JP2011078898A - 脱硝触媒及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】脱硝触媒成分の可溶性塩類を多量に含む触媒ペーストを、ローラへの触媒ペーストの付着等のトラブルを生じることなく、均一な状態で網状基材に塗布成形することができる脱硝触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化チタンまたはその前駆体と、タングステン(W)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)およびガリウム(Ga)からなる群から選ばれる触媒成分の一種以上を含む可溶性塩類と水とを含むペースト状物に二水石膏を混合して得られたペースト状物を、金属または無機繊維製の網状物に塗布した後、乾燥、焼成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、脱硝触媒の製造方法に係り、特にアンモニア接触還元用脱硝触媒として好適に使用される高活性な脱硝触媒の製造法及び触媒に関する。
発電所、各種工場、自動車などから排出される排煙中の窒素酸化物(NOx)は、光化学スモッグや酸性雨の原因物質であり、その効果的な除去方法として、アンモニア(NH3)を還元剤とした選択的接触還元による排煙脱硝法が火力発電所を中心に幅広く用いられている。
上記選択的接触還元に用いる脱硝触媒には、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)を活性成分にした酸化チタン(TiO2)系触媒が使用されており、その製造方法としては、酸化チタンまたはその前駆体に、活性成分(W、Mo、Vなど)の塩類と、水、バインダなどを加え、ニーダなどで混練して粘潮なペーストを得、これをハニカム、板状、粒状などに成型後、乾燥、焼成する方法(特許文献1)が一般的である。さらに、排ガス中のダストによる触媒の磨耗防止を目的として、前記原料に硫酸アルミニウムや硫酸マンガンなどの塩類を添加することも知られている(特許文献2)。また触媒ペーストから触媒を成形するに際し、結合剤や成型助剤としてシリカゾルやメトロース(セルロース系増粘剤、信越化学社の商品名)などを添加することも知られている(特許文献3、4)。
特開2005−319422号公報 特開平1−215345号公報 特開昭52−65191号公報 特開平5−192583号公報
従来、担体として酸化チタンまたはその前駆体を用い、これと活性成分としてW、Mo、V、Al、Gaなどの可溶性塩類とを、水と共に混練して得られたペースト状物を成型する場合、予めこれら原料を混練して得たペーストを予備焼成などにより焼成して酸化物にすれば、成型性の問題は発生せず、またシリカゾルなどの結合剤の効果も十分発揮される。しかし、予備焼成せずに、得られたペーストをそのまま触媒形状に成型する場合には、活性成分を可溶性の塩類として大量に使用すると、ローラで塗布する場合にペーストとローラ間に発生する液膜が粘調な液体になり、触媒ペーストがローラに付着して剥がれることがある。これが、特に加熱ローラであると、液膜の水分が蒸発により減じて更に粘性(付着性)を増し、成型が上手くいかない。これを模式的に示したのが図1である。図中、1は一対の加熱ローラ、2は網状基材、3は触媒ペースト、3Aは触媒ペーストによる液膜、4はローラで付着した触媒ペーストをそれぞれ示す。これを避けるため、前述のように、シリカゾルやメトロースなどの結合剤や成形助剤を添加することが考えられるが、可溶性の塩類を多量に使用する場合では、これら助剤は液膜の粘性を更に増して成形は困難になる。すなわち、可溶性の塩類の添加量を一定以上増加させることは困難であった。
本発明の課題は、上記問題点を鑑み、脱硝触媒成分の可溶性塩類を多量に含む触媒ペーストを、ローラへの触媒ペーストの付着等のトラブルを生じることなく、均一な状態で網状基材に塗布成形することができる脱硝触媒の製造方法を提供することである。
上記課題を達成するため、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
(1)酸化チタンまたはその前駆体と、タングステン(W)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)およびガリウム(Ga)からなる群から選ばれる触媒成分の一種以上を含む可溶性塩類と水とを含むペースト状物に二水石膏を混合して得られたペースト状物を、金属または無機繊維製の網状物に塗布した後、乾燥、焼成することを特徴とする脱硝触媒の製造方法。
(2)前記可溶性塩類が、WもしくはMoのオキソ酸の塩類、AlもしくはGaの硫酸塩または硫酸バナジルであることを特徴とする(1)記載の方法。
(3)前記ペースト状物がさらに無機繊維また無機ゾル状物を含む(1)または(2)に記載の方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の方法により製造された脱硝触媒。
