JP2011058534A - 車両用モータ駆動装置および自動車 - Google Patents

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Abstract

【課題】車輪側から回転されるのを防止することができ、しかも、変速の切換えを迅速に行なうことができるようにした車両用モータ駆動装置を提供することである。
【解決手段】電動モータ10によって回転駆動される第1シャフト21と第2シャフト22間に第1減速ギヤ列23と第2減速ギヤ列24を設ける。第1減速ギヤ列23の第1出力ギヤ23bと第2シャフト22間および第2減速ギヤ列24の第2出力ギヤ24bと第2シャフト22間に2ウェイローラクラッチ30A、30Bを組込み、その2ウェイローラクラッチ30A、30Bの係合および解除を変速比切換機構50により制御して、変速の切換えとする。
【選択図】図3

Description

この発明は、電動モータを駆動源として備え、その電動モータの出力を減速して車輪へ伝達する車両用モータ駆動装置およびそのモータ駆動装置を搭載した自動車に関する。
電気自動車およびハイブリッド車の駆動装置に用いられる車両用モータ駆動装置として、特許文献1および2に記載されたものが従来から知られている。ここで、特許文献1に記載された車両用モータ駆動装置においては、モータの回転をベルト式無段変速機(CVT)あるいは遊星歯車式変速機からなる変速機に入力して変速し、その変速機から出力される回転をディファレンシャルギヤに入力して、左右の補助駆動輪(後輪)を回転させるようにしている。
また、特許文献2に記載された車両用モータ駆動装置においては、モータから出力される回転を遊星歯車式変速機の変速機に入力して変速し、その変速機から出力される回転をディファレンシャルギヤに入力して、左右の補助駆動輪(後輪)を回転させるようにしている。
特許第3683405号公報 特開2006−112489号公報
ところで、特許文献1に記載された車両用モータ駆動装置においては、モータから補助駆動輪へのトルク伝達経路が常に閉じた状態にあるため、エンジンのみの動力で車両を走行させる走行モードでは、補助駆動輪からの回転によって、変速機およびモータが回転されることになり、エネルギの損失が大きいという不都合がある。特に、モータとして、永久磁石式同期モータを採用した場合、誘導モータに比べてモータを回転させることによる動力損失が大きい。
一方、特許文献2に記載の車両用モータ駆動装置においては、変速機に設けられたキーのスライドによって、変速機をLoギヤの状態、Hiギヤの状態およびニュートラルの状態に切り換えることができるようにしているため、そのニュートラルの状態に切り換えることによって補助駆動輪から変速機やモータが回転されるのを防止することができるが、キーをスライドして遊星歯車機構のリングギヤとケーシングとを結合し、あるいは、上記リングギヤとサンギヤとを結合する変速の切換時に、相対回転する2つの部材をシンクロさせ、その相対回転速度差を小さくした状態でなければ2部品を結合することができない。そのため、シンクロに要する時間が長く、その間、車両は空走状態となり、ドライバビリティや商品性を低下させることになる。
この発明の課題は、車輪側から回転されるのを防止することができ、しかも、変速の切換えを迅速に行なうことができるようにした車両用モータ駆動装置および電気自動車ならびにハイブリッド車を提供することである。
上記の課題を解決するため、この発明に係る車両用モータ駆動装置おいては、電動モータと、平行軸間に変速比が異なる複数のギヤ列が設けられ、そのギヤ列のトルク伝達経路を切り換えることによって前記電動モータから出力される回転を複数段に変速する常時噛合い式の変速機と、その変速機から出力される動力を左右の車輪に分配するディファレンシャルギヤと、ローラおよびそのローラを保持する保持器を有し、その保持器の回転制御により係合、解除して前記変速機の各変速段毎のギヤを平行軸に対して締結、解除するギヤ列と同数の2ウェイローラクラッチと、その2ウェイローラクラッチの保持器の回転を制御して、2ウェイローラクラッチの係合、解除によりトルク伝達経路を切り換える変速比切換機構とからなる構成を採用したのである。
上記の構成からなる車両用モータ駆動装置において、変速比切換機構の作動により、各変速段のギヤ列に組込まれた2ウェイローラクラッチの1つを係合して平行軸とギヤとを締結状態に切換えることにより、電動モータの回転は締結状態のギヤ列により変速されてディファレンシャルギヤに伝達され、左右の車輪が回転する。
