JP2011072229A - バイオマーカーとしてのマイクロrnaを用いた下咽頭がんの診断・治療選択 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、特定のマイクロRNAを下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法、下咽頭がんの判定方法、下咽頭がんの判定キット等を提供することを目的とする。
【解決手段】miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを下咽頭がんのバイオマーカーとして使用することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを下咽頭がんのバイオマーカーとして使用することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、下咽頭がんにおけるマイクロRNA(microRNA;miRNA)の発現プロファイルとその用途に関する。より詳細には、特定のマイクロRNAを下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法、下咽頭がんの判定方法、下咽頭がんの判定キット等に関する。
下咽頭がんは、喉頭の後方から両側方にかけて存在する腔である下咽頭にできるがんである。下咽頭がんの原因の詳細は明らかとなっていないが、過度の飲酒や喫煙との関連が指摘されており、そのため、食道がん、胃がん等との多重がんとなるケースも多く見られる。下咽頭がんは、症状が現れにくく、嚥下時痛、嚥下困難あるいはリンパ節転移の頸部腫脹等の症状が現れる頃に、すでに進行がんの状態で見つかることが多い。
下咽頭がんの治療は、主に病期と病理組織学的所見により決定されており、手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療等)が用いられる。特に、進行がんの場合は、手術、放射線療法、化学療法等を併用する集学的治療を行っても、根治性は非常に低く、また、転移し易いため、予後が悪い。また、進行がんの手術では、下咽頭だけでなく、喉頭の摘出も伴うため、患者は発声の能力を喪失する上、食道を腸管などで再建する必要がある。そのため、手術の侵襲は身体的・心理的に大きく、患者のQOL(Quality of Life)は、大幅な低下を来してしまう。下咽頭がんの末期では、患者は食事を経口摂取することができず、さらには、呼吸苦を伴う。また、下咽頭がんが頸動脈などに浸潤すると、出血死するおそれも生じる。
これらのことから、下咽頭がんの治療については、その早期診断及び早期発見が特に重要であるといえる。例えば、特許文献1には、生体試料中の、特定のアルド−ケト−リダクターゼ活性を有するタンパク質を免疫学的手法により検出することによって、肺、喉頭、咽頭、舌、子宮、胃、腎、大腸、脳、膵および膀胱の癌を判定する方法が記載されている。しかし、この方法は十分に実用的とは言えず、下咽頭がんの早期診断や早期発見の手法の開発は、主要な他のがんと比較して遅れている。例えば、下咽頭がんの早期がんマーカーは知られていない。また、下咽頭ファイバースコープを用いた検査は有効ではあるが、医療機関における普及率がかなり低い。そこで、この下咽頭ファイバースコープの代わりに、普及率の高い上部消化管内視鏡(胃カメラ)を用いて検査することも考えられるかもしれない。しかし、下咽頭は押し潰された形状となっているため、送気しながら観察しない限り、診断することが難しい。また、胃カメラは左側臥位で行うことが多いため、左下咽頭へは胃カメラが通るとしても、逆側である右下咽頭のがんは見逃される可能性が高い。
ところで、マイクロRNAは、細胞内に存在し、タンパクへの翻訳がなされない、長さ22塩基程度の1本鎖RNAである(非特許文献1参照)。1993年に線虫C.elegansにおいて、その後、2001年には脊椎動物でも発見され、種を越えて保存されている。現在、ヒトゲノム上には1000種類近くのマイクロRNAの存在が予測され、これまでに700種類以上のマイクロRNAがクローニングされている。また、マイクロRNAは、ゲノム上のタンパク翻訳領域の30%に対し遺伝子制御を行っていると推測されており(非特許文献2参照)、それ故、マイクロRNAの機能破綻は各種の疾患を引き起こす可能性がある。しかしながら、現在までに、その生物学的役割が明らかになったものはごく僅かに過ぎず、今後の解析が待たれている。頭頸部腫瘍に関するマイクロRNAの報告として、腫瘍細胞株を用いたものは散見されるが(非特許文献3、4参照)、下咽頭がん患者の臨床検体を用いての報告は現在まで行われていない。
Barbarotto E, Schmittgen TD, Calin GA. microRNAs and cancer:profile, profile, profile. IntJ Cancer. 2008; 122(5): 969-977.
