JP2011093836A - 新規化合物及びその製造法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、抗カビ物質として有用な新規化合物、および微生物を用いたその製造法に関する。
古くから、淡水魚、例えばニジマス等の養殖場において、ミズカビ病といわれる魚病が問題となっている。ミズカビ病は、卵菌網(Oomycetes)、ミズカビ目(Saprolegniales)、ミズカビ科(Saprolegniaceae)のミズカビ属(Saprolegnia)、ワタカビ属(Achlya)、アファノマイセス属(Aphanomyces)の種によって引き起こされる。卵菌網は、近年の分子解析および生化学的な研究により、原生生物界の不等毛類に分類され、菌類様の外見を持ち(非特許文献1)、植物病原菌のPhytophthora属もこのグループに属している。
従来、色素剤のマラカイトグリーンがミズカビ病の起因生物に低濃度で活性を示し(非特許文献2)、また、安価であることから予防・治療剤として使用されてきた。しかし、近年、その発がん性が懸念され、養殖食用魚への使用が禁止された。これの代替品となる養殖魚又は魚卵のミズカビ病防止薬剤として、例えば、オゾン(特許文献1)、電解水(特許文献2)、有機酸(特許文献3)及びバチルス・ズブチリス菌(特許文献4)が提案されている。また、合成抗菌保存剤のブロノポール(C3H6BrNO4)を有効成分とする薬剤(商品名「パイセス」、ノバルティスアニマルヘルス株式会社製)などが販売されている。しかし、「パイセス」はマラカイトグリーンと比べて高価であり、また、有効成分であるブロノポールには食用カキ(EC50 0.77mg/L)、魚類の餌として有用なミジンコ(EC50 1.4mg/L)、緑藻(EC50 0.0537mg/L)などの水棲生物に強い毒性が認められているため(非特許文献3)、廃棄する際に大量の水での希釈を必要とする等の問題がある。よって、より安全で効果の高い抗カビ剤の開発が望まれている。
千原光雄、藻類の多様性と系統、裳華房 (1999)
江草周三、魚介類の感染症・寄生虫病、恒星社厚生閣 (2004)
マテリアル・セイフティー・データ・シート プロダクト・コード:#0585 (2007)
上記事情に鑑み、本発明は、新規な抗カビ物質を天然界から検索し、その新規物質およびその製造法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、ストレプトマイセス属に属する微生物の培養液から得られた化合物が、選択的な抗ミズカビ物質であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の発明を包含する。
・ 式(I):
・ 式(I):
(式中、R1は、水素原子、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基を示し、
R2は、水素原子又は置換されていてもよいヒドロキシル基を示し、
R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−6シクロアルキル基、C6−14アリール基、C7−16アラルキル基、又はアシル基を示す。)
で表される化合物又はその塩。
R2は、水素原子又は置換されていてもよいヒドロキシル基を示し、
R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−6シクロアルキル基、C6−14アリール基、C7−16アラルキル基、又はアシル基を示す。)
で表される化合物又はその塩。
(2)式(I)において、R1、R2、R3及びR4がすべて水素原子であって、式(I’):
で表される(1)に記載の化合物又はその塩。
(3)(1)に記載の化合物を生産する能力を有するストレプトマイセス属に属する微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積させ、該化合物を採取することを特徴とする(1)に記載の化合物の製造法。
(4)(1)に記載の化合物を有効成分として含む抗カビ剤。
(3)(1)に記載の化合物を生産する能力を有するストレプトマイセス属に属する微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積させ、該化合物を採取することを特徴とする(1)に記載の化合物の製造法。
(4)(1)に記載の化合物を有効成分として含む抗カビ剤。
本発明は、新規な抗カビ物質及び該物質の微生物を用いた製造法を提供する。本発明の化合物は、高い抗カビ活性を有するため、抗カビ剤、具体的には、魚病の予防又は治療剤、または卵菌類を起因生物とする植物疫病の防除剤成分として有用である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は、放線菌(ストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株等)から単離・精製された化合物であり、抗カビ活性を有するものである。本発明の化合物の性質及びその製造方法について以下に詳述する。
1.本発明の化合物の性質
本発明の化合物は、式(I):
