JP5578649B2 - アクチノマデュラ属に属する新規微生物、その微生物が産生する新規化合物、及びその化合物を有効成分とする医薬 - Google Patents
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Description
従来、細菌感染症の治療には病原微生物(グラム陽性菌の球菌や桿菌、グラム陰性菌の球菌や桿菌)に作用する薬物が使用されてきた。例えば抗菌に用いられる薬剤としては、古くからサルファ剤などの化学合成剤が作られてきたほか、ペニシリン、ストレプトマイシンなどの微生物由来の抗生物質が利用されてきた。
また、こうした抗菌薬の一部である、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ドキソルビシンその他の細胞毒抗生物質は抗癌剤としても応用され、医療の発展に寄与している。
あるいは、有機化学的手法によりリード化合物を原点として化学修飾を行っていくことで、効果が高く、副作用の少ない薬剤を開発できるようになってきた。また細胞生物学的手法により薬剤の細胞内での作用機序は分子レベルで解析されるようになり、抗菌力や安全性を向上させることを目的とした研究開発が図られてきた。
また、カンジダなどの真菌類は主として皮膚炎や粘膜症の原因菌となる。これらは皮膚常在菌であり、また真菌類は真核生物であって原核生物の細菌とは細胞構造が異なることなどを理由として、細菌用の抗菌薬とは異なる独自の抗真菌薬が必要とされている。真菌類の感染症に対してはポリエン系抗生物質類のアムホテリシンBやナイスタチンなどが使われてきた。
また、抗菌薬は医療だけではなく、農林水産業においても広く利用されており、例えば、農作物、家畜、養殖魚等の病害予防に使われている。
また、真菌類による感染症も上記のような、薬剤耐性や易感染性宿主の出現といった問題をはらんでいる。
以上から、今までの抗生物質とは異なる分子メカニズムにより、抗菌剤としての力を発揮しつつ、発がん性などの副作用がない新規の化合物が求められている。また、抗真菌剤、農薬、動物用医薬製剤においても同様の新規化合物が求められている。
すなわち、本発明は、特許生物寄託センターに受託番号: NITE P-768として寄託されたアクチノマデュラ(Actinomadura)属に属する新規微生物である。
また、本発明は、前記の微生物が産生し、抗菌活性を有する、下記式(I)で表される新規化合物である。
前記抗菌剤は、グラム陽性菌に対して抗菌活性を示すものであり、前記グラム陽性菌は、ミクロコッカス属グラム陽性菌であり、前記ミクロコッカス属グラム陽性菌は、グラム陽性菌ミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)である。
また、本発明は、上記の微生物が産生し、抗真菌活性を有する、下記式(I)で表される新規化合物である。
前記抗菌剤は、カンジダ属(Candidas)及びクリベロマイセス属(Kluyveromyces)からなる群から選ばれるいずれかの属に属する真菌に対して抗真菌活性を示すものであり、前記真菌は、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)及びクリベロマイセス フラジリス(Kluyveromyces fragilis)からなる群から選ばれるいずれかの真菌である。
まず、生ゴミ処理物を滅菌シャーレ上で風乾後、乳鉢で細かく粉砕し、所定の培地に懸濁させる。ついで、室温にて静置し、順次10倍希釈を行って試料を調製する。生ゴミ処理物としては、例えば、事業所系の生ゴミ、動物残渣・牛糞・魚腸骨、家庭からの生ゴミ、野菜残渣・魚残渣その他の各種生ゴミ由来の堆肥を使用することができる。
所定の培地としては、例えば、YS培地等を使用することができ、これらの培地を用いて、上記の懸濁液の10倍希釈を行う。
上記のようにして得られたアクチノマデュラ属に属する新規微生物は、走査型電子顕微鏡を用いた形態学的観察を行う。本発明の新規微生物は、気菌糸はループを形成し胞子は図1に示すように表面がイボ状の球形胞子が10〜15個連鎖している。
