JP2011089677A - 空調制御装置および方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大空間における任意の場所を、効率よく所望の空調環境へ制御する。
【解決手段】空間条件データと、境界条件データおよび発熱体データからなる状況データとに基づいて、熱流動順解析処理部15Bで、空調空間の状況を分布系熱流動解析手法により順解析して、空調空間の温度および気流の分布を示す分布データ14Dを算出し、設定データ生成部15Cで、この分布データ14Dと目的場所における目標温度を示す目的データ14Eとからなる設定データ14Fを生成し、この設定データ14Fに基づいて、熱流動逆解析処理部15Dで、空調空間の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析して、吹出口での新たな調和空気の吹出速度と吹出温度からなる新たな空調操作量を逆算し、得られた新たな空調操作量に基づいて空調システム21を制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、空調制御技術に関し、特に空間内の目的場所における空調環境を制御するための空調制御技術に関する。
空間内を所望の空調環境に維持する場合、空気調和すべき空調空間に空調設備を設けるとともに、当該空調エリアを代表する位置に温度センサを配置し、温度センサの出力に応じて空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を決定するものとなっている。
産業プロセス用の空調制御では、例えば工業用の熱処理炉など巨大な熱源が存在している場合でも、予め温度状態を制御しやすく装置設計されており、例えば、複数の熱源と温度センサが概ね1対1の独立した関係で結び付けられるように配置されている。したがって、加熱ゾーン間のいわゆる温度干渉はあるにしても、温度制御を過度に困難にすることはなく、結果的に、PIDなどの単純なシングルループのフィードバック制御系を複数構成する形態で良好な制御が可能になる。
特許第4016066号公報
広井和男、「ディジタル計装制御システムの基礎と応用」、工業技術社、pp.152-156、1987.10 加藤信介・小林光・村上周三、「不完全混合室内における換気効率・温熱環境形成効率評価指標に関する研究 第2報-CFDに基づく局所領域の温熱環境形成寄与率評価指標の開発」、東大生研:空気調和・衛生工学論文集No.69、pp.39-47、1998.4
しかしながら、このような従来技術によれば、オフィスなどの大空間の場合、温度干渉により操作量が安定しにくくなり、良好な制御が困難になるという問題点があった(例えば、非特許文献1など参照)。
すなわち、オフィスなどの大空間では、通常、熱源となる人・照明・電気機器などの配置や、空気の流れの障害となる机、椅子、間仕切りなどの配置については作業効率が優先されており、このような室内レイアウトが空調制御を優先して設計されることはない。このため、空調設備の吹出口と温度センサの位置関係は、いわゆる温度干渉が強くならざるを得なくなる。
したがって、前述した従来技術のような、シングルループのフィードバック制御系を複数構成する形態では、このような温度干渉により操作量が安定しにくくなり、良好な制御が困難になる。例えば、所望の空調環境に移行させる際に温度変化幅が大きいと、制御状態にばらつきが生じ、全系的な安定状態を各フィードバック制御系が個別に探索するようなちぐはぐな動作になるため、操作量が安定しなくなる。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、大空間のように温度干渉が発生しやすい環境でも、安定した操作量を得ることができる空調制御技術を提供することを目的としている。
このような目的を達成するために、本発明にかかる空調制御装置は、空調空間の空気調和を行う空調システムを制御することにより、当該空調空間内の目的場所における空調環境を制御する空調制御装置であって、空調空間に関する位置および形状と、空調システムで生成された調和空気の吹出口に関する位置および形状とを示す空間条件データを記憶する記憶部と、吹出口から吹き出す調和空気の吹出速度および吹出温度を示す境界条件データを入力するとともに、空調空間に存在する発熱体に関する位置および発熱量を示す発熱体データを入力するデータ入力部と、空間条件データと、境界条件データおよび発熱体データからなる状況データとに基づいて空調空間の状況を分布系熱流動解析手法により順解析することにより、空調空間の温度および気流の分布を示す分布データを算出する熱流動順解析処理部と、分布データと目的場所における目標温度を示す目的データとからなる設定データを生成する設定データ生成部と、設定データに基づいて空調空間の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析することにより、目的場所を目標温度とするために必要な、吹出口での新たな調和空気の吹出速度と吹出温度からなる新たな空調操作量を逆算する熱流動逆解析処理部と、新たな空調操作量に基づいて空調システムを制御する空調制御部とを備えている。
この際、データ入力部で、一定時間ごとに、あるいは、境界条件データまたは発熱体データの変化に応じて、空調制御タイミングの到来を判定し、当該空調制御タイミングの到来に応じて、空調空間に対する新たな空調制御のための境界条件データおよび発熱体データを新たに生成するようにしてもよい。
また、記憶部で、人に関する発熱量を含む人データを記憶し、データ入力部で、入力された空調空間における人の存在位置に基づいて、当該人に関する存在位置と、人データから取得した発熱量とから、空調空間に存在する人ごとに発熱体データを生成するようにしてもよい。
また、記憶部で、空調空間に配置されている照明機器ごとに、当該照明機器に関する配置位置と、点灯時における当該照明機器の発熱量とを含む照明機器データを記憶し、データ入力部で、入力された照明機器ごとの点灯状況に基づいて、照明機器のうち点灯中の照明機器に関する照明機器データから取得した、当該照明機器の配置位置と発熱量とから、点灯中の照明機器ごとに発熱体データを生成するようにしてもよい。
また、記憶部で、空調空間を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データと、人に関する発熱量を含む人データとを記憶し、データ入力部で、空調空間に対する人の入退室に応じて入力される、当該空調空間に存在する人の識別情報に基づいて、これら識別情報に対応する在席位置データから当該人の在席位置を取得し、この在席位置と、人データから取得した発熱量とから、空調空間に存在する人ごとに発熱体データを生成するようにしてもよい。
また、記憶部で、空調空間を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データを記憶し、設定データ生成部で、空調空間に対する人の入室に応じて入力される当該人の識別情報に基づいて、当該識別情報と対応する在席位置データから当該人の在席位置を取得し、この在席位置を目的場所とするとともに予め設定されている設定温度を目標温度とする目的データを生成し、当該目的データと分布データとから設定データを生成するようにしてもよい。
