JP2004269357A - 鉄と高い結合能を有する化合物およびその製造方法 - Google Patents

鉄と高い結合能を有する化合物およびその製造方法 Download PDF

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周雄 加納
Kei Kamino
圭 紙野
Kyoko Adachi
恭子 足立
Miyuki Nishijima
美由紀 西島
Gakuraku Kan
楽珞 管
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Abstract

【課題】鉄イオンと高い結合能を有し、抗菌活性を示す物質ならびにその製造法を提供する。
【解決手段】下記の式(I):
【化1】
Figure 2004269357

または下記の式(II):
【化2】
Figure 2004269357

または下記の式(III):
【化3】
Figure 2004269357

で表される化合物もしくはその塩、及び該化合物の微生物を用いた製造法。
【選択図】 なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微生物が生産する、鉄と高い結合能を有する化合物、および微生物を用いた該化合物の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄はほとんどの生物にとって必須の元素である。鉄は、地球において最も豊富に存在する元素ではあるものの、酸素の存在下で容易に2価イオンから3価イオンに酸化され、この3価の鉄イオンは、中性あるいはアルカリ性において、生物が利用することができない難溶性の塩を生じる。このような鉄イオンの性質が、生物が鉄イオンを摂取することを困難にしている。そこで、多くの微生物は、環境中にわずかに存在する鉄イオンを取り込むために、シデロフォアと呼ばれる3価の鉄イオンと高い親和力を有する比較的低分子の有機化合物を分泌する。一般的にシデロフォアは、微生物を鉄を制限した状態で培養すると分泌される。分泌されたシデロフォアは、環境中に微量に存在する3価の鉄イオンと結合し、鉄−シデロフォア複合体を形成する。この複合体は、そのシデロフォアに特異的な外膜レセプターを介して細胞内にとりこまれ、取り込まれた複合体から、シデロフォアの加水分解あるいは鉄を2価に還元するような酵素によって、鉄が複合体からはずれ、微生物に利用される。
【0003】
微生物、特に病原菌のシデロフォアの産生は宿主への感染と病原性の発現に深く関与していることから、病原菌のシデロフォア産生はよく研究され多くのシデロフォアが単離・構造決定されている(非特許文献1参照)。ある種の微生物にとっては、特定のシデロフォアしか利用することができず、他のシデロフォアによって生育が抑制されることも考えられ、シデロフォアを抗菌剤として用いようとする考え方がある(Ward, C. Gillon、The Jornal of Trauma: Injury, Infection, and Clinical Care, Vol. 41, No 2, pp 356 −361 (1996))。また、シデロフォアのなかでも、ストレプトマイセス属の放線菌が産生するデフェロキサミンBの様に鉄排出薬として実用化されているものもある(Bullen, J. J.、European Journal of Clinical Microbial Infection Dis, 10, 613 (1991))。
【0004】
【非特許文献1】
山本重雄:ファルマシア、第31巻6号、588頁(1995年)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
抗生物質の出現は多くの感染症に対し極めて有効な治療薬となっている。その一方で、その安易な使用が耐性菌の出現を招き、新たな作用機序を有する抗菌剤が必要とされている。また、鉄排出剤としてより強力で副作用の少ない化合物も必要とされている。
【0006】
本発明は、鉄と高い結合能を有する物質、該物質を微生物を用いて生産するための方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、シュードアルテロモナス属に属する菌株の培養液から得られた化合物が、従来まったく知られていない新規な化合物であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記の式(I):
【0009】
【化4】
Figure 2004269357
または下記の式(II):
【0010】
【化5】
Figure 2004269357
または下記の式(III):
【0011】
【化6】
Figure 2004269357
で表される化合物もしくはその塩である。
【0012】
