスを含有するコーヒー飲料やインスタントコーヒーを日常的に飲用することにより、これらの高血糖改善作用や脂肪細分化促進作用を通して、さらには生活習慣病を原因とする心血管系疾患の予防、改善や、脳梗塞に発展する危険率を低下することができる。
2型糖尿病モデルマウスに、飲用水として、蒸留水が与えられた第1群の脂肪細胞の病理標本の写真である。 2型糖尿病モデルマウスに、飲用水として、本発明の画分(3)水溶液が与えられた第2群の脂肪細胞の病理標本の写真である。
本発明の水溶性コーヒーエキスの製造方法は、以下の工程(A)〜(F)、すなわち1)焙煎コーヒー豆の粉砕物を熱水抽出し、熱水抽出液を得る工程(A);2)前記工程(A)で得られた抽出液を合成吸着剤に接触させる工程(B);3)前記工程(B)において、合成吸着剤に非吸着の画分を含有する溶液を分離・回収する工程(C);4)前記工程(C)に続いて、合成吸着剤を20〜40%の含水有機溶媒で洗浄する工程(D);5)前記工程(D)に続いて、合成吸着剤に吸着している成分を50〜100%の含水有機溶媒で溶出させ、溶離液を回収する工程(E);6)前記工程(C)で回収した非吸着画分と前記工程(E)で回収した溶離液画分とを混合する工程(F)、を備えた方法であれば、特に制限されるものではない。本発明の水溶性コーヒーエキス(以下、「コーヒーエキス」という場合がある)を得るための原料となるコーヒー豆は、品種や原産地を問わずいずれも用いることができるが、例えば、アラビカ種、ロブスタ種があるが、具体的には、アラビカ種であるブラジル、コロンビア、キリマンジャロ、モカ等が好適に用いられる。そして、本発明では、コーヒー豆を焙煎することが必要であり、焙煎度により、モノカフェオイルキナ酸類の含有量が異なってくる。その後、焙煎コーヒー豆を粉砕するが、その粉砕方法や粉砕粒度に格別の制限はなく、所望、目的、抽出方法などにより適宜選択することができる。
本発明の工程(A)は、焙煎コーヒー豆の粉砕物を熱水抽出し、熱水抽出液を得る工程であり、抽出の方式や条件に格別の制限はなく、所望又は目的により選択することができる。抽出方式としては、カラムに原料を充填し、当該カラムに熱水を順次送液して抽出液を得る装置、或いは、抽出釜に原料を充填し、熱水で一定時間浸漬するニーダーと呼ばれる抽出装置などが挙げられる。ニーダー方式での抽出条件の一例としては、焙煎コーヒー豆の粉砕物を、5〜30倍重量の熱水(80〜100℃)で、5〜30分間抽出する。抽出後、固液分離し、さらに遠心分離やろ過などにより清澄化し抽出液を得る。以上の抽出、固液分離、清澄化を複数回行ってもよい。
本発明の工程(B)は、前記工程(A)で得られた抽出液を合成吸着剤に接触させる工程であり、用いる合成吸着剤として、ポリスチレン/ジビニルベンゼン吸着剤樹脂、例えば、Amberlite XAD4、Amberlite XAD16、Amberlite XAD1180、Amberlite XAD1600(以上、ローム・アンド・ハース社製)、Diaion HP20、Diaion HP21、Sepabeads SP825、Sepabeads SP850、Sepabeads SP70、Sepabeads SP700、又はSepabeads SP207(以上、三菱化学社製)を例示することができ、好ましくは修飾ポリスチレン/ジビニルベンゼン吸着剤樹脂、例えばSepabeads SP207を例示することができる。接触させる方法は、工程(A)で得られた抽出液に前記いずれかの吸着剤を投入し、撹拌等により充分に接触させるバッチ方式や、前記のいずれかの合成吸着剤を充填したカラムに工程(A)で得られた抽出液を通液して接触させるカラム方式などが挙げられ、コーヒー成分の吸着効率などを考慮すると、カラム方式で行うことが好ましい。
本発明の工程(C)は、合成吸着剤に非吸着の画分を含有する溶液を分離・回収する工程である。バッチ方式で行う場合は、メッシュなどによる固液分離により吸着剤と分離した溶液を回収する。カラム方式で行う場合は、最初に排出されるカラム中の滞留液は廃棄することが好ましく、その後に排出される非吸着画分を含有する通過液を回収する。この回収された液を、工程(E)で回収される溶離液と混合することにより、本発明のコーヒーエキスは、その理由は明らかではないが、水溶性を具備することができる。
