JP2011055807A - 種子貯蔵タンパク質高含有形質転換ダイズ植物 - Google Patents

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輝彦 寺川
Hisakazu Hasegawa
久和 長谷川
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Abstract

【課題】形質転換ダイズ植物を用いた内在性種子貯蔵タンパク質の生産方法を提供する。
【解決手段】不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が導入され、種子中で該遺伝子が発現している形質転換ダイズ植物であって、種子中での内在性種子貯蔵タンパク質の蓄積量が増加している形質転換ダイズ植物を提供する。
【選択図】図2

Description

本発明は、種子中の内在性種子貯蔵タンパク質の蓄積量が増加した形質転換ダイズ植物に関する。また、本発明は、該形質転換ダイズ植物を用いた種子中での内在性種子貯蔵タンパク質の生産方法に関する。
ダイズは胚乳を持たず、子葉に当たる胚にその養分を蓄積する無胚乳種子であり、種子重量全体の約40%が貯蔵タンパク質で占められる。そのため、ダイズ種子は、胚乳に主要な貯蔵物質としてデンプンを蓄積するイネやトウモロコシ等の種子とは貯蔵組織としての性質を異にしており、ダイズはタンパク質を生産し蓄積させるのに適した作物である。ダイズの主要な種子貯蔵タンパク質は11Sグロブリン(グリシニン)と7Sグロブリン(β−コングリシニン)である。これらの種子貯蔵タンパク質の立体構造や細胞内での蓄積機構は解明されてきており、これらをコードする遺伝子には、可変領域と呼ばれる、外来の遺伝子を挿入しても3次元構造を維持することができ、貯蔵タンパク質の特性に影響を及ぼさないと考えられる部位が存在することが知られている。
一方、イネの主要な種子貯蔵タンパク質のひとつであるプロラミンは、不溶性かつ難消化性のタンパク質で、分子量の異なる数種類(10K、13K、16Kなど)のプロラミンが存在することが知られている。プロラミンは、イネ胚乳において液胞由来でないタンパク顆粒PB-I に蓄積する。
ダイズのタンパク質は、ヒト体内において、中性脂肪の燃焼を促進する働き、体脂肪の蓄積を抑制する働き、血中コレステロール濃度を低下させる働き、さらには血圧上昇作用を有するホルモンであるアンジオテンシンの合成に関与する酵素の活性を阻害して、血圧上昇を抑制する働きがあることが知られており、ダイズのタンパク質を摂取することが動脈硬化や心筋梗塞、心臓病の予防につながることが知られている。
一方で、種子中にタンパク質を蓄積する形質転換植物として、ダイズグリシニンを種子中に発現する形質転換イネ(特許文献1)、ペプチドをタンパク質顆粒として種子中に蓄積する形質転換イネ(特許文献2)が知られており、また、種子中のグリシニンとβ−コングリシニン含量が減少した形質転換ダイズ(特許文献3、4)も知られている。
しかしながら、種子中でのタンパク質の蓄積量が増加した形質転換ダイズ植物はこれまで知られていない。
特開2000−50871号公報 特開2003−334080号公報 特許第3928848号公報 特許第3928811号公報
本発明の課題は、種子中で内在性種子貯蔵タンパク質の蓄積量が増加した形質転換ダイズ植物を提供することである。また、本発明の他の目的は、該形質転換ダイズ植物を用いた、内在性種子貯蔵タンパク質の生産方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。
その結果、不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子が導入された形質転換ダイズ植物において、内在性種子貯蔵タンパク質の種子中での蓄積量が増加することを見出した。
すなわち本発明は、
[1]
不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が導入され、種子中で該遺伝子が発現している形質転換ダイズ植物であって、種子中での内在性種子貯蔵タンパク質の蓄積量が増加している、形質転換ダイズ植物、
[2]
外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が、ダイズ種子特異的な発現を誘導するプロモーターの下流に連結されて導入された、[1]に記載の形質転換ダイズ植物、
[3]
外来性種子貯蔵タンパク質がイネのプロラミンである、[1]又は[2]に記載の形質転換ダイズ植物、
[4]
内在性種子貯蔵タンパク質が、ダイズ11Sグロブリン及び/又はダイズ7Sグロブリンである、[1]〜[3]のいずれかに記載の形質転換ダイズ植物、
[5]
内在性種子貯蔵タンパク質が、ダイズ7Sグロブリンのβサブユニットである、[1]〜[3]のいずれかに記載の形質転換ダイズ植物、
[6]
ダイズ7Sグロブリンのβサブユニットをコードする遺伝子の可変領域に、外来性タンパク質をコードする遺伝子がフレームシフトを生じないように挿入された、改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子がさらに導入された、[1]〜[5]のいずれかに記載の形質転換ダイズ植物、
[7]
改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子が、ダイズ種子特異的な発現を誘導するプロモーターの下流に連結されて導入された、[6]に記載の形質転換ダイズ植物、
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載の形質転換ダイズ植物の細胞、
[9]
[1]〜[7]のいずれかに記載の形質転換ダイズ植物の種子、
[10]
[1]〜[5]のいずれかに記載の形質転換ダイズ植物を用いて、その種子中で内在性種子貯蔵タンパク質を生産する方法、
[11]
[6]又は[7]に記載の形質転換ダイズ植物を用いて、その種子中で改変型の内在性種子貯蔵タンパク質を生産する方法、
を提供する。