本発明の方法では、二水石膏が以下のように作用することで、触媒の塗布性が著しく改善される効果がある。すなわち、二水石膏をペーストに添加して混練することにより、可溶性塩類の溶解したペースト内の水中に璧開した二水石膏の微粒子が分散する。二水石膏はモース高度が2と低く璧開しやすいため、ニーダなどによる混練で容易に壁解する。二水石膏の微粒子を含む液膜をローラによって金属ラス基板などの網状物の網目間に塗布すると、二水石膏がローラ間の結合力を低下させるため、ペーストのローラへの付着を防止する。特に加熱ローラに用いた場合、二水石膏は60℃から脱水して半水石膏になる過程で水を放出するため、液膜が乾燥固化してペーストがローラへの焼き付を防ぐ効果がある。半水石膏になる過程で放出される水がペーストの粘りを軽減する役割をするためである。また、二水石膏は水と混合されても結合性が無いため、可溶性の塩類を多量に含む、粘ちょうなペースト状物に添加すると、ペースト同士の結合を寸断するように働くため、粘度調整剤としても作用する。また、二水石膏は、脱硝活性に対して不活性な物質であるため、活性成分と反応することによる脱硝性能低下を招かない。その結果、本発明によって二水石膏を添加した触媒では、高い脱硝率を維持することができる。
従来の板状触媒製造装置における、触媒ペーストのローラへの付着状況を示す説明図。
本発明における触媒は、触媒担体成分として酸化チタンまたはその前駆体、触媒活性成分としてW、V、Mo、AlおよびGaから選ばれた成分の可溶性塩類、及び水とを含むペーストに、成型助剤として二水石膏を添加し、金属または無機繊維製の網状物に塗布した後、乾燥、焼成することによって得られる。二水石膏とは、示成式CaSO4・2H2Oで表される硫酸カルシウム二水和物のことであり、工業用試薬のほか、脱硫廃石膏などの副生品や、廃石膏ボードなどを破砕したものを用いてもよい。その添加量は、添加する塩類の種類や量によりペーストの粘度が異なるが、触媒ペーストの固形分濃度に対して、1重量%から30重量%以内が好ましい。これより少ないと添加効果が得られないし、またこれより多いと、単位面積あたりの活性成分量が低下することによる性能低下に繋がる。二水石膏の粒径は、1μm〜20μmの範囲が好ましい。これより小さい粒径では、ペーストの粘性を低下させる効果が小さく、また、これより大きい粒径では、逆にペーストがパサつくため逆効果になり好ましくない。
脱硝触媒原料は、担体として酸化チタンまたはその前駆体、活性成分としてはW、Mo、Vなどの可溶性塩類、Al、Gaなどの硫酸塩が使用される。酸化チタン原料には、含水酸化チタンや酸化チタンのゾル状物の乾燥体、TiO2-SiO2の複合酸化物など、W原料には、該当する金属のMO4型イオン(M:W、Mo)を含む酸素酸あるいはヘテロポリ酸、メタあるいはパラタングステン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、Mo原料には、該当する金属のMO4型イオン(M:W、Mo)を含むアンモニウム塩であるモリブデン酸アンモニウム、もしくは、該当する金属の酸化物である三酸化モリブデン、Al、Gaの硫酸塩原料には、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・15〜18H2O、Ga2(SO4)3・nH2Oなどが挙げられる。
本発明においては、これら活性成分となる原料の他に、本発明の課題を達成する範囲内で、シリカゾルなどのバインダ、無機繊維などの強化用部材等、通常、脱硝触媒に添加される原料を加えてもよい。
上述のように本発明によれば、ペースト中の活性成分の塩類濃度が高く、粘性の高い触媒ペーストであっても、良好な塗布状態で基材に塗布することができ、このように調製された脱硝触媒は、高い触媒性能を有する。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
[実施例1]
酸化チタン(石原産業社製、比表面積100m2/g)1200kg、モリブデン酸アンモニウム22.0g、メタバナジン酸アンモニウム70.3g、硫酸アルミニウム13〜14水和物(Al2(SO4)3として56〜59%含有)93.9g、シリカゾル532g(日産化学社製、商品名OSゾル)、二水石膏(CaSO4・2H2O、キシダ化学社製、工業用、平均粒径17μm)39.9gと水とをニーダに入れて60分混練後、シリカアルミナ系セラミック繊維(ニチアス社製)200gを徐々に添加しながら30分混練して水分約27重量%の触媒ペーストを得た。
本触媒の二水石膏添加量は、触媒ペーストの活性成分の酸化物換算重量に対し約3重量%である。
[実施例2]
実施例1のモリブデン酸アンモニウムを等モルのメタタングステン酸アンモニウムに変え、他は同様にして触媒ペーストを得た。
[実施例3]