本発明の工程(D)は、工程(C)に続いて、該合成吸着剤を20〜40%の含水有機溶媒で洗浄する工程であるが、この工程において用いる含水有機溶媒としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール類やアセトン等の水溶性低分子有機溶媒を挙げることができる。好ましくは低級アルコール類であり、食品での使用を勘案するとエタノールを好適に例示することができる。この含水有機溶媒による洗浄に先立って、イオン交換水で吸着剤を洗浄することが好ましい。このように、イオン交換水や20〜40%の低濃度の含水有機溶媒で洗浄することにより、本発明の有効成分の作用効果を上げることができる。含水有機溶媒の濃度が20%未満であると洗浄効率が落ち、また、40%を超えると本発明の有効なコーヒーエキスが含水有機溶媒に溶出し、収率に影響を及ぼす。
本発明の工程(E)は、工程(D)に続いて、合成吸着剤に吸着している成分を50〜100%の含水有機溶媒(厳密には、含水有機溶媒又は有機溶媒)で溶出させ、溶離液を回収する工程であり、該含水有機溶媒としては、工程(D)で用いる含水有機溶媒と同様の有機溶媒を用いることができる。50〜100%の含水有機溶媒を用いて、例えばカラム内の合成吸着剤に通液することにより、本発明のモノカフェオイルキナ酸類が低減されたコーヒー成分画分が得られる。含水有機溶媒の濃度が50%未満では、本発明の有効なコーヒー成分画分を溶離液中に十分に回収することができない。
本発明の工程(F)は、前記工程(C)で回収した非吸着画分を含有する溶液と前記工程(E)で回収した溶離液画分とを混合する工程であり、この工程により、本発明のコーヒーエキスは、水溶解性に優れたものとなる。
本発明で用いるコーヒー豆の焙煎の程度は、焙煎コーヒー豆の色調を目安とする。焙煎コーヒー豆の色調は、表色系によって特定することができる。本発明においては、CIELab表色系を採用した。本発明の焙煎コーヒー豆は、a*値=3〜12の焙煎コーヒー豆であることが好ましく、a*値=5〜10がより好ましい。
本発明においては、工程(A)の前、工程(A)〜(F)の間、工程(F)の後の任意の箇所で脱カフェイン処理を行うことが好ましい。
例えば、工程(A)の前の脱カフェイン処理としては、焙煎前の生コーヒー豆或いは焙煎コーヒー豆からカフェインを除去する公知の処理を挙げることができる。工程(A)における脱カフェイン処理としては、抽出槽内に焙煎コーヒー豆とカフェイン吸着剤を添加し、熱水抽出を行う処理を具体的に挙げることができる。工程(A)の後における脱カフェイン処理としては、熱水抽出液にカフェイン吸着剤を添加・攪拌し、固液分離処理して得られた抽出液を合成吸着剤に接触させる処理を具体的に挙げることができる。工程(E)の後における脱カフェイン処理としては、得られた溶離液にカフェイン吸着剤を添加・攪拌し、固液分離処理を行う処理を具体的に挙げることができる。工程(F)の後における脱カフェイン処理としては、得られた混合液にカフェイン吸着剤を添加・攪拌し、固液分離処理を行う処理を具体的に挙げることができる。用いるカフェイン吸着剤としてはカフェインを吸着し得るものであればよく、活性炭、酸性白土、活性白土等を例示することができるが、カフェインに対する選択性を考慮すると、酸性白土及び/又は活性白土を使用することが好ましく、例えば商品名「ミズカエース」、「ガレオンアース」(水澤化学工業)を挙げることができる。
