JP2011057508A - 高純度シリカの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉄鋼スラグを原料として高純度シリカを短時間で簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の高純度シリカの製造方法は、塩化水素の濃度が0.01〜4mol/Lの塩酸に鉄鋼スラグを溶解させるステップと、溶解液から不溶解物を除去するステップと、不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を上げて、溶解液中のケイ酸イオンをゲル化させるステップと、ゲル状のシリカを水洗するステップとを有する。本発明によれば、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として、太陽電池やガラス、乾燥剤などの製造に有用な高純度のシリカを得ることができる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の高純度シリカの製造方法は、塩化水素の濃度が0.01〜4mol/Lの塩酸に鉄鋼スラグを溶解させるステップと、溶解液から不溶解物を除去するステップと、不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を上げて、溶解液中のケイ酸イオンをゲル化させるステップと、ゲル状のシリカを水洗するステップとを有する。本発明によれば、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として、太陽電池やガラス、乾燥剤などの製造に有用な高純度のシリカを得ることができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、鉄鋼スラグを原料として高純度シリカを製造する方法に関する。
製鉄所などでは、高炉スラグや製鋼スラグなどの鉄鋼スラグが副産物として多量に発生している。この鉄鋼スラグを有効利用すべく、これまでに多くの研究がなされており、路盤材、コンクリート用細骨材、高炉水砕スラグ微粉末、土木用材料などの様々な商品が開発されている。しかしながら、鉄鋼生産量が世界規模で年々増加するのにともない、鉄鋼スラグの発生量も年々増加しており、鉄鋼スラグの新たな利用方法が求められている。
また、すでに開発されている商品についても、すべての鉄鋼スラグをその商品とすることができるわけではなく、そのスラグが有する性質によっては商品化するのが困難な場合がある。たとえば、未水和石灰を含有する製鋼スラグは、石灰の水和反応によってスラグそのものが膨張および崩壊するため、そのままでは道路用路盤材として利用することはできない。このような理由により、製鋼スラグは、土木工事での仮設材料などの低級な用途に利用されるにとどまっている。また、潜在水硬性を有するスラグについては、スラグを利用した箇所における土工事(掘削、杭および矢板の打設など)を困難にすることが利用上の支障となっている。また、pHが高いスラグについては、降雨や流水などの影響を受ける陸域または水域での利用が困難である。以上の背景から、鉄鋼スラグの上記性質が問題とならない、鉄鋼スラグの新たな利用方法が求められている。
鉄鋼スラグの新たな利用方法の一つとして、鉄鋼スラグをシリカの原料として利用する技術が報告されている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1,2には、鉄鋼スラグを硫酸に溶解させ;溶解液中に析出した石膏を除去し;溶解液の硫酸濃度を上昇させて非晶質シリカを析出させ;析出した非晶質シリカを水洗することで、シリカを製造することが記載されている。
一方、シリカを製造する技術として、塩酸を用いる方法が報告されている(例えば、特許文献3,4参照)。特許文献3には、製鉄高炉スラグなどのケイ酸質スラグを塩酸に溶解させて酸性シリカゾルを生成させ;溶解液中の残渣を分離除去し;溶解液を放置してケイ酸質ゲルを形成することで、シリカを製造することが記載されている。また、特許文献4には、ケイ酸アルカリを原料とする水性シリカゾルに塩酸を加えてpHを0〜3.0の範囲内に調整し;塩酸を加えた水性シリカゾルを40〜300℃で2〜3時間加熱し;加熱後の水性シリカゾルを強塩基性陰イオン交換体に接触させた後、さらに強酸性陽イオン交換体に接触させることで、水性シリカゾルを製造することが記載されている。
