JP2011057137A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】転がり抵抗の低減による他の性能低下を抑制しつつ、タイヤ変形増加を抑制すると共に、タイヤ重量の増加を抑制したうえで、転がり抵抗を低減すること。
【解決手段】カーカス層6のタイヤ径方向外側に少なくとも2層のベルト層71,72が配置された空気入りタイヤ1において、ベルト層71,72は、タイヤ接地幅TWに対して90[%]以上115[%]以下のタイヤ幅方向寸法BLWに設定された幅広ベルト層と、幅広ベルト層に対して50[%]以上90[%]以下のタイヤ幅方向寸法BSWに設定された幅狭ベルト層とが積層されてなり、ベルト層71,72のタイヤ幅方向の端部の少なくとも片方にて、幅広ベルト層と幅狭ベルト層との層間に少なくとも一部が挟まれるコード補強層8を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、タイヤの転がり抵抗を低減できる空気入りタイヤに関する。
近年の空気入りタイヤでは、燃費を向上する観点から、タイヤの転がり抵抗を低減することが求められている。
例えば、特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、トレッド部を構成するゴム組成物を、乳化重合によって調製されるガラス転移温度が−20℃〜−70℃の共役ジエン−芳香族ビニル化合物コポリマー10〜85重量%;ポリイソプレン5〜40重量%;およびポリブタジエン10〜50重量%のゴム重合体に、ゴム重合体100重量部あたりシリカ50〜90重量部を含むゴム組成物を用いてトレッド部を構成している。この特許文献1に記載の空気入りタイヤは、摩耗寿命を低下させることなく、転がり抵抗に関連するtanδを改善することで、転がり抵抗の低減化を図っている。
また、例えば、特許文献2に記載の空気入りタイヤでは、カーカス層が、互いに平行にかつラジアル方向に配列された多数の金属コードをゴムに埋設し、左右のビード部から両サイド部を経て少なくともクラウン両端部まで延び、クラウン部で終端する左右一対のラジアル・コード層で形成され、カーカス層のクラウン部ラジアル方向外側に配置されたベルトが、コード方向がタイヤの周方向に対して10°乃至30°程度の角度で、層内では互いに平行に配列され、層間ではタイヤ赤道線を挟み互いに逆方向になるように積層された少なくとも2層の、金属コードを多数ゴムに埋設してなる層で形成されている。この特許文献2に記載の空気入りタイヤは、プライ・コード層の枚数を削減してタイヤを軽量化することで、転がり抵抗の低減化を図っている。
また、例えば、特許文献3に記載の空気入りタイヤでは、ベルト層が、スチールコードを具備したスチールベルトを3層積層されることで構成されており、内周層とされる1番ベルトおよび中間層とされる2番ベルトは、1番ベルトのスチールコードの向きと2番ベルトのスチールコードの向きとが、互いに交差すると共にタイヤ幅方向に対して傾斜するように配置され、外周層とされる第3ベルトは、第3ベルトのスチールコードの向きがタイヤ幅方向に沿うように配置されている。この特許文献3に記載の空気入りタイヤは、ショルダー部の歪み変形を抑えることで、転がり抵抗の低減化を図っている。
特開平7−133377号公報 特開平11−11108号公報 特開2007−253848号公報
しかし、特許文献1に記載の空気入りタイヤのように、路面と接触するトレッド部の損失係数を低下させることは効果的であるが、その反面、損失係数を極端に低下させた場合、他の性能、例えば、WET性能や制駆動性能が低下してしまうおそれがある。
また、特許文献2に記載の空気入りタイヤのようなタイヤの軽量化は、タイヤ剛性と背反するものであり、タイヤ剛性低下により変形が増大することから、大幅な転がり抵抗の低減効果が期待できない。
また、特許文献3に記載の空気入りタイヤでは、スチールコードが3層積層されたベルト層を適用することで、タイヤ重量が増加するため、転がり抵抗の低減効果が相殺されるおそれがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、転がり抵抗の低減による他の性能低下を抑制しつつ、タイヤ変形増加を抑制すると共に、タイヤ重量の増加を抑制したうえで、転がり抵抗を低減することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤでは、カーカス層のタイヤ径方向外側に少なくとも2層のベルト層が配置された空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層は、タイヤ接地幅に対して90[%]以上115[%]以下のタイヤ幅方向寸法に設定された幅広ベルト層と、前記幅広ベルト層に対して50[%]以上90[%]以下のタイヤ幅方向寸法に設定された幅狭ベルト層とが積層されてなり、前記ベルト層のタイヤ幅方向の端部の少なくとも片方にて、前記幅広ベルト層と前記幅狭ベルト層との層間に少なくとも一部が挟まれるコード補強層を備えたことを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、幅狭ベルト層は、一般的な空気入りタイヤでのタイヤ幅方向寸法よりもタイヤ幅方向の幅が狭く(短く)形成されている。