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本発明の課題は、特定のマイクロRNAを下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法、下咽頭がんの判定方法、下咽頭がんの判定キット等を提供することにある。
前述したように、頭頸部腫瘍に関するマイクロRNAの報告として、腫瘍細胞株を用いたものは散見されるが、下咽頭がん患者の患者臨床検体を用いての報告は現在まで行われていない。腫瘍細胞株は、臨床検体のように組織を構成せず、また、他の組織からの生体分子の影響を受けない等の理由のため、腫瘍細胞株における遺伝子等の発現プロファイルは、その細胞株に対応するがん細胞の臨床検体における発現プロファイルとは異なることが知られている。したがって、細胞株の発現プロファイルから、臨床検体の発現プロファイルを予測することは基本的に不可能である。このような状況下で、本発明者らは、下咽頭がん組織のマイクロRNAと下咽頭正常組織のマイクロRNAとを対比し、特定のマイクロRNAが下咽頭がん組織において異常発現していることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法や、(2)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(1)に記載の方法に関する。
また本発明は、(3)以下の工程を備えたことを特徴とする下咽頭がんの判定方法:(A)下咽頭の検体組織中又は被検体の血液中のRNAを抽出する工程:(B)抽出したRNA中の、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375から選択される1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定する工程:(C)コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の正常被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:や、(4)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(3)に記載の下咽頭がんの判定方法や、(5)抽出したRNA中の、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p及びmiR-130b*からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して増加している場合に下咽頭がんであると評価することを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の下咽頭がんの判定方法や、(6)抽出したRNA中の、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して低下している場合に下咽頭がんであると評価することを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の下咽頭がんの判定方法に関する。
さらに本発明は、(7)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定することができる、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを下咽頭がんの判定に使用する方法や、(8)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを、下咽頭がんの判定に使用する方法や、(9)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の方法に関する。
さらにまた本発明は、(10)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定することができる、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを含んでいることを特徴とする下咽頭がんの判定キットや、(11)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを備えたことを特徴とする下咽頭がんの判定キットや、(12)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(10)又は(11)に記載の判定キットに関する。
またさらに本発明は、(13)以下の工程を含むことを特徴とする下咽頭がん治療薬のスクリーニング方法:(A)下咽頭がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(B)前記非ヒト動物における下咽頭がん組織中又は血液中の、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定する工程:(C)コントロールとしての、被検物質を未投与の場合におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:や、(14)miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(13)に記載のスクリーニング方法に関する。
本発明の下咽頭がんの判定方法や、下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法によると、迅速かつ正確に下咽頭がんを判定することができる。また、本発明の下咽頭がんの判定キットや、下咽頭がんの判定に使用する方法によると、下咽頭がんであるかどうかを迅速かつ正確に判定することができる。さらに、本発明の下咽頭がん治療薬のスクリーニング方法によると、下咽頭がん治療薬を効率的にスクリーニングすることができる。なお、本件マイクロRNA等についてさらに研究が進めば、下咽頭がんの発症・進展・予後予測や治療が可能となることで、現在の下咽頭がん臨床のさまざまな問題点を解決する突破口となることが期待できる。また、マイクロRNAの発現は組織特異的であることが知られており、下咽頭原発不明がんの原発部位の特定にも有用となる可能性がある。さらに治療に際しては、薬剤や放射線治療への抵抗性が診断できれば、患者個人ごとに有効な治療法を選択する個別化治療にまで発展させ得る可能性を含んでいる。正確な診断や予後の予測は、余計な検査や患者の必要以上の通院を減らすことが期待でき、医療経済効果も大きいと予想される。
