非特許文献1のパイプ吊下装置は、図13に示すように、縦軸部を横軸部のベースパイプと横ネジとに溶接しただけのような状態で表現してあるが、実際上は、非常に多数の部材を使用した溶接やネジ止めを行って、縦軸部の、横軸部のベースパイプと横ネジとに対する連結あるいは取付けを行っている。
それだけでなく、縦軸部の、横軸部のベースパイプと横ネジとに対する連結あるいは取付けは、金属製の多くの部材を使用しているから、パイプ吊下装置全体の重量は相当重いものとなっていて、当該パイプ吊下装置を溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置する作業自体も重労働になっているのである。
また、この従来のパイプ吊下装置においては、その縦軸部の下端にパイプ取付部を取り付けて、このパイプ取付部によるパイプの支持を、当該パイプの「中心」が上記縦軸部の直下に位置するように行われている。そして、パイプ取付部の下面当接面の形状は、吊下すべきパイプの外周曲面に合わせた半円形にしてある。
一般に、下水道管(パイプ)によって下水道を構築する場合に、下水の安定的な流下を促すためにはパイプの勾配を精密に設定しなければならないが、この勾配を図るためにはパイプの表面ではなく、「中心」が使用される。何故なら、パイプは通常円筒管であって、表面には「目印」となるべきものがなく、仮に目印があったとしても、今度は目印そのものが測定し易い位置になるようにパイプの位置決めを行わなければならないから、パイプの「中心」が使用されるのである。従って、この種のパイプ吊下装置によって吊下したパイプの位置は、その「中心」を基準として決定されるのであるが、このパイプの「中心」は具体的なものが何もない架空のものである。
上述したパイプ取付部の、パイプへの当接面が、吊下すべきパイプの外周曲面に合わせた半円形であると、径の異なったパイプを吊下するにはその径に合った当接面を有するものにしなければ、当該パイプ吊下装置で決めた中心と、実際に吊下したパイプの中心とが合致しないことになる。
また、従来のパイプ吊下装置によって吊下するパイプの中心を決めるには、上述したパイプ取付部にターゲットを取り付けておき、このターゲットに向けて他のパイプ吊下装置から引いた「道糸」によるか、ターゲットに向けて他のパイプ吊下装置から照射した「レーザー光」により行っている。このターゲットは、パイプ吊下装置に取り付けたり、取り外したりしなくてはならず、これらの作業を各パイプ毎に行うことは相当な作業量となっている。
そこで、本発明者等は、この種のパイプ吊下装置について、作業性を向上させるためにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、
(1)パイプ取付部について、径の異なるパイプに応じた当接面を有するものに簡単に交換できるようにすること
(2)パイプの中心を、パイプ取付部自体の具体的位置で明示できるようにすること
(3)パイプ取付部の軽量化を図るようにすることにより、パイプ吊下装置全体の重量軽減を行うこと
がよい結果を生むことに気付き、本発明を完成したのである。
すなわち、本発明の目的とするところは、吊下すべきパイプの中心を正確に出すことができて、部品交換も容易に行え、しかも軽量化を図ることのできるパイプ吊下装置を提供することにある。
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたパイプ吊下装置100において、
パイプ取付部30を、縦軸部20の下端に取り付けられる本体部材31と、この本体部材31に交換可能に取り付けられて、前記パイプの外形曲面に応じた当接面32aを有したパイプ当接部材32とを備えたものとしたことを特徴とするパイプ吊下装置100」
である。
つまり、このパイプ吊下装置100は、図1に示すように、溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたものである。
横軸部10は、当該パイプ吊下装置100の上部に位置するベースパイプ11と、このベースパイプ11の下側でこれと平行に支持される横ネジ12とを少なくとも備えている。また、当該パイプ吊下装置100は、その横軸部10にガイドフレーム40によって縦軸部20を連結し、この縦軸部20の下端にパイプを吊下するためのパイプ取付部30を設けたものである。
そして、この請求項1に係るパイプ吊下装置100では、縦軸部20の下端に位置してパイプを吊下するためのパイプ取付部30が、図1及び図2に示すように、縦軸部20の下端に取り付けられる本体部材31と、この本体部材31に交換可能に取り付けられて、前記パイプの外形曲面に応じた当接面32aを有したパイプ当接部材32とを備えたものとしてある。
