JP2011084796A - Cu合金条およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】挿入力が小さく、かつ、高温で使用しても接触抵抗の増大しないコネクタに使用されるCu合金条を実現する。
【解決手段】Cu合金条の母材であるCu合金1の上に、Ni2/Cu3/Sn4の、3層めっきを施す。その後リフローして表面までCu-Sn金属間化合物層5を形成する。その後、Cu-Sn金属間化合物層5の表面にSn4を薄くめっきする。このようにして、形成されたCu-Sn金属間化合物層5の表面の凹凸は小さくRmaxは0.5μm以下である。また、Cu-Sn金属間化合物層の表面に形成するSn層4の膜厚は0.3μm以上0.8μmである。このような構成のCu合金条をコネクタに使用することによって、コネクタの挿入力が小さく、かつ、高温で使用しても接触抵抗の増大が無いコネクタを実現することが出来る。
【選択図】図1
【解決手段】Cu合金条の母材であるCu合金1の上に、Ni2/Cu3/Sn4の、3層めっきを施す。その後リフローして表面までCu-Sn金属間化合物層5を形成する。その後、Cu-Sn金属間化合物層5の表面にSn4を薄くめっきする。このようにして、形成されたCu-Sn金属間化合物層5の表面の凹凸は小さくRmaxは0.5μm以下である。また、Cu-Sn金属間化合物層の表面に形成するSn層4の膜厚は0.3μm以上0.8μmである。このような構成のCu合金条をコネクタに使用することによって、コネクタの挿入力が小さく、かつ、高温で使用しても接触抵抗の増大が無いコネクタを実現することが出来る。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車・民生機器等の電気配線の接続に使用されるかん合端子を有するコネクタに使用される金属条に係り、特に、コネクタに使用された場合において、低い挿入力を可能とし、かつ、高温環境下においても接触抵抗が大きくならないコネクタ用金属条に関する。
自動車・民生機器等の電気配線の接続に使用されるコネクタ用端子には、低レベルの信号電圧および電流に対して高い電気的接続の信頼性が求められる重要な電気回路の場合などを除き、Snめっき(はんだめっき等のSn合金めっきを含む)を施したCuまたはCu合金が用いられている。
SnめっきはAuめっきや他の表面処理に比べて低コストである。また、Snはビッカース硬度Hv≒30というように軟らかく、表面に薄く安定な酸化皮膜があり、これは少しの力で破壊され、摺動動作を行うとSn自体が有する5mΩ以下と、低い接触抵抗値を示す。このような特徴からSnめっきは多く使われており、中でも、近年の環境負荷物質規制への対応から鉛を含まないSnめっき、特にウィスカの発生による回路ショート障害の報告のほとんどないリフローSnめっきが主流となっている。
一方、Snはその軟らかさから、コネクタの接点においてオスとメスを凝着させるガスタイト(気密)構造となるため、金めっき等で構成されるコネクタに比べ、コネクタの挿入力が高い。近年、電気・電子部品の回路数増大により、回路に電気信号を供給するコネクタのピン数が増加しており、これに伴うコネクタ挿入力の増大が問題となっている。
例えば、自動車の組立ラインでは、コネクタを嵌合させる作業は、現在ほとんど人力で行われている。コネクタの挿入力が大きくなると、組立ラインで作業者に負担がかかり、作業効率の低下に直結する。このことから、Snめっき材の挿入力の低減が強く望まれている。リフローによってめっき層内部に形成される化合物層(例えばCu-Sn化合物)は硬いため、この化合物層の存在により、挿入力の低減が可能となる。
挿入力低減の観点からは、化合物層は表面に露出していても最表面のSn層の直下に存在していてもよいが、前者の場合、高温で放置すると表面に露出したCu-Sn化合物のCuが酸化して酸化Cuができてしまうため、接触抵抗が非常に大きくなってしまう。すなわち高耐熱性を有さない。
自動車においては安全性、環境性、快適性の追求から電装化が急速に進行している。これに伴い、回路数が増加するため、コネクタ用端子などの接続部品は省スペース化のためにエンジンルーム内への搭載が可能な高耐熱性が求められるようになってきている。