本発明の形質転換ダイズ植物は、その種子に内在性種子貯蔵タンパク質を高度に蓄積させることができるので、該形質転換ダイズ植物を用いて、11Sグロブリン又はダイズ7Sグロブリン等を効率的に生産することができる。
プロラミンタンパク質(10K)をコードする遺伝子をダイズ植物に導入するために使用したプラスミドpUHGArc2PRP10及びpUHGArc5PRP10並びにコントロールプラスミド(pUHRSK)の構造を示した模式図である。 プロラミンタンパク質(10K)をコードする遺伝子を導入した形質転換ダイズ種子中の各種タンパク質の蓄積をSDS電気泳動後のCBB染色で検出した写真である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質
本発明における不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質とは、ダイズに由来しない不溶性の種子貯蔵タンパク質をいう。
ここで、「不溶性」とは水又は生理的塩溶液に溶解しないことをいう。生理的塩溶液の組成としては、例えば、150mMの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.35)、0.1Mの塩化ナトリウムを含む50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−HCl緩衝液(pH7.4)、0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)などの、塩濃度が0.05〜0.2M、p Hが6〜9の溶液であって、尿素などの可溶化剤、界面活性剤、還元剤を含まない溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明における不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質としては、イネのプロラミン10K、イネのプロラミン13K、イネのプロラミン16Kなどのダイズ以外の作物の種子貯蔵タンパク質が挙げられるが、イネのプロラミン10Kであることが好ましい。
イネのプロラミン10Kとして、配列番号2のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性(identity)を有するアミノ酸配列を含むタンパク質が挙げられる。
ここで、「アミノ酸配列の同一性(%)」とは、比較する2つのアミノ酸配列を必要に応じて間隙を導入して整列(アラインメント)させ、得られる最大のアミノ酸配列の同一性(%)をいう。アミノ酸配列の同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者に周知の種々の方法を用いて行うことができ、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアや、Gene Works 2.5.1ソフトウェア((株)帝人システムテクノロジー)、GENETIX−WIN(ソフトウェア開発(株))等の市販のソフトウェアを使用することもできる。
2.不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子
本発明における不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子としては、イネのプロラミン10Kをコードする遺伝子、イネのプロラミン13Kをコードする遺伝子、イネのプロラミン16Kをコードする遺伝子などのダイズ以外の作物の種子貯蔵タンパク質コードする遺伝子、又はこれらのタンパク質の断片をコードする遺伝子が挙げられるが、イネのプロラミン10Kをコードする遺伝子であることが好ましい。
ここで、不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質の一部とは、不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質の断片であり、外来性種子貯蔵タンパク質のアミノ酸配列長の50%以上100%未満、好ましくは70%以上100%未満、より好ましくは80%以上100%未満、さらに好ましくは90%以上100%未満のアミノ酸配列長を有するタンパク質をいう。
イネのプロラミン10Kをコードする遺伝子として、配列番号1の第51番目〜第455番目の塩基配列を含む遺伝子、又は該塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性(identity)を有する塩基配列を含む遺伝子が挙げられる。
ここで、「塩基配列の同一性(%)」とは、比較する2つの塩基配列を必要に応じて間隙を導入して整列(アラインメント)させ、得られる最大の塩基配列の同一性(%)をいう。塩基配列の同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者に周知の種々の方法を用いて行うことができ、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアや、Gene Works 2.5.1ソフトウェア((株)帝人システムテクノロジー)、GENETIX−WIN(ソフトウェア開発(株))等の市販のソフトウェアを使用することもできる。
3.内在性種子貯蔵タンパク質
本発明において種子中で蓄積量が増加する内在性種子貯蔵タンパク質には、ダイズが本来的に有している種子貯蔵タンパク質、すなわち、外部から導入された遺伝子の発現産物でない種子貯蔵タンパク質をいう。
ダイズが本来的に有している種子貯蔵タンパク質には、ダイズ11Sグロブリンやダイズ7Sグロブリンの他、ダイズ11Sグロブリンやダイズ7Sグロブリンを構成する各サブユニット自体も含まれる。このようなサブユニットとして、ダイズ11SグロブリンのA1aB1bサブユニット、ダイズ7Sグロブリンのαサブユニット、α’サブユニット及びβサブユニット等が挙げられる。
本発明における内在性種子貯蔵タンパク質は、外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が導入されて種子中で該遺伝子が発現している形質転換ダイズ植物において、種子中での蓄積量が増加する。ここで、「種子中での蓄積量が増加する」とは、外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が導入されていないダイズ植物の種子中での蓄積量に比べて蓄積量が増加していることを意味する。
