JP2011076794A - ダイレクトメタノール型燃料電池用複合シート - Google Patents

ダイレクトメタノール型燃料電池用複合シート Download PDF

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Abstract

【課題】メタノール拡散性に優れ、燃料カートリッジからのメタノール水溶液送出部が比較的小さな面積であっても、拡散浸透効果によってアノードに大面積でメタノールを供給することが可能なダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂層と、前記ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方の主面に連続的に形成されたセルロース繊維層とを有し、前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が10〜35重量%、総厚みが0.2mm以下であり、前記セルロース繊維層の繊維は平均繊維径が0.3〜1.5μmであるダイレクトメタノール型燃料電池用複合シート。
【選択図】図1

Description

メタノール拡散性に優れ、燃料カートリッジからのメタノール水溶液送出部が比較的小さな面積であっても、拡散浸透効果によってアノードに大面積でメタノールを供給することが可能なダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートに関する。
携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートPC、ビデオカメラ等の携帯用小型電子機器の多機能化に伴い、消費電力や連続使用時間が増加しており、携帯用小型電子機器に搭載される電池の高エネルギー密度化が強く要望されている。
現在、携帯用小型電子機器の電源としては、主にリチウム二次電池が使用されているが、リチウム二次電池は、エネルギー密度600Wh/L程度で限界を迎えると予測されているため、リチウム二次電池に替わる電源として、固体高分子電解質膜を用いた燃料電池の早期実用化が期待されている。
燃料電池の中でも、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)は、燃料であるメタノール又はメタノール水溶液を、水素に改質せずに、そのままセル内部に供給して発電することが可能であり、活発な研究開発が行われている。また、ダイレクトメタノール型燃料電池は、メタノールの持つ理論エネルギー密度の高さ、システムの簡素化、燃料貯蔵のしやすさ等の面から、更に注目を集めている。
ダイレクトメタノール型燃料電池では、一般的に、ポンプやファン等の拡散補器を用いてメタノール水溶液を供給する方法が行われている。
しかしながら、ポンプやファン等の拡散補器を使用すると、システム全体の小型化が阻害されてしまうため、これら使用せずに、より簡素化、小型化した燃料供給システムが求められている。
このような燃料供給システムとしては、毛管現象等の自然拡散を利用することにより、高効率でメタノール水溶液を供給する方法が研究されており、例えば、特許文献1には、多孔体からなる燃料浸透板を設置することにより、毛管現象を利用してメタノールをアノードへ導く方法が開示されている。また、特許文献2には、発泡体、繊維束、不織繊維等からなる燃料導入体が開示されており、ポリウレタン発泡体等の発泡体が用いられている。
しかしながら、これらの方法では、メタノールの拡散性が不充分なため、燃料カートリッジからの液流路と浸透板との接触面を大きくする必要があり、小型化しにくいという問題があった。また、特許文献2のように、燃料導入体としてポリウレタンを用いた場合は、メタノールによる劣化が生じ、拡散性能が安定しないという問題もあった。
特開2001−93540号公報 特開2003−36866号公報
本発明は、上記現状に鑑み、メタノール拡散性に優れ、燃料カートリッジからのメタノール水溶液送出部が比較的小さな面積であっても、拡散浸透効果によってアノードに大面積でメタノールを供給することが可能なダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートを提供することを目的とする。
本発明は、ポリオレフィン系樹脂層と、前記ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方の主面に連続的に形成されたセルロース繊維層とを有し、前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が10〜35重量%、総厚みが0.2mm以下であり、前記セルロース繊維層のセルロース繊維は平均繊維径が0.3〜1.5μmであるダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートである。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ダイレクトメタノール型燃料電池に用いるシートを、ポリオレフィン系樹脂層と、上記ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方の主面に連続的に形成されたセルロース繊維層とを有する構成とし、更に、上記ポリオレフィン系樹脂の含有量と総厚みに加えて、セルロース繊維の平均繊維径を規定することで、メタノールによる劣化や変形を防止しつつ、極めてメタノール拡散性の高い複合シートとなるため、より高電流密度での発電特性を実現可能なダイレクトメタノール型燃料電池が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートは、ポリオレフィン系樹脂層と、上記ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方の主面に連続的に形成されたセルロース繊維層とを有する。
上記ポリオレフィン系樹脂は、疎水性を有することから、メタノールの拡散性能に寄与するとともに、得られるシートが強度の高いものとなる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体であり、具体的には例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンと1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等、炭素原子数4〜10のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタアクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
これらのなかではポリプロピレンが好ましい。
上記ポリオレフィン系樹脂の融点(DSCの吸熱ピーク温度による)の好ましい下限は98℃、好ましい上限は200℃である。上記ポリオレフィン系樹脂の融点が98℃未満であると、燃料電池ユニット自体の発熱で変形や溶融による構造破壊、機能劣化を生じることがある。上記ポリオレフィン系樹脂の融点が200℃を超えると、複合シートの加工温度が高くなるため、高温での複合化加工が必要になり製造装置及び製造コストが高くなる場合がある。
上記ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量の好ましい下限は3000、好ましい上限は60000である。数平均分子量を上記範囲内とすることで、メタノールの拡散性能に優れるダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートを得ることができる。本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。
上記ポリオレフィン系樹脂層に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、上述した組成を有するポリオレフィン系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリオレフィン系樹脂を併用してもよい。また、上記ポリオレフィン系樹脂層が2層以上である場合は、上記ポリオレフィン系樹脂は異なる組成のものとしてもよいが、変形等によるトラブルを抑制するため、同一の組成とすることが好ましい。
本発明のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートにおける上記ポリオレフィン系樹脂の含有量の下限は10重量%、上限は35重量%である。上記ポリオレフィン系樹脂の含有量が10重量%未満であると、メタノールの拡散性能が低下し、35重量%を超えると、メタノールの厚み方向への透過性が低下する。上記ポリオレフィン系樹脂の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は33重量%である。なお、上記ポリオレフィン系樹脂の含有量は、単位面積あたりの含有量を表す。
上記ポリオレフィン系樹脂層には、本発明の本質を損なわない範囲内で、酸化防止剤、熱安定剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
上記セルロース繊維層のセルロースとしては、例えば、木綿、麻、木材(広葉樹、針葉樹)パルプ、非木材パルプ(バガスパルプ、ワラパルプ)等の天然セルロースや、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、テンセル、リヨセル等の再生セルロース、古紙パルプ等が挙げられる。
上記セルロースには、酢酸セルロ−スのように、純セルロースを変性した半合成セルロ−スも含まれる。純セルロースは、保水性は高いが、強度が弱いため、上記酢酸セルロ−スの酢化度を制御することで、保水性、強度等を変更させ、最適なセルロースとすることもできる。また、純セルロースと酢酸セルロ−スとを適宜混合して用いてもよい。
上記セルロース繊維の平均繊維径の下限は0.3μm、上限は1.5μmである。
上記平均繊維径が0.3μm未満であると、セルロース繊維を紡糸することが困難となり、1.5μmを超えると、メタノール拡散性が低下する。なお、セルロース繊維が異形断面である場合は、断面の長径を繊維径とする。