したがって、低挿入力と高耐熱性を両立させるためには、後者のようにCu-Sn化合物を表面に露出させることなく、Cu-Sn化合物の上のSn層を薄く形成する必要がある。一方、Cu-Sn化合物の上のSn層の厚さが厚いと、Snは軟らかいので、コネクタの挿入力が大きくなってしまう。
「特許文献1」には、Cu合金条の表面にNi層、Cu層、Sn層をこの順に逐次、めっきにより形成後、リフローして、表面層の構成をNi層/金属間化合物層/SnもしくはSn合金層とするめっき材料とその製造方法、それを用いた電気・電子部品が提案されている。また、「特許文献2」および「特許文献3」には、Cuベース母材の上に拡散バリア層を介して、その上にCu6Sn5を含む金属間化合物が形成されているCuベース材料が記載されている。
「特許文献1」に記載の構成では、リフローにより、Ni層とSnまたはSn合金層の中間にCu-Sn化合物またはCu-Ni-Sn化合物層が形成される。いずれの化合物もSnの粒界に沿ってCuが拡散することによって形成されるため、化合物層の凹凸は大きく、化合物層の一部が表面に露出しやすい。化合物層が表面に露出すると、表面の耐食性を低下させたり、高温使用時の接触抵抗が著しく高くなるという問題点がある。
また化合物層が表面に露出しないように、元々のSnめっき厚さを厚くすると、最表面SnまたはSn合金層の平均厚さが厚くなってしまい、コネクタ用部材として使用する際のコネクタの挿入力が大きくなってしまうという問題がある。
「特許文献2」および「特許文献3」では、金属間化合物としてCu6Sn5層が形成された構造およびCu6Sn5を含む群から選ばれた金属間化合物層が形成された構造が開示されている。「特許文献2」の場合は、Cu合金条の表面に、NiまたはNi合金層/Cu層をめっきにより形成した後、NiまたはCo層/Cu層/Sn層を形成し、その後リフローすることによってCu6Sn5層を析出させている。「特許文献3」の場合は、Cu合金条の表面に、NiまたはNi合金層/Cu層をめっきにより形成した後、Cu-Ni合金層/Sn層を形成し、その後リフローすることによってCu6Sn5層を析出させている。
Cu6Sn5層はSn層とCuの反応により形成されるが、Snの粒界に沿ってCuが拡散することによって形成されるため、Cu6Sn5層の凹凸は大きく、Cu6Sn5層の一部が表面に露出しやすい。Cu6Sn5層の一部が表面に露出すると、表面の耐食性を低下させる。また、高温で使用した場合、表面に露出したCu-Sn化合物のCuが酸化して酸化Cuができてしまうため、接触抵抗が著しく増大してしまう。すなわち高耐熱性を有さない。また化合物層が表面に露出しないように、元々のSnめっき厚さを厚くすると、最表面のSnまたはSn合金層の平均厚さが厚くなってしまい、コネクタ用部材として使用する際のコネクタの挿入力が高くなってしまうという問題点がある。
本発明において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
本発明は、Cu合金の表面にNi層が形成され、その上にCu-SnもしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層が形成され、さらにその上にSnもしくはSn-Cu共晶合金層からなるリフローSnめっきが形成されたCu合金条において、前記Cu-Sn金属間化合物層もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層の表面粗さRmaxが0.5μm以下であるCu合金条を提供するものである。ここで、RmaxはCu合金条の表面からエッチング等によってSnを除去し、その後、Cu-Sn金属間化合物層もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層の表面粗さを表面粗さ計で測定する。なお、Rmaxは図12に示すように、表面の凹凸の山と谷の差である。