そして、狭く形成された幅狭ベルト層の分、別体でコード補強層が配置されている。このため、コード補強層を含めたベルト層の総量が維持され、インフレート形状が維持されるので、ベルト層におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部)における歪みを増減させない。しかも、ベルト層と別体のコード補強層とにより、ベルト層におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部)でのせん断力を低減すると共に、曲げ剛性を低減する。この結果、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減できる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記コード補強層は、前記幅狭ベルト層の幅方向端部からタイヤ幅方向内側へのタイヤ幅方向寸法の30[%]の範囲内において、前記幅狭ベルト層のタイヤ幅方向寸法の少なくとも5[%]以上の範囲で、前記幅広ベルト層と前記幅狭ベルト層との層間に挟まれていることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、コード補強層の配置を規定したことにより、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得られる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記コード補強層は、タイヤ周方向に対するコード角度が、15[°]以上90[°]以下の範囲に設定されていることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、ベルト層におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部)での曲げ剛性が適宜低減されるので、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得られる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記幅狭ベルト層が前記幅広ベルト層のタイヤ径方向内側に積層配置されていても、前記幅狭ベルト層が前記幅広ベルト層のタイヤ径方向外側に積層配置されてもよく、上記効果を得ることができる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記コード補強層は、タイヤ幅方向外側の端が、タイヤ断面幅の位置でのタイヤ断面高さに達しない範囲に配置されていることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、コード補強層のタイヤ幅方向外側の端の位置を規定したことにより、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得られる。
本発明の空気入りタイヤは、転がり抵抗の低減による他の性能低下を抑制しつつ、タイヤ変形増加を抑制すると共に、タイヤ重量の増加を抑制したうえで、転がり抵抗を低減できる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気入りタイヤの子午断面図である。 図2は、図1における部分拡大図である。 図3は、本発明の実施の形態2に係る空気入りタイヤの子午断面図である。 図4は、図3における部分拡大図である。 図5は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)Cに向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周方向である。また、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。
また、以下に説明する空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面Cを中心としてほぼ対称になるように構成されている。タイヤ赤道面Cとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ断面幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから最も離れている部分間の距離である。なお、タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面C上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「C」を付す。そして、以下に説明する空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面Cを中心としてほぼ対称になるように構成されていることから、空気入りタイヤ1の回転軸を通る平面で該空気入りタイヤ1を切った場合の子午断面図(図1および図3)においては、タイヤ赤道面Cを中心とした一側(図1および図3において右側)のみを図示して当該一側のみを説明し、他側(図1および図3において左側)の説明は省略する。