4.改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子
本発明において、改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子とは、ダイズに由来する種子貯蔵タンパク質と外来性タンパク質との融合タンパク質をいう。ここで、外来性タンパク質とは、融合される内在性種子貯蔵タンパク質と異なるタンパク質であれば、ダイズに由来するタンパク質やその断片であっても、ダイズに由来しないタンパク質やその断片であってもよく、また、人工的に作製したタンパク質やその断片であってもよい。外来性タンパク質の例として、家畜等の動物やヒトに投与するための抗体やワクチン、インターフェロン、成長ホルモン、インスリン、FGF成長因子、血圧降下ペプチド等が挙げられる。
改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子は、種々の既知の方法で作製することができるが、内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の可変領域に外来性タンパク質をコードする遺伝子をフレームシフトが生じないように挿入して作製することが好ましい。
ここで、「可変領域」とは、その中に外来タンパク質をコードする遺伝子が挿入された場合であっても、フレームシフトを生じないように挿入されていれば、その遺伝子発現産物であるタンパク質が、内在性種子貯蔵タンパク質と同等の安定した3次元構造を維持することができ、それにより内在性種子貯蔵タンパク質の特性を維持することができる領域をいう。
また、「フレームシフトを生じないように挿入された」とは、内在性種子貯蔵タンパク質の可変領域に、内在性種子貯蔵タンパク質のアミノ酸配列に対応するトリプレットの並びを維持した状態で外来性タンパク質をコードする遺伝子が挿入されたことをいう。尚、可変領域が終止コドンを含む場合であって、当該可変領域に外来性タンパク質を挿入する場合には、挿入された外来性タンパク質よりも、5’側のトリプレットの並びが維持されていればよく、挿入された外来性タンパク質よりも3’側は取り除かれてもよい。
外来性タンパク質は、ペプチドリンカー等のリンカーを介して内在性種子貯蔵タンパク質と融合させてもよく、このような方法は当業者に周知である。
可変領域を有する内在性種子貯蔵タンパク質として、11SグロブリンのA1aB1bサブユニットやダイズ7Sグロブリンのβサブユニット等が挙げられる。
内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子に複数の可変領域が存在する場合には、1つ又は複数の可変領域に外来性タンパク質をコードする遺伝子を挿入することで、改変型の種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子を調製することができる。
内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の可変領域に外来性タンパク質をコードする遺伝子がフレームシフトを生じないように挿入された遺伝子から、内在性種子貯蔵タンパク質の内部に外来性タンパク質が融合した改変型の内在性種子貯蔵タンパク質を発現させることができる。
外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が導入された形質転換ダイズ植物に、さらに改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子を導入することによって、外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が導入されていない形質転換ダイズ植物に改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子を導入した場合よりも、導入された改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の発現産物を、より高いレベルで種子中に蓄積することが可能になる。
5.形質転換されるダイズ植物
本発明において形質転換され得るダイズ植物に特に制限はなく、一般に食用、飼料、油用として利用されている品種が含まれる。具体的にはJack、Williams82、エンレイ、スズユタカ、フクユタカ、トヨムスメ等が挙げられる。形質転換されるダイズ植物は、これらの品種が形質転換されたものであってもよい。
6.形質転換ダイズ植物の作製
本発明においては、ダイズ植物に導入する遺伝子を種子で発現させる必要があるが、該遺伝子の上流にダイズ種子特異的な発現を誘導するプロモーターを連結した構造を有するベクターをダイズ植物に導入することでこの目的を達成することができる。さらに、該遺伝子の下流にターミネーターを連結させた構造を有するベクターを導入することもできる。
ダイズ種子特異的な発現を誘導するプロモーターとしては、例えばインゲンマメのアルセリンのプロモーター、ダイズの11Sグロブリンのプロモーター等が挙げられ、ターミネーターとしては、インゲンマメのアルセリンのターミネーター、ダイズの11Sグロブリンのターミネーター、カリフラワーモザイクウイルスの35SのターミネーターやNOSターミネーター等が挙げられる。
前記ベクターには、組換え体を選抜するための選抜マーカー遺伝子や導入された遺伝子の発現を確認するためのレポーター遺伝子を挿入することができる。選抜マーカー遺伝子としては、例えばハイグロマイシン耐性遺伝子、ホスフィノスリシン耐性遺伝子等が挙げられ、レポーター遺伝子としては、例えばβ−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子や、ルシフェラーゼ(LUC)遺伝子、GFP遺伝子等が挙げられる。