上記のように、鉄鋼スラグの新たな利用方法が求められており、鉄鋼スラグの新たな利用方法の一つとして、鉄鋼スラグをシリカの原料として利用する技術が報告されている。しかしながら、特許文献1,2の方法には、硫酸濃度を上昇させて非晶質シリカを析出させる際に、硫酸カルシウムも析出してしまうため、シリカの純度が低下してしまうという問題があった。また、特許文献3の方法には、ケイ酸質ゲルを形成するためには溶解液を長時間放置しなければならないため、製造効率が低下してしまうという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、鉄鋼スラグを原料として高純度シリカを短時間で簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鉄鋼スラグを塩酸に溶解させることでシリカを回収できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の高純度シリカの製造方法に関する。
[1]塩化水素の濃度が0.01〜4mol/Lの塩酸に鉄鋼スラグを溶解させるステップと、前記鉄鋼スラグを溶解させた塩酸から不溶解物を除去するステップと、前記不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を上げて、前記不溶解物を除去した塩酸中のケイ酸イオンをゲル化させ、ゲル状シリカを得るステップとを有する、高純度シリカの製造方法。
[2]前記不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を1mol/L以上にして、前記不溶解物を除去した塩酸中のケイ酸イオンをゲル化させる、[1]に記載の高純度シリカの製造方法。
[3]さらに、前記ゲル状シリカを水洗するステップを含む、[1]または[2]に記載の高純度シリカの製造方法。
[4]前記鉄鋼スラグは製鋼スラグである、[1]〜[3]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
[1]塩化水素の濃度が0.01〜4mol/Lの塩酸に鉄鋼スラグを溶解させるステップと、前記鉄鋼スラグを溶解させた塩酸から不溶解物を除去するステップと、前記不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を上げて、前記不溶解物を除去した塩酸中のケイ酸イオンをゲル化させ、ゲル状シリカを得るステップとを有する、高純度シリカの製造方法。
[2]前記不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を1mol/L以上にして、前記不溶解物を除去した塩酸中のケイ酸イオンをゲル化させる、[1]に記載の高純度シリカの製造方法。
[3]さらに、前記ゲル状シリカを水洗するステップを含む、[1]または[2]に記載の高純度シリカの製造方法。
[4]前記鉄鋼スラグは製鋼スラグである、[1]〜[3]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
本発明によれば、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として、高純度シリカを短時間で簡便に製造することができる。したがって、本発明によれば、鉄鋼スラグの新たな利用方法を提供することができる。
本発明の高純度シリカの製造方法は、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として高純度シリカを製造する方法である。本明細書において「鉄鋼スラグ」とは、鉄鋼製造工程において副産物として発生するスラグを意味する。鉄鋼スラグの例には、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグおよび製鋼スラグが含まれる。
本発明の高純度シリカの製造方法は、1)鉄鋼スラグを塩酸に溶解させる第1のステップと、2)鉄鋼スラグを溶解させた塩酸から不溶解物を除去する第2のステップと、3)不溶解物を除去した塩酸中のケイ酸イオンをゲル化させて、ゲル状シリカを得る第3のステップとを有する。本発明の製造方法は、さらに4)ゲル状シリカを水洗する第4のステップを含んでいてもよい。
1)第1のステップでは、鉄鋼スラグを塩酸に溶解させる。原料とする鉄鋼スラグの種類は、ケイ酸塩(例えば、Ca2SiO4やCaSiO3などのケイ酸カルシウム)を含むものであれば特に限定されない。そのような鉄鋼スラグの例には、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグおよび製鋼スラグが含まれる。製鋼スラグの組成(ICP分析およびXRD分析の結果)の一例を表1に示す。
鉄鋼スラグの大きさ(粒径)は、塩酸に溶解しうる大きさであれば特に限定されない。たとえば、鉄鋼スラグの平均粒径は10〜20mm程度であればよい。鉄鋼スラグの溶解性を向上させる観点からは、鉄鋼スラグの比表面積を大きくする、すなわち鉄鋼スラグの粒径を小さくすることが好ましい。たとえば、予め平均粒径0.1mm程度に粉砕した鉄鋼スラグを原料としてもよい。溶解させる鉄鋼スラグの量は、塩化水素の濃度(またはpH)に応じて適宜決定すればよい。たとえば、塩化水素の濃度が3mol/L(pHが−0.48)の場合、塩酸1Lに対して鉄鋼スラグを100g程度まで溶解させることができる。