[実施の形態1]
実施の形態1の空気入りタイヤ1は、一般的な乗用車に装着されるタイヤとして好適である。この空気入りタイヤ1は、図1および図2に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部2の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド面21として形成されている。そして、このトレッド面21には、図2に示すように、タイヤ幅方向両外側の所定位置に一対のタイヤ接地幅端Tが設定されており、タイヤ接地幅端Tのタイヤ幅方向の間隔がタイヤ接地幅TWとして設定されている。
さらに、空気入りタイヤ1は、トレッド面21に、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線Cと平行なストレート主溝である複数の主溝22が設けられている。本実施の形態における主溝22は、トレッド面21に4本設けられている。
ここで、タイヤ接地幅TWとは、空気入りタイヤ1を正規リム10(図1参照)にリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド面21が路面(平板)に対して静止した状態で垂直に接地する領域であるタイヤ接地域のタイヤ幅方向の最大幅である。また、タイヤ接地幅端Tは、タイヤ接地域のタイヤ幅方向の両最外端をいう。
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」(ただし乗用車の場合は180kPa)、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
また、空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2の両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。そして、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、コード補強層8と、ベルト補強層9とを含み構成されている。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6の端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されている。
カーカス層6は、一対のビード部5に対して各タイヤ幅方向端部が折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのカーカスコードが、ゴム材で被覆されたものである。カーカスコードは、空気入りタイヤ1のタイヤ赤道線Cに直交してタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向に複数並設されている。なお、カーカスコードは、タイヤ赤道線C(タイヤ周方向)に対する角度が実質的に90[°]であって、タイヤ赤道線Cに対する90[°]を基準に−5[°]から+5[°]の範囲の角度を含む。また、カーカス層6は、1層で図示されているが、タイヤ剛性を向上するために多層構造としてもよい。
ベルト層7は、カーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に、少なくとも2層のベルト層71,72が積層され、トレッド部2においてカーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト層71,72は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのコードがゴム材で被覆されたもので、該コードがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道線Cに対して、所定の角度をつけて配置されている。また、積層されたベルト層71,72は、タイヤ赤道線Cに対して、相互にコードを反対方向に傾けて配置されている。
この少なくとも2層のベルト層71,72は、幅広ベルト層と幅狭ベルト層とで構成されている。幅広ベルト層は、タイヤ接地幅TWに対して90[%]以上115[%]以下のタイヤ幅方向寸法BLW(0.90≦BLW/TW≦1.15)に設定されたもので、本実施の形態では、タイヤ径方向外側に積層された2番ベルトとしてのベルト層72が適用されている。また、幅狭ベルト層は、幅広ベルト層に対して50[%]以上90[%]以下のタイヤ幅方向寸法BSWに設定されたもので、本実施の形態では、タイヤ径方向内側に積層された1番ベルトとしてのベルト層71が適用されている。