本体部材31は、図3、図4及び図6に示すように、正面形状(パイプの中心が認識できる方向の形状)が、下端面を底辺とした三角形としたものであり、側面形状については、図4に示したように、略長方形状となるようにしたものである。そして、この本体部材31は、図2に示すように、その正面視三角形状の上端頂点に該当する部分に、縦軸部20の下端が連結されるものである。
また、後述する実施形態の本体部材31は、図2及び図3に示すように、その頂点部分の両側に、人の肩部のような部分が形成してあって、その内の図2に示した右側部分を表示部31aとしたものである。この表示部31aは、作業者が一見して見つけられるようにするために、図3にも示すように、当該本体部材31の上部で目立つ直線状物として形成したものであるが、このような「肩部」に限らず、他の部分や別途形成した部分を適用して実施しても良いものである。
さらに、後述する実施形態の本体部材31は、図3に示すように、その底辺の両側に、後述するパイプ当接部材32をネジ止めするためのネジ穴31bが形成してあり、これらのネジ穴31bの外側になる部分には、パイプ当接部材32の両側の位置決めをするための案内突起31cがそれぞれ形成してある。なお、実施形態の各案内突起31cでは、その内側に、パイプ当接部材32が入り易いように案内する傾斜面が形成してある。
なお、この本体部材31の左右両側には、図1〜図4、及び図6に示すように、吊下すべきパイプを抱え込むベルト33のための止め金具33a及びラチェットバックル33bが取り付けてある。止め金具33aはベルト33の一端を固定しておくものであり、ラチェットバックル33bは、ベルト33の他端を締め付けたり、この締め付けを緩めてベルト33を外したりするものである。
さて、パイプ当接部材32は、図4の(a)に示すように、上記本体部材31側の各案内突起31c内に収納される第1収納肩部32b及び第2収納肩部32cが一体的に形成してあり、これらの第1収納肩部32b及び第2収納肩部32cの下側に、パイプの外形に対応する半円形の当接面32aが形成してある。この当接面32aは、図6に示すように、そのほぼ全面がパイプの外側面にピッタリと当接するようにしてあるものであり、使用すべきパイプの径に合わせた形状にしてある。換言すれば、このパイプ当接部材32は、一つの本体部材31に対して、径の異なるパイプの外側面形状に合った当接面32aを有するものが複数用意されることになるのである。
そして、このパイプ当接部材32には、図5に示すように、複数のネジ穴32dが形成してあって、これらのネジ穴32dに固定ネジ32eを挿入して、これを図2に示すように本体部材31のネジ穴31bに螺着することにより、当該パイプ当接部材32は本体部材31に一体化されるのである。なお、このパイプ当接部材32には、一本の固定ネジ32eを挿通してネジ止めするために2個のネジ穴32dが形成してあり、これら2個のネジ穴32d間のパイプ当接部材32には、図2及び図5の(a)に示すように、空間が形成してあって、この空間が当該パイプ当接部材32自体の重量軽減を果たせるようにしてある。
以上のように、パイプ取付部30が本体部材31とパイプ当接部材32とにより形成してあって、本体部材31に対してパイプ当接部材32が交換自在となっているから、当該パイプ取付部30を使用して径の異なるパイプの吊下を行う場合には、そのパイプの外形にあった当接面32aを選択して、これを本体部材31に固定ネジ32eによって取り付ければ良いのである。以上の結果、径が異なったパイプを施工するにあたって、パイプ吊下装置100全体を変える必要がなく、施工性が非常によいのである。
さらに、上述したパイプ取付部30を有するパイプ吊下装置100によってパイプを吊下した場合には、図6に示すように、パイプの外側面の一部がパイプ当接部材32の当接面32aにほぼ完全に当接するから、当該パイプ取付部30に対するパイプの位置は揺るぎない、つまり正確なものとなる。そして、パイプ取付部30に対するパイプの取付位置が正確であれば、このパイプ取付部30が取り付けられている縦軸部20に対する位置も正確になることになるのである。
従って、この請求項1のパイプ吊下装置100は、吊下すべきパイプの中心を正確に出すことができて、部品交換も容易に行え、しかも軽量化を図ることのできるものとなっているのである。
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のパイプ吊下装置100について、
「当接面32aにより形成されるべき円の中心を通る垂線が本体部材31の表示部31aを通るようにして、当該パイプ吊下装置100によって吊下したパイプの中心が常に表示部31aの直下に位置するようにしたこと」
である。
