JP2011056936A - ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体 - Google Patents

ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体 Download PDF

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雅也 山本
Tadashi Nakano
忠 中野
Shigeyasu Morikawa
茂保 森川
Hirobumi Taketsu
博文 武津
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Abstract

【課題】ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂とが接着され、長期的にも密着性が低下しない複合体を提供すること。
【解決手段】ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体であって:ステンレス鋼板の、熱可塑性樹脂成形体との接合面における60%以上にピットが形成されており、前記ピットのうち少なくとも一部は、ピット内部の最大径D1が、ピットの開口部の径D2を超えるピットであり、前記熱可塑性樹脂の成形収縮率は1.0%以下である、複合体を提供する。
【選択図】なし

Description

ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体、およびその製造方法に関する。
金属と樹脂とを一体化する手段として、従来から接着剤によって接着させることがある。さらに近年、熱可塑性樹脂とアルミ合金とを接着させる技術として、アルミ合金を挿入した射出成形金型に熱可塑性樹脂を射出して接着させる方法(インサート射出成形接着法)が提案されている(特許文献1〜3を参照)。
また、ステンレス鋼板に交番電解を施すことで、ステンレス鋼板を粗面化する技術が知られている(特許文献4を参照)。ステンレス鋼板芯材の表面をゴム層で被覆したガスケットにおいて、ステンレス鋼板芯材の表面に特定のピットを形成しておくことで、芯材とゴム層との密着性を高めている(特許文献5を参照)。
特開2006−27018号公報 特開2004−50488号公報 特開2005−342895号公報 特開平10−259499号公報 特開2002−106718号公報
ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂とを接着させるために、前述のインサート射出成形接着法を適用しても、十分な密着性が得られず、特に経時的に熱可塑性樹脂の密着性が低下していく場合があった。そのため例えば、インサート射出成形法で作製した容器に内容物を封入して長期保存すると、内容物が漏洩することがあった。そこで本発明は、ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂とが接着され、長期的にも密着性が低下しない複合体を提供する。
すなわち本発明の第1は、以下に示す複合体に関する。
[1]ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体であって:ステンレス鋼板の、熱可塑性樹脂成形体との接合面における60%以上にピットが形成されており、前記ピットのうち少なくとも一部は、ピット内部の最大径D1が、ピットの開口部の径D2を超えるピットであり、前記熱可塑性樹脂の成形収縮率は1.0%以下である、複合体。
[2]前記ピット内部の最大径D1と、前記ピットの開口部の径D2との比D1/D2が、1.05以上である、[1]に記載の複合体。
[3]前記接合面に形成されたピットのうち30個数%以上のピットは、前記比D1/D2が1.05以上のピットである、[2]に記載の複合体。
[4]前記接合面のピットは、前記ステンレス鋼板の表面にFe3+を含む水溶液を接触させて形成される、[1]〜[3]のいずれかに記載の複合体。
[5]前記Fe3+を含む水溶液が、塩化第二鉄水溶液である、[4]に記載の複合体。
[6]前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、パーフルオロ系樹脂およびポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の複合体。
本発明の第2は、以下に示す複合体の製造方法に関する。
[7]ステンレス鋼板を射出成形金型にインサートする工程と;前記射出成形金型に、成形収縮率が1.0%以下である熱可塑性樹脂を射出して、前記ステンレス鋼板の表面部に前記熱可塑性樹脂の成形物を接合する工程と、を有し、