コード補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向の端部(すなわちショルダー部3)にて、幅狭ベルト層としてのベルト層71と、幅広ベルト層としてのベルト層72との層間に、少なくとも一部が挟まれつつタイヤ周方向に掛け回されたものである。すなわち、コード補強層8は、幅狭ベルト層としてのベルト層71と、幅広ベルト層としてのベルト層72との層間において、その全てが挟まれた形態、または、そのタイヤ幅方向外側の端部が、幅狭ベルト層としてのベルト層71のタイヤ幅方向外側の端からタイヤ幅方向外側に一部はみ出した形態で配置されている。このコード補強層8は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのコードがゴム材で被覆されたもので、該コードがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道線Cに対して、所定の角度をつけて配置されている。なお、コード補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向の両端部に設けられていることがより好ましいが、ベルト層7のタイヤ幅方向の端部の少なくとも片方に設けられていればよい。
ベルト補強層9は、ベルト層7のタイヤ幅方向の端部(すなわちショルダー部3)にて、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層9は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのコードがゴム材で被覆されたもので、該コードがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道線Cに対して実質的に0[°](タイヤ周方向に対する角度が±5[°]以下)の角度となるように配置されている。ベルト補強層9は、1層で構成されていてもよいが、ベルト層7の端部をさらに補強するために、多層構造としてもよい。本実施の形態では、ベルト補強層9は、図1および図2で示すように、2層のベルト補強層91,92で構成されている。
このように構成された実施の形態1の空気入りタイヤ1では、ベルト層7が、タイヤ接地幅TWに対して90[%]以上115[%]以下のタイヤ幅方向寸法BLWに設定された幅広ベルト層(ベルト層72:2番ベルト)と、幅広ベルト層に対して50[%]以上90[%]以下のタイヤ幅方向寸法BSWに設定された幅狭ベルト層(ベルト層71:1番ベルト)とが積層されてなり、このベルト層7のタイヤ幅方向の端部の少なくとも片方にて、幅広ベルト層と幅狭ベルト層との層間に少なくとも一部が挟まれるコード補強層8を備えている。
この空気入りタイヤ1によれば、幅広ベルト層(ベルト層72)は、一般的な空気入りタイヤでのタイヤ幅方向寸法であるが、幅狭ベルト層(ベルト層71)は、一般的な空気入りタイヤでのタイヤ幅方向寸法よりもタイヤ幅方向の幅が狭く(短く)形成されている。そして、狭く形成された幅狭ベルト層の分、別体でコード補強層8が配置されていることになる。このため、コード補強層8を含めたベルト層7の総量が維持され、インフレート形状が維持されるので、ベルト層71,72におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部3)における歪みを増減させない。しかも、ベルト層71と別体のコード補強層8とにより、ベルト層71,72におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部3)でのせん断力を低減すると共に、曲げ剛性を低減する。この結果、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部2の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減することが可能になる。
なお、幅狭ベルト層(ベルト層71)のタイヤ幅方向寸法BSWは、幅広ベルト層(ベルト層72)に対して50[%]以上85[%]以下(0.50≦BSW/BLW≦0.85)に設定されていることが、上記効果を得る上でより好ましい。
また、実施の形態1の空気入りタイヤ1では、コード補強層8は、幅狭ベルト層(ベルト層71)の幅方向端部からタイヤ幅方向内側へのタイヤ幅方向寸法BSWの30[%]の範囲内において、幅狭ベルト層(ベルト層71)のタイヤ幅方向寸法BSWの少なくとも5[%]以上の範囲で、幅広ベルト層(ベルト層72)と幅狭ベルト層(ベルト層71)との層間に挟まれるタイヤ幅方向寸法BRWに設定されている。
この空気入りタイヤ1によれば、コード補強層8の配置を規定したことにより、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部2の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得ることが可能になる。