1.本発明の化合物の性質
本発明の化合物は、式(I):
(式中、R1は、水素原子、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基を示し、
R2は、水素原子又は置換されていてもよいヒドロキシル基を示し、
R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−6シクロアルキル基、C6−14アリール基、C7−16アラルキル基、又はアシル基を示す。)
で表される化合物(以下、「式(I)の化合物」という場合もある)である。
R2は、水素原子又は置換されていてもよいヒドロキシル基を示し、
R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−6シクロアルキル基、C6−14アリール基、C7−16アラルキル基、又はアシル基を示す。)
で表される化合物(以下、「式(I)の化合物」という場合もある)である。
R1におけるC1−6アルキル基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
C6−14アリール基として、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、2−アンスリル等が挙げられる。
R2における置換されていてもよいヒドロキシル基の置換基として、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−6シクロアルキル基、C6−14アリール基、C7−16アラルキル基、アシル基等を挙げることができる。
ここで、C1−6アルキル基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
C2−6アルケニル基として、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル等が挙げられる。
C2−6アルキニル基として、例えば、エチニル、プロパルギル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ヘキシニル等が挙げられる。
C3−6シクロアルキル基として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
C6−14アリール基として、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、2−アンスリル等が挙げられる。
C7−16アラルキル基として、例えば、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等が挙げられる。
アシル基として、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
R3及びR4におけるC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−6シクロアルキル基、C6−14アリール基、C7−16アラルキル基、及びアシル基の例として、上記R2におけるヒドロキシル基の置換基(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−6シクロアルキル基、C6−14アリール基、C7−16アラルキル基、アシル基)と同じものを挙げることができる。
なお、式(I)の化合物は、従来の方法に従って塩(特に酸付加塩)を形成することができる。形成された化合物の塩も、本願発明に含まれる。
酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
式(I)の化合物の塩基付加塩としては無機塩基又は有機塩基との塩が挙げられる。無機塩基との塩として、例えば、アンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩等が挙げられる、有機塩基との塩として、例えば、第1級、第2級及び第3級脂肪族及び芳香族アミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、4種のブチルアミン異性体、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、キヌクリジン、ピリジン、キノリン及びイソキノリン、ベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ヒドラバミン)との塩、ならびに例えばアルギニン、リシンなどのようなアミノ酸との塩が挙げられる。
本発明の式(I)の化合物又はその塩は溶媒和物としても提供され得る。溶媒和物として、例えば、水和物、アルコール(例えば、メタノール、エタノール等)和物等が挙げられる。
上記式(I)で表される化合物の中で、R1が水素原子であり、R2が水素原子又はヒドロキシル基であり、R3が水素原子であり、R4が水素原子である化合物が好ましい。
より好ましい化合物は、上記式(I)で表される化合物の中で、R1、R2、R3及びR4がすべて水素原子である化合物である。すなわち、下記式(I’):
で表される化合物(以下、「式(I’)の化合物」という場合もある)がより好ましい。
