JP2011063636A - 耐衝撃性複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複合体は、引張強度が10cN/dtex以上の高強度繊維で構成された高強度繊維群とマトリックス樹脂とを含み、前記高強度繊維群は、少なくとも全芳香族ポリエステル繊維を含むとともに、前記マトリックス樹脂は、少なくともポリビニルブチラールを含んでいる。前記高強度繊維群は、全芳香族ポリエステル繊維に関して、一方向性織物、二方向性織物、三軸織物、多軸織物、またはノンクリンプトファブリックなどであってもよい。
【選択図】なし
Description
前記高強度繊維群は、少なくとも全芳香族ポリエステル繊維を含むとともに、
前記マトリックス樹脂は、少なくともポリビニルブチラールを含む耐衝撃性複合体である。
なお、本発明の複合体では、高強度繊維群に対して、実質的にフッ素化合物を適用しなくてもよい。
高強度繊維群は、引張強度が10cN/dtex以上の高強度繊維で構成されており、少なくとも全芳香族ポリエステル繊維を含んでいる。高強度繊維は、引張強度が10cN/dtex以上であることが必要であり、好ましくは10〜100cN/dtex程度、より好ましくは15〜80cN/dtex程度であってもよい。
本発明で用いられる全芳香族ポリエステル系繊維は、全芳香族ポリエステル系ポリマーから形成される。
前記全芳香族ポリエステル系ポリマーは、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等より重合されて得られ、その中でも、溶融時に光学的異方性を示す溶融異方性ポリエステルが好ましい。本発明にいう溶融異方性ポリエステルとは、溶融相において光学的異方性(液晶性)を示す芳香族ポリエステルであり、例えば試料をホットステージに載せ窒素雰囲気下で加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。
さらに、(A)の反復単位に対する(B)の反復単位のモル比は、(A):(B)=100:1〜50、好ましくは(A):(B)=100:1〜45、さらに好ましくは(A):(B)=100:1〜40程度であってもよい。
例えば、このような全芳香族ポリエステル系繊維は、(株)クラレから「ベクトラン(登録商標)」として上市されている。
高強度繊維群を形成するその他の繊維としては、引張強度が10cN/dtex以上である限り特に限定されないが、例えば、その他の高強度繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維などの無機高強度繊維;アラミド繊維、PBO繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、高強度PVA繊維などの有機高強度繊維などが例示できる。これらの高強度繊維うち、有機繊維である全芳香族ポリエステル繊維と相補的な効果を有する観点から、無機高強度繊維が好ましい。
本発明で用いられる高強度繊維群は、長繊維または短繊維等のいずれも用いることができる。例えば、チョップドストランドとして、直接マトリックス樹脂に混ぜ合わせて適用してもよいし、または、一旦織編物、不織布、ステッチングシート(例えば、ノンクリンプドファブリック)などの布帛を形成し、その後布帛に対してマトリックス樹脂を含浸などして適用してもよい。
マトリックス樹脂は、全芳香族ポリエステル繊維と組み合わせて、耐衝撃性を発揮できる観点から、少なくともポリビニルブチラールを含んでいる。
ポリビニルブチラールは、公知又は慣用の方法で製造することができる。例えば、まず、ポリ酢酸ビニルなどをけん化することによりポリビニルアルコール(PVA)樹脂を作製し、次いで、得られたポリビニルアルコール樹脂に対して、酸触媒の存在下水及び/又は有機溶剤中でブチルアルデヒドを反応させて、ポリビニルブチラールを得てもよい。
本発明のマトリックス樹脂は、ポリビニルブチラールと相溶性を有する限り、他の樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、フェノール系樹脂(ノボラック型、レゾール型)、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型、ノボラック型、臭素化型、脂環式型など)、ビニルエステル系樹脂(ビスフェノールA型、ノボラック型、臭素化型など)、不飽和ポリエステル樹脂、架橋メタクリル系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、シリコーン系樹脂などの熱硬化性樹脂;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66などの脂肪族ポリアミド、脂環族ポリアミド、芳香族ポリアミドなど)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレンなど)、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー樹脂(例えば、オレフィン系アイオノマー、フッ素系アイオノマーなど)、熱可塑性エラストマー(スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなど)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明の耐衝撃性複合体は、上述したように、(i)マトリックス樹脂にチョップドストランドなどの高強度繊維群が混ぜ合わせられた複合体であってもよいし、または、(ii)溶融または溶解したマトリックス樹脂プレポリマーに、高強度繊維布帛を含浸することにより複合化した複合体であってもよいし、(iii)高強度繊維布帛と、布帛状またはシート状のマトリックス樹脂とを積層し、加熱して複合化した複合体であってもよいし、または(iv)マトリックス樹脂プレポリマーを含むエマルジョンを高強度繊維布帛に含浸、乾燥後、積層して加熱により複合化した複合体であってもよい。