本発明の下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法としては、miR-107(マイクロRNA-107)、miR-187(マイクロRNA-187)、miR-196b(マイクロRNA-196b)、miR-301b(マイクロRNA-301b)、miR-331-5p(マイクロRNA-331-5p)、miR-424(マイクロRNA-424)、miR-517a(マイクロRNA-517a)、miR-579(マイクロRNA-579)、miR-758(マイクロRNA-758)、let-7f-1*(マイクロRNA let-7f-1*)及びlet-7g*(マイクロRNA let-7g*)、miR-106b*(マイクロRNA-106b*)、miR-206(マイクロRNA-206)、miR-519b-3p(マイクロRNA-519b-3p)、miR-130b*(マイクロRNA-130b*)、miR-190(マイクロRNA-190)、miR-199b-5p(マイクロRNA-199b-5p)、miR-375(マイクロRNA-375)からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNA(以下、「本件マイクロRNA」ともいう。)を、下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法である限り特に制限はされず、具体的には、本発明の下咽頭がんの判定方法や、本発明の下咽頭がんの判定に使用する方法や、本発明の下咽頭がん治療薬のスクリーニング方法を例示することができる。上記の下咽頭がんの種類としては、特に制限されず、初発又は再発の下咽頭がんを例示することができ、初発の下咽頭がんをより好適に例示することができる。
本件マイクロRNAの由来となる生物としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。ヒト由来の本件マイクロRNA(hsa-miR)であるmiR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375の各ヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1〜18に示される。マイクロRNAの配列は特に哺乳動物間では保存性が高く、上記の本件マイクロRNAはヒト以外の哺乳動物においてもヒトと同様の発現プロファイルを示すと考えられる。
また、本件マイクロRNAには、配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAが便宜上含まれる。上記の「1若しくは2個以上」としては、1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましく、1〜2個が特に好ましく、1個がさらに好ましい。なお、上記の欠失等されたヌクレオチド配列からなるRNAが、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するかどうかは、例えば後述のマイクロアレイ法や定量PCR法により容易に確認することができる。なお、ヒト以外の上記の各生物からの本件マイクロRNAの配列は、GenBank等のデータベースに登録されている情報に基づいて確認又は特定することができる。また、上記の下咽頭がん被検体とは、下咽頭がんに罹患した被検体を意味する。本明細書における「被検体」としては、対象となるヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。
本発明の下咽頭がんの判定方法としては、(A)下咽頭の検体組織中又は被検体の血液中のRNAを抽出する工程:(B)抽出したRNA中の、本件マイクロRNA量を測定する工程:(C)コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織(好適には下咽頭の正常組織)又は被検体と同種の正常被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を備えている限り特に制限されないが、抽出したRNA中の、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p及びmiR-130b*からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して増加している場合に下咽頭がんであると評価し、及び/又は、抽出したRNA中の、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して低下している場合に下咽頭がんであると評価する方法を好適に例示することができる。なお、上記工程(A)において下咽頭の検体組織を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、検体組織と同種の非がん組織(好適には下咽頭の正常組織)を用い、上記工程(A)において被検体の血液を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、被検体と同種の正常被検体の血液を用いる。また、本明細書におけるマイクロRNAの発現量としては、サンプル間のばらつきを補正するために適切な内部標準遺伝子で補正した相対発現量を用いることがより正確な判定を行なう観点から好ましい。内部標準遺伝子としては特に制限されないが、RNU48、RNU6b、snRNA(核内低分子RNA)、及び、snoRNA(核小体低分子RNA)からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子を例示することができる。
上記(A)工程におけるRNAを抽出する方法としては、下咽頭の検体組織中又は被検体の血液中から、マイクロRNAを含むRNAを抽出する方法である限り特に制限されず、例えば、mirVana miRNA Isolation Kit(Applied Biosystems社製)を添付のプロトコールにしたがって用いることによって、マイクロRNAを含むトータルRNAを抽出する方法を好適に例示することができる。上記の下咽頭の検体組織としては、下咽頭がんの判定の対象となる生物由来の下咽頭の組織である限り特に制限されず、上記生物としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。
上記(B)工程における本件マイクロRNAの発現量を測定する方法としては、マイクロRNAを含むRNA中の本件マイクロRNA量を同定し得る方法である限り特に制限されず、例えば本発明の下咽頭がんの判定キット、すなわち、本件マイクロRNAの発現量を測定することができる、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを含んでいる下咽頭がんの判定キットや、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを備えた下咽頭がんの判定キットや、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを備えた下咽頭がんの判定キットを用いる方法や;本発明の下咽頭がんの判定に使用する方法、すなわち、本件マイクロRNAの発現量を測定することができる、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを下咽頭がんの判定に使用するマイクロアレイ法や、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを下咽頭がんの判定に使用する定量PCR法や、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを、下咽頭がんの判定に使用する定量PCR法(蛍光プローブ法);を好適に例示することができる。