上記式(I’)で表される化合物の構造式及び理化学的性質は以下のとおりである:
(1)物質の色 :無色
(2)分子量 :363
(3)分子式 :C23H25NO3
(4)質量分析 :高分解能FABMS(高速中性粒子衝突イオン化質量分析)、実測値 362.1743(M−H)−、計算値362.1756(C23H24NO3)
(5)紫外線吸収スペクトル(メタノール中) λmax(logε) 216nm (4.34), 237(4.47), 261(4.11), 300(4.13)
(6)比旋光度[α]D92.0°(c = 0.1、メタノール)
(7)1H NMR(重メタノール中で測定、600MHz)
δppm 1.26(3H, s, H-17), 1.47(3H, s, H-18), 1.51(1H, dd, J=11.8, 1.8Hz, H-5), 1.58(1H, dt, J=13.1, 3.6Hz, H-1a), 1.91(1H, dq, J=13.6, 3.6Hz, H-2a), 2.18(1H, m, H-6a), 2.24(1H, m, H-6b), 2.28(1H, dq, J=13.1, 3.2Hz, H-2b), 2.58(1H, dt, J=13.1, 3.1Hz, H-1b), 3.03(1H, dt, J=12.7, 5.9Hz, H-7a), 3.10(1H, dt, J=16.3, 3.6 Hz, H-7b), 3.23(1H, dd, J=12.3, 4.6Hz, H-3), 7.03(1H, s, H-8), 7.05(1H, t, J=6.8 Hz, H-12), 7.25(1H, , t, J=7.3 Hz, H-11), 7.32(1H, d, J=7.7 Hz, H-10), 7.93(1H, d, J=7.3Hz, H-13), 7.94(1H, s, H-14), 10.86(1H, s, NH)
(8)13C NMR(重メタノール中で測定、125MHz)
δppm 21.57(t, C-6), 23.56(q, C-18), 23.89(q, C-17), 29.20(t, C-2), 32.87(t, C-7), 38.93(s, C-15), 39.00(t, C-1), 48.48(s, C-4), 53.12(d, C-5), 78.02(d, C-3), 109.58(d, C-8), 116.55(d, C-14), 118.21(d, C-12), 119.54(d, C-13), 122.40(s, C-13b), 123.94(s, C-13a), 125.18(d, C-11), 138.82(s, C-7a), 139.13(s, C-8a), 139.56(s, C-14a), 140.57(s, C-9a), 180.18(s, C-16)
(9)溶解性 :メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルムに可溶。水に難溶。
(10)式(I’)には4個の不斉炭素が含まれており、ROSEYスペクトルの解析を行い、これらの相対配置を決定した。次に3位のヒドロキシル基にα−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニル酢酸(MTPA)を導入し、改良Mosher法によって、3位の絶対配置をSと決定した。これらの結果から、式(I’)の化合物の絶対配置を3S、4S、5R、15Sと決定した。
(1)物質の色 :無色
(2)分子量 :363
(3)分子式 :C23H25NO3
(4)質量分析 :高分解能FABMS(高速中性粒子衝突イオン化質量分析)、実測値 362.1743(M−H)−、計算値362.1756(C23H24NO3)
(5)紫外線吸収スペクトル(メタノール中) λmax(logε) 216nm (4.34), 237(4.47), 261(4.11), 300(4.13)
(6)比旋光度[α]D92.0°(c = 0.1、メタノール)
(7)1H NMR(重メタノール中で測定、600MHz)
δppm 1.26(3H, s, H-17), 1.47(3H, s, H-18), 1.51(1H, dd, J=11.8, 1.8Hz, H-5), 1.58(1H, dt, J=13.1, 3.6Hz, H-1a), 1.91(1H, dq, J=13.6, 3.6Hz, H-2a), 2.18(1H, m, H-6a), 2.24(1H, m, H-6b), 2.28(1H, dq, J=13.1, 3.2Hz, H-2b), 2.58(1H, dt, J=13.1, 3.1Hz, H-1b), 3.03(1H, dt, J=12.7, 5.9Hz, H-7a), 3.10(1H, dt, J=16.3, 3.6 Hz, H-7b), 3.23(1H, dd, J=12.3, 4.6Hz, H-3), 7.03(1H, s, H-8), 7.05(1H, t, J=6.8 Hz, H-12), 7.25(1H, , t, J=7.3 Hz, H-11), 7.32(1H, d, J=7.7 Hz, H-10), 7.93(1H, d, J=7.3Hz, H-13), 7.94(1H, s, H-14), 10.86(1H, s, NH)