本発明はまた、前記SnもしくはSn-Cu共晶合金層の平均厚さが0.8μm以下でかつ、前記Cu-SnもしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層の表面露出がないCu合金条を提供するものである。SnもしくはSn-Cu共晶合金層の平均厚さは、電解式膜厚計で測定する。電解式膜厚計は、Cu合金条の表面のSnをアノード溶解(電気めっきの逆)によって除去する時に流した電気量からSnの平均膜厚を出すものである。なお、本明細書で各金属層あるいは合金層の平均膜厚という場合は、電解式膜厚計で測定したものとする。
また、本発明のCu合金条は、表面に前記SnもしくはSn-Cu共晶合金層が形成されるが、Sn-Cu共晶合金層が形成される場合も、Sn-Cu共晶合金層の表面側の大部分がSn層となるような構成をとる場合も多い。すなわち、Sn-Cu共晶合金層のCu成分は、Sn-Cu共晶合金層の下層に形成されているCu-Snとの界面に集中する場合が多いからである。このような場合、表面には純Snのみが形成されているように見える。
さらに、前記SnもしくはSn-Cu共晶合金層の平均厚さは0.8μm以下であるが、0.3μm以上であることがより好ましい。すなわち、SnもしくはSn-Cu共晶合金層があまり薄いと、SnもしくはSn-Cu共晶合金層による、Cu-SnもしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層の酸素からの保護効果が十分でなくなる恐れがある。
本発明の別な面から見た特徴は、Cu合金の上に、下から順番にNi層、Cu層、第1のSn層をめっきで形成した後、リフローし、その後、再度、表面に第2のSn層をめっきで形成する、Cu合金条の製造方法を提供するものである。
この場合、前記Cu層の平均厚さ/前記第1のSn層の平均厚さの比が、0.512以上、0.625以下であると、Cu-SnもしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層の表面粗さを小さく抑えることが出来る。
さらに、前記表面のSnもしくはSn-Cu共晶合金層の平均厚さが0.3μm以上、0.8μm以下とすることによって、高温で使用してもコネクタの表面の酸化を抑えてコネクタの接触抵抗を小さく保ち、かつ、コネクタの挿入力を小さく保つことが出来る。
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば次のとおりである。すなわち、本発明によれば、Cu合金条の最表面のSnもしくはSn-Cu共晶合金層の厚さを0.8μm以下と薄くする。但し、Cu-SnもしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層が表面に露出させないようにする。これによって、Cu合金条の動摩擦係数を0.35以下と低くすることができ、その結果、本発明のCu合金条をコネクタ用部材として使用する際のコネクタの挿入力を低く抑えることができる。
また、SnもしくはSn-Cu共晶合金層の厚さを0.3μm以上とすることによって、Cu-SnもしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層の表面露出がおきにくく、これらの金属間化合物中のCuが酸化することがなく、接触抵抗が著しく高くなってしまうようなことがおきない。
さらに、Cu合金条の最表面のSnもしくはSn-Cu共晶合金層の厚さを0.3μm以上とすることにより、Cu合金条の製造直後のみでなく、高温使用時にもCu-Sn金属間化合物層もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層が表面に露出することを防止することが可能となる。これにより、高温使用時においても、Cu-SnもしくはCu-Ni-Sn金属間化合物中のCuが酸化することがなく、接触抵抗が著しく高くなってしまうようなことがおきない。より具体的には荷重1.0N時の接触抵抗を0.7mΩ以下とすることが可能となる。すなわち、本発明によるCu合金条は高耐熱性を有する。