上記のマイクロアレイ法としては、本件マイクロRNAの発現量を測定することが可能である限り特に制限されないが、組織から抽出したRNAをラベル(好ましくは蛍光ラベル)で標識し、そのRNAを、同定対象とするマイクロRNAに相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド(好ましくはDNA)又はその一部からなるプローブが固定されたマイクロアレイに接触させてハイブリダイゼーションを行った後、マイクロアレイを洗浄して、マイクロアレイ上に残ったマイクロRNAの発現量を測定する方法を例示することができる。
上記の核酸配列のヌクレオチドの種類としては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限されないが、安定性が高いことからDNAであることが好ましい。また、上記のポリヌクレオチドの一部の長さとしては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限されないが、ハイブリダイゼーションの安定性を確保する観点から、10〜100merであることが好ましく、10〜40merであることがより好ましい。なお、上記のポリヌクレオチド又はその一部は、当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。
上記のポリヌクレオチド又はその一部を固定するアレイとしては特に制限されないが、ガラス基板やシリコン基板等を好適に例示することができ、ガラス基板をより好適に例示することができる。上記のポリヌクレオチド又はその一部をアレイに固定する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
また、本発明のマイクロアレイを含んでいる下咽頭がんの判定キットには、前述のマイクロアレイの他に、例えばRNAのラベル化反応に用いる試薬、ハイブリダイゼーション反応に用いる試薬、洗浄に用いる試薬、組織からのRNA抽出に用いる試薬等の、マイクロアレイ法に用いる試薬などの任意の要素をさらに含んでいてもよい。
そして、マイクロアレイ法としては、Agilent Human miRNAV2 (Agilent Technologies社製)をAgilent Technologies社のmiRNA Microarray protocol Version 1.5に記載の方法に従って用い、DNA Microarray Scanner (Agilent Technologies社製)でマイクロRNAの発現量を測定する方法や、TaqMan(登録商標)Human MicroRNA Array v2.0 (Applied Biosystems社製)をそれに添付されたプロトコールの方法に従って用い、Applied Biosystems 7900HT Fast リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社製)でマイクロRNAの発現量を測定する方法をより具体的に例示することができ、中でも、後者の方法は、TaqMan(登録商標)プローブを使用する方法であって、定量性に優れているため、より好ましく例示することができる。上記のポリヌクレオチド又はその一部からなるプローブが固定されたマイクロアレイは、測定対象とする本件マイクロRNAの配列情報に基づいてポリヌクレオチドを合成し、それを市販のアレイに固定するなどして作製することができる。
上記の定量PCR法としては、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを用いる方法であり、かつ、本件マイクロRNAの発現量を測定することが可能である限り特に制限されず、アガロース電気泳動法、SYBRグリーン法、蛍光プローブ法等の通常の定量PCR法を用いることができるが、定量の精度や信頼性の点で、蛍光プローブ法が最も好ましい。
定量PCR法におけるプライマーセットとは、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマー(ポリヌクレオチド)の組合せを意味する。上記プライマーとしては、本件マイクロRNAの配列を増幅し得る限り特に制限されないが、本発明における所定のマイクロRNAの配列の5’側の一部の配列からなるプライマー(フォワードプライマー)と、そのマイクロRNAの配列の3’側の一部の配列に相補的な配列からなるプライマー(リバースプライマー)とからなるプライマーセットを例示することができる。ここで、5’側とは、成熟型マイクロRNAの配列において比較した場合に、リバースプライマーに対応する配列よりも、5’側であることを意味し、3’側とは、成熟型マイクロRNAの配列において比較した場合に、フォワードプライマーに対応する配列よりも、3’側であることを意味する。
マイクロRNAの5’側の配列として、好ましくは、そのマイクロRNAの配列の中央の核酸よりも5’側の配列を例示することができ、マイクロRNAの3’側の配列として、好ましくは、そのマイクロRNAの配列の中央の核酸よりも3’側の配列を例示することができる。また、それぞれのプライマーの長さとしては、マイクロRNAを増幅し得る限り特に制限されないが、7〜10merのポリヌクレオチドであることが好ましい。なお、上記プライマーであるポリヌクレオチドのヌクレオチドの種類としては、安定性が高いことからDNAであることが好ましい。
上記の蛍光プローブとしては、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含んでいる限り特に制限されず、TaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものも含む)や、サイクリングプローブ法に用いうる蛍光プローブを好適に例示することができ、特にTaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものも含む)に用いうる蛍光プローブをより好適に例示することができる。TaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものを除く)や、サイクリングプローブ法に用いうる蛍光プローブとしては、5’側に蛍光色素を標識し、3’側に消光物質を標識した蛍光プローブを例示することができ、特に好ましいプローブとして、Applied Biosystems社製のPart Number 4373154(miR-107用)、4373111(miR-187用)、4373103(miR-196b用)、4395503(miR-301b用)、4395344(miR-331-5p用)、4373201(miR-424用)、4373243(miR-517a用)、4381023(miR-579用)、4395180(miR-758用)、4395528(let-7f-1*用)、4395229(let-7g*用)、4395491(miR-106b*用)、4373092(miR-206用)、4395495(miR-519b-3p用)、4395225(miR-130b*用)、4373110(miR-190用)、4373100(miR-199b-5p用)、4373027(miR-375用)、4373278(miR-34a用)、4373036(miR-34c-5p用)等のプローブを例示することができ、FRET原理を利用した蛍光プローブとしては、5’側と3’側に、それぞれドナー色素とアクセプター色素を標識した蛍光プローブを例示することができる。上記の蛍光色素、消光物質、ドナー色素、アクセプター色素等は、市販のものを適宜使用することができる。