また、本発明は、シュードアルテロモナス属に属し、上記の化合物を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中に上記の化合物を生成蓄積させ、該培養物から上記の化合物を採取することを特徴とする上記の化合物の製造法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
(1)本発明の化合物の構造及び性質
本発明の化合物には、下記の式(I):
【0015】
【化7】
Figure 2004269357
または下記の式(II):
【0016】
【化8】
Figure 2004269357
または下記の式(III):
【0017】
【化9】
Figure 2004269357
で表される化合物が含まれる。また、式(I)の化合物、式(II)の化合物、及び式(III)の化合物の塩も本発明の化合物に含まれる。塩としては、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等の酸付加塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。なお、本発明の化合物を医薬として使用する場合には、塩は薬学上許容されるものとするのが望ましい。
【0018】
式(I)の化合物、式(II)の化合物、及び式(III)の化合物の性質は以下の通りである。
【0019】
<式(I)の化合物の性質>
(1) 物質の色:無色
(2) 分子量:1078.07
(3) 分子式:C41631121
(4) 質量分析:高分解FABMS 実測値 1078.3986 (M+H)
計算値 1078.3999 (C41641121S)
(5) 赤外線吸収スペクトル (KBr)
νmax 1035、1141、1202、1437、1543、1669、2940、3081、3356 cm−1
(6) 紫外線吸収スペクトル (HO, pH 4.0)
λmax (ε): 249 (7100), 310 (4000)
(7) H−NMR(重ジメチルスルホキシド中で測定、500MHz)
δppm 1.20−1.70(m, 18H), 2.37 (d, 2H), 2.51(dd, 1H), 2.65(dd, 1H), 2.77(br m, 2H), 2.88(br m, 1H), 3.07(br m, 1H), 3.20−3.38 (m, 4H), 3.91(dd, 1H), 4.07(br m, 1H), 4.10−4.18 (m, 2H), 4.27(br dd, 1H), 4.41(d, 1H), 4.54(d, 1H), 4.63(dd, 1H), 4.66(br t, 1H), 6.94(d, 1H), 7.17 (br t, 1H), 7.27(d, 1H), 7.65(br d, 1H), 7.68(br d, 1H), 7.78(br d, 2H), 7.99(br d, 1H), 8.05(br d, 1H), 8.08(br d, 1H), 8.18(br t, 1H), 8.32(br d, 1H), 8.75(br t, 1H), 9,65(br s, 2H)
(8) 13C−NMR(重ジメチルスルホキシド中で測定、125MHz)
δppm 21.20, 21.96, 22.36, 26.31, 26.38, 27.40, 28.58, 30.58, 36.93, 37.27, 38.56, 38.73, 38.91, 42.95, 49.38, 53.22, 54.32, 54.51, 55.56, 55.72, 67.19, 68.47, 69.97, 115.37, 115.41, 115.77, 132.93, 142.63, 149.40, 168.11, 168.42, 168.58, 168.72, 169.52, 170.83, 171.21, 171.80, 172.46, 172.56, 172.60
(9) 溶解性 :水に易溶、DMSO、メタノールに可溶、アセトン、酢酸エチルおよびクロロホルムに難溶。
(10) CASアッセイ:CASアッセイにおいて、対照のデフェロキサミンB(ED50 1.7 mM)の50倍の活性(ED50 33μM)を示した。
(11) 抗菌活性
バシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)の菌液を懸濁した寒天培地上に直径8mmのペーパーディスクをのせ、そのペーパーディスクに該化合物10 mMの濃度の溶液を10μL(100nmol/disc)のせ、48時間後に観察を行なったところ、直経18mmの阻止円が観測された。
【0020】
<式(II)の化合物の性質>
(1) 物質の色:無色
(2) 分子量:1106.08
(3) 分子式:C41631321
(4) 質量分析:高分解FABMS 実測値 1106.4089 (M+H)
計算値 1106.4060 (C41641321S)
(5) 赤外線吸収スペクトル (KBr)