上記セルロース繊維の平均繊維径は、上記セルロース繊維層のSEM写真(繊維径最大値が5μm未満の場合には倍率10000倍、繊維径最小値が5μm以上の場合には倍率300倍)上で30点をマークした場合の平均値で規定する。
上記セルロース繊維の繊維径の標準偏差の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は1μmである。標準偏差を上記のように小さくすることで、繊維径のバラツキが極めて小さくなる。これにより、セルロース繊維間に形成される空隙の大きさもバラツキが小さくなるため、ポリオレフィン系樹脂が熱溶融して含浸される際に含浸ムラが生じにくくなるだけでなく、含浸される厚み方向の深さのバラツキも小さくなり、ポリオレフィン系樹脂層の界面における凹凸が小さくなる。その結果、得られるダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートのメタノール拡散性が大幅に向上する。
上記セルロース繊維の断面形状は扁平形状であってもよく、異形であってもよいが、円形とすることが好ましい。上記断面形状を円形とすることで、メタノール拡散性が向上する。
また、上記セルロース繊維の形態は、短繊維であってもよく、長繊維であってもよいが、システム内に繊維の脱落混入が生じにくい長繊維が好ましい。
本発明のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートの総厚みの上限は0.2mmである。上記総厚みが0.2mmを超えると、メタノール拡散性が低下する。好ましい下限は0.05mm、好ましい上限は0.15mm、より好ましい下限は0.07mm、より好ましい上限は0.13mmである。
本発明のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートの具体的構成としては、ポリオレフィン系樹脂層(A)、セルロース繊維層(B)が、(A)/(B)又は(B)/(A)のように積層された2層構造であってもよく、また、(A)/(B)/(A)又は(B)/(A)/(B)のように積層された3層構造であってもよく、(A)/(B)/(A)/(B)の4層構造であってもよい。なかでも、燃料供給側の面をセルロース繊維層(B)とすることが好ましい。
本発明のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートは、セルロース繊維からなるシートとポリオレフィン系樹脂からなるシートとを熱融着によって一体的に積層してなることが好ましい。このような方法で得られるダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートは、セルロース繊維層とポリオレフィン系樹脂層とが接合部で一体化した構造となり、その結果、メタノールの拡散性能を大幅に向上させることができる。特に積層界面は、多孔状になったポリオレフィン樹脂がセルロース繊維間に含浸された構成であることが好ましい。
上記セルロース繊維からなるシートの坪量としては特に限定されないが、好ましい下限は10g/m、好ましい上限は30g/mである。上記セルロース繊維からなるシートの坪量が10g/m未満であると、メタノール供給時にムラが生じることがあり、30g/mを超えると、充分なメタノール拡散効果が得られないことがある。
上記セルロース繊維からなるシートの厚みとしては特に限定されないが、好ましい下限は0.04mm、好ましい上限は0.30mmである。上記セルロース繊維からなるシートの厚みが0.04mm未満又は0.30mmを超えると、充分なメタノール拡散効果が得られないことがある。
上記セルロース繊維からなるシートの形態としては、例えば、湿式抄紙シート、湿式紡糸不織布シート、スパンボンド不織布シート、電界紡糸法による不織布シート等が挙げられる。
上記セルロース繊維からなるシートは、電界紡糸法を用いて製造されたものであることが好ましい。上記電界紡糸法とは、樹脂溶液又は熱溶融樹脂を高電圧電界の印加された条件で、微小孔径のノズルから吐出させ、基板上に微細径の繊維の不織布を製造する方法である。上記電界紡糸法を用いて製造することで、繊維径のバラツキが極めて小さいセルロース繊維からなるシートを得ることができる。
上記ポリオレフィン系樹脂からなるシートの坪量としては特に限定されないが、好ましい下限は5g/m、好ましい上限は25g/mである。上記ポリオレフィン系樹脂からなるシートの坪量が5g/m未満であると、メタノール供給時にムラが生じることがあり、25g/mを超えると、充分なメタノール拡散効果が得られないことがある。
上記ポリオレフィン系樹脂からなるシートの厚みとしては特に限定されないが、好ましい下限は0.05mm、好ましい上限は0.25mmである。上記ポリオレフィン系樹脂からなるシートの厚みが0.05mm未満又は0.25mmを超えると、充分なメタノール拡散効果が得られないことがある。
上記ポリオレフィン系樹脂からなるシートの形態としては、例えば、スパンボンド不織布シート、湿式抄紙不織布シート、湿式紡糸不織布シート、メルトブローン不織布シート等の不織布シート、フィルム延伸による多孔シート、発泡多孔シート等が挙げられる。