また、変速比切換機構の作動により、上記2ウェイローラクラッチを解除状態に切換えると、電動モータからディファレンシャルギヤへのトルク伝達が遮断される。その2ウェイローラクラッチの解除状態で、平行軸とギヤは相対回転し得る状態にあるため、車輪側から回転トルクが伝達されると、ギヤが空回転し、平行軸は回転しない。
この発明に係る電気自動車においては、車両の前部に設けられた左右一対の前輪と後部に設けられた左右一対の後輪の少なくとも一方を上記のモータ駆動装置により駆動する構成を採用したのである。
また、この発明に係るハイブリッド車においては、車両の前部に設けられた左右一対の前輪と後部に設けられた左右一対の後輪の一方をエンジンで駆動し、他方を上記のモータ駆動装置により駆動する構成を採用したのである。
上記のようなハイブリッド車へのモータ駆動装置の採用において、エンジンの駆動による走行時、2ウェイローラクラッチを解除状態としておくことにより、モータによって駆動される車輪側から変速機やモータが回転されるのを防止することができ、エネルギの損失を抑制することができる。
2ウェイローラクラッチとして、平行軸とギヤとの間に組込まれて平行軸に回り止めされた内輪を有し、その内輪の外周とギヤの内周における一方に円筒面を形成し、他方にその円筒面との間で周方向の両端が狭小のくさび空間を形成するカム面を設け、そのカム面と円筒面間にローラを組込み、そのローラをギヤと内輪間に組込まれた保持器で保持し、前記カム面が形成された側の部材と保持器との間に、前記ローラが円筒面とカム面に対して係合解除された中立位置に保持器を弾性保持するスイッチばねを組込んだ構成からなるものを採用することができる。
また、変速比切換機構として、保持器に回り止めされ、前記円筒面が形成された側の部材の一側面に向けて移動可能に設けられた摩擦板と、その摩擦板を円筒面が形成された部材から離反する係合解除位置に向けて付勢する弾性部材と、前記平行軸にスライド自在に支持され、前記円筒面が形成された部材に向けての移動により、その部材の一側面に摩擦板を押し付ける制御リングと、その制御リングの外周に回転自在に支持されたスリーブと、そのスリーブを円筒面が形成された部材に向けてシフトさせるシフト機構とからなるものを採用することができる。
ここで、シフト機構として、前記平行軸に平行配置された軸方向に移動可能なシフトロッドと、そのシフトロッドを軸方向に移動させるアクチュエータと、前記シフトロッドに支持され、そのシフトロッドの軸方向の移動時に前記スリーブと共に制御リングを円筒面が形成された部材に向けて移動させるシフトフォークとからなるもの採用することができる。
上記変速比切換機構において、アクチュエータによりシフトロッドを軸方向に移動させると、シフトフォークによりスリーブおよび制御リングが円筒面が形成された部材に向けて移動し、上記制御リングにより摩擦板が円筒面が形成された部材に押し付けられて、その部材と摩擦係合する。その摩擦係合により、保持器は円筒面が形成された部材と連結された状態となるため、保持器はカム面が形成された部材に対して相対回転し、ローラが円筒面およびカム面に係合して、2ウェイローラクラッチは直ちに係合状態になり、電動モータの回転は減速されてディファレンシャルギヤに伝達され、車輪が回転する。
ここで、カム面が形成された部材と一体に回転する回転部材を平行軸上に設け、前記摩擦板が摩擦係合解除位置まで移動した時、その摩擦板を回転部材に対して回転方向に係合させる係合手段を設けておくと、車両の急加減速時に2ウェイローラクラッチの保持器およびローラに作用する慣性力や摩擦力によるドラグトルクによって、ローラが誤係合するのを防止することができる。
また、制御リングを隣接するギヤ列間に組込み、その制御リングの両側に一対の摩擦板を設け、一方の摩擦板を一方のギヤ列に組込まれた2ウェイローラクラッチの保持器に回り止めし、他方の摩擦板を他方のギヤ列に組込まれた2ウェイローラクラッチの保持器に回り止めして、1つの変速比切換機構によって2組の2ウェイローラクラッチの締結、解除を制御し得るように構成すると、モータ駆動装置の小型化を図ることができる。
さらに、制御リングとスリーブの対向面間に転がり軸受を組込んでおくと、制御リングからスリーブへの回転伝達を遮断することができるため、変速比の切換えを円滑に行なうことができる。
さらに、摩擦板と制御リングの対向面間に転がり軸受を組込んでおくと、制御リングとの接触部に作用する摩擦抵抗の低減化を図ることができるため、摩擦板が円筒面が形成された部材の側面に対する摩擦係合時に、摩擦板を制御リングに対して円滑に相対回転させることができ、2ウェイローラクラッチを確実に係合させることができる。