前記ステンレス鋼板の表面部における60%以上にピットが形成されており、前記ピットのうち少なくとも一部は、ピット内部の最大径D1が、ピットの開口部の径D2を超えるピットである、ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体の製造方法。
本発明のステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体は、長期的にもステンレス鋼板と樹脂成形体との密着性が低下しにくい。
ピットを形成したステンレス鋼板の表面を上から撮像した電子顕微鏡(SEM)写真である。 ピットを形成したステンレス鋼板の断面の電子顕微鏡(SEM)写真である。 ピットを形成したステンレス鋼板の断面の電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例で作成した封止性評価用試験片の模式図である。
1.複合体
本発明の複合体は、ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合されている。ステンレス鋼板の表面のうち、熱可塑性樹脂成形体と接合している面を「接合面」と称する。
ステンレス鋼板はオーステナイト系、フェライト系およびマルテンサイト系ステンレス鋼板を使用することができる。
ステンレス鋼板の、熱可塑性樹脂成形体との接合面には、複数のピットが形成されている。接合面の60%以上、好ましくは80%以上に、より好ましくは実質的に隙間なくピットが形成される。接合面におけるピット形成部の面積率が、接合面のうちの60%未満であると、熱可塑性樹脂成形体とステンレス鋼板との接触面積が不足して、十分なアンカー効果が得られず、経時的な熱可塑性樹脂の密着性の低下を防ぐことができない。
ピット形成部の面積率は、ステンレス鋼板の接合面の垂直投影面積に占めるピット形成部の面積率を測定することで確認することができる。または、ステンレス鋼板の接合面を上から撮像した電子顕微鏡(SEM)写真を画像解析することによって、ピット形成部の面積率を確認することもできる。ステンレス鋼板の接合面を上から撮像した電子顕微鏡(SEM)写真の例が、図1に示される。図1に示されるように、電子顕微鏡(SEM)写真を二値化処理して、0.5μm以上の深さがある部位と、その他の部位とで区別する。例えば、0.5μm以上の深さがある部位を着色し、その他の部位を無着色とする。そして、着色された部分の面積率を求めて、ピット形成部の面積率とすることができる。
前記複数のピットのうちの一部のピットは、オーバーハング部を有するピットであることが好ましい。オーバーハング部を有するピットとは、ピット内部の最大径をD1として、ピット開口部の径をD2としたとき、D1がD2よりも大きいピットを意味し、好ましくはD1/D2が1.05以上であるピットをいう。ピットの径は、ステンレス鋼板の接合面の断面の、電子顕微鏡(SEM)写真を観察して測定することができる。図2および図3には、接合面の断面の電子顕微鏡写真が示される。図2における、矢印で示される部位をピットとみなす。各ピットのD1およびD2の測定は、図3に示されるような断面の電子顕微鏡写真を得て、測定すればよい。
オーバーハング部を有するピットの割合は、接合面の断面(500μm)の電子顕微鏡(SEM)写真を観察し、D1/D2が1.05以上となっているピットの個数と、それ以外のピットの個数を測定することで確認できる。ステンレス鋼板の接合面に形成された複数のピットのうちの30個数%以上のピットが、オーバーハング部を有するピットであることが好ましい。
接合面にオーバーハング部を有するピットがあると、そのピット内部に熱可塑性樹脂が侵入し、その結果、熱可塑性樹脂成形体がステンレス鋼板に密着する。さらに、オーバーハング部を有するピットの割合が30個数%以上であると、経時的な密着性がより高まる。
所望のピットが形成されたステンレス鋼板は、ステンレス鋼板の表面にFe3+を含む水溶液を接触させて得ることができる。Fe3+を含む水溶液とは、塩化第二鉄水溶液などである。好ましくは、1)ステンレス鋼板を、Fe3+を含む水溶液中で交番電解するか、2)ステンレス鋼板を、Fe3+を含む水溶液中に浸漬処理することにより、所望のピットが形成されたステンレス鋼板を得る。
交番電解によるピット形成
所望のピットが形成されたステンレス鋼板は、Fe3+を含む水溶液(電解液)中で、ステンレス鋼板を交番電解して作製されうる。まず、アノード電解によりピットが形成され、カソード電解でHが発生する。
電解液中にFe3+が含まれていると、カソード電解により、ピットの内部で一時的にFe3++3OH→Fe(OH)の反応が起こるレベルまでpHが上昇する。この時に、ピット内壁はFe(OH)に覆われて保護される。その結果、ピットが形成されていないフラットな表面に比べて不活性になる。そのため、次のアノード電解ではピット内部よりも、H発生により活性化されているフラットな表面が優先的に溶解される。このようにカソード電解とアノード電解を繰り返すことによって、比較的短時間に微細なピットをステンレス鋼板表面に均一に形成することができる。一方、Fe3+を含まない電解液(塩化第一鉄,硝酸,塩酸,硫酸等)では、上記メカニズムを利用した電解粗面化が行えない。