本発明の処理によりモノカフェオイルキナ酸類含量が、原料焙煎コーヒー豆よりも低下するものである。モノカフェオイルキナ酸類には、3−カフェオイルキナ酸(3−CQAと略する場合がある)、4−カフェオイルキナ酸(4−CQAと略する場合がある)、5−カフェオイルキナ酸(5−CQAと略する場合がある)等があり、これらの含量を総計してモノカフェオイルキナ酸類(monoCQAsと略する)とする。通常のコーヒー飲料では、クロロゲン酸量に比べ、カフェイン量は同等、或いは多いが、本発明では、モノカフェオイルキナ酸類とカフェインの両方を低減することができ、例えば、カフェイン量は乾物換算で1.25重量%以下とすることができる。その結果、生理活性作用、特に高血糖改善作用や脂肪細胞分化作用において優れたコーヒー成分を、カフェインの副作用やモノカフェオイルキナ酸類の呈味への影響を懸念することなく摂取することが可能となる。さらに、飲食物に香ばしさや苦味を付与する用途でも使用でき、例えば、コーヒー飲料とした場合、香ばしくまろやかな苦味を有し、優れた飲料を提供することができる。
さらに、本発明は、モノカフェオイルキナ酸ラクトン類含量が、原料焙煎コーヒー豆よりも増加させることが好ましく、また、モノカフェオイルキナ酸ラクトン類含量/モノカフェオイルキナ酸類含量の値を、2以上とすることが好ましい。モノカフェオイルキナ酸ラクトンとは、コーヒー豆の焙煎によりモノカフェオイルキナ酸から生成される成分であることが知られており、3−カフェオイル−1,5−キノラクトン、4−カフェオイル−1,3−キノラクトン、4−カフェオイル−1,5−キノラクトン、5−カフェオイル−1,3−キノラクトン、5−カフェオイル−1,4−キノラクトンなどが知られているが、本発明において「モノカフェオイルキナ酸ラクトン類(monoCQLsと略する)」とは、HPLCによる分離分析において、UV325nm付近に極大吸収を有し、且つTOF/MS(ネガティブモード)において、m/z[M+H]=335.076である成分の混合物を指す。
本発明のコーヒーエキスは、前記工程(F)で得られた混合液を乾燥して粉体とすることが好ましく、粉体とすることにより、ハンドリング性の向上、液体製品以外への応用の拡大、保存時の風香味劣化の低減による品質の保持などが期待できる。粉体とするためには、必要に応じてデキストリン等の添加物を加えて、凍結乾燥法、噴霧乾燥法等の公知の粉末化手段を採用することができる。本発明の粉末状のコーヒーエキスは、水溶解性に優れているため、例えば易溶性インスタントコーヒーの原料に好適である。
本発明のコーヒーエキスに、所望により副原料を添加し、飲食物を提供することもできる。副原料としては、乳製品(例えば、生乳、脱脂乳、粉乳、脱脂粉乳などその他)ほか各種副原料がすべて挙げられ、例えば重曹その他のpH調整剤;ビタミンC、ビタミンE等の酸化防止剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、大豆リン脂質等の乳化剤;グルコース、フルクトース、マルトース、シュークロース、トレハロース、ラフィノース、でんぷん、その他糖類;エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール;甘味料;香料;酵素などの1種以上を選択、使用することができる。飲食物としては、具体的にはコーヒー飲料、インスタントコーヒー、ココア、飴やクッキーなどの菓子類、ゼリーなどの半固形食品などを挙げることができる。
飲食物の一例として、本発明のコーヒーエキスを配合して容器詰飲料、特に容器詰コーヒー飲料とすることができ、この場合も、通常の容器詰飲料の製造方法を採用して製造することができる。コーヒー飲料の調製に用いる水には、純水、硬水、軟水、イオン交換水のほか、アスコルビン酸含有水溶液及びpH調整水等を例示することができ、また、これら使用する水を脱気処理した脱気水を好適に用いることができる。