上記変速比切換機構において、シフトロッドを軸方向に移動させるアクチュエータは、モータであってもよく、あるいは、シフトロッドに接続されるシリンダあるいはソレノイドであってもよい。
モータを採用する場合は、そのモータの回転をシフトロッドの軸方向への移動に変換する運動変換機構を設けるようにする。その運動変換機構として、シフトロッドを中心に回転自在に支持され、モータにより回転されるナット部材の内周に雌ねじを設け、その雌ねじをシフトロッドの外周に形成された雄ねじにねじ係合した構成からなるものを採用することができる。
上記のように、この発明においては、電動モータから出力される回転を複数段に変速する常時噛合い式の変速機の各変速段毎のギヤと平行軸間に2ウェイローラクラッチを組込み、その2ウェイローラクラッチの係合、解除を変速比切換機構によって制御するようにしたので、上記2ウェイローラクラッチの係合解除により、車輪側からの回転により、変速機やモータが回転されるのを防止することができる。このため、この発明に係るモータ駆動装置をハイブリッド車に搭載して補助駆動輪を駆動する構成を採用することにより、エンジンのみの動力で車両を走行させる走行モードでのエネルギの損失を抑制することができる。
また、変速比切換機構の作動によって2ウェイローラクラッチの保持器の回転を制御することにより、その2ウェイローラクラッチが直ちに係合および係合解除するため、変速の切換えを迅速に行なうことができる。
(イ)は、この発明に係る車両用モータ駆動装置を採用した電気自動車の概略図、(ロ)は、上記車両用モータ駆動装置を採用したハイブリッド車の概略図 この発明に係る車両用モータ駆動装置の断面図 図2の変速機の要部を拡大して示す断面図 図3のIV−IV線に沿った断面図 図3のV−V線に沿った断面図 変速比切換機構を示す断面図 図3のVII−VII線に沿った断面図 図6の一部を拡大して示す断面図 変速切換状態を示す断面図 2ウェイローラクラッチの内輪、保持器、スイッチばねおよび変速比切換機構の弾性部材、ワッシャ、摩擦板のそれぞれを示す分解斜視図
以下、この発明の実施の形態を図面に基いて説明する。図1(イ)は、この発明に係るモータ駆動装置Aによって左右一対の前輪1を駆動するようにした電気自動車EVを示す。また、図1(ロ)は、エンジンEによって左右一対の駆動輪としての前輪1を駆動し、上記モータ駆動装置Aによって左右一対の補助駆動輪としての後輪2を駆動するハイブリッド車HVを示し、上記エンジンEの回転を、トランスミッションTおよびディファレンシャルギヤDを介して前輪1に伝達するようにしている。
図2に示すように、モータ駆動装置Aは、電動モータ10と、その電動モータ10の出力軸11の回転を変速する変速機20と、その変速機20から出力される動力を、図1(イ)に示す電気自動車EVの左右一対の前輪1に分配し、または、図1(ロ)に示すハイブリッド車HVの左右一対の後輪2に分配するディファレンシャルギヤ80とを有している。
変速機20は、第1シャフト21と第2シャフト22間に第1減速ギヤ列23と第2減速ギヤ列24を設けた常時噛合い式減速機からなる。
第1シャフト21および第2シャフト22は、ハウジング25内に組込まれた対向一対の軸受26により回転自在に支持されて平行の配置とされ、上記第1シャフト21が電動モータ10の出力軸11に接続されている。
第1減速ギヤ列23は、第1シャフト21に第1入力ギヤ23aを設け、その第1入力ギヤ23aに噛合する第1出力ギヤ23bを第2シャフト22を中心にして回転自在としている。
一方、第2減速ギヤ列24は、第1シャフト21に第2入力ギヤ24aを設け、その第2入力ギヤ24aに噛合する第2出力ギヤ24bを第2シャフト22を中心にして回転自在としており、その第2減速ギヤ列24の減速比は第1減速ギヤ列23の減速比より小さくなっている。
図3乃至図5に示すように、第1出力ギヤ23bと第2シャフト22との間には、その第1出力ギヤ23bと第2シャフト22とを締結、解除する第1の2ウェイローラクラッチ30Aが組込まれている。また、第2出力ギヤ24bと第2シャフト22間には、その第2出力ギヤ24bと第2シャフト22を締結、解除する第2の2ウェイローラクラッチ30Bが組込まれている。
ここで、第1の2ウェイローラクラッチ30Aと、第2の2ウェイローラクラッチ30Bは、同一の構成であって左右対称の向きとされているため、第1の2ウェイローラクラッチ30Aを以下に説明し、第2の2ウェイローラクラッチ30Bについては、同一の部品に同一の符号を付して説明を省略する。