また、ステンレス鋼の酸化作用を促進するNO3−,SO 2−といったイオンが含まれない電解液を用いることも、重要な条件である。孔食、すなわちピット形成を容易にして、短時間での粗面化処理を可能にするためである。このような観点から、電解液を、Fe3+を含む塩化第二鉄水溶液とすることが好ましい。
オーバーハング部を有するピットを形成するには、電解液のエッチング力を適切に調整する必要がある。つまり、電解液のエッチング力と、形成されるピットの形状とは密接な関係がある。電解液のエッチング力が弱いと、浅めのピットが形成されやすく;エッチング力が増すにつれて、半球状あるいは鍵穴状といった、ピット開口部の大きさの割には深さのあるピットが形成されるようになる。このような現象が起こる理由については現時点では不明な点も多いが、電解液のエッチング力を強めると、ステンレス鋼板の不動態化作用が低下し、その結果、深さ方向へのピット成長が促進されるものと考えられる。
また、電解液のエッチング力は、ステンレス鋼板の化学成分および液温にも影響される。したがって、オーバーハングを有するピットを効率的に形成するには、ステンレス鋼板の鋼種に応じて電解液の濃度および液温を管理する必要がある。たとえは、オーステナイト系ステンレス鋼では、Fe3+濃度が30〜120g/Lの塩化第二鉄水溶液を;フェライト+マルテンサイト複相組織ステンレス鋼では、Fe3+濃度が1〜50g/Lの塩化第二鉄水溶液を用いることが好ましい。いずれの場合も、液温は20〜70℃の工業的に管理しやすい温度域とすることができる。
〔アノード電解〕
アノード電解の目的は、ステンレス鋼板表面にピットを形成させることである。アノード電流密度が1.0kA/m未満では、活性溶解が起こるだけでステンレス鋼板表面にピットを形成することができない。一方、10.0kA/mを超えると、Clイオンの分解反応をともなうようになり、作業効率と作業環境がともに悪化する。したがって、アノード電流密度は1.0〜10.0kA/mの範囲とするのが望ましい。
また、交番電解1サイクルあたりのアノード通電時間は、ステンレス鋼板表面に形成される球面状のピットの開口径と直接関係する。1サイクルあたりのアノード通電時間が長くなるほど、ピットの開口径はアノード電流密度とは無関係に増大する。オーバーハング部を有するピットの個数割合を高める(ピットの総数に対して30個数%以上とする)ためには、1サイクルあたりのアノード通電時間を0.05〜1secとすることが望ましい。
〔カソード電解〕
カソード電解の目的は、ステンレス鋼板表面でHを発生させ、ピット内壁にFe(OH)の保護皮膜を形成させること、およびピット未発生部分を活性化させることである。そのため、カソード電流密度の下限は、電解液中のFe3+の還元反応の限界電流密度より高くして、H発生領域の値となるように設定する。オーステナイト系ステンレス鋼を交番電解処理するための電解液であれば、カソード電流密度を約0.3kA/m以上とし;フェライト+マルテンサイト複相組織ステンレス鋼交番電解処理するための電解液であれば、カソード電流密度を約0.1kA/m以上とすればよい。ただし、塩化第二鉄濃度,液温あるいは流速等によって多少変動する。
一方、過剰なHの発生は、ピット内壁に形成したFe(OH)の保護皮膜をも除去する恐れがあり、その場合にはステンレス鋼板表面に良好な形状のピットを高密度に形成することが難しい。このためカソード電流密度の上限は3.0kA/m とするのが好ましい。また、カソード電解の目的を達成するための交番電解1サイクルあたりのカソード通電時間は0.01sec以上とすることが望ましい。
〔交番電解サイクル〕
交番電解1サイクルあたりの適正通電時間は、アノード電解で0.05〜1sec、カソード電解で0.01sec以上とするのがよいが、工業的規模での交番電源を考慮した場合、アノードとカソードの通電時間は1:1とすることがコスト面から望ましい。これらのことを考慮すると、交番電解のサイクルは0.5〜5Hzの範囲とするのがよい。
〔電解処理時間〕
交番電解に要する処理時間が10secに満たないと、ステンレス鋼板表面にピット未形成箇所が多く残り、ピット形成部の面積率が60%未満になることがある。一方、120secを超えても粗面化形態に大きな差はなく、それ以上の処理は経済上不利になる。したがって、交番電解に要する処理時間は10〜120secとするのがよい。これは、工業的規模での連続生産に十分対応できる処理時間といえる。
浸漬処理によるピット形成
一方、所望のピットが形成されたステンレス鋼板は、ステンレス鋼板をFe3+を含む水溶液(塩化第二鉄水溶液)に浸漬することによっても作製されうる。水溶液の温度を比較的高温、具体的には約70〜90℃とし、かつ浸漬時間を比較的短時間、具体的には約10〜40秒とすることによって、所望のピットが形成されうる。Fe3+の適切な濃度は、ステンレス鋼板の種類によって相違する。
