以下、本発明の実施の形態の例を説明する。
図1は本発明の真空吸着ノズルを電子部品装着機の保持部材に組み付けたときの構成の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)の縦断面図であり、(c)は(a)のディンプルの径と間隔を示す模式図である。
図1に示す真空吸着ノズル1は、真空吸引することによって吸着物である電子部品(図示せず)を吸着して保持するための吸着面2を先端の端面側に有した先端部5と、先端部5の吸着面2と相対する側に先端部5に向かって先細りの形状で設けられた錐状部4と、錐状部4が吸着面2と相対する根元の端面側に設けた頭部8とを有する構成である。そして、先端部5を貫通して吸着面2に開口した内孔は、錐状部4と頭部8とに延設して頭部8の表面に開口させて、吸引孔3としてある。そして錘状部4には、開口が円形状であり内面が凹曲面状の多数のディンプル6を有している。
また、真空吸着ノズル1の頭部8と嵌合する受け部11を有し、吸引孔3と連通するように吸引孔12を有している保持部材10が、真空吸着ノズル1の頭部8と受け部11とを嵌合させて取り付けられており、この保持部材10を介して真空吸着ノズル1が電子部品装着機(図示せず)に取り付けられるようにしてある。
次に、図2に、本発明の真空吸着ノズル1を具備した電子部品装着機を用いて、チップ状の電子部品を回路基板に実装する電子部品装着装置の構成を概略図で示す。
図2に示す電子部品装着装置20は、電子部品装着機14に具備した真空吸着ノズル1と、電子部品15を並べたトレイ16と、真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15に向けて光を照射するライト17と、ライト17の反射光を受光するためのCCDカメラ18と、CCDカメラ18で受光した反射光(画像)を画像処理するための画像解析装置19とで構成されている。
そして、この電子部品装着装置20は、真空吸着ノズル1がトレイ16まで移動し、トレイ16上に並べられた電子部品15を吸着すると、ライト17が真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15へ向けて光を照射し、この光が電子部品15の本体や電極に当たって反射する反射光をCCDカメラ18で受光し、CCDカメラ18で受光した画像を基に画像解析装置19によって電子部品15の位置を測定して、そのデータを基に回路基板(図示せず)の所定の位置に電子部品15を吸着した真空吸着ノズル1を移動させて、回路基板の表面に電子部品15を実装するものである。なお、図示していないが、電子部品装着装置20には回路基板上に実装した電子部品15の位置が正確であるかどうかをCCDカメラで撮像して画像解析装置で解析し、任意の実装予定位置より位置ずれが大きい場合には実装した回路基板を製造工程から除去するようになっている。
そして、本発明の真空吸着ノズル1は、吸着物を真空吸着する吸着面2を有する先端部と該先端部に向かって縮径する錐状部4とを有する真空吸着ノズル1であって、錐状部4に多数のディンプル6を有することが重要である。
図1(a)〜(c)に示すように、錐状部4に多数のディンプル6を有することから、ライト17から照射された光は、ディンプル6では内面の曲面で反射して方向が特定されない散乱光となり、ディンプル間7では特定の方向へ向かう反射光となり、CCDカメラはディンプル間7の反射光と、ディンプルの散乱光のわずか一部とを検出することになる。
一方、電子部品に照射された光は、錐状部4で散乱された光と比較して多くがCCDカメラへ入射することから、吸着された電子部品と、その背景となる真空吸着ノズル1の外周面である錐状部4とのコントラストが明瞭となり、電子部品の正確な位置検出ができるので装着精度が向上する。
また、ディンプル6に入射した光は、ディンプル6の周囲に均等に散乱するのではなく、CCDカメラに入射する光が少なくなる方向に散乱することが好ましい。ディンプル6の周囲に均等に散乱すると、散乱光の一部がCCDカメラに入射しやすくなって電子部品の背景が明るくなりコントラストが不明瞭になるためである。