第1の2ウェイローラクラッチ30は、第2シャフト22に内輪31を、スプライン32による嵌合として回り止めし、その内輪31の外周に第1出力ギヤ23bの内周に形成された円筒面33との間で周方向の両端が狭小のくさび形空間を形成する複数の平坦なカム面34を周方向に等間隔に設け、各カム面34と円筒面33間にローラ35を組込み、そのローラ35を第1出力ギヤ23bと内輪31間に組込まれた保持器36で保持している。
また、内輪31の軸方向の一端面に円形の凹部37を形成し、その凹部37内にスイッチばね38の円形部38aを嵌合し、その円形部38aの両端から外向きに設けられた一対の押圧片38bを、凹部37の外周壁に形成された切欠き39から保持器36の一端面に形成された切欠部40に挿入し、その一対の押圧片38bで切欠き39および切欠部40の周方向で対向する端面を相反する方向に押圧して、ローラ35が円筒面33およびカム面34に対して係合解除する中立位置に保持器36を弾性保持している。
ここで、第1出力ギヤ23bの内側に組込まれた内輪31と第2出力ギヤ24bの内側に組込まれた内輪31は、その対向部間に組込まれた回転部材としての間座41と、第2シャフト22に嵌合された一対のストッパリング44により両側から挟持されて軸方向に非可動の支持とされている。また、間座41は対向一対の内輪31のそれぞれと一体に回転するようになっている。
一対の内輪31には、ストッパリング44と対向する外端部に円筒形の軸受嵌合面42が形成され、その軸受嵌合面42に嵌合された軸受43によって、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bが内輪31に対して回転自在に支持されている。
第1の2ウェイローラクラッチ30Aと第2の2ウェイローラクラッチ30Bは、図6乃至図8に示す変速比切換機構50によって係合、解除が制御される。
変速比切換機構50は、間座41の外周に軸方向に移動可能な制御リング51を嵌合して回転自在に支持し、その制御リング51の両側に配置された一対の摩擦板52a、52bの一方を第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36に回り止めし、かつ、他方を第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36に回り止めし、上記制御リング51をシフト機構60により第1出力ギヤ23bに向けて移動させ、その第1出力ギヤ23bの側面に押し付けられる摩擦板52aの摩擦係合により保持器36を第1出力ギヤ23bに連結して、その保持器36と内輪31の相対回転により、ローラ35を円筒面33およびカム面34に係合させるようにしている。
また、シフト機構60により制御リング51を第2出力ギヤ24bに向けて移動させ、その第2出力ギヤ24bの側面に押し付けられる摩擦板52bの摩擦係合により保持器36を第2出力ギヤ24bに連結して、その保持器36と内輪31の相対回転により、ローラ35を円筒面33およびカム面34に係合させるようにしている。
ここで、一対の摩擦板52a、52bは環状をなし、その内径面に形成されたL形の係合片53を保持器36に形成された前記切欠部40に係合して、摩擦板52a、52bのそれぞれを保持器36に回り止めしている。また、係合片53と内輪31の対向面間にワッシャ54と弾性部材55とを組込み、その弾性部材55によって摩擦板52a、52bのそれぞれを内輪31から離反する係合解除位置に向けて付勢している。
さらに、係合片53の内端に係合溝57を形成し、一方、間座41の外周には、その係合溝57とで係合手段56を形成する複数の係合突条58を設け、上記摩擦板52a、52bが係合解除位置まで移動した際、係合溝57を係合突条58の一つに係合させて、間座41に一体化された内輪31と保持器36とが相対的に回転するのを防止し、ローラ35を中立位置に保持するようにしている。
図6に示すように、シフト機構60は、第2シャフト22に平行に配置されたシフトロッド61をハウジング25に取り付けられた一対の滑り軸受62によりスライド自在に支持し、そのシフトロッド61にシフトフォーク63を取付け、一方、制御リング51の外周に嵌合された転がり軸受64でスリーブ65を回転自在に支持し、かつ、軸方向に非可動に支持し、そのスリーブ65の外周に環状溝66を設け、その環状溝66にシフトフォーク63の先端の二股片63aを嵌合し、上記シフトロッド61をアクチュエータ67により軸方向に移動させて、スリーブ65と共に制御リング51を軸方向に移動させるようにしている。