νmax 1203、1459、1543、1656、2854、2925、3423 cm−1
(6) 紫外線吸収スペクトル (HO, pH 4.0)
λmax (ε): 247 (12000), 314 (3900)
(7) H−NMR(重ジメチルスルホキシド中で測定、500MHz)
δppm 1.19−1.76 (m, 14H), 2.36 (d, 2H), 2.49 (dd, 1H), 2.65(dd, 1H), 2.91 (br m, 1H), 3.07(br m, 3H), 3.24 (br m, 1H), 3.31 (d, 2H), 3.43 (dd, 1H), 3.91(dd, 1H), 4.08(br m, 1H), 4.12 (br m, 1H), 4.17 (br m, 1H), 4.29 (br dd, 1H), 4.41(d, 1H), 4.53 (d, 1H), 4.62 (dd, 1H), 4.66(br t, 1H), 6.95 (d, 1H), 7.16 (br t, 1H), 7.25 (d, 1H), 7.34 (br t, 1H), 7.69 (br d, 1H), 7.74 (br d, 2H), 7.98 (br d, 1H), 8.01 (br d, 1H), 8.03 (br d, 1H), 8.21 (br t, 1H), 8.33 (br d, 1H), 8.73 (br t, 1H), 10.56 (br s, 1H), 12.52 (br s, 1H)
(8) 13C−NMR(重ジメチルスルホキシド中で測定、125MHz)
δppm 21.18, 22.35, 24.62, 26.32, 27.43, 28.25, 28.56, 30.44, 36.87, 37.31, 38.50, 38.72, 40.19, 42.99, 49.33, 53.14, 54.27, 54.48, 55.56, 55.66, 67.18, 68.50, 69.98, 115.38, 115.44, 115.75, 132.93, 142.63, 149.35, 156.32, 168.10, 168.54, 168.55 168.68, 169.51, 170.84, 171.23, 171.73, 172.28, 172.46, 172.55
(9) 溶解性 :水に易溶、DMSO、メタノールに可溶、アセトン、酢酸エチルおよびクロロホルムに難溶。
(10) CASアッセイ:CASアッセイにおいて、対照のデフェロキサミンB(ED50 1.7 mM)の50倍の活性(ED50 34μM)を示した。
(11) 抗菌活性:バシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)の菌液を懸濁した寒天培地上に直径8mmのペーパーディスクをのせ、そのペーパーディスクに該化合物10 mMの濃度の溶液を10μL(100nmol/disc)のせ、48時間後に観察を行なったところ、直経16mmの阻止円が観測された。
【0021】
<式(III)の化合物の性質>
(1) 物質の色:無色
(2) 分子量:1026.02
(3) 分子式:C41631318
(4) 質量分析:高分解FABMS 実測値 1026.4510 (M+H)
計算値 1026.4492 (C41641318
(5) 赤外線吸収スペクトル (KBr)
νmax 1139, 1202, 1543, 1670, 2929, 3355 cm−1
(6) 紫外線吸収スペクトル (MeOH)
λmax (ε): 310 (2900)
(7) H−NMR(重ジメチルスルホキシド中で測定、500MHz)
δppm 1.2−1.8 (m), 2.37 (d, 2H), 2.50 (dd, 1H), 2.65(dd, 1H), 2.90 (br m, 1H), 3.07 (br m, 1H), 3.26 (br m, 1H), 3.29 (t, 2H), 3.33 (dd, 1H), 3.91(dd, 1H), 4.08(br m, 1H), 4.14 (m, 1H), 4.18 (br t, 1H), 4.29 (br t, 1H), 4.41(d, 1H), 4.54(d, 1H), 4.63(dd, 1H), 4.67(br t, 1H), 6.67 (t, 1H), 6.91 (dd, 1H), 7.16 (br t, 1H), 7.49 (br t, 1H), 7.70 (br d, 1H), 7.68(br d, 1H), 7.82 (br s, 2H), 8.00 (br d, 1H), 8.05(br d, 2H), 8.21 (br t, 1H), 8.33 (br d, 1H), 8.75 (br t, 1H)
(8) 13C−NMR(重ジメチルスルホキシド中で測定、125MHz)