ディンプル6の曲面は、錐状部4に照射された光が一方向に集中して反射することを防止し、真空吸着ノズル1や周囲の部材に強い反射光が生じCCDカメラで撮影した画像で吸着物と背景とのコントラストが不明瞭になるという問題を防止する。
また、錐状部4は、図1(a)では円錐形状で示されているが、一般的に錐状体と呼ばれる形状全般を示すものである。さらに、先端部5は図1(a)では円筒形状で示されているが、角柱や錐状体であってもよい。
また、ディンプル6の間隔は、ディンプル6の径以下であることが好ましい。
図1(c)に示すように、ディンプル6の間隔6bがディンプルの径6a以下であると、錐状部4に照射された光はディンプル6の曲面で散乱されて電子部品の背景を暗い状態に保つことができる。また、ディンプル間7は、真空吸着ノズル1を電子部品装着機から取り外して洗浄したり取り付けたりする作業中に、錐状部4が周囲の部材と接触しディンプル間7が欠けて変形するという問題を防止する。錐状部4の表面がディンプル6だけで形成されると、隣接するディンプル6の境界にはディンプル間7が殆ど無くなるためディンプル間7からの反射光はなくなり好ましいが一方でディンプルの境界部が突起状となり欠けやすくなって真空吸着ノズル1が損傷するという問題が生じる可能性も生じている。
なお、ディンプル6の配列が偏ると、ディンプル6の面積が錐状部の50%以上となっても、ディンプル間7が広くなる部位が現れて部分的に強い反射光を生じ、電子部品の背景が明るくなり位置精度が低下する場合があるので、ディンプル6の間隔6b(ディンプル間7)は均等になっていることが好ましい。
また、ディンプル6の開口の径6aおよび間隔6b(ディンプル間7)は、表面粗さ測定器や、走査型電子顕微鏡,金属顕微鏡などで撮影して写真や画像からも測定することができる。
また、多数のディンプル6の(開口の)面積が、錐状部の面積の50%以上を占めていることが好ましい。
多数のディンプル6の面積が、錐状部4の面積の50%以上を占めていると、錐状部4へ照射された光の反射光の多くが散乱光となることから、吸着された電子部品と、その背景となる真空吸着ノズル1の外周面である錐状部4とのコントラストはより一層明瞭となり、電子部品の正確な位置検出ができるので装着精度が向上する。
また、ディンプル6の面積とは、ディンプルが開口した部分の面積のことであり、面積の測定方法は、錐状部4をディンプル6とディンプル間7との分布が分かる適度な倍率で撮影し、撮影した画像か写真からディンプル6またはディンプル間7のいずれか一方の面積を測定し、次に画像全体の面積から一方の面積を差し引くことにより他方の面積を求めることができる。図1(c)のように、ディンプル6が規則的に配列している場合は、破線で囲んだ領域Aと領域A内のディンプル6の面積を求めてディンプル6の面積比率を算出することもできる。
なお、ディンプル6の開口の形状について円の場合で説明してきたが、開口の形状が楕円や多角形の場合でも同様の効果を得ることができる。
また、本発明の真空吸着ノズル1は、セラミックスからなることが好ましい。
真空吸着ノズル1がセラミックスからなると、洗浄やハンドリングを繰り返してもディンプル6は傷ついたり磨耗したりしにくいため、錐状部4に入射した光をディンプル6が散乱光として反射する効果が長く保たれる。真空吸着ノズル1が金属や樹脂で形成されその表面を暗色にコーティングして反射光を少なくする様な加工をしていると、錐状部4の表面は傷つき磨耗しやすくなって暗色にコーティングが剥がれ錐状部4のディンプル6が入射した光を散乱する効果を長く保つことが難しくなる。このようなセラミックスとしては、例えばアルミナセラミックス,ジルコニアセラミックスあるいは窒化珪素セラミックスなどを好適に用いることができる。
さらに、本発明の真空吸着ノズル1に用いるセラミックスは導電性付与剤を含むのが好ましい。
真空吸着ノズル1に用いるセラミックスに導電性付与剤を含むものを用いると、単体では絶縁性のセラミックスであっても、導電性付与剤を含ませることによって所望の適度な抵抗値を有する真空吸着ノズル1を作製することができる。