アクチュエータ67として、シフトロッド61に接続されるシリンダやソレノイドを採用することができるが、ここでは、モータ68を採用し、そのモータ68の出力軸69の回転を運動変換機構70によりシフトロッド61の軸方向への移動に変換するようにしている。
すなわち、モータ68の出力軸69に設けられた駆動ギヤ71にナット部材としての従動ギヤ72を噛合し、その従動ギヤ72を対向一対の軸受73により回転自在に支持し、その従動ギヤ72の内周に形成された雌ねじ74をシフトロッド61の端部外周に形成された雄ねじ75にねじ係合し、上記従動ギヤ72の定位置での回転により、シフトロッド61を軸方向に移動させるようにしている。
図2に示すように、第2シャフト22の軸端部には、その第2シャフト22の回転をディファレンシャルギヤ80に伝達するアウトプットギヤ76が設けられている。
ディファレンシャルギヤ80は、アウトプットギヤ76に噛合するリングギヤ81をハウジング25によって回転自在に支持されたデフケース82に取付け、上記デフケース82により両端部が回転自在に支持されたピニオン軸83に一対のピニオン84を取付け、その一対のピニオン84のそれぞれに一対のサイドギヤ85を噛合した構成とされ、その一対のサイドギヤ85のそれぞれにアクスル86の軸端部が接続されている。
実施の形態で示す車両用モータ駆動装置Aは上記の構造からなり、図3は、一対の摩擦板52a、52bが第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bから離反する係合解除位置に保持された状態を示し、上記第1出力ギヤ23bの内側に組込まれた第1の2ウェイローラクラッチ30Aおよび第2出力ギヤ24bの内側に組込まれた第2の2ウェイローラクラッチ30Bのそれぞれは、図4に示すように、係合解除状態にある。
このため、電動モータ10が駆動されて第1シャフト21が回転しても、その回転は第1入力ギヤ23aからこれに噛合する第1出力ギヤ23bに伝達され、また、第2入力ギヤ24aからこれに噛合する第2出力ギヤ24bに伝達されるが、第2シャフト22に伝達されず、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bが空転する。
第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの空転状態において、2ウェイローラクラッチ30A、30Bの中立状態にあるローラ35には円筒面33との接触により、ドラグトルクが作用して、保持器36を回転させようとする。
このとき、保持器36に回り止めされた摩擦板52a、52bのそれぞれは、係合溝57と係合突条58に係合によって内輪31に対して回り止めされているため、保持器36も内輪31に対して回り止めされる状態にある。このため、ローラ35に作用するドラグトルクによって、内輪31と保持器36とが相対回転するようなことはなく、第1、第2の2ウェイローラクラッチ30A、30Bが誤係合するという不都合の発生はない。
電動モータ10の駆動によって第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bのそれぞれが空転する状態において、図6に示すモータ68の駆動によりシフトロッド61を同図の右方向に移動させると、シフトフォーク63によってスリーブ65および制御リング51がシフトロッド61と同方向に移動され、その制御リング51により、摩擦板52aが第1出力ギヤ23bの側面に押し付けられる。
このとき、摩擦板52aの係合溝57と間座41の係合突条58の係合が解除し、また、摩擦板52aは、第1出力ギヤ23bの側面に摩擦係合するため、保持器36は第1出力ギヤ23bに連結される状態になる。
このため、第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36が内輪31に対して相対回転し、ローラ35が円筒面33およびカム面34に係合し、第1出力ギヤ23bの回転は、第1の2ウェイローラクラッチ30Aを介して第2シャフト22に直ちに伝達される。また、第2シャフト22の回転はディファレンシャルギヤ80を介してアクスル86に伝達される。
その結果、図1(イ)に示す電気自動車EVにおいては、前輪1が回転することになり、その電気自動車EVを走行させることができると共に、図1(ロ)に示すハイブリッド車HVにおいては、補助駆動輪としての後輪2が回転し、前輪1の駆動をアシストすることになる。