また、本発明にかかる空調制御方法は、空調空間の空気調和を行う空調システムを制御することにより、当該空調空間内の目的場所における空調環境を制御する空調制御装置で用いられる空調制御方法であって、記憶部が、空調空間に関する位置および形状と、空調システムで生成された調和空気の吹出口に関する位置および形状とを示す空間条件データを記憶する記憶ステップと、データ入力部が、吹出口から吹き出す調和空気の吹出速度および吹出温度を示す境界条件データを入力するとともに、空調空間に存在する発熱体に関する位置および発熱量を示す発熱体データを入力するデータ入力ステップと、熱流動順解析処理部が、空間条件データと、境界条件データおよび発熱体データからなる状況データとに基づいて空調空間の状況を分布系熱流動解析手法により順解析することにより、空調空間の温度および気流の分布を示す分布データを算出する熱流動順解析処理ステップと、設定データ生成部が、分布データと目的場所における目標温度を示す目的データとからなる設定データを生成する設定データ生成ステップと、熱流動逆解析処理部が、設定データに基づいて空調空間の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析することにより、目的場所を目標温度とするために必要な、吹出口での新たな調和空気の吹出速度と吹出温度からなる新たな空調操作量を逆算する熱流動逆解析処理ステップと、空調制御部が、新たな空調操作量に基づいて空調システムを制御する空調制御ステップとを備えている。
この際、データ入力ステップに、一定時間ごとに、あるいは、境界条件データまたは発熱体データの変化に応じて、空調制御タイミングの到来を判定し、当該空調制御タイミングの到来に応じて、空調空間に対する新たな空調制御のための境界条件データおよび発熱体データを新たに生成するステップを含むようにしてもよい。
また、記憶ステップに、人に関する発熱量を含む人データを記憶するステップを含み、データ入力ステップに、入力された空調空間における人の存在位置に基づいて、当該人に関する存在位置と、人データから取得した発熱量とから、空調空間に存在する人ごとに発熱体データを生成するステップを含むようにしてもよい。
また、記憶ステップに、空調空間に配置されている照明機器ごとに、当該照明機器に関する配置位置と、点灯時における当該照明機器の発熱量とを含む照明機器データを記憶するステップを含み、データ入力ステップに、入力された照明機器ごとの点灯状況に基づいて、照明機器のうち点灯中の照明機器に関する照明機器データから取得した、当該照明機器の配置位置と発熱量とから、点灯中の照明機器ごとに発熱体データを生成するステップを含むようにしてもよい。
また、記憶ステップに、空調空間を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データと、人に関する発熱量を含む人データとを記憶するステップを含み、データ入力ステップに、空調空間に対する人の入退室に応じて入力される、当該空調空間に存在する人の識別情報に基づいて、これら識別情報に対応する在席位置データから当該人の在席位置を取得し、この在席位置と、人データから取得した発熱量とから、空調空間に存在する人ごとに発熱体データを生成するステップを含むようにしてもよい。
また、記憶ステップに、空調空間を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データを記憶するステップを含み、設定データ生成ステップに、空調空間に対する人の入室に応じて入力される当該人の識別情報に基づいて、当該識別情報と対応する在席位置データから当該人の在席位置を取得し、この在席位置を目的場所とするとともに予め設定されている設定温度を目標温度とする目的データを生成し、当該目的データと分布データとから設定データを生成するステップを含むようにしてもよい。
本発明によれば、空気調和の対象となる空調空間のうち、目的場所における温度を目標温度へ制御するために必要な、吹出口における風速、風向・温度を、全系的に安定した状態において算出することができる。このため、シングルループのフィードバック制御系を複数構成した場合と比較して、オフィスなどの大空間のように温度干渉が発生しやすい環境であっても、安定した操作量を得ることができる。したがって、大空間のように温度干渉が発生するような場所でも、効率よく所望の空調環境へ制御することが可能となる。
第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。 空間条件データの構成例である。 境界条件データの構成例である。 発熱体データの構成例である。 分布データの構成例である。 設定データの構成例である。 空気調和の対象となる空調空間の構成例である。 空調操作量データの構成例である。 第1の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフローチャートである。 第1の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。 分布データの算出例を示すグラフである。 感度データの算出例を示すグラフである。 第2の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。 第2の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。 第3の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。 第3の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。 第4の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。 第4の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。 第5の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
この空調制御装置10は、全体として、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、空調空間30の空気調和を行う空調システム21を制御することにより、空調空間30の目的場所における空調環境を制御する機能を有している。
本実施の形態は、空調空間30の空調空間に関する位置および形状と、空調システム21で生成された調和空気の吹出口に関する位置および形状とを示す空間条件データを予め記憶しておき、吹出口から吹き出す調和空気の吹出速度および吹出温度を示す境界条件データを入力するとともに、当該空調空間に配置された各発熱体に関する配置位置および発熱量を示す発熱体データを入力する。
そして、空間条件データと、境界条件データおよび発熱体データからなる状況データとに基づいて空調空間の状況を分布系熱流動解析手法により順解析することにより、空調空間の温度および気流の分布を示す分布データを算出し、得られた分布データと目的場所における目標温度を示す目的データとからなる設定データに基づいて、空調空間の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析することにより、目的場所を目標温度とするために必要な、吹出口での新たな調和空気の吹出速度と吹出温度からなる新たな空調操作量を逆算し、得られた新たな空調操作量に基づいて空調システム21を制御するようにしたものである。
[空調制御装置]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の構成について詳細に説明する。
この空調制御装置10には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
通信I/F部11は、専用のデータ通信回路からなり、通信回線20を介して接続された空調システムなどの外部装置との間でデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、演算処理部15からの指示に応じて、操作メニューや入出力データなどの各種情報を画面表示する機能を有している。
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15で用いる各種処理情報やプログラム14Pを記憶する機能を有している。