すなわち、この請求項2のパイプ吊下装置100では、その本体部材31の形状を、図2の図示右方向に少し長くなるようにしたものであるが、その変位は、図6に示すように、縦軸部20の軸心から表示部31aまでの寸法Lとしたものである。この寸法Lは、縦軸部20の軸心からパイプの中心(図6では仮想線の十字で示してある)までの距離と一致するものである。
このようにすれば、当接面32aは半円形のものであったから、この当接面32aにより形成されるべき円の中心、つまり吊下すべきパイプの中心は、図6中の仮想線十字で示した位置になる。このとき、仮想線十字で示した位置と、縦軸部20の軸心から表示部31aまでの寸法Lとは同じであるから、仮想線十字で示した位置を通る垂線は、本体部材31の表示部31aを通ることになるのである。
以上の結果、当該パイプ吊下装置100によって吊下したパイプの中心は、図6に示すように、常に表示部31aの直下に位置することになるのである。表示部31aとしては、上述したように、本体部材31の右肩部に限らず何処に選定してもよく、この選定に応じて寸法Lを決定すれば、吊下すべきパイプの中心を、パイプ取付部30自体の具体的位置で容易に明示できるのである。
従って、この請求項2に係るパイプ吊下装置100では、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、パイプの中心を、パイプ取付部30自体の具体的位置で明示できるものになっているのである。
また、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載のパイプ吊下装置100について、
「本体部材31及びこれに取り付けられるパイプ当接部材32とを、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成したこと」
である。
この請求項3に係るパイプ吊下装置100では、上述してきた本体部材31及びこれに取り付けられるパイプ当接部材32を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金、例えばアルミダイキャストによって形成したことであり、これにより、パイプ吊下装置100として必要十分な剛性を確保した状態で、例えばこの種のパイプ吊下装置100を一般的に形成している「鉄」に対して、軽量化が図られているのである。
従って、この請求項3に係るパイプ吊下装置100は、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、軽量化を図ることができて、その設置作業や、保管あるいは運搬を容易に行うことができるものとなっているのである。
上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載のパイプ吊下装置100について、
「本体部材31及びこれに取り付けられるパイプ当接部材32とを、引き抜き材、押し出し材、あるいはダイキャスト材によって形成したこと」
である。
パイプ取付部30を構成している本体部材31及びこれに取り付けられるパイプ当接部材32とを、引き抜き材、押し出し材、あるいはダイキャスト材によって形成すれば、特に図2に示すように、これらの本体部材31及びパイプ当接部材32自体にもない「空間」を多く形成できる。このため、これらの本体部材31及びパイプ当接部材32の軽量化を図ることができ、結果として、パイプ吊下装置100全体の軽量化を図ることができて、当該パイプ吊下装置100の使用上あるいは運搬上の利便性を高めることができるのである。
従って、この請求項4のパイプ吊下装置100によれば、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、使用上あるいは運搬上の利便性を高める軽量化が図られているのである。
また、上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載のパイプ吊下装置100について、
「当接面32aの前記パイプの軸心方向に対する幅を、40mm〜100mmとしたこと」
である。
本発明に係るパイプ吊下装置100の吊下対象であるパイプには、「リブ管」と呼ばれている、表面に多数のリブ(一般的にはパイプの半径方向に突出させた板状部分)を有したものがある。このリブ管のリブは、例えばパイプの肉厚を薄くしても、当該パイプの強度を補償できるようにするものであり、特に合成樹脂製のパイプの材料を軽減するために使用されるようになってきているものである。そして、このリブ間の間隔は、種々ではあるけれども、数mm〜数十mmとしたものが多い。
一方、このリブ管の表面には、パイプ取付部30のパイプ当接部材32に形成してある当接面32aが当接するのであるが、この当接面32aはパイプの円周方向に延在するものであるから、パイプがリブを有したものであって当接面32aの幅が狭いと、パイプの吊下時に当接面32aがリブを破壊する可能性がある。その点、この請求項5のパイプ取付部30では、そのパイプ当接部材32に形成してある当接面32aの、前記パイプの軸心方向に対する幅(図5の(c)中に表示した)を、40mm〜100mmとしてあるから、複数のリブの端面を覆うことになって、リブを破壊することがないのである。