また、寒天培地における生育状態の観察には、種々のISP培地を使用することができる。例えば、ISP培地No.2(イースト・麦芽寒天培地)、ISP培地No.3(オートミール寒天培地)、ISP培地No.4(スターチ・無機塩寒天培地)、及びISP培地No.5(グリセリン・アスパラギン寒天培地)等を使用し、培養温度を例えば、32℃として、これらの寒天培地上における増殖の状況、気中菌糸及び基底菌糸の色、及び色素の産生等を観察することができる。これによって、菌の形態学的な性質を明らかにすることができる。
さらに、どのような炭素原を利用することができるかの確認、菌体分析、及び16S rRNAの塩基配列を対照となる菌のそれと比較することによって、分類学的性質をより明らかにすることができる。
以上の性質より、単離された菌株の同定をすることができる。
菌の単離及び二次代謝産物(以下、単に「化合物」ということがある。)の精製は、以下のようにして行うことができる。
まず、上記のような手段を用いて特徴付けられる菌を、種母培地に接種して、例えば、約15〜40℃の温度範囲で3〜5日間、振とう培養によって前培養を行う。次いで、前培養が終了した種母培地を所定量とり、本培養用の培地に接種し、例えば、数日間、上記の温度で振とう培養を行う。
種母培地を用いた前培養後、本培養を行うにあたっては、例えば、A−3M液体培地を用いて、150〜250rpmで、室温にて4〜8日間という条件で行うことができる。培養条件を、約200rpmで6日間として振とう培養を行うことが、本発明の微生物の生育の面から好ましい。
培養終了後、一般的には、培養液に所定量の有機溶媒を加えて、所望の時間、抽出を行い、次いで遠心して有機相と水相とに分ける。その後、得られた有機相を減圧濃縮する。
まず、上記のように培養が終了した培養液に、例えば、等量の有機溶媒を加え、0.5〜2時間、振盪を行い、その後、遠心して水相と有機相とに分離する。次いで、有機相を、例えば、ロータリーエバポレータを用いて減圧濃縮することにより、抽出物が得られる。
n−ブタノール等を使用することが、粗抽出の抽出効率が高いことから好ましく、複数回の抽出を行うこともできる。
以上のようにして粗抽出物を得た後は、カラムワークによって二次代謝産物の単離・精製を行う。得られた粗抽出物の量がある程度以上ある場合には、通常は、逆相系及び/又は順相系のシリカゲルクロマトグラフィーによる分画を行う。
目的化合物は、粗抽出物をアプライしたカラムから一定の組成の溶離液を用いて溶出させることもでき、溶離液の極性を変化させながら溶出させることもできる。溶離液の極性を変化させながら溶出させる場合には、所定の割合で上記有機溶媒を含有する溶離液を数種類用意して行う、ステップグラジエント法によってもよく、連続的な濃度勾配となるように調製するグラジエント法によってもよい。また、精製の工程に応じて、適宜これらを組み合わせて使用することもできる。
本発明の新規化合物は、まず、上記のシリカゲルカラムクロマトグラフィーを、逆相系の溶離液、例えば、クロロホルム:メタノール(100:0〜0:100)等を用いたグラジエント溶出により、分画することが抽出効率の点から好ましい。
ここで使用する、確認用のHPLC用カラムとしては、例えば、COSMOSIL 5C18-AR-II4.6×250mm(nacalai tesque 社製)、cadenza CD-C18 75 ×4.6mm(Imtakt社製)、MICROSORB-MV 100×4.6mm(RAININ INSTRUMENT COMPANY. INC製)等を挙げることができ、MICROSORB-MV 100×4.6mmを使用することが、操作の効率化の点から好ましい。
目的化合物を含有する画分を確認した後に、このような画分を集めて減圧濃縮を行い、さらに、カラムクロマトグラフィーに供して、所定の溶離液で分画する。この段階においても、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用することができる。