プログラム14Pは、演算処理部15に読み出されて実行されるプログラムであり、予め外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して記憶部14へ格納される。
記憶部14で記憶される主な処理情報として空間条件データ14Aがある。空間条件データ14Aは、空調空間30の空調空間に関する位置および形状や、空調システム21で生成された調和空気の吹出口など、空調空間30の空調環境に影響を与える構成要素に関する位置および形状を示すデータであり、予め空調システム21などの外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して入力されて、記憶部14へ格納される。
図2は、空間条件データの構成例である。ここでは、空調空間の「空調空間形状」、空調空間に配置されて気流に影響を与える机、椅子、間仕切りなどの「障害物」、空調システム21で生成された調和空気が空調空間30へ吹き出す吹出口、空調空間30から室内空気が排気される吸込口、空調空間30の室内空気が室外との間で自然換気される外気流通用の開口部、空調空間30の室内空気を循環させるファンなど、空調空間30の空調環境に影響を与える構成要素ごとに、その空間条件として位置x,y,z(3次元成分)と形状(大きさ)dx,dy,dz(3次元成分)が登録されている。
演算処理部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14からプログラム14Pを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部15で実現される主な処理部として、データ入力部15A、熱流動順解析処理部15B、設定データ生成部15C、熱流動逆解析処理部15D、および空調制御部15Eがある。
データ入力部15Aは、空調空間30に設けられている吹出口から吹き出す調和空気の吹出速度および吹出温度など、空調空間30の空調環境に影響を与える構成要素による、当該空調環境に対する影響度を示す境界条件データを入力する機能と、空調空間30に配置された各発熱体に関する配置位置および発熱量、さらには形状を示す発熱体データを入力する機能と、空調システム21などの外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して入力された、空調空間30の空間条件データ14Aを、記憶部14へ予め格納する機能と、一定時間ごとに、あるいは、境界条件データまたは発熱体データの変化に応じて、空調制御タイミングの到来を判定し、当該空調制御タイミングの到来に応じて、新たな空調制御のための境界条件データおよび発熱体データを新たに生成する機能とを有している。
境界条件データについては、例えば通信I/F部11を介して空調システム21から取得すればよい。発熱体データについては、操作入力部12を用いたオペレータ操作で入力してもよく、通信I/F部11を介して後述する各種システムから得た各種データに基づいて空調空間30における発熱体に関する発熱体データを生成してもよい。
図3は、境界条件データの構成例である。ここでは、空間条件データに含まれる構成要素のうち、空調空間30の空調環境に与える影響が変化する構成要素ごとに、当該時点における境界条件として、風速、風向・温度で示される影響度が登録されている。例えば、「吹出口」については、当該吹出口から吹き出す調和空気の吹出速度u,v,w(3次元成分)および吹き出す調和空気の空気温度Tが登録されており、「吸込口」については、当該吸込口から吸い込まれる室内空気の吸込速度u,v,w(3次元成分)が登録されている。また、「開口部」については、当該開口部から出入りする空気の温度Tが登録されており、「ファン」については、当該ファンで送風される室内空気の送風速度u,v,w(3次元成分)が登録されている。
これら空間条件データや境界条件データに含まれる各構成要素については、空調対象となる空調空間30の構成や空調制御に対する重要性に応じて取捨することができる。空調条件データにおいては、空調空間30の空調空間に関する空間条件データが必須である。また、空調環境に与える影響が極めて大きい吹出口も重要な構成要素であり、空間条件データおよび境界条件データにおいて必須である。一方、吸込口については、設けられていない空間もあり、開口部やファンも同様である。
図4は、発熱体データの構成例である。ここでは、空調空間30で発熱する構成要素、例えば、人、照明機器、パソコン、コピー機、プリンタなど電気機器からなる各種発熱体ごとに、その空間条件として位置x,y,z(3次元成分)と形状(大きさ)dx,dy,dz(3次元成分)が登録されており、その境界条件として発熱体の発熱量Qが登録されている。
熱流動順解析処理部15Bは、空間条件データと、境界条件データおよび発熱体データからなる状況データとに基づいて、空調空間30の状況を分布系熱流動解析手法により順解析することにより、空調空間30の温度および気流の分布を示す分布データを算出する機能を有している。
図5は、分布データの構成例である。ここでは、空調空間30を網目状に分割して設定した小空間の位置x,y,z(3次元成分)ごとに、風速分布データとして当該小空間における室内空気の風速uCFD,vCFD,wCFD(3次元成分)が登録されているとともに、温度分布データとして当該小空間における室内空気の空気温度TCFDが登録されている。
分布系熱流動解析手法とは、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)を基本として、対象空間を網目状の小空間に分割し、隣接する小空間間における熱流を解析する技術である。
分布系熱流動解析手法に関する順解析技術の具体例としては、小空間ごとにNS方程式(Navier-Stokes equations)を解くことによって、風速、風向・温度の解析を行う対流熱輸送連成解析技術が提案されている(例えば、非特許文献2など参照)。この他、小空間間の接点を熱抵抗で表して、熱の流れを電気回路的にモデル化して解析する技術も適用できる。
設定データ生成部15Cは、操作入力部12を用いたオペレータのデータ入力操作により、空調空間30内の目的場所における目標温度を示す目的データを取得する機能と、取得した目的データと熱流動順解析処理部15Bで算出した分布データとからなる設定データを生成する機能とを有している。
図6は、設定データの構成例である。ここでは、熱流動順解析処理部15Bで算出した分布データに加え、目的場所の空間条件として位置x,y,z(3次元成分)と形状(大きさ)dx,dy,dz(3次元成分)が登録されているとともに、境界条件として当該目的場所における目標温度Tが登録されている。なお、目的場所は、1ヶ所に限られるものではなく、制御可能な範囲(解が得られる範囲)で複数設定できる。
図7は、空気調和の対象となる空調空間の構成例である。ここでは、空調空間30の天井に12個の吹出口と、12個の吸込口が配置されており、空調空間30の床に人からなる4つの発熱体が存在している。また、4つの発熱体に囲まれた位置に目的場所が設定されている。
熱流動逆解析処理部15Dは、設定データ生成部15Cで生成された設定データに基づいて、空調空間30の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析することにより、目的データを満足するために必要な、各小空間における風速、風向・温度の変化度合いを示す感度データを算出する機能と、この感度データに基づいて吹出口から吹き出す新たな調和空気の吹出速度と吹出温度を新たな空調操作量として逆算する機能を有している。
分布系熱流動解析手法の逆解析技術は、分布系熱流動解析手法の順解析とは逆に、対象空間を網目状の小空間に分割し、これら小空間における風速、風向・温度のうち、全系的な安定状態において、目的場所における温度を目標温度とするために必要な、各小空間における風速、風向・温度の変化度合いを示す感度データを算出する技術である。