前記ベクターは、種子特異的な発現を誘導するプロモーターと、その下流に連結された目的の遺伝子と、さらにその下流に連結されたターミネーターを含むDNA断片を、前記選抜マーカー遺伝子及び/又はレポーター遺伝子を含むベクターに挿入して得ることもできる。
本発明の形質転換ダイズ植物を作製するための材料としては、例えば、上記ダイズ植物の品種の根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂、葯、花粉等の植物組織やその切片、未分化のカルス、不定胚、プロトプラスト等の培養細胞等を用いることができる。
上記材料への外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子や、野生型又は改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の導入は、すでに報告され、確立されている種々の方法により行うことができるが、アグロバクテリウム法、PEG法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ウイスカー超音波法などを用いて前記ベクターを導入することが好ましい。
遺伝子導入操作が行われた材料の中から、選抜マーカー遺伝子によってもたらされる耐性効果を指標に、形質転換ダイズ植物の細胞を選抜することができる。選抜した細胞から、既に報告されている周知の植物体を再生させる工程を経て、形質転換ダイズ植物体を得ることができる。
こうして得られた形質転換ダイズ植物体の栽培を行い、種子を稔実させることで、本発明に係る形質転換ダイズ植物の種子を得ることができ、種子中に目的とする内在性種子貯蔵タンパク質又は改変型の内在性種子貯蔵タンパク質を得ることができる。
ダイズ植物に目的の遺伝子が導入されているか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウエスタンブロッティング法などによって行うことができる。また、形質転換ダイズ植物の種子中に存在する内在性種子貯蔵タンパク質の含量を測定する方法は、SDS電気泳動法、ウエスタンブロッティング法などによって行うことができる。例えば、形質転換ダイズ植物体の種子からタンパク質を抽出し、SDS電気泳動を行い、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色などで染色を行うことにより蓄積量を確認することができる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例で行われる実験操作の手順は、特に記述しない限り、「Molecular Cloning」 第2版 (J. Sambrookら、Cold Spring Habor Laboratory press, 1989年発行)に記載される方法に従っている。
以下に、本発明の実施例を示して具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
ダイズ種子特異的な発現を誘導するプロモーター及びターミネーターの単離
(1)インゲンマメ野生種のゲノミックDNAの調製
インゲンマメ野生種(系統番号:G12866)の生葉1gからDNeasy Plant Maxi kit(キアゲン社製)を用いてゲノミックDNA50μgを抽出した。
(2)インゲンマメ野生種からのアルセリン2遺伝子のプロモーター配列を含むDNAの単離
以下の記載されるアルセリン2遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域を含むDNAの単離操作は、制限酵素処理を施したゲノミックDNA断片にアダプターを結合させ、既知配列とアダプター配列に基づいてプライマーを設計し、これらのプライマーを用いてPCRを行い未知の領域をクローニングするための市販されたキットである、株式会社ベックス製のRightWalk KitTMを用いて実施した。
(i)第一回伸長反応
280ngの上記ゲノミックDNAを制限酵素SauIIIAIで消化した後、dGTPを加え、klenow enzyme(プロメガ社製)により1塩基伸張反応を行った。その後、RightWalk KitTM付属のRWA−1アダプターとLigation high(東洋紡績社製)を用いて連結反応を行い、アルセリン2遺伝子の上流域のDNAを単離するためのPCRの鋳型とした。
次に、公知のインゲンマメアルセリン2遺伝子のcDNAの塩基配列(GenBank accession No.M28470)に基づき、配列番号3及び配列番号4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(それぞれプライマーSP1及びプライマーSP2と命名)を、株式会社ファスマックのカスタム合成受託サービスを利用して作製した。以降、特に記述がない限りプライマーの合成は、同社を利用して行った。
次に、上記で構築したアダプターを連結したゲノミックDNA2.8ngを鋳型とし、RightWalk KitTM付属のプライマーWP−1及びプライマーSP1を用いてPCRを行った。PCRは、一反応あたり50μLの反応液を用い、変性反応を94℃、2分で1サイクル実施後、変性反応を94℃で30秒、アニーリングを65℃で30秒、及び伸長反応を68℃で5分を1サイクルとして35サイクル行った。なお、反応液は200μMのdNTP混合液、1.5mMのMgSO4溶液、1μMの上記各プライマー、1ユニットのKOD−Plus−(東洋紡績社製)を含むKOD−Plus−Ver.2バッファーを含んでいる。
PCR終了後、反応液を100倍に希釈し、その1μLを2回目のPCRの鋳型とし、RightWalk KitTM付属のプライマーWP−2及びプライマーSP2を用いてPCRを行った。なお、2回目のPCRの溶液組成及び温度条件は、鋳型とプライマー以外、1回目のPCRと同条件で行った。
増幅されたDNA断片は、最終濃度1mMのATP存在下でT4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)でリン酸化反応を行った後、予めSmaIで処理したpBluescriptII SK(−)(ストラタジーン社製)と連結反応を行った。