目的とする化合物性質に応じて、順相系又は逆相系の溶離液を選択する。本発明の化合物を単離・精製する場合には、逆相系の溶離液を使用することが好ましく、こうした溶離液としては、例えば、クロロホルム−メタノール、アセトニトリル−リン酸二水素カリウムバッファー、アセトニトリル−ギ酸水溶液、塩化メチレン−メタノール等を挙げることができる。
本発明の化合物を得るためには、逆相系のシリカゲルカラムクロマトグラフィーを3回行うことが、効率的に精製する上で好ましい。
例えば、クロロホルム:メタノールを溶離液として用いたステップグラジエントを行うことにより、本発明の化合物を含有する画分を効率よく得ることができる。
目的とする化合物が含まれている画分を上記と同様にして確認し、集めて減圧濃縮を行い、粗精製物を得ることができる。得られた粗精製物の量が多い場合には、その一部を分取クロマトグラフィーに供する。
こうした分取クロマトグラフィーとして、シリカゲルクロマトグラフィー、ODSカラムクロマトグラフィー等を挙げることができ、溶離液は上述したように、目的とする化合物の性質に応じて適宜選択すればよい。
次の段階として行う、本発明の化合物の単離・精製にも、前述のように逆相系の溶離液を用いることが、精製効率の理由から好ましく、アセトニトリル:0.15% KH2PO4水溶液 pH 3.5=70:30を用いることにより、効率よく目的とする化合物を含有する画分を分取することが可能となる。
目的とする化合物が含まれている画分を上記と同様にして確認し、集めて減圧濃縮を行い、酢酸エチルを用いた抽出を行うことで中間精製物を得ることができる。
目的とする化合物が含まれている画分を上記と同様にして確認し、必要に応じて、例えば、ロータリーエバポレータを用いて減圧濃縮し、酢酸エチルを用いた抽出を行い、その後、無水硫酸ナトリウムによる有機層の脱水のような操作を行うことによって、目的の化合物を結晶として得ることができる。
以上のようにして、本発明の新規化合物を得ることができる。これらの化合物を公知の方法に従って処理し、所望の誘導体、塩、水和物等を得ることができる。
また、本発明は、上述した方法で得られた下記式(I)で表される化合物、生理学的に許容されるそれらの塩、及びそれらの水和物からなる群から選ばれる、いずれかを有効成分とする抗菌剤及び/又は抗真菌剤である。
また、上記抗菌剤及び/又は抗真菌剤は、経口投与、静脈内投与、又は腹腔内投与が可能な剤形であることが好ましく、錠剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、トローチ剤、及び液剤からなる群から選ばれるものであることが好ましい。静脈内投与の場合には、静脈内注射、点滴静注用の製剤とすることが好ましい。
上記の化合物を有効成分する抗菌剤及び/又は抗真菌剤は、上記以外の粉剤その他の固形剤としてもよく、注射剤用の凍結乾燥製剤、リポソーム剤等、各種の剤形とすることもできる。
上述したように製造したこれらの化合物、それらの誘導体、生理学的に許容されるそれらの塩、及びそれらの水和物を用いて製剤を製造する場合には、常法に従って、粉末とした後に散剤としてもよく、公知の賦形剤、崩壊剤等とともに打錠し、錠剤、トローチ剤等にしてもよい。錠剤の場合には、必要に応じて白糖その他の糖等を用いて、単層又は複数の層でコーティングを行い、糖衣錠としてもよい。また、矯味・矯臭剤を添加してもよい。
液剤とする場合には、必要に応じて、pH調整剤、分散剤等を添加することもできる。リポソーム剤とする場合には、適当なリン脂質を選択し、溶液中でこれらとともに懸濁することによって、製造することができる。
(1−1)試薬等
以下の試薬を使用した。
塩化カルシウム、炭酸カルシウム、ブドウ糖、グリセロール、硫酸マグネシウム7水和物(MgSO4・7H2O)、硫酸鉄7水和物(FeSO4・7H2O)、塩化マンガン4水和物(MnCl2・4H2O)、硫酸ニッケル4水和物(NiSO4・4H2O)、硫酸亜鉛4水和物(ZnSO4・4H2O)、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、NZケース(NZ Case)、溶性でんぷん(Soluble Starch)、メタノール、アセトニトリル、リン酸水素2カリウム(K2HPO4)、リン酸水素2ナトリウム12水和物(Na2HPO4・12H2O)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ゲランガム(Gellan gum)、Cell Counting Kit及び寒天は、和光純薬工業(株)より購入した。