分布系熱流動解析手法に関する逆解析技術の具体例としては、設定された設計目標に基づいて、当該設計目標に対する非線形問題に対する摂動随伴方程式を解くことにより、設計パラメータの変化に対する設計目標の変化割合で定義される感度を解析することにより、所望の熱対流場または物質拡散場を設計する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。ここでいう設計パラメータが、本発明における境界条件データや発熱体データに相当し、設計目標が、本発明における目的位置の目標温度に相当している。
空調制御部15Eは、熱流動逆解析処理部15Dで算出した新たな空調操作量に基づいて、通信I/F部11を介して空調システム21とデータ通信することにより、空調システム21の空調機器を制御する機能を有している。
図8は、空調操作量データの構成例である。ここでは、空調空間30に設けられた吹出口ごとに、その位置x,y,z(3次元成分)と形状(大きさ)dx,dy,dz(3次元成分)が登録されており、空調操作量として吹出速度u,v,w(3次元成分)および吹き出す調和空気の空気温度Tが登録されている。また、空調空間30に設けられた吸込口ごとに、その位置x,y,z(3次元成分)と形状(大きさ)dx,dy,dz(3次元成分)が登録されており、空調操作量として吸込速度u,v,w(3次元成分)が登録されている。
[第1の実施の形態の動作]
次に、図9および図10を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置の動作について説明する。図9は、第1の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフローチャートである。図10は、第1の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。
空調制御装置10の演算処理部15は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて、図9の空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、空間条件データ14Aが予め記憶部14に格納されているものとする。
まず、データ入力部15Aは、通信I/F部11を介して空調システム21とデータ通信を行い、得られた空調操作量データ14Bに含まれる、空調空間30の各吹出口における吹出速度u,v,w(3次元成分)および空気温度Tと、各吸込口における吸込速度u,v,w(3次元成分)から、境界条件データを生成する(ステップ100)。
また、データ入力部15Aは、操作入力部12を用いたオペレータのデータ入力操作により、空調空間30に存在する発熱体に関する発熱体データを生成する(ステップ101)。
次に、熱流動順解析処理部15Bは、記憶部14から読み出した空間条件データ14Aと、データ入力部15Aで生成された境界条件データおよび発熱体データからなる状況データ14Cとに基づいて、空調空間30の状況を分布系熱流動解析手法により順解析することにより、空調空間30の温度および気流の分布を示す分布データ14Dを算出する(ステップ102)。
図11は、分布データの算出例を示すグラフである。ここでは、図7に示した空調空間に関する分布データとして、各小空間における空気温度がカラーバーで表現され、各小空間における空気の風速が矢印の大きさで表現され、各小空間における空気の風向が矢印の方向で表現されている。この例では、4つの発熱体の周囲において空気温度が高いことがわかる。
この後、設定データ生成部15Cは、操作入力部12を用いたオペレータのデータ入力操作により、空調空間30内の目的場所における目標温度を示す目的データ14Eを取得し(ステップ103)、この目的データ14Eと熱流動順解析処理部15Bで算出した分布データ14Dとを比較することにより、空調空間30の空調環境に関する乖離の有無を確認する(ステップ104)。
ここで、分布データ14Dから得られた目的場所における空気温度と、目的データ14Eで指定された目標温度との差が、予め設定されているしきい値温度差以下の温度差である場合、設定データ生成部15Cは、空調環境の乖離なしと判定し(ステップ104:NO)、後述するステップ108へ移行する。
一方、分布データ14Dから得られた目的場所における空気温度と、目的データ14Eで指定された目標温度との差が、予め設定されているしきい値温度差を越える温度差がある場合、設定データ生成部15Cは、空調環境の乖離ありと判定し(ステップ104:YES)、熱流動順解析処理部15Bで算出した分布データ14Dと目的データ14Eとからなる設定データ14Fを生成する(ステップ105)。
これに応じて、熱流動逆解析処理部15Dは、設定データ生成部15Cで生成された設定データ14Fに基づいて、空調空間30の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析することにより、目的データを満足するために必要な、各小空間における風速、風向・温度の変化度合いを示す感度データを算出し、この感度データに基づいて各吹出口における新たな調和空気の吹出速度および吹出温度と、各吸込口から室内空気を吸い込む吸込速度とを含む空調操作量データ14Gを逆算する(ステップ106)。
図12は、感度データの算出例を示すグラフである。ここでは、図11に示した空調空間に関する感度データとして、各小空間における高さ方向(Z軸)における空気の風速に関する感度がカラーバーで表現されている。この例では、空調空間の天井付近で−0.2前後の感度が示されており、下向きの風速が必要であることがわかる。
空調制御部15Eは、熱流動逆解析処理部15Dで算出された空調操作量データ14Gに基づいて、通信I/F部11を介して空調システム21とデータ通信することにより、空調システム21の空調機器を操作制御する(ステップ107)。
この後、入力データ部15Aは、一定期間ごと、あるいは、新たに得られた境界条件データや発熱体データの変化に応じて、空調制御タイミングの到来を判定し(ステップ108)、空調制御タイミングの到来に応じて(ステップ108:YES)、ステップ100へ戻って、新たな空調制御を開始する。
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、空間条件データと、境界条件データおよび発熱体データからなる状況データとに基づいて、熱流動順解析処理部15Bで、空調空間の状況を分布系熱流動解析手法により順解析して、空調空間の温度および気流の分布を示す分布データ14Dを算出し、設定データ生成部15Cで、得られた分布データ14Dと目的場所における目標温度を示す目的データ14Eとからなる設定データ14Fを生成し、この設定データ14Fに基づいて、熱流動逆解析処理部15Dで、空調空間の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析して、目的場所を目標温度とするために必要な、吹出口での新たな調和空気の吹出速度と吹出温度からなる新たな空調操作量を逆算し、得られた新たな空調操作量に基づいて空調システム21を制御するようにしたものである。
これにより、空気調和の対象となる空調空間30のうち、目的場所における温度を目標温度へ制御するために必要な、吹出口における風速、風向・温度を、全系的に安定した状態において算出することができる。このため、シングルループのフィードバック制御系を複数構成した場合と比較して、オフィスなどの大空間のように温度干渉が発生しやすい環境であっても、安定した操作量を得ることができる。また、室内レイアウトが空調制御を優先して設計されることはないことに関連し、従来であれば制御対象にしたい目的場所の温度が計測できないという問題もあり得たが、本実施の形態によれば熱流動逆解析処理において制御対象となる目的場所を任意の場所に設定できるので、大空間における任意の場所を、効率よく所望の空調環境へ制御することも可能となる。したがって、大空間における任意の場所を、効率よく所望の空調環境へ制御することが可能となる。