δppm 21.20, 22.45, 24.70, 26.45, 27.43, 28.32, 28.70, 30.52, 36.95, 37.35, 38.51, 38.58, 40.21, 43.03, 49.41, 53.23, 54.39, 54.54, 55.64, 55.74, 67.26, 68.58, 70.03, 114.88, 116.94, 117.63, 118.51, 145.95, 149.33, 156.54, 168.20, 168.63, 168.78, 169.38, 169.63, 170.92, 171.37, 171.87, 172.42, 172.53, 172.61
(9) 溶解性 :水に易溶、DMSO、メタノールに可溶、アセトン、酢酸エチルおよびクロロホルムに難溶。
(10) CASアッセイ:CASアッセイにおいて、対照のデフェロキサミンB(ED50 1.7 mM)の50倍の活性(ED50 33μM)を示した。
(11) 抗菌活性
バシラス サブティリス(Bacillus subtilis)の菌液を懸濁した寒天培地上に直径8mmのペーパーディスクをのせ、そのペーパーディスクに該化合物10 mMの濃度の溶液を10μL(100nmol/disc)のせ、48時間後に観察を行なったところ、直経22 mmの阻止円が観測された。
【0022】
(2)本発明の化合物の製造
本発明の化合物は、微生物を培地に培養し、培養物中に本発明の化合物を生成蓄積させ、該培養物から本発明の化合物を採取することにより製造することができる。本発明に用いる菌株としては、シュードアルテロモナス属に属し、本発明の化合物を生産する能力を有する菌株であればどのようなものでもよく、例えば、シュードアルテロモナスsp. KP−20−4株やこの菌株の類似菌株を挙げることが出来る。ここでいう類似菌株としては、シュードアルテロモナスsp. KP−20−4株の16S rRNA遺伝子の塩基配列(配列番号1に示す)と95%以上相同な塩基配列で表される16S rRNA遺伝子を持つ菌株を挙げることができる。16S rRNA遺伝子の相同性は95%以上であればよいが、97%以上であることが好ましく、98%以上であることが更に好ましく、100%相同であることが最も好ましい。
【0023】
シュードアルテロモナスsp. KP−20−4株は、自然界から新たに単離した株であり、その細菌学的性質については以下の通りである。
【0024】
なお、形態観察は、培地にシュードアルテロモナスsp. KP−20−4株を植菌し、30℃で24〜48時間培養したのちに光学顕微鏡及び透過型電子顕微鏡を用いて行った。培地は、マリンアガー(Bacto Marine Agar 2216, Difco社製)あるいはマリンブロス(Bacto Marine Broth 2216, Difco社製)を用いた。また、本菌株は培地中の塩化ナトリウム濃度が1%以下では菌の生育が認められないことから、生化学的性状の試験は75%人工海水を用いて培地を作製するか、あるいは培地中に3%塩化ナトリウムを添加することによって行った。
【0025】
a. 形態
1) 細胞の形および大きさ:桿菌、1.5−2.6×0.5−0.9μm
2) 細胞の多形性の有無:無し
3) 運動性の有無、鞭毛の着生状態:有り、極毛。
4) 胞子の有無:無し
5) グラム染色性:陰性
【0026】
b. 各培地における生育状態
1) マリンアガー平板培養 :良好に生育,コロニーは円形,凸円状,全縁,湿光,周辺部乳白色、中心部淡黄色
2) マリンアガー斜面培養 :良好に生育,糸状,淡黄色
3) マリンブロス培養 :良好に生育,均質に濁る。
4) マリンブロスゼラチン穿刺培養:液化する。
5) リトマスミルク :リトマスを弱く還元する。
【0027】
Figure 2004269357
【0028】
【表1】
Figure 2004269357
13) エスクリンの分解:分解する。
14) アルギニンの分解:分解しない。
15) DNAの分解:分解する。
16) 好塩性:有り 生育塩濃度範囲 1〜7%
17) β−ガラクトシダーゼ:陰性
18) GC含量:43(モル%)
19) イソプレノイドキノン:Q−8
【0029】
以上の菌学的性質からバージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジーの分類基準に従って公知の菌種と比較した。本菌株は好気性グラム陰性桿菌で極鞭毛を有する。好塩性で生育にナトリウムとマグネシウムまたはカルシウムを要求し、ブドウ糖を酸化的に分解することからシュードアルテロモナス属に所属すると考えられ、シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)sp.と同定した。そして、この菌株をシュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas) sp.KP−20−4とし、平成13年8月20日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18477として寄託した。
【0030】