従って、この請求項5のパイプ吊下装置100は、上記請求項1〜請求項4のそれと同様な機能を発揮する他、パイプが「リブ管」であった場合に、当接面32aが「リブ」を潰さないものとなているである。
さらに、上記課題を解決するために、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載のパイプ吊下装置100について、
「本体部材31に、前記パイプを固定するベルト33の一端を係止させる止め金具33aと、ベルト33の他端を引き締めるラチェットバックル33bとを取り付けるとともに、このラチェットバックル33bをカバー34によって覆うようにしたこと」
である。
すなわち、この請求項6のパイプ吊下装置100は、図3に示すように、本体部材31に止め金具33aとラチェットバックル33bとを取り付けるとともに、このラチェットバックル33bをカバー34によって覆うようにしたものである。
ラチェットバックル33bは、そのレバーを往復させて、ベルト33の締め付けやその解除を行うものであり、そのために、頻繁に使用したり、パイプの土砂による埋め込みを行ったときに砂を噛み込み、これにより機能が悪くなったり、破損してしまう。ところが、このラチェットバックル33bはカバー34によって覆ってあるから、砂を噛み込むことが少なくなって、その寿命は伸びることになるのである。
従って、この請求項6のパイプ吊下装置100は、上記請求項1〜請求項5のそれと同様な機能を発揮する他、パイプの埋め込み時等に、カバー34によってラチェットバックル33bが砂を噛まないものとなっている。
そして、上記課題を解決するために、請求項7に係る発明の採った手段は、上記請求項6に記載のパイプ吊下装置100について、
「本体部材31の、止め金具33aの近傍に、係止部33cを一体的に形成したこと」
である。
この請求項7のパイプ吊下装置100を構成しているパイプ取付部30にあっては、その本体部材31に設けてある止め金具33aの近傍に、図3および図4の(c)に示すように、係止部33cを形成したものである。この係止部33cは、これと止め金具33aに連結してあるベルト33との間に、バール等の工具が差し込める空間を形成するとともに、図1に示すように、この工具の支点位置を形成するものである。
つまり、この係止部33cは、ベルト33を外したいときに、このベルト33が何処かに引っ掛かって素手では外れない場合に使用されるものである。この場合に、バール等の工具の先端を係止部33cに当てて抉れば、ベルト33にはこれを引っ張る力が加えられることになり、素手で外せなかったベルト33の取り外しができることになるのである。
従って、この請求項7のパイプ吊下装置100は、上記請求項6のそれと同様な機能を発揮する他、外せなかったベルト33の外しを容易にしているのである。
以上、説明したとおり、本発明においては、
「溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたパイプ吊下装置100において、
パイプ取付部30を、縦軸部20の下端に取り付けられる本体部材31と、この本体部材31に交換可能に取り付けられて、前記パイプの外形曲面に応じた当接面32aを有したパイプ当接部材32とを備えたものとしたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、吊下すべきパイプの中心を正確に出すことができて、部品交換も容易に行え、しかも軽量化を図ることのできるパイプ吊下装置100を提供することができるのである。
換言すれば、本発明に係るパイプ吊下装置100は、
(1)パイプ取付部30について、径の異なるパイプに応じた当接面32aを有するパイプ当接部材32に簡単に交換できる
(2)パイプの中心を、パイプ取付部30自体の具体的位置、つまり表示部31aで明示できる
(3)パイプ取付部30の軽量化を図ることができ、パイプ吊下装置100全体の重量軽減が行える
といった優れた効果を発揮するのである。
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態に基づいて説明するが、この実施形態に係るパイプ吊下装置100は、上記各請求項に係る発明の全てを含むものであるから、以下では、この実施形態に係るパイプ吊下装置100を中心に説明していることとする。