また、本実施の形態では、データ入力部15Aにおいて、一定時間ごとに、あるいは、境界条件データまたは発熱体データの変化に応じて、空調制御タイミングの到来を判定し、当該空調制御タイミングの到来に応じて、新たな空調制御のための境界条件データおよび発熱体データを新たに生成するようにしたので、空調制御を効率よく繰り返すことができ、目的データ14Eに応じた空調環境を維持することができる。
[第2の実施の形態]
次に、図13を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図13は、第2の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態では、空調空間30に対して空調システム21とともに併設されている位置検知システム22を利用して、空調空間30における発熱体となる人の位置を自動的に判定することにより、人に関する発熱体データを自動生成する場合について説明する。
図13において、位置検知システム22は、人感センサ、RFIDタグ、カメラ画像、赤外線画像、超音波情報などを用いて人の位置を検知するシステムであり、一般的な公知の技術を用いればよい。
空調制御装置10の演算処理部15には、人位置処理部15Fが追加されている。人位置処理部15Fは、通信I/F部11を介して位置検知システム22とデータ通信を行うことにより検知データを取得する機能と、この検知データに基づいて空調空間30内に存在する人の位置を判定し、この判定結果を人位置判定結果14Hとして出力する機能とを有している。
データ入力部15Aは、人位置処理部15Fで判定した空調空間30における人の存在位置に応じて、当該人に関する存在位置と、記憶部14の人データ14Iから取得した発熱量、さらには形状とから、空調空間30に存在する人ごとに発熱体データを生成する機能を有している。この際、記憶部14に、人に関する平均的なデータとして、発熱量、さらには形状を含む人データ14Iを予め記憶しておく。
空調制御装置10におけるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
[第2の実施の形態の動作]
次に、図14を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置の動作について説明する。図14は、第2の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。
第1の実施の形態と比較して、全体的な空調制御処理の手順については、図9と同様であるが、データ入力部15Aにおける発熱体データの生成処理が異なる。
まず、人位置処理部15Fは、通信I/F部11を介して位置検知システム22とデータ通信を行うことにより取得した検知データに基づいて、空調空間30内に存在する人の位置を判定し、その位置x,y,z(3次元成分)を示す人位置判定結果14Hを生成する。
データ入力部15Aは、操作入力部12を用いたオペレータのデータ入力操作により、空調空間30に存在する発熱体に関する発熱体データを生成する。この際、データ入力部15Aは、人位置処理部15Fで得られた人位置判定結果14Hに基づいて、この人位置判定結果14Hに含まれる人の存在位置と、記憶部14の人データ14Iから取得した発熱量、さらには形状とから、空調空間30に存在する人ごとに発熱体データを生成する。
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、記憶部14に、人に関する発熱量を含む人データ14Iを記憶しておき、データ入力部15Aで、入力された空調空間における人の存在位置に応じて、当該人に関する存在位置と、人データ14Iから取得した発熱量から空調空間30に存在する人ごとに発熱体データを生成するようにしたものである。
これにより、位置検知システム22からの検知データに基づいて人位置処理部15Fで判定した人の存在位置をデータ入力部15Aへ入力することにより、人に関する発熱体データを自動生成することができる。したがって、空調空間30内で人が移動する場合でも、人から発する熱量を考慮したきめ細かな空調制御を行うことが可能となる。
なお、位置検知システム22は、位置検知専用のシステムに限定されるものではなく、人の位置が推定できる検知データが得られるシステムであれば他のシステムであってもよい。例えば、照明システムからは、点灯している照明機器の位置を示す検知データを取得できるが、点灯している照明機器の近くには人が存在すると推定できるため、この検知データから人の存在位置を推定できる。また、ネットワーク監視システムで、LANに接続されているパソコンの動作状態を監視することにより、当該パソコンの近くに人が存在することも推定できる。
[第3の実施の形態]
次に、図15を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図15は、第3の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態では、空調空間30に対して空調システム21とともに併設されている照明システム23を利用して、空調空間30における発熱体となる照明機器の位置を自動的に判定することにより、照明機器に関する発熱体データを自動生成する場合について説明する。
図15において、照明システム23は、空調空間30に設置されている各照明機器の動作を制御するシステムであり、一般的な公知の技術を用いればよい。
空調制御装置10の演算処理部15には、照明機器処理部15Gが追加されている。照明機器処理部15Gは、通信I/F部11を介して照明システム23とデータ通信を行うことにより点灯状況データを取得する機能と、この照明データに基づいて空調空間30内で点灯している照明機器を判定し、これら照明機器の識別情報を照明機器点灯判定結果14Jとして出力する機能とを有している。
データ入力部15Aは、照明機器処理部15Gからの照明機器点灯判定結果14Jに含まれる、空調空間30内で点灯している照明機器を示す識別情報に応じて、当該識別情報と対応する記憶部14の照明機器データ14Kから取得した、当該照明機器に関する存在位置および発熱量とから、これら点灯中の照明機器ごとに発熱体データを生成する機能を有している。この際、記憶部14に、個々の照明機器に関するデータとして、配置位置および発熱量、さらには形状を含む照明機器データ14Kを予め記憶しておく。
空調制御装置10におけるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
[第3の実施の形態の動作]
次に、図16を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置の動作について説明する。図16は、第3の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。
第1の実施の形態と比較して、全体的な空調制御処理の手順については、図9と同様であるが、データ入力部15Aにおける発熱体データの生成処理が異なる。
まず、照明機器処理部15Gは、通信I/F部11を介して照明システム23とデータ通信を行うことにより取得した点灯状況データに基づいて、空調空間30内に設置されている照明機器のうち点灯中の照明機器を判定し、その識別情報を示す照明機器点灯判定結果14Jを生成する。