上記の蛍光プローブにおける核酸配列のヌクレオチドの種類としては、本件マイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り、特に制限されないが、安定性が高いことからDNAであることが好ましい。また、上記のポリヌクレオチドの一部の長さとしては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り、特に制限されないが、ハイブリダイゼーションの安定性を確保する観点から、10mer以上であることが好ましく、15mer以上であることがより好ましく、対象とするマイクロRNAの全長のヌクレオチド数から1〜3mer少ないヌクレオチド数であることがさらに好ましい。
上記プライマーセットや、上記の蛍光プローブは、その配列情報に基づき当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。上記のプライマーセットや蛍光プローブを用いた定量PCRの具体的な方法としては、TaqMan(登録商標)マイクロRNA Assays(Applied Biosystems社製)を、添付のプロトコールにしたがって使用する方法を好適に例示することができる。また、プライマーセットと蛍光プローブとを備えた本発明の下咽頭がんの判定キットには、前述のプライマーセットの他に、例えばポリメラーゼ等の定量PCR反応に用いる試薬などの任意の要素をさらに含んでいてもよい。
上記(C)工程のコントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織(好適には下咽頭の正常組織)又は被検体と同種の正常被検体の血液(例えば被検体がヒトである場合は、下咽頭がんではないヒトの血液)におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する方法におけるコントロールとしては、より正確な評価が可能となることから、検体組織と同一個体の組織(正常部位)であることが好ましい。なお、コントロールとしての検体組織と同種の正常組織又は被検体と同種の正常被検体の血液は、検体組織を採取する際にかならずしも採取する必要はなく、非がん組織中(好適には正常組織中)又は正常被検体の血液中の本件マイクロRNAの発現量についてあらかじめ検量線を作成し、それとの比較・評価を行なってもよい。
このように検体組織中又は被検体の血液中のRNAに含まれるマイクロRNAの発現量に基づいて、その検体組織又はその被検体が下咽頭がんであるかどうか(その検体組織が下咽頭がんであるか、又は、その被検体が下咽頭がんに罹患しているかどうか)を判定することができる。前記のように、本件マイクロRNAのうち、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p及びmiR-130b*ついては、コントロールと比較してその発現量が増加している場合に下咽頭がんであると判定することができ、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375については、コントロールと比較してその発現量が低下している場合に下咽頭がんであると判定することができる。
本件マイクロRNAの中でも、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3pは、下咽頭の正常組織における発現が少なく、特にmiR-107、miR-187、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-106b*、miR-206は、下咽頭の正常組織における発現がほとんど見られないため、下咽頭がんであるかどうかをより正確に判定することが可能である点で好ましい。また、2種類以上の本件マイクロRNAの発現量を測定してコントロールと比較・評価することにより、下咽頭がんであるかどうかをより正確に判定することが可能となる点で好ましい。なお、本発明者らの別発明に関するPCT出願であるPCT/JP2009/002629(バイオマーカーとしてのマイクロRNAを用いた頭頸部腫瘍の診断・治療選択)では、被検体が頭頸部腫瘍に罹患している場合に、被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNA(例えばmiR-196aなど)が実際に見い出された。下咽頭がん組織において発現が増加又は低下する本件マイクロRNAの中にも、被検体が下咽頭がんに罹患している場合に被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNAが存在する可能性はきわめて高いと考えられる。本件マイクロRNAの中でも、被検体が下咽頭がんに罹患している場合に、被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNAは、採取が極めて容易な血液サンプルを利用することができるため、下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法や、下咽頭がんの判定方法等における迅速性や簡便性が特に優れている点で、極めて好ましい。本件マイクロRNAの中で、被検体が下咽頭がんに罹患している場合に被検体の血液中の濃度も変化するものがいずれであるかは、下咽頭がんに罹患している被検体の血液中の本件マイクロRNA濃度と、下咽頭がんに罹患していない正常被検体の血液中の本件マイクロRNA濃度を比較することによって、容易に見い出すことができる。
下咽頭がんであると判定する場合の本件マイクロRNAの発現量の増加の程度としては、例えば、コントロールに対する割合として好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは100%以上の増加であることを挙げることができ、下咽頭がんであると判定する場合の本件マイクロRNAの発現量の低下の程度としては、例えば、コントロールに対する割合として好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは75%以上の低下であることを挙げることができる。
