JP2011062417A - 生体吸収性部材 - Google Patents

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正 金子
Takamitsu Takagi
隆光 高木
Naoto Fujii
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Abstract

【課題】 治療後に再手術する必要が無く且つ比較的硬さや靭性を要する部位で用いても充分な強度を確保できる生体吸収性部材を提供する。
【解決手段】 繊維状の生体吸収性マグネシウム合金が生体吸収性ポリマーに混合されていることを特徴とする生体吸収性部材とする。繊維状の生体吸収性マグネシウム合金は、Mg−Ca系,Mg−Zn系又はMg−Al系のマグネシウム合金であり、長さ10μm〜5mm,太さが1μm〜1mmであることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、骨対骨,軟組織対軟組織,骨,軟組織同士の固定や、それに接するインプラントの固定等に適用される生体吸収性部材であり、ピン,スクリュー,プレート,鋲,ボルト,髄内釘,縫合固定装置,ステープル等の比較的硬さと強さが求められる部品に使用される生体吸収性部材に関する。
従来から、整形外科及び顎顔面手術での広く強さが求められる部位の組織固定用途には金属材料が主に使用されている。例えば骨の接合固定には、金属製のスクリュー,ピン,プレート等の骨接合材が使用されている。しかしながら、これら金属製の骨接合材は弾性率が生体骨と比較すると著しく高く、その強度に依存することで接合材周囲の骨の強度が却って低下してしまう問題がある。また、殆どの金属材料は非生体吸収性であるため、生体との物理的,化学的(生理的)性質の相違から長期間体内に残存すると腐食や溶出による毒性が発現し、生体に好ましくない為害作用を起こす危惧があるため手術可能な部位では摘出が行われる。つまり最低二回の手術が必要となり患者に対し大きな負担を強いることとなる。
そこで再手術が不要な生体吸収性材料が開発されている。例えば生体吸収性ポリマーから成る骨接合材は医学分野及び歯学分野において骨対骨,軟組織対骨,または軟組織対軟組織の固定のため広く使用されている(例えば特許文献1,2参照。)。
これら生体吸収性材料は、生体内でその役割を果たした後に徐々に分解して生体に吸収される性質を持つため治療後に除去する再手術が不要であり患者への負担を軽減できる。しかしながら、生体吸収性材料から成るこれら吸収性部材は、金属材料に比べて物理的強度が低いため大きな荷重が係る部位では破折を生じる等の問題があり、使用部位が制限されていた。
強度を得るために分子量を大きくする方法もあるが、これでは吸収期間が長くなってしまい必要以上に長期間体内に残留することとなってしまう。また、生体吸収性のガラスやセラミックスから成る粒子状フィラー及び短繊維補強材を生体吸収性ポリマーと併用して強度を改善した発明が開示されている(例えば特許文献3〜5参照。)。しかしながら、この場合にもガラスやセラミックが体内に残留してしまうという問題が残っている。
WO1999/040865 特開2003−265491 特開平10−085231 特表2002−524152 特表2002−540855
そこで本発明は、治療後に再手術する必要が無く且つ比較的硬さや靭性を要する部位で用いても充分な強度を確保できる生体吸収性部材を提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、材料を生体吸収性ポリマーと繊維状の生分解性マグネシウム合金とから成る生体吸収性材料とすれば、マグネシウム合金は強度の高い生体材料であり生体吸収性ポリマーの強度を向上させる効果があることから、比較的硬さや靭性を要する部位で用いても組織が治癒する過程において充分な強度を得ることができ、治療後に再手術する必要も無いことを究明して本発明を完成した。
即ち本発明は、繊維状の生体吸収性マグネシウム合金が生体吸収性ポリマーに混合されていることを特徴とする生体吸収性部材である。このときの生体吸収性マグネシウム合金は、Mg−Ca系,Mg−Zn系又はMg−Al系のマグネシウム合金であることが好ましく、繊維状の生体吸収性マグネシウム合金が長さ10μm〜5mm,太さが1μm〜1mmであることが好ましい生体吸収性部材である。