ポリマー試料をペンタフルオロフェノールに0.1重量%溶解し(60〜80℃)、60℃の恒温槽中で、ウベローデ型粘度計で相対粘度(ηrel)を測定し、次式によって計算した。
ηinh=ln(ηrel)/c
ここでcはポリマー濃度(g/dl)である。
示差走査熱量計(メトラー社製DSC)で観察される主吸熱ピークのピーク温度を融点Mp(℃)とした。
DIN 53015に準じ、樹脂濃度10重量%のエタノール溶液の粘度を、ヘプラー粘度計を用いて20℃で測定した。
JIS L 1013に準拠して測定した。
落錘グラフィックインパクトテスター((株)東洋精機製作所製)を用い、JIS K−7211 プラスチック−硬質プラスチック パンクチャー衝撃試験方法に基づき、測定を実施した。測定条件としては、ストライカー径12.7mm、ホルダー径76mm、落下高さ100cm、ウェイト14.5kg、衝撃速度4.4m/秒にて実施した。また、試験後における実施例および比較例の積層体の状態を、目視により評価した。
(1)構成単位(A)と(B)が73/27(モル比)である全芳香族ポリエステルポリマーを用いた。このポリマーの物性は、ηinh=4.6dl/g、融点Mp=280℃であった。このポリマーを通常の溶融紡糸装置を用いて紡糸し、1670dtex/300フィラメントのマルチフィラメントを得た。このマルチフィラメントを窒素雰囲気中で280℃、20時間熱処理し、全芳香族ポリエステルポリマーフィラメント(強度23cN/dtex)を得た。
(1)カーボン繊維(東邦テナックス(株)製、「ベスファイトHTS40 3K」、強度28cN/dtex)を用いて、緯糸密度12本/2.5cm、経糸密度12本/2.5cmの平織物を作製した。この織物の目付は、200g/m2であり、厚みは0.25mmであった。
(1)ガラス繊維平織物(日東紡(株)製、「WF 230 100 BS6」、緯糸密度19本/2.5cm、経糸密度18本/2.5cm、目付200g/m2、厚み0.25mm)を用意した。
(1)カーボン繊維(東邦テナックス(株)製、「ベスファイトHTS40 3K」、強度28cN/dtex)と、実施例1の(1)で得られた全芳香族ポリエステルポリマーフィラメント(強度23cN/dtex)とを、それぞれ緯糸、経糸として用いて、緯糸密度12本/2.5cm、経糸密度12本/2.5cmの平織物を作製した。この織物の目付は、184g/m2であり、厚みは0.28mmであった。
マトリックス樹脂として、(1)多官能エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、「YL6046B80」)130重量部、(2)ノボラック型硬化剤(ジャパンエポキシレジン(株)製、「YLH129B65」)70重量部、(3)イミダゾール型硬化促進剤(ジャパンエポキシレジン(株)製、「EMI24」)0.3重量部、および(4)メチルエチルケトン130重量部を混合し、ワニスを調製する以外は、実施例1と同様にして成形板(目付2680g/m2、厚み2.7mm)を作製した。この成形板の樹脂付着量は50.1重量%であった。この複合体の面衝撃試験性能を表1に示す。
(1)高強度繊維群として、アラミド繊維(東レ・デュポン(株)製、「ケブラー49」、強度19cN/dtex)を用いて、緯糸密度13本/2.5cm、経糸密度13本/2.5cmの平織物を作製した。この織物の目付は、175g/m2であり、厚みは0.26mmであった。
(1)高強度繊維群として、アラミド繊維(東レ・デュポン(株)製、「ケブラー49」、強度19cN/dtex)を用い、この繊維表面に対してフッ素化合物処理を施した。具体的には、まず、ダイキン工業(株)製、ユニダインTG510(8重量%)、京絹化成(株)EC243(6重量%)、住友3M(株)製スミテックスレジンM3(0.8重量%)、キャタリストACX(0.5重量%)、イソプロピルアルコール(6重量%)、水(78.7重量%)のフッ素化合物水溶液を調製した。そして、この水溶液にアラミド繊維を約30秒間浸漬し、その後120℃の乾燥炉中でアラミド繊維に対して3分間乾燥を施した。さらに160℃のベーキング炉で1分間熱処理を行った。この処理繊維を用い、緯糸密度13本/2.5cm、経糸密度13本/2.5cmの平織物を作製した。この織物の目付は、180g/m2であり、厚みは0.26mmであった。
48.0重量%であった。この複合体の面衝撃試験性能を表1に示す。
Claims (8)
- 引張強度が10cN/dtex以上の高強度繊維で構成された高強度繊維群とマトリックス樹脂とを含む複合体であって、
前記高強度繊維群は、少なくとも全芳香族ポリエステル繊維を含むとともに、
前記マトリックス樹脂は、少なくともポリビニルブチラールを含む耐衝撃性複合体。 - 請求項1の複合体において、高強度繊維群の少なくとも一部が布帛を形成している複合体。
- 請求項2の複合体において、布帛一枚当りの目付が50〜500g/m2であるとともに、その厚みが0.1〜2mmである複合体。
- 請求項2または3の複合体において、高強度繊維群は、全芳香族ポリエステル繊維に関して、一方向性織物、二方向性織物、三軸織物、多軸織物、およびノンクリンプトファブリックからなる群から選択される少なくとも一種の布帛を含む複合体。
- 請求項1〜4のいずれか一項の複合体において、マトリックス樹脂が、ポリビニルブチラールとフェノール樹脂とで構成されている複合体。
- 請求項1〜5のいずれか一項の複合体において、目付が1000〜7000g/m2である複合体。
- 請求項1〜6のいずれか一項の複合体において、高強度繊維群に対して、実質的にフッ素化合物を適用していない複合体。
- 請求項1〜7のいずれか一項の複合体から形成される耐衝撃材。
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