(8)13C NMR(重メタノール中で測定、125MHz)
δppm 21.57(t, C-6), 23.56(q, C-18), 23.89(q, C-17), 29.20(t, C-2), 32.87(t, C-7), 38.93(s, C-15), 39.00(t, C-1), 48.48(s, C-4), 53.12(d, C-5), 78.02(d, C-3), 109.58(d, C-8), 116.55(d, C-14), 118.21(d, C-12), 119.54(d, C-13), 122.40(s, C-13b), 123.94(s, C-13a), 125.18(d, C-11), 138.82(s, C-7a), 139.13(s, C-8a), 139.56(s, C-14a), 140.57(s, C-9a), 180.18(s, C-16)
(9)溶解性 :メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルムに可溶。水に難溶。
(10)式(I’)には4個の不斉炭素が含まれており、ROSEYスペクトルの解析を行い、これらの相対配置を決定した。次に3位のヒドロキシル基にα−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニル酢酸(MTPA)を導入し、改良Mosher法によって、3位の絶対配置をSと決定した。これらの結果から、式(I’)の化合物の絶対配置を3S、4S、5R、15Sと決定した。
2.本発明の化合物の製造
2.1.式(I)の化合物の製造
本発明の式(I)の化合物は、微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積させ、該培養物から該化合物を採取することにより製造することができる。
2.1.式(I)の化合物の製造
本発明の式(I)の化合物は、微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積させ、該培養物から該化合物を採取することにより製造することができる。
(1)微生物
本発明の製造方法において用いることのできる微生物としては、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属し、かつ上記式(I)で表される化合物を生産することが可能な微生物であれば特に限定されない。そのような微生物としては、例えば、ストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株、及び該菌株に由来する変異株、あるいは該菌株の類似菌株を挙げることができる。なお、ストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に、平成21年10月28日に、受領番号FERM AP−21856として寄託されている。この菌株は、上記(I’)の化合物を製造することができる。
本発明の製造方法において用いることのできる微生物としては、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属し、かつ上記式(I)で表される化合物を生産することが可能な微生物であれば特に限定されない。そのような微生物としては、例えば、ストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株、及び該菌株に由来する変異株、あるいは該菌株の類似菌株を挙げることができる。なお、ストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に、平成21年10月28日に、受領番号FERM AP−21856として寄託されている。この菌株は、上記(I’)の化合物を製造することができる。
ここでいう「変異株」は任意の適当な変異原を用いた変異誘発処理により得られたものであり、「変異原」なる語は、その広義において、例えば変異原効果を有する薬剤のみならずUV照射のごとき変異原効果を有する処理をも含むものと理解すべきである。適当な変異原の例としてエチルメタンスルホネート、UV照射、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、ブロモウラシルのようなヌクレオチド塩基類似体及びアクリジン類が挙げられるが、他の任意の効果的な変異原もまた使用され得る。
ここでいう「類似菌株」としては、ストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株の16S rDNA遺伝子の塩基配列(配列番号1に示す)と95%以上相同な塩基配列で表される16S rDNA遺伝子を持つ菌株を挙げることができる。16S rDNA遺伝子の相同性は95%以上であればよいが、97%以上であることが好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、100%相同であることが最も好ましい。
ストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株の16S rDNAの塩基配列決定のため、プライマーとして真正細菌16S rDNAのほぼ全長を増幅することの出来る27Fおよび1492Rのプライマーセットを用い、PCRを行った。決定した1450塩基の配列を用いて、BLAST検索を行った結果、相同性の高い上位30位まではストレプトマイセス・スピーシーズまたは属未定の放線菌であり、いずれも98%以上の相同性であったことから、本菌株をストレプトマイセス・スピーシーズに分類した。
ストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株の細菌学的性質については以下の通りである。
1) 細胞の形:菌糸を形成する。
2) 胞子の有無 :有り。
3) ハーフストレングス培地 :良好に生育,コロニーは円形,台状,菌糸状,中心部分は褐色で周囲は白色。
4) スターチカゼイン液体培養 :良好に生育。
5) デンプンの加水分解 :分解する。
6) 色素の生成 :寒天培地、液体培地で暗褐色の色素を生産。
7) 生育の範囲(pH):pH6〜9
1) 細胞の形:菌糸を形成する。
2) 胞子の有無 :有り。
3) ハーフストレングス培地 :良好に生育,コロニーは円形,台状,菌糸状,中心部分は褐色で周囲は白色。
4) スターチカゼイン液体培養 :良好に生育。
5) デンプンの加水分解 :分解する。
6) 色素の生成 :寒天培地、液体培地で暗褐色の色素を生産。
7) 生育の範囲(pH):pH6〜9
(2)微生物の培養
本発明における微生物の培養は、通常の微生物の培養方法が用いられる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育・生産促進物質を適宜含有する培地であれば、合成培地又は天然培地のいずれでも使用可能である。炭素源としては、グルコース、澱粉、デキストリン、マンノース、フラクトース、シュークロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、マンニトール、糖蜜などを単独又は組み合わせて用いられる。さらに、必要に応じて炭化水素、アルコール類、有機酸、アミノ酸(トリプトファンなど)なども用いられる。窒素源としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、コーン・スチープ・リカー、大豆粉、綿実かす、カザミノ酸などが単独又は組み合わせて用いられる。そのほか、必要に応じて食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛などの無機塩類を加える。さらに使用する微生物の生育や本発明の化合物の生産を促進する微量成分を適当に添加することができ、そのような成分は当業者であれば適当なものを選択することができる。
本発明における微生物の培養は、通常の微生物の培養方法が用いられる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育・生産促進物質を適宜含有する培地であれば、合成培地又は天然培地のいずれでも使用可能である。炭素源としては、グルコース、澱粉、デキストリン、マンノース、フラクトース、シュークロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、マンニトール、糖蜜などを単独又は組み合わせて用いられる。さらに、必要に応じて炭化水素、アルコール類、有機酸、アミノ酸(トリプトファンなど)なども用いられる。窒素源としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、コーン・スチープ・リカー、大豆粉、綿実かす、カザミノ酸などが単独又は組み合わせて用いられる。そのほか、必要に応じて食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛などの無機塩類を加える。さらに使用する微生物の生育や本発明の化合物の生産を促進する微量成分を適当に添加することができ、そのような成分は当業者であれば適当なものを選択することができる。
培養法としては、液体培養が適しているが、これに限定されるものではない。培養温度は、25〜37℃が適当であり、培養中の培地のpHは7〜9に維持することが望ましく、震盪速度が30〜120rpmで回転又は往復震盪培養することが望ましい。液体培養で通常5〜14日間培養を行うと、目的化合物が培養液中ならびに菌体中に生成蓄積される。培養物中の生成量が最大に達した時に培養を停止する。
(3)化合物の単離・精製
培養物から本発明の化合物を単離・精製するには、微生物代謝生産物をその培養物から単離・精製するために常用される方法に従って行われる。ここで、「培養物」とは、培養上清、培養菌体、又は菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。例えば培養物を濾過や遠心分離により培養瀘液と菌体に分け、濾液を酢酸エチルなど有機溶媒で抽出する。また培養濾液は酢酸エチル、クロロホルムなどで抽出する。ついで、抽出液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどにより精製を行い、本発明の化合物を得る。得られた化合物は、NMR解析などの通常の化学的手法により、上記「1.本発明の化合物の性質」に記載した性質を示すか否かを調べることにより、本発明の化合物であることを確認することができる。