図1には、本発明に係るパイプ吊下装置100を、土留めパネルまたは矢板間に設置した状態での正面図で示してある。このパイプ吊下装置100は、溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、横軸部10と縦軸部20との連結を行うガイドフレーム40と、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を行う左右一対のブラケット50とを備えたものである。
このパイプ吊下装置100の横軸部10は、上部に位置するベースパイプ11と、このベースパイプ11と平行に配置されてベースパイプ11の下側に位置する横ネジ12とを、その基本構成部材としているものである。ベースパイプ11は、その内部に、図6に示した位置調整ネジ13と、図7に示した位置調整パイプ14とを内部に収納でき、かつこれらの位置調整ネジ13及び位置調整パイプ14を引き出した後にその位置での固定が行えるようにしたものであり、その表面には硬質化処理が施してある。
また、このベースパイプ11は、後述するガイドフレーム40で縦軸部20を支持しながら、図1に示した左右方向への位置調整が行えるようにするものであるから、この位置調整ができる程度の長さを有していれば十分である。一方、横ネジ12は、後述するブラケット50によってその左右両端部を上記ベースパイプ11に取り付けるようにしたものであり、後述するガイドフレーム40を挟んで取り付けた左右の固定ハンドル60を螺進あるいは螺退させることにより、ガイドフレーム40の位置調整が行えるようにしたものであり、上記ベースパイプ11の長さ程度の長さを有するものである。
なお、本実施形態での横ネジ12の直径及びネジのピッチは、後述する位置調整ネジ13や縦軸部20のそれと同じにしてあり、これにより、使用される固定ハンドル60を共通のものにできるようにしてある。固定ハンドル60は、突出したものであり、比較的強い力で回動操作がなされることもあるから、破損し易いものであるため、各部分で共通して使用できるものにしておくと交換が極めて円滑に行え、頻繁に使用される当該パイプ吊下装置100のメンテナンス作業効率を格段に高めることができるのである。
このパイプ吊下装置100の横軸部10を構成しているベースパイプ11は、上述したように、その一端部内に位置調整ネジ13を抜き差し自在に組み付けるとともに、この位置調整ネジ13の内端が挿入され得る位置調整パイプ14をベースパイプ11の他端部内に抜き差し自在に組み付けるようにしたものである。
つまり、位置調整ネジ13はパイプ状にしてあって、その中に位置調整パイプ14が抜き差し自在に挿入できるのであり、この位置調整ネジ13自体はベースパイプ11内に抜き差し自在に挿入できるのである。これにより、当該ベースパイプ11は、その中に位置調整ネジ13と位置調整パイプ14とをコンパクトに収納することができて、その全体を短くすることができるだけでなく、位置調整ネジ13と位置調整パイプ14とを最大限抜き出せば、図1に示したように、土留めパネルまたは矢板間の距離に合わせることができるのである。この結果、横ネジ12についても、その長さをベースパイプ11の長さ程度にすることができて、当該パイプ吊下装置100の図1に示した左右方向の長さを短くすることができているのである。
また、本実施形態のパイプ吊下装置100では、上記の位置調整ネジ13及び位置調整パイプ14との外端に、前記土留めパネルまたは矢板の内面に当接される脚板15が取り付けてある。この脚板15は、例えば図7の(a)に示したように、パイプ状になっている位置調整ネジ13と位置調整パイプ14との外端に挿入するための取付部15aを有したものであり、この取付部15aには、取付ピン15bが挿入できる挿通穴15cが形成してある。
つまり、各脚板15は、その取付部15aを位置調整ネジ13と位置調整パイプ14との外端に挿入すること(図7の(a)参照)で簡単に組み付けがなされることは当然として、例えば、図7の(b)に示したように、挿通穴15cに挿通した取付ピン15bによって簡単に取り付けることができる。
さらに、位置調整ネジ13には、図6にも示したように、固定ハンドル60が螺着してあって、この固定ハンドル60の図示左側面がベースパイプ11の右端面に、後述する受け材61を介して当接するようにしてあるから、この固定ハンドル60を例えば右回転させることによって、当該位置調整ネジ13は、ベースパイプ11から強制的かつ微調整可能に抜き出せるものとなっているのである。一方、位置調整パイプ14については、その抜き出しが完了した時点で、ベースパイプ11に形成してあるピン穴(図示せず)と、位置調整パイプ14に形成してあるピン穴14aとの間に図示しないピンを差し込んで、ベースパイプ11に対する固定が行えるようにしてある。
そして、このパイプ吊下装置100では、図1及び図6に示したように、ベースパイプ11と、位置調整ネジ13上の固定ハンドル60との間に、受け材61が配置してある。この受け材61としては、所謂オイルレスベアリング、スラストベアリング、その他のハンドル60の回転を円滑にする部材が採用される。