本発明の真空吸着ノズル1は、半導電性を有する場合には、例えば真空吸着ノズル1の先端と後端との間の抵抗値を103〜1011Ωとすれば、真空吸着ノズル1が高速で移動して空気や電子部品との摩擦で発生する静電気により帯電したとしても、この静電気は保持部材10と電子部品装着機20とを通してアース(除電)できるために、真空吸着ノズル1から周囲の電子部品15などに静電気が急速に放電して周囲の電子部品15が放電破壊するのを防止することができる。また、真空吸着ノズル1が電子部品15に近付いても、真空吸着ノズル1の静電気は除電されているので、静電気の反発力で電子部品15が吹き飛ぶという現象が発生しないようにすることができる。この抵抗値が103Ω未満になると、真空吸着ノズル1の周囲にある部品などに静電気が帯電しているとそれらから放電されやすくなり、吸着している電子部品15を静電破壊してしまうという問題が生じるおそれがある。また、1011Ωを超えると、真空吸着ノズル1に発生した静電気を帯電しやすくなり、真空吸着ノズル1が電子部品15に近付くと静電気の反発力により電子部品15が吹き飛ぶという現象が発生するようになるおそれがある。
このような半導電性を有するセラミックスとして、例えば、アルミナセラミックスは絶縁性のセラミックスであるが、安価で耐摩耗性が優れているという特長があり、炭化チタンや窒化チタンなどの導電性付与材を添加すれば適度な導電性を有するものとなるので、これを用いることによって、耐摩耗性に優れ、適度な導電性も有する真空吸着ノズル1を作製することができる。同様に、ジルコニアセラミックスは強度の高い材料であり、酸化鉄,酸化チタンおよび酸化亜鉛などの導電性付与材を添加すれば適度な導電性を有するものとなるので、これを用いることによって、細い形状でも折れにくくなり、適度な導電性も有する真空吸着ノズル1を作製することができる。また、炭化珪素セラミックスは、炭素を添加することで抵抗値を調整した真空吸着ノズル1を作製することができる。
さらに、本発明の真空吸着ノズル1に用いるセラミックスは黒色系セラミックスであることが好ましい。
真空吸着ノズル1に黒色系セラミックスを用いると、真空吸着ノズル1で吸着した電子部品15をライト17で照射してCCDカメラ18で撮影したときに、電子部品15はライト17の反射光で鮮明に写るが、電子部品15の背景は真空吸着ノズル1が黒色系セラミックスであるために暗い状態となり、電子部品15の輪郭は明瞭になる。そのため、画像解析装置19は真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15の形状を認識しやすくなるので、回路基板に実装する際の装着精度が高くなるという利点がある。
黒色系セラミックスとしては、黒色系の導電性付与材を添加したジルコニア,アルミナおよび炭化珪素などがある。また、茶色系や青色系など他の色調を有するセラミックスでも、濃い色調とすることにより黒色系セラミックスと同様の効果を得ることができる。
例えば、アルミナセラミックスに添加する黒色系あるいは茶色系や青色系であっても濃い色調として用いることができる導電性付与材としては、酸化鉄,酸化ニッケル,炭化チタン,窒化チタンなどが挙げられ、中でも酸化鉄,炭化チタンが黒色系セラミックスを得られる導電性付与材として好ましい。ジルコニアセラミックスに添加する黒色系あるいは茶色系や青色系であっても濃い色調として用いることができる導電性付与材としては、酸化鉄,酸化チタン,酸化コバルト,酸化クロム,酸化ニッケルなどが挙げられ、中でも酸化鉄が黒色系セラミックスを得られる導電性付与材として好ましい。炭化珪素セラミックスは、炭素を含有させて導電性を付与したものが黒色系セラミックスとして好ましい。
また、真空吸着ノズル1は、セラミックスの主成分が安定化剤を含むジルコニアであって、この主成分よりも硬度が低い金属酸化物を含む添加剤を含有していることが好ましい。