本発明に用いる微生物の培養は、通常の微生物の培養方法が用いられる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物および必要な生育、生産促進物質を程よく含有する培地であれば合成培地、天然培地いずれでも使用可能である。炭素源としてはグルコース、澱粉、デキストリン、マンノース、フラクトース、シュクロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、マンニトール、糖蜜などを単独または組み合わせて用いられる。さらに、必要に応じて炭化水素、アルコール類、有機酸やトリプトファン等のアミノ酸なども用いられる。窒素源としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、コーン・スチープ・リカー、大豆粉、カザミノ酸などが単独または組み合わせて用いられる。そのほか、必要に応じて食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛などの無機塩類を加える。さらに使用菌の生育や本発明の化合物の生産を促進する微量成分を適当に添加することができる。培養法としては、液体培養法が最も適している。培養温度30〜35℃が適当であり、培養中の培地のPHは7〜8に維持することが望ましい。液体培養で通常2〜5日間培養を行うと、目的物質が培養液中ならびに菌体中に生成蓄積される。培養物中の生成量が最大に達した時に培養を停止する。
【0031】
培養物から本発明の化合物の単離精製は、微生物代謝生産物をその培養物から単離精製するために常用される方法に従って行われる。例えば培養物を濾過や遠心分離により培養瀘液と菌体に分け、菌体を含水メタノール、含水エタノールなどで抽出する。ついで、抽出液と培養瀘液もしくは培養瀘液を酢酸エチル、クロロホルムなどで抽出した抽出液とを合わせて濃縮し、高速液体クロマトグラフィーなどにより、本発明の化合物を得る。
【0032】
(3)本発明の化合物の用途
本発明の化合物は、鉄イオンとの親和性が高いのでデフェロキサミンBと同様に鉄排出剤として利用できる。また、抗菌活性を持つので抗菌剤としても利用できる。
【0033】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0034】
【実施例】
シュードアルテロモナス sp. KP−20−4株の培養を以下の様に行った。500mlの三角フラスコ1本あたり、生産培地(カザミノ酸 5 g/L、グリセリン 3 ml/L、グリセロリン酸 0.1 g/L、塩化ナトリウム 15.5 g/L、塩化カリウム 0.8 g/L、硫酸マグネシウム・七水和物 12.4 g/L、塩化カルシウム・二水和物 2.9 g/L、塩化アンモニウム 1 g/L、HEPESナトリウム塩 2.6 g/L、炭酸水素ナトリウム 0.17 g/L、塩化鉄 0.01 μM (滅菌前pH 6.8))400 mlを入れ、オートクレーブにて滅菌したフラスコ各々(計20本、8 L)に、該菌株懸濁液(O.D. 1.0 (600nm)に調整したもの)400 μL接種し、30℃、震盪培養(100 rpm)にて72時間培養を行った。培養中、pHは特に制御しなかった。
【0035】
培養物からのシデロフォアの精製は以下の様に行った。精製はCAS(Chrome azurol S)アッセイ[Schwyn, B. and Neilands, J. B. : Analytical Biochemistry, Vol. 160, 47−56 (1987)]を指標に行った。培養物を遠心分離(8,000 xg、4℃、20 min)により菌体と上清を分離した。分離した上清のpHを塩酸にてpH 3に調整し、芳香族系合成吸着樹脂HP20樹脂(三菱化学社製)を2 L加え、4℃に24時間放置した。ガラスフィルターを用いて樹脂を濾過し、瀘別した樹脂は、塩酸にてpH 3に調整した超純水16 Lで洗浄した。洗浄したHP20樹脂をビーカーに移し、8 Lのメタノールに24時間浸漬した。次に、グラスフィルターを用いて、メタノールと樹脂を濾別し、得られたメタノール溶液をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、8 gの固形物を得た。
【0036】
次に、逆相(ODS)の樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーを行った。内径 4 cm、長さ40 cmのガラスカラムにあらかじめ60%メタノール−超純水で膨潤したODS樹脂(コスモシール 75C18−OPN、ナカライ化学社製)200 gをつめ、徐々にメタノールの割合を減らしつつ、最終的には、超純水に置換した。このカラムに、先の固形物8 gを超純水20 mlに溶解したものをロードし、超純水1.6 Lで溶出した。次に、20%メタノール−超純水 2L、さらに、50%メタノール−超純水 2Lで溶出した。CASアッセイにて20%メタノール−超純水溶出画分にシデロフォアが含まれていることがわかったので、この画分をエバポレーターで濃縮後、凍結乾燥をおこない、褐色固形物1.6 gを得た。