ここで、内輪31と保持器36が相対回転すると、スイッチばね38が弾性変形する。そのため、モータ68を上記の逆方向に回転し、シフトロッド61を上記の逆の方向に移動(図6の左方向)させて、制御リング51を第1出力ギヤ23bから離反する方向に移動させると、摩擦板52aは弾性部材55の復元弾性により、第1出力ギヤ23bから離反し、同時にスイッチばね38の復元弾性により、保持器36が復帰回動され、ローラ35は中立位置に戻されることになり、第1シャフト21から第2シャフト22への回転伝達が直ちに遮断されることになる。
シフトロッド61を同方向(図6の左方向)にさらに移動させると、制御リング51の押圧により、摩擦板52bが第2出力ギヤ24bの側面に押し付けられて摩擦係合する。
このため、第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36が内輪31に対して相対回転し、ローラ35が円筒面33およびカム面34に係合し、第2出力ギヤ24bの回転は、第2の2ウェイローラクラッチ30Bを介して第2シャフト22に直ちに伝達されることになり、トルク伝達経路が直ちに切換えられることになる。
上記のように、アクチュエータとしてのモータ68を駆動してシフトロッド61を軸方向に移動させることにより、第1の2ウェイローラクラッチ30Aまたは第2の2ウェイローラクラッチ30Bが直ちに係合および係合解除するため、変速の切換えを迅速に行なうことができる。
実施の形態で示すように、第1出力ギヤ23bと第2出力ギヤ24b間に制御リング51と2枚の摩擦板52a、52bを組込み、一方の摩擦板52aを第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36に回り止めし、他方の摩擦板52bを第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36に回り止めし、上記制御リング51をシフト機構60で左右方向にシフトできるようにして、1つの変速比切換機構50によって2組の2ウェイローラクラッチ30A、30Bの係合、解除を制御し得るように構成すると、モータ駆動装置の小型化を図ることができる。
ここで、図では省略したが、摩擦板52a、52bと制御リング51の対向面間に転がり軸受を組込んでおくのがよい。その転がり軸受の組込みによって、摩擦板52a、52bと制御リング51との接触部に作用する摩擦抵抗の低減化を図ることができる。このため、摩擦板52a、52bが第1出力ギヤ23b、第2出力ギヤ24bに押し付けられて摩擦係合する係合時に、摩擦板52a、52bを制御リング51に対して円滑に相対回転させることができ、2ウェイローラクラッチ30A,30Bを確実に係合させることができる。
実施の形態においては、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの内周に円筒面33を形成し、各出力ギヤ23b、24bの内側に組込まれた内輪31の外周にカム面34を設けたが、その逆に、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの内周にカム面を形成し、内輪の外周に円筒面を設けるようにしてもよい。この場合、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bと保持器36との間にスイッチばねを組込むようにして、ローラが中立状態となるよう保持器を弾性保持する。
1 前輪
2 後輪
10 電動モータ
20 変速機
21 第1シャフト
22 第2シャフト
23 第1減速ギヤ列
24 第2減速ギヤ列
30A 第1の2ウェイローラクラッチ
30B 第2の2ウェイローラクラッチ
31 内輪
33 円筒面
34 カム面
35 ローラ
36 保持器
38 スイッチばね
41 間座(回転部材)
50 変速比切換機構
51 制御リング
52a 摩擦板
52b 摩擦板
55 弾性部材
56 係合手段
57 係合溝
58 係合突条
60 シフト機構
61 シフトロッド
63 シフトフォーク
64 転がり軸受
65 スリーブ
67 アクチュエータ
68 モータ
72 従動ギヤ(ナット部材)
74 雌ねじ
75 雄ねじ
80 ディファレンシャルギヤ

Claims (14)