肉エキスはDifco Laboratoriesより、酵母エキスは極東製薬工業(株)よりそれぞれ購入した。ファーマメディア(Pharmamedia)はTraders Protein社より購入した。ダイヤイオン(Diaion HP-20)は、三菱化学(株)より購入した。
NMR用クロロホルムは関東化学(株)より購入した。
探索源として、下記表1に示す堆肥を使用した。これらの堆肥を滅菌シャーレ上で風乾し、乾燥後の堆肥を乳鉢で細かく粉砕した。
下記の表3及び4に、Bn2培地及びHMG培地の組成を示す。
以上のようにして得られた菌株の1つをTP-A0878と命名し、その分類学的性質を「放線菌の分類と同定」(日本放線菌学会編、日本学会事務センター刊 2001年2月)に従って決定した。
菌の同定に使用したISP(International Actinomadura Project)培地 No. 2及び同No. 4は、DIFCO社より購入した。また、ISP培地 No. 3、及び同No. 5としては、日本放線菌学会規格放線菌培地ダイゴ No. 3、及び同No. 5を日本製薬(株)より購入した。
色調は標準として、『新色名事典』(財団法人日本色彩研究所 1987年)を用いて決定し、色標名とともに括弧内にそのコードを併せて記した。観察は32℃、4週間目の各種培地における結果である。
(1)形態学的性質
走査型電子顕微鏡で観察したところ、気菌糸はループを形成し胞子は図1に示すように表面がイボ状の球形胞子が10〜15個連鎖していた(図1参照)。
(2)寒天培地における生育状態
本菌株は、下記の培地上で中程度以上の生育を示した。気中菌糸は白色を呈し、また基底菌糸裏面は淡い黄色から明るい赤みの黄色系を呈した。
(a)ISP培地 No. 2(イースト・麦芽寒天培地、32℃培養)で余り良く生育しなかった。基底菌糸裏面は濃い灰色を呈し、中程度の灰色(ミディアム・グレー)の気中菌糸を厚く着生した。
(c)ISP培地 No. 4(スターチ・無機塩寒天培地、32℃培養)で良く増殖した。基底菌糸裏面は濃い灰色を呈し、赤みがかった灰色の気中菌糸を厚く着生した。
(d)ISP培地 No. 5(グリセリン・アスパラギン寒天培地、32℃培養)で良く増殖した。基底菌糸裏面は濃い灰色を呈し、明るい灰色の気中菌糸を厚く着生した。
TP-A0878菌株の各種寒天培地上の培養性状を表7にまとめた。
(a)ベネット寒天培地(肉エキス0.1%、酵母エキス0.1%、NZアミン0.2%、ブドウ糖1.0%、及び寒天2.0%を含む)において17〜48℃の温度範囲で増殖し、約25〜48℃付近で良好に増殖した。
(b)メラニン様色素生成は陰性であった。
(4)炭素源の利用
利用可能な炭素源は、D-グルコース、D-キシロース、D-フラクトース、D-マンニトール、スクロース、L-ラムノース、及びL-アラビノースであった。
一方、利用しない炭素源は、ラフィノース、myo‐イノシトールであった。
(5)菌体分析の結果
全菌体加水分解物中のジアミノピメリン酸はmeso型を含み、グリシンを含んでいた。全菌体糖としては、グルコース、リボース、及びマジュロースを含んでいた。
16S rRNAの塩基配列(1,468塩基対)を、Actinomadura sp. TFS 455 (EF2120220)の該当する塩基配列と比較したところ、100%の相同性を示した。
以上の分類学的性質を示したことから、本菌株をアクチノマデュラ属(Actinomadura)と同定した。
TP-A0878を、100mLの種母培地であるV-22液体培地(溶性デンプン1.0%、ブドウ糖0.5%、NZケース0.3%、酵母エキス0.2%、トリプトン0.5%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.05%、CaCO3 0.3%を含む)が入った500mLのK型フラスコに接種し、200rpm、30℃にて4日間、振とう培養した(振とう機:サンキ精機(株)RGS-200R)。