真空吸着ノズル1に用いるセラミックスに安定化剤を含むジルコニアセラミックスを用いることが好ましいのは、セラミックスとしての機械的強度が高いためである。特に、図1(a)に示す真空吸着ノズル1のように、先端部5を有しており、その径が細い形状の真空吸着ノズル1の場合には、吸着面2に吸着した電子部品15を基板に実装したときに隣接する部品と真空吸着ノズル1の先端とが接することによって先端部5が破損しやすいので、セラミックスとして強度の高いジルコニアセラミックスを使用することが好適である。このときのジルコニアセラミックスに含ませる安定化剤にはイットリア,セリア,マグネシアなどを用いればよく、これら安定化剤を2〜8モル%程度含んでいれば実用上で強度的に十分なジルコニアセラミックスとなる。また、ジルコニアの平均結晶粒子径は3μm以下のものが好ましい。ジルコニアの平均結晶粒子径を3μm以下とすることで、真空吸着ノズル1の作製や補修の際に吸着面2に対して研削加工や鏡面加工をするときに、結晶粒子が脱落しにくくなることから吸着面2に欠けが生じにくくなる。
次に、本発明のセラミックス製の真空吸着ノズル1の製造方法を説明する。
本発明の真空吸着ノズル1を構成するセラミックスとしては、炭化珪素,アルミナ,安定化剤を含むジルコニアなど公知の材料を用いることができる。
例えば、炭化珪素を95質量%に焼結助剤としてアルミナを5質量%の割合で混合した原料をボールミルに投入して所定の粒度まで粉砕してスラリーを作製し、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して顆粒を形成する。
次に、この顆粒と熱可塑性樹脂とをニーダに投入して加熱しながら混練して得られた坏土をペレタイザーに投入すれば、インジェクション成形(射出成形)用の原料となるペレットを得ることができる。なお、ニーダに投入する熱可塑性樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体やポリスチレンやアクリル系樹脂などをセラミックスの質量に対して10〜25質量%程度添加すればよく、ニーダを用いて混練中の加熱温度は140〜180℃に設定すればよい。また、混練の条件はセラミックスの種類や粒度、および熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜設定すればよい。
そして、得られたペレットをインジェクション成形機(射出成形機)に投入して射出成形すれば、真空吸着ノズル1となる成形体が得られる。このとき、得られた成形体には通常は射出成形したときの余分な原料が冷えて固まったランナが付随しているので、脱脂する前に切断しておく。
炭化珪素の焼成条件としては、真空雰囲気中またはアルゴンやヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で焼成すればよく、最高温度は1900〜2200℃とし、最高温度での保持時間を1〜5時間とすればよい。
さらにまた、本発明の真空吸着ノズル1を構成するセラミックスとして、安定化剤を含むジルコニアセラミックス,アルミナセラミックスなどを用いる場合には、導電性付与材としては、酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種か、または炭化チタンや窒化チタンを含むものを用いることができる。
例えば、安定化剤としてイットリアを含むジルコニアを65質量%に対して酸化鉄を35質量%の割合で混合し、この原料をボールミルに投入して所定の粒度まで粉砕してスラリーを作製し、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して顆粒を形成し、インジェクション成形機に投入して上述と同様の方法で射出成形すれば、真空吸着ノズル1となる成形体が得られる。
なお、本発明の真空吸着ノズル1の形状を得るには、一般的な射出成形法に基づいて、真空吸着ノズル1の形状が得られる成形型を作製し、これをインジェクション成形機に設置して射出成形すればよい。これによって、容易に所望の形状の真空吸着ノズル1が得られる。