このような受け材61を固定ハンドル60とベースパイプ11との間に配置しておけば、固定ハンドル60を回動する際には、当該受け材61がない場合に比べて小さい摩擦力しか存在しないようにすることができる。つまり、受け材61の存在によって、横軸部10を突っ張らせるための固定ハンドル60の回動が比較的小さな力で行えるのであり、当該パイプ吊下装置100の施工作業性を向上させている。
当該横軸部10には、図1に示したように、後述するガイドフレーム40によって縦軸部20が連結されるのであり、この縦軸部20の下端には、パイプを吊下するための一般的なパイプ取付部30が設けられるのである。縦軸部20は、図1にも示したように、「ネジ軸」として形成したものであり、これに螺着した固定ハンドル60の下面を、ガイドフレーム40の縦挿通部42の上端に当接させることにより、当該パイプ吊下装置100における所定位置での固定がなされる。一方、当該縦軸部20の上下方向の位置決めを行うには、パイプ取付部30にてのパイプの吊下をする前に、固定ハンドル60を当該縦軸部20に対して螺進させたり螺退させたりするのである。
パイプ取付部30は、縦軸部20の下端に取り付けられる本体部材31と、この本体部材31の下側に取り付けられるパイプ当接部材32と、吊下すべきパイプを抱え込むためのベルト33と、このベルト33のためのラチェットバックル33bを覆うカバー34とを備えている。本体部材31に対するパイプ当接部材32の取り付けは、パイプ当接部材32に形成してあるネジ穴32dから挿通した固定ネジ32eを、本体部材31に形成してあるネジ穴31bに螺着することにより行われる。
パイプ取付部30を構成している本体部材31は、図3、図4及び図6に示したように、下端面を底辺とした三角形としたものであり、側面形状については、図4に示したように、略長方形状となるようにしたものである。そして、この本体部材31は、図2に示したように、その正面視三角形状の上端頂点に該当する部分に、縦軸部20の下端が連結されるものである。
また、本実施形態の本体部材31は、図2及び図3に示したように、その頂点部分の両側に、人の肩部のような部分が形成してあって、その内の図2に示した右側部分が表示部31aとしてある。この表示部31aは、作業者が一見して見つけられるようにするために、図3にも示したように、当該本体部材31の上部で目立つ直線状物として形成したものであるが、このような「肩部」に限らず、他の部分を適用して実施しても良いものである。
さらに、本実施形態の本体部材31は、図3に示したように、その底辺の両側に、後述するパイプ当接部材32をネジ止めするためのネジ穴31bが形成してあり、これらのネジ穴31bの外側になる部分には、パイプ当接部材32の両側の位置決めをするための案内突起31cがそれぞれ形成してある。なお、実施形態の各案内突起31cでは、その内側に、パイプ当接部材32が入り易いように案内する傾斜面が形成してある。
また、本体部材31の形状は、図2の図示右方向に少し長くなるようにしたものであるが、その変位は、図6に示したように、縦軸部20の軸心から表示部31aまでの寸法Lとしたものである。この寸法Lは、縦軸部20の軸心からパイプの中心(図6では仮想線の十字で示してある)までの距離と一致するものである。
このようにすれば、後述するパイプ当接部材32の当接面32aにより形成されるべき円の中心、つまり吊下すべきパイプの中心は、図6中の仮想線十字で示した位置になる。このとき、仮想線十字で示した位置と、縦軸部20の軸心から表示部31aまでの寸法Lとは同じであるから、仮想線十字で示した位置を通る垂線は、本体部材31の表示部31aを通ることになるのである。
以上の結果、当該パイプ吊下装置100によって吊下したパイプの中心は、図6に示したように、常に表示部31aの直下に位置することになるのである。表示部31aとしては、上述したように、本体部材31の右肩部に限らず何処に選定してもよく、この選定に応じて寸法Lを決定すれば、吊下すべきパイプの中心を、パイプ取付部30自体の具体的位置で容易に明示できるのである。
そして、この本体部材31の左右両側には、図1〜図4、及び図6に示したように、吊下すべきパイプを抱え込むベルト33のための止め金具33a及びラチェットバックル33bが取り付けてある。止め金具33aはベルト33の一端を固定しておくものであり、ラチェットバックル33bは、ベルト33の他端を締め付けたり、この締め付けを緩めてベルト33を外したりするものである。