この反応産物を、Arc2P(i)とし、株式会社ファスマックのDNAシーケンシングサービスを用いて塩基配列を決定した。その結果、アルセリン2遺伝子の開始コドンの上流844bpの新規な領域を含むことを確認した。以降、特に記述がない限り塩基配列の決定は同社のシーケンシングサービスを用いて行った。
次に、さらに上流域を単離するため、新たなプライマーを作製し第二回目となる伸長反応を行った。
(ii)第二回伸長反応
280ngの上記ゲノミックDNAを制限酵素BglIIで消化した後、dGTPを加え、klenow enzyme(プロメガ社製)により1塩基伸張反応を行った。反応後、RightWalk KitTM付属のRWA−1アダプターと連結反応を行い、プロモーター単離のためのPCRの鋳型とした。
次に、公知のインゲンマメアルセリン2遺伝子のcDNAの塩基配列(GenBank accession No.M28470)に基づき、配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(プライマーsecondSP1と命名)を、また第一回伸長反応で得られた開始コドンの上流844bpの塩基配列に基づき配列番号6の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(プライマーsecondSP2と命名)を作製した。
次に、上記で構築したアダプターを連結したゲノミックDNA2.8ngを鋳型とし、RightWalk KitTM付属のプライマーWP−1及びプライマーsecondSP1を用いてPCRを行った。PCRの溶液組成及び温度条件は、鋳型とプライマー以外、上記(i)の第一回伸長反応と同条件で行った。
反応終了後、上記PCR液を100倍に希釈し、その1μLを2回目のPCRの鋳型とし、RightWalk KitTM付属のプライマーWP−2及びプライマーsecondSP2を用いてPCRを行った。なお、2回目のPCRの溶液組成及び温度条件は、鋳型とプライマー以外、1回目のPCRと同条件である。
増幅されたDNA断片は、最終濃度1mMのATP存在下でT4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)でリン酸化反応を行った後、予めSmaIで処理したpBluescriptII SK(−)(ストラタジーン社製)と連結反応を行った。
反応産物を、Arc2P(ii)とし塩基配列を決定した。その結果、Arc2P(i)の上流197bp(合計1041bp)の新規な領域を含むことを確認した。次に、さらに上流域を単離するため、新たなプライマーを作製し第三回目となる伸長反応を行った。
(iii)第三回伸長反応
280ngの上記ゲノミックDNAを制限酵素XbaIで消化した後、dCTPを加え、klenow enzyme(プロメガ社製)により1塩基伸張反応を行った。反応後、RightWalk KitTM付属のRWA−2アダプターと連結反応を行い、プロモーター単離のためのPCRの鋳型とした。
次に、第二回伸長反応で得られた197bpの塩基配列に基づき、配列番号7及び配列番号8の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(それぞれプライマーthirdSP1及びプライマーthirdSP2と命名)を作製した。
次に、上記で構築したアダプターを連結したゲノミックDNA2.8ngを鋳型とし、RightWalk KitTM付属のプライマーWP−1及びプライマーthirdSP1を用いてPCRを行った。PCRの溶液組成及び温度条件は、鋳型とプライマー以外、上記(i)の第一回伸長反応と同条件で行った。
反応終了後、上記反応液を100倍に希釈し、その1μLを2回目のPCRの鋳型とし、RightWalk KitTM付属のプライマーWP−2及びプライマーthirdSP2を用いてPCRを行った。なお、2回目のPCRの溶液組成及び温度条件は、鋳型とプライマー以外、1回目のPCRと同条件である。
増幅されたDNA断片は、最終濃度1mMのATP存在下でT4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)でリン酸化反応を行った後、予めSmaIで処理したpBluescriptII SK(−)(ストラタジーン社製)と連結反応を行った。
この反応産物を、Arc2P(iii)とし、塩基配列を決定した。その結果、Arc2P(ii)の上流2819bp(合計3860bp)の新規な領域を含むことを確認した。以上、三回の伸長反応によってアルセリン2遺伝子の開始コドンの上流5′側非翻訳領域を含む3860bpの新規なプロモーター配列を含むDNAを取得することができた(配列番号9)。アルセリン2遺伝子と相同性を有する公知の遺伝子であるアルセリン1(GenBank accession No.M68913)、アルセリン3(GenBank accession No.AX463292)、アルセリン4(GenBank accession No.AX463293)及びアルセリン5−1(GenBank accession No.Z50202)のプロモーター配列との相同性を調べた結果、いずれとの比較においても相同性は55.4%以下であり、配列番号1に記載のDNAは新規なアルセリンプロモーター配列を含むDNAであることが明らかとなった。
(3)インゲンマメ野生種からのアルセリン2遺伝子のターミネーター配列を含むDNAの単離
上記実施例1(1)で抽出したゲノミックDNA280ngを制限酵素NheIで消化した後、dCTPを加え、klenow enzyme(プロメガ社製)により1塩基伸張反応を行った。反応後、RightWalk KitTM付属のRWA−2アダプターとLigation high(東洋紡績社製)を用いて連結反応を行い、ターミネーター遺伝子の単離のためのPCRの鋳型とした。
次に、公知のインゲンマメアルセリン2遺伝子のcDNAの塩基配列(GenBank accession No.M28470)に基づき、配列番号10及び配列番号11の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(それぞれプライマーSP3及びプライマーSP4と命名)を作製した。