ここで、ジルコニアセラミックス,アルミナセラミックスの焼成条件としては、導電性付与材が酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種の場合には、大気雰囲気中での焼成で最高温度を1300〜1500℃の範囲として、最高温度での保持時間を1〜5時間とすればよい。また、導電性付与材が炭化チタンの場合には、最高温度を1400〜1800℃の範囲として、最高温度での保持時間を1〜5時間とし、真空雰囲気中またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で焼成すればよい。また、導電性付与材が窒化チタンの場合には、これら真空雰囲気中または不活性雰囲気中に加えて、窒素ガス雰囲気中で焼成してもよい。これにより、セラミックス製の真空吸着ノズル1に適度な導電性を付与することができる。
なお、焼成後の真空吸着ノズル1は、セラミックスの表面の導電性が、内部よりも低下したり、ばらついて不安定となったりしないように、バレル加工などで研磨してセラミックスの面状態を一様にしておいてもよい。
そして、錐状部4の表面にディンプル6を形成するには、インジェクション成形機に取り付けられた金型の錐状部4を形成する部位にディンプル6を形成するための凸部を設けて射出成形し、成形体を焼成する方法がある。さらに、錐状部4をブラスト加工してディンプル6を形成する方法や、成膜やエッチングによる方法、ディンプル6となる樹脂の粒子を金型に塗布したり、原料に混ぜて成型したりして、焼成し樹脂の粒子が蒸発した跡をディンプル6とする方法がある。
以下、本発明の実施例を説明する。
まず、ディンプル6の有無により、CCDカメラが電子部品15の位置を正確に認識するかどうか、電子部品15が高精度に基板に装着されるかどうか、について評価した。
セラミックスの成分は,安定化剤としてイットリアを3モル%含むジルコニア70質量%,酸化鉄26質量%,酸化クロム2質量%および酸化チタン2質量%となる様に秤量した。そして、原料に水を加えてボールミルで粉砕・混合してスラリーを作製し、これらのスラリーをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、顆粒を作製した。そして、この顆粒100質量部に対してエチレン酢酸ビニル共重合体,ポリスチレン,アクリル系樹脂を合計20質量部加えてニーダに投入し、約150℃の温度に保ちながら混練して坏土を作製した。次に、得られた坏土をペレタイザーに投入してインジェクション成形用の原料となるペレットを作製した。そして、インジェクション成形機には、図1に示すように、吸着面2を有する先端部5と先端部5に向かって縮径する錐状部4とを有する真空吸着ノズル1の金型を取り付け、金型の錐状部4を形成する部位にはディンプル6を形成するための凸部を設け、ペレットをインジェクション成形機に投入し、図1に示す真空吸着用ノズル1となる成形体を作製した。また、比較用として図3に示すような従来の錐状部4を形成する全面にディンプル6がない金型をインジェクション成形機に取り付け、従来の真空吸着ノズル31となる成形体を作製した。
そして、これらの成形体を乾燥機に入れて乾燥した後、酸化雰囲気である大気雰囲気中での焼成で最高温度を1400±50℃の範囲とし、最高温度での保持時間を1〜2時間としてそれぞれ焼成して焼結体とした。
そして、得られた焼結体に対して、真空吸着ノズル1の吸着面2となる部分を平面研削盤を使用して平坦に加工し、本発明の実施例であるディンプル6がある試料No.1〜5と、比較例であるディンプル6がない試料No.6〜10との真空吸着ノズルの各試料を作製した。
また、本発明の実施例である試料No.1〜5は、焼結体のディンプル6の開口の形状が円形で、開口の径6aは平均140μm、深さは平均30μm、ディンプルの間隔6bは平均156μm、ディンプル6の内面は凹曲面とした。