その後、100mLの生産培地A−3M(ブドウ糖0.5%、グリセロール2.0%、溶性デンプン2.0%、ファーマメディア(Pharmamedia)1.5%、酵母エキス0.3%、Diaion HP-20 1.0%を含む)の入った500mLのK型フラスコ20個に、上記の種母培養液を3mLずつ移植し、200rpm、30℃にて6日間振とう培養した。
この粗抽出物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学社製、シリカゲル量:200g)に供し、クロロホルム:メタノール(100:1〜1:1)を用いてステップグラジエントにて溶出し、分画した。
各画分について、以下の条件でHPLC分析を行った。
装置:Agilent 1090
溶離液:アセトニトリル:0.15%KH2PO4水溶液(pH3.5)=15:85〜85:15
流 速:1.2ml/min
検出波長:254nm
カラム:MICROSORB-MV 100×4.6mm
カラム温度:室温
得られた残渣を少量のDMSOに溶解し、ODSシリカゲルクロマトグラフィー(ナカライテスク社製、内径:50mm、カラム長:25cm)に供し、溶離液としてアセトニトリル:0.15%KH2PO4水溶液(pH3.5)(20:80〜100:0)を用いて、ステップグラジエントにて溶出し、分画した。
各画分について、上記同様の条件でHPLC分析を行ったところ、アセトニトリル:0.15%KH2PO4水溶液(pH3.5)=70:30の画分に、後述する化合物(TPU-0119)を確認した。このため、これらの画分を集めてロータリーエバポレータ(ROTARY EVAPORATOR REN-1000, IWAKI製)を用いて減圧濃縮し、酢酸エチル抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮乾固し残渣(89.9mg)を得た。
後述する化合物(TPU-0119)を確認した画分を集めてロータリーエバポレータ(ROTARY EVAPORATOR REN-1000, IWAKI製)を用いて減圧濃縮し、酢酸エチル抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮乾固し、19mgのTPU-0119を得た。
次に、実施例1で得られた無色結晶の構造決定を行った。構造決定のために、核磁気共鳴吸収(NMR)、紫外吸光(UV)分析、赤外吸収(IR)分析、質量分析(MS)、旋光度測定を行った。以下の機器を使用して分析を行い、UV及びIRスペクトルの結果と合わせて、構造決定を行った。
1H-NMR:BRUKER Avance 500M(500 MHz)
UV:HITACHI U-3210
IR:PerkinElmer Spectrum 100
MS:BRUKER DALTONICOS microTOF(ESI-TOF-MS)
旋光度:JASCO P-1030
カラム:MICROSORB-MVTM (100×i.d. 4.6mm、RAININ INSTRUMENT COMPANY. INC製)
移動相:CH3CN:0.15% KH2PO4(pH3.5)=15:85〜85:15
流速:1.2mL/分
検出波長:254nm
TPU-0119は、UV分析の結果、293及び250 nmに吸収極大を示し、IR分析では、3397cm‐1にOH伸縮振動、及び1749cm‐1にC=O伸縮振動に由来する吸収帯が観測された。また、質量分析では、ESI-TOF-MSで[M−H]−がm/z 495.2752に検出されたため、分子式をC30H40O6と決定した。
13C NMR分析の結果、30個のシグナルが観測された。その内訳は、メチル基由来のシグナルが5個、メチレン基由来のシグナルが5個、メチン基由来のシグナルが12個、四級炭素由来のシグナルが8個観測された(CDCl3、30℃)。