また、本実施形態のパイプ吊下装置100は、図3に示したように、本体部材31に止め金具33aとラチェットバックル33bとを取り付けるとともに、このラチェットバックル33bをカバー34によって覆うようにしてある。ラチェットバックル33bは、そのレバーを往復させて、ベルト33の締め付けやその解除を行うものであるため、砂を噛み込み易いものであるが、カバー34によって覆ってあるから砂を噛み込むことが少なくなって、その寿命は伸びることになるのである。
このパイプ吊下装置100を構成しているパイプ取付部30にあっては、その本体部材31に設けてある止め金具33aの近傍に、図3および図4の(c)に示したように、係止部33cを形成したものである。この係止部33cは、これと止め金具33aに連結してあるベルト33との間に、バール等の工具が差し込める空間を形成するとともに、この工具の支点位置を形成するものである。
さて、パイプ当接部材32は、図4の(a)に示したように、上記本体部材31側の各案内突起31c内に収納される第1収納肩部32b及び第2収納肩部32cが一体的に形成してあり、これらの第1収納肩部32b及び第2収納肩部32cの下側に、パイプの外形に対応する半円形の当接面32aが形成してある。この当接面32aは、図6に示したように、そのほぼ全面がパイプの外側面にピッタリと当接するようにしてあるものであり、使用すべきパイプの径に合わせた形状にしてある。換言すれば、このパイプ当接部材32は、一つの本体部材31に対して、径の異なるパイプの外側面形状に合った当接面32aを有するものが複数用意されることになるのである。
そして、このパイプ当接部材32には、図5に示したように、複数のネジ穴32dが形成してあって、これらのネジ穴32dに固定ネジ32eを挿入して、これを図2に示したように本体部材31のネジ穴31bに螺着することにより、当該パイプ当接部材32は本体部材31に一体化されるのである。なお、このパイプ当接部材32には、一本の固定ネジ32eを挿通してネジ止めするために2個のネジ穴32dが形成してあり、これら2個のネジ穴32d間のパイプ当接部材32には、図2及び図5の(a)に示したように、空間が形成してあって、この空間が当該パイプ当接部材32自体の重量軽減を果たせるようにしてある。
また、このパイプ吊下装置100においては、その本体部材31及びこれに取り付けられるパイプ当接部材32とを、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成してある。この金属または金属合金としては、例えばアルミダイキャストがあり、これにより、パイプ吊下装置100として必要十分な剛性を確保した状態で、例えばこの種のパイプ吊下装置100を一般的に形成している「鉄」に対して、軽量化を図っているのである。
さらに、このパイプ吊下装置100においては、その本体部材31及びこれに取り付けられるパイプ当接部材32とを、引き抜き材、押し出し材、あるいはダイキャスト材によって形成してもよい。そうすれば、特に図2に示したように、これらの本体部材31及びパイプ当接部材32自体にもない「空間」を多く形成できるからである。この空間を多く存在させれば、これらの本体部材31及びパイプ当接部材32の軽量化を図ることができ、結果として、パイプ吊下装置100全体の軽量化を図ることができて、当該パイプ吊下装置100の使用上あるいは運搬上の利便性を高めることができるからである。
ところで、本発明に係るパイプ吊下装置100の吊下対象であるパイプには、「リブ管」と呼ばれている、表面に多数のリブを有したものがある。このリブ管のリブは、例えばパイプの肉厚を薄くしても、当該パイプの強度を補償できるようにするものであり、特に合成樹脂製のパイプの材料を軽減するために使用されるようになってきているものである。
本実施形態のパイプ取付部30では、そのパイプ当接部材32に形成してある当接面32aの、前記パイプの軸心方向に対する幅を、40mm〜100mmとしてあるから、複数のリブの端面を覆うことになって、リブを破壊することがない。
なお、本実施形態のパイプ吊下装置100では、パイプ取付部30を構成している本体部材31の正面に、図3にも示したように、ターゲット取付部35が形成してある。このターゲット取付部35は、従来の技術の項で述べたレーザー光や道糸の先が照射されたり、連結されたりするものである。
ガイドフレーム40は、図1〜図3に示したように、ベースパイプ11が挿通される横挿通部41と、この横挿通部41に直交する縦挿通部42と、横ネジ12が挿通される横ネジ挿通部43と、これらの横挿通部41、縦挿通部42、及び横ネジ挿通部43の一体化を行う連結部44とを備えたものであり、これらの横挿通部41、縦挿通部42、横ネジ挿通部43、及び連結部44は、例えばアルミダイキャストによって一体的に形成したものである。換言すれば、当該ガイドフレーム40の連結部44によって、横挿通部41と横ネジ挿通部43とは互いに平行に連結され、縦挿通部42は横挿通部41及び横ネジ挿通部43に対して直交状態となるように連結されているのであり、これらの関係は連結部44によって不変となる。このようなガイドフレーム40の横挿通部41に横軸部10のベースパイプ11を、また横ネジ挿通部43に横ネジ12を挿通して縦挿通部42に縦軸部20を取り付ければ、当該パイプ吊下装置100の製造あるいは組み付けは簡単に行える。