データ入力部15Aは、操作入力部12を用いたオペレータのデータ入力操作により、空調空間30に存在する発熱体に関する発熱体データを生成する。この際、データ入力部15Aは、照明機器処理部15Gで得られた照明機器点灯判定結果14Jに含まれる識別情報に基づいて、記憶部14の照明機器データ14Kから取得した配置位置および発熱量、さらには形状から、点灯中の照明機器ごとに発熱体データを生成する。
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、記憶部14に、空調空間に配置されている照明機器ごとに、当該照明機器に関する配置位置と、点灯時における当該照明機器の発熱量とを含む照明機器データ14Kを記憶しておき、データ入力部15Aで、入力された空調空間における各照明機器の点灯状況に応じて、照明機器データ14Kから取得した配置位置と発熱量とから、点灯中の照明機器ごとに発熱体データを生成するようにしたものである。
これにより、照明システム23からの各照明機器に関する点灯状況データに基づいて照明機器処理部15Gで判定した点灯中の照明機器の識別情報をデータ入力部15Aへ入力することにより、これら照明機器に関する発熱体データを自動生成することができる。したがって、空調空間30内で各照明機器が個別に点消灯制御される場合でも、点灯中の照明機器から発生する熱量を考慮したきめ細かな空調制御を行うことが可能となる。
なお、本実施の形態では、照明機器を例として説明したが、空調空間30に対して空調システム21とともに併設されている消費電力監視システムを利用して、空調空間30における発熱体となる電気機器の位置を自動的に判定することにより、電気機器に関する発熱体データを自動生成するようにしてもよい。
消費電力検知システムは、電力計などを用いて空調空間30に設置されている電気機器での消費電力を電気配線や電気コンセントなどの計測ポイントで検知するシステムであり、一般的な公知の技術を用いればよい。
これにより、照明機器データと同様の電気機器データを記憶部14に予め記憶しておけば、消費電力検知システムで検知した消費電力から動作中の電気機器を推定できることから、これら電気機器に関する発熱体データを自動生成できる。
[第4の実施の形態]
次に、図17を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図17は、第4の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態では、空調空間30に対して空調システム21とともに併設されている入退室管理システム24を利用して、空調空間30における発熱体となる人の在席位置を自動的に判定することにより、人に関する発熱体データを自動生成する場合について説明する。
図17において、入退室管理システム24は、IDカードなどの識別媒体や生体情報を用いて空調空間30に対する人の入退室を管理するシステムであり、一般的な公知の技術を用いればよい。
空調制御装置10の演算処理部15には、入退室処理部15Hが追加されている。この入退室処理部15Hは、通信I/F部11を介して入退室管理システム24とデータ通信を行うことにより入退室データを取得する機能と、この入退室データに基づいて空調空間30内に存在する人の識別情報を判定し、これら識別情報を人識別判定結果14Lとして出力する機能とを有している。
データ入力部15Aは、入退室処理部15Hで判定した空調空間30における人の識別情報に応じて、これら識別情報と対応する記憶部14の在席位置データ14Mからこれら人の在席位置を取得する機能と、この在席位置と記憶部14の人データ14Iから取得した発熱量、さらには形状とから、空調空間30に存在する人ごとに発熱体データを生成する機能を有している。この際、記憶部14に、空調空間30を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データ14Mと、人に関する平均的なデータとして、発熱量、さらには形状を含む人データ14Iとを予め記憶しておく。
空調制御装置10におけるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
[第4の実施の形態の動作]
次に、図18を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置の動作について説明する。図18は、第4の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。
第1の実施の形態と比較して、全体的な空調制御処理の手順については、図9と同様であるが、データ入力部15Aにおける発熱体データの生成処理が異なる。
まず、入退室処理部15Hは、通信I/F部11を介して入退室管理システム24とデータ通信を行うことにより取得した入退室データに基づいて、空調空間30内に存在する人の識別情報を判定し、その人識別判定結果14Lを生成する。
データ入力部15Aは、操作入力部12を用いたオペレータのデータ入力操作により、空調空間30に存在する発熱体に関する発熱体データを生成する。
この際、データ入力部15Aは、入退室処理部15Hで得られた人識別判定結果14Lに含まれる識別情報ごとに、当該識別情報と対応する記憶部14の在席位置データ14Mから在席位置をそれぞれ取得し、この在席情報と、記憶部14の人データ14Iから取得した発熱量、さらには形状とから、空調空間30内に存在する人ごとに発熱体データを生成する。
[第4の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、記憶部14に、空調空間30を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データ14Mと、人に関する発熱量を含む人データ14Iとを記憶しておき、データ入力部15Aで、入力された空調空間30に存在する人の識別情報に基づいて、これら識別情報に対応する在席位置データ14Mから当該人の在席位置を取得し、この在席位置と、人データ14Iから取得した発熱量から、空調空間30に存在する人ごとに発熱体データを生成するようにしたものである。
これにより、入退室管理システム24からの入退室データに基づいて入退室処理部15Hで判定した、空調空間30内に存在する各人の識別情報をデータ入力部15Aへ入力することにより、人に関する発熱体データを自動生成することができる。したがって、空調空間30に対して人が入退室する場合でも、人から発する熱量を考慮したきめ細かな空調制御を行うことが可能となる。
[第5の実施の形態]
次に、図19を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図19は、第5の実施の形態にかかる空調制御装置の空調制御処理を示すフロー図である。
本実施の形態では、第5の実施の形態と同様に、空調空間30に対して空調システム21とともに併設されている入退室管理システム24を利用して、空調空間30における発熱体となる人の在席位置を自動的に判定することにより、当該在席位置における空調環境を適切な状態に自動制御する場合について説明する。
空調制御装置10の演算処理部15には、第4の実施の形態と同様に、入退室処理部15Hが設けられている。この入退室処理部15Hは、通信I/F部11を介して入退室管理システム24とデータ通信を行うことにより入退室データを取得する機能と、この入退室データに基づいて空調空間30に入室した人の識別情報を判定し、これら識別情報を人識別判定結果14Lとして出力する機能とを有している。
設定データ生成部15Cは、入退室処理部15Hで得られた人識別判定結果14Lに基づいて、人識別判定結果14Lに含まれる識別情報と対応する記憶部14の在席位置データ14Mから、空調空間30へ入室した人の在席位置を取得する機能と、この在席位置を目的場所とするとともに、当該目的場所あるいは空調空間30に共通して予め記憶部14に設定されている設定温度、例えば人が作業するのに適正な温度を、目標温度とする目的データ14Eを生成する機能を有している。なお、適正な温度は、作業内容に応じてオペレータが適宜決定すればよい。