本発明のコーヒーエキスは、糖尿病予備軍ともいわれる血糖値が高めの人や、糖尿病を患う人の高血糖状態を改善するのに有効である。また、多くの生活習慣病に影響を及ぼすことが知られている脂肪細胞の分化を促進し、体内の糖質や脂質代謝を改善する作用をも有する。したがって本発明は、本発明のコーヒーエキスを有効成分とする経口用高血糖改善組成物や経口用脂肪細胞分化促進組成物にも関する。前記脂肪細胞分化促進作用とは、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化促進作用により、善玉ホルモンを分泌する小型脂肪細胞を増やす作用だけでなく、改善された糖・脂質代謝により、肥満につながる脂肪細胞の肥大化を抑制する作用まで含む。特に生活習慣病と密接に関連する悪玉アディポサイトカイン類の過剰分泌を引き起こす内臓脂肪の肥大化を抑えることにより、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、ガン等の生活習慣病を幅広く予防、改善するものである。本発明の経口用高血糖改善組成物や経口用脂肪細胞分化促進組成物は、常法により錠剤、顆粒、カプセル、シロップ等製剤化して、健康サプリメントや医薬品として用いることができる。サプリメントや医薬品として用いる場合、それらの分野で通常用いられている賦形剤を配合することが好ましい。また、摂取量は、ヒトの体重、年齢、性別、症状等により異なり、特に症状に応じて1日当たりの投与量を決定するが、食品由来の成分であるために安全性が高く、長期に服用することもできる。
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は実施例に限定するものではない。
まず、本発明の実施例で採用した成分分析方法を説明する。
1)HPLC条件
HPLC装置:島津LC−10AD二液高圧グラジエントシステム
カラム:Waters XBridge Shield RP18 3.5μm(3.0mm I.D.×150mm)
カラム温度:40℃
移動相A:水−りん酸(100:0.1)
移動相B:水−アセトニトリル−りん酸(50:50:0.1)
流速:0.6 mL/分
検出:UV 270nm、325nm
注入量:5μL
グラジエントプログラム:移動相Bを、分析開始から4分まで10%で流し、その後16分間で25%に、次の15分間で40%にリニアに上昇させる。以降55分まで保持し、その後1分間で80%にリニアに上昇させる。4分間保持させた後に、1分間で10%までリニアに低下させ、以降70分まで保持する。
2)成分の同定方法
カフェインとクロロゲン酸(5−カフェオイルキナ酸)は、市販の標準物質との保持時間の比較により同定した。
3−カフェオイルキナ酸及び4−カフェオイルキナ酸は、フレーバーホルダーRC−30R(長谷川香料社製)の同定済みピークとの保持時間の比較により同定した。
モノカフェオイルキナ酸ラクトン類は、LC−TOF/MS(ネガティブモード)による検出を行い、m/z[M−H]=335.076であるピーク群をまとめてモノカフェオイルキナ酸ラクトン類と同定した。
3)成分の定量方法
カフェインはUV270nmで検出を行い、モノカフェオイルキナ酸とモノカフェイルキナ酸ラクトンはUV325nmで検出を行った。
カフェインとクロロゲン酸は、市販の標準品を使用して濃度対ピーク面積による検量線を作成して、定量を行った。
3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、モノカフェオイルキナ酸ラクトン類は、各々のピーク面積を使用して、クロロゲン酸の検量線を使用した推定値として算出した。
モノカフェオイルキナ酸類は、クロロゲン酸(5−カフェオイルキナ酸)、3−カフェオイルキナ酸及び4−カフェオイルキナ酸の合計値とした。
4)分析試料の調製方法
コーヒー豆は、ミルを使用して粉砕し、500μmのメッシュ通過分を抽出試料とした。抽出試料は100mLメスフラスコに100mgを精秤し、90℃以上の熱水を約80mL注ぎ、90℃の水浴中で30分間抽出を行った。抽出後は急冷した後に水で100mLに定容し、濾紙で濾過を行い、濾液を孔径0.45μmのバーサポアフィルタでろ過して分析試料とした。
抽出物、分画物は、適切な濃度で蒸留水に溶解し、孔径0.45μmのバーサポアフィルタでろ過して分析試料とした。
コロンビア産デカフェコーヒーの深煎り豆をコーヒーカッターで粉砕し、粉砕物50kgを90℃の熱水900Lに投入し、10分間抽出した。抽出後、固液分離、冷却、遠心分離を行い、抽出液を得た。以上の工程を2回行った。