本発明の複合体における熱可塑性樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂組成物は、結晶性樹脂または非結晶性樹脂のいずれを含んでいてもよい。結晶性樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイドなどが含まれる。非結晶性樹脂の例には、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアセタール、パーフルオロ系樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体など)が含まれる。
熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。成形収縮率は、射出成形時に使用した金型の樹脂流入部の容積Aに対し、射出成形後に固化した樹脂の容積Bを測定し、「(A−B)/A×100(%)」として求めることができる。
熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、樹脂の種類によっても調整されるが、例えばフィラーを添加することによっても調整されうる。フィラーの例には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド樹脂などの繊維系フィラー;カーボンブラック、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラス、粘土、リグニン、雲母、石英粉、カラス球などの粉フィラー;炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物などが含まれるが、特に限定されない。熱可塑性樹脂組成物におけるフィラーの含有量は、5〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とを混合することによっても調整されうる。一般的に、結晶性樹脂の方が、非結晶性樹脂よりも成形収縮率が大きいので、非結晶性樹脂の混合比率を高めれば、成形収縮率も低減されうる。
2.複合体の製造方法
本発明の複合体は、ステンレス鋼板を射出成形金型に挿入して、熱可塑性樹脂組成物を射出して、製造することができる。
射出成形金型に、高温の熱可塑性樹脂組成物を高圧で射出する。そこで射出成形金型にガス抜きを設けて、樹脂組成物が円滑に流れるようにすることが好ましい。射出成形金型に挿入するステンレス鋼板は、前述の通りその表面にピットが形成されており、ピットが形成された表面に熱可塑性樹脂組成物が接触する。射出成形金型の温度は80〜180℃であることが好ましい。射出された熱可塑性樹脂が、ステンレス鋼板のピットの内部に侵入しやすくするためである。
射出終了後、金型を開き離型して複合体を得る。射出成形により得られた複合体は、成形後にアニール処理をして、成形収縮による内部歪を解消することが好ましい。
以下において、本発明を、実施例を参照して説明するが、本発明の範囲はこれら実施例によって限定して解釈されない。
[実施例1]
ステンレス鋼板として、板厚:0.8mmのSUS304およびSUS430の、2B仕上げ材とHL仕上げ材をそれぞれ準備し、アルカリ脱脂(pH12、液温:60℃、浸せき時間:1min)を行った。
各ステンレス鋼板を、塩化第二鉄水溶液(Fe3+濃度:60g/L、液温:40℃)を用いて、表1に示す条件で交番電解を行った。
次に、表2に示す熱可塑性樹脂組成物を、それぞれ射出成形装置に充填し、表2に示される温度で溶融させた。
そして、射出成形金型に試験用に切断または加工したステンレス鋼板を挿入し、溶融状態の樹脂を射出成形法(加圧力:10MPa)にて射出成形金型内に射出した。射出後、冷却・固化させて試験片を得た。試験片を以下に示すようにして密着性および封止性を、以下の手順で評価した。それらの結果を表3に示す。
(1)密着性試験
交番電解処理後のステンレス鋼板を30mm×100mmの大きさに切断して射出成形金型に挿入した。射出成形金型の樹脂を流入させる容積は30mm×100mm、厚みは4mmであり;30mm×30mmの面積範囲で、熱可塑性樹脂とステンレス鋼板とが接触する。射出成形法により作製した試験片を、40℃の雰囲気に10日間放置した後に取り出した。試験片が室温となった時点で剥離強度を測定した。剥離強度が4.0kN以上である場合を◎;2.5kN以上〜4.0kN未満である場合を○;1.5kN以上〜2.5kN未満である場合を△;1.5kN未満である場合を×として密着性を評価した。
(2)封止性試験
交番電解処理後のステンレス鋼板を用いて、以下の条件で円筒絞り加工を行った。
・円筒絞り加工条件
ポンチ径:50mm、ポンチ肩R:15mm、ダイス径:54mm、ダイス肩R:8mm、打抜き径:100mm、絞り高さ:20mm、塗油あり