  1. 電動モータと、平行軸間に変速比が異なる複数のギヤ列が設けられ、そのギヤ列のトルク伝達経路を切り換えることによって前記電動モータから出力される回転を複数段に変速する常時噛合い式の変速機と、その変速機から出力される動力を左右の車輪に分配するディファレンシャルギヤと、ローラおよびそのローラを保持する保持器を有し、その保持器の回転制御により係合、解除して前記変速機の各変速段毎のギヤを平行軸に対して締結、解除するギヤ列と同数の2ウェイローラクラッチと、その2ウェイローラクラッチの保持器の回転を制御して、2ウェイローラクラッチの係合、解除によりトルク伝達経路を切り換える変速比切換機構とからなる車両用モータ駆動装置。
  2. 前記2ウェイローラクラッチが、平行軸とギヤとの間に組込まれて平行軸に回り止めされた内輪を有し、その内輪の外周とギヤの内周における一方に円筒面を形成し、他方にその円筒面との間で周方向の両端が狭小のくさび空間を形成するカム面を設け、そのカム面と円筒面間にローラを組込み、そのローラをギヤと内輪間に組込まれた保持器で保持し、前記カム面が形成された側の部材と保持器との間に、前記ローラが円筒面とカム面に対して係合解除された中立位置に保持器を弾性保持するスイッチばねを組込んだ構成からなる請求項1に記載の車両用モータ駆動装置。
  3. 前記変速比切換機構が、保持器に回り止めされ、前記円筒面が形成された側の部材の一側面に向けて移動可能に設けられた摩擦板と、その摩擦板を円筒面が形成された部材から離反する係合解除位置に向けて付勢する弾性部材と、前記平行軸にスライド自在に支持され、前記円筒面が形成された部材に向けての移動により、その部材の一側面に摩擦板を押し付ける制御リングと、その制御リングの外周に回転自在に支持されたスリーブと、そのスリーブを円筒面が形成された部材に向けてシフトさせるシフト機構とからなる請求項1又は2に記載の車両用モータ駆動装置。
  4. 前記シフト機構が、前記平行軸に平行配置された軸方向に移動可能なシフトロッドと、そのシフトロッドを軸方向に移動させるアクチュエータと、前記シフトロッドに支持され、そのシフトロッドの軸方向の移動時に前記スリーブと共に制御リングを円筒面が形成された部材に向けて移動させるシフトフォークとからなる請求項3に記載の車両用モータ駆動装置。
  5. 前記カム面が形成された部材と一体に回転する回転部材を設け、前記摩擦板が摩擦係合解除位置まで移動した時、その摩擦板を回転部材に対して回転方向に係合させる係合手段を設けた請求項3又は4に記載の車両用モータ駆動装置。
  6. 前記制御リングを隣接するギヤ列間に組込み、その制御リングの両側に一対の摩擦板を設け、一方の摩擦板を一方のギヤ列に組込まれた2ウェイローラクラッチの保持器に回り止めし、他方の摩擦板を他方のギヤ列に組込まれた2ウェイローラクラッチの保持器に回り止めして、1つの変速比切換機構によって2つの2ウェイローラクラッチの締結、解除を制御し得るようにした請求項3乃至5のいずれかの項に記載の車両用モータ駆動装置。
  7. 前記制御リングと前記スリーブ間に転がり軸受を組込み、前記2ウェイローラクラッチの締結、解除を制御する際に、前記転がり軸受を介して制御リングを軸方向に移動させるようにした請求項3乃至6のいずれかの項に記載の車両用モータ駆動装置。
  8. 前記摩擦板と前記制御リングの対向面間に転がり軸受を組込んだ請求項3乃至7のいずれかの項に記載の車両用モータ駆動装置。
  9. 前記アクチュエータがモータからなり、そのモータの回転をシフトロッドの軸方向への移動に変換する運動変換機構を設けた請求項4乃至8のいずれかの項に記載の車両用モータ駆動装置。
  10. 前記運動変換機構が、前記シフトロッドを中心に回転自在に支持され、前記モータにより回転されるナット部材の内周に雌ねじを設け、その雌ねじをシフトロッドの外周に形成された雄ねじにねじ係合した構成からなる請求項9に記載の車両用モータ駆動装置。
  11. 前記アクチュエータが、シフトロッドに接続されたシリンダからなる請求項4乃至8のいずれかの項に記載の車両用モータ駆動装置。
  12. 前記アクチュエータが、シフトロッドに接続されたソレノイドからなる請求項4乃至8のいずれかの項に記載の車両用モータ駆動装置。
  13. 車両の前部に設けられた左右一対の前輪と後部に設けられた左右一対の後輪の少なくとも一方を請求項1乃至12のいずれかの項に記載の車両用モータ駆動装置により駆動するようにした電気自動車。
  14. 車両の前部に設けられた左右一対の前輪と後部に設けられた左右一対の後輪の一方をエンジンで駆動し、他方を請求項1乃至12のいずれかの項に記載の車両用モータ駆動装置により駆動するようにしたハイブリッド自動車。
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