この実施形態のパイプ吊下装置100では、上述してきたガイドフレーム40を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成してあり、これにより、パイプ吊下装置100として必要十分な剛性を確保した状態で、例えばこの種のパイプ吊下装置100を一般的に形成している「鉄」に対して、軽量化を図っているのである。
このガイドフレーム40は、横軸部10を構成しているベースパイプ11及び横ネジ12に対して、横挿通部41及び横ネジ挿通部43にて横方向にスライド可能となっている。なお、例えば、横ネジ挿通部43の両側に位置する横ネジ12上には、前述したように、固定ハンドル60がそれぞれ取り付けてある。
ここで、当該ガイドフレーム40の、図1の左右方向への位置調整を行いたい場合には、パイプ取付部30にパイプを取り付ける前の状態で、移動させたい側の固定ハンドル60を緩めて横ネジ挿通部43の許容移動部分を確保した後、反対側の固定ハンドル60を締めることにより、移動したい方向への固定ハンドル60の横ネジ12上での螺進を行う。このとき、ガイドフレーム40の横挿通部41は、横軸部10側のベースパイプ11に単に挿通してあるだけであるから、当該ガイドフレーム40の移動は、ベースパイプ11と横ネジ12との平行状態を維持したままなされることになる。ガイドフレーム40の上述したのとは反対方向への移動時も同様である。
このようにしてガイドフレーム40が所望方向に移動すれば、このガイドフレーム40に一体的に形成してある縦挿通部42も、左右方向へ同量移動することになる。そして、この縦挿通部42の下端にはパイプ取付部30によってパイプを取り付ければ、このパイプの図1に示した左右方向への位置調整がなされることになるのである。なお、パイプの上下方向の位置調整は、縦軸部20に設けてある固定ハンドル60の回動操作によって行うことができることは、前述した通りである。
そして、ブラケット50は、図4及び図5に示したように、横軸部10を構成しているベースパイプ11が挿通される挿通部51と、ベースパイプ11と平行に配置される横ネジ12の両端部を固定するネジ固定部52とを一体化したものであり、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を行うものである。
すなわち、この実施形態のパイプ吊下装置100は、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を、図4及び図5に示したようなブラケット50を左右一対使用して行うようにしたものである。これら各ブラケット50の、まず、横軸部10のベースパイプ11に対する取付及び固定は、その上端部である挿通部51をベースパイプ11の両端部に挿通するとともに、図1及び図5に示した固定ネジ53aを固定部53に螺着することによってなされる。
これらブラケット50の、ベースパイプ11の両端部に対する取付時には、各ブラケット50の下部に形成してあるネジ固定部52内に、横軸部10側の横ネジ12の両端部を挿入または固定しておくものであり、各ブラケット50のベースパイプ11に対する固定が完了すれば、横ネジ12のベースパイプ11に対する平行な取り付けが自動的に完了するものである。
以上の操作を逆に行えば、当該ブラケット50は勿論、ベースパイプ11や横ネジ12の交換も簡単に行えることになるのである。また、これらのブラケット50は、例えばアルミダイキャストによって一体的に形成したものであり、ネジ固定部52の中心でみたとき左右対称になっているし、一つの型で左右のブラケット50を製造できるのであるから、結果的に当該パイプ吊下装置100の製造を容易にしている。
この実施形態のパイプ吊下装置100では、上述してきたブラケット50を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成したものであり、これにより、パイプ吊下装置100として必要十分な剛性を確保した状態で、例えばこの種のパイプ吊下装置100を一般的に形成している「鉄」に対して、軽量化を図るようにしている。
なお、このブラケット50をアルミダイキャストによって一体的に形成するにあたって、所謂「中実体」として形成するよりも、図4及び図5に示したように、空間部54を有するものとした方が、当該ブラケット50自体の軽量化を図り、結果的に、パイプ吊下装置100全体の軽量化を図ることができる。