本発明によれば、Cu合金の表面に最初に形成するCu層の平均厚さ/Sn層の平均厚さの比を、0.512以上、0.625以下とすることにより、リフロー後、最表面にSnもしくはSn-Cu共晶合金層がほとんど残らないように、ほぼ全部を化合物化させることが可能となる。これによりCu-Sn金属間化合物層もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物が表面位置までほぼ到達するため、これらの金属間化合物の表面粗さを非常に小さくすることができる。より具体的にはRmaxで0.5μm以下とすることが可能となる。Rmaxは図12に示すように粗面の山と谷の差であるから、第2回目にめっきするSnの膜厚を0.3μm以上とすることによって、Cu-Sn金属間化合物もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物が表面に露出することを防止することが出来る。
このように、本発明によれば、最表面のSnもしくはSn-Cu共晶合金層の厚さを高精度に薄く制御することが可能となるため、高耐熱性と低挿入力性を両立させた、コネクタに使用されるCu合金条を形成することができる。
本発明のCu合金条の製造方法を図1に示す。Cu合金母材1(金属条)の両面に電気めっきにより、Ni層2、Cu層3、Sn層4をこの順番に形成する。なお、図1では説明のために、Cu合金条の片側のみ描いている。
この時、Cu層3/Sn層4の厚さの比を0.512以上0.625以下とする。これにより、リフロー(熱処理)後、Cu-Sn化合物層5がほぼ最表面まで形成され、Sn-Cu共晶合金(Sn-0.7Cu)層6はほとんど残らない。この時に形成されるCu-Sn化合物層は通常Cu6Sn5が主体である。また、Sn-Cu共晶合金はSn-0.7Cu合金であって、Snの中にCuが0.7%含まれた合金であり、ほとんどの成分がSnである。
リフロー(熱処理)はSnの融点232℃よりも高い温度で実施される。具体的には240℃以上が望ましく、より望ましくは240〜260℃である。リフロー温度での保持時間は1min以上が望ましい。表面まで全化合物化させるため、より望ましくは3min以上である。
リフロー(熱処理)後は、Cu-Sn化合物層5の上にSnベース層が若干残る場合があるが、この場合はSn-0.7Cu層6となる。すなわち、リフローによってSn層4が溶融し、溶融したSn層4がCu層3と反応することにより、元々のCu層3、Sn層4部分全体が溶融(Ni層2の一部も溶融する場合あり)する。
リフロー後の冷却(凝固)時にNi層2の上にCu-Sn化合物層5が析出し、残部は、Sn-0.7Cu共晶相となる。これは、溶融したときに、一旦Cu層3がSn層4に溶け込むためである。またSn-0.7Cu層6が非常に薄い場合、Sn-0.7Cu共晶相中のCuがほとんどCu-Sn化合物層5の直上、すなわち、境界部に集まる場合もあり、この場合は、Sn-0.7Cu層6の最表面はSn-0.7Cuではなく、純Sn層となる。
また通常Cu-Sn化合物層5の大部分はCu6Sn5相となるが、Ni層2とCu6Sn5相の間にわずかであるが、Cu3SnもしくはNi-Cu-Sn化合物が析出する。リフロー前の表面位置までCu-Sn化合物層5が成長、到達するため、Cu-Sn化合物層5の表面はほぼフラットになる。結果としてCu-Sn化合物層5のRmaxは0.5μm以下となる。
次に表面にさらにSnめっきを行いSn層4を形成する。このSn層4の厚さは0.8μm以下が望ましい。0.8μmより厚いと、本発明のCu合金条をコネクタ用部材として使用する際のコネクタの挿入力が高くなってしまう。
またこのSn層4の厚さは0.3μm以上が望ましい。0.3μm未満であると高温使用時にCu-Sn化合物層5が成長して一部が表面に露出してしまう。これにより、Cu-Sn化合物層5中のCuが酸化し、接触抵抗が著しく高くなってしまう。より具体的には荷重1.0N時の接触抵抗が0.7mΩより高くなってしまう。すなわち、Cu合金条が高耐熱性を有さなくなる。なお、荷重1.0N時の接触抵抗が0.7mΩという値は、Cu合金条をコネクタに使用した場合の許容できる接触抵抗である。
リフロー後に再度Snめっきを行い、その後Snが溶融する温度以上での熱処理を行わないため、最表面は純Sn層となる。また再Snめっき厚さを0.3μm以上とすることにより、高温使用時にもCu-Sn化合物層5の一部が表面に露出するようなことがない。