また、実施の形態1の空気入りタイヤ1では、コード補強層8は、タイヤ周方向に対するコード角度が、15[°]以上90[°]以下の範囲に設定されている。
この空気入りタイヤ1によれば、ベルト層71,72におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部3)での曲げ剛性が適宜低減されるので、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部2の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得ることが可能になる。
また、実施の形態1の空気入りタイヤ1では、コード補強層8は、図1に示すように、タイヤ幅方向外側の端8aが、タイヤ断面幅SWの位置でのタイヤ断面高さSDHに達しない範囲に配置されている。
ここで、タイヤ断面幅SWとは、JATMA、ETRTO、TRA、その他のブックマークにより規定される設計断面幅をいい、タイヤを規定リムに装着し、規定の空気圧とし無荷重状態のタイヤ側面の模様または文字など、全てを含むサイドウォール部4間の直線距離であるタイヤ総幅から、模様または文字などを除いた幅をいう。そして、このタイヤ断面幅SWの位置でのタイヤ断面高さSDHは、ビード部5の底部のリムベースからタイヤ幅方向外側に延在した延長線と、リムフランジが接触する接触面からタイヤ径方向内側に延在した延長線との交点Pを基準とし、この交点Pから、タイヤ断面幅SWの位置までのタイヤ径方向の高さである。なお、タイヤ断面高さSHは、(タイヤ径方向の外径−リム径)/2であって、交点Pから、タイヤ赤道面Cとトレッド面21との交点(センタークラウン)までのタイヤ径方向の高さである。
この空気入りタイヤ1によれば、コード補強層8のタイヤ幅方向外側の端8aの位置を規定したことにより、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部2の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得ることが可能になる。
[実施の形態2]
以下に説明する実施の形態2の空気入りタイヤは、上述した実施の形態1に対し、ベルト層およびコード補強層の構成が異なる。そして、上述した実施の形態1と同等の構成には、同一符号を付してその説明を省略する。
図3および図4に示すように、少なくとも2層のベルト層71,72は、幅広ベルト層と幅狭ベルト層とで構成されている。幅広ベルト層は、タイヤ接地幅TWに対して90[%]以上115[%]以下のタイヤ幅方向寸法BLW(0.90≦BLW/TW≦1.15)に設定されたもので、本実施の形態では、タイヤ径方向内側に積層された1番ベルトとしてのベルト層71が適用されている。また、幅狭ベルト層は、幅広ベルト層に対して50[%]以上90[%]以下のタイヤ幅方向寸法BSWに設定されたもので、本実施の形態では、タイヤ径方向外側に積層された2番ベルトとしてのベルト層72が適用されている。
コード補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向の端部(すなわちショルダー部3)にて、幅狭ベルト層としてのベルト層72と、幅広ベルト層としてのベルト層71との層間に、少なくとも一部が挟まれつつタイヤ周方向に掛け回されたものである。すなわち、コード補強層8は、幅狭ベルト層としてのベルト層72と、幅広ベルト層としてのベルト層71との層間において、その全てが挟まれた形態、または、そのタイヤ幅方向外側の端部が、幅狭ベルト層としてのベルト層72のタイヤ幅方向外側の端からタイヤ幅方向外側に一部はみ出した形態で配置されている。このコード補強層8は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのコードがゴム材で被覆されたもので、該コードがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道線Cに対して、所定の角度をつけて配置されている。なお、コード補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向の両端部に設けられていることがより好ましいが、ベルト層7のタイヤ幅方向の端部の少なくとも片方に設けられていればよい。
このように構成された実施の形態2の空気入りタイヤ1では、ベルト層7が、タイヤ接地幅TWに対して90[%]以上115[%]以下のタイヤ幅方向寸法BLWに設定された幅広ベルト層(ベルト層71:1番ベルト)と、幅広ベルト層に対して50[%]以上90[%]以下のタイヤ幅方向寸法BSWに設定された幅狭ベルト層(ベルト層72:2番ベルト)とが積層されてなり、このベルト層7のタイヤ幅方向の端部の少なくとも片方にて、幅広ベルト層と幅狭ベルト層との層間に少なくとも一部が挟まれるコード補強層8を備えている。