空調制御装置10におけるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
[第5の実施の形態の動作]
次に、図19を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置の動作について説明する。
第1の実施の形態と比較して、全体的な空調制御処理の手順については、図9と同様であるが、設定データ生成部15Cにおける設定データの生成処理が異なる。
まず、入退室処理部15Hは、通信I/F部11を介して入退室管理システム24とデータ通信を行うことにより取得した入退室データに基づいて、空調空間30へ入室した人の識別情報を判定し、その人識別判定結果14Lを生成する。
設定データ生成部15Cは、入退室処理部15Hで得られた人識別判定結果14Lに含まれる識別情報に基づいて、当該識別情報と対応する記憶部14の在席位置データ14Mから、当該入室した人の在席位置を取得し、この在席位置を目的場所とするとともに、記憶部14から読み出した設定温度を目標温度とする目的データ14Eを生成し、この目的データ14Eと分布データ14Dとから設定データ14Fを生成する。
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、記憶部14に、空調空間30を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データ14Mを記憶しておき、データ入力部15Aで、空調空間30に対する人の入室に応じて入力される当該人の識別情報に基づいて、当該識別情報と対応する在席位置データ14Mから当該人の在席位置を取得し、この在席位置を目的場所とするとともに予め設定されている設定温度を目標温度とする目的データ14Eを生成し、当該目的データ14Eと分布データ14Dとから設定データ14Fを生成するようにしたものである。
これにより、入退室管理システム24からの入退室データに基づいて入退室処理部15Hで判定した、空調空間30へ入室した人の識別情報をデータ入力部15Aへ入力することにより、入室した人の在席位置を設定温度とするための目的データ14E、さらには設定データ14Fを自動生成することができる。したがって、空調空間30に対して人が入室した場合でも、その人の在席位置を自動的に設定温度へ制御することが可能となる。
また、本実施の形態では、入室した人から発する熱量を考慮しない場合を例として説明したが、前述した第4の実施の形態を併用することにより、入室した人に関する発熱体データを自動生成することができるため、入室した人から発する熱量を考慮した、よりきめ細かな空調制御を行うことが可能となる。
また、本実施の形態では、入退室管理システム24から得られた入退室データに基づいて、入室した人の在席位置を適正な空調環境へ自動制御する場合を例として説明したが、人の入室に関するデータは、入退室管理システム24に限定されるものではない。例えば、空調空間30を利用する各人のスケジュールを管理するスケジュール管理システムから、人が在席する位置と、在席位置へ着く到着時刻とを含むスケジュール情報を取得し、当該在席位置からなる目的場所を自動的に設定温度へ制御するようにしてもよい。
この際、スケジュール情報に含まれる到着時刻から、空調制御を開始してもよいが、空調空間30には空調制御の遅れが存在することから、この到着時刻に当該在席位置が設定温度となるよう、到着時刻から制御所要時間だけ先に空調制御を開始してもよい。
また、本実施の形態では、空調空間30内において、空調空間30を利用する利用者ごとに在席位置が対応付けられている場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、会議室や応接室などのパブリックな空調空間では、利用者は限定されていない。しかし、このような空調空間を利用する際には、空調空間において人が存在する場所は、椅子や机の配置位置で特定することができる。このため、このような会議室や応接室などの空調空間ごとに椅子の位置を示すレイアウト情報を予め記憶部で記憶しておくことにより、空調制御における目的場所を特定することができる。
また、本実施の形態では、発熱体データとして、発熱体の発熱量を予め入力する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。発熱体の発熱量は、発熱体の表面温度から算出できるので、発熱体データとして、発熱体の表面温度を予め入力するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、空調空間30における発熱要因として、人、照明機器、パソコン、コピー機、プリンタなど電気機器からなる発熱体を想定したが、このほか、隣室や外気からの貫流熱も空調空間30へ侵入する。したがって、このような空調空間30へ侵入する侵入熱に関する侵入熱データを、データ入力部15Aで入力するようにしてもよい。また、これら侵入熱は、空調空間30の壁や窓からの発熱と捉えることも可能であり、発熱体データの一部としてデータ入力部15Aで入力するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、目的位置における目標温度を目的データとして設定データ生成部15Cで入力して、温度を目標の状態量とする場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。目的位置における風速や湿度を目的データとして入力することにより、これら風速や湿度を目標の状態量としてもよい。
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
10…空調制御装置、11…通信I/F部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…空間条件データ、14B…空調制御量データ、14C…状況データ、14D…分布データ、14E…目的データ、14F…設定データ、14G…空調制御量データ、14H…人位置判定結果、14I…人データ、14J…照明機器点灯判定結果、14K…照明機器データ、14L…人識別判定結果、14M…在席位置データ、14P…プログラム、15…演算処理部、15A…データ入力部、15B…熱流動順解析処理部、15C…設定データ生成部、15D…熱流動逆解析処理部、15E…空調制御部、15F…人位置処理部、15G…照明機器処理部、15H…入退室処理部、20…通信回線、21…空調システム、22…位置検知システム、23…照明システム、24…入退室管理システム。

Claims (12)

  1. 空調空間の空気調和を行う空調システムを制御することにより、当該空調空間内の目的場所における空調環境を制御する空調制御装置であって、
    前記空調空間に関する位置および形状と、前記空調システムで生成された調和空気の吹出口に関する位置および形状とを示す空間条件データを記憶する記憶部と、
    前記吹出口から吹き出す調和空気の吹出速度および吹出温度を示す境界条件データを入力するとともに、前記空調空間に存在する発熱体に関する位置および発熱量を示す発熱体データを入力するデータ入力部と、
    前記空間条件データと、前記境界条件データおよび前記発熱体データからなる状況データとに基づいて前記空調空間の状況を分布系熱流動解析手法により順解析することにより、前記空調空間の温度および気流の分布を示す分布データを算出する熱流動順解析処理部と、
    前記分布データと前記目的場所における目標温度を示す目的データとからなる設定データを生成する設定データ生成部と、