Ni層2の厚さは0.4μm以上が望ましい。これにより、リフロー(熱処理)後および高温使用時にNi層2が消失しない。Ni層2の厚さが0.4μm未満と薄いと、Cu-Sn化合物層5の薄い部分で、リフロー時や高温使用時にSnとNiの固相拡散によりNi層2が食われ、Ni層2が消失し、Cu合金母材1とSn-0.7Cu層6(場合によっては純Sn層)の反応がおきて、金属間化合物相が異常成長して化合物層が表面に露出し、高温使用時の接触抵抗を著しく高くしてしまう。
さらにNi層2、Cu-Sn層3、Sn層4の厚さの合計、すなわち、めっき総厚は、2.5μm以下が望ましい。なお、この場合の総厚が2.5μmとは2回目のSnめっきを行った後の状態をいう。総厚が2.5μmよりも厚いと、コネクタ用の部材として、折り曲げ加工する際に、表面層がひび割れしたり、ひどい場合には剥離してしまう。コネクタ用途なので、Cu合金母材1には、低電気抵抗、バネ性の観点から、リン青銅、コルソン合金のようなCu合金が望ましいが、他のCu合金材料でもよい。
従来のCu合金条の製造方法の一例を図2に示す。従来のCu合金条の場合、通常、最初のCu層3/Sn層4の厚さの比を0.50より小さくして、リフロー(熱処理)後に最表面にSn-0.7Cu層6が残ることを狙うものであり、リフロー(熱処理)後にさらにめっきを行うようなことはしない。
図2では、リフローにより金属間化合物層としてCu-Ni-Sn化合物層7が形成される場合を図示したが、形成される金属間化合物がCu-Ni-Sn化合物でもCu-Sn化合物でも、Snの粒界に沿ってCuが拡散することによって形成されるため、化合物層の凹凸は大きく、化合物層の一部が表面に露出しやすい。
Cu-Sn化合物層あるいはCu-Ni-Sn化合物層が表面に露出すると、表面の耐食性を低下させたり、化合物層中のCuが酸化し、高温使用時の接触抵抗が著しく高くなってしまう。図2はリフロー後に化合物層が表面に露出する場合であるが、化合物層の凹凸が大きいと、リフロー後に化合物層が表面に露出しなくても、高温使用時に化合物層が表面に露出しやすい。
従来のCu合金条の製造方法の他の例を図3に示す。図3の例はリフロー後および高温使用時にも化合物層が表面に露出しないように、元々のSnめっき厚さを厚くしたものであるが、この場合、最表面のSnまたはSn-0.7Cu共晶合金層の平均厚さが厚くなってしまい、コネクタ用部材として使用する際のコネクタの挿入力が高くなってしまう。また、Cu合金条の総厚を2.5μm以下に抑えることがむつかしくなり、Cu合金条のひび割れ等の問題が生ずる。
Cu合金母材としてコルソン合金を用い、種々のNiめっき厚さ、Cuめっき厚さ、Snめっき厚さの組合せでめっき層を形成した後、Snめっきが溶融する温度でリフロー(熱処理)を行い、その後さらに第2のSnめっきを行ってCu合金条を作製した。このCu合金条の動摩擦係数および150℃、1000hの条件で高温放置を行った後の接触抵抗を測定した。
以上のようなめっき層の構成を変化させて第1実施例から第10実施例までのCu合金条を作成し、種々の特性を測定した。また、また、比較例として、第1比較例から第4比較例までのCu合金条を作成し、実施例と同様な特性を測定した。これらの結果を図4にまとめて記載した。
第1実施例から第10実施例についてまず説明する。第1実施例から第10実施例において、Niめっき厚さを0.40〜0.64μmの範囲で変化させ、Cuめっき厚さ/Snめっき厚さ比を0.512〜0.625の範囲で変化させ、種々の組合せでめっき層を形成した。その後、Snめっきが溶融する温度240℃で3minリフロー(熱処理)を行い、その後、再度Snめっきを0.30〜0.80μm形成してCu合金条を作製した。めっき層の総厚は2.00μm〜2.50μmである。
このCu合金条の動摩擦係数および150℃、1000hの条件で高温放置を行った後の接触抵抗を測定した結果を図4に比較例と共に示す。接触抵抗の測定は荷重1.0Nの条件で行った。
第1実施例のめっき後の断面写真を図5に示す。Cu合金の上にNiめっき層、その上にCuめっき層、さらにその上にSnめっき層がある。めっき後の固相の状態でも、SnへのCuの拡散は速いため、Cu層の上にわずかではあるがCu6Sn5相が析出している。