また、上記セルロース繊維からなるシートとポリオレフィン系樹脂からなるシートとを熱融着によって一体的に積層することにより、ポリオレフィン系樹脂からなるシートがセルロース繊維からなるシートとの接合部分において、空孔を塞ぐことなく、高い密着力で容易に融着固定することができる。
上記熱融着する際の温度は、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い温度で行われるが、上記ポリオレフィン系樹脂の融点よりも低い温度で融着させることもできる。
本発明のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、上述のように、セルロース繊維からなるシートとポリオレフィン系樹脂からなるシートとを熱融着によって一体的に積層する方法が挙げられる。
具体的には例えば、加熱された一対の加熱ローラの内部に、セルロース繊維からなるシートとポリオレフィン系樹脂からなるシートとを重ねたシートを通過させ、ニッピング圧力を掛けながら、所定の速度で通過させる方法等が挙げられる。
本発明によれば、メタノール拡散性に優れ、燃料カートリッジからのメタノール水溶液送出部が比較的小さな面積であっても、拡散浸透効果によってアノードに大面積でメタノールを供給することが可能なダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートを提供することができる。
また、高濃度メタノール水溶液の効率的な拡散供給が可能なだけでなく、薄層化することができ、更に、繊維を利用した自然拡散を利用することでポンプやファン等の拡散補機を使用する必要がなくなるため、小型のダイレクトメタノール型燃料電池に好適に用いることができる。
実施例1で使用したセルロース不織布シートの表面を撮影した拡大写真である。 実施例1において、熱融着後のポリプロピレン層側の表面を撮影した拡大写真である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
セルロースファイバーARBOCEL BE600−10(RETTENMAIER社製)5重量部、水酸化銅(化学用、キシダ化学社製)3重量部、28%アンモニア水(特級、キシダ化学社製)68重量部、蒸留水24重量部を室温下で混合し、セルロースファイバーを溶解してセルロース濃度5重量%の紡糸溶液を調製した。得られた紡糸溶液を用いて電界紡糸法によって、繊維断面円形、繊維径0.3〜1.5μm(平均繊維径0.81μm、標準偏差0.30μm)、坪量22g/m、厚み0.18mmの極細繊維不織布シートを得た。得られた極細繊維不織布シートを希塩酸溶液処理して銅を取り除いた後、充分乾燥することにより、セルロース不織布シートを得た。
得られたセルロース不織布シートのメタノール供給面とは反対側の主面に、ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量10g/m、厚み0.10mm)を載置し、ホットプレス機を用いて150℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.07mm、ポリプロピレン含有量が31重量%の複合シート(2層)を得た。ここで各シート厚みは、デジタル厚み計(ミツトヨ社製、測定部φ20mm)を用いて測定した。繊維径は、倍率10000倍のSEM写真上で30点をマークし、その最小値〜最大値、平均値(平均繊維径)、標準偏差を記録した。各シート坪量は、25mm×200mmの試験片の重さを測定し1m当りの重量に換算した。
(熱融着前後の表面及び断面状態の確認)
実施例1で使用したセルロース不織布シートの表面を撮影した拡大写真を図1、熱融着後のポリプロピレン層側の表面を撮影した拡大写真を図2に示す。
図2に示すように、ポリプロピレン層は無数の孔が形成された多孔体となっており、ポリプロピレンの一部はセルロース繊維層に含浸して一体化している。
(実施例2)
セルロースファイバーARBOCEL BE600−10(RETTENMAIER社製)5重量部、水酸化銅(化学用、キシダ化学社製)3重量部、28%アンモニア水(特級、キシダ化学社製)68重量部、蒸留水24重量部を室温下で混合し、セルロースファイバーを溶解してセルロース濃度5重量%の紡糸溶液を調製した。得られた紡糸溶液を用いて電界紡糸法によって、繊維断面円形、繊維径0.3〜2μm(平均繊維径0.83μm、標準偏差0.40μm)、坪量22g/m、厚み0.18mmの極細繊維不織布シートを得た。得られた極細繊維不織布シートを希塩酸溶液処理して銅を取り除いた後、充分乾燥することにより、セルロース不織布シートを得た。
得られたセルロース不織布シートのメタノール供給面となる主面に、ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量10g/m、厚み0.10mm)を載置し、ホットプレス機を用いて150℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.07mm、ポリプロピレン含有量が31重量%の複合シート(2層)を得た。