TPU-0119のNMRデータを下記表8に、構造式を図2及び3にそれぞれ示す。また、下記表9に、一般的な性状、分子量、紫外吸収、赤外吸収等のデータを示す。
a 100 MHzで記録。b 500 MHzで記録。
実施例2で構造決定を行ったTPU-0119の抗菌及び抗真菌活性について検討した。
(3−1)抗菌及び抗真菌試験
下記表10に示す細菌6種及び酵母3種及び培地を用いて、TPU-0119の抗菌及び抗真菌活性を試験した。
次に、各寒天平板よりコロニーを白金耳でかき取り、それぞれ8mLの液体培地に懸濁した。次いで、30℃にて、20時間振とう培養(120rpm/分、振とう機:サンキ精機(株)RGS-200R)した。
培養終了後に、遠心分離により集菌し(遠心機:HITACHI himac CR20、ロータ:HITACHI R12A、いずれも日立製作所(株)製、3000rpm, 5分)、得られた菌を生理食塩水に懸濁して、OD660を測定した(Emax、Molecular Devices社製)。
下記の菌を培養するために、96穴滅菌平底プレートに、同上の培地を、100μLずつ分注した。
終濃度の100倍濃度のTPU-0119を含む試料溶液を調整し、上記の96穴平底プレートの各穴に1〜0.5%ずつ添加した(n=3)。2倍ずつの段階希釈を行い、希釈系列を調整した。次いで、上記のように調整した菌液を、終濃度が1×104 cells/mLとなるように各穴に添加し、攪拌器(Biomek2000, Beckman社製)で撹拌した。
その後、グラム陰性細菌は37℃にて、その他の菌は30℃にて、20時間、インキュベータ中で静置培養した。
コントロール(化合物非添加区)のODの値を100%としたときの化合物添加区のODの値から、化合物添加区における菌の増殖率を計算し、被検菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)(μM)を求めた。結果を表11に示す。
TPU-0119のMICは、下記のグラム陰性細菌及び一部の酵母に対しては100μM以上となり、抗菌及び抗真菌活性は示さなかった。一方、下記のグラム陽性細菌及び一部の酵母に対しては抗菌及び抗真菌活性を示した。
Claims (10)
- 特許生物寄託センターに受託番号: NITE P-768として寄託されたアクチノマデュラ(Actinomadura)属に属する新規微生物。
- 請求項1に記載の新規微生物によって産生され、抗菌活性を有する、下記式(I)で表される新規化合物。
- 請求項2に記載の化合物、生理学的に許容されるそれらの塩、及びそれらの水和物からなる群から選ばれる、いずれかを有効成分とする抗菌剤。
- 前記抗菌剤は、グラム陽性菌に対して抗菌活性を示すことを特徴とする、請求項3に記載の抗菌剤。
- 前記グラム陽性菌は、ミクロコッカス属グラム陽性菌であることを特徴とする、請求項4に記載の抗菌剤。
- 前記ミクロコッカス属グラム陽性菌は、グラム陽性菌ミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)であることを特徴とする、請求項5に記載の抗菌剤。
- 請求項1に記載の新規微生物によって産生され、抗真菌活性を有する、下記式(I)で表される新規化合物。
- 請求項7に記載の化合物、生理学的に許容されるそれらの塩、及びそれらの水和物からなる群から選ばれる、いずれかを有効成分とする抗真菌剤。
- 前記抗真菌剤は、カンジダ属(Candidas)及びクリベロマイセス属(Kluyveromyces)からなる群から選ばれるいずれかの属に属する真菌に対して抗真菌活性を示すことを特徴とする、請求項8に記載の抗真菌剤。
- 前記真菌は、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)及びクリベロマイセス フラジリス(Kluyveromyces fragilis)からなる群から選ばれるいずれかの真菌に対して抗真菌活性を示すことを特徴とする、請求項9に記載の抗真菌剤。
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