次に、上記で構築したアダプターを連結したゲノミックDNA2.8ngを鋳型とし、RightWalk KitTM付属のプライマーWP−1及プライマーSP3を用いてPCRを行った。PCRは、一反応あたり50μLの反応液を用い、変性反応を94℃で2分、1サイクル実施後、変性反応を94℃で30秒、アニーリングを65℃で30秒、及び伸長反応を68℃で5分を1サイクルとして35サイクル行った。なお、反応液は200μMのdNTP混合液、1.5mMのMgSO4溶液、1μMの上記各プライマー、1ユニットのKOD−Plus−(東洋紡績社製)を含むKOD−Plus−Ver.2バッファーを含んでいる。
PCR終了後、反応液を100倍に希釈し、その1μLを2回目のPCRの鋳型とし、RightWalk KitTM付属のプライマーWP−2及びプライマーSP4を用いてPCRを行った。なお、2回目のPCRの溶液組成及び温度条件は、鋳型とプライマー以外、1回目のPCRと同条件で行った。
増幅されたDNA断片は、最終濃度1mMのATP存在下でT4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)でリン酸化反応を行った後、予めSmaIで処理したpBluescriptII SK(−)(ストラタジーン社製)と連結反応を行った。
反応産物を、Arc2Tとし、塩基配列を決定した。その結果、アルセリン2遺伝子の3’側非翻訳領域を含む終止コドンの下流795bpの新規な領域を含むことを確認した(配列番号12)。公知のアルセリン2遺伝子と相同な遺伝子であるアルセリン1(GenBank accession No.M68913)及びアルセリン5−1(GenBank accession No.Z50202)のターミネーター領域と相同性について検索した結果、いずれとの比較においても相同性は49.1%以下であり、配列番号12に記載のDNAは新規なターミネーター配列を含むDNAであることが明らかとなった。
[実施例2]
イネプロラミンの種子特異的発現ベクターの構築
(1)アルセリン2ゲノム遺伝子に相当するDNAの合成と単離
上記実施例1(1)で抽出したゲノミックDNA80ngを鋳型として、PCRを行った。配列番号9及び配列番号12に記載された塩基配列に基づき、配列番号13及び配列番号14の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(それぞれプライマーArc2P及びプライマーArc2Tと命名)を作製した。
PCRは、一反応あたり50μLの反応液を用い、変性反応を94℃で2分、1サイクル実施後、変性反応を94℃で30秒、アニーリングを57℃で30秒、及び伸長反応を68℃で4分を1サイクルとして25サイクル行った。なお、反応液は200μMのdNTP混合液、1.5mMのMgSO4溶液、1μMの上記各プライマー、1ユニットのKOD−Plus−(東洋紡績社製)を含むKOD−Plus−Ver.2バッファーを含んでいる。
増幅されたDNA断片は、最終濃度1mMのATP存在下でT4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)でリン酸化反応を行った後、予めSmaIで処理したpBluescriptII SK(−)(ストラタジーン社製)と連結反応を行った。
反応産物を、Arc2PCTとし、塩基配列を決定した。その結果、アルセリン2遺伝子、及びその5’側非翻訳領域を含む開始コドンの上流2461bpのプロモーター領域を含み、且つ3’側非翻訳領域を含む終止コドンの下流795bpの新規な領域を含むことを確認した(配列番号15)。こうして得られた組換えベクターArc2PCTを導入した大腸菌DH5α(タカラバイオ株式会社製)は、大腸菌Escherichia coli DH5α/Arc2PCTと命名され、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに2008年7月30日より、受託番号P-21624 として寄託されている。
(2)アルセリン2プロモーターを含む発現ベクターの作製
公知のイネの10K(10kDa)プロラミンであるRP10をコードする遺伝子を種子特異的に発現させるため、RP10をコードする遺伝子と、上記実施例1で得られたArc2PおよびArc2Tを連結した発現プラスミドの構築を行った。
上記のArc2PCTの10ngを鋳型として、プロモーター、ターミネーター及びベクター部分(アルセリン2遺伝子以外の部分)を増幅するPCRを行った。配列番号15の塩基配列に基づき、配列番号16及び配列番号17のオリゴヌクレオチド(それぞれプライマーArc2P3及びプライマーArc2T5と命名)を作製した。
PCRは、一反応あたり50μLの反応液を用い、変性反応を94℃で2分、1サイクル実施後、変性反応を94℃で30秒、アニーリングを57℃で30秒、及び伸長反応を68℃で6分30秒を1サイクルとして25サイクル行った。なお、反応液は200μMのdNTP混合液、1.5mMのMgSO4溶液、1μMの上記各プライマー、1ユニットのKOD−Plus−(東洋紡績社製)を含むKOD−Plus−Ver.2バッファーを含んでいる。こうして、アルセリン2遺伝子のプロモーター2461bpとターミネーター795bp及びそれらの間にベクターの配列を含むDNA断片Arc2PTを得た。
次に、イネの10KプロラミンであるRP10をコードする遺伝子(GenBank accession No.E09782)(配列番号2)のcDNAがpBluescriptII SK(−)(ストラタジーン社製)のSmaIサイトにクローニングされている、プラスミドpBSK−RP10(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、北海道農業研究センター保有)を鋳型として、RP10をコードするDNA断片を得るため配列番号18及び配列番号19からなるプライマーセットを用いてPCRを行った。
PCRは、一反応あたり50μlの反応液を用い、変性反応を94℃で2分、1サイクル実施後、変性反応を94℃で30秒、アニーリングを57℃で30秒及び伸長反応を68℃で1分を1サイクルとして25サイクル行った。こうして、RP10をコードするDNA断片を得た。なお、反応液は200μMのdNTP混合液、1.5mMのMgSO4溶液、1μMの上記各プライマー、1ユニットのKOD−Plus−(東洋紡績社製)を含むKOD−Plus−Ver.2バッファーを含んでいる。