そしてこれらの真空吸着ノズルを保持部材10に組み付けて電子部品装着機14に取り付けてから稼動させて0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)の電子部品15の実装テストを行ない、電子部品装着装置50に搭載されたCCDカメラで回路基板上に実装した電子部品15の位置を検出し、電子部品15がテスト用の基板に高精度に実装されたかについて各試料について10万個の装着精度を調べた。その判断基準は電子部品が、実装される予定位置に対して、電子部品の各辺の長さの1/3以下の範囲内でずれた場合には高精度に装着できたとして合格とし、1/3を超えた範囲でずれた場合には高精度に装着できなかったとして不合格と判断した。
得られた結果を表1に示す。
表1に示す結果から、高精度に実装できなかった不合格の発生率は、本発明の実施例である試料No.1〜5では0.016〜0.018%であるのに対し、比較例である試料No.6〜10では0.029〜0.043%となった。
本発明の実施例である試料No.1〜5は、錐状部4に光が照射されたとき錐状部4に形成されたディンプル6の曲面で光が散乱して電子部品15の背景が暗くなり、CCDカメラで電子部品15を明瞭に撮影することができるため高精度に実装できなかった不合格の発生率が低くなったことが分かる。
これに対し、比較例は、錐状部4にディンプル6が形成されておらず、錐状部4かその周囲の部材に部分的に強い反射光が生じて電子部品15の背景が明るくなり、CCDカメラで電子部品15を明瞭に撮影することができない場合が生じて高精度に実装できなかった不合格の発生率が高くなったことが分かる。
次に、ディンプル6の間隔6bが、ディンプル6の径以下であると、電子部品15の位置をより正確に検出し高精度に実装でき不合格になる発生率が低下するかについての実験を行なった。
試料は実施例1と同様にして本発明の真空吸着ノズル1を作製し、焼結体のディンプル6の開口の形状は円形で、開口の径6aは平均140μm、深さは平均30μm、ディンプル6の間隔は金型に形成したディンプル6を形成するための凸部の間隔を変えて表2の値となるように調整してディンプル6の間隔が違う試料No.11〜16を作製した。
また、ディンプルの開口の径6aは、ディンプル6を走査型電子顕微鏡で撮影して画像から測定した。ディンプル6の深さは、錐状部4を表面粗さ計で測定することで求めた。そして、ディンプル6を測定した数は10個とし、開口部の径6aと間隔6bの平均値を求めた。また、ディンプル6の間隔6bは、錐状部4を電子顕微鏡で撮影し図1(c)のように最も近い位置にあるディンプル6同士の間隔6bを測定した。
これらの真空吸着ノズル1を保持部材10に組み付けて電子部品装着機14に取り付け、稼動させて10万個の0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)の電子部品15の真空吸着テストを行ない、電子部品装着装置50に搭載されたCCDカメラで回路基板上に実装した電子部品15の位置を正確に検出し、電子部品15がテスト用の基板に高精度に装着されたかについて調べた。その判断方法は、実施例1と同一とした。
得られた結果を表2に示す。
表2に示す結果から、不合格の発生率は、試料No.11,12では0.017〜0.018%であるのに対し、試料No.13〜16では0.009〜0.010%となった。
試料No.11,12は、錐状部4に光が照射されたとき、錐状部4に形成されたディンプルの間隔6bが、ディンプルの開口の径6aよりも大きいため、ディンプル間7で反射する光の影響が強くなって不合格の発生率が改善されなかったことが分かる。
これに対し、試料No.13〜16は、ディンプルの間隔6bが、ディンプルの開口の径6a以下のため、ディンプル6の曲面で散乱する光の影響が強くなって認識異常の発生率が改善されたことが分かる。
次に、多数のディンプル6の面積が、錐状部の面積の50%以上を占めていると、電子部品15の位置をより正確に検出し高精度に実装でき不合格になる発生率が低下するかについて評価した。
実施例1と同様にして本発明の真空吸着ノズル1を作製し、焼結体のディンプル6の開口の形状は円形で、開口の径6aは平均140μm、深さは平均30μm、ディンプル6の面積は金型に形成したディンプル6を形成するための凸部の間隔を変えて表3の値となるように調整した。