抽出液は4等分して、SEPABEADS SP207(三菱化学)100Lを充填したカラム4本に通液し、内1本のカラムの通過液は全量を回収した(回収液A)。抽出液通液後に各カラムにイオン交換水100Lを通水して吸着剤を洗浄した。次いで、30%エタノールを各カラムに300Lを通液して吸着剤を洗浄した。次に、60%エタノール400Lを各カラムに通液し、溶離液全量を回収した(回収液B)。回収液Aと回収液Bを混合し、濃縮、噴霧乾燥を行い、画分(1)を3.2kg得た。
実施例1で使用したものと同じコーヒー豆をコーヒーカッターで粉砕し、粉砕物50kgを90℃の熱水900Lに投入し、5分間抽出した。次いで、抽出槽に酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学工業)を5kg投入し、撹拌後さらに5分間抽出した。抽出後、固液分離、冷却、遠心分離を行い、抽出液を得た。以上の工程を2回行った。
抽出液は4等分して、SEPABEADS SP207(三菱化学)100Lを充填したカラム4本に通液し、内1本のカラムの通過液は全量を回収した(回収液A)。抽出液通液後に各カラムにイオン交換水100Lを通水して吸着剤を洗浄した。次いで、40%エタノール200Lを各カラムに通液して吸着剤を洗浄した。次に、60%エタノール400Lを各カラムに通液し、溶離液全量を回収した(回収液B)。回収液Aと回収液Bを混合し、濃縮、噴霧乾燥を行い、画分(2)を2.3kg得た。
ブラジル産デカフェコーヒーの深煎り豆をコーヒーカッターで粉砕し、粉砕物1kgを90℃の熱水20Lに投入し、撹拌しながら10分間抽出した。抽出後、固液分離し、濾液を30℃以下まで冷却した後に、酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学工業)を50g添加し、10分間撹拌した後に、遠心分離(3000rpm、10分間)を行い、上清を濾紙(JIS No.2)で濾過して、抽出液を得た。
抽出液はSEPABEADS SP207(三菱化学)4Lを充填したカラムに通液し、通過液は最初の4Lを廃棄した後に以降の4.8Lを回収した(回収液A)。抽出液通液後にイオン交換水4Lで吸着剤を洗浄した後に、20%エタノールを24L通液して吸着剤を洗浄した。次いで、60%エタノール20Lを通液し、溶離液全量を回収した(回収液B)。回収液Aと回収液Bを混合し、濃縮、凍結乾燥を行い、画分(3)を56g得た。
実施例1乃至3においてそれぞれ用いたコーヒー豆の色値(a*値)と成分含有量(重量%)を表1に、及び画分(1)乃至(3)の成分分析結果を表2に示す。
いずれの実施例でもデカフェコーヒー豆を使用しているが、実施例1では、酸性白土による処理工程を経ていないのに対し、実施例2及び3では、酸性白土を用いてカフェイン量を更に減少させており、表2に示すように、実施例2及び3のカフェイン含量は実施例1の1/2以下に低減された。さらに、本発明の工程(C)における、抽出液通液後の吸着剤洗浄用の含水有機溶媒として、実施例1及び2では30%エタノールを、実施例3では含水有機溶媒濃度として上限である40%のエタノールを用いているが、いずれの実施例においても、モノカフェオイルキナ酸類(A)に対するモノカフェオイルキナ酸ラクトン類(B)の比率[(B)/(A)]が4以上となっており、表1に記載の原料焙煎コーヒー豆の約0.2から大きく上昇していることから、実施例1乃至3の処理方法によりモノカフェオイルキナ酸類が大きく低減されたことが分かる。また、カフェイン量は1.25重量%以下(乾物換算)であることが重要である。
[比較例1]
ブラジル産デカフェコーヒーの深煎り豆をコーヒーカッターで粉砕し、粉砕物1kgを90℃の熱水20Lに投入し、撹拌しながら10分間抽出した。抽出後、固液分離し、濾液を30℃以下まで冷却した後に、酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学工業)を50g添加し、10分間撹拌した後に、遠心分離(3000rpm、10分間)を行い、上清を濾紙(JIS No.2)で濾過して、抽出液を得た。