RP10遺伝子断片は、最終濃度1mMのATP存在下でT4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)でリン酸化反応を行った後、上記Arc2PTと連結反応を行った。こうして、RP10遺伝子の上流にアルセリン2遺伝子のプロモーター2461bp及び下流にターミネーター795bpを含む、種子特異的発現ベクターArc2PRP10を作製した。
(3)アルセリン5プロモーターを含む発現ベクターの作製
イネの10KプロラミンのRP10をコードする遺伝子を種子特異的に発現させるため、RP10をコードする遺伝子と、種子特異的発現が認められている、公知のアルセリン5プロモーター及びターミネーター(国際公開WO02/50295号パンフレット)を連結した発現プラスミドの構築を行った。
インゲンマメ野生種(系統番号:G02771)の生葉1gからDNeasy Plant Maxi kit(キアゲン社製)を用いてゲノミックDNA50μgを抽出した。該ゲノミックDNA80ngを鋳型として、PCRを行った。公知のインゲンマメアルセリン5−1遺伝子(GenBank accession No.Z50202)の塩基配列に基づき、配列番号20及び配列番号21の塩基配列からなる2種類のオリゴヌクレオチド(それぞれプライマーArc5P及びプライマーArc5Tと命名)を作製した。
PCRは、一反応あたり50μLの反応液を用い、変性反応を94℃で2分、1サイクル実施後、変性反応を94℃30秒、アニーリングを57℃30秒及び伸長反応68℃4分を1サイクルとして25サイクル行った。なお、反応液は200μMのdNTP混合液、1.5mMのMgSO4溶液、1μMの上記各プライマー、1ユニットのKOD−Plus−(東洋紡績社製)を含むKOD−Plus−Ver.2バッファーを含んでいる。
増幅されたDNA断片は、最終濃度1mMのATP存在下でT4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)でリン酸化反応を行った後、予めSmaIで処理したpBluescriptII SK(−)(ストラタジーン社製)と連結反応を行った。反応産物を、Arc5PCTとし、塩基配列を決定した。その結果、アルセリン5遺伝子、及びその5’側非翻訳領域を含む開始コドンの上流1818bpのプロモーター領域を含み、且つ3’側非翻訳領域を含む終止コドンの下流1192bpの領域を含むことを確認した。
上記で得たArc5PCTの10ngを鋳型として、プロモーター、ターミネーター及びベクター部分(アルセリン5遺伝子以外の部分)を増幅するPCRを行った。公知のアルセリン5−1遺伝子の塩基配列より、配列番号22及び配列番号23の塩基配列からなる2種類のオリゴヌクレオチド(それぞれプライマーArc5P3及びプライマーArc5T5と命名)を作製した。
PCRは、一反応あたり50μLの反応液を用い、変性反応を94℃で2分、1サイクル実施後、変性反応を94℃で30秒、アニーリングを57℃で30秒、及び伸長反応を68℃で6分30秒を1サイクルとして25サイクル行った。なお、反応液は200μMのdNTP混合液、1.5mMのMgSO4溶液、1μMの上記各プライマー、1ユニットのKOD−Plus−(東洋紡績社製)を含むKOD−Plus−Ver.2バッファーを含んでいる。こうして、アルセリン5遺伝子のプロモーター1818bp及びターミネーター1192bpを含む遺伝子断片Arc5PTを得た。
これに、上記のリン酸化反応済みRP10遺伝子断片を連結して、RP10遺伝子の上流にアルセリン5遺伝子のプロモーター1818bp及び下流にターミネーター1192bpを含む、種子特異的発現ベクターArc5PRP10を作製した。
(4)植物形質転換ベクターの構築
上記(2)、(3)で得られた、Arc2PRP10およびArc5PRP10を公知のpUHGベクター(pUHGプラスミド)(Y. Kita,K. Nishizawa,M Takahashi, M. Kitayama, M. Ishimoto. (2007)Genetic improvement of somatic embryogenesis and regeneration in soybean and transformation of the improved breeding lines. Plant Cell Reports 26:439−447)に連結し、植物形質転換ベクターの構築を行った。
Arc2PRP10およびArc5PRP10を制限酵素SpeIおよびSalIで切断を行い、pUHGベクターのSpeI、SalIサイトに連結反応を行い、植物形質転換ベクターpUHGArc2PRP10、pUHGArc5PRP10を作製した。すなわち、種子特異的発現ベクターArc2PRP10およびArc5PRP10の2μgを制限酵素SpeI、SalIの20単位で37℃、2時間切断した後、アガロース電気泳動を行い、Arc2PRP10において約3.7kb、Arc5PRP10において約3.4kbの断片のみを切り出し、ジーンクリーンにより精製した。一方pUHGプラスミド2μgをSpeI、SalI20単位で37℃、2時間切断した後、ジーンクリーン(Bio101社製)により精製した。夫々のDNAフラグメントを、TakaraLigation kitにて、16℃、3時間反応させた。
このようにしてプラスミドpUHGのSpeI、SalI切断DNAフラグメントに、Arc2PRP10由来の約3.7kbのSpeI、SalI切断フラグメントを、また同様にプラスミドpUHGのSpeI、SalI切断DNAフラグメントに、Arc5PRP10由来の約3.4kbのSpeI、SalI切断フラグメントを各々組み込んだ植物形質転換ベクターpUHGArc2PRP10及びpUHGArc5PRP10(図1)を作製した。
また、ベクターコントロール区として公知のプラスミドpUHRSK(K. Nishizawa,Y. Kita, M. Kitayama, M. Ishimoto.