ディンプル6の開口部とディンプル間7の面積は、走査型電子顕微鏡を用いて錐状部4を撮影し、撮影した画像からディンプル6の面積を測定し、次に画像全体の面積からディンプル6の面積を差し引くことによりディンプル間7の面積を求めた。
これらの真空吸着ノズル1を保持部材10に組み付けて電子部品装着機14に取り付け、稼動させて10万個の0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)の電子部品15の真空吸着テストを行ない、電子部品装着装置50に搭載されたCCDカメラで回路基板上に実装した電子部品15の位置を正確に検出し、電子部品15がテスト用の基板に高精度に装着されたかについて調べた。その判断方法は、実施例1と同一とした。
得られた結果を表3に示す。
表3に示す結果から、不合格の発生率は、試料No.17では0.009%であるのに対し、試料No.18〜20では0.004〜0.005%となった。
試料No. 18〜20は、錐状部4に光が照射されたとき、錐状部4に形成されたディンプル6の開口の面積が、ディンプル間7の面積よりも大きいため、大半の光がディンプル6の曲面で散乱して電子部品15の背景が暗くなり、CCDカメラで電子部品15のを明瞭に撮影することができるため不合格の発生率が改善されたことが分かった。
これに対し、試料No.17は、ディンプル6の面積がディンプル間7よりも少ないため、錐状部4に形成されたディンプル6の開口の面積が、ディンプル間7の面積よりも大きいものよりも、錐状部4に照射された光が散乱されにくく、錐状部4かその周囲の部材に部分的に強い反射光が生じやすくなり、電子部品15の背景が明るくなってCCDカメラで電子部品15の明瞭さが低下し認識異常の発生率が改善されなかったことが分かった。
次に、真空吸着ノズルを電子部品装着機14から取り外して洗浄し、洗浄後取り付ける作業を繰り返したとき、錐状部4が磨耗したり傷ついたりして寿命が低下するかどうか、について評価した。
実施例1と同様にしてセラミックスからなる本発明の真空吸着ノズル1を作製し、比較用として金属製の真空吸着ノズルで錐状部を黒色にDLC(Diamond like carbon)コーティングしたものを作製した。
これらの真空吸着ノズル1を保持部材10に組み付けて電子部品装着機14に取り付け、稼動させて10万個の0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)の電子部品15の真空吸着テストを行ない、電子部品装着装置50に搭載されたCCDカメラで回路基板上に実装した電子部品15の位置を正確に検出し、電子部品15がテスト用の基板に高精度に装着されたかについて調べた。また、真空吸着ノズルの洗浄は電子部品を基板に2000個装着する毎に行なった。その判断方法は、実施例1と同一とした。
その結果、本発明の真空吸着ノズル1は10万個の電子部品15を装着する間、不合格の発生率は0.016〜0.018%と低い値で安定していたが、金属を黒色にコーティングした真空吸着ノズルは電子部品15を5万個装着した後、不合格の発生率がテスト開始時の0.017〜0.018%から0.030〜0.036%と高くなった。
テスト終了後にセラミックスからなる本発明の真空吸着ノズル1と、比較用の金属を黒色にコーティングした真空吸着ノズルとの表面を電子顕微鏡で観察すると、セラミックスからなる本発明の真空吸着ノズル1の表面はテストを始める前と変化がなかったが、比較用の金属を黒色にコーティングした真空吸着ノズルの表面にはコーティングが剥がれた痕が多数発生していた。これらのコーティングが剥がれた痕が錐状部4に照射された光を電子部品15の背景が明るくなる方向に反射して電子部品15と背景のコントラストを低下させたことが分かった。
以上のように、本発明の真空吸着ノズル1によれば、錐状部にディンプルとディンプル間が形成されていることから、錐状部に照射された光は散乱して電子部品の背景が暗くなり、電子部品に照射された光はCCDカメラに入射するため、吸着された電子部品と、その背景となる真空吸着ノズルの外周面である錐状部のコントラストが明瞭となり、電子部品の正確な位置検出ができるので装着精度が向上する。