また、本発明の下咽頭がんの判定方法は、上記(A)〜(C)工程に加えて、さらに(D)抽出したRNA中のlet-7 family、miR-17-92 cluster、miR-15、及びmiR-16からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定し、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織(好適には下咽頭の正常組織)又は被検体と同種の正常被検体の血液における前記マイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を含むことができる。上記let-7 familyとしては、let-7a、let-7b、let-7c、let-7d、let-7e、let-7f、let-7gを好適に例示することができ、上記miR-17-92 clusterとしては、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-19b、miR-20a、miR-92aを好適に例示することができ、上記miR-15としては、miR-15a、miR-15bを好適に例示することができる。ヒト由来の上記各マイクロRNA(let-7a、let-7b、let-7c、let-7d、let-7e、let-7f、let-7g、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-19b、miR-20a、miR-92a、miR-15a、miR-15b、miR-16)としては、それぞれ配列番号19〜34に示されるヌクレオチド配列からなるRNAを特に好適に例示することができる。
この(D)工程における各マイクロRNA(let-7 family、miR-17-92 cluster、miR-15、及びmiR-16)は、下咽頭がんを以外の腫瘍において異常発現が認められるため、(B)工程の同定・評価の結果、検体組織又は被検体が下咽頭がんであると判定された場合に、さらに(D)工程におけるマイクロRNAの異常発現が認められるときは、下咽頭がん以外の腫瘍巣が存在すると判定することができる。なお、マイクロRNA let-7 familyは肺腫瘍組織で、miR-15及びmiR-16は慢性リンパ性白血病あるいは膵臓腫瘍組織で発現が減少することが知られており、miR-17-92 clusterはB細胞リンパ腫あるいは肺腫瘍組織で発現が増加することが知られている。
本発明の下咽頭がん治療薬のスクリーニング方法としては、(a)下咽頭がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(b)前記非ヒト動物における下咽頭がん組織中又は血液中の、本件マイクロRNAの発現量を測定する工程:(c)コントロールとしての、被検物質を未投与の場合におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を含んでいる限り特に制限されず、上記非ヒト動物の種類としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の非ヒト哺乳動物を好適に例示することができ、中でもマウス、ラットをより好適に例示することができる。また、下咽頭がんに罹患した非ヒト動物としては、下咽頭がんを自然に罹患した非ヒト動物であってもよいし、発がん物質で下咽頭がんを誘導した非ヒト動物であってもよい。
上記(b)工程における本件マイクロRNAの発現量を測定する方法としては、前述の本件マイクロRNAの発現量を測定する方法を用いればよく、また、上記(c)工程において比較・評価する方法としては、本件マイクロRNAのうち、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p及びmiR-130b*については、コントロールと比較して低下している場合に、その被検物質が下咽頭がん治療薬である可能性が高いと判定することができ、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375については、コントロールと比較して増加している場合に、その被検物質が下咽頭がん治療薬である可能性が高いと判定することができる。マイクロRNAは、mRNAに結合するなどして、その遺伝子の発現を抑制するなどの性質が報告されているため、下咽頭がん組織における上記マイクロRNAの異常発現を正常化方向にシフトさせるような被検物質は、下咽頭がん治療薬として用いうる可能性が高いと考えられる。
なお、(c)工程に代えて、(d)コントロールとしての、下咽頭組織と同種の非がん組織(好適には下咽頭の正常組織)又は下咽頭がん被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を採用することができる。(d)工程において比較・評価する方法としては、本件マイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して有意差がない場合に、その被検物質が下咽頭がん治療薬である可能性が高いと判定することができる。
本件マイクロRNAの中でも、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3pは、下咽頭の正常組織における発現が少なく、特にmiR-107、miR-187、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-106b*、miR-206は、下咽頭の正常組織における発現がほとんど見られないため、下咽頭がん治療薬である可能性をより正確に判定することが可能である点で好ましい。また、上述のマイクロRNAを2種類以上、下咽頭がんのバイオマーカーとして併用すると、下咽頭がん治療薬である可能性をより正確に判定することが可能となる点で好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[サンプル組織の採取]
慶應義塾大学医学部ならびに佐野厚生総合病院の倫理委員会の承認のもと、慶應義塾大学病院又は佐野厚生総合病院の耳鼻咽喉科外来を受診した患者を選定し、サンプル提供の依頼対象者とした。その上で、その対象者からインフォームド・コンセントを得た後、3人の各対象者の下咽頭から、合計5種類のサンプル組織(図1の“Sample ID”3046, 3043, 3109, 3112, 3191)を採取した。なお、Sample ID 3046と3043は、同一患者であり、Sample ID 3109と3112は、同一患者である。これら5種類のサンプル組織における組織の種類及び状態(図1の“tissues”の項目)としては、下咽頭の正常組織(hypopharynx)、下咽頭がん(hypopharyngeal cancer)の2種類である。各下咽頭がんサンプルの進行度は、図1の“stage”の項目に記載したとおりであり、これらの下咽頭がんは初発の下咽頭がんである。
