JP6355129B2 - 1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを高濃度で含有する飲食品 - Google Patents

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本発明は、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを高濃度で含有する飲食品に関する。
日本では近年食生活の欧米化が進んでいる。この現象に伴い、糖尿病の罹患率は上昇傾向にある。また、こうした公衆衛生上の問題は国内に限らず世界でも発生している。糖尿病を根治できる療法はいまだ開発されておらず、糖尿病対策は治療よりも予防に重点が置かれている。糖尿病の発症に大きく寄与する因子として食後血糖が挙げられる。食後血糖は、食事として摂取した糖質が消化吸収を受けてグルコースとして血中に出現した濃度として定義される。食後血糖が高値で維持されることが糖尿病発症の大きなリスクであることが近年示されている。食後高血糖の上昇を穏やかにすることで糖尿病の発症が抑制できることが明らかになったことから、α−アミラーゼ阻害作用を有する飲食品には糖尿病の予防作用が期待されている。こうした背景から、血糖上昇を穏やかにすることで糖尿病予防効果を期待できる食品が望まれている。
植物に含有されるポリフェノールには、コレステロールの低下作用や体脂肪の低減作用があることが報告されており、その生理的な有用性が示唆されている。ポリフェノールのこれらの作用発揮を期待して、ポリフェノールを高濃度で含有させた飲食品が存在する。
茶類は古来より用いられている飲料である。茶にはポリフェノールをはじめさまざまな成分が含有されている。茶に含まれる成分の有する機能性については多くの報告がある。しかしながら、茶に存在する各成分は微量であるがゆえに茶自身を飲料として摂取した場合に明確な機能を発揮できる場合はほとんどない。
Yoshidaらは、サザンカ類の葉より1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースをはじめて発見した(非特許文献1)。また、Fukudaらは、クルミ中に1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースが存在することを発見し、10kg中のクルミから7.7mgを単離した(非特許文献2)。また、Gaoらは、カメリア・タリエンシスに属する茶の茶葉に2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースが0.02質量%含有されていることを発見した(非特許文献3)。
しかしながら、これらの文献には、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースが糖尿病を予防するために使用できることは、記載されていない。
Phytochemistry,37:241−244(1994) Phytochemistry,63:795−801(2003) J.Agric.Food Chem.56:7517−7521(2008)
本発明は、αアミラーゼを阻害することによる食後の高血糖防止を通じて糖尿病を予防するための飲食品を提供することを目的とする。
われわれは、ある種の茶に含有される成分1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースに優れた機能性を見出した。そして、この1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースは他の茶成分と比較して極めて微量で機能性を発揮することが明らかとなった。すなわち、特許請求の範囲において規定される量の1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを含有する飲食品は、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースの有する機能を発揮することができる。
すなわち、本発明は、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを高濃度で含有する飲食品を提供する。
また、本発明は、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを有効成分として含有する血糖上昇抑制剤を提供する。
また、本発明は、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを有効成分として含有するα−アミラーゼ阻害剤を提供する。
また、本発明は、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療剤を提供する。
飲食品に1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを含有させることでα−アミラーゼ阻害作用を通して、食後の血糖上昇を抑制することができる。この作用により糖尿病の予防効果が期待できる。さらに、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースはごく微量でその効果(例えば、血糖上昇抑制効果)を発揮することができ、風味をはじめとする製品の品質を損なうことなく用いることができる。