培養物から本発明の化合物を単離・精製するには、微生物代謝生産物をその培養物から単離・精製するために常用される方法に従って行われる。ここで、「培養物」とは、培養上清、培養菌体、又は菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。例えば培養物を濾過や遠心分離により培養瀘液と菌体に分け、濾液を酢酸エチルなど有機溶媒で抽出する。また培養濾液は酢酸エチル、クロロホルムなどで抽出する。ついで、抽出液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどにより精製を行い、本発明の化合物を得る。得られた化合物は、NMR解析などの通常の化学的手法により、上記「1.本発明の化合物の性質」に記載した性質を示すか否かを調べることにより、本発明の化合物であることを確認することができる。
なお、培養、精製操作中の本発明の化合物の動向は、フォトダイオードアレイ検出器付き高速液体クロマトグラフィーにより、紫外線吸収を指標として追跡することができる。
3.本発明の化合物の用途
本発明の化合物は、下記の実施例に示すように、カビ類、特に卵菌類への発育阻害活性が強いので、抗カビ剤として利用することができる。本発明の化合物を有効成分として含む抗カビ剤は、例えば、魚類のカビ病、例えば、ウナギの綿かぶり病、ギンザケ、ニジマス等のミズカビ病、サケ科魚類稚魚の内臓真菌症、ヘペレイのミズカビ病、アユの真菌性肉芽腫症等の予防薬又は治療薬、好ましくは魚用の抗ミズカビ剤(ミズカビ予防薬又は治療薬)等として利用することができる。また、卵菌類を起因生物とする植物疫病の防除剤成分として有用である。
本発明の化合物は、下記の実施例に示すように、カビ類、特に卵菌類への発育阻害活性が強いので、抗カビ剤として利用することができる。本発明の化合物を有効成分として含む抗カビ剤は、例えば、魚類のカビ病、例えば、ウナギの綿かぶり病、ギンザケ、ニジマス等のミズカビ病、サケ科魚類稚魚の内臓真菌症、ヘペレイのミズカビ病、アユの真菌性肉芽腫症等の予防薬又は治療薬、好ましくは魚用の抗ミズカビ剤(ミズカビ予防薬又は治療薬)等として利用することができる。また、卵菌類を起因生物とする植物疫病の防除剤成分として有用である。
本発明の化合物を魚類のカビ病の予防薬又は治療薬として使用するには、例えば、本発明の化合物を魚類の試料に混合するか、魚類の養殖水槽に混合するか、又は魚類の養殖水槽の使用砂に混合すればよい。あるいは、本発明の化合物を0.001〜0.1重量%程度含む水又は海水中に魚類又はその卵を浸漬させる、本発明の化合物を0.001〜0.1重量%程度含む懸濁液を魚類の体又は卵全体に噴霧する、又は本発明の化合物を0.001〜0.1重量%程度含む懸濁液を魚類の静脈又は腹腔内に注射器を用いて接種することも可能である。
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明は実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
式(I’)の化合物の製造
式(I’)の化合物の生産菌としてストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株を用いた。該菌株を、200mLのスターチカゼイン培地(スターチ 1.0%、カゼイン 0.03%、NaCl 0.2%、K2HPO4 0.2%、MgSO4 0.005%、CaCO3 0.002%、FeSO4・7H2O 0.001% (W/V)、pH 7.2)を入れた500mLのバッフル付き三角フラスコ中で、30℃にて5日間回転振盪(100rpm)培養し、次に行う大量培養の種菌とした。この種菌培養物を1Lのスターチカゼイン培地の入った2Lの坂口フラスコ80本(計12L)に10mLずつ植菌し、30℃、5日間、往復震盪(100rpm)培養した。培養中、培地のpHは特に制御しなかった。
式(I’)の化合物の生産菌としてストレプトマイセス・スピーシーズKS−84株を用いた。該菌株を、200mLのスターチカゼイン培地(スターチ 1.0%、カゼイン 0.03%、NaCl 0.2%、K2HPO4 0.2%、MgSO4 0.005%、CaCO3 0.002%、FeSO4・7H2O 0.001% (W/V)、pH 7.2)を入れた500mLのバッフル付き三角フラスコ中で、30℃にて5日間回転振盪(100rpm)培養し、次に行う大量培養の種菌とした。この種菌培養物を1Lのスターチカゼイン培地の入った2Lの坂口フラスコ80本(計12L)に10mLずつ植菌し、30℃、5日間、往復震盪(100rpm)培養した。培養中、培地のpHは特に制御しなかった。
このようにして得られた培養液12Lをろ過し、菌体と上清に分離した。上清は等量の酢酸エチルで二回抽出した。得られた抽出物をODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。ワコーゲル50C18(和光純薬)を担体として用い、移動層として、まず、20%、50%、70%アセトニトリル水で、最後に100%アセトニトリルにて溶出した。50%アセトニトリル水にて溶出した画分に抗卵菌活性が認められた。