慶應義塾大学医学部ならびに佐野厚生総合病院の倫理委員会の承認のもと、慶應義塾大学病院又は佐野厚生総合病院の耳鼻咽喉科外来を受診した患者を選定し、サンプル提供の依頼対象者とした。その上で、その対象者からインフォームド・コンセントを得た後、3人の各対象者の下咽頭から、合計5種類のサンプル組織(図1の“Sample ID”3046, 3043, 3109, 3112, 3191)を採取した。なお、Sample ID 3046と3043は、同一患者であり、Sample ID 3109と3112は、同一患者である。これら5種類のサンプル組織における組織の種類及び状態(図1の“tissues”の項目)としては、下咽頭の正常組織(hypopharynx)、下咽頭がん(hypopharyngeal cancer)の2種類である。各下咽頭がんサンプルの進行度は、図1の“stage”の項目に記載したとおりであり、これらの下咽頭がんは初発の下咽頭がんである。
採取したこれらの組織のそれぞれの一部を、RNAlater(登録商標)(Applied Biosystems社製)が分注されたチューブに入れて冷凍保存し、組織内のRNAを安定化した。なお、各サンプルの組織の状態(がん又は正常)は、採取した組織の他の一部について病理学検査を実施し、確定診断を行った。
[サンプル組織からのRNAの抽出及びその質的評価]
後述の網羅的発現解析に用いるため、実施例1で冷凍保存した各組織からRNAを抽出した。具体的には、mirVana miRNAIsolation Kit(Applied Biosystems社製)を添付のプロトコールにしたがって用いて、前述の各組織から、マイクロRNAを含むトータルRNAを抽出した。
後述の網羅的発現解析に用いるため、実施例1で冷凍保存した各組織からRNAを抽出した。具体的には、mirVana miRNAIsolation Kit(Applied Biosystems社製)を添付のプロトコールにしたがって用いて、前述の各組織から、マイクロRNAを含むトータルRNAを抽出した。
次に、後述の網羅的発現解析で十分な精度が得られることを確認するために、抽出したRNAの質的評価を行った。具体的には、得られたRNAの濃度を蒸留水にて約30ng/μLに調整し、分光光度計にてOD260/280(OD260の計測値をOD280の計測値で割った数値)等を計測及び算出した。その結果を図2に示す。図2に示されているように、OD260/280はいずれも約1.7〜2.1の範囲内に入っており、タンパク質やフェノールの混入の少ない、質の良いRNAであることが分かった。また、抽出したトータルRNAのRIN(RNA Integrity Number)を、Bio-Analyzer RNA6000(Agilent Technologies社製)にて計測し、RNAの分解の程度を調べた。その結果を図2及び図3に示す。図2及び図3に示されているように、各サンプルのRINは十分に高いレベルを保持しており、質の良いRNAであることが分かった。
[各組織におけるマイクロRNAの発現解析]
TaqMan(登録商標)Human MicroRNA Array v2.0 (AppliedBiosystems社製)を用いて、ヒトのマイクロRNA667種類につき定量PCRを用いた網羅的発現解析を行った。この定量PCR用のTaqManプローブとしては、それぞれPart Number 4373154(miR-107用)、4373111(miR-187用)、4373103(miR-196b用)、4395503(miR-301b用)、4395344(miR-331-5p用)、4373201(miR-424用)、4373243(miR-517a用)、4381023(miR-579用)、4395180(miR-758用)、4395528(let-7f-1*用)、4395229(let-7g*用)、4395491(miR-106b*用)、4373092(miR-206用)、4395495(miR-519b-3p用)、4395225(miR-130b*用)、4373110(miR-190用)、4373100(miR-199b-5p用)、4373027(miR-375用)のプローブ(Applied Biosystems社製)を用いた。解析の方法は、前述のTaqMan(登録商標)Human MicroRNAArray v2.0に添付されたプロトコールの方法にしたがった。具体的には、以下のような方法で行った。
TaqMan(登録商標)Human MicroRNA Array v2.0 (AppliedBiosystems社製)を用いて、ヒトのマイクロRNA667種類につき定量PCRを用いた網羅的発現解析を行った。この定量PCR用のTaqManプローブとしては、それぞれPart Number 4373154(miR-107用)、4373111(miR-187用)、4373103(miR-196b用)、4395503(miR-301b用)、4395344(miR-331-5p用)、4373201(miR-424用)、4373243(miR-517a用)、4381023(miR-579用)、4395180(miR-758用)、4395528(let-7f-1*用)、4395229(let-7g*用)、4395491(miR-106b*用)、4373092(miR-206用)、4395495(miR-519b-3p用)、4395225(miR-130b*用)、4373110(miR-190用)、4373100(miR-199b-5p用)、4373027(miR-375用)のプローブ(Applied Biosystems社製)を用いた。解析の方法は、前述のTaqMan(登録商標)Human MicroRNAArray v2.0に添付されたプロトコールの方法にしたがった。具体的には、以下のような方法で行った。
TaqMan(登録商標)Human MicroRNA Array v2.0に添付されたMegaplex RT Primersを用いて、実施例2で得られたトータルRNA中のマイクロRNAについて逆転写反応を行い、マイクロRNAのcDNAを調製した。このマイクロRNAのcDNAの希釈物と、TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mixとを混合した後、TaqMan(登録商標)Human MicroRNA Array v2.0に添付されたプレートに負荷した。このプレートを、Applied Biosystems 7900HT Fast リアルタイムPCRシステム(AppliedBiosystems社製)にセットしてPCRを行い、667種類のマイクロRNAについて定量を行った。