第1実施例のリフロー後の断面写真を図6に示す。Cu6Sn5層がほぼ最表面まで形成されており、ほぼフラットになっている。表面に少しだけ残存しているのはSn-0.7Cu層である。Ni層とCu6Sn5層の間にはわずかであるがCu3Sn層が析出している。
第1実施例の再Snめっき後の断面写真を図7に示す。最表面にSn層が薄く形成されている。そして、Cu6Sn5層の表面露出はない。再めっきSn層とCu6Sn5層、および、写真では見えないが残存Sn-0.7Cu層との密着性も良好であった。第1実施例の高温放置後の断面写真を図10に示す。最表面のSn層は残存しており、化合物層の表面露出はなかった。また、Ni層も残存していた。
他の実施例でもリフロー後に最表面Sn層はほほ消失し、Cu6Sn5化合物層がほぼ最表面まで形成されていた。また、再SnめっきしたCu合金条に対し、高温放置試験をおこなったが、Ni層は高温放置後まで残存していた。いずれの実施例も動摩擦係数は0.28〜0.35で、0.35以下と低かった。また高温放置後の接触抵抗は0.60〜0.67mΩで、0.7mΩ以下と低かった。
次に第1比較例と第2比較例について説明する。第1比較例は、Niめっき厚さ0.5μm、Cuめっき厚さ/Snめっき厚さ比0.14、めっき層総厚2.1μmで、再Snめっきなしである。また、第2比較例2は、Niめっき厚さ0.5μm、Cuめっき厚さ/Snめっき厚さ比0.11、めっき層総厚2.5μmで、再Snめっきなしである。
次に第1比較例と第2比較例について説明する。第1比較例は、Niめっき厚さ0.5μm、Cuめっき厚さ/Snめっき厚さ比0.14、めっき層総厚2.1μmで、再Snめっきなしである。また、第2比較例2は、Niめっき厚さ0.5μm、Cuめっき厚さ/Snめっき厚さ比0.11、めっき層総厚2.5μmで、再Snめっきなしである。
第1比較例および第2比較例のCu合金条の動摩擦係数および150℃、1000hの条件で高温放置を行った後の接触抵抗を測定した結果を図4に示す。第1実施例では、高温放置後の接触抵抗が0.92mΩというように、0.7mΩを超えており、第2実施例では、動摩擦係数が0.41というように、0.35を超えている。
第1比較例のリフロー後の断面写真を図8に示す。アスペクト比の高い、すなわち、細長いCu-Ni-Sn化合物層の一部が表面まで到達し、露出してしまっている。残部はSn-0.7Cu層となっている。
第2比較例のリフロー後の断面写真を図9に示す。Cu-Ni-Sn化合物層のアスペクト比は高いが、元々のSnめっき厚さが厚いため、最表面にSn-0.7Cu層が残存している。しかし、Sn-0.7Cu層の平均厚さは約3μmとかなり厚くなっている。この程度の厚さになると、Cu合金条にひび割れの危険が生ずる。なお、Snめっき厚さは先に説明した、電解式膜厚計で測定した。
第1比較例のCu合金条の動摩擦係数は0.22と低かったが、高温放置後の接触抵抗は0.92mΩと高かった。また逆に第2比較例のCu合金条の高温放置後の接触抵抗は0.66mΩと低かったが、動摩擦係数は0.41と高かった。
次に比較例3および比較例4について説明する。比較例3および比較例4のCu合金条は次のようにして製作した。Niめっき厚さ0.50〜0.64μm、Cuめっき厚さ/Snめっき厚さ比0.512〜0.625の範囲での組合せでめっき層形成後、Snめっきが溶融する温度240℃で3minリフロー(熱処理)を行い、その後、再度Snめっきを0.25〜0.28μm形成してCu合金条を作製した。めっき層総厚は2.05〜2.22μmである。
このCu合金条の動摩擦係数および150℃、1000hの条件で高温放置を行った後の接触抵抗を測定した結果を図4に示す。接触抵抗の測定は荷重1.0Nの条件で行った。第3比較例、第4比較例ともリフロー後に最表面Sn層はほほ消失し、化合物層がほぼ最表面まで形成されていた。また第3比較例、第4比較例ともNi層は高温放置後まで残存していた。動摩擦係数は0.25〜0.26で、0.35以下と低かった。しかし、第3比較例、第4比較例とも、高温放置後の接触抵抗は0.85〜0.95mΩで、0.7mΩを超えていた。