次に、それら画分を高速液体クロマトグラフィー(カラム:コスモシル5C18ARII(直径10mm、長さ250mm)、移動相:45%アセトニトリル水、流速4mL/min、検出波長220nm)にて精製した。このような大量培養とその培養物から、培養物計12Lから本発明の式(I’)の化合物を15mg得た。
抗菌活性の測定
上記化合物の真核微生物に対する活性は、96穴マイクロプレートを用いて以下のようにして測定した。試料を滅菌した1%CMC(カルボキシメチルセルロース)水に懸濁し、10分間超音波処理して各種濃度の試料懸濁液を調製した。96穴マイクロプレートの各ウェルに試料懸濁液50μl、滅菌した4倍濃縮液体培地50μl、予め準備した被検生物の胞子懸濁液または菌懸濁液100μlを分注した。実験は2連で行い、被検生物に応じた温度で一定時間培養後に、微生物の生育を倒立顕微鏡で観察し、活性の有無を判断した。被検生物および培養条件は以下の通りである。Saprolegnia parasitica:GY培地(グルコース1%、酵母エキス0.25%、pH6.5)、18℃、24時間、Phoma sp.:YPD培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%、pH6.5)、30℃、30時間、Saccharomyces cerevisiae:サブロー培地(マルトース4%、ペプトン1%、pH 6.0)、30℃、30時間。
上記化合物の真核微生物に対する活性は、96穴マイクロプレートを用いて以下のようにして測定した。試料を滅菌した1%CMC(カルボキシメチルセルロース)水に懸濁し、10分間超音波処理して各種濃度の試料懸濁液を調製した。96穴マイクロプレートの各ウェルに試料懸濁液50μl、滅菌した4倍濃縮液体培地50μl、予め準備した被検生物の胞子懸濁液または菌懸濁液100μlを分注した。実験は2連で行い、被検生物に応じた温度で一定時間培養後に、微生物の生育を倒立顕微鏡で観察し、活性の有無を判断した。被検生物および培養条件は以下の通りである。Saprolegnia parasitica:GY培地(グルコース1%、酵母エキス0.25%、pH6.5)、18℃、24時間、Phoma sp.:YPD培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%、pH6.5)、30℃、30時間、Saccharomyces cerevisiae:サブロー培地(マルトース4%、ペプトン1%、pH 6.0)、30℃、30時間。
また、原核生物に対する活性は、ペーパーディスク法により被検生物を練り込んだ寒天平板培地上で測定した。Escherichia coli およびBacillus subtilis を試験管中の滅菌したLB培地(グルコース0.5%、ポリペプトン1%、酵母エキス0.5%、NaCl 0.5%、pH7.2)3mLに植菌して、1晩37℃で培養した。この前培養液を、滅菌したLB寒天培地(寒天1.5%)に1%接種して、検定用寒天平板を作成した。試料をメタノールに溶解して、各種濃度の試料溶液を作成し、ペーパーディスク(ADVANTEC、直径8mm、thick)に染み込ませた後、風乾して検定用寒天平板上に置き、37℃で1晩培養した。ペーパーディスク周辺の阻止円の形成を観察し、活性の有無を判断した。
真核微生物への最小発育阻止濃度(MIC)は以下の通りであった。Saprolegnia parasitica:3.0μg/mL、Saccharomyces cerevisiae:>2,000μg/mL、Phoma sp.:242μg/mL。また、原核微生物のEscherichia coli およびBacillus subtilisに対しては、1,000μg/mLでも生育阻止円が認められなかった。
この結果から、式(I’)の化合物は、ミズカビ(Saprolegnia parasitica)には低濃度で効くが、真核微生物の酵母(Saccharomyces cerevisiae)及び原核微生物には効かず、Phoma sp.に対しても弱い活性しか示さないことがわかる。よって、式(I’)の化合物は、選択的な抗ミズカビ活性を有していると考えられる。
Claims (4)
- 請求項1に記載の化合物を生産する能力を有するストレプトマイセス属に属する微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積させ、該化合物を採取することを特徴とする請求項1に記載の化合物の製造法。
- 請求項1に記載の化合物を有効成分として含む抗カビ剤。
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JP2009248805A JP2011093836A (ja) | 2009-10-29 | 2009-10-29 | 新規化合物及びその製造法 |
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