【0037】
次にLH−20樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーを行った。内径2 cm、長さ60 cmのガラスカラムに、あらかじめ20%メタノール−超純水で膨潤したLH−20樹脂(アマシャム・ファルマシア社製)150gをつめ、20%メタノール−超純水500 mlを流し、カラムを平衡化し、ここに、先の褐色固形物1.6 gを5 mlの20%メタノール−超純水に溶解したものをロードし、20%メタノール−超純水にて溶出を行った。サンプルロード後、20 mlずつ分画をおこない、後にCASアッセイにてシデロフォアの存在する画分を検出した。シデロフォアを含む画分を集め、エバポレーターにて減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、淡褐色固形物330 mgを得た。
【0038】
次に、逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて精製を行った。HPLCシステムは、東ソー株式会社製のHPLCシステム(ポンプ CCPM、ディテクター UV−8010、コントローラー SC−8010)を用いた。まず、カラムにコスモシール5C18−AR−II(内径20 mm、長さ250 mm)を用い、移動相としては、35%メタノール−超純水を用い、5 ml/minの流速で分画を行った。2分(10 ml)ごとに分画をおこない、CASアッセイを行い、シデロフォアを含む画分を集め、エバポレーターにて減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、淡黄色固形物30mgを得た。次に、カラムに、TSK GEL ODS 80 Ts(内径7.8 mm、長さ300 mm)を用い、2種類の溶媒(溶媒A:0.1%トリフルオロ酢酸−超純水、溶媒B:0.1%トリフルオロ酢酸−アセトニトリル)を用いたグラジエント溶出(初発の溶媒Bの濃度を5%とし、20分後に20%にあげる。流速2 ml/min)を行った。2分(10 ml)ごとに分画をおこない、CASアッセイを行い、シデロフォアを含む画分を集め、エバポレーターにて減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、淡黄色固形物10mgを得た。最後に、先程と同様のカラム、TSK GEL ODS 80 Ts(内径7.8 mm、長さ300 mm)を用いて、移動相として0.1%トリフルオロ酢酸−13%アセトニトリル−超純水を用い、検出波長250 nmで分析、分画を行い、シングルピークとなるまで繰り返し精製を行い、三種類の化合物を得た。
【0039】
ここで得た三種類の化合物は、前記した理化学的性質(式(I)の化合物、式(II)の化合物、及び式(III)の化合物の性質)を示した。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、鉄イオンと高い結合能を有する新規な化合物および該物質の微生物を用いた製造法を提供する。本発明の化合物は、抗菌剤、鉄排出剤として有用である。
【配列表】
Figure 2004269357
Figure 2004269357

Claims (3)

  1. 下記の式(I):
    Figure 2004269357
    または下記の式(II):
    Figure 2004269357
    または下記の式(III):
    Figure 2004269357
    で表される化合物もしくはその塩。
  2. シュードアルテロモナス属に属し、請求項1記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中に請求項1記載の化合物を生成蓄積させ、該培養物から請求項1記載の化合物を採取することを特徴とする請求項1記載の化合物の製造法。
  3. 微生物が、シュードアルテロモナスsp. KP−20−4株又はその類似菌株であることを特徴とする請求項2記載の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009179587A (ja) * 2008-01-30 2009-08-13 Nippon Steel Corp シデロフォア、当該シデロフォアを含有する海洋環境改質剤、および、海洋環境改質方法
JP2009178086A (ja) * 2008-01-30 2009-08-13 Nippon Steel Corp 新規微生物および新規微生物を用いた化合物の製造方法
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