抽出液はSEPABEADS SP207(三菱化学)4Lを充填したカラムに通液した。抽出液通液後にイオン交換水4Lで吸着剤を洗浄した後に、20%エタノール24Lを通液して吸着剤を洗浄した。次いで、60%エタノール20Lを通液し、溶離液全量を回収し、濃縮、凍結乾燥を行い、画分(4)を34g得た。
実施例1乃至3で得られた画分(1)乃至(3)と比較例1で得られた画分(4)の水への溶解性(1%)を比べ、その結果を表4に示す。
表3に示すように、比較例1の画分(4)は水に溶解できず、分散させる為には結晶セルロースなどの分散剤の添加が必要であった。一方、実施例1乃至3の画分(1)乃至(3)はいずれも水に容易に溶解できた。このことより、合成吸着剤に非吸着の画分を添加することにより、コーヒー由来以外の分散剤や乳化剤を添加することなく水溶性素材を提供することができる。
ブラジル産デカフェコーヒーの生豆を熱風焙煎機(Gene Cafe、Genesis社)を使用し、焙煎温度を230℃として、10分、11.25分、12分、13.5分、14.25分、15.5分、18.5分、21.5分間の焙煎を行った。
得られた各焙煎豆はコーヒーカッターで粉砕し、粉砕物25gを90℃の熱水500mLに投入し、撹拌しながら10分間抽出した。抽出後、固液分離し、濾液を30℃以下まで冷却した後に、遠心分離(3000rpm、10分間)を行い、上清を濾紙(JIS No.2)で濾過して、抽出液を得た。
抽出液はSEPABEADS SP207(三菱化学)100mLを充填したカラムに通液し、通過液を全量回収した(回収液A)。イオン交換水100mLで吸着剤を洗浄した後に、30%エタノール300mLを通液して吸着剤を洗浄した。次いで、60%エタノール400mLを通液し、溶離液全量を回収した(回収液B)。回収液Aと回収液Bを各々濃縮、凍結乾燥を行い、回収液B乾燥物と等量の回収液A乾燥物を混合して、水で再溶解、凍結乾燥を行い、画分(5)を得た。各焙煎コーヒー豆の各焙煎時間、a*値、成分含有量(重量%)、モノカフェオイルキナ酸類(A)に対するモノカフェオイルキナ酸ラクトン類(B)の比[(B)/(A)]を表4に示す。また、得られた画分(5)の成分分析結果を表5に示す。
実施例4の結果について、コーヒー豆の焙煎度による比較より、焙煎時間に従いモノカフェオイルキナ酸類量(A)は低下し、モノカフェオイルキナ酸ラクトン量(B)は増加の後に低下することが確認された。モノカフェオイルキナ酸の低含量化を達成するために、調製画分のモノカフェオイルキナ酸ラクトン/モノカフェオイルキナ酸[(B)/(A)]を指標とした場合、コーヒー豆のa*値が12以下で1以上となり、本発明の工程によるモノカフェオイルキナ酸の低減に好ましい焙煎度といえる。更に絶対的なモノカフェオイルキナ酸類の低減を求めるならば、コーヒー豆のa*値は10以下が好ましいといえる。加えて、a*値が12以下では、含有成分値が減少する一方で、画分の収率は4%以上の高値を安定的に達成できており、焙煎による生成物が本画分に濃縮できていることが示唆される。
ブラジル産デカフェコーヒーの深煎り豆をコーヒーカッターで粉砕し、粉砕物1kgを90℃の熱水20Lに投入し、撹拌しながら10分間抽出した。抽出後、固液分離し、濾液を30℃以下まで冷却した後に、遠心分離(3000rpm、10分間)を行い、上清を濾紙(JIS No.2)で濾過して、抽出液を得た。
抽出液はSEPABEADS SP207(三菱化学)4Lを充填したカラムに通液した。抽出液通液後にイオン交換水4Lで吸着剤を洗浄した後に、20%エタノール24Lを通液して吸着剤を洗浄した。次いで、100%エタノール20Lを通液し、溶離液全量を回収した。回収液を、濃縮、凍結乾燥を行い、画分(6)を33.8g得た。