667種類のマイクロRNAのうち、下咽頭の正常組織(Sample ID 3046 (normal), 3109 (normal))と、下咽頭がん組織(Sample ID 3043 (cancer), 3112 (cancer), 3191 (cancer))とを比較して、発現量(シグナル強度)に大きな差が見られる複数のマイクロRNAを見出した。各サンプルにおけるそれらのマイクロRNAのシグナル強度を図4及び5に示す。図4には、下咽頭がん組織で発現が増加するマイクロRNA(miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p及びmiR-130b*)を示し、図5には、下咽頭がん組織で発現が低下するマイクロRNA(miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375)を示す。これらのマイクロRNAは、下咽頭がん組織において、下咽頭の正常組織とは異なる発現(異常発現)していることから、これらのマイクロRNAは、下咽頭がん組織のマーカーとして用いることができる。また、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3pは、下咽頭の正常組織における発現が少なく、特にmiR-107、miR-187、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-106b*、miR-206は、下咽頭の正常組織における発現がほとんど見られないため、下咽頭がんであるかどうかをより正確に判定することが可能である点で好適に用いることができる。
なお、他のがんにおいて異常発現することが知られるmiR-15(miR-15a、miR-15b)及びmiR-16;miR-17-92 cluster(miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-19b、miR-20a、miR-92a);let-7 family(let-7a、let-7b、let-7c、let-7d、let-7e、let-7f、let-7g);についての発現を各サンプルにて確認したが、下咽頭がんにおいては特に異常発現は見られなかった(図6、図7、図8)。また、がん化の抑制に関与すると考えられているmiR-34(miR-34a、miR-34c-5p)についての発現を、各サンプルについて確認したが、下咽頭がんにおいては特に異常発現は見られなかった(図9)。
本発明は、下咽頭がんの判定の分野や、下咽頭がん治療薬のスクリーニング方法の分野において好適に利用することができる。
Claims (14)
- miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを下咽頭がんのバイオマーカーとして使用する方法。
- miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 以下の工程を備えたことを特徴とする下咽頭がんの判定方法:
(A)下咽頭の検体組織中又は被検体の血液中のRNAを抽出する工程:
(B)抽出したRNA中の、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375から選択される1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定する工程:
(C)コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の正常被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程: - miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項3に記載の下咽頭がんの判定方法。
- 抽出したRNA中の、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p及びmiR-130b*からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して増加している場合に下咽頭がんであると評価することを特徴とする請求項3又は4に記載の下咽頭がんの判定方法。
- 抽出したRNA中の、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して低下している場合に下咽頭がんであると評価することを特徴とする請求項3又は4に記載の下咽頭がんの判定方法。
- miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定することができる、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを下咽頭がんの判定に使用する方法。
- miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを、下咽頭がんの判定に使用する方法。
- miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
- miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定することができる、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを含んでいることを特徴とする下咽頭がんの判定キット。
- miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを備えたことを特徴とする下咽頭がんの判定キット。
- miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項10又は11に記載の判定キット。
- 以下の工程を含むことを特徴とする下咽頭がん治療薬のスクリーニング方法:
(A)下咽頭がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:
(B)前記非ヒト動物における下咽頭がん組織中又は血液中の、miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定する工程:
(C)コントロールとしての、被検物質を未投与の場合におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程: - miR-107、miR-187、miR-196b、miR-301b、miR-331-5p、miR-424、miR-517a、miR-579、miR-758、let-7f-1*、let-7g*、miR-106b*、miR-206、miR-519b-3p、miR-130b*、miR-190、miR-199b-5p及びmiR-375が、それぞれ配列番号1〜18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、下咽頭がん組織又は下咽頭がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項13に記載のスクリーニング方法。
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