本発明の製造方法は、鉄鋼スラグに含まれる各成分を塩酸に浸出させることを一つの特徴とする。鉄鋼スラグに含まれる成分のうち、SiO2およびAl2O3を除くほとんどの成分を塩酸に浸出させることができる。塩酸を添加しても硫酸カルシウムが析出しないため、塩酸を用いることで硫酸カルシウムの析出によるシリカの純度低下を防ぐことができる(第3のステップ参照)。また、塩酸は他の酸に比べて安価であり、かつ廃液からの塩酸の回収およびリサイクルが容易であることから、塩酸を用いることでランニングコストを低く抑えることができる(第3のステップ参照)。鉄鋼スラグを溶解させる塩酸は、後のステップで問題とならない限り他の任意物質を含んでいてもよい。塩化水素の濃度は0.01〜4mol/Lの範囲内が好ましく、塩酸のpHは−0.60〜2の範囲内が好ましい。塩化水素の濃度を0.01mol/L未満とすると(塩酸のpHを2超とすると)、各成分を十分に浸出させることができず、スラグ残存率が大きくなってしまうため好ましくない。一方、塩化水素の濃度を4mol/L超とすると(塩酸のpHを−0.60未満とすると)、浸出中にゲル状のシリカが発生してしまい、第3のステップにおけるシリカの回収率が低下してしまうとともに、発生したシリカがスラグの表面に付着してスラグの浸出を阻害するため好ましくない。塩酸のpHは、例えばガラス電極を用いたpHメーターを用いて測定すればよい。
本発明者の予備実験では、平均粒径10mmの製鋼スラグ10gに塩化水素の濃度が1〜10mol/Lの塩酸を加え(最終液量100g)、20〜80℃でスターラー(500rpm)を用いて5〜60分間攪拌したところ、塩化水素の濃度、液温、浸出時間を調整しても60%以上のスラグが残存してしまい、スラグを十分に溶解させることができなかった。そこで、本発明者は、スラグの溶解性を高める手段について検討したところ、攪拌強度を高めるか、またはスラグの平均粒径を小さくする(比表面積を大きくする)と、90%以上のスラグを溶解させうることを見出した。したがって、鉄鋼スラグを塩酸に溶解させる際には、攪拌強度を高めるか、スラグの平均粒径を小さくすることが好ましい。
攪拌強度を高めるには、ホモジナイザーなどで攪拌すればよい。また、スラグの平均粒径を小さくするには、公知の粉砕装置を用いて粒径が0.1mm程度となるまで粉砕すればよい。たとえば、平均粒径10〜20mm程度の鉄鋼スラグを原料とする場合は、ホモジナイザーで強力に混合物を攪拌することで(例えば2500rpm程度で攪拌)、20分程度で90%以上のスラグを溶解させることができる。また、平均粒径0.1mm程度の鉄鋼スラグ粉砕物を原料とする場合は、スターラーでマイルドに攪拌しても(例えば500rpm程度で攪拌)、5分程度で90%以上のスラグを溶解させることができる。
鉄鋼スラグがある程度塩酸に溶解すると、塩化水素の濃度が4mol/L以下(塩酸のpHが−0.60以上)であったとしても、ゲル状のシリカが少しずつ発生してスラグの表面に付着し、スラグの浸出を阻害してしまう。しかし、攪拌強度を高めることで、スラグ同士が衝突して表面に付着したゲル状のシリカが脱離するため、スラグを継続して浸出させることができるようになると推測される。また、スラグの平均粒径を小さくして、スラグの比表面積を大きくすることで、スラグ表面全体がゲル状のシリカに被覆されることを抑制できるため、スラグを継続して浸出させることができるようになると推測される。
鉄鋼スラグを塩酸に溶解させるときの液温は、特に限定されず、20〜80℃程度であればよい。また、溶解時間も特に限定されず、スラグの大きさや塩化水素の濃度に応じて適宜決定すればよい。
2)第2のステップでは、鉄鋼スラグを溶解させた塩酸から不溶解物を除去する。第1のステップにおいてSiO2およびAl2O3を除くほとんどの成分は塩酸に浸出するため、通常、不溶解物の大半はSiO2およびAl2O3である。不溶解物を除去する方法は特に限定されず、例えば、鉄鋼スラグを溶解させた塩酸をろ過すればよい。
3)第3のステップでは、不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を上げて(pHを下げて)、不溶解物を除去した塩酸中のケイ酸イオンをゲル化させる。鉄鋼スラグを溶解させた塩酸中には、以下に示されるようにCa2SiO4やCaSiO3などのケイ酸塩由来のケイ酸イオン(SiO4 4−、SiO3 2−)が含まれている。
Ca2SiO4 → 2Ca2++SiO4 4−
CaSiO3 → Ca2++SiO3 2−
Ca2SiO4 → 2Ca2++SiO4 4−
CaSiO3 → Ca2++SiO3 2−