(2006)A red fluorescent protein,DsRed2,as a visual reporter for expression and stable transformation in soybean. Plant Cell Reports 25:1355−1361)を用いた。
[実施例3]
植物形質転換ベクターのダイズへの導入及び形質転換ダイズ植物の作出
公知の方法(K. Nishizawa, Y. Kita, M. Kitayama, M. Ishimoto. (2006) A red fluorescent protein, DsRed2, as a visual reporter for transient expression and stable transformation in soybean. Plant Cell Reports 25:1355−1361)により、ダイズ品種Jackの未熟種子から誘導された不定胚塊(直径3mm以下)30個を1.5ml用のチューブに加え、ウイスカー超音波法(特許第3312867号)により遺伝子導入操作を行った。
チタン酸カリウム製ウイスカーLS20(チタン工業社製)5mgを1.5ml容のチューブに入れ、1時間放置した後、エタノールを除去し、完全に蒸発させて、殺菌されたウイスカーを得た。このウイスカーの入ったチューブに滅菌水1mlを入れ、良く攪拌した。ウイスカーと滅菌水を遠心分離し、上清の水を捨てた。このようにしてウイスカーを洗浄した。このウイスカー洗浄操作を3回行った。その後、同チューブに公知のMS液体培地の0.5mlを加えてウイスカー懸濁液を得た。
上記で得られたウイスカー懸濁液の入ったチューブに、上記の不定胚塊(直径3mm以下)30個を入れて攪拌した後、混合物を1000rpmで10秒間遠心分離し、不定胚塊とウイスカーを沈殿させ、上清を捨て、不定胚塊とウイスカーの混合物を得た。
この混合物を入れたチューブに、pUHGArc5PRP10を20μl(20μg)加え、十分振り混ぜて均一な混合物を得た。
次にこの均一な混合物の入ったチューブを18000xgで5分間遠心分離した。遠心分離した混合物を再度振り混ぜ、この操作を3回反復した。
上記のようにして得られた、不定胚塊と、ウイスカーと、ベクターを収容しているチューブを超音波発生機の浴槽にチューブが十分浸るように設置した。周波数40kHzの超音波を強度0.25W/cm2で1分間照射した。照射後、10分間、4℃でこの混合物を保持した。このように超音波処理した混合物を前記のMS液体培地で洗浄した。
処理後の不定胚塊を公知の不定胚増殖液体培地で1週間回転振とう培養し(100rpm)、その後にハイグロマイシンB(15mg/l)(ロッシュ・ダイアグノスティックス、マンハイム、ドイツ)を含んでいる新鮮な不定胚増殖液体培地で1週間培養した。さらに30mg/lのハイグロマイシンBを含んでいる不定胚増殖液体培地で4週間培養(毎週培地を交換する)した後、45mg/lのハイグロマイシンBを含んだ不定胚増殖液体培地で1週間選抜培養を行った。なお、遺伝子導入は各ベクターごとにマイクロチューブ12本の処理を行った。
ハイグロマイシン耐性の不定胚塊を公知の不定胚成熟液体培地へ移し、4週間振とう培養(100rpm)を継続し不定胚を成熟させた。成熟した不定胚を滅菌シャーレ中に3から5日間置き乾燥させた後、公知の発芽固体培地に移した。7から10日間発芽培養を行った後、公知の発根培地に移し、発芽している幼植物体を成長させた。根と芽が伸びた後に、土壌を含んでいるポットへ植物を移し、順化するまで高湿度に維持した。
このようにしてJack品種にArc5PRP10を導入した形質転換ダイズ植物を4系統作出した。
これらの形質転換ダイズの植物体は環境湿度に適応させた後、10000lux、16時間日長の環境下で栽培を継続し、すべての個体から種子を収穫した。こうして、形質転換ダイズ植物のT1世代の種子を得た。
[実施例4]
(1)形質転換ダイズ種子における種子貯蔵タンパク質含量の評価
上記実施例3で得た形質転換ダイズ4系統から採取した種子より全タンパク質を抽出し、SDS電気泳動により各種子貯蔵タンパク質の分離を行い、CBB染色により各々の種子貯蔵タンパク質含量を評価した。
その結果、形質転換ダイズ種子の各系統にダイズの種子貯蔵タンパク質の7Sタンパク質のβ、α、α‘サブユニットおよび11Sタンパク質のA鎖、B鎖の蓄積が確認できた。そのうち7Sタンパク質のβ、α、α’サブユニットが明らかに対照区Jack品種の蓄積量よりも高かった(図2)。
本発明により、形質転換ダイズ種子に内在性種子貯蔵タンパク質を効率的に生産、蓄積させることが可能になるので、ダイズの種子貯蔵タンパク質を大量に供給することが可能になる。

Claims (11)

  1. 不溶性の外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が導入され、種子中で該遺伝子が発現している形質転換ダイズ植物であって、種子中での内在性種子貯蔵タンパク質の蓄積量が増加している、形質転換ダイズ植物。
  2. 外来性種子貯蔵タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子が、ダイズ種子特異的な発現を誘導するプロモーターの下流に連結されて導入された、請求項1に記載の形質転換ダイズ植物。
  3. 外来性種子貯蔵タンパク質がイネのプロラミンである、請求項1又は2に記載の形質転換ダイズ植物。
  4. 内在性種子貯蔵タンパク質が、ダイズ11Sグロブリン及び/又はダイズ7Sグロブリンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の形質転換ダイズ植物。
  5. 内在性種子貯蔵タンパク質が、ダイズ7Sグロブリンのβサブユニットである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の形質転換ダイズ植物。
  6. ダイズ7Sグロブリンのβサブユニットをコードする遺伝子の可変領域に、外来性タンパク質をコードする遺伝子がフレームシフトを生じないように挿入された、改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子がさらに導入された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の形質転換ダイズ植物。
  7. 改変型の内在性種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子が、ダイズ種子特異的な発現を誘導するプロモーターの下流に連結されて導入された、請求項6に記載の形質転換ダイズ植物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の形質転換ダイズ植物の細胞。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の形質転換ダイズ植物の種子。
  10. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の形質転換ダイズ植物を用いて、その種子中で内在性種子貯蔵タンパク質を生産する方法。
  11. 請求項6又は7に記載の形質転換ダイズ植物を用いて、その種子中で改変型の内在性種子貯蔵タンパク質を生産する方法。
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