1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノース(CT−1)によるα−アミラーゼ阻害活性を示すグラフである。 経口糖負荷試験の結果を示すグラフである。 経口糖負荷試験の結果を示すグラフである。
本発明において使用される1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースは、例えばサザンカ類、カメリア・タリエンシス種、カメリア・イラワジエンシス種、カメリア・シネンシス種やそれらの雑種に属する茶、クルミなどに含まれており、本発明の飲食品、血糖上昇抑制剤、α−アミラーゼ阻害剤、並びに糖尿病の予防及び治療剤を調製する場合には、これらの植物体をそのまま使用してもよく、又はこれらの植物体から抽出して得られる抽出液を有効成分として使用してもよい。例えば、カメリア・タリエンシス種の植物体をそのまま使用する場合には、葉、果実、種子、幹又は根を生の状態、あるいは乾燥の後、適切な大きさに細砕又は粉末化する。また、抽出した抽出液を有効成分として使用する場合には、水、アルコール、又はその他の有機溶媒等を抽出溶媒として用いる。これらの溶媒の混合物を使用してもよい。好ましい抽出溶媒は水、又は水とアルコール等との混合溶媒である。抽出は、室温抽出、加熱抽出さらには加圧抽出等によって行ってもよい。一般的には、抽出は室温〜125℃で行われる。植物体からの抽出液の抽出後、遠心分離等により固形分と液体を分離し、さらに必要に応じて濾過等の処理を行った後、減圧濃縮等で濃縮してエキス化してもよい。さらに、真空乾燥、凍結乾燥等により粉末化することもできる。粉末化に際して、適当な賦形剤を加えてもよい。あるいは、抽出液をさらに精製して1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを単離して、本発明の飲食品、血糖上昇抑制剤、α−アミラーゼ阻害剤、並びに糖尿病の予防及び治療剤を調製するために添加してもよい。
本発明の血糖上昇抑制剤、α−アミラーゼ阻害剤、並びに糖尿病の予防及び治療剤を調製する際には、製剤化の常法を適宜使用することができ、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを含む植物体若しくはその抽出液や抽出エキス、又は1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースの単体を単独で使用して、又はこれらに賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、風味改善剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの常用される補助剤を加えて、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤などの形態で製剤化してもよい。
また、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを含む植物体若しくはその抽出液や抽出エキス、又は1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースの単体を、必要に応じて上記補助剤若しくは食品素材とともに、固体状(粉末、顆粒状など)、ペースト状、液状ないし懸濁状の飲食品としてもよく、例えば茶飲料、ジュース、スポーツドリンク、アルコール飲料、発酵乳、チーズやバターなどの乳製品、ドリンクヨーグルトや乳酸菌飲料、バターケーキなどの菓子・パン類などの飲料又は食品の形態としてもよく、さらにサプリメントなどの医薬部外品としてもよい。また、飲料形態の場合は、飲料自体の風味や1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースの保存安定性の観点から容器詰め飲料であることが好ましい。食品素材としては、固形物(粉状、薄片状、塊状など)、半固形物(ゼリー状、水飴状など)、又は液状物等のいずれであってもよい。製剤、飲料、食品又は医薬部外品1gあたりの1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースの含有量は、0.1〜10.0mg(乾燥重量)であることが望ましい。
本発明で用いる1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースは、安全性には問題ないため、これを経口投与する場合の投与量に制限はない。一般的には、1回につき0.1g(乾燥重量)/kg体重以上の量、好ましくは0.1〜2g(乾燥重量)/kg体重の量を1日に1〜数回経口投与する。また、1日当たりの総投与量としては、0.1mg以上、好ましくは0.1〜5.0mgである。