ケイ酸イオンは、塩酸中において重縮合し、塩酸に不溶なゲル状のシリカとなる。この反応は、鉄鋼スラグを溶解させた塩酸を放置するのみでも進行するが、塩化水素の濃度を上げる(塩酸のpHを下げる)ことでゲル化が完了するまでの時間を短縮することができる(実施例と参考例とを比較参照)。たとえば、第3のステップにおいて塩酸をさらに添加し、不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を1mol/L以上(塩酸のpHを0以下)にして、ケイ酸イオンをゲル化させればよい。ケイ酸イオンをゲル化させるときの液温は、特に限定されず、20〜80℃程度であればよい。また、反応時間も特に限定されず、塩化水素の濃度に応じて適宜決定すればよい。たとえば、塩化水素の濃度を6mol/Lに調整すれば(塩酸のpHを−0.78とすれば)、ゲル化を2時間以内に完了させることができる。
形成されたゲル状シリカは、例えば加圧ろ過などにより回収することができる。また、ゲル状シリカを回収した後の塩酸を加熱することで、塩酸を回収することができる。
4)第4のステップでは、第3のステップで得られたゲル状シリカを水洗する。たとえば、純水で洗浄することにより、シリカの純度を99%以上にまで高めることができる(実施例参照)。洗浄方法は特に限定されない。たとえば、ゲル状シリカを入れた純水をスターラーなどで攪拌すればよい。
以上の手順により、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として、高純度シリカを簡便に製造することができる。得られた高純度シリカは、さらに乾燥および焼成し、必要に応じて粉砕してもよい。これにより、白色の粉末状シリカを得ることができる。本発明の製造方法は、実施例に示されるように、高い回収率(90%)でシリカを回収(製造)することができる。
本発明の製造方法は、硫酸カルシウムが析出しないため、硫酸を用いた従来の製造方法に比べて高純度のシリカを製造することができる。また、本発明の製造方法は、第3のステップで溶解液の塩化水素の濃度を上げて(pHを下げて)ゲル化が完了するまでの時間を短縮しているため、溶解液をそのまま放置してゲル化させる従来の製造方法に比べて高純度のシリカを短時間で効率よく製造することができる。
本発明の製造方法は、鉄鋼スラグの性質(未水和石灰の有無、潜在水硬性の有無、pH)に関わらず、各種鉄鋼スラグを原料とすることができる。したがって、本発明によれば、未水和石灰を含有する製鋼スラグを原料としても有用な高純度シリカを製造することができる。このように、本発明によれば、鉄鋼スラグの新たな利用方法を提供することができる。
本発明の製造方法により製造された高純度シリカは、太陽電池用のシリコン原料として、またガラスや乾燥剤などの材料として利用できる。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
粉砕装置を用いて平均粒径が0.1mm程度となるまで粉砕した製鋼スラグ10gに10N塩酸7.5mLと蒸留水を加え、スターラー(500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。溶解液の最終容量は100mLであり、pHは1.6であった。pHは、ガラス電極を用いたpHメーター(株式会社堀場製作所製、型式F−52)を用いて測定した。製鋼スラグの溶解時間は10分であった。溶解液中の不溶解物および沈殿物を吸引ろ過により除去した。
粉砕装置を用いて平均粒径が0.1mm程度となるまで粉砕した製鋼スラグ10gに10N塩酸7.5mLと蒸留水を加え、スターラー(500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。溶解液の最終容量は100mLであり、pHは1.6であった。pHは、ガラス電極を用いたpHメーター(株式会社堀場製作所製、型式F−52)を用いて測定した。製鋼スラグの溶解時間は10分であった。溶解液中の不溶解物および沈殿物を吸引ろ過により除去した。
ろ過後の溶解液にさらに10N塩酸を11mL加え、pHを0に調整した。pH調整後の溶解液を2時間放置して、溶解液中のケイ酸イオンをゲル化させた。ゲル状シリカを吸引ろ過により分離し、100mLの純水で3回洗浄した。洗浄後のゲル状シリカのICP分析の結果を表2に示す。
[実施例2]
粉砕装置を用いて平均粒径が0.1mm程度となるまで粉砕した製鋼スラグ10gに10N塩酸7.5mLと蒸留水を加え、スターラー(500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。溶解液の最終容量は100mLであり、pHは1.6であった。製鋼スラグの溶解時間は10分であった。溶解液中の不溶解物および沈殿物を吸引ろ過により除去した。
粉砕装置を用いて平均粒径が0.1mm程度となるまで粉砕した製鋼スラグ10gに10N塩酸7.5mLと蒸留水を加え、スターラー(500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。溶解液の最終容量は100mLであり、pHは1.6であった。製鋼スラグの溶解時間は10分であった。溶解液中の不溶解物および沈殿物を吸引ろ過により除去した。