次に、60%エタノールを使用して、画分(6)の5%水溶液を調製し、溶液10mLに対して1.5gの3種類の添加剤(表6記載、いずれも水澤化学工業)をそれぞれ加え、ボルテックスによる30秒間の撹拌の後に遠心分離を行い、上清を適宜水で希釈し、カフェイン含有量を測定した。その結果を表6に示す。表6において、試験区のカフェイン残存率は、添加剤なしの含有量を基準とした百分率で示した。
実施例5は、本発明の工程(C)における含水有機溶媒として下限濃度である20%のエタノールを用い、本発明の工程(D)において、本発明の工程(D)における含水有機溶媒濃度として上限である100%のエタノールを用いること、及び工程(E)の後において、回収した溶離液に表6に示す酸性白土及び活性白土を用いて処理したものである。表6に示すように、酸性白土及び活性白土による処理の結果、いずれの添加剤でもカフェインを充分に低減できることが示された。
ブラジル産デカフェコーヒーの深煎り豆をコーヒーカッターで粉砕し、粉砕物12.5gを90℃の熱水250mLに投入し、5分間抽出した。次に酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学工業)を1.25g投入し、撹拌後5分間抽出した。抽出後、固液分離、冷却、遠心分離を行い、抽出液200mLを得た。抽出液のBrixは1.3%であった。
抽出液はSEPABEADS SP207(三菱化学)50mLを充填したカラムに通液し、その後にイオン交換水を通水して洗浄を行った。抽出液の通液開始からカラム出口のBrixをモニタし、0.2%に達した時点から通過液を50mLずつ回収し、回収したフラクションを適宜希釈してHPLCで分析を行った。その結果を表7に示す。
表7に示すように、モノカフェオイルキナ酸類は吸着剤との結合が弱い為に、緩やかに溶出する。フラクション4の段階では吸着剤接触前の80%以上を吸着している。しかし、フラクション5では吸着率は70%以下まで低下し、フラクション6では20%程度しか吸着されなくなっている。吸着剤非吸着画分は、発明品の水溶化のために必要であるが、発明品へのモノカフェオイルキナ酸類の持ち込みを防ぐ為に、通過液の回収はフラクション4まで、すなわちコーヒー成分の排出開始から樹脂容量の4倍量までに留めることが好ましいといえる。
4週齢の2型糖尿病モデルマウスである、BKS.Cg−m+/+Leprdb/J系雄性マウスを、1週間馴化した後に7匹ずつ2群に分け、第1群には蒸留水を、第2群には実施例3で調製した画分(3)の0.0225重量%水溶液を自由飲水させた。食餌は普通食(CE−2、日本クレア)を摂取させた。6週間の飼育の後に、体重を測定すると共に、18時間絶食後エーテル麻酔下で腹部大動脈より採血を行い、空腹時血清グルコース及びアディポネクチン値を測定した。さらに、腎周囲および精巣周囲の白色脂肪を採取し、重量を測定後ホルマリン固定を行い、病理標本を作製した。病理標本は、HE染色を行った後に写真撮影を行い、画像処理ソフトウェア(Win ROOF、三谷商事)を使用して細胞数と面積を測定した。その結果を表8及び9に、病理標本の写真を図1(第1群)及び図2(第2群)に示す。
使用した2型糖尿病モデルマウスは3〜4週齢で肥満症状を呈し、4〜8週齢で血糖値が急増する。表8に示すように、本発明の実施例3で得られた画分(3)を飲水投与した第2群では、外観上の肥満症状に第1群との相違は認められなかったが、血清グルコース値は第1群に対して有意な低値を示し、本発明の画分は高血糖の改善効果に優れ、糖尿病に有効であることが示された。さらに、善玉サイトカインである血清アディポネクチン値の低下が抑制される一方で、白色脂肪量の低減を認めており、脂肪細胞の分泌系の改善がなされていると推測される。表9及び図1、図2に示すように、第1群と比較して第2群は大型脂肪細胞数の減少と小型脂肪細胞数の顕著な増加が見て取れることから、本発明の画分は脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化を促進し、糖及び脂肪の代謝を改善していることが推測される。

Claims (17)