本発明に係る生体吸収性部材は、治療後に再手術する必要が無く且つ比較的硬さと強さを要する部位で用いても組織が治癒する過程において充分な強度を維持できる優れた生体吸収性部材である。
本発明に係る生体吸収性部材は、繊維状の生体吸収性マグネシウム合金が生体吸収性ポリマーに混合されている。繊維状の生体吸収性マグネシウム合金は、Mg−Ca系,Mg−Zn系又はMg−Al系の生体吸収性マグネシウム合金から構成されていることが好ましい。この繊維状の生体吸収性マグネシウム合金は、合金設計を考慮することによる単位体積の溶解量を制御できる。長さや太さを考慮することにより生体内へ吸収される時間を制御することもでき、後述する生体吸収性ポリマーが生体内へ吸収される時間と合わせることも可能である。
繊維状の生体吸収性マグネシウム合金の長さは10μm〜5mmが好ましい。10μm未満では強度を与えるための繊維としての効果が失われ、5mmを超えると吸収性が悪くなり、混合して使用する場合には、生体吸収性ポリマーとの均質な複合化がし難くなる。
繊維状の生体吸収性マグネシウム合金の太さは1μm〜1mmが好ましい。1μm未満では強度を与えるための繊維としての効果が失われ、1mmを超えると吸収性が悪くなり、混合して使用する場合には、生体吸収性ポリマーとの均質な複合化がし難くなる。
繊維状の生体吸収性マグネシウム合金の含有量は生体吸収性部材中に5〜95重量%であることが好ましく、更に好ましくは1〜50重量部である。5重量%未満では繊維状の生体吸収性マグネシウム合金による補強効果が得られず、90重量%を超えると生体吸収性部材が脆くなる。
なお、繊維状の生体吸収性マグネシウム合金の断面は円形もしくは概略円形に限るものではなく、形状も長さ方向に直線状であることに限るものではない。また、繊維状の生体吸収性マグネシウム合金の生体吸収性ポリマーの分散状態はランダムでも配向を有していてもよいが、一方向の強度を高めるには配向させるのが好ましい。
本発明に係る生体吸収性部材に用いられる生体吸収性ポリマーは、熱可塑性のポリマーであり埋入時及び体内では固体である必要がある。従来の生体吸収性ポリマーを繊維状の生体吸収性マグネシウム合金で強化してあるためにピン,スクリュー,プレート,鋲,ボルト,髄内釘,縫合固定装置,ステープル等の比較的硬さと強さを要する部位で用いても組織が治癒する過程において充分な強度を維持している。生体内への吸収時間を調整する必要があるため、ホモポリマー又はコポリマーから選ばれる分子量の異なる同種ポリマー又は異種ポリマーを少なくとも2種以上組み合わせた高分子ブレンドから成ることが好ましい。この高分子ブレンドに用いられる生体吸収性ポリマーは、L−乳酸,DL−乳酸,グリコール酸,ε−カプロラクトンのホモポリマー又はコポリマーから選ばれる分子量の異なる同種ポリマー又は異種ポリマーを2種以上組み合わせることが好ましく、コポリマーとしては、例えばL−乳酸/グリコール酸コポリマー,L−乳酸/DL−乳酸コポリマー,L−乳酸/ε−カプロラクトンコポリマー,DL−乳酸/ε−カプロラクトンコポリマー,DL−乳酸/グリコール酸コポリマー,グリコール酸/ε−カプロラクトンコポリマーが好ましい。また、これらのホモポリマーやコポリマーは分子量が40,000〜500,000であることが好ましい。分子量が40,000未満では生体吸収性部材の硬さが低下する傾向があり、500,000を超えると生体吸収性部材の柔軟性が無くなり脆くなる。
本発明に係る生体吸収性部材は、繊維状の生体吸収性マグネシウム合金を、まず生体吸収性ポリマーのパウダー,粒子またはフレークと乾燥状態で混合し、次いでその混合物を押出機,射出成型機,圧縮成型機等の中で溶融混合した後、押出,射出成型,圧縮成形することにより、ピン,スクリュー,プレート,鋲,ボルト,髄内釘,縫合固定装置,ステープルなど所望の形状へと成形する。また、生体吸収性ポリマーのパウダー,粒子またはフレークと乾燥状態で混合し、次いでその混合物を溶融し、冷却して固体を作製してから切削加工して削り出して作製しても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