ろ過後の溶解液にさらに10N塩酸を11mL加え、pHを0に調整した。pH調整後の溶解液を2時間放置して、溶解液中のケイ酸イオンをゲル化させた。ゲル状シリカを吸引ろ過により分離した。分離後のゲル状シリカのICP分析の結果を表2に示す。
[参考例]
平均粒径20mmの製鋼スラグ10gに10N塩酸7.5mLと蒸留水を加え、ホモジナイザー(2500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。溶解液の最終容量は100mLであり、pHは1.6であった。製鋼スラグの溶解時間は35分であった。溶解液中の不溶解物および沈殿物を吸引ろ過により除去した。
平均粒径20mmの製鋼スラグ10gに10N塩酸7.5mLと蒸留水を加え、ホモジナイザー(2500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。溶解液の最終容量は100mLであり、pHは1.6であった。製鋼スラグの溶解時間は35分であった。溶解液中の不溶解物および沈殿物を吸引ろ過により除去した。
ろ過後の溶解液を72時間静置して、溶解液中のケイ酸イオンをゲル化させた。ゲル状シリカを吸引ろ過により分離し、100mLの純水で3回洗浄した。原料とした製鋼スラグと洗浄後のゲル状シリカのICP分析の結果を表2に示す。
表2から、本発明の製造方法により製鋼スラグから高純度のシリカを短時間で回収できることがわかる。また、ゲル状シリカを純水で洗浄することで、シリカの純度をより高められることがわかる(実施例1と実施例2とを比較参照)。
[実施例3]
粉砕装置を用いて平均粒径が0.1mm程度となるまで粉砕した製鋼スラグ10gに塩酸と蒸留水を加え、スターラー(500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。溶解液の最終容量は100mLであり、塩化水素の最終濃度は3mol/Lであり、pHは−0.48であった。溶解液中の不溶解物および沈殿物を吸引ろ過により除去した。
粉砕装置を用いて平均粒径が0.1mm程度となるまで粉砕した製鋼スラグ10gに塩酸と蒸留水を加え、スターラー(500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。溶解液の最終容量は100mLであり、塩化水素の最終濃度は3mol/Lであり、pHは−0.48であった。溶解液中の不溶解物および沈殿物を吸引ろ過により除去した。
ろ過後の溶解液にさらに塩酸を加え(塩化水素の最終濃度:6mol/L)、pHを−0.78に調整した。塩酸添加後の溶解液を2時間放置して、溶解液中のケイ酸イオンをゲル化させた。ゲル状シリカを吸引ろ過により分離し、100mLの上水(Ca 13ppm,Si 2ppm,Cl 9ppm)で3回洗浄した。洗浄は、ゲル状シリカを入れた上水をスターラーで30分間攪拌することで行った。洗浄前のゲル状シリカと上水洗浄後のゲル状シリカの蛍光X線分析の結果を表3に示す。
上水洗浄後のゲル状シリカをさらに100mLの純水で3回洗浄した。洗浄は、ゲル状シリカを入れた純水をスターラーで30分間攪拌することで行った。洗浄前のゲル状シリカと純水洗浄後のゲル状シリカの蛍光X線分析の結果(Oを除く)を表3に示す。
表4に、原料とした製鋼スラグ中のケイ素の量と、純水洗浄後のゲル状シリカ中のケイ素の量を示す。
表3から、上水または純水で洗浄することで、高純度(99%以上)のシリカを得られることがわかる。また、表4に示されるように、本実施例におけるケイ素の回収率は90%であった。回収できなかった10%分は、製鋼スラグ中に含まれるSiO2(塩酸に不溶)の分であると考えられる。
本発明によれば、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として、太陽電池やガラス、乾燥剤などの製造に有用な高純度のシリカを得ることができる。
Claims (4)
- 塩化水素の濃度が0.01〜4mol/Lの塩酸に鉄鋼スラグを溶解させるステップと、
前記鉄鋼スラグを溶解させた塩酸から不溶解物を除去するステップと、
前記不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を上げて、前記不溶解物を除去した塩酸中のケイ酸イオンをゲル化させ、ゲル状シリカを得るステップと、
を有する、高純度シリカの製造方法。 - 前記不溶解物を除去した塩酸の塩化水素の濃度を1mol/L以上にして、前記不溶解物を除去した塩酸中のケイ酸イオンをゲル化させる、請求項1に記載の高純度シリカの製造方法。
- さらに、前記ゲル状シリカを水洗するステップを含む、請求項1に記載の高純度シリカの製造方法。
- 前記鉄鋼スラグは製鋼スラグである、請求項1に記載の高純度シリカの製造方法。
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