    前記設定データに基づいて前記空調空間の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析することにより、前記目的場所を前記目標温度とするために必要な、前記吹出口での新たな調和空気の吹出速度と吹出温度からなる新たな空調操作量を逆算する熱流動逆解析処理部と、
    前記新たな空調操作量に基づいて前記空調システムを制御する空調制御部と
    を備えることを特徴とする空調制御装置。
  2. 請求項1に記載の空調制御装置であって、
    前記データ入力部は、一定時間ごとに、あるいは、前記境界条件データまたは前記発熱体データの変化に応じて、空調制御タイミングの到来を判定し、当該空調制御タイミングの到来に応じて、前記空調空間に対する新たな空調制御のための前記境界条件データおよび前記発熱体データを新たに生成することを特徴とする空調制御装置。
  3. 請求項1に記載の空調制御装置において、
    前記記憶部は、人に関する発熱量を含む人データを記憶し、
    前記データ入力部は、入力された前記空調空間における人の存在位置に基づいて、当該人に関する存在位置と、前記人データから取得した発熱量とから、前記空調空間に存在する前記人ごとに前記発熱体データを生成する
    ことを特徴とする空調制御装置。
  4. 請求項1に記載の空調制御装置において、
    前記記憶部は、前記空調空間に配置されている照明機器ごとに、当該照明機器に関する配置位置と、点灯時における当該照明機器の発熱量とを含む照明機器データを記憶し、
    前記データ入力部は、入力された前記照明機器ごとの点灯状況に基づいて、前記照明機器のうち点灯中の照明機器に関する前記照明機器データから取得した、当該照明機器の配置位置と発熱量とから、点灯中の前記照明機器ごとに前記発熱体データを生成する
    ことを特徴とする空調制御装置。
  5. 請求項1に記載の空調制御装置において、
    前記記憶部は、前記空調空間を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データと、人に関する発熱量を含む人データとを記憶し、
    前記データ入力部は、前記空調空間に対する人の入退室に応じて入力される、当該空調空間に存在する人の識別情報に基づいて、これら識別情報に対応する前記在席位置データから当該人の在席位置を取得し、この在席位置と、前記人データから取得した発熱量とから、前記空調空間に存在する前記人ごとに前記発熱体データを生成する
    ことを特徴とする空調制御装置。
  6. 請求項1に記載の空調制御装置において、
    前記記憶部は、前記空調空間を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データを記憶し、
    前記設定データ生成部は、前記空調空間に対する人の入室に応じて入力される当該人の識別情報に基づいて、当該識別情報と対応する前記在席位置データから当該人の在席位置を取得し、この在席位置を前記目的場所とするとともに予め設定されている設定温度を前記目標温度とする目的データを生成し、当該目的データと前記分布データとから前記設定データを生成する
    ことを特徴とする空調制御装置。
  7. 空調空間の空気調和を行う空調システムを制御することにより、当該空調空間内の目的場所における空調環境を制御する空調制御装置で用いられる空調制御方法であって、
    記憶部が、前記空調空間に関する位置および形状と、前記空調システムで生成された調和空気の吹出口に関する位置および形状とを示す空間条件データを記憶する記憶ステップと、
    データ入力部が、前記吹出口から吹き出す調和空気の吹出速度および吹出温度を示す境界条件データを入力するとともに、前記空調空間に存在する発熱体に関する位置および発熱量を示す発熱体データを入力するデータ入力ステップと、
    熱流動順解析処理部が、前記空間条件データと、前記境界条件データおよび前記発熱体データからなる状況データとに基づいて前記空調空間の状況を分布系熱流動解析手法により順解析することにより、前記空調空間の温度および気流の分布を示す分布データを算出する熱流動順解析処理ステップと、
    設定データ生成部が、前記分布データと前記目的場所における目標温度を示す目的データとからなる設定データを生成する設定データ生成ステップと、
    熱流動逆解析処理部が、前記設定データに基づいて前記空調空間の温度および気流の分布を分布系熱流動解析手法により逆解析することにより、前記目的場所を前記目標温度とするために必要な、前記吹出口での新たな調和空気の吹出速度と吹出温度からなる新たな空調操作量を逆算する熱流動逆解析処理ステップと、
    空調制御部が、前記新たな空調操作量に基づいて前記空調システムを制御する空調制御ステップと
    を備えることを特徴とする空調制御方法。
  8. 請求項7に記載の空調制御方法であって、
    前記データ入力ステップは、一定時間ごとに、あるいは、前記境界条件データまたは前記発熱体データの変化に応じて、空調制御タイミングの到来を判定し、当該空調制御タイミングの到来に応じて、前記空調空間に対する新たな空調制御のための前記境界条件データおよび前記発熱体データを新たに生成するステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
  9. 請求項7に記載の空調制御方法において、
    前記記憶ステップは、人に関する発熱量を含む人データを記憶するステップを含み、
    前記データ入力ステップは、入力された前記空調空間における人の存在位置に基づいて、当該人に関する存在位置と、前記人データから取得した発熱量とから、前記空調空間に存在する前記人ごとに前記発熱体データを生成するステップを含む
    ことを特徴とする空調制御方法。
  10. 請求項7に記載の空調制御方法において、
    前記記憶ステップは、前記空調空間に配置されている照明機器ごとに、当該照明機器に関する配置位置と、点灯時における当該照明機器の発熱量とを含む照明機器データを記憶するステップを含み、
    前記データ入力ステップは、入力された前記照明機器ごとの点灯状況に基づいて、前記照明機器のうち点灯中の照明機器に関する前記照明機器データから取得した、当該照明機器の配置位置と発熱量とから、点灯中の前記照明機器ごとに前記発熱体データを生成するステップを含む
    ことを特徴とする空調制御方法。
  11. 請求項7に記載の空調制御方法において、
    前記記憶ステップは、前記空調空間を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データと、人に関する発熱量を含む人データとを記憶するステップを含み、
    前記データ入力ステップは、前記空調空間に対する人の入退室に応じて入力される、当該空調空間に存在する人の識別情報に基づいて、これら識別情報に対応する前記在席位置データから当該人の在席位置を取得し、この在席位置と、前記人データから取得した発熱量とから、前記空調空間に存在する前記人ごとに前記発熱体データを生成するステップを含む
    ことを特徴とする空調制御方法。
  12. 請求項7に記載の空調制御方法において、
    前記記憶ステップは、前記空調空間を利用する各人に固有の識別情報ごとに当該人の在席位置を示す在席位置データを記憶するステップを含み、
    前記設定データ生成ステップは、前記空調空間に対する人の入室に応じて入力される当該人の識別情報に基づいて、当該識別情報と対応する前記在席位置データから当該人の在席位置を取得し、この在席位置を前記目的場所とするとともに予め設定されている設定温度を前記目標温度とする目的データを生成し、当該目的データと前記分布データとから前記設定データを生成するステップを含む
    ことを特徴とする空調制御方法。
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