実施例1の硫酸アルミニウム水和物を硫酸ガリウム水和物(Ga2(SO4)3として54.2%重量含有)に変えた以外は同様にして触媒ペーストを得た。
[比較例1]
実施例1の触媒ペースト調製において、二水石膏を添加しない以外は同様にして触媒ペーストを調製した。
[比較例2]
実施例1の触媒ペースト調製において、二水石膏の代わりに、セルロース系の増粘剤(商品名メトローズ、信越化学社製、SH-30000)12gに変えた以外は同様にして触媒ペーストを調整した。
[比較例3]
酸化チタン(石原産業社製、比表面積100m2/g)1200kg、三酸化モリブデン17.9g、五酸化バナジウム54.6g、シリカゾル532g(日産化学社製、商品名OSゾル)、セルロース系の増粘剤(メトローズ、信越化学社製、SH-30000)12g と水とをニーダに入れて60分混練後、シリカアルミナ系セラミック繊維(ニチアス社製)200gを徐々に添加しながら30分混練して水分約27重量%の触媒ペーストを得た。
[比較例4]
比較例4のセルロース系の増粘剤を二水石膏39.9gに変えた以外は同様にして触媒ペーストを調製した。
[比較例5]
比較例1の、モリブデン酸アンモニウムを2.2gに、メタバナジン酸アンモニウムを7.03gに、硫酸アルミニウム13〜14水和物(Al2(SO4)3として56〜59%含有)を9.39gに変えた以外は同様にして触媒ペーストを調製した。
[実施例4〜7]
実施例1の石膏添加量を、それぞれ13.3g、133g、266gおよび399.1gに変えた以外は実施例1と同様にして触媒ペーストを得た。本触媒の二水石膏添加量は、触媒ペーストの活性成分の乾燥重量に対し、それぞれ1、10、20、30重量%である。
[塗布試験例1]
実施例1〜7、及び比較例1〜5で得た触媒ペーストを、それぞれ厚さ0.2mmのSUS430製鋼板をメタルラス加工した厚さ0.7mmの基材の上に置き、これらを2枚のPPC用普通紙(オーストリッチ社製)の間に挟んで、1対の加圧ローラを通して、メタルラス基材の網目を埋めるように塗布した。このときに、紙へのペーストの付着状態を目視で確認した。これらの試験で得られた結果を表1に纏めて示した。
[塗布試験例2]
実施例1〜7、及び比較例1〜5で得た触媒ペーストを、それぞれ厚さ0.2mmのSUS430製鋼板をメタルラス加工した厚さ0.7mmの基材の上に置き、一対の加熱ローラ(ローラ温度110℃)を通して、メタルラス基材の網目を埋めるように塗布した。このときに、ローラへのペーストの付着状態を目視で確認した。
[反応例1]
塗布試験例1で塗布状態が良好であった、実施例1〜7、及び比較例3、5の触媒を100mm×20mmの短冊状に切り出し、表2の条件で脱硝性能を測定した。この試験で得られた結果を表1に合わせて示した。
まず、塗布試験例1及び2の結果では、比較例1(活性成分が可溶性塩類のペーストで二水石膏無添加)、比較例2(同可溶性塩類のペーストでセルロース系増粘剤添加)では、紙やローラにペーストが付着して、ラス板からはがれ、触媒を成型することが出来なかった。一方、比較例3(活性成分が酸化物のペーストでセルロース系増粘剤添加)や、比較例4(可溶性塩類の添加量が少ないペースト)の場合では、紙やローラへの付着は見られなかった。このことから、セルロース系増粘剤は、活性成分が酸化物の場合にはローラでの塗布が可能であるが、可溶性の塩類の多いペーストでは塗布性を改善することができないことがわかる。
これに対し、本発明の方法(実施例1〜7)では、いずれの場合も紙やローラへのペーストの付着が見られず、良好な塗布状態の触媒が得られる。また、脱硝率を見ると、本発明の触媒は、石膏添加量が多くても高い脱硝率が得られることが明らかである。
Figure 2011078898
Figure 2011078898
1 加熱ローラ
2 網状基材(ラス板)
3 触媒ペースト
3A 触媒ペーストによる液膜
4 ローラで付着した触媒ペースト

Claims (4)

  1. 酸化チタンまたはその前駆体と、タングステン(W)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)およびガリウム(Ga)からなる群から選ばれる触媒成分の一種以上を含む可溶性塩類と水とを含むペースト状物に二水石膏を混合して得られたペースト状物を、金属または無機繊維製の網状物に塗布した後、乾燥、焼成することを特徴とする脱硝触媒の製造方法。
  2. 前記可溶性塩類が、WもしくはMoのオキソ酸の塩類、AlもしくはGaの硫酸塩または硫酸バナジルであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記ペースト状物がさらに無機繊維また無機ゾル状物を含む請求項1または2に記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造された脱硝触媒。
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