本発明の飲食品として、容器詰め飲料の形態をとる場合、容量を500mLとすれば、1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースの含有量は、一般的には0.02質量%以上、好ましくは0.02〜0.2質量%である。
(1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノース含有添加物の調製)
カメリア・タリエンシス種雑種の茶中間母本農6号の茶葉2gを100℃の熱水100mLに7分間接触させ熱水抽出物を得た。熱水抽出物を凍結乾燥し、茶葉熱水抽出物凍結乾燥物(以下、乾燥物という)を得た。乾燥物中の1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノース(実施例中において略称として「CT−1」と表示する場合がある。)含量を高速液体クロマトグラフィーにて定量した。分析条件は、カラム;Inertsil ODS−3 2.1×150mm,溶離液A;水:アセトニトリル=91:9(0.1%トリフルオロ酢酸含有),溶離液B;水:アセトリニトリル=40:60(0.1%トリフルオロ酢酸含有),溶出条件;溶離液B濃度8から40%への35分間のリニアグラジエントとした。乾燥物中のCT−1含量は7.7%であった。
(CT−1含有飲料の調製)
市販の緑茶(やぶきた茶)を用意し、茶葉2gを100℃の熱水100mLに7分間接触させ、やぶきた茶を得た。CT−1濃度が50、12.5、3.125ppmになるよう乾燥物をやぶきた茶に添加し溶解させ、CT−1を高濃度で含有する茶飲料を得た。
(大理茶抽出液の調製)
市販の大理茶を用意し、茶葉2gを100℃の熱水100mLに7分間接触させ、大理茶抽出液(CT−1濃度は46ppm)を得た。
(CT−1含有飲料の効果)
CT−1を高濃度で含有する茶飲料、やぶきた茶及び大理茶抽出液の有するα−アミラーゼ阻害活性を測定した。測定は以下のように行った。酵素液には、ラット小腸アセトン抽出物(シグマ社)300mgを5mLマレイン酸バッファ(50mM、pH6.0)に分散させ、遠心分離により得た上清を使用直前にマレイン酸バッファにより100倍希釈して用いた。反応基質検体20μLと360μLの0.1%でんぷん(メルク社)溶液および20μLの酵素液を混合し、37℃で20分反応させた。反応液にヨウ素液を添加し、630nmの吸収波長で残存でんぷん量を定量した。阻害率は次のように算出した。
(阻害率%)=(1−(茶添加時の酵素活性)/(茶無添加時の酵素活性))×100
なお、「酵素活性」は酵素無添加時のでんぷん量と反応終了時の残存でんぷん量の差である。各種茶は段階希釈を行い、各希釈率に対する阻害率を求め、50%阻害を与える希釈率を線形トレンドの予測から算出し、IC50値とした。結果を図1に示す。
図1から、各種茶のIC50における希釈率は、大理茶では0.73、50ppmCT−1含有やぶきた茶では0.45、および12.5ppmCT−1含有やぶきた茶では0.86であり、その他は活性が無かった。少なくとも50ppm以上のCT−1を含有させたやぶきた茶では、大理茶抽出液以上のα−アミラーゼ阻害活性を有することが確認された。
(CT−1含有飲料の血糖上昇抑制効果)
マウス(9週齢雄性ddYマウス)を用いた評価系(経口糖負荷試験)により、CT−1含有飲料の有するα−アミラーゼ阻害作用を評価した。被検溶液は、コントロールとして、2g/10mLでんぷん水溶液を用いた。また、CT−1含有水として、2gでんぷんをそれぞれ含むCT-1水溶液を25mg/10mLおよび100mg/10mLの濃度で調製した。大理茶として、上述のとおりに調製した大理茶抽出液に2g/10mLでんぷん水溶液を添加して用いた。一晩絶食したマウスに被検溶液をマウス体重1kgあたり10mL経口投与し、経時的に血糖値を測定した。25mg/10mLおよび100mg/10mLのCT−1含有水は、デンプン摂取時のマウスの血糖上昇を有意に抑制した(図2)。一方、大理茶を投与した場合は、血糖値の上昇抑制作用は観察されなかった(図3)。
(試験結果からのヒト用量推定)
推定1:体表面積換算
マウス有効量を25mg、マウス体重を40g、ヒト体重を50kgとした場合、(ヒト有効量)=25(mg)×0.04(kg)×50(kg)2/3/0.04(kg)2/3=116.03(mg)となる。容器詰め飲料の容量を500mLとすれば、本有効量を含有させるには、0.116(g)/ 500 (g)× 100 = 0.02(質量%)となる。
推定2:体重換算
マウス有効量を25mg、マウス体重を40g、ヒト体重を50kgとした場合、(ヒト有効量)=25(mg/kg)×50(kg)=1250(mg)となる。容器詰め飲料の容量を500mLとすれば、本有効量を含有させるには、1.25(g)/500(g)×100=0.25(質量%)となる。

Claims (1)

  1. 1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−HHDP−b−d−グルコピラノースを有効成分として含有する血糖上昇抑制剤。
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