この空気入りタイヤ1によれば、幅広ベルト層(ベルト層71)は、一般的な空気入りタイヤでのタイヤ幅方向寸法であるが、幅狭ベルト層(ベルト層72)は、一般的な空気入りタイヤでのタイヤ幅方向寸法よりもタイヤ幅方向の幅が狭く(短く)形成されている。そして、狭く形成された幅狭ベルト層の分、別体でコード補強層8が配置されていることになる。このため、コード補強層8を含めたベルト層7の総量が維持され、インフレート形状が維持されるので、ベルト層71,72におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部3)における歪みを増減させない。しかも、ベルト層72と別体のコード補強層8とにより、ベルト層71,72におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部3)でのせん断力を低減すると共に、曲げ剛性を低減する。この結果、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部2の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減することが可能になる。
なお、幅狭ベルト層(ベルト層72)のタイヤ幅方向寸法BSWは、幅広ベルト層(ベルト層71)に対して50[%]以上85[%]以下(0.50≦BSW/BLW≦0.85)に設定されていることが、上記効果を得る上でより好ましい。
また、実施の形態2の空気入りタイヤ1では、コード補強層8は、幅狭ベルト層(ベルト層72)の幅方向端部からタイヤ幅方向内側へのタイヤ幅方向寸法BSWの30[%]の範囲内において、幅狭ベルト層(ベルト層72)のタイヤ幅方向寸法BSWの少なくとも5[%]以上の範囲で、幅広ベルト層(ベルト層71)と幅狭ベルト層(ベルト層72)との層間に挟まれるタイヤ幅方向寸法BRWに設定されている。
この空気入りタイヤ1によれば、コード補強層8の配置を規定したことにより、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部2の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得ることが可能になる。
また、実施の形態2の空気入りタイヤ1では、コード補強層8は、タイヤ周方向に対するコード角度が、15[°]以上90[°]以下の範囲に設定されている。
この空気入りタイヤ1によれば、ベルト層71,72におけるタイヤ幅方向端部(ショルダー部3)での曲げ剛性が適宜低減されるので、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部2の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得ることが可能になる。
また、実施の形態2の空気入りタイヤ1では、コード補強層8は、図3に示すように、タイヤ幅方向外側の端8aが、タイヤ断面幅SWの位置でのタイヤ断面高さSDHに達しない範囲に配置されている。
この空気入りタイヤ1によれば、コード補強層8のタイヤ幅方向外側の端8aの位置を規定したことにより、タイヤ変形増加やタイヤ重量増加を抑制し、かつ内部構造のみの変更により路面と接触するトレッド部2の性能低下を抑制したうえで、転がり抵抗を低減する効果を、より顕著に得ることが可能になる。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、縦バネ定数、転がり抵抗、タイヤ重量(重量)および操縦安定性に関する性能試験が行われた(図5参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ195/65R15 91Sであって、タイヤ接地幅TWが140[mm]の空気入りタイヤが適用された。
評価方法は、縦バネ定数の性能試験では、適用リムに組み付け、正規内圧を充填した空気入りタイヤに対し、荷重を負荷した際におけるたわみ量に基づき測定される。そして、この測定結果に基づいて指数評価が行った。評価は、従来例の評価結果を100とする指数で示し、指数が大きいほど縦バネ定数が大きく、指数が小さいほど縦バネ定数が小さい。この縦バネ定数は、乗り心地性能や騒音・振動性能に起因するもので、大き過ぎると上記性能が悪化する。
また、転がり抵抗の性能試験では、適用リムに組み付け、空気圧(230[kPa])を充填し、荷重(4.2[kN])を加えた空気入りタイヤを、ドラム径1707[mm]のドラム式転がり抵抗試験機にて、速度80[km/h]での転がり抵抗が測定される。そして、この測定結果に基づいて指数評価を行った。この評価は、従来例の空気入りタイヤを100とする指数で示し、指数が小さいほど、転がり抵抗が減少する傾向にある。
また、タイヤ重量では、空気入りタイヤの重量を計測した結果に基づいて指数評価を行った。この評価は、従来例の空気入りタイヤを100とする指数で示し、指数が小さいほど、タイヤ重量が軽い。