  1. 以下の工程(A)〜(F)を備えたことを特徴とする、水溶性コーヒーエキスの製造方法。
    1)焙煎コーヒー豆の粉砕物を熱水抽出し、熱水抽出液を得る工程(A);
    2)前記工程(A)で得られた抽出液を合成吸着剤に接触させる工程(B);
    3)前記工程(B)において、該合成吸着剤に非吸着の画分を含有する溶液を分離・回収する工程(C);
    4)前記工程(C)に続いて、該合成吸着剤を20〜40%の含水有機溶媒で洗浄する工程(D);
    5)前記工程(D)に続いて、該合成吸着剤に吸着している成分を50〜100%の含水有機溶媒で溶出させ、溶離液を回収する工程(E);
    6)前記工程(C)で回収した非吸着液画分と前記工程(E)で回収した溶離液画分とを混合する工程(F);
  2. 焙煎コーヒー豆が、a*値=3〜12の焙煎コーヒー豆であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 工程(A)の前、工程(A)〜(F)の間、工程(F)の後の任意の箇所で、脱カフェイン処理を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 工程(B)において、カラムに充填した合成吸着剤に抽出液を通液させ、工程(C)において、コーヒー成分の排出開始から樹脂容量の4倍量までの任意の量の通過液を回収することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
  5. 合成吸着剤が、ポリスチレン/ジビニルベンゼン吸着剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
  6. 有機溶媒が、エタノール及び/又はメタノールである請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。
  7. 工程(F)において、混合液を乾燥することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか記載の製造方法により得られる水溶性コーヒーエキス。
  9. モノカフェオイルキナ酸類含量が原料焙煎コーヒー豆よりも低下していることを特徴とする請求項8記載の水溶性コーヒーエキス。
  10. モノカフェオイルキナ酸ラクトン類含量/モノカフェオイルキナ酸類含量が、原料焙煎コーヒー豆よりも増加していることを特徴とする請求項8又は9記載の水溶性コーヒーエキス。
  11. モノカフェオイルキナ酸ラクトン類含量/モノカフェオイルキナ酸類含量が、2以上であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか記載の水溶性コーヒーエキス。
  12. カフェイン含量が1.25重量%以下であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか記載の水溶性コーヒーエキス。
  13. 請求項8〜12のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを配合してなる飲食物。
  14. 請求項8〜12のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを有効成分とする経口用高血糖改善組成物。
  15. 請求項8〜12のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを、経口用高血糖改善剤調製のために使用する方法。
  16. 請求項8〜12のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを有効成分とする経口用脂肪細胞分化促進組成物。
  17. 請求項8〜12のいずれか記載の水溶性コーヒーエキスを、経口用脂肪細胞分化促進剤調製のために使用する方法。
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