歯科用組織再生膜固定用ピン
ポリ−L−乳酸(分子量:300,000)を180℃に加熱し軟化させた後、長さ120〜350μm,太さ20〜50μmのマグネシウム合金の繊維を7重量%混合した。その後これを型に流し込み冷却して平円盤状の頭部の直径が2.5mm,厚さが0.5mm,鋲軸部の円柱状部の直径が0.8mm,長さが2mmの歯科用組織再生膜固定用ピンを作製した。
実施例1の歯科用組織再生膜固定用ピンは、歯科や口腔外科などの医療分野において、セメント質,歯根膜,歯槽骨等が失われた場合に、これらの歯周組織を再生する目的で生体吸収性の歯科用組織誘導再生膜を固定させるために使用する。歯周組織の再生が行われた後は生体吸収性の歯科用組織誘導再生膜と同様に生体内で分解・吸収されてしまうので取り出す必要がない。またマグネシウム合金の繊維によって強化されているために従来の歯科用組織再生膜固定用ピンと比較して破損し難い。
ポリ−L−乳酸のみで作製した同形状の歯科用組織再生膜固定用ピンの挫屈強度が2,800gであるのに対し、この実施例1の歯科用組織再生膜固定用ピンの挫屈強度は3,500gに向上していた。
<実施例2>
海綿骨用骨ネジ(ネジ頭付き)
L−乳酸/ε−カプロラクトンコポリマー(分子量:350,000)を160℃に加熱し軟化させた後、長さ500〜750μm,太さ約200μmのマグネシウム合金の繊維を7重量%混合した。全長40mm,ネジ部全長32mm,ネジ山径4.5mm,ネジ谷径3.2mm,ネジピッチ1.75mm,切欠き部形成位置:骨ネジの基端側頭部から先端に至る軸方向切欠き部本数:1本切欠き部横断面形状を示す海綿骨用骨ネジを作製した。
実施例2の骨ネジは、二骨片の固定、骨プレート又は髄内釘等の骨固定材料の固定,更に、腱,靱帯等の固定を行う器具として使用される。
<実施例3>
骨固定用プレート
DL−乳酸/グリコール酸コポリマー(分子量:2500,000)を150℃に加熱し軟化させた後、長さ700〜900μm,太さ約100μmのマグネシウム合金の繊維を6重量%混合した。縦50mm横10mm厚さ2mmの平板に長手方向の中央線上に直径3mmの貫通した穴を等間隔で6個空けた骨固定用プレートを作製した。この骨固定用プレートは骨折部位の固定のためピンやスクリューによって骨に固定される。
<実施例4>
髄内釘
ポリ−L−乳酸(分子量:300,000)を180℃に加熱し軟化させた後、長さ約4.5mm,太さ約350μmのマグネシウム合金の繊維を10重量%混合した。型に流し込み冷却して直径が10mm,長さが約300mmで片端部30mmが軸線より15°屈曲した棒状部材を得た。屈曲部及び先端部から40mmに直径5mmの穴を開け髄内釘を作製した。
直径10mm長さ50mmの同部材に80Nの引張荷重を加えたところ、その変位量は1.5×10−3mmとなり、同形状のポリ乳酸3.1×10−3に比べほぼ半分の変形量であった。

Claims (5)

  1. 繊維状の生体吸収性マグネシウム合金が生体吸収性ポリマーに混合されていることを特徴とする生体吸収性部材。
  2. 生体吸収性マグネシウム合金が、Mg−Ca系,Mg−Zn系又はMg−Al系のマグネシウム合金である請求項1に記載の生体吸収性部材。
  3. 繊維状の生体吸収性マグネシウム合金が長さ10μm〜5mm,太さが1μm〜1mmである請求項1または2に記載の生体吸収性部材。
  4. 生体吸収性マグネシウム合金の含有量が、生体吸収性部材全体に対して5重量%〜95重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体吸収性部材。
  5. 生体吸収性ポリマーがL−乳酸,DL−乳酸,グリコール酸,ε−カプロラクトンのホモポリマー又はコポリマーから選ばれる分子量の異なる同種ポリマー又は異種ポリマーを少なくとも2種以上組み合わせたポリマーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体吸収性部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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