操縦安定性の性能試験では、適用リムに組み付け、正規内圧を充填した空気入りタイヤを、試験車両に装着し、平坦な周回路を有するテストコースを60[km/h]〜140[km/h]で走行させ、レーンチェンジ時およびコーナリング時での操舵性および直進の安定性について、専門パネラーによる感応評価を行った。この評価は、従来例の空気入りタイヤを5とする指数で示した10段階評価で示し、指数が大きいほど、操縦安定性が優れている。
図5において、従来例、比較例1および実施例1〜6の空気入りタイヤは、2番ベルト幅(1番ベルトのタイヤ幅方向寸法[mm])およびタイヤ周方向に対するコード角度(24[°])と、コード補強層幅(コード補強層のタイヤ幅方向寸法BRW[mm])およびタイヤ周方向に対するコード角度(24[°]または90[°])と、1番ベルト幅(1番ベルトのタイヤ幅方向寸法[mm])およびタイヤ周方向に対するコード角度(24[°])と、タイヤ接地幅に対する幅広ベルト層のタイヤ幅方向寸法の比(BLW/TW)と、幅広ベルト層のタイヤ幅方向寸法に対する幅狭ベルト層のタイヤ幅方向寸法の比(BSW/BLW)と、幅狭ベルト層のタイヤ幅方向寸法に対するコード補強層のタイヤ幅方向寸法の比(BRW/BSW)とが設定されている。なお、コード補強層を有する場合、このコード補強層がベルト層のタイヤ幅方向の両端部に設けられ、かつコード補強層と幅狭ベルト層とのタイヤ幅方向でのラップ寸法が5[mm]に設定されている。
そして、従来例の空気入りタイヤは、コード補強層を有さないものである。比較例1の空気入りタイヤは、従来例の空気入りタイヤにコード補強層を設けたものである。一方、実施例1〜6の空気入りタイヤは、1番ベルトと2番ベルトとが幅広ベルト層または幅狭ベルト層として規定され、かつコード補強層を設けたものである。
図5の試験結果に示すように、実施例1〜実施例6の空気入りタイヤでは、縦バネ定数(タイヤ変形)、タイヤ重量および操縦安定性(転がり抵抗の低減による他の性能)が維持された上で、転がり抵抗が低減できていることが分かる。
以上のように、本発明に係る空気入りタイヤは、転がり抵抗の低減による他の性能低下を抑制しつつ、タイヤ変形増加を抑制すると共に、タイヤ重量の増加を抑制したうえで、転がり抵抗を低減することに適している。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
21 トレッド面
22 主溝
3 ショルダー部
4 サイドウォール部
5 ビード部
51 ビードコア
52 ビードフィラー
6 カーカス層
7 ベルト層
71 ベルト層:1番ベルト
72 ベルト層:2番ベルト
8 コード補強層
8a 端
9(91,92) ベルト補強層
10 リム
BLW 幅広ベルト層のタイヤ幅方向寸法
BSW 幅狭ベルト層のタイヤ幅方向寸法
BRW コード補強層のタイヤ幅方向寸法
C タイヤ赤道面
SW タイヤ断面幅
SDH タイヤ断面幅の位置のタイヤ断面高さ
T タイヤ接地幅端
TW タイヤ接地幅

Claims (6)

  1. カーカス層のタイヤ径方向外側に少なくとも2層のベルト層が配置された空気入りタイヤにおいて、
    前記ベルト層は、タイヤ接地幅に対して90[%]以上115[%]以下のタイヤ幅方向寸法に設定された幅広ベルト層と、前記幅広ベルト層に対して50[%]以上90[%]以下のタイヤ幅方向寸法に設定された幅狭ベルト層とが積層されてなり、
    前記ベルト層のタイヤ幅方向の端部の少なくとも片方にて、前記幅広ベルト層と前記幅狭ベルト層との層間に少なくとも一部が挟まれるコード補強層を備えたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記コード補強層は、前記幅狭ベルト層の幅方向端部からタイヤ幅方向内側へのタイヤ幅方向寸法の30[%]の範囲内において、前記幅狭ベルト層のタイヤ幅方向寸法の少なくとも5[%]以上の範囲で、前記幅広ベルト層と前記幅狭ベルト層との層間に挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記コード補強層は、タイヤ周方向に対するコード角度が、15[°]以上90[°]以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記幅狭ベルト層が前記幅広ベルト層のタイヤ径方向内側に積層配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記幅狭ベルト層が前記幅広ベルト層のタイヤ径方向外側に積層配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記コード補強層は、タイヤ幅方向外側の端が、タイヤ断面幅の位置でのタイヤ断面高さに達しない範囲に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
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