比較例4の高温放置後の断面写真を図11に示す。Cu6Sn5層の一部が最表面まで到達してしまっていた。Ni層は残存していた。第3比較例は図示しないが、図11と同様であった。このように、第3比較例および第4比較例は動摩擦係数は目標値である0.35以下をクリヤするが、高温放置後の接触抵抗は、目標値の0.7mΩ以下には達しなかった。
以上、本発明者によってなされた発明を実施するための形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施するための形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
以上ではCu合金条について説明した。本発明のCu合金条の主な利用形態はコネクタである。コネクタは電気・電子機器の組立てを簡便化するために、ケーブル同士、ケーブルと基板、基板同士を接続する際に使われるメス・オスが対となる接続器であり、かん合用端子を有する。コネクタに対する一般的な要求特性は、低接触抵抗、耐食性、はんだ付け性であるが、近年では、低挿入力、高耐熱性も要求されている。本発明の金属条は、コネクタに対する要求特性のうち、特に、低挿入力、かつ、高耐熱性を満足することが出来る。
1 ・・・ Cu合金母材、2 ・・・ Ni、3 ・・・ Cu、4 ・・・ Sn、5 ・・・ Cu-Sn化合物、6 ・・・ Sn-0.7Cu、7 ・・・ Cu-Ni-Sn化合物。
Claims (7)
- Cu合金の表面にNi層、その上にCu-Sn金属間化合物層もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層、さらにその上にSnもしくはSn-Cu共晶合金層からなるSnめっき付きCu合金条において、前記Cu-Sn金属間化合物層もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層の表面粗さRmaxが0.5μm以下であることを特徴とするCu合金条。
- Cu合金の表面にNi層、その上にCu-Sn金属間化合物層もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層、さらにその上にSnもしくはSn-Cu共晶合金層からなるSnめっき付きCu合金条において、前記SnもしくはSn-Cu共晶合金層の平均厚さが0.3μm以上、0.8μm以下であることを特徴とするCu合金条。
- 請求項1または請求項2において、前記Cu-Sn金属間化合物層もしくはCu-Ni-Sn金属間化合物層の表面露出がないことを特徴とするCu合金条。
- 請求項1または請求項2において、前記SnもしくはSn-Cu共晶合金層の表面がSnであることを特徴とするCu合金条。
- Cu合金の上に、下から順番にNi層、Cu層、第1のSn層をめっきで形成した後、リフローし、その後、表面に第2のSn層をめっきで形成することを特徴とするCu合金条の製造方法。
- 請求項5記載のCu合金条の製造方法において、前記Cu層の平均厚さ/前記第1のSn層の平均厚さの比を、0.512以上、0.625以下とすることを特徴とするCu合金条の製造方法。
- 請求項5または請求項6に記載のCu合金条の製造方法において、前記第2のSn層の平均厚さを0.3μm以上、0.8μm以下とすることを特徴とするCu合金条の製造方法。
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JP2013231223A (ja) * | 2012-05-01 | 2013-11-14 | Dowa Metaltech Kk | めっき材およびその製造方法 |
JP2017043827A (ja) * | 2015-08-28 | 2017-03-02 | Dowaメタルテック株式会社 | Snめっき材およびその製造方法 |
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2009
- 2009-10-19 JP JP2009240420A patent/JP2011084796A/ja active Pending
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