図4に示されるように、2つの円筒絞り加工品20を、アルカリ脱脂(pH12、液温:60℃、浸せき時間:1min)した後、フランジ部で重ね合わせた。そして、射出成形法でフランジ部に表2の溶融状態の樹脂を射出し、冷却、固化させて熱可塑性樹脂成形体10を接着させた。さらに、片方の円筒絞り加工品20の頂部に空気注入用のパイプ30を取付け、空気漏れの防止のため接着剤で固定した。
空気注入用パイプ30に送気用パイプを取付けて水に浸せきし、流入させる空気圧を上昇させ、熱可塑性樹成形体と円形絞り加工品との接合部から、空気漏れが発生する空気圧を測定した。空気圧が0.2MPa以上である場合を◎;0.1MPa以上〜0.2MPa未満である場合を○;0.05MPa以上〜0.1MPaである場合を△;0.05MPa未満である場合を×と評価した。
表3における実施例1〜18は、ピット形成部の面積率が60%以上であり、かつD1/D2が1.05以上のピット(オーバーハング部を有するピット)の比率が30%以上であるので、密着性および封止性とも良好な評価が得られた。一方、表3における比較例1,2,4は、オーバーハング部を有するピットの比率が30%以下であるので、密着性および封止性ともよくなかった。また、表3における比較例3は、ピット形成部の面積率が60%以上であり、オーバーハング部を有するピット)の比率が30%以上であるものの、樹脂組成物の成形収縮率が高いため、密着性および封止性ともよくなかった。
[実施例2]
ステンレス鋼板として、板厚:1.0mmのSUS304およびSUS430の2B仕上げのものを準備し、アルカリ脱脂(pH12、液温:60℃、浸せき時間:1min)した。各ステンレス鋼板を、表4の条件で粗面化処理を行った。
次に、実施例1と同様にして、密着性および封止性試験を行った。試験片の密着性および封止性評価結果を表5に示す。
表5における実施例1〜9は、ピット形成部の面積率が60%以上であり、かつオーバーハング部を有するピットの比率が30%以上であるので、密着性および封止性とも良好な評価が得られた。一方、表5における比較例1および2は、オーバーハング部を有するピットの比率が30%以下であるので、密着性および封止性ともよくなかった。さらに、比較例3は、樹脂組成物の成形収縮率が高いため、密着性および封止性ともよくなかった。
本発明のステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体は、長期的にもステンレス鋼板と樹脂成形体との密着性が低下しにくい。よって、例えば各種電子機器、家庭用電化製品、医療機器、自動車車体、車両搭載用品、建築資材などに利用され、特に携帯電話、パソコン、リチウムイオン電池の筐体などに好適に用いられる。

Claims (7)

  1. ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体であって、
    ステンレス鋼板の、熱可塑性樹脂成形体との接合面における60%以上にピットが形成されており、前記ピットのうち少なくとも一部は、ピット内部の最大径D1が、ピットの開口部の径D2を超えるピットであり、
    前記熱可塑性樹脂の成形収縮率は1.0%以下である、複合体。
  2. 前記ピット内部の最大径D1と、前記ピットの開口部の径D2との比D1/D2が、1.05以上である、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記接合面に形成されたピットのうち30個数%以上のピットは、前記比D1/D2が1.05以上のピットである、請求項2に記載の複合体。
  4. 前記接合面のピットは、前記ステンレス鋼板の表面にFe3+を含む水溶液を接触させて形成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
  5. 前記Fe3+を含む水溶液が、塩化第二鉄水溶液である、請求項4に記載の複合体。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、パーフルオロ系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合体。
  7. ステンレス鋼板を射出成形金型に挿入する工程と、
    前記射出成形金型に、成形収縮率が1.0%以下である熱可塑性樹脂を射出して、前記鋼板の表面部に前記熱可塑性樹脂の成形物を接合する工程と、を有し、
    前記ステンレス鋼板の表面部における60%以上にピットが形成されており、前記ピットのうち少なくとも一部は、ピット内部の最大径D1が、ピットの開口部の径D2を超えるピットである、
    ステンレス鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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