(実施例3)
セルロースファイバーARBOCEL BE600−10(RETTENMAIER社製)5重量部、水酸化銅(化学用、キシダ化学社製)3重量部、28%アンモニア水(特級、キシダ化学社製)68重量部、蒸留水24重量部を室温下で混合し、セルロースファイバーを溶解してセルロース濃度5重量%の紡糸溶液を調製した。得られた紡糸溶液を用いて電界紡糸法によって、繊維断面円形、繊維径0.3〜2.3μm(平均繊維径0.90μm、標準偏差0.41μm)、坪量22g/m、厚み0.18mmの極細繊維不織布シートを得た。得られた極細繊維不織布シートを希塩酸溶液処理して銅を取り除いた後、充分乾燥することにより、セルロース不織布シートを得た。
ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量5g/m、厚み0.07mm)の両方の主面に、2枚の前記セルロース不織布シートを載置し、ホットプレス機を用いて150℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.13mm、ポリプロピレン含有量が10重量%の複合シート(3層)を得た。
(実施例4)
セルロースファイバーARBOCEL BE600−10(RETTENMAIER社製)5重量部、水酸化銅(化学用、キシダ化学社製)3重量部、28%アンモニア水(特級、キシダ化学社製)68重量部、蒸留水24重量部を室温下で混合し、セルロースファイバーを溶解してセルロース濃度5重量%の紡糸溶液を調製した。得られた紡糸溶液を用いて電界紡糸法によって、繊維断面円形、繊維径0.3〜2.5μm(平均繊維径0.95μm、標準偏差0.50μm)、坪量22g/m、厚み0.18mmの極細繊維不織布シートを得た。得られた極細繊維不織布シートを希塩酸溶液処理して銅を取り除いた後、充分乾燥することにより、セルロース不織布シートを得た。
高密度ポリエチレンからなる不織布シート(融点129℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量10g/m、厚み0.10mm)の両方の主面に、2枚の前記セルロース不織布シートを載置し、ホットプレス機を用いて135℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.13mm、ポリエチレン含有量が18.5重量%の複合シート(3層)を得た。
(比較例1)
セルロース繊維からなる湿式抄紙シート(繊維断面形状扁平、繊維径5〜55μm、平均繊維径45.5μm、繊維径標準偏差13.1μm、坪量30g/m、厚み0.13mm)のメタノール供給面とは反対側の主面に、ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量20g/m、厚み0.19mm)を載置し、ホットプレス機を用いて150℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.13mm、ポリプロピレン含有量が40重量%の複合シート(2層)を得た。
(比較例2)
ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量5g/m、厚み0.07mm)の両方の主面に、2枚のセルロース繊維からなる湿式抄紙シート(繊維断面形状扁平、繊維径5〜55μm、平均繊維径43.8μm、繊維径標準偏差12.7μm、坪量27g/m、厚み0.12mm)を載置し、ホットプレス機を用いて150℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.22mm、ポリプロピレン含有量が8重量%の複合シート(3層)を得た。
(比較例3)
ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量10g/m、厚み0.10mm)の両方の主面に、2枚のセルロース繊維からなる湿式抄紙シート(繊維断面形状扁平、繊維径5〜55μm、平均繊維径46.5μm、繊維径標準偏差13.5μm、坪量37g/m、厚み0.14mm)を載置し、ホットプレス機を用いて150℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.23mm、ポリプロピレン含有量が12重量%の複合シート(3層)を得た。
(比較例4)
セルロース繊維からなる湿式抄紙シート(繊維断面形状扁平、繊維径5〜55μm、平均繊維径45.1μm、繊維径標準偏差14.0μm、坪量9g/m、厚み0.04mm)のメタノール供給面とは反対側の主面に、ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量5g/m、厚み0.07mm)を載置し、ホットプレス機を用いて150℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.04mm、ポリプロピレン含有量が36重量%の複合シート(2層)を得た。
(比較例5)
ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量30g/m、厚み0.30mm)の両方の主面に、2枚のセルロース繊維からなる湿式抄紙シート(繊維断面形状扁平、繊維径5〜55μm、平均繊維径45.5μm、繊維径標準偏差13.1μm、坪量30g/m、厚み0.13mm)を載置し、ホットプレス機を用いて150℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.22mm、ポリプロピレン含有量が33重量%の複合シート(3層)を得た。
(比較例6)
セルロース繊維からなる湿式抄紙シート(繊維断面形状扁平、繊維径5〜55μm、平均繊維径45.0μm、繊維径標準偏差13.6μm、坪量20g/m、厚み0.07mm)のメタノール供給面とは反対側の主面に、6ナイロンからなる不織布シート(融点222℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量10g/m、厚み0.10mm)を載置し、ホットプレス機を用いて210℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.09mm、ナイロン含有量が33重量%の複合シート(2層)を得た。
(比較例7)
6ナイロンからなる不織布シート(融点222℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量20g/m、厚み0.19mm)の両方の主面に、2枚のセルロース繊維からなる湿式抄紙シート(繊維断面形状扁平、繊維径5〜55μm、平均繊維径45.0μm、繊維径標準偏差13.6μm、坪量20g/m、厚み0.07mm)を載置し、ホットプレス機を用いて210℃で3秒間加熱することにより、熱融着させ、総厚み0.18mm、ナイロン含有量が33重量%の複合シート(3層)を得た。
(比較例8)
実施例1で用いたセルロース不織布シートを用いた。
(比較例9)
ホモポリプロピレンからなる不織布シート(融点164℃、繊維断面円形、繊維径0.8〜8μm、坪量10g/m、厚み0.10mm、1層)を用いた。
(評価)
(メタノール透過拡散性試験)
実施例及び比較例で得られたシートについて、シートを内径76mm、外径86mm、高さ20mmの円形枠状に載置し、第一層(メタノールIN側)面の5mm上から、マイクロピペットを用いて少量の青色インクで着色した特級メタノール試薬を10μL滴下した。滴下後、シート上を目視にて観察し、青色の部分をメタノールの浸透によるものと判断して以下の基準で評価した。
(メタノール透過性)
○:滴下面(表)と反対面(裏)の青色部分形状が楕円又は円形であり、かつ、表裏の青色部分面積が等しい場合
×:裏の青色部分がない場合
ムラ:表裏の青色部分形状がモザイク状で、裏の青色部分面積が小さい場合
なお、比較例6、7及び8で得られたシートでは、メタノール滴下により膜の変形が観察され、寸法が不安定で機能が安定しないと判断した。
本発明によれば、メタノール拡散性に優れ、燃料カートリッジからのメタノール水溶液送出部が比較的小さな面積であっても、拡散浸透効果によってアノードに大面積でメタノールを供給することが可能なダイレクトメタノール型燃料電池用複合シートを提供できる。
また、高濃度メタノール水溶液の効率的な拡散供給が可能なだけでなく、薄層化することができ、更に、繊維を利用した自然拡散を利用することでポンプやファン等の拡散補機を使用する必要がなくなるため、小型のダイレクトメタノール型燃料電池に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. ポリオレフィン系樹脂層と、前記ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方の主面に連続的に形成されたセルロース繊維層とを有し、
    前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が10〜35重量%、総厚みが0.2mm以下であり、
    前記セルロース繊維層のセルロース繊維は平均繊維径が0.3〜1.5μmである
    ことを特徴とするダイレクトメタノール型燃料電池用複合シート。
  2. セルロース繊維からなるシートとポリオレフィン系樹脂からなるシートとを熱融着によって一体的に積層してなることを特徴とする請求項1記載のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シート。
  3. セルロース繊維からなるシートは、坪量が10〜30g/m、厚みが0.04〜0.30mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シート。
  4. ポリオレフィン系樹脂からなるシートは、坪量5〜20g/m、厚み0.05〜0.25mmであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シート。
  5. ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のダイレクトメタノール型燃料電池用複合シート。
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